JPH0333430Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 イ 産業上の利用分野 本考案のボルト締付機は、トルシアボルトの仮
締め及び本締め作業に用いられるものである。

ロ 従来技術 第１図は、一般のボルト締付機によるトルシア
ボルトの締付作業を示すもので以下にその詳細を
説明する。締結する２枚の板材１，１の夫々に穿
孔されたボルト穴１ａ，１ａにトルシアボルト２
を挿通し、トルシアボルト２のねじ部３に、座面
に潤滑処理を施したナツト４を軽く嵌め込む。ボ
ルト締付機５の本体６に取付けられたアウタース
リーブ７およびインナースリーブ８の先端のナツ
ト嵌合部及びチツプ嵌合部をそれぞれナツト４及
びトルシアボルト２の先端のチツプ９に嵌め込
む。ボルト締付機５のスイツチを入れると本体６
に内蔵された電動機（図示せず）が起動し、該電
動機の出力軸に結合された動力伝達機構（図示せ
ず）を介してアウタースリーブ７及びインナース
リーブ８に上記電動機の駆動力が伝達され、アウ
タースリーブ７及びインナースリーブ８が相対的
に逆向きに回転してトルシアボルト２の座面と、
ナツト４の座面を上記板材１，１に接触させる。
ナツト４の座面にのみ潤滑処理を施してある為摩
擦係数の大きいトルシアボルト２側が固定され、
インナースリーブ８の回転が止まり、以後ナツト
４側、即ちアウタースリーブ７がインナースリー
ブ８に対して相対的に回転してナツト４を締付け
て板材１，１を締結してゆく。締付トルクが規定
以上の大きさになると、トルシアボルト２の先端
のチツプ９が溝１０から破断し、トルシアボルト
２とナツト４とで板材１，１を完全に締結する。

しかし、締結する板材１，１の板厚が厚い場合
あるいは板厚が薄くても反つている場合等では、
上記のトルシアボルト２の締付作業で、トルシア
ボルト２の締付トルクが規定値に達してチツプ９
が破断しても、２枚の板材１，１間に隙間が残存
し、十分に締結されていない場合があつた。つま
りトルシアボルト２の様なねじ系締結部品は、ボ
ルトナツトの締付力によつて、板材１，１を連結
するため、上記の様に隙間が残存すると、ボルト
の剪断抵抗のみで連結することになり、板材１，
１間の締結強度は低いものとなる。

その為、昨年上記トルシアボルト２の締結作業
において、トルシアボルト２は必ず２度締めをし
なければならない、という施行規則が制定され
た。即ち、トルシアボルト２のチツプ９が破断す
るトルクの20〜30％位で仮締めを行ない、被締結
材である板材１，１を完全に密着させてから、チ
ツプ９が破断するまでトルシアボルト２を締付け
る本締めを行なうことが義務づけられた。

従来、上記仮締め作業を行なうには、ボルト締
付機５に供給する電流を制御して所定の仮締めト
ルクを得る方式が知られているが、上記施行規則
の様に締付トルクが低いと、チツプ９を捩じ切る
ことができず、ナツト４及びトルシアボルト２の
チツプ９がボルト締付機５のアウタースリーブ７
及びインナースリーブ８に噛み合い、ボルト締付
機５が抜けなくなるという欠点があつた。また締
付トルクが低いので、スパナ等を用いて手締めも
可能であるが個人差により締付トルクが一定せ
ず、スパナ等が入らない様な作業の困難な場所も
あり、作業性が低下する。

ハ 考案の目的 本考案は、前述のトルシアボルトの施行規則の
制定に伴うトルシアボルトの仮締め作業及び本締
作業を簡単に実施できるボルト締付機を提供する
ことを目的としている。

ロ 考案の構成 本考案は、電動機及び電動機の出力軸に結合さ
れた動力伝達機構を内蔵する本体と、該本体の前
方に装着され、上記動力伝達機構を介して電動機
の駆動力が伝達されるアウタースリーブ及びイン
ナースリーブとかららなり、該アウタースリーブ
の先端をナツトに、インナースリーブの先端をト
ルシアボルトの先端部に夫々嵌め込んで、アウタ
ースリーブ及びインナースリーブを相対的に逆向
きに回転させてトルシアボルトを締結するボルト
締付機において、ナツト嵌合部を有するナツト側
スリーブと、ボルト締付機本体の動力伝達機構と
噛み合う装着部を有する本体側スリーブとを装着
環で衝合させ、一方のスリーブの衝合端に設けら
れた滑り板に複数個の球面溝と傾斜面からなる円
弧状溝を設け、他方のスリーブの衝合端に穿設し
た複数個の孔に金属球およびスプリングを挿入
し、上記円弧状溝とスプリング加圧の金属球との
係合離脱によりトルシアボルトに仮締めトルク以
上のトルクを伝達しないトルク制限機構を内蔵す
る仮締め用スリーブを構成し、上記トルク制限機
構を内蔵する仮締め用スリーブと上記トルク制限
機構を有さない本締め用スリーブとを、上記アウ
タースリーブまたはインナースリーブの何れか一
方として上記本体に互いに交換可能に装着し、１
台の本体で仮締め作業と本締め作業が行なえる様
にしたボルト締付機である。

ホ 実施例 第２図乃至第４図は、本考案に係るボルト締付
機の実施例で、本体６に、第１図のアウタースリ
ーブ７に代えて本考案の要旨であるトルク制限機
構Ａを組込んだ仮締め用スリーブ１１を装着した
ものである。仮締め用スリーブ１１は、先端にナ
ツト嵌合部１２を有するナツト側スリーブ１３
と、ボルト締付機５′の本体６のアウタースリー
ブ取付部（図示せず）と噛み合わせて装着する装
着部１４を有する本体側スリーブ１５とから成
り、トルク制御機構Ａは上記ナツト側スリーブ１
３と本体側スリーブ１５との間に配設されてい
る。上記トルク制限機構Ａは、第３図および第４
図に示すように、ナツト側スリーブ１３に形成さ
れ、かつ、３個の円弧状溝１６が刻設された滑り
板１７と、本体側スリーブ１５に穿孔された３個
の孔１８の各々に収容された金属球１９及びスプ
リング２０とから成る。ただし上記円弧状溝１６
は第５図ａ，ｂに示す様に、ナツト４の締付方向
が球面溝１６ａで、反対方向が傾斜面１６ｂであ
る形状で、上記金属球１９がスプリング２０によ
つて押圧されて当接している。尚図中２１は、上
記ナツト側スリーブ１３を本体側スリーブ１５に
回転可能に取付けるための装着環で、本体側スリ
ーブ１４にねじ締め等により固定されている。

上記構造のボルト締付機５′に装着された仮締
め用スリーブ１１は、前記ボルト締付機５のアウ
タースリーブ７と互いに交換可能で、該アウター
スリーブ７は本締め用スリーブと用している。

以下に上記トルク制限機構Ａの動作を説明す
る。ボルト締付機５′に仮締め用スリーブ１１を
装着し、この仮締め用スリーブ１１のナツト側ス
リーブ１３先端のナツト嵌合部１２をナツト４
に、インナースリーブ８先端のチツプ嵌合部をト
ルシアボルト２のチツプ９に嵌め込み、前述のボ
ルト締付機５によるトルシアボルト２の締結作業
同様に仮締め作業を行なう。トルシアボルト２の
締付トルクが前述の施行規則の仮締めトルクに達
すると、それまで円弧状溝１６の球面溝１６ａに
嵌り込んでトルクを伝達していた金属球１９が、
該円弧状溝１６の球面溝１６ａを抜け出し、スプ
リング１９の押圧力に抗して本体側スリーブ１５
に穿孔された孔１８に入り込み、滑り板１７の表
面上をカチカチと音を発生しながら摺動し、仮締
めトルク以上のトルクを伝達しない（第５図ｂ参
照）。

以上の作業によつてトルシアボルト２の仮締め
作業を行ない、然る後仮締め用スリーブ１１をボ
ルト締付機本体６より取外し、本締め用スリーブ
即ち、通常のアウタースリーブ７を装着してトル
シアボルト２の本締め作業を行ない、所定のトル
クでチツプ９を捩じ切る。

尚、以上の説明ではアウタースリーブ側にトル
ク制限機構Ａを設けた仮締め用スリーブ１１とし
たがインナースリーブ側にトルク制限機構Ａを設
けたものでもよい。

ヘ 考案の効果 以上説明した様に本考案のボルト締付機は、ト
ルク制限機構を組込んだ仮締め用スリーブと、ト
ルク制限機構を有さない在来の本締め用スリーブ
とを互いに交換可能に装着したので、トルシアボ
ルトの仮締め作業及び本締め作業が一台の本体で
行なえ、仮締め作業は本締め作業と同様の手順で
行なえる。また仮締め作業の終了は、ナツト側ソ
ケツトの静止あるいは金属球が滑り板上で発する
カチカチという音で知ることができ、トルシアボ
ルト及びナツトが仮締め用スリーブ及びインナー
スリーブ（又はアウタースリーブ）に噛み込んで
も、仮締め用スリーブ１１の装着環２１をゆるめ
るツト側スリーブ１３と本体側スリーブ１５との
結合を解放することにより、手動で該噛込みを解
除することができる。また、ナツト側スリーブの
滑り板に、締付方向や球面溝で、反対方向が傾斜
面である３個の円弧状溝を刻設したから、始動
時、金属球が傾斜面を通つて球面溝に当接し、始
動時におけるナツト側スリーブと本体側スリーブ
との係止動作が確実になる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のボルト締付機を使用したトルシ
アボルトの締結作業の概略図、第２図は本考案の
ボルト締付機を利用したトルシアボルトの仮締め
作業の概略図、第３図は第２図のボルト締付機の
要部拡大断面図、第４図は第２図の滑り板の平面
図、第５図ａ，ｂは各々、トルク制限機構の動作
状態を示す第４図のＸ−Ｘ線に沿う断面図であ
る。 １……板材、２……トルシアボルト、４……ナ
ツト、５′……ボルト締付機、６……（ボルト締
付機の）本体、７……アウタースリーブ、８……
インナースリーブ、９……（トルシアボルトの）
チツプ、１１……仮締め用スリーブ、１２……ナ
ツト嵌合部、１３……ナツト側スリーブ、１４…
…（本体５への）装着部、１５……本体側スリー
ブ、１６……円弧状溝、１６ａ……球面溝、１６
ｂ……傾斜面、１７……滑り板、１８……孔、１
９……金属球、２０……スプリング、Ａ……トル
ク制限機構。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 電動機及び電動機の出力軸に結合された動力伝
   達機構を内蔵する本体と、該本体の前方に装着さ
   れ、上記動力伝達機構を介して電動機の駆動力が
   伝達されるアウタースリーブ及びインナースリー
   ブとからなり、該アウタースリーブの先端をナツ
   トに嵌め込み、インナースリーブの先端をトルシ
   アボルトの先端部に嵌め込んで、アウタースリー
   ブ及びインナースリーブを相対的に逆向きに回転
   させてトルシアボルトを締結するボルト締付機に
   おいて、ナツト嵌合部を有するナツト側スリーブ
   と、ボルト締付機本体の動力伝達機構と噛み合う
   装着部を有する本体側スリーブとを装着環で衝合
   させ、一方のスリーブの衝合端に設けられた滑り
   板に複数個の球面溝と傾斜面からなる円弧状溝を
   設け、他方のスリーブの衝合端に穿設した複数個
   の孔に金属球およびスプリングを挿入し、上記円
   弧状溝とスプリング加圧の金属球との係合離脱に
   よりトルシアボルトに仮締めトルク以上のトルク
   を伝達しないトルク制限機構を内蔵する仮締め用
   スリーブを構成し、該仮締め用スリーブと、上記
   トルク制限機構を有さない本締め用スリーブと
   を、上記アウタースリーブまたはインナースリー
   ブの何れか一方として、上記本体に互いに交換可
   能に装着したことを特徴とするボルト締付機。