JPH0311457Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の利用分野〕 本考案は空気等の気体を潤滑剤とする動圧型ス
ラスト気体軸受の改良に関するものである。

〔考案の背景〕

空気等の気体を潤滑剤とする動圧型スラスト気
体軸受の中で、軸受面が可撓性のフオイルで形成
されるフオイル式の先行技術として、特開昭55−
166524号、米国特許4227752号公報等に開示のも
のが挙げられる。すなわち、第１１図ａ，ｂは米
国特許4227752号公報に開示の動圧型スラスト気
体軸受に近い側の構造を示すもので、ベースプレ
ート１には軸受セグメント２が円周上に複数個固
定され、軸受を構成している。また、軸受セグメ
ント２は第１１図ｂで示すように、ベースプレー
ト１上に配設されかつ弾性特性を有する波形状の
バンプフオイル３、該バンプフオイル３によつて
支持されるトツプフオイル４およびベースプレー
ト１に固定されたスペーサ５とから構成され、さ
らにトツプフオイル４はスペーサ５に固定されて
いる。なお、スペーサ５の高さは、バンプフオイ
ル３の高さより僅かに小さくなつている。

回転軸（図示せず）に固定されているスラスト
ランナー６が第１１図ｂ中矢印Ａ方向に回転する
と気体の粘性のために、周囲の気体がスラストラ
ンナー６とトツプフオイル４の間の微少隙間に引
き込まれ、くさび膜作用により前記隙間内に引き
込まれた気体が圧縮され、圧力を発生し、これに
よつて回転軸を軸方向に非接触に支承するように
なつている。これをさらに詳述すれば、スラスト
ランナー６が回転すると、周囲の気体がスラスト
ランナー６により引き込まれて、該スラストラン
ナー６とトツプフオイル４の間に気体膜のくさび
膜を形成し、これによつてスラストランナー６は
トツプフオイル４から浮上することになり、高速
回転可能となる。なお回転軸が停止しているとき
は、スラストランナー６は、トツプフオイル４に
固体接触している。

しかるに、スラストランナー６の回転が低いと
きは、くさび膜作用によつて発生する気体膜の圧
力は小さいので、最初からくさび膜を形成し易く
かつその形状が適正なものでなければならない。
しかしながら、米国特許4227752号公報に示すよ
うに、バンプフオイル３の波形の高さが前縁側か
ら後縁側にわたつて略同じ高さとなつているよう
な気体軸受の構造では、スラストランナー６の回
転が低いときスラストランナー６とトツプフオイ
ル４の間にくさび膜を形成し難く、又くさび膜の
形状が適正なものにならないという欠点がある。
したがつて、十分き気体膜の圧力を得ることがで
きず、スラストランナー６とトツプフオイル４の
間には十分な気体膜圧力が発生しない。この結
果、十分な支持力が得られず、固体接触が避けら
れず、よつて軸受性能が劣悪になり、固体接触に
よる耐久性、信頼性が劣るという欠点があつた。
また、スラストランナー６が高速回転している場
合、発生する圧力は後縁側すなわち矢印Ａの進行
方向に向つて圧力は大きくなるので、バンプフオ
イル３の撓みが大きくなり、必ずしも最適な気体
膜形状を形成できないため、支持力すなわち軸受
の負荷容量が小さいという欠点もあつた。さら
に、回転軸に大きな変動荷重や衝撃荷重が作用し
た場合、バンプフオイル３が異常に大きな変形
（撓み）を生じ、これによつてバンプフオイル３
の弾性限界を超えて変形し、該バンプフオイル３
に永久変形が生じたり、へたりが生じたりして、
適正な気体膜を形成できなくなるおそれがあつ
た。

また、第１２図は剛体面で軸受面を形成する動
圧形スラスト軸受の代表的な従来例で、第１１図
ａの軸受セグメント２がパツド７で構成されてい
る。そして、このパツド７の軸受面はくさび膜作
用による気体膜圧力を得るため、例えば段差状に
成る軸受面７ａ，７ｂより形成され、前縁側の軸
受面７ａの方が後縁側の軸受面７ｂより高さが僅
かに低くなるよう構成されている。

しかしながら、以上のような従来構造において
は、軸受面７ａ，７ｂが剛体面でかつベースプレ
ート１に剛性支持されているので、（）スラス
トランナー６が傾いた場合、軸受隙間が局部的に
大きくなる部分と小さくなる部分が生じ、小さく
なる部分はスラストランナー６とパツド７とが接
触するおそれがある、（）スラストランナー６
およびスラストランナー６が固定されている回転
軸の動き（傾き、移動）に軸受面７ａ，７ｂが追
随できないため、適正軸受隙間を確保できず、よ
つて適正な気体膜圧力が得られない、（）適正
な軸受隙間にセツトするための組付けが難しい、
等の欠点があつた。

〔考案の目的〕

本考案の目的は上述した欠点に鑑みなされたも
ので、耐久性の向上および負荷容量の増大を図る
ようにした動圧型スラスト気体軸受を提供するに
ある。

〔考案の構成〕

このような目的を達成するために、本考案は、
波形状に成るバンプフオイルの波形の高さを前縁
側から後縁側に向つて途中位置まで漸次高くなる
よう形成すると共に、この途中位置から後縁位置
まで漸次低くなるよう形成し、かつ該バンプフオ
イル上には軸受面が略突状に成る剛体のベアリン
グパツドを配置した構造としたものである。

以下、図に示す実施例を用いて本考案の詳細を
説明する。

〔考案の実施例〕

第１図は本考案に係る動圧型スラスト気体軸受
の一実施例を示す要部断面図、第２図は同動圧型
スラスト気体軸受の一部平面図である。ベースプ
レート１０には、第２図に示すように、軸受セグ
メント１１が円周方向に等間隔おきに複数個固定
されており、また該軸受セグメント１１は第１図
に示すように構成されている。すなわち、該軸受
セグメント１１は、ベースプレート１０に固定さ
れかつ弾性を有する波形状のバンプフオイル１２
と、該バンプフオイル１２の上面に固定された剛
体から成るベアリングパツド１３とから構成され
ている。また該ベアリングパツド１３には、回転
軸（図示せず）に固定されたスラストランナー１
４が対面するごとく配置されており、該ベアリン
グパツド１３のスラストランナー１４と対面する
面は軸受面１３ａを構成している。

さらに、本実施例においてバンプフオイル１２
の高さは、第１図および第３図に示すごとく、前
縁側の波形部１２ａの高さが最も低くなるよう形
成されると共に、次第にその高さが高くなるよう
形成され、中央部近傍でその波形部１２ｂの高さ
がピークとなり、さらに後縁側に向つて漸次低く
なるよう形成されており、したがつてバンプフオ
イル１２は突形状すなわちクラウン形状を呈する
ごとく形成されている。ただし、後縁側の波形部
１２Ｃの高さは前縁側の波形部１２ａの高さより
高くなるよう形成されている。また、バンプフオ
イル１２上に固定されたベアリングパツド１３は
その軸受面１３ａがバンプフオイル１２と同じよ
うに、第１図および第３図に示すごとく、上方
（スラストランナー１４側）に向つて突形状すな
わちクラウン形状を呈するよう形成されており、
したがつて、第１図、第２図に示すごとく軸受セ
グメント１１を構成したとき、前縁側の軸受隙間
（δ_L）が後縁側の軸受隙間（δ_T）より大きくなつ
ている（第３図参照）。なお、本実施例において
ベアリングパツド１３はバンプフオイル１２にス
ポツト溶接で固定されている。

したがつて、以上のように構成された動圧型ス
ラスト気体軸受にあつては、回転軸に固定された
スラストランナー１４が回転（第１図において矢
印Ｂ方向への移動）すると、周囲の気体は気体の
粘性のため、スラストランナー１４とベアリング
パツド１３の軸受面１３ａとで形成される微少隙
間に引き込まれ、くさび膜作用により圧力を発生
し、スラストランナー１４を気体膜を介して非接
触に高速回転可能に支承する。

しかるに、動圧型スラスト気体軸受では、スラ
ストランナー１４の回転の低い運転条件、すなわ
ち始動時および低速回転時に、スラストランナー
１４とベアリングパツド１３の軸受面１３ａの間
に気体膜圧力が生じ易いくさび膜を形成すること
がきわめて重要である。そして、低回転時には、
発生する気体膜の圧力が小さいので、初期のくさ
び膜を形成しておくことが必要である。しかし
て、回転の初期に適正なくさび膜が形成し易い軸
受隙間の形状になつていない場合、気体膜のくさ
び膜作用による圧力が発生せず、したがつてスラ
ストランナー１４とベアリングパツド１３の軸受
面１３ａは固定接触を続けて、スラストランナー
１４を浮上させることができない。これは、起動
摩擦抵抗が大きいだけでなく、軸受の破損を生じ
る原因ともなる。オイルに比べて粘性係数がきわ
めて小さく、圧縮性の気体の場合、回転初期の軸
受隙間のくさび形状は必須の条件である。

しかるに、本実施例にあつては、ベアリングパ
ツド１３の軸受面１３ａの形状が第１図、第３図
に示すように前縁側で低く後縁側に向つて漸次傑
高くなるような突形状、いわゆるクラウン形状と
なつているので、スラストランナー１４が回転せ
ず停止しているときは、自重その他外力によりベ
アリングパツド１３にスラストランナー１４が押
圧された場合でも、スラストランナー１４とベア
リングパツド１３の軸受面１３ａの間には、くさ
び形状の軸受隙間が形成できることになる。した
がつて、スラストランナー１４が回転し始めたと
き、このくさび形の微少隙間に周囲の気体が引き
込まれ、段々小さくなる隙間に引き込まれること
によつて、すなわちくさび膜作用によつて気体膜
の圧力発生が容易となる。

また、スラストランナー１４の回転数が大きい
場合、気体膜圧力は第４図に実線（なお、破線は
従来の場合を示す。）で示すようになる。すなわ
ち、くさび膜作用により発生する気体膜圧は、前
縁から後縁にかけて後縁寄りに圧力のピークを形
成する。そして、バンプフオイル１２は、この気
体膜圧力によつて撓み、後縁寄りに大きい圧力分
布を受けることにより後縁側のバンプフオイル１
２の撓めは大きくなる。しかしながら、本実施例
では、ベアリングパツド１３の軸受面１３ａにお
いて後縁側より前縁側の方が低くなつているの
で、気体膜圧力の大きいバンプフオイル１２の後
縁側の方が僅かに撓むことによつて、スラストラ
ンナー１４とベアリングパツド１３の間の軸受隙
間において、微少隙間の領域が広くなる。したが
つて、気体膜圧力は第４図に示すように高圧の領
域が広くなり、軸受の支持力、すなわち負荷容量
の大きい軸受を実現できる。また、本実施例では
ベアリングパツド１３が剛体で形成されているの
で従来のトツプフオイル４（第１１図ｂ参照）よ
り耐摩耗性、定衝撃性に優れるという利点があ
る。加えて、該トツプフオイル４のようにへたり
等の変形が生じないので、長時間の信頼性・耐久
性に優れるという利点も有する。

なお、ベアリングパツド１３の軸受面１３ａに
セラミツクのコーテイング（スパツタリング、イ
オンブレーテイング又はプラズマ溶射等の手段に
よる）を施す構成とすれば、始動、停止時におけ
るスラストランナー１４との固体接触による摩擦
耐久性を確保することができる。

また、第５図は本考案に係る動圧型スラスト気
体軸受の他の実施例を示すもので、ベースプレー
ト１０に、該ベースプレート１０とバンプフオイ
ル１２との間に位置するごとくペデスタル１５を
設けた構成としたものである。

このような構成においては、例えば回転軸に大
きな変動荷重あるいは衝撃荷重がかかつた場合、
スラストランナー１４はベアリングパツド１３の
軸受面１３ａに急激かつ大きな変位で接近する。
そのため、バンプフオイル１２に大きな反力が気
体膜を介して作用することになり、バンプフオイ
ル１２の撓みが大きくなる。そして、バンプフオ
イル１２が弾性限界を越えて変形すると、永久変
形を生じて元の形状に復さなくなつたり、さらに
はへたりを生じて高さが小さくなつてしまう。そ
の結果、バンプフオイル１２の耐久性が劣化する
だけでなく、スラストランナー１４とベアリング
パツド１３の軸受面１３ａの間の軸受隙間も適正
でなくなり、軸受性能が劣化してしまう。また、
バンプフオイル１２が余り大きい変形を生じる
と、スラストランナー１４とベアリングパツド１
３の軸受面１３ａの間にはくさび形状の軸受隙間
がもはや形成されなくなり、したがつて、くさび
膜作用による気体膜圧力が発生せず、軸受として
の性能がなくなつてしまう。しかしながら、本実
施例ではペデスタル１５を設けることにより、バ
ンプフオイル１２の変動を規制することができる
ので、上記不具合は全く生じない。なお、本実施
例のごとくペデスタル１５の位置をベアリングパ
ツド１３の軸受面１３ａが最も突出している近傍
に配設することにより、大きな変動荷重や衝撃荷
重がかかつたときピボツトパツド軸受の作用が得
られることにより、支持力を大きくできるという
効果が得られる。

また、第６図はペデスタル１５を２個配設した
もので、一個は前記実施例と同じくベースプレー
ト１０とバンプフオイル１２の略中央部との間、
もう一個はベースプレート１０とバンプフオイル
１２の前縁側との間に配設された構造となつてい
る。すなわち、この第６図に示すものは第５図の
作用・効果を２点で持たせたもので、スラストラ
ンナー１４の傾き等の大きい場合に有効である。

また、第７図はバンプフオイル１２の外周側の
高さ（Hout）を内周側の高さ（Hin）より僅か
に大きくした構成の実施例である。これをさらに
詳述すれば、スラストランナー１４の回転により
引き込まれた気体は軸受隙間でくさび膜作用をせ
ず、遠心力により外周側から流出するので、気体
膜圧力の発生が小さくなる。また、外周側は内周
側より周速が大きいので、発生する圧力は大き
い。したがつて、本実施例のように、バンプフオ
イル１２の外周側の高さを内周側の高さより大き
くすることにより、遠心力による気体の流出を防
止でき、発生圧力を大きくできる。さらに、外周
側は発生圧力が大きいので、バンプフオイル１２
のより大きい撓みが生じても、軸受隙間を適正に
保つことができ、よつて支持力の大きい気体軸受
を得ることができる。

さらに、第８図〜第１０図はそれぞれベアリン
グパツド１３の他の実施例を示すもので、第８図
および第９図はベアリングパツド１３の軸受面１
３ａを略中央部位置から後縁部分にかけて平担面
状に形成したものであり、また、第１０図のもの
はベアリングパツド１３の軸受面１３ａが第１図
および第３図に示す実施例と同じくクラウン形状
に形成されたものである。なお、第９図および第
１０図に示すベアリングパツド１３においては軸
受面１３ａと反対側の背面１３ｂが平担面状に形
成されている。以上のような構成としても前記第
１実施例と略同一効果が得られることは勿論であ
る。なお、第８図〜第１０図においてδ_Lは前縁側
の軸受隙間、δ_Tは後縁側の軸受隙間を示す。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案によれば、スラスト
ランナーと対向するベースプレートに複数個の軸
受セグメントが円周方向に等間隔おきに配設さ
れ、該軸受セグメントは、ベースプレート上に配
設されかつ弾性を有する波形状のバンプフオイル
を備えて成る動圧型スラスト気体軸受において、
前記バンプフオイルはその波形の高さが前縁側か
ら後縁側に向つて途中位置まで漸次高くなるよう
形成されると共に、この途中位置から後縁位置ま
で漸次低くなるよう形成され、かつ該バンプフオ
イル上には軸受面が略突状に成る剛体のベアリン
グパツドが配置されて成る構成とした。したがつ
て、このような構成としたことにより、回転軸の
始動および低回転時における気体膜のくさび膜形
状を形成し易く、かつ適正なくさび膜を形成でき
るようになり、これによつて軸受の支持力を大き
くでき、固体接触を防止できるので、軸受の耐久
性を向上できるという効果を奏する。また、高回
転時にも、適正な気体膜形状を形成できるので、
負荷容量の向上を図ることができる。

さらに、大きな変動荷重や衝撃荷重に対しても
軸受性能の劣化、耐久性の劣化を防止できるの
で、耐衝撃性に優れた軸受を提供できる。加え
て、本考案においてはベアリングパツドが剛体で
形成されているため、従来のトツプフオイルを使
用した場合に較べて耐摩耗性、耐衝撃性に優れて
おり、しかもトツプフオイルのようにへたり等の
変形がないので、長時間の信頼性、耐久性に優れ
るという種々の優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る動圧型スラスト気体軸受
の一実施例を示す要部断面図、第２図は同動圧型
スラスト気体軸受の一部平面図、第３図は同動圧
型スラスト気体軸受の一部断面図、第４図は気体
膜圧力の発生を示す説明図、第５図および第６図
はそれぞれ本考案に係る動圧型スラスト気体軸受
の他の実施例を示す要部断面図、第７図はバンプ
フオイルの他の実施例を示す一部斜視図、第８図
ないし第１０図はベアリングパツドの各実施例を
示す断面図、第１１図ａ，ｂは従来の動圧型スラ
スト気体軸受の一部平面図と要部断面図、第１２
図は従来の動圧型スラスト気体軸受の他の例を示
す要部断面図である。 １０……ベースプレート、１１……軸受セグメ
ント、１２……バンプフオイル、１３……ベアリ
ングパツド、１３ａ……軸受面、１４……スラス
トランナー、１５……ペデスタル。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ スラストランナーと対向するベースプレート
   に複数個の軸受セグメントが円周方向に等間隔
   おきに配設され、該軸受セグメントは、ベース
   プレート上に配設されかつ弾性を有する波形状
   のバンプフオイルとを備えて成る動圧型スラス
   ト気体軸受において、前記バンプフオイルはそ
   の波形の高さが前縁側から後縁側に向つて途中
   位置まで漸次高くなるよう形成されると共に、
   この途中位置から後縁位置まで漸次低くなるよ
   う形成され、かつ該バンプフオイル上には軸受
   面が略突状に成る剛体のベアリングパツドが配
   設されていることを特徴とする動圧型スラスト
   気体軸受。 ２ 前記ベースプレートには、該ベースプレート
   とバンプフオイルとの間に位置するごとくペデ
   スタルが固定されて成る実用新案登録請求の範
   囲第１項記載の動圧型スラスト気体軸受。 ３ バンプフオイルの外周側の高さが内周側の高
   さより僅かに大きくなるよう形成されて成る実
   用新案登録請求の範囲第１項又は第２項記載の
   動圧型スラスト気体軸受。 ４ 前記ベアリングパツドの軸受面にはセラミツ
   クコーテイングが施されて成る実用新案登録請
   求の範囲第１項、第２項又は第３項記載の動圧
   型スラスト気体軸受。