JPH0327513Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、縫いぐるみやクツシヨン等の詰物に
関し、特に、繊維パイル面を表にしてパイル布帛
で形成した表皮の内部に中綿を詰めた詰物に関す
る。

〔従来技術〕

上述のような従来の詰物においては、パイル布
帛や中綿が天然繊維や再生繊維から成るものは勿
論のこと、熱可塑性合成繊維から成るものでも、
洗濯したり、水に濡らしたりすると、繊維パイル
が互にくつつき合つて毛玉になつたり、あるいは
パイル布帛の地に倒れ付いたりして、非常に見た
目が悪くなり、相当手間を掛けて毛捌きしないこ
とには容易に元の状態に戻らないと云う問題があ
つた。また、中綿として使われている天然繊維、
落綿、ウレタンチツプ等は水切れが悪く、さらに
繊維にあつては凝集し易く、そのために表皮に弛
みができたりすると云う問題もあつた。

〔考案の目的〕

本考案は、繊維パイル布帛を表皮に用いた詰物
における上述の問題を解消するためになされたも
のであり、洗濯してもそのまゝで見掛けが新品と
余り変らないような詰物を提供するものである。

〔考案の構成〕

本考案は、繊維パイル面を表にしてパイル布帛
で形成した表皮の内部に中綿を詰めた詰物におい
て、少くともパイル布帛の繊維パイルが撥水加工
されていることを特徴とするパイル布帛表皮の詰
物、にある。

すなわち、本考案詰物に用いられるパイル布帛
及び中綿は、いかなる繊維から成るものでもよい
が、熱可塑性合成繊維から成るものが好ましい。
そして少くともパイル布帛の繊維パイルが撥水加
工されていることが必要であり、それにはパイル
布帛の構成繊維の全部が撥水加工されていても、
あるいはパイル布帛に限らず中綿も撥水加工され
たものでもよい。この撥水加工には、弗素系、シ
リコン系、パラフイン系、ジルコニウム系等の樹
脂加工が適しており、特に、パイル布帛の繊維パ
イルについては、洗濯に対する耐久性等の面か
ら、弗素系の樹脂加工が好ましく、また、中綿に
ついては、繊維間摩擦の減少の面等から、シリコ
ン系の樹脂加工が好ましい。なお、これらの樹脂
加工は、従来公知の方法によつて行われ、樹脂付
着量を繊維重量の１〜５％の範囲にあるようにす
るのが好ましい。その理由は、１％より少ないと
撥水加工の効果が不十分で、５％程度でほゞ効果
が飽和することにある。

さらに、本考案におけるパイル布帛は、少くと
も繊維パイルが撥水加工されているパイル織編物
でもよいが、撥水加工した原綿から成るスライバ
ーを用いて、スライバーニツト機により布帛を編
成し、次いで毛足を揃えるようにしたものが最も
好ましい。このようなスライバーニツト法による
パイル布帛は、繊維パイルの密度が均一で、毛足
の長いものから短かいもの、あるいは長短の混じ
たものまで任意の長さの、しかも撚り癖等のない
素直な繊維パイルを有するものとなる。それに対
して、パイル布帛にしてから撥水加工するもの
は、撥水加工後に再び繊維パイルを整える作業を
必要とするばかりでなく、繊維パイルに癖が付き
易いし、また、糸段階で撥水加工し、その糸を用
いて織成または編成して得られたパイル布帛も繊
維パイルに撚り癖が付き易い。しかし本考案は、
パイル布帛が上述のスライバーニツト法によるも
のに限られない。

以上のようなパイル布帛で表皮を形成し、その
表皮の内部に中綿を詰め込んで詰物とするのは、
従来の詰物におけると全く同様に行われる。

第１図は本考案の詰物のクツシヨンの断面図、
第２図は縫いぐるみの表面図である。

図において、１は繊維パイル布帛から成る表皮
部分、１ａは撥水加工されている繊維パイル、２
は通常の布帛から成る表皮部分、３は中綿であ
る。第１図の例が示すように、本考案は表皮が繊
維パイル布帛のみから形成されているものには限
られない。

以下、本考案の実施例を説明する。

〔実施例〕

繊維繊度２デニール、繊維長50mmのポリエチレ
ンテレフタレートスフ綿を弗素化脂肪属アルコー
ルのアクリル酸エステル樹脂が繊維重量に対して
純分で３％の付着量となるように撥水加工し、こ
のスフ綿からカードによつてスライバーを得、こ
のスライバーを用いてスライバーニツト機により
布帛を形成した後、該布帛の片面にポリツシヤー
加工を施して繊維パイル長さが略10mmのパイル布
帛を作り、このパイル布帛を用いて第１図及び第
２図に示したような表皮を形成した。

一方、繊維繊度５デニール、繊維長76mmのポリ
エチレンテレフタレートスフ綿をメチルシロキサ
ン、アミノシロキサン及びカルボキシシロキサン
から成るシリコン樹脂の付着量が繊維重量に対し
て純分で２％になるように撥水加工して、これを
中綿とした。

前記表皮のそれぞれに上記中綿を詰めてクツシ
ヨンと縫いぐるみを得た。これらのクツシヨン及
び縫いぐるみは、洗濯をして乾燥したまゝの状態
でパイル布帛の繊維パイルに搦みや倒れ伏しが生
ずることなく、また、中綿の寄りや表皮の弛みも
生ずることなしに、新品と同様の美しさと弾力性
を示した。

それに対して、上述のスライバー繊維に撥水加
工しないスフ綿を用いたものでは、それ以外は同
じ条件で作られていても、洗濯をすると、乾燥し
たまゝの状態では、繊維パイルに搦みや倒れ伏し
が生じて外観が悪く、搦みや倒れ伏しは消えなか
つた。また、中綿に撥水加工しないスフ綿を用い
たものでは、中綿を撥水加工したものと比較する
と、それ以外は同じ条件で作られていても、中綿
に寄りや表皮に弛みが発生し易く、クツシヨン性
も低下した。

〔考案の効果〕

本考案の表皮に繊維パイルを有する詰物は、洗
濯をしても、外観やクツシヨン性が新品と同様に
殆んど変化しないと云う優れた特長を有する。な
お、本考案の詰物は、特に表皮のパイル布帛が数
mmあるいはそれ以上の長い繊維パイルを有するも
のである場合に、同様の従来の詰物に比較して、
上記効果を一段と顕著に示す。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るクツシヨンの断面図、第
２図は縫いぐるみの表面図である。 １……繊維パイル布帛表皮部分、１ａ……撥水
加工繊維パイル、２……通常布帛表皮部分、３…
…撥水加工中綿。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 繊維パイル長が数mm以上の繊維パイル面を表に
   してパイル布帛で形成した表皮の内部に中綿を詰
   めた詰物において、少くともパイル布帛の繊維パ
   イルが撥水加工されていることを特徴とするパイ
   ル布帛表皮の詰物。