JPH0322482Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はロータリピストンエンジンのシール構
造に関し、さらに詳しくはサイドシールの構造に
関するものである。

（従来技術） 一般にロータリピストンエンジンにおいては、
ロータ側面とサイドハウジング摺動面との間にお
けるガスシール性を確保するために該ロータ側面
に該ロータの外周形状に沿う如く円弧状（弓形
状）に一体形成されたサイドシールを装着してい
る（例えば、特開昭58−5432号公報参照）。

ところで、近年の如くエンジンの高出力比の傾
向が高まる状況下においては、ロータ摺動部にお
ける潤滑条件が従来に比してより一層厳しくなる
ことが予想される。

ところが、従来のサイドシールはこれを焼結合
金製とするのが一般的であつたため、高出力化を
図つたエンジンにこのような比較的耐摩耗性が低
い焼結合金製のサイドシールを採用した場合には
該サイドシールの摩耗が著しく増大し、ロータ側
部におけるガスシール性能が極端に低下すること
となる。

一方、サイドシールのシール性を向上させるた
め、特開昭48−17006号公報に示されているよう
に、異種材料からなる複数のシール片を重ねてシ
ール溝に配設したものがあるが、これだけではシ
ール片の耐久性が不十分である。

（考案の目的） 本考案は上記従来技術の項で指摘した問題点を
解決しようとするもので、高水準のガスシール性
能を長期に亘つて維持し得るようなロータリピス
トンエンジンのシール構造を提案することを目的
とするものである。

（目的を達成するための手段） 本考案は上記の目的を達成するための手段とし
て、トロコイド内周面を有するロータハウジング
と該ロータハウジングの両側面に締着固定される
一対のサイドハウジングとで囲繞されるロータ室
内に、略多角形状を有し且つその頂部にアペツク
スシールを、またその側面に形成した円弧状のサ
イドシール受溝内に円弧状に湾曲形成されたサイ
ドシールをそれぞれ取付けてなるロータを収容
し、該ロータを上記ロータ室内において上記アペ
ツクスシールを上記ロータハウジングのトロコイ
ド内周面にまた上記サイドシールを上記サイドハ
ウジングの摺動面にそれぞれ摺接せしめた状態で
偏心軸の回りで遊星回転させるようにしたロータ
リピストンエンジンにおいて、上記サイドシール
を、セラミツク材により円弧状に一体形成され且
つ上記サイドシール受溝への嵌装状態においては
その頂面が上記サイドハウジングの摺動面に摺接
せしめられる摺接部材を基材とし且つ該摺接部材
の内外２つの円弧状側面のうち、少なくとも上記
サイドシール受溝の相対向する内、外両周壁のう
ちの内側周壁に対向する内側の円弧状側面に略帯
状の金属板部材を接合して構成したものである。

（作用） 本考案では上記の手段により、 (1) サイドシールの嵌装状態においては耐摩耗性
に優れたセラミツク材よりなる摺接部材がサイ
ドハウジング摺動面に摺接し該サイドハウジン
グ摺動面との間におけるガスシールを行なうた
め、例えばエンジンの高出力化等により摺動面
の潤滑条件が厳しくなつた状況下においても該
サイドシールの摩耗が可及的に抑制される。

(2) 摺接部材の側面に接合した金属板部材により
該摺接部材の撓曲変形が抑制され、それだけ該
摺接部材のクラツク発生が可及的に防止され
る、等の作用が得られる。

（実施例） 以下、第１図ないし第４図を参照して本考案の
好適な実施例を説明する。

第１図及び第２図には本考案の実施例に係るロ
ータリピストンエンジンに装着されるロータ１が
示されている。

ロータ１は、適宜厚さを有する略三角体で構成
されており、その三つの外周面１６，１７，１８
はそれぞれ外方に向つて膨出する略円弧面とされ
ている。又、このロータ１は、その両側の外周コ
ーナ部をその全周に亘つて略Ｌ字断面を有する如
く切欠いて切欠溝２７（第３図参照）とするとと
もに、この切欠溝２７に、矩形断面を有し且つ上
記ロータ１の外周形状に沿う如く略円弧状に一体
形成されたセラミツク材（例えばSi₃N₄）よりな
るセラミツクピース８，８…を、その内側円弧面
８ａと上記切欠溝２７のロータ径方向内壁面２７
ｂとの間に適宜大きさの隙間１０を形成するよう
にして該切欠溝２７のロータ軸方向壁面２７ａに
接合固定している。このセラミツクピース８によ
つて形成された円弧状の隙間１０はサイドシール
受溝として機能するものであり、以下、これをサ
イドシール受溝１０という。

このようにして構成された片側３本、合計６本
のサイドシール受溝１０，１０…には、それぞれ
後述する本考案の主体となるサイドシール５，５
…がスプリング９によつてバツクアツプされた状
態で嵌装されている。

又、ロータ１の３つの頂部１１，１２，１３に
はそれぞれアペツクスシール３とコーナシール
４，４…が設けられている。さらに、ロータ１の
側面１４，１５の上記サイドシール５，５…より
ロータ径方向内側位置には、２本のオイルシール
６，７がそれぞれ同心状に設けられている。

上記サイドシール５は、第４図に示す如くセラ
ミツク材（たとえばSi₃N₄）で円弧状に一体形成
された摺接部材５１を基材としその摺接部材５１
の内・外一対の円弧状側面５１ｂ，５１ｃのう
ち、内側側面５１ｃに、薄い金属板で帯状に形成
された金属板部材５２を接合（金属接合）して構
成されている。この摺接部材５１と金属板部材５
２との接合に際しては、該摺接部材５１の頂面５
１ａが金属板部材５２の頂面５２ａよりも僅かに
上方に突出するようにしている。

又、このサイドシール５の内側側面５ａの曲率
は、上記ロータ１のサイドシール受溝１０の径方
向内側に位置する内側周壁１０ａの曲率にほぼ合
致せしめられている。さらに、このサイドシール
５の厚さ寸法は、上記サイドシール受溝１０の溝
幅よりも適宜寸法だけ小さく設定されており、該
サイドシール５の上記サイドシール受溝１０への
嵌装状態においては該サイドシール５の摺接部材
５１の外側側面５１ｂとサイドシール受溝１０の
外側周壁１０ｂとの間に適宜大きさのガス導入路
２４が形成される。

上述の如く構成されたサイドシール５は、第２
図及び第３図に示す如くロータ１のサイドシール
受溝１０内に、スプリング９によつてバツクアツ
プされた状態で嵌装されており、該ロータ１のロ
ータ室２２への収容状態においては該スプリング
９のバネ力によつて常時摺接部材５１の頂面５１
ａを該ロータ１の側面１４，１５に近接対向する
左右一対のサイドハウジング２，２の摺動面２１
に当接せしめられている。

この状態でエンジンが運転され、ロータ１が偏
心軸（図示省略）の回りで遊星回転すると、サイ
ドシール５は、上記スプリング９のバネ力とエン
ジンの作動室から導入される作動ガスＧのガス圧
力とによつて摺接部材５１の頂面５１ａがサイド
ハウジング２の摺動面２１に押圧付勢された状態
で該摺動面２１上を摺動し、ロータ１側面側にお
けるガスシール作用を行なう。

この場合、サイドシール５の摺接部材５１が優
れた耐摩耗性を有するセラミツク材で構成されて
いるため、例えばエンジン出力の高出力化を図つ
たためエンジン摺動部における潤滑条件が厳しく
なつているようなロータリピストンエンジンであ
つたとしても、該サイドシール５の摩耗が可及的
に抑制され、高水準のガスシール性が、しかも長
期に亘つて維持されることとなる。尚、このよう
なセラミツク材よりなる摺接部材５１を採用した
ことによる効果は、例えば、サイドハウジング２
の摺動面２１をセラミツク材（たとえばSi₃N₄）
で構成した場合の如く該摺動面２１の壁温がより
一層高くなりこの部分の潤滑条件がさらに厳しく
なるようなエンジンに適用する場合により顕著と
なる。

一方、このサイドシール５は、ロータ１の回転
に伴つてサイドハウジング２の摺動面２１上を摺
動する際、両者間の摩擦抵抗により内・外方向へ
撓曲変形する荷重を受けるが、実際には該サイド
シール５の内側側面５ａの曲率がサイドシール受
溝１０の内側周壁１０ａの曲率とほぼ同じとされ
ているため、該サイドシール５はほとんど内側へ
は曲がらず、外側への撓曲作用を受ける。従つ
て、引張り荷重には弱く圧縮荷重に強いという強
度上の特性を有するセラミツク材よりなる摺接部
材５１は上記撓曲作用によつて引張力を受ける内
側側面５１ａ側からクラツクが発生し、破損に至
るというおそれがある。

ところが、この実施例のものにおいては、この
クラツク発生の起点となる摺接部材５１の内側側
面５１ｃ側に適度の抗張力を有する金属板部材５
２が接合されているため、上記引張力がこの金属
板部材５２により支持され、摺接部材５１のクラ
ツク発生が効果的に防止されることとなる。従つ
て、該サイドシール５によるガスシール性能が維
持されるとともに、サイドシール５の耐久性が向
上せしめられる。

尚、このように摺接部材５１の内側側面５１ｃ
のみに金属板部材５２を接合しても上述の如く該
摺接部材５１のクラツク発生を十分に抑えること
ができるわけであるが、本考案はこれに限定され
るものでなく、例えば上記構成に加えて摺接部材
５１の内側側面５１ｂ側にも金属板部材５２を接
合することもできるものであり、このようにした
場合には、上記構成時に増してより高水準のクラ
ツク抑制効果が得られることとなる。

さらに、この実施例のサイドシール５のよう
に、その摺接部材５１の内側側面５１ｃのみに金
属板部材５２を接合することは、該金属板部材５
２の熱劣化という点において有効である。即ち、
サイドシール５は常に燃焼ガスのガス圧力によつ
てサイドシール受溝１０の内側周壁１０ａ側に当
接せしめられているため、該内側周壁１０ａ側に
位置する金属板部材５２にはほとんど燃焼ガスは
接触せず、常に高温の燃焼ガスに晒される摺接部
材５１に比してその熱的条件が良く、それだけ該
金属板部材５２の熱劣化が抑制されることとな
る。

また、サイドシール５の摺接部材５１をセラミ
ツク材で構成すると、上記ロータ１の外周コーナ
部にセラミツク材よりなるセラミツクピース８を
設けたこととの相乗作用により、排気エミツシヨ
ンの向上効果が得られる。即ち、サイドハウジン
グ２の摺動面２１とロータ１側のセラミツクピー
ス８とサイドシール５で囲繞された環状隙間２５
にも燃焼ガスＧが流入するが、この場合、ロータ
１とサイドシール５がともに熱伝導率の大きい金
属材料で構成されていると上記環状隙間２５内に
流入した燃焼ガスは周囲の壁面によつて冷却され
てそのガス温度が下がり、未燃炭化水素（HC）
が発生することになる。

ところが、この実施例の如くロータ１の外周コ
ーナ部にセラミツクピース８を設け、さらにサイ
ドシール５の摺接部材５１をセラミツク材で構成
した場合には、上記環状隙間２５の周囲の壁面が
断熱構造とされるため燃焼ガスのガス温度の低下
が少なく、該燃焼ガスの温度をHCの酸化反応温
度以上に保持して該HCの発生を抑制することが
可能となる。即ち、上記環状隙間２５がクエンチ
ゾーン化するのが効果的に防止される。

（考案の効果） 本考案のロータリピストンエンジンのシール構
造は、トロコイド内周面を有するロータハウジン
グと該ロータハウジングの両側面に締着固定され
る一対のサイドハウジングとで囲繞されるロータ
室内に、略多角形状を有し且つその頂部にアペツ
クスシールを、またその側面に形成した円弧状の
サイドシール受溝内に円弧状に湾曲形成されたサ
イドシールをそれぞれ取付けてなるロータを収容
し、該ロータを上記ロータ室内において上記アペ
ツクスシールを上記ロータハウジングのトロコイ
ド内周面にまた上記サイドシールを上記サイドハ
ウジングの摺動面にそれぞれ摺接せしめた状態で
偏心軸の回りで遊星回転させるようにしたロータ
リピストンエンジンにおいて、上記サイドシール
を、セラミツク材により円弧状に一体形成され且
つ上記サイドシール受溝への嵌装状態においては
その頂面が上記サイドハウジングの摺動面に摺接
せしめられる摺接部材を基材とし且つ該摺接部材
の内外２つの円弧状側面のうち、少なくとも上記
サイドシール受溝の相対向する内、外両周壁のう
ちの内側周壁に対向する内側の円弧状側面に略帯
状の金属板部材を接合して構成したことを特徴と
するものである。

従つて、本考案のロータリピストンエンジンの
シール構造によれば、 (1) サイドシールの嵌装状態においては耐摩耗性
に優れたセラミツク材よりなる摺接部材がサイ
ドハウジング摺動面に摺接し該サイドハウジン
グ摺動面との間におけるガスシールを行なうた
め、例えばエンジンの高出力化等により摺動面
の潤滑条件が厳しくなつた状況下においても該
サイドシールの摩耗が可及的に抑制される、 (2) 摺接部材の側面に接合した金属板部材により
該摺接部材の撓曲変形が抑制され、それだけ該
摺接部材のクラツク発生が可及的に防止され
る、 等のことから、該サイドシールとサイドハウジン
グ摺動面との間におけるガスシール性能が高水準
に且つ長期に亘つて維持されるという効果が得ら
れる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例に係るシール構造を有
するロータリピストンエンジンにおけるロータの
側面図、第２図は第１図の−要部縦断面図、
第３図は第２図の部拡大図、第４図は第１図に
示したサイドシールの斜視図である。 １…ロータ、２…サイドハウジング、３…アペ
ツクスシール、４…コーナシール、５…サイドシ
ール、６…オイルシール、７…オイルシール、８
…セラミツクピース、１０…サイドシール受溝、
５１…摺接部材、５２…金属板部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. トロコイド内周面を有するロータハウジングと
   該ロータハウジングの両側面に締着固定される一
   対のサイドハウジングとで囲繞されるロータ室内
   に、略多角形状を有し且つその頂部にアペツクス
   シールを、またその側面に形成した円弧状のサイ
   ドシール受溝内に円弧状に湾曲形成されたサイド
   シールをそれぞれ取付けてなるロータを収容し、
   該ロータを上記ロータ室内において上記アペツク
   スシールを上記ロータハウジングのトロコイド内
   周面にまた上記サイドシールを上記サイドハウジ
   ングの摺動面にそれぞれ摺接せしめた状態で偏心
   軸の回りで遊星回転させるようにしたロータリピ
   ストンエンジンにおいて、上記サイドシールが、
   セラミツク材により円弧状に一体形成され且つ上
   記サイドシール受溝への嵌装状態においてはその
   頂面が上記サイドハウジングの摺動面に摺接せし
   められる摺接部材を基材とし且つ該摺接部材の内
   外２つの円弧状側面のうち、少なくとも上記サイ
   ドシール受溝の相対向する内、外両周壁のうちの
   内側周壁に対向する内側の円弧状側面に略帯状の
   金属板部材を接合して構成されていることを特徴
   とするロータリピストンエンジンのシール構造。