JPH0228338B2 - - Google Patents

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JPH0228338B2
JPH0228338B2 JP59044398A JP4439884A JPH0228338B2 JP H0228338 B2 JPH0228338 B2 JP H0228338B2 JP 59044398 A JP59044398 A JP 59044398A JP 4439884 A JP4439884 A JP 4439884A JP H0228338 B2 JPH0228338 B2 JP H0228338B2
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JP
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blood vessel
artificial blood
elastomer
solution
pore
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JP59044398A
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Kazuaki Kira
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Priority to US06/840,170 priority patent/US4834746A/en
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Description

【発明の詳細な説明】
本発明は環状ノズルを用いた人工血管の製法に
関する。 近年、血管外科手術の進歩とともに人工血管の
研究も進み、数多くの人工血管が開発されてきて
いる。現在、管内径約6mm以上の中口径あるいは
大口径動脈用人工血管としては、たとえば米国
USCI社製のダクロンの編物であるドベイスキー
人工血管や、米国ゴア社製の延伸ポリテトラフル
オロエチレン(以下、EPTEという)からなるゴ
アテツクスなどが、臨床に用いられている。 これらの人工血管は、血管の内側から外側まで
連通している孔を有しており、生体に埋入後すみ
やかに仮性内皮によつて覆われ、生体組織側から
この孔を通して組織が進入し、安定に器質化さ
れ、人工血管としての使命をはたしている。この
ように人工血管の器質化に役立つ連通孔を有する
ことを、以降有孔性を有するという。しかし、こ
れらの人工血管は、コンプライアンスが生体血管
と大きく異なるため、生体に埋入後長期間経る
と、吻合部にパンヌス(pannus)の過形成など
種々の不適合に関する問題が発生する。また内径
約6mm以下の小口径動脈用人工血管として用いる
と、コンプライアンスの相違が顕著に表われ、開
存性がわるく、臨床に使用できない。したがつ
て、膝から下の動脈や、冠状動脈などの血行再建
手術には、自動静脈が使用されている。 以上のことから、人工血管とくに小口径動脈用
人工血管の開発にあたつては、人工血管が有孔性
を有することや、人工血管の素材の血液適合性を
向上させることに加えて、人工血管のコンプライ
アンスを生体血管に近似させることが重要である
といわれている。 しかし、現在開発されている人工血管のコンプ
ライアンスは、笹嶋らの報告(人工臓器12(1)、
179−182、1983)によれば、第1表の通りであ
る。
【表】
【表】 このように現在の人工血管のコンプライアンス
は、生体の動脈と比較すると非常に小さく、動脈
に対しては剛管とみなされるものである。 このようなコンプライアンスの不一致を解決す
るため、米国特許第4173689号明細書には人工血
管を構成する材料としてエラストマーを用い、管
壁を多孔質とし、生体血管に類似したコンプライ
アンスを有する人工血管の製造法に関する開示が
なされている。しかしこの人工血管は、エラスト
マー溶液に心棒を浸漬し、つぎにこれを取出して
心棒上に溶液をコーテイングし、これを貧溶媒
(水)に浸漬してエラストマーを析出させる方法
であるため、血液接触面から生体組織接触面まで
連通した孔がない。しかも製造された人工血管の
管壁断面には非常に小さい孔しか存在せず、比較
的密な構造となつている。このようにして製造さ
れた人工血管のコンプライアンスは、従来の人工
血管のコンプライアンスよりは大きくなるけれど
も、生体血管のそれと比較するとまだまだ小さ
い。その上従来の人工血管は、製造方法が複雑で
あり、結果として人工血管が高価となる欠点をも
有している。 人工血管に必要とされる性質としては、縫合し
やすいこと、縫合部がほつれないこと、任意の長
さに切断して使用できること、結節を生じないこ
となどがあげられる。ダクロンやテフロンの編物
などでは、これらが編物であるため、切断部のほ
つれをなくすのに特殊な編み方が必要になるし、
また結節防止のために蛇腹加工などの工夫も必要
となり、製法が複雑になり、高価なものとなる。
またEPTEF製のものは、テフロンの延伸による
ため複雑な製法を必要とし高価なものとなる。 本発明者は以上のことを踏えて、縫合性がよ
く、縫合部のほつれがなく、任意の長さに切断し
て使用できること、結節を起さないこと、コンプ
ライアンスが生体血管に近似していることに加え
て、充分な有孔性を有する人工血管を簡単安価に
製造する方法を開発すべく鋭意研究を重ねたとこ
ろ、曇点を有するエラストマー溶液を曇点をこえ
る温度に保ちながら、環状ノズルから曇点温度以
下の凝固液中に管状に押出すことによつて、前記
目的が達成できることを見出し、本発明を完成し
た。 すなわち本発明は、エラストマー溶液を環状ノ
ズルから内部凝固液とともに押出したのち、全体
を外部凝固液に浸し人工血管を製造する際に、エ
ラストマー溶液に貧溶媒を加えて曇点を有する溶
液とし、該溶液を曇点をこえる温度に保ちながら
環状ノズルから押出し、かつ内部凝固液、外部凝
固液、乾式距離内の空気のうち少なくとも1つを
曇点温度以下に保持することを特徴とする人工血
管の製法に関する。 本発明に用いるエラストマーとは、血液適合性
に優れた熱可塑性エラストマー、すなわち急性毒
性、炎症、溶血、発熱反応などを惹起するような
低分子溶出物を含まず、血液の生理機能に重大な
損傷を与えず、抗血栓性に優れた熱可塑性エラス
トマーである。このようなエラストマーとして
は、たとえばポリスチレン系エラストマー、ポリ
ウレタン系エラストマー、ポリオレフイン系エラ
ストマー、ポリエステル系エラストマーなどや、
これらのエラストマーにエラストマーとしての性
質を維持する範囲でエラストマー以外の高分子を
ブレンドしたものなどがあげられる。これらは単
独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよ
い。強度、耐久性、抗血栓性などの面からみる
と、これらのうちではポリウレタン系エラストマ
ーがより好ましい。ポリウレタン系エラストマー
の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレタン
ウレア、これらとシリコーンポリマーとのブレン
ド物などがあげられる。前記ポリウレタンやポリ
ウレタンウレアのなかでは生体内での耐久性の面
からポリエステル型よりもポリエーテル型の方が
より好ましく、さらに好ましいものとしてはセグ
メント化ポリウレタン、セグメント化ポリウレタ
ンウレア、ハードセグメントあるいはソフトセグ
メントにフツ素を含有するセグメント化ポリウレ
タンあるいはセグメント化ポリウレタンウレア、
特開昭57−211358号公報に開示されている主鎖中
にポリジメチルシロキサンを含有するポリウレタ
ンまたはポリウレタンウレアなどがあげられる。
とくに好ましいものとしてはポリジメチルシロキ
サンを式: (式中、R1〜R6は炭素数1以上のアルキレン基、
好ましくは炭素数2〜6のエチレン、プロピレ
ン、ブチレン、ヘキサメチレンなどのアルキレン
基、a、eは0〜30の整数、b、dは0または
1、cは2以上の整数を表わす)のような形状で
含有し、該ポリエーテル部分が−(
CH2CH2CH2CH2O−)26〜30または
【式】であるポリウレタンまたは ポリウレタンウレアがあげられる。 本発明におけるエラストマー溶液に用いる溶媒
は、エラストマーをよく溶解する溶媒(以下、良
溶媒という)と、良溶媒とはよく混和するがエラ
ストマーを溶解しない溶媒(以下、貧溶媒とい
う)とから構成される。最適良溶媒は、エラスト
マーの種類によつて変化するので一概には決めら
れないが、たとえばN,N−ジメチルアセトアミ
ド、N,N−フオルムアミド、N−メチル−2−
ピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフランな
どがあげられるが、これらに限定されるものでは
ない。これらは単独で用いてもよく、2種以上混
合して用いてもよい。最適貧溶媒もエラストマー
の種類によつて変化するので、一概には決めるこ
とができないが、たとえば水、低級アルコール
類、エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが
あげられるが、これらに限定されるものではな
い。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合
して用いてもよい。 本発明に用いるエラストマー溶液は、エラスト
マー、良溶媒、貧溶媒を必須成分とし、必要に応
じて造孔剤を含有していてもよい。貧溶媒を用い
るのは、エラストマー溶液が曇点を有するように
するためである。なお前記曇点とは、高分子溶液
が完全に溶解している状態から、温度変化により
高分子がコロイド状に析出する、つまり相変化を
起す温度である。曇点は高分子溶液の粘度変化や
白濁現象によつて確認できる。 本発明において必要に応じて使用される造孔剤
は、エラストマーを溶解している溶媒に不溶であ
り、人工血管の成形中あるいは成形後に除去でき
るものであれば、とくに限定されることなく使用
される。しかし、生体内に埋入する人工血管に用
いることを考えると、造孔剤といえども生体に対
して充分安全なものを用いることが好ましい。こ
の意味から、食塩のように安全な無機塩類、グル
コースやデンプンのような水溶性糖類、蛋白質な
どが好ましい。しかし前記のような無機塩類や水
溶性糖類などは本質的に吸湿性であるため、微細
粒径にすると表面積が増大し、空気中の湿気など
で2次凝集を起しやすい傾向にあり、取扱いに注
意を払う必要がある。この意味から、造孔剤とし
ては蛋白質がとくに好ましい。蛋白質は微細粒径
にしても空気中の湿気などによつて2次凝集を起
すこともなく、安定した造孔が可能である。また
人工血管として製造された成形物から、アルカ
リ、酸あるいは酵素を用いて容易に溶解除去でき
る。好ましい蛋白質としては、カゼイン、コラー
ゲン、ゼラチン、アルブミンなどがあげられる。
造孔剤の粒径は、主に人工血管の内側表面に形成
される孔の最大径にあわせて決めればよい。なお
前記孔の最大径は、造孔剤の粒径よりも小さくな
る傾向にあるので、その小さくなる分を考慮して
造孔剤の粒径を決ればよい。通常造孔剤の粒径は
1〜100μmが好ましく、10〜74μmがさらに好ま
しく、20〜50μmであることがとくに好ましい。
粒径が100μmをこえると、形成される孔が大き
くなりすぎたり、エラストマー溶液に分散したの
ち大きな粒子が沈降したり、エラストマー溶液を
環状ノズルに送るポンプに詰つたりする傾向が生
ずる。粒径が1μm未満になると、形成される孔
が小さくなりすぎる傾向にある。本発明で使用す
る造孔剤の量(造孔剤の量/エラストマー溶液中
のエラストマーの量の重量%で示す)は、必要と
する有孔性、造孔剤の粒径およびエラストマー溶
液の組成によつて変化するので一概には決ること
はできないが、1〜250%が好ましく20〜200%が
さらに好ましく、50〜150%であることがとくに
好ましい。造孔剤の量が250%をこえると、形成
される孔が多くなりすぎるため、コンプライアン
スが大きくなりすぎたり、血圧に対する耐久性が
劣つたり、エラストマー溶液の粘度が高くなつて
操作が困難になつたりする傾向が生ずる。造孔剤
が1%未満になると、孔の形成数が少なくなり、
必要な有孔性をうることができなくなる傾向が生
ずる。 本発明においては、エラストマー、良溶媒、貧
溶媒および必要に応じて用いられる造孔剤などの
成分からエラストマー溶液が調製される。 エラストマー溶液中のエラストマーの濃度は5
〜35%(重量%、以下同様)が好ましく、10〜30
%であることがさらに好ましく、12.5〜25%であ
ることがとくに好ましい。エラストマーの濃度が
5%未満になると、製造された人工血管の強度が
弱くなりすぎたり、管状に成形できにくくなる傾
向にある。またエラストマーの濃度が35%をこえ
ると、製造された人工血管の強度が生体血管と比
べて強くなりすぎたり、溶液の粘度が高いため、
成形が困難になつたりする傾向にある。 本発明に用いる環状ノズルは、エラストマー溶
液を管状に押出し、かつその内部に内部凝固液を
注入できるものである。図面を用いて環状ノズル
を説明する。 第1図は環状ノズル3のエラストマー溶液の押
出し口を示したものである。1はエラストマー溶
液の出口であり、目的とする人工血管の内径と外
径とにあわせて、1の内径と外径とを決めればよ
い。2は内部凝固液の出口である。 本発明に用いる凝固液としては、エラストマー
は溶解しないが、良溶媒とはよく混和する貧溶媒
があげられ、たとえば水、低級アルコール類、エ
チングリコール、プロピレングリコール、1,4
−ブタンジオール、グリセリンなどの少なくとも
1種類以上を用いるのが好ましい。とくに好まし
い凝固液としては、水または水を主成分とする貧
溶媒である。また、エラストマーの凝固速度を調
節することにより、管壁内部、内面、外面の構造
を調節したり、操作を容易にしたりするために、
水に水溶性の無機塩や良溶媒を加えてもよい。本
発明に用いる内部凝固液、外部凝固液は、同じ組
成であつてもよく、異なつていてもよい。 つぎに本発明の人工血管の製法について説明す
る。 曇点を有するエラストマー溶液はエラストマー
を良溶媒に溶解したのち、貧溶媒を添加して調製
してもよく、エラストマーを良溶媒と貧溶媒との
混合溶媒で溶解して調製してもよく、また必要に
応じて造孔剤を含有させてもよい。造孔剤の分散
方法にはとくに限定はないが、造孔剤を良溶媒と
貧溶媒との混合溶媒に均一に分散したのち、エラ
ストマーを添加溶媒する方法が好ましい。この溶
液は一定速度で環状ノズルに注入され、ノズルか
ら管状に押出される。エラストマー溶液を押出す
のと同時に、押出し速度にあわせて、管の内側に
内部凝固液が注入される。管状に押出されたエラ
ストマー溶液は、ただちにあるいは一定の乾式距
離を持つて、外部凝固液に浸される。前記乾式距
離としては、50cm以下が好ましく、操作の面から
は、ただちに外部凝固液に浸すことが好ましい。 以上の操作において、エラストマー溶液を曇点
をこえる温度に保ちながら環状ノズルから押出
し、かつ内部凝固液、外部凝固液、乾式距離内の
空気のうち少なくとも一一つを曇点温度以下に保
持することが必須要件である。 以上の操作によつて、エラストマー溶液は管状
に押出されると同時に、曇点温度以下となり相変
化を起す。この相変化と並行して管状のエラスト
マー溶液から溶媒が凝固液中に溶解し、エラスト
マーが管状に析出する。そののち、そのままの状
態であるいは適当な長さに切断したのち、充分に
溶媒を除去することにより、人工血管がえられ
る。なお造孔剤を含有するときには、造孔剤を溶
解除去することにより、人工血管がえられる。 このようにして製造された人工血管は、管壁断
面の内側から外側まで、厚さ全体にわたつて細孔
の大きさがほぼ均一な網状組織を有している。 上記のようにしてえられた人工血管の一例の内
側表面および外側表面の説明図を、それぞれ第2
図および第3図に示す。 第2図に示すように、人工血管の内側表面4に
は、内側表面から外側表面まで連通する孔の円形
または楕円形に近い形状の開口5が多数存在し、
該開口5以外にも多数の穴が存在し、かる石の表
面のような形状を呈している。一方、人工血管の
外側表面6には、第2図に示すように、不定形の
孔の開口7が、不定形の穴とともに多数存在し、
内側表面と比較してやや密なかる石の表面のよう
な形状を呈している。 このように本発明の方法を用いると、有孔性を
有する人工血管を非常に簡単に、しかも均一に製
造することができる。また環状ノズルの寸法を変
えることにより、必要な寸法の人工血管を容易に
製造することができ、結果として非常に安価に人
工血管をうることができる。このようにして製造
した本発明による人工血管の内側、つまり血液接
触面は血液適合性に優れたエラストマーで構成さ
れているので、血液適合性は良好であるが、生体
への埋入初期の抗血栓性をさらに向上させる目的
で、内側の表面に、アルブミン、ゼラチン、コン
ドロイチン硫酸またはへパリン化材料などをコー
テイングしてもよい。 手術時などの異常な血圧の増加に耐えたり、長
期間にわたる耐久性維持の目的から、本発明によ
る人工血管の外側を網状のネツトや不織布などで
補強してもよい。 以上に述べた本発明の方法で製造された人工血
管は曇点、貧溶媒の種類、造孔剤の量や粒径など
を変化させることにより、必要とする任意の有孔
性を有した人工血管をうることができる。このよ
うにして形成された孔が偽内膜の形成を促進した
り、形成された偽内膜の安定化に役立つ。また本
発明の方法で製造した人工血管は、管の内径と管
壁の厚さを生体血管にあわせたとき、その生体血
管と一致するコンプライアンスをうることができ
る。これは、人工血管を構成する材料がエラスト
マーであり、人工血管を構成する材料がエラスト
マーであり、細孔の大きさがほぼ均一な網状組織
から管壁が構成されているため、管壁に占めるエ
ラストマーの密度が疎となり達成されるものであ
る。管壁に占めるエラストマーの密度は、エラス
トマー溶液のエラストマー濃度にほぼ比例する。
したがつて、エラストマー溶液中のエラストマー
濃度が5〜35%では管壁に占めるエラストマーの
密度もだいたい0.05〜0.35g/cm3と非常に疎にな
り、柔らかい構造となる。つまり、本発明の方法
では、エラストマーの強度、エラストマーの濃
度、曇点、貧溶媒の種類、造孔剤の量と粒径を調
節することにより、生体血管のコンプライアンス
に一致する人工血管を容易に製造することができ
る。 人工血管として好ましいコンプライアンスは、
人工血管の太さ、使用部位などにより異なり、一
概には決められないが、本発明による人工血管の
コンプライアンスは前記のようにして調節するこ
とができ、使用部位の生体血管のコンプライアン
スに近似したものを製造することができる。コン
プライアンスが0.1〜0.8の人工血管は、その太さ
などにもよるが動脈用血管などの用途に、また内
径が1〜6mmであり、コンプライアンスが0.1〜
0.5のものは小口径動脈用人工血管として好適に
使用しうる。本明細書にいうコンプライアンスと
は、式(1): C=△V/V0・△P×100 (1) (式中、Cはコンプライアンス、V0は内圧50mm
Hgのときの測定血管の内容積、△Pは内圧50mm
Hgから内圧150mmHgまでの100mmHg、△Vは内
圧50mmHgから内圧150mmHgまでの間に増加する
測定血管の内容積を表わす)で定義されるもので
ある。具体的な測定は、閉鎖回路に測定血管(長
さ約6〜10cm)を挿入し、微量定量ポンプを用い
てこの回路に液体を注入し、注入液量と回路内の
圧力の変化を測定し、(1)式からコンプライアンス
を求める。 本発明の方法で製造した人工血管は有孔性であ
り、コンプライアンスが生体血管に近似し、血液
接触面が血液適合性に優れている性質に加えて、
つぎに示す有用な性質を併有している。 まず、管壁が実質的にエラストマーの連続した
構造であるため、任意の長さに切断しても切口が
ほつれることはない。そして管壁断面がエラスト
マー密度の低い構造であるため、縫合針の貫通性
が非常によく、生体血管との縫合が容易であり、
かつ縫合部を引張つても縫合部がほつれて縫合糸
がはずれることはない。管壁がエラストマーから
なるため、縫合針の貫通した孔も針が存在しなく
なると自己閉塞し、血液が漏れなくなる。さらに
驚くべき性質としては、本発明による人工血管
は、その内部に血液が流れ、血圧がかかつた状態
では、結節を生じない。これは、コンプライアン
スが生体血管に近似していることに起因するもの
と考えられる。 以上述べてきたように、本発明の人工血管の製
法は、つぎのような特徴を有する。 (1) 人工血管がエラストマー溶液から簡単、均
一、かつ安価に製造される。 (2) 人工血管の寸法が環状ノズルの寸法の変更に
より、容易に調節できる。 (3) 温度変化によるエラストマー溶液の相変化を
調節することにより、あるいは必要に応じて造
孔剤の量と粒径を調節することにより、任意の
径の孔を必要な密度で有する人工血管を製造す
ることができる。 (4) 人工血管のコンプライアンスを、生体血管の
それに近似させることができる。 (5) 血液接触面を血液適合性に優れたものにする
ことができる。 (6) つぎに示すごとき人工血管としての必須な性
質を全部満している人工血管を製造することが
できる。 Γ縫合針の貫通性がよく、縫合が容易である。 Γ任意の長さに切断しても、切口にほつれが生
じない。 Γ縫合部から縫合糸がほつれることがない。 Γ縫合針の貫通孔が自己閉塞する。 Γ血圧のかかつた実際の使用状態では、結節を
起し難い。 したがつて、本発明の方法で製造された人工血
管は、血行再建手術にあたつて、人工血管、バイ
パス用人工血管、パツチ用材料に使用できるとと
もに、ブラツドアクセスなどにも使用することが
できる。さらに0.1〜0.8のコンプライアンスを有
する動脈用人工血管として用いることができる。
とくにコンプライアンスが生体血管に近似し、血
液接触面が血液適合性に優れていることから、現
在臨床に使用する人工血管が存在しない0.1〜0.5
のコンプライアンスを有し、内径約1〜6mmの小
口径動脈用人工血管としても使用できる。それゆ
え膝から下の動脈の血行再建や、大動脈−冠状動
脈バイパス用人工血管として、好適に使用でき
る。また本発明による人工血管は、その外側には
コンプライアンスの小さいネツトなどをかぶせる
ことにより、静脈用人工血管としても使用できる
し、尿管などの生体の柔かい管状物の代替えとし
ての使用も可能である。 つぎに実施例を用いて本発明の製法を説明す
る。 実施例 1 特開昭58−188458号公報の実施例1記載のポリ
ウレタン20gをN,N−ジメチルアセトアミド45
mlに溶解したのち、プロピレングリコール35mlを
添加した。この溶液の曇点は約60℃であつた。こ
の溶液に30〜50μmの粒径を有するカゼインを20
g加え、ホモジナイザーで撹拌分散した。この溶
液を減圧下で充分脱泡したのち80℃に保ちなが
ら、ギアポンプを用いて環状ノズル(溶液出口寸
法は内径3mm、外径4.5mm)から、約30cm/分で
押出した。同時に脱泡した18℃の水を管の内側に
注入した。押出された管状の溶媒は、ただちに18
℃の水に浸漬し、エラストマーを管状に析出させ
た。充分水洗を行ない、溶媒を除去したのち、必
要な寸法に切断した。ついでPH約13の水酸化ナト
リウム水溶液を用いて、この管状物からカゼイン
を溶解除去し、人工血管をえた。 えられた人工血管は内径約3mm、外径約4.5mm
であつた。管壁断面は網状構造であり、内側表面
には1〜50μmの円形の孔が存在し、外側表面に
は不定形の孔が存在していた。えられた人工血管
の内側表面および外側表面を走査型電子顕微鏡で
観察したばあいにえられる映像を説明するための
説明図をそれぞれ第2図および第3図に示す。 この人工血管を任意の箇所で切断しても、切断
面はほつれなかつた。また生体血管との縫合が非
常に容易であり、縫合部を引張つても縫合部がほ
つれることはなく、縫合針の貫通孔は、針を除く
と自己閉塞した。 この人工血管を長さ8cmに切り、牛血でプレク
ロツトリングを行なつたのち、閉鎖回路に挿入
し、1ストローク0.05ml送液する定量ポンプで牛
のACD血液をこの閉鎖回路に送液し、内圧の変
化を測定し、定量ポンプのストローク数と内圧の
変化から、(1)式にもとづきコンプライアンスを測
定したところ、0.4であつた。 以上のことからこの人工血管か、小口径動脈用
人工血管として優れていることがわかつた。 実施例 2 4,4′−ジフエニルメタンジイソシアネート2
モルと分子量2000のポリテトラメチレングリコー
ル1モルとから製造されたプレポリマーを1モル
のエチレンジアミンで鎖延長したセグメント化ポ
リウレタンウレア17.5gをN,N−ジメチルアセ
トアミド47.5mlとプロピレングリコール35mlの混
合溶媒に溶解した。この溶液の曇点は約50℃であ
つた。この溶液を70℃に保ちながら、ギアポンプ
を用いて環状ノズル(溶液出口寸法は内径3mm、
外径4.5mm)から約40cm/分で押出した。同時に
脱泡した20℃の水を管の内側に注入した。押出さ
れた管状の溶液は、ただちに20℃の水に浸漬し、
エラストマーを管状に析出させた。水洗を行なつ
たのち、必要な長さに切り、人工血管をえた。 えられた人工血管は内径約3mm、外径約4.5mm
であつた。この人工血管を任意の箇所で切断して
も切断面はほつれなかつた。また生体血管との縫
合性にも優れていた。管壁断面は網状構造であ
り、内側表面には楕円形と不定形の孔が存在し、
外側表面には不定形の孔が存在し、全体として有
孔性を有していた。実施例1と同様にしてコンプ
ライアンスを測定したところ、0.35であつた。
【図面の簡単な説明】
第1図は環状ノズルのエラストマー溶液の押出
し口を示す説明図、第2図および第3図はそれぞ
れ実施例1において製造した本発明による人工血
管の内側表面および外側表面を走査型電子顕微鏡
で観察したばあいにえられた映像を説明するため
の説明図である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 エラストマー溶液を環状ノズルから内部凝固
    液とともに押出したのち、全体を外部凝固液に浸
    し人工血管を製造する際に、エラストマー溶液に
    貧溶媒を加えて曇点を有する溶液とし、該溶液を
    曇点をこえる温度に保ちながら環状ノズルから押
    出し、かつ内部凝固液、外部凝固液、乾式距離内
    の空気のうち少なくとも1つを曇点温度以下に保
    持することを特徴とする人工血管の製法。 2 エラストマー溶液が、該エラストマーに対し
    て1〜250重量%の造孔剤を含有する特許請求範
    囲第1項記載の製法。
JP59044398A 1983-06-06 1984-03-07 人工血管の製法 Granted JPS60188166A (ja)

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Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS4964573A (ja) * 1972-10-25 1974-06-22
JPS5193786A (en) * 1975-02-15 1976-08-17 Makurokagatano chukuseni
US4173689A (en) * 1976-02-03 1979-11-06 University Of Utah Synthetic polymer prosthesis material

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