JPH0217015Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案はアルカリ金属塩水溶液の電解に用いる
新規なフイルタープレス型電解槽に関する。詳し
くは、陽イオン交換膜を挾んで相対する電極室枠
を有するフイルタープレス型電解槽の陰極室側に
介在するパツキン（ガスケツト）又は絶縁性フイ
ルムと陽イオン交換膜とを特定な圧接構造とする
ことを特徴とするフイルタープレス型電解槽であ
る。

〔従来技術およびその問題点〕

フイルタープレス型電解槽は内部に陽極を収納
した陽極室枠と内部に陰極を収納した陰極室枠
（これら両者を総称して電極室枠とも称する）と
をイオン交換膜を介して相対させた基本構造（ユ
ニツトセルと称する）よりなる。この場合、１つ
の陽極室と１つの陰極室とが隔壁を介して接合
し、各室内にある陽極及び陰極の間を電気的に接
続された複極式構造、及び陽極室と陰極室とが
夫々独立に形成される単極式構造がある。いずれ
の構造にあつても、これらの電極室は多数重合し
て締付けられ、一個の電解槽として形成される。
例えば、複極式のフイルタープレス型電解におけ
るユニツトセルの縦方向切断面を第２図に示す。

かかるフイルタープレス型電解槽においては、
外部に電解液および気体が漏れるのを防止するた
めに、電極室枠である陽極室枠１と陰極室枠３と
の間にパツキン２および４を挿着してイオン交換
膜５を挾み締め付けていた。なお、６は多孔性陽
極、７は多孔性陰極、また８は隔壁を示す。

ところで、工業的な大型のフイルタープレス型
電解槽においては、重量も大きくなるため、一般
には電極室枠を架台上に乗せ、該枠間にイオン交
換膜及びパツキンを一つづつ順次入れ、人手によ
りこれを保持しつつ、次の電極室枠を押しつけ挾
み込む。このような作業による場合、第３図に示
す如く、挾み込む時に電極室枠１と３の締付枠部
に若干のズレを生じることが避けられなかつた。
また、締付時にパツキンを電極室枠の周縁部に一
致するようにはり合わせ挿着しようとしても、第
４図のようにパツキン２と４のズレがどこかに生
ずることも避けられなかつた。上記の第３〜４図
のように、陽極室枠１のパツキン２が陰極室枠３
のパツキン４よりもずれて電極室内に入つている
状態の場合には、そのパッキン部分に対応するイ
オン交換膜５の陰極側の面に多量の水泡が生じ、
該膜が破損するばかりか、その破損した部分から
陰極室液中へ陽極液が混入し、生成苛性アルカリ
中へ塩類が混入したり、逆に陽極室へ陰極液が混
入して電流効率の低下を起こす。この原因につい
ては定かではないが、本考案者等は次の様に考え
る。即ち、上記した如きズレを生じて締め付けが
不十分な陽極側のパツキン部では、パツキンとイ
オン交換膜間に隙間を生じて塩水が存在し、電気
はその部分にもイオン交換膜を通して流れる。と
ころが、その隙間部分はアルカリ金属塩水溶液の
供給が不足するため、イオン交換膜の陽極面にお
いて塩濃度が低下することにより陰極面に水泡が
生じるものと考えられる。このような状態が生じ
てイオン交換膜が破損した場合、該イオン交換膜
の交換を余儀なくされ、フイルタープレス型電解
槽を長期間連続運転することが困難となる。

上記問題を解決するために、例えば電槽を締め
付けた際に陰極室側パツキンの内縁が陽極室側パ
ツキンより内側に存在するように構成すること
（実開昭59−28558号）、陰極室枠側パツキンとイ
オン交換膜又は陰極室枠の間にテフロン等の絶縁
性フイルムを該フイルムの内縁が陽極室側パツキ
ンより内側に存在するごとく介在させること、或
いは陰極室枠の圧接面の内縁が陽極室枠の内縁よ
りも内側に存在するごとく構成すること（実開昭
59−76565号）が提案されている。しかしながら、
前２者の構成では、上記問題をある程度まで解決
することができるが、陰極室側のパツキン及び絶
縁性フイルムはイオン交換膜との密着（圧接）が
不十分である。他方、後者の構成では、第５図に
示すようにイオン交換膜５に接するパツキン２お
よび陽極６の面が同一線上に位置する場合に有効
であるが、一般に陽極６がチタン等の材料で上記
したような形状に加工することが難しいために、
第６図に示すようにパツキン２と陽極６の面が同
一線上にない場合も多く、特にパツキン２の面の
方が凸状になる場合にはイオン交換膜５とパツキ
ン４が十分に密着されない場合も生じることがあ
る。したがつて、前記したようなイオン交換膜５
に水泡を生じて、破損する問題を招く。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案者等は、フイルタープレス型電解槽にお
けるイオン交換膜の上記した如き劣化に着目し
て、その防止するための簡便な手段について検討
したところ、陰極室側に介在するパツキン又は絶
縁性フイルムとイオン交換膜を特定な圧接構造と
することによる効果を見い出し、本考案を提案す
るに至つた。即ち、本考案はイオン交換膜と電極
室枠とを交互に多数配列して締め付けたフイルタ
ープレス型アルカリ金属塩水溶液の電解槽におい
て、陰極室枠とイオン交換膜との間のパツキンま
たは絶縁性フイルムを陰極室枠の周縁部よりも内
部にはみださせ、また、該はみだしたパツキンま
たは絶縁性フイルムと陰極の間にバネ材を存在さ
せて、構成されたフイルタープレス型電解槽であ
る。

以下、本考案を図面に基づき詳細に説明する
が、本考案は以下の図面に特に限定されるもので
はない。

第１図は本考案の代表的な複極式フイルタープ
レス型電解槽の部分断面図を示す。図に示す部分
は電極室枠１，３（陽極室枠１、陰極室枠３）と
イオン交換膜５との間にパツキン２，４（陽極側
パツキン２、陰極側パツキン４）および絶縁性フ
イルム８を介在させた電極室上部の一部である。

本考案の特徴は陽極室枠１とイオン交換膜５と
の間に介在するパツキン２は、一般には陽極室枠
の周縁部にあわせ、陰極室枠３とイオン交換膜５
との間に介在するパツキン４又は該パツキン４と
イオン交換膜５との間に挿入する絶縁性フイルム
８は陰極室枠周縁部よりも内側にはみださせ（第
１図はパツキン４は陰極室の周縁部にあわせ、絶
縁性フイルム８を陰極室枠周縁部よりも内側には
みださせた態様を示す）、該はみだした絶縁性フ
イルム８（又は陰極側パツキン４）と陰極７の間
にバネ材９を存在させることである。このように
することにより締め付けた際、絶縁性フイルム８
（又は陰極室側パツキン４）の内縁部が陽極室側
パツキン２の内縁部よりも内側に存在し、且つ該
内縁部はイオン交換膜５に完全に圧接されるた
め、締め付け部におけるイオン交換膜のふくれが
防止される。なお、本考案において「内側」とは
電極室内部という意味で、一般には陰極室枠の周
縁部より５〜50mm程度である。

本考案に用いられるパツキン２，４は中央に欠
損部を有する額縁状のもので、該パツキンの外
形、欠損部の形状、及びサイズ等は電解槽を形成
する電極室枠の形状、サイズに応じて適宜決定す
ればよい。またパツキンの厚みは電解槽の大き
さ、締付圧、パツキンの材質等によつて多少異な
り一概に限定することはできないが、0.5〜10mm
の範囲が一般的である。更にパツキンの材質は公
知の材質が特に制限なく採用される。例えば、ク
ロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、フ
ツ素ゴム等の合成ゴム、軟質ポリ塩化ビニル、四
フツ化エチレン等が好適に使用される。また、絶
縁性フイルム８としては、絶縁性かつ陰極液又は
陰極で発生する気体に耐食性を有するテフロンが
一般的で、その形状等については上記したパツキ
ンに準じて適宜選定される。

本考案に用いられるバネ材９は、陰極７とイオ
ン交換膜５との一般に１〜５mm程度の間隙に挿着
した状態で、陰極室枠の周縁部よりはみでた絶縁
性フイルム８（又はパツキン４）の少なくとも一
部をイオン交換膜５に完全に密着できるものであ
ればよい。そのバネ材の形状としてはコイル状、
メツシュ状や板バネ状が一般的で、該バネ材の押
し付け圧力は一般に５〜100ｇ／cm²、特に20〜50
Kg／cm²が好適である。また、バネ材の材質として
は例えばステンレス鋼、ニツケル等が好適に使用
される。

本考案は、上記した如くフイルタープレス型電
解槽におけるパツキンとバネ材の構成に特徴を持
たせたもので、その他の電解槽の形状、構成など
については公知のものを特に制限なく採用するこ
とができる。例えばイオン交換膜は耐久性に優れ
たものであれば特に制限されないが、一般には陽
イオン交換基を有する所謂パーフロロカーボン系
の陽イオン交換膜が好適に用いられる。

本考案に用いられる電極室枠は上述した部分に
特徴を有する他は公知のもので、一般に額縁状で
内部に陽極、陰極が夫々取付けられた陽極室枠、
陰極室枠とがある。陽極室枠の材質は耐塩素性の
金属やプラスチック、又、陰極室枠は耐アルカリ
性の金属やプラスチツクが使用される。この際の
電極室枠の形状は電解槽や電極の形状により任意
に選定すればよく、また電極の材質、形状等も公
知のものが特に制限なく使用できるが、特に孔径
の小さいものが加工性に優れるため好ましく用い
られる。

〔効果〕

本考案の電解槽によれば、イオン交換膜と電極
室枠との間に介在する額縁状のパツキン又は該パ
ツキンとイオン交換膜との間に挿着する絶縁フイ
ルムの内縁が陽極側のパツキンの内縁より内側に
はみ出て存在し、且つ該はみ出し部と陰極の間に
はバネ材が存在するため、電解槽を締め付けた際
に陰極室の周縁部より内側にはみ出したパツキン
または絶縁性フイルムとイオン交換膜とが良好に
圧接することが出来、電解時における前記の問題
を解決することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の代表的な複極式フイルタープ
レス型電解槽の部分断面図を示す。また、第２図
は従来の複極式のフイルタープレス型電解槽にお
けるユニツトセルの縦方向切断面で、第３図、第
４図、第５図及び第６図はその部分断面図であ
る。図中１は陽極室枠、２，４はパツキン、３は
陰極室枠、５はイオン交換膜、６は多孔性陽極、
７は多孔性陰極、８は絶縁性フイルム、９はバネ
材である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. イオン交換膜と電極室枠とを交互に多数配列し
   て締め付けたフイルタープレス型のアルカリ金属
   塩水溶液用電解槽において、陰極室枠とイオン交
   換膜との間にパツキン、または絶縁フイルムを陰
   極室枠の周縁部よりも内側にはみださせ、かつ該
   はみだしたパツキンまたは絶縁フイルムの部分と
   陰極との間にバネ材を存在させて構成されたフイ
   ルタープレス型電解槽。