JPH0255176B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、強磁性体からなる被加工物を磁力に
よつて吸着保持するための電磁チヤツクに関す
る。

この種の電磁チヤツクは、その内部に配置され
た鉄心を取り巻く励磁コイルへの通電により加熱
される。励磁コイル自体は均一に発熱するが、熱
は励磁コイルに取り巻かれた鉄心に集中し易く、
このため励磁コイルが部分的にその他の部分より
も高温となる。

たとえば、角型電磁チヤツクにおいては、矩形
の鉄心を取り巻く励磁コイルの四辺のうち、鉄心
の長手方向に沿う一対の長辺の中心部の温度上昇
が他の部分よりも著しい。

励磁コイルによる不均等な温度分布を伴なう温
度上昇は、電磁チヤツクの各部に熱歪みを生じさ
せ、電磁チヤツクに保持された被加工物に精度の
高い加工工作を施すことを不可能にするばかりで
なく、電磁チヤツク自体に損傷を与えることがあ
る。

特に、磁性部材からなる磁極と非磁性部材から
なるセパレータとを交互に一方向に配列した面板
を用いた磁気チヤツクの場合、磁極とセパレータ
との突き合わせ部、ならびに、隣り合う磁極とセ
パレータとを一体的に結合している半田、接着材
等の接合材が磁極およびセパレータの配例方向へ
の熱伝導の妨げになるから、磁極およびセパレー
タの配列方向における面板中央部の熱が発散され
ず、該面板中央部の温度上昇が大きい。このよう
な電磁チヤツクでは、面板に大きな反りが生じ、
また、セパレータの線膨張係数が磁極のそれに比
べて大きいことに起因して、面板の中央部のセパ
レータがこれの隣りの磁極より大きく伸び、その
結果、面板の中央部のセパレータの一部がチヤツ
ク作業面から突出し、作業面に凹凸が形成され
る。

励磁コイルの発熱による温度上昇を冷却手段に
より防止した電磁チヤツクが提案されている（実
公昭53−21819号公報）。しかし、この電磁チヤツ
クは、冷却水により冷却するから、漏水および漏
電を防止する構造としなければならない。

本発明の目的は、冷却水を用いることなく、励
磁コイル温度上昇に伴なうチヤツク作業面の変形
を効果的に防止し得る電磁チヤツクを提供するこ
とにある。

本発明は、ヒートパイプを面板と磁極およびセ
パレータの配列方向へ伸びるように面板と励磁コ
イルとの間に配置することにより、チヤツク作業
面の変形に最も大きな影響を与える面板の、磁極
およびセパレータの配例方向における温度分布を
ヒートパイプで均一化し、もつて励磁コイルの発
熱に伴うチヤツク作業面の変形を防止したことを
特徴とする。

本発明が特徴とするところは、図示の実施例に
ついての以下の説明により、さらに明らかとなろ
う。

第１図には、本発明に係る角形の電磁チヤツク
１０がその一部を破断して示されている。電磁チ
ヤツク１０は、磁性材料から成る全体に長方形の
箱形ケーシング１２と、該ケーシング内に収容さ
れた鉄心１４と、該鉄心を取り巻く励磁コイル１
６とを含む。ケーシング１２は、全体に矩形の枠
体１８と、該枠体の下端開口を閉じるベース２０
（第２図参照）と、枠体１８の上端開口を閉じる
面板２２とを備える。

鉄心１４は、ケーシング１２の長手方向に沿つ
て伸びる全体の矩形の形状を有する。枠体１８と
鉄心１４との間には、鉄心１４を廻る凹溝２４が
形成されている。凹溝２４内には、第２図に示す
ように、鉄心１４を取り巻く多層巻きの励磁コイ
ル１６が面板２２から間隔をおいて収容されてい
る。励磁コイル１６は、ケーシング１２から外部
へ伸びる電線２６により給電を受けて励起され
て、鉄心１４をこれの高さ方向の両端が異磁極と
なるように励磁する。

面板２２は、従来よく知られているように、長
尺のセパレータ２２ａと長尺の磁極２２ｂ，２２
ｃとをケーシング１２の長手方向に交互に配列し
ている。一方の磁極２２ｂは鉄心１４の一端に磁
気的に結合され、他方の磁極２２ｃは鉄心１４の
他端にベース２０および枠体１８を介して磁気的
に結合されている。従つて、両磁極２２ｂおよび
２２ｃは、励磁コイル１６の励起により異磁極に
励磁され、磁性材料からなる被加工物を吸着保持
するためのチヤツク作業面をセパレータ２２ａと
共に規定する。

励磁コイル１６は、給電されることにより発熱
し、矩形の鉄心１４を取り巻く励磁コイル１６の
四辺のうち、鉄心１４の長手方向に沿う長辺の中
央部分に他の部分よりも著しい温度上昇がみられ
る。この部分的な温度上昇を防止して面板２２の
温度分布の均一化を図るべく、セパレータ２２ａ
と磁極２２ｂ，２２ｃとの配列方向へ伸びる一対
のヒートパイプ２８が励磁コイル１６の長辺に沿
つて配置されている。

ヒートパイプ２８は、第３図に示すように、加
熱により蒸発する作動液が収容される両端閉鎖の
筒状のコンテナ３０と、該コンテナ内方周壁に設
けられ、凝集された作動液を毛管作用により加熱
域に戻すためのウイツク３２とを備える。ヒート
パイプ２８は、これの軸線方向への熱伝導率が銅
のような熱良導体に比較して著しく高い熱伝導素
子として従来よく知られている。

ヒートパイプ２８は、第２図に示すように、凹
溝２４内における面板２と励磁コイル１６との間
に収容されている。励磁コイル１６はその両側部
および頂部が銅のような熱良導体からなる熱伝導
板３４により覆われており、熱伝導板３４は励磁
コイル１６に当接されている。ヒートパイプ２８
は熱伝導板３４に接触しており、熱伝導板３４は
励磁コイル１６の両側部および頂部からヒートパ
イプ２８域へ或いはこれと逆方向への熱伝導を促
進する熱伝導体として作用する。熱伝導板３４を
不要とし、ヒートパイプ２８を励磁コイル１６に
直接当接させることもできるが、ヒートパイプ２
８と励磁コイル１６との間により広い熱交換域を
得る上で、前記したように励磁コイル１６を熱伝
導板３４で覆うことが好ましい。

また、第４図に示すように、熱伝導板３４に励
磁コイル１６の積層間に伸びる多数の伸長部３４
ａを設けることにより、多層巻きの励磁コイル１
６の内方から発生する熱を熱伝導板３４を経て一
層効果的にヒートパイプ２８に伝えることができ
る。

電磁チヤツク１０では、励磁コイル１６への通
電により該励磁コイルが発熱して、その長辺の中
央部分が他の部分より高温になると、その熱は極
めて短時間にヒートパイプ２８によつて該ヒート
パイプの軸線方向へ分散される。従つて、従来の
ように励磁コイル１６の長辺の中央部分の温度が
その他の部分に比較して著しく上昇することはな
く、電磁チヤツクはその長手方向にほぼ均一な温
度分布を示す。

励磁コイル１６の、面板２２の側の部位の温度
分布は、励磁コイル１６の他の部位たとえば面板
と反対の側の部位に比べて、面板の温度分布に最
も大きな影響を与えるから、チヤツク作業面の変
形に最も大きな影響を与える。

電磁チヤツク１０によれば、ヒートパイプ２８
がセパレータ２２ａおよび磁極２２ｂ，２２ｃの
配列方向へ伸びるように配置されているから、セ
パレータ２２ａおよび磁極２２ｂ，２２ｃの配例
方向における面板２２の温度分布が均一化され
る。その結果、面板２２がセパレータ２２ａおよ
び磁極２２ｂ，２２ｃの配列方向に沿つて反るこ
とおよびチヤツク作業面の中央部に配置されたセ
パレータ２２ａの一部がチヤツク作業面に突出す
ることはなく、電磁チヤツク１０の作業面を変形
させる熱歪みを面板２２に生じることはない。

ヒートパイプとして、第５図に示すように、励
磁コイル１６の一方の短辺および一対の長辺に沿
う全体にＵ字状のヒートパイプ２８′を用いるこ
とができる。

また、第６図に示すように、励磁コイル１６の
長辺に沿つて配置された一対のヒートパイプ２８
の各一端をケーシング１２からその外方へ突出さ
せることにより、励磁コイル１６の長辺に沿う温
度分布を均等化すると共に、電磁チヤツク１０を
積極的に冷却することができる。

すなわち、ヒートパイプ２８の突出端部２８ａ
が外気に露されていることから、突出端部２８ａ
はヒートパイプ２８の凝縮部として機能し、励磁
コイル１６から発生する熱は突出端部２８ａに向
けて移動し、突出端部２８ａから外気に発散され
る。その結果、励磁コイル１６の温度上昇が抑制
され、電磁チヤツク１０全体の温度上昇が防止さ
れることから、電磁チヤツク１０の熱歪みを一層
確実に防止することができる。

第６図に仮想線で示すように、ヒートパイプ２
８の突出端部２８ａに放熱フイン３６を設け或い
は突出端部２８ａを水等により強制冷却すること
により、冷却効果を一層高めることができる。ま
た、図示しないが、第５図に示す例におけると同
様のＵ字状のヒートパイプの両端をケーシング１
２より外方へ突出させて電磁チヤツク１０を冷却
することもできる。

前記したところでは、励磁コイルが１個のみで
ある角形電磁チヤツクに筒形のヒートパイプを組
み込んだ例について説明したが、本発明は必要に
応じて平板形のような種々の形状のヒートパイプ
を用いることができ、また、複数の励磁コイルを
もつ電磁チヤツクに多数のヒートパイプを用い或
いは励磁コイル間を連絡するヒートパイプを用い
ることができる。また、丸形電磁チヤツクにも、
温度分布の均等化または冷却のためにヒートパイ
プを配置することができる。

ヒートパイプを電磁チヤツクの面板と励磁コイ
ルとの間に配置する代わりに、ヒートパイプを励
磁コイルに近接する所望の部分に配置することが
できるが、熱歪みの影響が最も大きい面板の変形
を効果的に防止する上で、前記したとおり、ヒー
トパイプを面板と励磁コイルとの間に配置するこ
とが好ましい。

以上のように、本発明によれば、ヒートパイプ
を磁極およびセパレータの配列方向へ伸びるよう
に面板と励磁コイルとの間に配置したから、面板
の磁極およびセパレータの配列方向の温度分布が
効果的に均一化され、その結果、励磁コイルの発
熱による面板の反り、チヤツク作業面へのセパレ
ータの突出等、励磁コイルの温度上昇に伴なうチ
ヤツク作業面の変形が効果的に防止される。

また、本発明によれば、電磁チヤツク内に水の
ような冷却媒体を廻らせる必要はない。従つて、
励磁コイルのための特別な防水構造を必要とする
ことなくかつ漏電の恐れを招くことなく極めて単
純な構成によつて効果的に冷却し、これにより熱
歪みの発生を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る電磁チヤツクをその一部
を破断して示す平面図、第２図は第１図の−
線に沿つて得た断面図、第３図は本発明で用いる
ヒートパイプの一実施例を示す断面図、第４図は
本発明の他の実施例を示す第２図と同様の断面
図、第５図および第６図はそれぞれ本発明のさら
に他の実施例を示す第１図と同様の平面図であ
る。 １２：ケーシング、１４：鉄心、１６：励磁コ
イル、２２：面板、２２ａ：セパレータ、２２
ｂ，２２ｃ：磁極、２８，２８′：ヒートパイプ、
２８ａ：ヒートパイプの突出端部、３４：熱伝導
板、３４：熱伝導板の伸長部、３６：放熱フイ
ン。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 鉄心および該鉄心を取り巻く励磁コイルを収
   容するケーシングであつて被加工物を吸着保持す
   べく前記励磁コイルの励起によつて励磁されるチ
   ヤツク作業面を規定する面板を備え、前記面板が
   長尺の磁極と長尺のセパレータとを一方向に交互
   に配列してなるケーシングと、前記磁極および前
   記セパレータの配列方向へ伸びるように前記面板
   と前記励磁コイルとの間に配置されたヒートパイ
   プとを含む、電磁チヤツク。 ２ 前記励磁コイルは熱伝導板により覆われた多
   層巻きコイルであり、前記ヒートパイプは前記熱
   伝導板に当接して配置されている、特許請求の範
   囲第１項に記載の電磁チヤツク。 ３ 前記熱伝導板は前記励磁コイル間に伸びる伸
   長部を備える、特許請求の範囲第１項または第２
   項に記載の電磁チヤツク。 ４ 前記ヒートパイプの一端は前記ケーシングの
   外方へ突出している、第１項、第２項または第３
   項に記載の電磁チヤツク。 ５ 前記ヒートパイプは、その突出端に放熱フイ
   ンを備える、特許請求の範囲第４項に記載の電磁
   チヤツク。 ６ 前記ヒートパイプの突出端は強制冷却を受け
   る、特許請求の範囲第４項に記載の電磁チヤツ
   ク。