JPH0226460Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は洗い・脱水兼用の槽体の下部内方に容
器状の撹拌体を配設して該撹拌体を正逆回転させ
ることにより効果的な洗濯ができる様にした脱水
兼用洗濯機に関する。

〔考案の技術的背景とその問題点〕

従来の脱水兼用洗濯機のうち、洗いについて回
転羽根により水流を生じさせて洗浄作用を得る回
転羽根方式のものは洗濯物を水流により流動させ
ることを本質とするから布量に対して大きな槽体
容積を必要とし、これは一回で洗濯し得る量が少
ないことを意味する。また布量が少ないときは水
流が極端に強くなつて過剰洗浄気味になる一方、
布量が増加するとこれに伴い水流速度が低下して
洗浄効果が急速に低下する傾向がある。更に洗濯
物と回転羽根との接触は偶発的でしかも部分的に
しか生じないので洗濯物全体にわたる擦り洗い効
果を期待することができないし、逆に部分的に洗
濯物を傷めることになる。

一方最近になつて回転羽根を除去した新しい方
式のものとして、槽体全体を水と洗濯物を収容し
たまま間欠的に回転させて水と洗濯物との間の速
度差により洗浄作用を得ようとするものが提案さ
れているが、このものは洗濯物を傷めない利点を
有するものの洗濯物と水との間の速度差が小さく
且つ単純な動きとなつて洗浄効果が低いと云う難
点がある。

〔考案の目的〕

本考案は上述の事情に鑑みなされたものであ
り、従つてその目的は、従来の回転羽根或いは槽
体全体の回転によらずとも従来以上の洗浄効果及
び布傷み防止を期待できると共に一回で洗濯し得
る量を多くでき、しかも適切な洗浄効果を維持で
きる布量範囲を広くし得、併せてすすぎ効果等も
充分なものを得ることができる上、脱水運転につ
いても振動少なく運転できる極めて実用的な脱水
兼用洗濯機を提供するにある。

〔考案の概要〕

本考案は、上端の開口縁部にバランスリングを
有する槽体の下部内方に容器状撹拌体を収容して
具え、洗い時にその槽体を実質的に制止させた状
態にて容器状撹拌体を正逆回転させることにより
洗濯物を主に該容器状撹拌体周壁との接触摩擦力
及び前記槽体の上部周壁から受ける摩擦力との相
乗作用により洗濯し、脱水時に槽体と容器状撹拌
体とを共に一方向へ高速回転させることにより洗
濯物から水分を振切り排出する様にしたものであ
つて、且つ前記槽体の周壁部に該槽体内の水を揚
げて内方へ吐出せしめる揚水路を設けると共に、
これと対向する槽体周壁部に内方へ突出する突部
を該揚水路と重量的に均衡させて設けたものであ
り、以て洗濯物の前記槽体周壁及び容器状撹拌体
周壁の間の摩擦及び洗濯物どうしの摩擦による擦
り洗い効果と洗濯物が槽体周壁と容器状撹拌体周
壁とから異方向の力を受けてもまれることによる
所謂もみ洗い効果とを期待でき、併せて槽体内の
上下の水の入れ換え等も盛んに行なうことができ
て、同時に洗濯物の動きもより効果的にし、そし
て脱水時には槽体を重量バランス良く回転させ得
る様にしたことを特徴とするものである。

〔考案の実施例〕

以下本考案の一実施例につき図面を参照して説
明するに、先ず第１図に於いて、１は外箱であ
り、内部に水受桶２を配設して吊り棒機構３によ
り揺動自在に弾性支持している。４は槽体であ
り、これは上記水受桶２内に配設されていて深底
な容器状（有底円筒状）を成すものであるが、そ
れを本実施例の場合、全体の下半部を占める槽下
部４ａと上半部を占める槽上部４ｂとに分けて形
成し螺子５等により結合せしめた上で、前記水受
桶２内の底部に突出した中空の脱水軸６に取着し
ている。而して７は撹拌体で、これは比較的浅底
な容器状（鉢状）を成すものであり、上記槽体４
内特にその下部（槽下部４ａ）の内方に収容配設
されていて、前記脱水軸６を貫通した洗い軸８に
収着されている。又、該容器状撹拌体７はその周
壁内面を凹凸状となし、更にその周壁には多数の
脱水孔９を夫々形設しており、そして裏面，中で
も底部の裏面には中心部から略外周縁部まで延び
る裏羽根１０を複数枚突設している。一方、斯様
な容器状撹拌体７に対し、前記槽体４には特にそ
の槽下部４ａの底部に開口１１を形設して、それ
により前記脱水軸６の上端フランジ部６ａに形設
した通水孔１２を上記裏羽根１０に夫々中心部近
くで臨ませ、他方、側部には上記裏羽根１０部を
収容した槽体４底部の凹陥部１３から第２図にも
示す様に槽下部４ａ上端まで真直ぐ上方に延びる
溝１４と、これに連通して槽上部４ｂ下端から該
槽下部４ｂ上部までやはり真直ぐ上方に延びそし
て内方に指向する溝１５、並びにこれら溝１４，
１５の夫々槽内に臨む開放面部を塞ぐカバー１６
とで揚水路１７を形設しており、而してその先端
部には例えばリント捕獲用の網袋を主体としたフ
イルタ１８を装着している。この他、槽上部４ｂ
には上端部に例えば液体封入形のバランスリング
１９を、又、その下方の周壁部に多数の脱水孔２
０と例えば三個の突部２１とを夫々形設してお
り、その中で特に突部２１は詳細には第３図に示
す様に夫々槽上部４ｂの周壁部を内方へ膨出させ
て形設したもので、横断面形状が比較的なだらか
な山形を成し、その一つが前記揚水路１７と対向
し、他の二つは上記突部２１の一つと揚水路１７
との対向関係とは90度角異なる対向関係で互いに
臨み合つている。そして又、上記突部２１の中で
揚水路１７と対向した突部２１にはその裏側に所
要数のリブ２２等を設けることによつてその重量
を揚水路１７と均衡させており、更に他の二つの
突部２１についても例えば同様の装置を施すこと
によつてそれらの重量を均衡させている。尚、２
３は動力制御機構であり、モータ２４の回転力を
洗い時には洗い軸８に減速して且つ交互に反転す
るように伝え、また脱水時には脱水軸６及び洗い
軸８に伝えて槽体４を容器状撹拌体７と共に一方
向へ高速回転させるために減速機構，クラツチ機
構及びブレーキ機構等を内蔵している。２５は排
水弁で、槽体４内の水を水受桶２の底部から排水
ホース２６を通して機外に排出し得るようにして
いる。２７はタイマーであり、これによつて洗い
から最終脱水までの各行程を自動的に制御するよ
うにしている。

次に上記構成の作用について説明する。洗い時
には水受桶２内従つて槽体４内に従来の回転羽根
方式の洗濯機と同程度の量の水を供給し且つ洗濯
物を投入する。そして洗い運転は槽体４を回転し
ないようにブレーキ機構により拘束し実質的に制
止させた状態で容器状撹拌体７のみを正逆回転駆
動することによつて行なう。この実施例では容器
状撹拌体７の回転数を毎分120乃至180回転の範囲
以内とし且つ略２〜３回転毎に回転方向を反転さ
せるようにしている。

このような洗い運転において、洗濯物は容器状
撹拌体７の正逆回転によりその周壁と槽体４の上
部の周壁とにわたつて接触するため下方の部分で
は容器状撹拌体７からこれとの摩擦接触により回
転力があたえられ、上部位では槽体４の上部（槽
上部４ｂ）との摩擦接触により拘束力を受け、こ
うした異方向摩擦力を同時に受けることにより洗
濯物にねじれ或いは圧迫作用を与え、しかもそれ
が容器状撹拌体７の回転方向の反転により繰返し
行なわれると共に容器状撹拌体７の回転に伴う遠
心力によつて洗濯物が容器状撹拌体７の周壁方向
に押されその反作用を槽体４上部の周壁から内方
に向けて受けることにより上下に反転する作用を
も生じ複雑な動きが与えられる。又、このとき、
容器状撹拌体７から回転力が与えられた洗濯物は
槽体４の周壁と摩擦接触しつつ周方向に動くが、
突部２１に遭遇すると、この突部２１から大きな
抵抗力を受けて更に強く摩擦されると共に、その
突部２１から受ける抵抗力と容器状撹拌体７から
受ける回転力の相乗作用で下方に引き込まれ、更
に突部２１を乗り越えようとすることにより槽体
４の中心方向へと押しやられるようになる。従つ
て、突部２１の存在により洗濯物の動きがより複
雑化され、しかも洗濯物の上下の入れ替え及び径
方向の入れ替えがより積極的に行なわれ、洗濯物
全体がむらなく洗われる。

この様に本実施例による場合、洗濯物は、極め
て複雑な動きを呈し、その動きによる布どうしの
大きな摩擦、並びに槽体４及び容器状撹拌体７の
周壁との大きな摩擦により擦り洗い作用を受ける
かたわら、ねじれや圧迫の繰返しによる一種のも
み洗い作用をも受けて洗われるものであり、その
洗浄効果は第４図に比較実験結果の一例として示
した如くで、即ち、第４図において夫々、曲線Ａ
は本考案による場合、Ｂは従来の回転羽根方式に
よる場合、Ｃはこの考案に先行して考えられた洗
い槽回転方式による場合の洗浄比特性を示し、本
考案による洗浄効果が高いことが判る。

更に前述のように洗濯物は槽体４及び容器状撹
拌体７の周壁との摩擦接触によつて動かされるの
で布量が多くなるにつれて摩擦力も大きくなり布
量増加による洗濯物の動き度合の低下が少なく従
つて洗浄効果の低下率が小さい。しかも洗濯物は
布量が少ないときには容器状撹拌体７の周壁に対
する接触頻度が低い上に接触摩擦力が極めて小さ
く主として容器状撹拌体７の回転により生起され
た水流により流動されて洗われることになるが、
従来の回転羽根による場合の如く水流は過激に強
くならないので過剰洗浄にはならず布量の多少に
係らず、適切な洗浄度合に洗濯できる。これらの
ことは適切な洗浄効果を維持できる布量の範囲が
前述の先行技術による場合よりも広いことを意味
する（第４図参照）。

而して上述の洗い時並びにそれと同様の運転を
行なうすすぎ時には、容器状撹拌体７の回転に伴
い裏羽根１０が水受桶２内の水を通水孔１２から
開口１１を通して吸引し外方へと吐出することか
ら、その吐出された水が揚水路１７に導かれ該揚
水路１７を通つて更にフイルタ１８を通りそして
槽体４内に吐出されるということを繰返すもの
で、それにより槽体４内の上下の水の入れ替えを
促進できて、洗い時に洗液についての洗剤濃度の
むらを速やかに消去できるというばかりでなく、
特にはすすぎ時の洗液全体の希釈を早めることが
でき、斯くして効果的で且つ効率の良いすすぎを
行なうことができ、殊に洗濯物の量が多くて洗液
全体の希釈が進み難い場合に効果を奏する。尚、
揚水路１７の先端部にリント捕獲用のフイルタ１
８を有する上記実施例に於いては、洗濯物から離
散して水中に浮遊するリントの捕獲まで効果的に
行ない得る利点を有する。

そして上記実施例の場合、脱水運転は排水弁２
５の開放による排水後、図示しないクラツチ機構
等を作動させて槽体４及び容器状撹拌体７を一体
に一方向に高速回転せしめることにより行なわれ
るものであるが、このとき揚水路１７と突部２１
の一つとを位置的に対向させ且つそれらの重量も
均衡させて設けているため、槽体４はそれら揚水
路１７及び突部２１を有するものであつても実に
バランス良く回転され、よつて振動等の発生も少
なく運転し得る。

尚、上記揚水路１７と対向する突部２１以外の
他の突部２１についてもそれらを対称的に設けた
上記実施例の場合、槽体４を一層バランス良く回
転させ得る効果を奏するが、このことは必ずしも
必要な事柄ではなく、従つてそれら他の突部２１
の配置や有無等につき上記実施例とは異なる様に
構成しても良い。

その他、本考案は上記し且つ図面に示した実施
例にのみ限定されるものではなく、殊に揚水路の
具体的構造や突部の具体的構造そして更にはフイ
ルタの有無等につき、要旨を逸脱しない範囲内で
適宜変更して実施し得る。

〔考案の効果〕

以上にて明らかな様に本考案の脱水兼用洗濯機
は、槽体の下部内方に容器状撹拌体を収容して具
え、洗い時にその槽体を実質的に制止させた状態
にて容器状撹拌体を正逆回転させることにより洗
濯物を主に該容器状撹拌体周壁との接触摩擦力及
び前記槽体の上部周壁から受ける摩擦力との相乗
作用により洗濯し、脱水時に槽体と容器状撹拌体
とを共に一方向へ高速回転させることにより洗濯
物から水分を振切り排出する様にしたものであつ
て、且つ前記槽体の周壁部に該槽体内の水を揚げ
て内方へ吐出せしめる揚水路を設けると共に、こ
れと対向する槽体周壁部に内方へ突出する突部を
該揚水路と重量的に均衡させて設けたことを特徴
とするものであり、以て従来の回転羽根或いは槽
体全体の回転によらずとも従来以上の洗浄効果及
び布傷み防止を期待できると共に一回で洗濯し得
る量を多くでき、しかも適切な洗浄効果を維持で
きる布量範囲を広くし得、併せてすすぎ効果等も
充分なものを得ることができる上、脱水運転につ
いても振動少なく運転できるなど、数々の優れた
実用的効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示したもので、第１
図は全体の縦断側面図、第２図は揚水路部分の分
解斜視図、第３図は槽体の上部平面図、第４図は
洗浄比特性図である。 図中、４は槽体、７は容器状撹拌体、１７は揚
水路、２１は突部、２３は動力制御機構、２４は
モータである。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 槽体の下部内方に容器状撹拌体を収容して具
   え、洗い時にその槽体を実質的に制止させた状態
   にて容器状撹拌体を正逆回転させることにより洗
   濯物を主に該容器状撹拌体周壁との接触摩擦力及
   び前記槽体の上部周壁から受ける摩擦力との相乗
   作用により洗濯し、脱水時に槽体と容器状撹拌体
   とを共に一方向へ高速回転させることにより洗濯
   物から水分を振切り排出する様にしたものであつ
   て、且つ前記槽体の周壁部に該槽体内の水を揚げ
   て内方へ吐出せしめる揚水路を設けると共に、こ
   れと対向する槽体周壁部に内方へ突出する突部を
   該揚水路と重量的に均衡させて設けたことを特徴
   とする脱水兼用洗濯機。