JPH0261794B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 本発明は、電気的に発熱する新規な糸状発熱体
及びその製造方法に関し、更に詳細には、可撓性
に富み、長期間の使用に耐える糸状発熱体に関す
るものである。 〔従来技術〕 従来から、機器類の保温ないし加熱用に金属細
線から成る可撓性の発熱線が使用されているが、
特に、電気毛布、電気カーペツト等民生用にも広
く普及し、その便利さから今後益々商品の多様化
が促進される趨勢にある。 従来、これらの発熱体には、ステンレス線、ニ
クロム線等の金属細線から成る抵抗体が使用され
ていたが、前記の各製品に可撓性であることを要
求される場合には、可撓性の芯に極細い抵抗線を
スパイラル状に捲き付けたもの、布帛上にカーボ
ンを樹脂バインダーにより固着させたもの等が使
用されている。しかしながら、これらは何れも、
耐屈曲性、耐摩擦性等の点で要求する性能を充た
すことができず、又、暖房用の衣料や、老人、病
人用に使用するには、なお可撓性が不足してお
り、更に、改善が要求されている。 そこで、可撓性に富む糸をカーボン粒子で被覆
した糸状の発熱体を得る各種の試みがなされてい
る。例えば、特開昭51−109321号公報の発明は、
ナイロン製のコンジユゲートフイラメント等の繊
維を膨潤させてカーボン粒子を含浸・分散させ、
加熱処理により正の電気抵抗の温度係数を持つ糸
状発熱体としたものである。この発熱体は、前記
のとおり正の抵抗温度係数としたために温度制御
装置を使用しないで済む等の特徴を持つものであ
るが、ここに開示された方法では、要求される抵
抗値のものを工業的に安定して供給することがで
きずなお改善の必要が認められる。 その他の方法としては、芯糸にカーボン粒子を
樹脂バインダーで固着させたものが提案されてい
るが、カーボン粒子の樹脂への混入量に限度があ
るので低い電気抵抗値の糸状発熱体を得ることが
できない。しかもこれらのものは、導電層が一層
で形成されているため、屈曲、摩擦等によつて樹
脂層が剥離し易く、しかも、発熱線の各部分の電
気抵抗値が均一でない等の欠点が認められ広く使
用されるに至つていない。 〔発明の目的〕 そこで、本発明は、従来の問題点を改善し、各
部の電気抵抗が均一で、しかも、可撓性に富み、
発熱体層と芯糸との接着が良好で屈曲、摩擦等に
より剥離し難く、長期間安定して使用し得る糸状
の発熱体及びその製造方法を提供することを目的
としている。 〔発明の構成〕 以上の目的を達成するための本発明の糸状発熱
体は、芯糸の周囲に、カーボン粒子を合成樹脂中
に分散させたカーボン粒子層が複数積層されて導
電層を形成していることを特徴とするものであ
る。 又、前記積層された糸状発熱体を製造する本発
明の方法は、カーボン粒子を懸濁した合成樹脂溶
液に芯糸を浸漬し、乾燥固着させてカーボン粒子
を合成樹脂中に分散含有するカーボン粒子層を前
記芯糸上に形成させ、次いで、前記と同種又は異
種のカーボン粒子を懸濁した合成樹脂溶液に浸
漬、乾燥固着することを１回以上繰り返して、前
記芯糸の周囲にカーボン粒子層を積層させること
を特徴とするものである。 次に、以上の本発明の各構成要素について順次
説明する。 本発明に使用し得る芯糸は、天然又は合成繊維
の糸条を用いことができるが、好ましくは、発熱
体として通常使用される温度、即ち、20〜100℃
の下で長期間安定した物性を与えるものとして、
熱可塑性の合成樹脂を原料とする繊維の使用が好
ましい。 前記の熱可塑性合成樹脂の使用が好ましい理由
としては、耐熱性、非吸湿性であり、耐薬品性で
ある上に熱による劣化が少ないことの外、何等か
の理由で局部的過熱が生じた場合に溶断して、一
種の温度フユーズとして作用するからである。前
記のとおり使用する素材は特に限定されないが、
好ましくは、ナイロン系、ポリエステル系、ポリ
オレフイン量系などの繊維であり、カーボン粒子
層との接着を良くするために、これらの繊維を、
好ましくは、紡績糸又はシースコアヤーンとして
使用する。紡績糸の場合、単糸よりも撚糸が好ま
しく、特に三子撚り糸を芯糸とする糸状発熱体を
用いた場合には、布帛としたときに方向ムラがな
く、品質のよい面状発熱体を得ることができる。 又、前記のシースコアヤーンは、フイラメント
を芯としてその表面に綿状の短繊維を巻き付け処
理によつて形成したものであり、表面は紡績糸様
のものである。 本発明に使用する前記合成樹脂としては、前記
記載の温度に対し安定した性能を保ち、かつ接着
性、耐屈曲性、耐摩擦性等に優れた合成樹脂なら
ば、特に制限はないが、好適に使用し得る樹脂と
しては、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、
ブチラール樹脂等が挙げられ、前記と同様の理由
で熱可塑性のものの使用が好ましい。 本発明に使用するカーボン粒子は、通常各種の
カーボンブラツクを使用することができ、粒子径
としては、通常20〜40ｍμのものが使用される。
その使用量は、前記樹脂溶液100重量部中、通常、
５〜15重量部、好ましくは、７〜12重量部が使用
される。前記５重量部以下となると、抵抗値が高
くなるので単位容積当りの発熱量が低下し、又、
前記15重量部以上となると樹脂分が不足するので
均一なコーテイングができず、しかも、耐屈曲
性、耐摩擦性等の機械的強度が低下するので好ま
しくない。 本発明の糸状発熱体は、前記のとおりカーボン
粒子層を複数層積層するものであるが、カーボン
粒子を懸濁した合成樹脂溶液（以下カーボン懸濁
液と言う）中のカーボン粒子の濃度は、必要に応
じ各積層工程毎に変更することができる。例え
ば、糸状発熱体の表面滑性を高めるためには、カ
ーボン懸濁液中のカーボン粒子の濃度を順次12重
量％、10重量％、５重量％とする等適宜に決定し
て実施できる。 本発明の糸状発熱体の抵抗値は、使用する用途
や電源電圧により発熱素子として適当な範囲が選
択され、前記合成樹脂中のカーボン含有量、積層
する層の厚さ等により該抵抗値の調節が可能であ
る。たとえば外径を0.4〜0.6mmφ、好ましくは0.5
〜0.55mmφとしたときに、ほぼ12〜14Ω／ｍの抵
抗体を得ることができる。この糸状発熱体を更に
複数本撚り合せ太くすることにより、抵抗値を小
さくすることが可能である。本発明において、前
記積層する数には、特に制限はないが、通常２〜
４層程度のものが使用される。 本発明の前記糸状発熱体は、次の各工程により
製造することができる。即ち、 ＜準備工程＞ 芯糸の準備：結び玉のない糸条を用意する。 カーボン粒子懸濁液の準備：適切な溶媒に、溶液
粘度が20〜100ポイズとなるように樹脂を溶解
し、これにカーボン粒子を懸濁させ、事前によ
く撹拌したものを、溶媒の蒸発を防ぐために糸
道以外を密閉型の容器に入れる。前記粘度は、
カーボン粒子が沈降しない範囲で作業性を考慮
して適宜選定する。 ＜コーテイング工程＞ カーボン懸濁液を撹拌しながら前記芯糸を浸漬
させた後取り出し、必要な大きさのダイスを通し
て前記懸濁液の付着量を調節する。この場合、導
電層の機械的強度を向上させるには、糸を構成し
ている各単繊維が前記カーボン懸濁液で十分に濡
れることが必要であり、そのためには、粘度のコ
ントロールとダイス径の調整が必要である。工業
的には、ボビンに巻取つた芯糸をローラ機構によ
り、連続的に引き出してカーボン懸濁液中を潜ら
せる方法を採用することが好ましい。 ＜乾燥工程＞ コーテイング工程から引き出された芯糸は、連
続して次の乾燥工程に送られる。乾燥は、通常の
通気乾燥で良いが、生産性の向上等を考慮して乾
燥空気の加温、赤外線ランプによる製品の加熱
等、乾燥を促進するために通常用いられる各種の
手段を併用することができる。 ＜積層工程＞ 本発明において、導電層を積層構造に形成する
工程が特に重要であり、具体的には、前記コーテ
イング工程と乾燥工程を所定回数繰り返して芯糸
上に合成樹脂に分散させたカーボン粒子層を年輪
状に形成させるものである。その際、前回の工程
で形成した樹脂層が溶剤に再溶解しないように前
工程の乾燥を十分に行う必要がある。 積層する各種のカーボン粒子の分散濃度あるい
は樹脂の種類が異なる場合は当然として、カーボ
ン粒子の分散濃度が同一の場合でも、工業的に実
施するときには、一般に各種層工程の含浸液をそ
れぞれ別とする方が能率的である。 ＜後工程＞ 以上によつて得た糸状発熱体は、必要に応じ電
線を被覆絶縁すると同様に表面を絶縁する。使用
される絶縁材料には、特に限定はなく、又、下地
となる導電層との接着性に問題がある場合には、
前処理として、アンダーコート材を使用する等通
常、この種の工程に使用される技術を適宜用いる
ことができる。 かくして得られた本発明の糸状発熱体は、可撓
性に富み、耐屈曲性、耐摩擦性等の機械的強度に
優れ、発熱線単位長さ当りの抵抗値が均一であ
り、各種の発熱体製品の発熱素材として有利に利
用できる。以下、実施例を掲げて本発明、及びそ
の優れた特性を具体的に説明する。 実施例 １ ポリエステル型ポリウレタン樹脂（大日精化工
業(株)製）をメチルエチルケトン（以下MEKと言
う）とジメチルホルムアミドとの混合溶媒（重量
比80：20）に濃度24重量％となるように均一に溶
解した後、平均粒径40ｍμのカーボンブラツクを
カーボン懸濁液に対して10重量％になるように添
加、分散させて得たカーボン懸濁液（以下「含浸
液」と言う）の粘度は、Ｂ型粘度計で測定したと
ころ30℃の下で45ポイズであつた。 前記の含浸液を撹拌しながら、その中にポリエ
ステル20番双糸の紡績糸を20℃で２ｍ／分の速度
で浸漬・通過させた後、直径が第１表に示す径の
ダイスで糸付着量を調節した。使用したダイス
は、ステンレス製で、糸掛け時に２分割できるタ
イプのものを使用した。その後、連続して120℃
に調節した乾燥機を通過させて芯糸の周囲にカー
ボン粒子層を乾燥固着させた。この第１段の乾燥
固着によつて得られた各糸状の概観並びに諸特性
のデータを第１表に示す。 次に、表中のサンプル３、４について、同一含
浸液中に全く同一手法で第２段処理を行つた。但
し、このときのダイスの直径は、サンプル３につ
いては0.8mmφを、サンプル４については0.7mmφ
を用いた。 更に、サンプル４については、第１段、第２段
と全く同様の手法で第３段処理を重ねた。このと
きのダイスの直径は0.8mmφであつた。 第２段、第３段の処理を終了した糸状発熱体を
前記と同様に評価した結果を第３表に示す。

【表】

【表】 第１表及び第２表から次の結論が得られる。 (1) 付着樹脂量がほぼ等しいサンプル１（１回通
し）とサンプル３（２回通し）とサンプル４（３
回通し）とを比較したとき、ウレタン樹脂の付
着量の均一性は、サンプル４（３回通し）＞サン
プル３（２回通し）＞サンプル１（１回通し）の
順であり、糸状発熱体の径、電気抵抗値の斑も
同様の傾向にある。 (2) 同一の樹脂付着量で、電気抵抗値を比較する
と非常に面白いことに、多段階に積層固着した
ものほど電気抵抗値は低くなつている。即ち、
本発明の糸状発熱体は発熱層を多段積層したも
のであるが、これは単に糸状発熱体の径を均一
化するだけではなく、次の新事実を根幹とする
設計に基づいてなされたものである。 Ａ 積層することにより、糸状発熱体の密度が
高くなり導電性が強化されることが、糸状体
の樹脂付着量と直径とから判定できる。 Ｂ 各浸漬処理の段階で、カーボンのマイグレ
ーシヨンを生じさせ、年輪状にカーボン層を
作ることが断面の顕微鏡による観察で確認さ
れ、これにより、電流に対する流路を増加さ
せることができる。 (3) 積層処理により表面の凹凸が小さくなり、糸
状体の表面が滑らかになるので摩擦係数が小さ
くなり、本糸状発熱体を用いた商品化の際に行
う編み、織り等の加工性が高くなつた。 実施例 ２ 実施例１と同一手法によつて第１段の含浸を行
つたサンプル２について、第２段の含浸液とし
て、ポリエステル樹脂による絶縁層との接着性を
上げるために、カーボン粒子を分散させる合成樹
脂としてポリエステル型ポリウレタン樹脂を使用
し、これをベースにカーボンブラツクを8.3重量
％を加えた混合物の26重量％MEK溶液を作つた。 以上の２つの含浸液により２段処理してサンプ
ル２（２回通し）の糸状発熱体を得た。このもの
の諸性質を第３表に示す。

【表】 第３表の結果によりこの糸状発熱体は、編又は
織り後の樹脂加工の際の接着性が非常に優れてい
ることがわかる。 性能測定例 １ 実施例１のサンプル４（３回通し）を用い、温
度と電気抵抗値との関係を測定した。 (1) 外部加熱試験は市販の実験用オーブンを用い
た。試験糸状発熱体に電源から２ボルトの電圧
をかけ、加熱状態下での電流値を読み取り電気
抵抗値を計算により求めた。 (2) 自己加熱試験は、室温20℃の下で、前記試験
体に電源の設定電圧を24ボルトに固定し、前記
試料の長さを種々変化させて発熱量をコントロ
ールし、試料の温度が安定した後の温度を熱電
対により測定する方法で測定した。 以上の測定結果を第４表にしめす。

【表】 第４表の結果から、本発明の糸状発熱体は、温
度上昇と共に電気抵抗値が上がるので自己温度制
御特性を持つことが分る。 性能測定例 ２ 第２表のサンプル３及び比較にニクロム線及び
市販コードヒーターを用いて屈曲強度及び摩擦強
度を測定した結果を第５表に示す。

〔発明の効果〕

本発明の糸状発熱体は、以上のように合成繊維
等の芯糸に、前記のカーボン粒子層を積層する構
成としたことにより、次の効果が得られる。 発熱層となるカーボン粒子分散層の付着が均
一化されており、しかも耐屈曲性、耐摩擦性等
の諸特性に優れている。 カーボン粒子分散層を積層することにより電
流路が分散されるので、電流密度の均一化が達
成され、局部的過熱が防止され安全性が保た
る。このことは、前記分散層中のカーボン粒子
がマイグレーシヨン現象を起していることによ
るものと考えられる。 カーボン粒子分散層の各層が緻密構造となつ
ているので、各種の機械的強度が向上し耐久性
が得られる外、従来のこの種製品では得られな
かつた低抵抗値の素線を得ることができる。 しかも、カーボン粒子分散層は正の抵抗温度
係数を持つので、自己温度制御作用を発揮でき
るので安全である。 コーテイングを繰り返すことによりカーボン
粒子分散層の表面が平滑となるので、面状発熱
体とする等の際の加工、即ち、織り、編み等の
際に高い加工性が得られるので従来得られなか
つたような高度な商品化を可能にする。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 芯糸の周囲に、カーボン粒子を合成樹脂中に
   分散させたカーボン粒子層が複数積層されて導電
   層を形成していることを特徴とする糸状発熱体。 ２ カーボン粒子を懸濁した合成樹脂溶液に芯糸
   を浸漬、乾燥固着させてカーボン粒子を合成樹脂
   中に分散含有するカーボン粒子層を前記芯糸上に
   形成させ、次いで、前記と同種又は異種のカーボ
   ン粒子を懸濁した合成樹脂溶液に浸漬、乾燥固着
   することを１回以上繰り返して、前記芯糸の周囲
   にカーボン粒子層を積層させることを特徴とする
   糸状発熱体の製造方法。