JPH028184B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明はウオーターポンプやカークーラー用の
コンプレツサ等に用いられるメカニカルシールに
関する。

「従来の技術」 メカニカルシールは、シートリングと従動リン
グとを摺接させて、その摺接面により回転軸とケ
ーシング間のシールを行なわせるものである。と
ころで一般に、互いに摺接する摺接部材間、例え
ばシリンダをピストン間等では、同種材料による
凝着からの摺接面の荒れ、およびそれによつて若
起される焼付きを防止するために、異種材料を用
いたり、同種材料の場合には適当な表面槽を形成
して結局は異種材料の接触とする等の配慮をして
いた。従来、上記メカニカルシールのシートリン
グと従動リングとについても全く同様に考えられ
ており、通常はシートリングをカーボン材料か
ら、従動リングをアルミナ焼結材やステンレス等
の材料から構成して異種材料の接触としていた。

「発明が解決しようとする課題」 本発明者においても、異種材料の組合せを前提
として、種々の材料から成るシートリングと従動
リングとを組合わせて各種の性能実験を行なつて
きたが、シール性、低摩擦性或いは耐焼付性等の
各種性能を総合的に満足させる組合せは見出せな
かつた。また、同種材料の組合せの実験も行なわ
れたが、殆んどのものは前述したように凝着によ
り面荒れを生じさせてシール性を低下させたり摩
擦トルクを増大させたりし、最悪の場合には焼付
きに至つていた。

「課題を解決するための手段」 しかしながら、同種材料であつても、それがカ
ーボン材料とカーボン材料との組合せの場合に
は、凝着が生じても面荒れが生ずることがなく、
したがつてシール性能が低下したり焼付きが生ず
ることがないことが判明し、これに加えて、シー
ル性や低摩擦性についても異種材料の組合せのも
のより優れた結果が得られることが判明した。

すなわち、本発明は、メカニカルシールのシー
トリングと従動リングの材質を従来一般に避けら
れていた同種のカーボン材料から構成するように
したものである。

「作用」 このような構成によれば、シートリングと従動
リングとの摺接面に凝着による悪影響や焼き付き
が生じないばかりか、上述の異種材料を用いた場
合に比較して優れたシール性を得ることができ
る。

「実施例」 以下図示実施例について本発明を説明すると、
第１図において、１はウオーターポンプのケーシ
ング、２はこのケーシング１の筒状部１ａ内に挿
通してその筒状部１ａに設けた図示しない軸受に
よつて回転自在に軸支した回転軸で、この回転軸
２の左端部は図示しないプーリおよびベルトを介
して駆動源としてのエンジンに連動させている。

上記筒状部１ａの右端部にはメカニカルシール
３を設けてあり、このメカニカルシール３は回転
軸２の軸方向に変位可能な従動リング４と回転軸
２と一体に回転するが軸方向には固定されている
シートリング５とを備えている。上記従動リング
４は支持部材６の一部を構成する内側筒状部６ａ
の先端外周部にその軸方向に沿つて往復動可能に
嵌装してあり、かつ従動リング４の内周部に設け
た軸方向溝４ａに上記内側筒状部６ａの外周部に
設けた軸方向突部６ｂを係合させることにより、
両者が相対回転しないようにしている。上記支持
部材６は内側筒状部６ａの左端部から半径方向外
方に延びる壁部６ｃ、この壁部６ｃの外周より右
側に折返した外側筒状部６ｄ、およびこの外側筒
状部６ｄより半径方向外方に折曲げたフランジ部
６ｅを有しており、上記外側筒状部６ｄをシール
部材７を介して上記ケーシング１の筒状部１ａ内
に嵌着することにより、その部分の密封性を保つ
とともに上記従動リング４を回転方向に対して固
定している。

上記支持部材６の壁部６ｃ右端面にはシール部
材８の一端部を接着剤により接着してあり、この
シール部材８の他端部を、中間部を湾曲させた状
態で従動リング４の左端面に接着することによ
り、支持部材６とシートリング４間の密封性を保
つている。そしてこのシール部材８の両端部間に
ばね９を弾装することにより、上記従動リング４
をシートリング５に弾接させている。このシート
リング５は、上記回転軸２に固定したポンプ作用
を行なうためのロータ１０に形成した凹部１０ａ
内にフローテイングパツキン１１を介して取付け
てあり、これにより回転軸２とともに一体的に回
転するようにしている。なお、図示実施例とは逆
に、回転軸２に対して軸方向に変位可能な従動リ
ング４を回転軸２に設けてこれと一体回転可能と
するとともに、シートリング５をケーシング１に
取付けて固定するようにしてもよい。

以上の構成を有するウオーターポンプにおいて
は、図示しないエンジンによつて回転軸２が回転
駆動されると、これと一体のロータ１０が回転し
て水をエンジン内の各冷却部に供給する。そして
この際、水はシール部材７および８によつてシー
ルされるとともに、メカニカルシール３の従動リ
ング４とシートリング５との摺接面によつてシー
ルされるようになる。

然して本発明においては、上記従動リング４と
シートリング５とを共に従来避けていた同種材料
であるカーボン材料から構成したもので、同種材
料としてもカーボン材料のときには凝着による悪
影響や焼付きが発生しないことを確認するととも
に、従来公知のメカニカルシールに比して一層の
流体の漏洩を防止し、しかも摩擦トルクの低減を
も図ることができるようにしたものである。

第２図は従動リング４とシートリング５とを共
にカーボン材料から構成して摺接させた場合の摩
擦係数の変化を測定した実験結果を示したもので
ある。同図において、Ａが本発明に係る組合せの
結果を、Ｂ，Ｃはそれぞれ従来の組合せとした結
果を示したもので、Ｂ，Ｃともに従動リングとし
てはカーボン材料を用いているが、シートリング
としてＢではステンレス材（SUS―304）を、Ｃ
ではアルミナ焼結体を用いている。またこの実験
は下記の実験条件で行つたものである。

（実験結果） Γ試験機：機械試験所型スラスト試験機 Γ回転数：2000rpm Γ試験時間：60分 Γ荷重：５Kg Γ潤滑：水容中（80℃） Γ試験片の表面粗さ：全て0.4〜1.6Rz Γカーボン材料の組成：カーボン 65wt％ ：バインダー（フエノール）
25wt％ ：シリカ 10wt％ 第２図の実験結果に示されるように、本発明の
組合せの方が従来の組合せのものより低摩擦係数
すなわち低摩擦トルクとなつている。これは、摺
接面で凝着が生じても面荒れを生じさせることな
く従来よりも優れた低摩擦トルクを維持できるこ
とを示しており、また焼付きも発生しないことを
示している。

次に、第３図は上記各組合せのものＡ〜Ｃと、
従動リングとシートリングとをカーボン以外の同
種材料Ｄ〜Ｆから構成した場合について、下記の
実験条件で水の洩れ量を測定したものである。

（実験条件） 試験機：実体試験機 回転数：1000rpm 時間：100時間 密封流体：水＋不凍液（50％） 密封圧力：1.5Kg／cm² 第３図の実験結果に示されるように、本発明の
組合せのものＡは、異種材料の組合せからなる従
来のものＢ，Ｃおよび同種材料の組合せからなる
ものＤ〜Ｆに比較して、最大の洩れ量、平均洩れ
量並びに洩れ量の最大値と最小値との範囲ともに
小さく、優れたシール性能が得られている。

なおカーボン材料としては一般のカーボン材料
をそのまま利用することができるが、望ましい組
成としては、30〜80（より好ましくは40〜70）wt
％のカーボン、15〜45（より好ましくは25〜40）
wt％のバインダー、２〜15wt％のシリカ又はケ
イ酸塩から成るものがよく、また必要に応じて
0.5〜30wt％の鉛、0.5〜15wt％の窒化ホウ素を添
加してもよい。上記バインダーとしては従来公知
のものを用いればよいが、特にメカニカルシール
をウオーターポンプに用いる場合には、バインダ
ーとしてフエノール樹脂を用いるのが望ましい。
さらに、従動リング４とシートリング５のうち、
摺接面積の小さい方の耐摩耗性を小さくすること
が望ましい。

「発明の効果」 以上のように、本発明によれば、同種材料の摺
接でありながら凝着による悪影響や焼付きが生ず
ることがなく、加えて従来装置に比較してシール
性能の向上や摩擦トルクの低減を図ることができ
るという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す断面図、第２
図は摩擦係数を測定した結果を示す図、第３図は
洩れ量を測定した結果を示す図である。 １…ケーシング、２…回転軸、３…メカニカル
シール、４…従動リング、５…シートリング。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シートリングと、このシートリングに摺接さ
   れる従動リングとを備え、それらシートリングと
   従動リングとの摺接面で流体の漏洩を防止するメ
   カニカルシールにおいて、上記シートリングと従
   動リングとを共にカーボン材料から構成したこと
   を特徴とするメカニカルシール。