JPH0330377Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は、線材、線材の巻枠等の収納、運
搬、輸送に供され、該線材等を収納したままの状
態で、線材加工工程のペイオフとして使用され得
るペイルパツクの改善に関する。

従来の技術 初期のペイルパツクは線材の加工工程における
巻取ドラムに代わり、引取装置からペイル中に線
材を落し込み、次工程においては繰出ドラムに代
わり該ペイルから逆に、線材を引出し乍ら加工を
施こすもので、線材に無理な力が加わらず、巻取
繰出し用ドラムの如き慣性が無いので加工速度の
変化や急停止、急発進に対応することが容易で極
めて便利なものであつた。然しこれはペイル内の
収納量が小さく、又運搬中にペイル中で収納状態
に崩れを生じ次工程に支障を生じたり高速度のペ
イオフが不可能である等の問題があつた。

然し近来の改善されたペイルパツクにおいては
大量に線材が巻取られたまゝの巻取ドラムをペイ
ルパツク内に密閉蓋に依り気密且つ強固に固定収
納し、輸送に際してはこれを段積みにして積載
し、次工程においてはドラムを収納したまゝ線材
の回転遠心力を利用して引出す様に改善されたも
のが使用され始めている。これは高速巻取、大量
遠距離輸送、線材の汚損妨止、高速度ペイオフ等
の総てにおいて大幅に改善されたものであつた。

第３図及び第４図はこの改善されたペイルパツ
クの使用状態を示したものである。該ペイルパツ
クはペイルパツク本体１、及び円板状の密閉蓋２
からなり両者は気密に嵌合密閉された上でペイル
パツクのフランジ３と密閉蓋２の周縁と留め金９
に依り強固に連結されてある。又密閉蓋２は線材
８を輸送、保管中の湿度、塵埃から保護すると共
に、ドラム７をペイルパツク本体１の中に押圧固
定して輸送中の振動やシヨツクからドラムを防護
すると共に線材の巻き崩れを防止する役目もあ
る。又従来の如きドラムの裸輸送の場合は隣接す
るドラムのフランジにより線材が打撃損傷を受け
る例が多かつたがペールパツク輸送はその点をも
完全に解決する。

又密閉蓋２の外側上面にはその周縁に同心円状
の溝４が設けられてあり、ペイルパツクの底面に
は溝４に嵌合する形状の円環状の突起５が設けら
れてある。第３図は２段積み状態のペイルパツク
を示してあり下段ペイルパツクの密閉蓋２の上面
の溝４と上段ペイルパツクの底面の突起５が嵌合
して段積み輸送時の荷崩れを妨止する様になつて
いる。

第４図はペイルパツク１の密閉蓋２を取除い
て、そのまゝ次工程のペイオフとして使用されて
いる状態を示す。ドラム７の軸方向に引出された
線材８は平滑に形成されたドラムフランジ７−１
の周縁に沿つて回転し乍ら引出され、その遠心力
により平滑に形成されたペイルパツク１の内壁上
を滑り乍ら極めて低い張力で引出される。ペイル
パツク内壁は極めて平滑で摩擦抵抗が小さいので
引出速度は極めて早くすることが可能で従来のペ
イルパツクの少く共10倍以上の高速引出しが可能
である。この場合の摩擦抵抗を小さくする為ドラ
ム及びペイルパツクの材質としてはプラスチツク
スが用いられる場合が多い。第５図は段積み時の
嵌合部の拡大断面図である。

考案が解決しようとする問題点 改善されたペイルパツクは極めて効果的ではあ
つたが次の如き問題点が残されていた。

(1) 段積みして大量輸送するに際して下側ペイル
パツクの密閉蓋と上側ペイルパツクの嵌合が外
れ易い欠点があつた。特にペイルパツク材質と
してプラスチツクスが多用される様になつてこ
れに起因する荷崩れの発生が増加した。プラス
チツクスは成形が容易で軽量安価であり、特に
ポリプロピレン、硬質ポリエチレンは耐衝撃力
に強い等の利点がある反面、成型条件に依る収
縮率の差異があり時に溝２と突起５の嵌合が弛
く成型されることがあり、又摩擦係数が小さい
点が問題点発生の主な原因となつていた。

(2) 次工程におけるペイオフとして使用する際に
ペイルパツクが床面で滑動し、位置ずれに因る
作業上の障害が多発する欠点があつた。これは
ペイオフ速度が高速化されたことに依り、線材
の引出しにより生ずる振動の周波数が高くな
り、ペールパツクと床面の間の摩擦係数が小さ
くなることに起因するものであつた。特にペイ
ルパツクの材質のプラスチツク化はペイオフ速
度を高速度化させる利点がある反面、床面との
摩擦係数が小さくなる欠点がありこれが問題点
発生の大きな要因となつていた。

この考案は、かゝる従来の問題点に着目して案
出されたものであつて、輸送中の荷崩れを防止
し、しかも、工程のペイオフとして使用中のペイ
ルパツクの滑動位置ずれに依る工程間不良の発生
を防止して生産能率を向上せしめるペイルパツク
を得んとするものである。

問題点を解決するための手段 この考案は、線材又はその巻枠の収納運搬容器
と線材加工機のペイオフ容器を兼ねたペイルパツ
ク本体と、円板状の密閉蓋とからなり、該密閉蓋
の外側面には周縁と同心となる円上に凹溝が形成
されてあると共に、前記ペイルパツク本体の底面
に前記凹溝に嵌合可能な突起を設けた構成におい
て、 前記突起を前記ペイルパツク本体の底面の半径
方向に所定間隔を介して突設された薄肉状の弾発
性を有する２条の板体に構成し、この２条の板体
が嵌入可能な２条の嵌合溝を有するゴム状弾性体
でなる振動吸収部材を前記突起に冠着した構成と
している。あるいは、前記突起とこれに冠着され
た振動部材とを連結部材によつて連結した構成と
してもよい。

作 用 輸送時にペイルパツクが受ける振動は垂直方向
成分と水平方向成分に分離して考えることが出来
るが、突起５に設けられてある振動吸収部材６の
突起先端部に設けられた部分６−１は振動の垂直
成分を吸収する。又突起側面部に設けられた部分
６−２は振動の水平成分を吸収する。更に振動吸
収部材６は溝４より幅広く形成されてあり、突起
５と共に強固に圧入され輸送時のシヨツクでも段
積み連結された上下ペイルパツクが離脱するのを
防いでいる。

ペイルパツク１から線材８を高速度で引出し
て、次工程のペイオフとして使用する場合、線材
８はドラム７のフランジ７−１の周囲、及びペー
ルパツク本体１の内壁に沿つて高速度で回転す
る。これに因り生ずる振動はドラム７からペール
パツク本体１を介してその底部突起５と床面１１
の接触部に伝わる。振動吸収部材６における突起
５の先端部に設けられた部分６−１はこの振動を
吸収し、ペイルパツク１の滑動を防止する。又該
部分を形成するゴム状弾性体が粗面に形成されて
ある場合はその効果は更に大きいものとなる。

実施例 以下、本考案に係るペイルパツクの第１実施例
を図面に基づいて説明する。なお、従来例と同一
部材には同一符号を付してその説明は省略する。

第１図は断面図であり、嵌合部分のみの拡大図
で各部分は嵌合組立て直前の状態に分離して示し
てある。第１図において、ペイルパツク本体１の
底面の周縁に図中下方に突出形成された突起５
は、前記底面の半径方向に所定間隔を介して突設
された薄肉状の弾発性を有する２条の板体５−
１，５−２に構成されている。

突起５には、耐摩耗性ゴムからなり、全体が略
環状の振動吸収部材６が冠着されており、この振
動吸収部材６は２条の板体５−１，５−２が嵌入
する２条の深溝が形成され、振動吸収部材６は断
面形状が山字状となつて中央に挿入部６−３を有
している。ここで、振動吸収部材６の中央に位置
する挿入部６−３の厚さは、２条の板体５−１，
５−２間の所定間隔よりも大きく、このためこの
挿入部６−３は板体５−１，５−２によつて挟持
されている。また、振動吸収部材６は突起５の先
端部に設けられる部分６−１と側面部に設けられ
る部分６−２とを有している。

ペイルパツク本体１の下方にはもう一つのペイ
ルパツク本体１が配置されているが、このペイル
パツク本体１の開口部を密閉する密閉蓋２には前
記したように突起５が嵌入可能な溝４が形成され
ている。溝４には振動吸収部材６が冠着されてい
る突起５が圧入されている。このため、上方のペ
イルパツク本体１は下方のペイルパツク本体１上
に段積みされて組み合わされている。したがつ
て、段積みされた上下ペイルパツク本体１を輸送
して途中でシヨツクを受けたりしても荷崩れする
ようなことはない。

また、輸送時にペイルパツクが受ける振動は垂
直方向成分と水平方向成分に分離して考えること
が出来るが、突起５に設けられてある振動吸収部
材６の突起先端部に設けられた部分６−１は振動
の垂直成分を吸収する。又突起側面部に設けられ
た部分６−２は振動の水平成分を吸収する。

ペイルパツク１から線材８を高速度で引出し
て、次工程のペイオフとして使用する場合、線材
８はドラム７のフランジ７−１の周囲、及びペー
ルパツク本体１の内壁に沿つて高速度で回転す
る。これに因り生ずる振動はドラム７からペール
パツク本体１を介してその底部突起５と床面１１
の接触部に伝わる。振動吸収部材６における突起
５の先端部に設けられた部分６−１はこの振動を
吸収し、ペイルパツク１の滑動を防止する。又該
部分を形成するゴム状弾性体が粗面に形成されて
ある場合はその効果は更に大きいものとなる。

ところで、ペイルパツクを輸送する場合には上
方のペイルパツク本体１の突起５を振動吸収部材
６を介して下方のペイルパツク本体１の溝４に嵌
入させているが、永年経過後には介装されている
振動吸収部材６はゴム状弾性体からなつているた
めに劣化・摩耗してしまい、振動吸収性や滑動防
止性が低下してしまうことになる。このような場
合には、突起５に冠着している振動吸収部材６を
新しいものと取り替える必要が生じるので、振動
吸収部材６を突起５に接着剤で固着するのは好ま
しくない。一方では、突起５に冠着された振動吸
収部材６は使用中に外れないようにしなければな
らない。

そこで、振動吸収部材６はその挿入部６−３が
突起５の弾性力を有する板体５−１，５−２によ
つて挟持されているので、この突起５から容易に
外れるようなことはない。一方、振動吸収部材６
を取り替える場合には、板体５−１，５−２の挟
持力に抗して引つ張れば突起５から容易に取り外
すことができる。

次に、上方のペイルパツク本体１を下方のペイ
ルパツク本体１に段積みするには、溝４に突起５
を嵌合させなければならないので、ペイルパツク
本体１の底面の周縁に突出形成する突起５と、密
閉蓋２に形成する溝４とは嵌合するように高精度
に形成する必要があり、製造コストが高くなつて
しまう。しかし、突起５は２条の板体５−１，５
−２としたことから、この板体５−１，５−２が
溝４と少々ずれて形成されていたとしても撓むこ
とにより、この板体５−１，５−２と溝４とは嵌
合する。したがつて、突起５と溝４とはあまり高
精度に形成する必要がなく、製造コストを低くす
ることができる。

次に、本考案に係るペイルパツクの第２実施例
を第２図に示して説明する。第２図において、突
起５は前記実施例と同様に２条の板体５−１，５
−２に形成されており、これと嵌合する振動吸収
部材６も２条の深溝が形成されているが、この挿
入部分６−３は側面部６−２より長く形成されて
いる。突起５の板体５−１，５−２と挿入部分６
６−３とはホツチキス針や細針１０等（連結部
材）で貫通されて連結されている。したがつて、
振動吸収部材６は突起５に確実に取り付けられ、
脱落するようなことはない。一方、前記連結部材
１０を抜き取れば、振動吸収部材６は突起５から
容易に取り外して取り替えることができる。

考案の効果 本考案に係るペイルパツクは上述の如き構成で
あるから、安価且つ簡単に改善によつて輸送中の
ペイルパツク群の荷崩れ防止し、又工程のペイオ
フとして使用中のペイルパツクの滑動位置ずれに
依る工程間不良の発生を防止し生産能率を向上せ
しめる等の効果がある。

また、振動吸収部材は突起の板体によつて挟持
されているので、接着剤を用いなくともこの突起
から容易に外れるようなことはない。一方、振動
吸収部材を取り替える場合には、板体の挟持力に
抗して引つ張れば突起から容易に取り外すことが
できる。

さらに、板体が撓むことにより突起は溝と少々
ずれていても嵌合するので、突起と溝とはあまり
高精度に形成する必要がなく、製造コストを低く
することができる。

加えて、突起と振動吸収部材とを連結部材によ
つて連結した場合には、この振動吸収部材は突起
に確実に取り付けられ、脱落するようなことはな
くなる。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図は本考案に係るペイルパツクの
構造の実施例を示す部分拡大図であり断面図で示
してある。第３図、第４図は従来構造に係るペイ
ルパツクの使用状態を示す外観図であり第５図は
その一部断面拡大図である。 １……ペイルパツク本体、２……密閉溝、３…
…フランジ、４……溝、５……突起、６……振動
吸収部材、７……ドラム、８……線材、９……留
め金、１０……ホツチキス針。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 線材又はその巻枠の収納運搬容器と線材加工
   機のペイオフ容器を兼ねたペイルパツク本体
   と、円板状の密閉蓋とからなり、該密閉蓋の外
   側面には周縁と同心となる円上に凹溝が形成さ
   れてあると共に、前記ペイルパツク本体の底面
   に前記凹溝に嵌合可能な突起を設けた構成にお
   いて、 前記突起を前記ペイルパツク本体の底面の半
   径方向に所定間隔を介して突設された薄肉状の
   弾発性を有する２条の板体に構成し、この２条
   の板体が嵌入可能な２条の嵌合溝を有するゴム
   状弾性体でなる振動吸収部材を前記突起に冠着
   したことを特徴とするペイルパツク。 (2) 前記突起とこれに冠着された振動部材とを連
   結部材によつて連結したことを特徴とする請求
   項(1)記載のペイルパツク。