JPH0327040B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、デカルコマニーによる絵画の製造方
法に関するものである。

［従来の技術］ 現代美術における絵画技法の一つにデカルコマ
ニーがある。これは、金属やガラス等からなる平
滑な台板上に絵具を塗り、この台板の上に紙を圧
接させた後それ剥離するか、または、紙に絵具を
塗つて２つ折りにし、それを互いに圧接させた後
剥離することにより、これらの紙に偶然的な効果
による形象・模様を形成させる技法である。

而して、このデカルコマニーにおいては、紙を
剥離する方向に絵具が走る性質があり、この絵具
の動きによつてデカルコマニーに特有の葉脈状、
水脈状、樹木状等の各種線模様が形成されること
になるのであるが、多くの同じような線模様が現
われることによつて画像が単調になり易いという
欠点があり、特に大きな紙を使用する場合にその
傾向が強く、複雑で変化のある画像を得ようとす
る場合には、シートの剥離方向を複雑に変化させ
るなどの面倒な作業が必要であつた。

［発明が解決しようとする問題点］ 本発明の課題は、デカルコマニーにより絵画を
製造するについて、線模様以外の複雑で変化に富
んだ模様を有する画線を簡単に得ることのできる
製造方法を提供することにある。

［問題点を解決するための手段］ 上記課題を解決するため、本発明においては、
金属やガラス、陶器等の非透水性素材からなる平
滑な台板上に着色剤を塗布し、多数の皺を付けた
低吸水性シートを該台板上に重合させて圧接せし
めた後、該シートを台板から剥離し、シートに付
着した着色剤を乾燥させた後で該シートの皺を延
ばすことを特徴とするものである。

［発明の具体例］ 以下、本発明の製造方法についてさらに具体的
に説明する。

本発明の方法においては、まず、金属やガラ
ス、陶器、紙、デコラ等の非透水性素材からなる
表面が平滑な台板を用意し、この台板上に着色剤
を塗布する。この着色剤は、台板上を容易に流動
し得る程度に低粘度のものが好ましく、それを台
板に塗布する場合は、刷毛等を使用して薄くのば
しながら行うのが良い。

上記着色剤としては、油絵具、水性絵具、アク
リル絵具、ポスターカラー、水性泥絵具、墨汁、
インクなどの任意のものを用いることができ、こ
れらを単独で、あるいは数種を混合して使用す
る。その際、着色剤の粘度や濃度が高すぎる場合
には、それを灯油や水等の着色剤に合つた溶媒で
稀釈することにより、その粘度及び濃度を適当に
調整してから使用する。逆に、水性絵具やインク
などのように粘度が非常に低いものの場合には、
通常の糊やゴム糊、ふ糊等の増粘剤を加えて粘度
を高めることもできる。

次に、多数の皺を付けたシートを上記台板上に
重合し、それを手やその他の道具を使用して皺を
延ばすように押圧しながら台板に全面的に圧接さ
せ、その後で該シートを台板から剥離する。

このとき、皺のあるシートがその皺を伸ばされ
ながら台板に押付けられるため、該シートの不規
則な動きと皺の下に封じ込められた空気の爆発的
な移動とによつて着色剤が不規則な方向に流動せ
しめられることになり、しかも、その後のシート
が若干皺を有する状態に復元する際の着色剤の動
きによつても、皺の大小や深さなどに応じた該着
色剤の密度差が生じ、而して、連続し且つ変化に
富んだ不規則模様が形成される。

また、上記シートを台板から剥離する際には、
その剥離方向に着色剤が流動しようとするが、シ
ートに形成されている多数の皺の稜線によつて着
色剤の均一な流れが遮られると共に、これらの稜
線に沿つて着色剤が不規則な方向に拡散せしめら
れるため、より変化のある連続模様が形成される
ことになる。

なお、上記シートの剥離は、その端部から行つ
ても、あるいは中間部分から行つてもよい。

ここで、本発明において好適に使用し得るシー
トとしては、表面が滑らかで着色剤の付着性及び
流動性が良く、且つ吸水性が低く、しかも、皺を
付すことによつて傷が付かないものであればどの
ような素材のものでも良く、例えば、合成樹脂系
の紙やアート紙、ろう引き紙、つや紙、等が最も
適しているが、紙以外の薄いゴムシートや、なめ
した皮革等を使用することもできる。この場合、
薄いシートを使用するほど繊細な画像を得ること
ができる。

また、上記シートに対する皺付けは、手動的ま
たは機械的な任意の方法で行うことができ、その
皺の形状や大きさ、方向も、規則的であつても不
規則的であつてもよく、なかでも最も簡単な皺付
け方法は、シートを手で揉んで不規則な皺を付け
る方法である。そして、このように皺を付すこと
によつて得られる画像は、皺の形状や大きさ、方
向等の差異によつて趣きの異なつたものとなり、
また、微細な皺を付けるほど繊細な画像を得るこ
とができる。

而して、台板から剥離されたシートには、上述
したようにして皺に応じた模様が形成されている
が、これらの模様を部分的に消したり変形させる
などの補修を行う場合には、着色剤が乾燥する前
に種々の型を１回または複数回シートに押し付け
ることにより、その型に合わせた補修を行うよう
にする。

続いて、上記シートを着色剤が完全に乾くまで
乾燥させ、その後で、適宜のプレス手段を用いて
熱プレスすることにより皺を延ばし、これによつ
て所期の絵画を得る。ここで、得られた絵画の表
面を灯油などの溶媒で拭くことにより、透明感を
出すことができる。

上記熱プレスには、家庭用のアイロンなどを使
用することができるが、好ましくは、シートより
加圧面積の大きいプレス手段を用いて該シートの
全面を同時に熱プレスするのが望ましい。特に、
合成樹脂系の紙などのように熱に弱いシートを使
用している場合には、該シートより加圧面積の小
さいプレス手段を使用すると、シートの伸縮度に
部分的な差を生じてシートが変形し易いので、好
ましくない。

このようにして得られた絵画は、必要に応じて
台紙等に貼着し、額縁などに納めて観賞用として
使用したり、あるいは、服地や壁紙等に模様を付
ける場合の原画として使用する。

次に、本発明の実施例について説明する。

＜実施例＞ 材料として、 台 板……ガラス製のもの。

シート……合成樹脂系の紙。

着色剤……油絵具と速乾性絵具とを同量混合
し、それを灯油で濃い墨汁程度に
稀釈したもの。

を用意した。

まず、上記台板の上面に着色剤を刷毛で薄く延
ばしながら塗布した。

次に、シートを手で細かく揉んで不規則な皺を
付け、このシートを台板上に重合させた後、手で
押圧することにより台板に全面的に圧接させ、そ
の後で該シートを台板から剥離した。その剥離
は、シートを一側から順次持ち上げることにより
行つた。

剥離したシートは、着色剤を約１日半かけて自
然乾燥させ、それが完全に乾いてから熱プレスを
施し、皺を延ばした。

かくして得られた絵画における画像は、皺の大
きさや形状、方向等に応じて模様が不規則に連続
する非常に変化に富んだものであり、しかも、そ
の濃淡及びシヤープな輪郭によつて立体感の強い
ものであつた。

［発明の効果］ このように、本発明によれば、シートに予め皺
を付し、このシートにデカルコマニーの技法を施
すようにしたので、該皺に起因するシートの動き
や着色剤の不規則な流動等によつて、従来の方法
では得られない変化に富んだ画像を得ることがで
きる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 金属やガラス、陶器等の非透水性素材からな
   る平滑な台板上に着色剤を塗布し、多数の皺を付
   けた低吸水性シートを該台板上に重合させて圧接
   せしめた後、該シートを台板から剥離し、シート
   に付着した着色剤を乾燥させた後で該シートの皺
   を延ばすことを特徴とするデカルコマニーによる
   絵画の製造方法。