JPH0215620Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は万十軒瓦や輪型雪止桟瓦などの瓦本体
から突出した部分を有する瓦の成形金型に関す
る。

（従来の技術） 従来、瓦には、その葺き方、使用箇所に応じて
各種形状のものが使用されている。例えば第１図
に示す通称万十軒瓦と称せられる軒瓦１には、瓦
本体２の軒先側の端縁に垂れ部３が一体状に垂設
されるとともに、該垂れ部３の一端部には通称万
十と呼ばれる小巴４が設けられている。また第２
図に示す通称輪型雪止桟瓦５には、その瓦本体６
のやや下方部中心位置に細幅アーチ状の雪止桟７
が設けられて瓦本体６間に空間部８が形成されて
いる。

このように、垂れ部３、小巴４及び雪止桟７の
ように瓦本体２，６より突出する部位の成形は成
形金型、すなわち上下金型の成形面間に上記垂れ
部３、小巴４及び雪止桟７の成形部を設け、上下
金型に所定の厚さを有する板状の荒地を納めて上
金型を成形機により数回上下動して荒地を押圧し
粘土を充分に突出部位の成形部に流動させて成形
品に押圧成形するものであつた。

（考案が解決しようとする問題点） 従つて、垂れ部３、小巴４及び雪止桟７の突部
となる部位は板状の荒地を押圧成形して粘土をそ
の成形部へ流動させて成形するものである。この
ため、荒地を押圧することで、金型内に残留する
空気や荒地中に含浸されていた空気、油分、汚れ
カス（以下単に不純物等という）が表面側へにじ
み出すとともに、この不純物等が粘土の流動にと
もなつて突部の成形部へ流動して、同突部となる
表面部位にこの不純物等が残留して、例えば万十
軒瓦１においては小巴４の部位、また輪型雪止桟
瓦５においては雪止桟７の下方の本体６部位にキ
レ９を発生する素因となり、このため成形機から
取出した瓦素地を点検してキレ９発生部位を手作
業等により修正することを余儀なくされ、極めて
面倒であるとともに、瓦成形の自動化に大きな障
害となる問題点があつた。

（問題点を解決するための手段） 本考案は上金型と下金型とにより粘土板の荒地
を押圧して瓦を成形する瓦成形金型であつて、前
記上金型又は下金型の少なくとも一方の型には型
内面と型外面とに連通する連通孔を貫設して、弱
圧成形の際には前記連通孔を開口し、強圧成形の
際には閉止する開閉手段を付設する構成としたこ
とである。

（作用） 連通孔を開口した状態で弱圧成形がなされるの
で不純物等が残留した部分は、連通孔から押し出
されて金型外に除去される。続いて連通孔を閉止
した上で、強圧成形がなされて粘土は型内の隅角
部に充分流動されて所定の形状に成形がなされ
る。

（第１実施例） 次に、本考案の第１実施例を第３図から第５図
に従つて説明する。

この第１実施例は万十軒瓦１の成形の場合を示
すもので、図中２０はプレス成形機であつて、そ
のベツド２１の両側にはガイドシヤフト２２が所
定の間隔で立設され、同ベツド２１の中央部には
断面略Ｔ型状のベースガイド２３が固設されると
ともに、該ベースガイド２３上には下金型取付用
の可動ベース２４が摺動可能に取付けられてい
る。

２５は成形機２０の駆動部であつて、同駆動部
２５にはねじ部を有するスピンドル２６が上下方
向に螺進退可能に設けられ、同スピンドル２６の
下端部にはガイドシヤフト２２に上下動可能に装
架されたスライド体２７がほぼ中央部に枢着され
て、該スライド体２７はスピンドル２６の螺進退
によりガイドシヤフト２２に沿つて垂直に摺動案
内される。また、スライド体２７の下面側には上
金型を着脱可能に取付ける取付部２８が設けられ
ている。このように設けられたプレス成形機の取
付部２８及び可動ベース２４には万十軒瓦１成形
用の上下金型２９，３０が取付けられている。

上下金型２９，３０は万十軒瓦１成形用の金型
で、上金型２９は該万十軒瓦１の下面側を、また
下金型３０は上面側を成形するものであつて、上
下金型２９，３０の成形面間により万十軒瓦１の
成形部３１が形成される。該成形部３１のうち、
小巴４部を成形する小巴成形部３２は、下金型３
０の前側内壁に小巴４形に凹設された凹部３３
と、上金型２９の前側側壁とにより形成される。
該小巴成形部３２の上部には連通孔３４が前向き
に設けられ、また上端には連通孔３５が上向きに
設けられている。該連通孔３４，３５が開口する
下金型３０の外側面には、それぞれ弁開閉用シリ
ンダ３６，３７がブラケツト３８，３９により固
設されていて、該弁開閉用シリンダ３６，３７の
先端に取付けた弁体４０，４１の進退により連通
孔３４，３５の開閉を可能とされている。

次に、本実施例における成形過程について説明
する。

上金型２９の垂直下方位置から引き出されてい
る下金型３０内に、所定の板状に成形された荒地
の粘土Ｗが挿入載置されて、ベースガイド２３上
を摺動して所定の上金型２９の垂直下方位置まで
移動される。このとき、連通孔３４，３５は開口
されている（第５図イ参照）。

次に駆動部２５の駆動により上金型２９は降下
して、弱圧成形が行なわれる。弱圧成形は上金型
２９を弱い押圧力で２，３回上下動を繰返すこと
により行なわれるものであつて、粘土Ｗは成形部
３１内を変形流動して略瓦形に成形される。ここ
で小巴成形部３２内では、流動した粘土Ｗのうち
不純物等が残留する部位、すなわち連通孔３４，
３５付近の粘土Ｗは繰返し押圧により連通孔３
４，３５から下金型３０外へ押出されて小巴成形
部３２から排除される。従つて、小巴成形部３２
内にも不純物等の残留しない粘土Ｗによつて満た
される（第５図ロ参照）。

次に、弁開閉用シリンダ３６，３７が伸長して
弁体４０，４１は連通孔３４，３５を閉止し、続
いて、再度上金型２９が降下して強圧成形がなさ
れる。強圧成形は、弱圧成形より強い押圧力で、
上金型２９が２，３回上下動を繰返し押圧するこ
とによつて行なわれ、粘土Ｗは成形部３１の隅々
まで流動変形して成形品Waとなる（第５図ハ参
照）。

強圧成形が終了すると、上金型２９は下金型３
０との係合を離れた所定位置まで上昇する。続い
て、下金型３０はベースガイド３２上を引き出さ
れて、瓦形となつた成形品Waが取出される。取
出された成形品Waは乾燥されて素地とされる。

以上によつて、荒地から成形品Waへの成形の
一行程が終了する。

本実施例は上記構成としたため、瓦成形に伴つ
てにじみ出した不純物等の残留した部分は弱圧成
形の際に下金型３０側に設けた連通孔３４，３５
から排除されるので小巴４の部位にキレ９を発生
しない良好な万十軒瓦１の成形を行なうことがで
きる。

（第２実施例） 次に、本考案の第２実施例を第６図に従つて説
明する。

この第２実施例は輪型雪止桟瓦５の成形の場合
を示すもので、第１実施例の万十軒瓦１の成形の
場合と同じくプレス成形機２０の取付部２８及び
可動ベース２４に輪型雪止桟瓦５成形用の上下金
型５１，５２が取付けられている。

上下金型５１，５２は輪型雪止桟瓦５成形用の
金型で、上金型５１は該輪型雪止桟瓦５の下面側
を、また下金型５２は上面側を成形するものであ
つて、上下金型５１，５２の成形面間により輪型
雪止桟瓦５の成形部５３が形成される。ただし、
下金型５２の雪止桟７を形成する部位には該雪止
桟７の上面に沿つた円弧状の凹部５４が形成され
ている。該凹部５４は成形の終期に空間部８を輪
切りにして雪止桟７を形成するものであつて、該
凹部５４の一側壁内部には空間部８の断面形状と
された輪型切断刃５５がエアシリンダ５６に取付
けられて待機している。また成形部５３のうち凹
部５４が形成された上端部には連通孔５７が上向
きに設けられている。該連通孔５７が開口する上
金型５１の外面上側には弁開閉用シリンダ５８が
ブラケツト５９により固設されていて、該弁開閉
用シリンダ５８の先端に取付けた弁体６０の進退
により連通孔５７の開閉を可能とされている。

次に本実施例における成形過程について説明す
る。

上金型５１の下方位置から引き出されている下
金型５２内に、所定の板状に成形された荒地の粘
土W′が装入載置されて、ベースガイド２３上を
摺動して所定の上金型５１の垂直下方位置まで移
動される。このとき、連通孔５７は開口されてい
る（第６図イ参照）。

次に駆動部２５の駆動により上金型５１は降下
して弱圧成形が行なわれる。弱圧成形は上金型５
１を弱い押圧力で２，３回上下動を繰返すことに
より行なわれるものであつて、粘土W′は成形部
５３内を変形流動し、凹部５４内にも第６図ロの
矢線方向に流動して略瓦形に成形される。ここで
流動した粘土W′のうち不純物等が残留する部位、
すなわち連通孔５７付近の粘土は繰返し押圧によ
り連通孔５７から上金型５１外へ押出されて成形
部５３から排除される。従つて、雪止桟７下方部
の本体６部位にも不純物等の残留しない粘土
W′によつて満たされる（第６図ロ参照）。

次に弁開閉用シリンダ５８が伸長して弁体６０
は連通孔５７を閉止し、続いて再度上金型５１が
降下して強圧成形がなされる。強圧成形は弱圧成
形より強い押圧力で、上金型５１が２，３回上下
動を繰返し押圧することによつて行なわれ、粘土
W′は成形部５３の隅々まで流動変形する（第６
図ハ参照）。

強圧変形が終了すると、凹部５４の側壁内に待
機していた輪切切断刃５５がエアシリンダ５６の
伸長により凹部５４内に伸長して、雪止桟７の下
方の空間部８に相当する粘土W′を輪切にする
（第６図ニ参照）。

上金型５１は下金型５２との係合を離れた所定
位置まで上昇した後に、下金型５２はベースガイ
ド２３上を引き出されて瓦形となつた成形品W′a
が取出される。取出されたW′aは、輪型切断刃５
５により輪切りされた空間部８の粘土が取除かれ
た後乾燥されて素地とされる。

以上によつて、荒地から成形品W′aへの成形の
一行程が終了する。

本実施例は上記構成としたため、瓦成形に伴つ
てにじみ出した不純物等の残留した部分は弱圧成
形の際に上金型５１側に設けた連通孔５７から排
除されるので、雪止桟７の下方の本体６部位にキ
レ９を発生しない良好な輪型雪止桟瓦５の成形を
行なうことができる。

（考案の効果） 本考案は上金型と下金型とにより粘土板の荒地
を押圧して瓦を成形する瓦成形金型であつて、前
記上金型又は下金型の少なくとも一方の型には型
内面と型外面とに連通する連通孔を貫設して、弱
圧成形の際には前記連通孔を開口し、強圧成形の
際には閉止する開閉手段を付設する構成としたこ
とにより、瓦本体から突出した部分を有する瓦の
成形におけるキレの素因となる空気、油、汚れカ
スを排除することができて、良好な瓦成形品を成
形することができ、面倒な修正作業を不要なもの
とし、また瓦成形の自動化に優れた効果を有す
る。

【図面の簡単な説明】

添附図面中第１図は万十軒瓦の斜視図、第２図
は輪型雪止桟瓦の斜視図であつて、成形時に発生
するキレ９を併せて示す。第３〜５図は本考案の
第１実施例を示し、第３図は万十軒瓦の成形機の
正面図、第４図は一部の拡大断面図、第５図イ〜
ハは瓦の成形過程を示す説明図である。第６図イ
〜ニは本考案の第２実施例を示し、輪型雪止桟瓦
の成形過程を示す説明図である。 ２９，５１……上金型、３０，５２……下金
型、３４，３５，５７……連通孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 上金型と下金型とにより粘土板の荒地を押圧し
   て瓦を成形する瓦成形金型であつて、前記上金型
   又は下金型の少なくとも一方の型には型内面と型
   外面とに連通する連通孔を貫設して、弱圧成形の
   際には前記連通孔を開口し、強圧成形の際には閉
   止する開閉手段を付設する構成としたことを特徴
   とする瓦成形金型。