JPH0233498Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、観賞魚用水槽の内部に取付けて産
卵期の親魚を収容し、産み落された稚魚を親魚か
ら隔離した状態で育成するための産卵箱の改良に
関するものである。

〔従来の技術〕

観賞魚の飼育に際しては、親魚の産卵期が近づ
いて水槽内で稚魚（卵胎生魚）を産み落すと、稚
魚が生長する前に親魚や他の成魚に喰われてしま
うので、産卵期の近くなつた親魚を水槽内に別途
取付けた産卵箱内に収容して管理する。

従来におけるこの種の産卵ボツクスとしては、
第６図に示すように、箱体Ａ内の下方部に開放角
度の大きいＶ字形の中底状仕切棚Ｂを設けて、箱
Ａ内を上下の部屋に仕切り、上方室で親魚が産み
落した稚魚が仕切棚Ｂの中央谷底部に設けた長溝
状スリツトＣを通じて下方室内に落下するように
して、稚魚を下方室内において親魚と隔離して飼
育するようにしたものが知られている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

上記のような従来の産卵箱は、産み落された稚
魚を下方室内に導入して上方室の親魚と隔離する
ように、箱内を中底状の仕切棚によつて上下二つ
の部屋に仕切る構造であるため、稚魚に与えられ
るべき餌を稚魚の隔離されている下方室内に直接
有効に供給できないという欠点を有している。ま
た、親魚の喰べ残した餌や排出物が仕切板のスリ
ツトを通して下方室内に沈滞し、下方室内の水質
が汚染して酸素不足となる傾向が強く、そのため
稚魚の成育を著しく阻害するという欠点がある。
勿論、産卵箱は飼育水槽内に取付けられるもので
あるため、箱体の側面とか底面に水槽内の水が自
由に貫流できるような極く細いスリツト状の通水
孔が複数個開設されている。しかしながら、これ
らの通水孔は、本来水槽内の酸素を含んだ水を自
由に箱体内に貫流させるためのものであるから、
開孔幅が極細であるといつても、少なくとも１mm
程度の大きさを有している。ところが、産み落さ
れた直後の稚魚は、これらの通水孔の開孔幅より
も微少であるために、前記のように下方室内の水
が汚染してくると、酸素を求めて通水孔の付近に
接近するために通水孔から箱外に抜け出たり、こ
れを待ち受けている箱外の成魚によつて呑み込ま
れてしまうという欠点がある。従つて従来の産卵
箱は、親魚と稚魚とを隔離するための部屋を中底
状仕切棚によつて上下に仕切るという構成のた
め、稚魚の育成を行うのに適した好ましい環境を
備えていないという問題点があつた。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は上記のような従来における産卵箱の問
題点を解決するために、産卵箱内に設ける仕切棚
を、産み落された直後の稚魚が親魚のいる上方室
から下方に落下して室外に隔離できるような要素
を備えつつ、基本的には箱内を上下方向にではな
く前後方向に仕切れるような形状とし、稚魚の成
育する水域に対して直接稚魚用の餌を与えられる
ような好ましい環境をもつた産卵箱を提供しよう
とするものである。

本考案は上記のような産卵箱を得るための具体
的手段として、下方部に箱体の一方の壁面と対応
して箱体内下部に谷部を形成する傾斜仕切棚を有
し、上方部には箱体の壁面と隔離して上端が水面
上に突出するような仕切壁を有する仕切板を箱体
内に設けて、箱体内上部に前後に仕切られた二個
の部屋を区画し、前記傾斜仕切棚の端縁と対応す
る壁面との間もしくは該傾斜仕切棚の一部に形成
される谷底部に稚魚の通過を許す長溝状スリツト
を設けて、このスリツトを介して二個の部屋を互
いに連通させたことを特徴とするものである。

〔作用〕

この考案の産卵箱においては、壁面と隔離した
仕切板の上部仕切壁によつて箱体内が前後の部屋
に仕切られると共に、箱体下方部が仕切板の下方
部に設けた傾斜仕切棚によつて実質的に上下の部
屋に仕切られる。

産卵期に近づいた親魚を水槽内からすくい上げ
て、この産卵箱の傾斜仕切棚によつて仕切られた
上方室内に収容すると、親魚から胎生魚、正確に
は卵胎生魚が母体内で卵から孵つた稚魚の形で順
次産み落される。産み落された直後の稚魚は自由
に泳げないこともあつて下方に落下し、傾斜仕切
棚を伝わつて、該傾斜仕切棚と箱体壁面との間の
谷底部、もしくは傾斜仕切棚自体の谷底部に設け
られたスリツトより下方室内に導入され、２乃至
３日の経過後下方室内で自由に泳ぎ始める。

傾斜仕切棚によつて仕切られた下方室は、実質
的に上方の仕切壁によつて前後に仕切られた、親
魚用上方室とは別の稚魚用上方室に連通している
ので、泳ぎ始めた稚魚はこの稚魚用上方室内に遊
出する。稚魚用上方室は箱体の上方水面にまで達
しているので、この部分の水は、親魚の食べ残し
た餌かすや排出物の混じつていない澄んだ状態で
あり、稚魚の遊泳に適している。また、この稚魚
用上方室内は水面がオープンになつているので、
この部分から稚魚用の餌を独自に供給することが
でき、稚魚の育成に好適な環境を与えることがで
きる。

〔実施例〕

次に、本考案に係る産卵箱の好ましい実施例を
図面により説明すると、第１図は産卵箱の構成を
示す斜視図、第２図は使用状態における側面図を
示している。この実施例における箱体２は、長手
方向に沿つた一方の壁面３、即ち、第２図に示す
ように、この箱体２が水槽１内に取付けられた状
態における水槽１の内部に位置した側の壁面下方
部分に、該箱体２の底面４との間を結ぶ傾斜壁面
５が設けられている。

一方、箱体２内に設ける仕切板６は、第３図に
示すように、上方部に箱体２の前記壁面３及びこ
の壁面と対向する壁面９と隔離される縦形の仕切
壁７と、この仕切壁７の下方に延出された傾斜仕
切棚８とを有するよう形成されている。この仕切
板６を箱体２内に収納することにより、上方部の
仕切壁７を介して箱体２内の前後に親魚用上方室
１０と稚魚用上方室１１ａとが区画される。一
方、仕切板６の下方部には傾斜仕切棚８を有する
ので、この傾斜仕切棚８の端縁８ａが箱体２の傾
斜壁面５と対応することになり、二つの傾斜壁面
５と傾斜仕切棚８とによつて断面Ｖ字形の谷部が
形成され、また、傾斜仕切棚８の下方に前記稚魚
上方室１１ａと連通した下方室１１ｂが設けられ
る。

なお、仕切板６における上方仕切壁７は、上端
７ａが箱体２内の水面１２よりも上方に突出する
ような充分な高さをもつており、かつ、両端部の
裏面には係止用フツク１３が夫々設けられてい
る。なお、この実施例では、仕切板６における上
方仕切壁７の上端７ａを親魚用上方室１０の方向
に傾斜させ、稚魚用上方室１１ａ内に対する餌の
投入が行いやすいようになつている。

一方、箱体２における内側壁１４の内側面に
は、前記仕切板６を箱体２内に上方から収納する
ときに仕切壁７の両端部裏面に設けたフツク１３
が係止されるためのリブ状突片１５が設けられて
いる。また、箱体２の傾斜壁面５の内側面両端部
には、仕切板６の傾斜仕切棚端縁８ａの両端部が
嵌め込まれる凹溝付突子１６が夫々設けられてお
り、傾斜仕切棚８の端縁部両端がこれらの凹溝付
突子１６に嵌め込まれることによつて、傾斜仕切
棚８と箱体傾斜壁面５との間の谷底部に稚魚１８
の通過を許す長溝状のスリツト１７が設けられる
ようになつている。

この箱体２は稚魚用上方室１１ａ側の壁面９の
外面に設けた吸盤１９によつて水槽１の前面ガラ
ス２０の上部裏面に吸着保持される。

第４図は産卵箱の別の実施例を示している。こ
の実施例では、仕切板６の傾斜仕切棚８と対応す
る箱体２の壁面３が垂直であつて、前記実施例の
ように、この壁面３の下方部に傾斜壁面５に相当
する部分を有さない。従つてこの場合では、仕切
板６の傾斜仕切棚８の端縁８ａが垂直な箱体壁面
３の下方部まで延出し、該壁面３と傾斜仕切棚端
縁８ａとによつてスリツト１７をもつた谷底部が
形成される。

さらに、第５図は別の実施例を示しており、こ
の場合は、仕切板６の下方部における傾斜仕切棚
８をそれ自体が断面Ｖ字形をなすように形成し、
稚魚の通過用スリツト１７をこのＶ字形傾斜仕切
棚８の谷底部に設けるようにしてある。

〔効果〕

以上述べたように、この考案に係る産卵箱にお
いては、箱体内に設ける仕切板６に、箱体内が前
後二個の部屋に区画できるような箱体壁面と隔離
した縦形の仕切壁７と、その下方部に延出した傾
斜仕切棚８とを設けるようにしたので、親魚から
産み落された稚魚が谷底状の傾斜仕切棚の下方室
１１ｂ内に導入されたのちでも、稚魚は親魚用上
方室とは仕切壁７によつて隔離された独自の上方
室１１ａの方向へ遊泳することができる。

従つて、稚魚は親魚の排出物などにより汚染さ
れにくい独自の上方室１１ａ内において、水面上
方からの酸素や、稚魚専用餌の補給を受けられる
などの好適な成育環境を与えられるので、従来の
産卵箱に比較して稚魚の死亡率を大幅に減少でき
るという効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る産卵箱の一実施例を示す
斜視図、第２図は水槽内に取付けた状態の産卵箱
の側面図、第３図は箱体の拡大断面図、第４図及
び第５図はいずれも別の実施例を示す箱体の断面
図、第６図は従来の産卵箱の構成を示す断面図で
ある。 １：水槽、２：箱体、３，９：壁面、４：底
面、５：傾斜壁面、６：仕切板、７：仕切壁、
８：傾斜仕切棚、１０：親魚用上方室、１１ａ：
稚魚用上方室、１１ｂ：稚魚用下方室、１２：水
面、１３：フツク、１５：リブ状突片、１６：凹
溝付突子、１７：スリツト、１８：稚魚、１９：
吸盤。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 下方部に箱体の一方の壁面と対応して箱体内
   下部に谷部を形成する傾斜仕切棚を有し、上方
   部には箱体の壁面と隔離して上端が水面上に突
   出するような仕切壁を有する仕切板を箱体内に
   設けて、箱体内上部に前後に仕切られた二個の
   部屋を区画し、前記傾斜仕切棚の端縁と対応す
   る壁面との間もしくは該傾斜仕切棚の一部に形
   成される谷底部に稚魚の通過を許す長溝状スリ
   ツトを設けて、このスリツトを介して二個の部
   屋を互いに連通させたことを特徴とする観賞魚
   用水槽の産卵箱。 (2) 箱体の一方の壁面下方部と底面との間に傾斜
   壁面を設けて、仕切板の傾斜仕切棚の端縁と前
   記傾斜壁面との対応によつて箱体内下方部にス
   リツトの介在した谷底部を有する実用新案登録
   請求の範囲第１項記載の観賞魚用水槽の産卵
   箱。 (3) 仕切板の傾斜仕切棚を箱体の一方の垂直な壁
   面下方部にまで達する長さとし、該仕切板の傾
   斜仕切棚の端縁と前記箱体の垂直壁面との対応
   によつて箱体内下方部にスリツトの介在した谷
   底部を有する実用新案登録請求の範囲第１項記
   載の観賞魚用水槽の産卵箱。 (4) 仕切板の傾斜仕切棚を断面Ｖ字形に形成し、
   このＶ字形傾斜仕切棚の谷底部にスリツトを設
   けた実用新案登録請求の範囲第１項記載の観賞
   魚用水槽の産卵箱。