JPH0212300Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はデイーゼルエンジン等の内燃機関に用
いられる燃料噴射弁に関する。

（従来技術及びその問題点） 一般にデイーゼルエンジンにおいては、低速低
負荷域で燃料噴射弁からの初期噴射率が高いと、
着火遅れ期間中に多量の燃料が噴射されて着火と
同時に多量の燃料が急激に燃焼するため、急激な
温度上昇による排気中のNOxの増加及び急激な
圧力上昇により燃焼騒音が大きくなり、また高速
高負荷域では噴射期間が長くなるとスモークが悪
化するという問題がある。

斯かる問題を解決するため従来、特開昭59ー
176462号及び特開昭59ー183068号が提案されてい
る。これらのものはホール型ノズルの燃料噴射弁
において針弁のリフト初期にリフト規制をして燃
料の初期噴射率を低く抑えて燃焼騒音やNOxの
発生の低減を図ると共に、リフト後期にリフト規
制を解除してリフト速度を速め、噴射期間を短縮
してスモークの悪化を防止し得るようにしたもの
である。

しかし、これらの従来技術のいずれのものも針
弁が初期リフトしてから全リフトするまでの間燃
料噴射は連続的に行なわれて、噴射中断期間即ち
初期リフト（初期噴射）してから燃料噴射を一時
中断した後全リフト（主噴射）するという所謂パ
イロツト噴射機能を備えていないために、燃焼騒
音やNOxの発生を確実に低減させることが困難
であつた。

（考案の目的） 本考案は上記事情に鑑みてなされたもので、低
速低負荷域ではパイロツト噴射を行い、エンジン
騒音やNOxの発生を確実に低減し得ると共に、
高速高負荷域ではパイロツト噴射を行わないよう
にして噴射期間を短縮してスモークの悪化を確実
に防止できるようにした燃料噴射弁を提供するこ
とを目的とするものである。

（問題点を解決するための手段） 上記目的を達成するために本考案においては、
燃料噴射ポンプに接続される流入口を有するノズ
ルホルダと、該ノズルホルダに支持され且つ下端
側に前記流入口に連通する噴孔を有するノズルボ
デイと、該ノズルボデイ内に摺動可能に装着され
ノズルスプリングにより前記噴孔を閉じる方向に
付勢された針弁と、該針弁の上方に初期リフト用
間隙を存して配設され該針弁が初期リフト後全リ
フトするまでの間該針弁と一体にリフトすると共
にストツパスプリングにて下方に付勢されたスト
ツパと、該ストツパの上方に前記針弁の全リフト
間隙より大なるパイロツト噴射用ストローク間隙
を存して設けられ且つ前記ストツパスプリングに
て上方に付勢され上端に前記流入口に連通する通
路内の燃料油圧を受けるヘツドを有するセントラ
ルプランジヤとを具備し、該セントラルプランジ
ヤのヘツド直径を前記針弁の受圧部直径より小さ
く且つ前記通路の直径より大きく設定したことを
特徴とする燃料噴射弁を提供するものである。

（考案の実施例） 以下本考案の一実施例を添附図面に基づいて説
明する。

第１図は本考案の燃料噴射弁の縦断面図を示
し、同図中１はノズルホルダで、その下端部には
デイスタンスピース２を介してノズルボデイ３が
リテーニングナツト４により支持され、前記ノズ
ルボデイ３の内部嵌装孔５には針弁６がその上端
面とデイスタンスピース２の下端面との間に全リ
フト間隙L₂を設けることにより軸心方向に沿つ
て全リフト摺動可能に嵌装してある。該針弁６は
前記ノズルボデイ３の下端に穿設した噴孔７と前
記嵌装孔５の下端部との間の油溜室８内に供給さ
れる燃料の圧力（噴射管内圧力）に応じて作動
し、針弁６が下限位置に位置してそのシート部６
ａがノズルボデイ３のシート部３ａに当接すると
前記噴孔７が閉塞される。

前記ノズルホルダ１は図示しない燃料噴射ポン
プに接続される流入口１ａを有し、該流入口１ａ
と前記ノズルボデイ３の油溜室８とは前記ノズル
ホルダ１内に形成された通路１ｂと前記デイスタ
ンスピース２内に形成された通路２ｂと前記ノズ
ルボデイ３内に形成された通路３ｂとによつて連
通されている。

前記針弁６の上端のピン９には可動ばね座１０
が取り付けられ、該可動ばね座１０は前記デイス
タンスピース２の中央の貫通孔１１内に位置し、
前記デイスタンスピース２と遊嵌状態をなしてい
る。

前記可動ばね座１０にはノズルスプリング１２
の下端が支持されており、該ノズルスプリング１
２は前記ノズルホルダ１の軸方向略中間部より下
端に向けて設けられたばね嵌装室１３内に位置し
上端が前記ばね嵌装室１３の上端に設けられた固
定ばね座１４に支持されている。このノズルばね
１２によつて前記針弁６が閉弁方向（下方向）に
付勢されている。

前記針弁６のリフトを規制するストツパ１７が
前記針弁６に取り付けられた可動ばね座１０の上
方に配設されている。該ストツパ１７はピストン
部１７ａの下端面にロツド１７ｂを突設した構成
で、前記ピストン部１７ａが前記ノズルホルダ１
の上端側に形成されたシリンダ部１ｅに軸方向摺
動自在に嵌合され、下端面は前記固定ばね座１４
の上端面に当接しており、ロツド部１７ｂは前記
固定ばね座１４に穿設された中心孔１４ａに遊嵌
され、その下端は前記可動ばね座１０の上端面に
固着された環状突起部１０ａ内に遊嵌され、ロツ
ド部１７ｂの下端面と可動ばね座１０の上端面と
の間には前記全リフト間隙L₂より小さい初期リ
フト間隙L₁が設けられている。

前記ストツパ１７はその上端面に下端を当接さ
せて設けたストツパスプリング１６により下方に
付勢され、該ストツパスプリング１６は前記ノズ
ルホルダ１のシリンダ部１ｅに遊嵌され、その上
端面はセントラルプランジヤ１５の下端面に当接
されている。該セントラルプランジヤ１５はヘツ
ド１５ａと該ヘツド１５ａの下端面に固着された
ロツド１５ｂとにより構成されており、該ヘツド
１５ａは前記ノズルホルダ１のシリンダ部１ｅに
液密且つ軸方向摺動自在に嵌合され且つ前記スト
ツパスプリング１６により上方に付勢され、ヘツ
ド１５ａの上端面はシリンダ部１ｅの上端面に当
接されている。又、ロツド１５ｂの下端面とスト
ツパ１７のピストン部１７ａの上端面との間には
前記全リフト間隙L₂より大きいパイロツト噴射
用ストローク間隙L₃が設けられている。

前記ノズルホルダ１の上端側には前記シリンダ
１ｅの上端面の中心に開口し且つ前記流入口１ａ
に連通する通路１ｃが形成されている。該通路１
ｃを介して前記セントラルプランジヤ１５のヘツ
ド１５ａの上端面に燃料油圧が供給される。

又、第２図に示す如く前記セントラルプランジ
ヤ１５のヘツド１５ａの直径D₂は前記針弁６の
受圧部直径D₁より小さく且つ前記通路１ｃの直
径D₃より大きく設定されている。この関係を次
式(1)に示す。

D₁＞D₂＞D₃ …(1) 更に又、前記ノズルスプリング１２と前記スト
ツパスプリング１６とのばね定数及び図示の状態
における両スプリング１２，１６のセツト力は前
記針弁６が初期リフトL₁だけリフトした後にセ
ントラルプランジヤ１５が下動を始めるようにさ
れている。

尚、前記ノズルホルダ１の所定箇所には前記ば
ね嵌装室１３内と外部とを連通する燃料リーク通
路１８が形成されており、該燃料リーク通路１８
を介して前記ばね嵌装室１３内に流入した燃料を
図示しない燃料タンクへ排出するようにされてい
る。

（作用） 次に、上記のように構成された本考案の燃料噴
射弁の作用を説明する。

燃料噴射ポンプ（図示省略）から燃料が圧送さ
れると、該圧送燃料は流入口１ａから通路１ｂ，
２ｂ及び３ｂを通つて油溜室８内に流入する。該
油溜室８内への圧送燃料の流入に伴い、噴射管内
圧力が上昇し、その圧力が針弁６に作用する。

低速低負荷時には第３図ａに示すように燃料噴
射ポンプのカム回転角が増加するに伴い、噴射管
内の燃料圧がノズル開弁圧Poに達すると第３図
ｂに示すように針弁６がノズルスプリング１２の
付勢力に抗して初期リフトL₁の範囲で上動（リ
フト）し、第３図ｃに示すようにパイロツト噴射
が始まる。カム回転角が更に増加するに伴い、燃
料圧がP₁になるとセントラルプランジヤ１５が
ストツパスプリング１６の付勢力に抗してL₃だ
け下動し、該下動した分だけ噴射管内の容積が増
大するため燃料圧がPo以下に低下し、該燃料圧
低下にて針弁６が全リフトすることなく初期リフ
トした位置から下動して閉弁位置に戻り噴孔７を
閉じることによつて燃料噴射が中断される。この
後、引き続いてカム回転角が更に又増加するに伴
い、燃料圧が再び上昇し、針弁６は再び上動し、
初期リフトL₁の範囲を越えてなおも上動するこ
とによりストツパ１７とセントラルプランジヤ１
５とがノズルスプリング１２の付勢力とヘツド１
５ａに作用する燃料圧に抗して押し上げられて針
弁６が全リフトL₂することによつて主噴射が行
なわれる。この後、ノズル６、ストツパ１７及び
セントラルプランジヤ１５は第１図の位置に戻
り、燃料噴射が終了する。これによつて燃焼騒音
やNoxの発生が確実に低減される。

又、高速高負荷時にはカム回転角に伴う燃料圧
の上昇率が大きいため燃料圧Poで噴射が始まり、
燃料圧P₁の時セントラルプランジヤ１５は第１
図の状態から僅かに下方に移動するが、ポンプの
燃料送率が大きいため第４図ａに示すように燃料
圧は僅かに低下して再び上昇する。従つて針弁６
は第４図ｂに示すように初期リフトL₁だけ上動
してから途中で下動することなくストツパ１７と
一体に全リフトL₂に達し、第４図ｃに示すよう
に噴射が途中で中断されない。即ちパイロツト噴
射作用は行われない。尚、前記式(1)のD₁＞D₂の
関係により針弁６の受圧面積がセントラルプラン
ジヤ１５の受圧面積より大きく、該両受圧面積の
差によつて最終的には針弁６が噴射管内圧力によ
り上動する。この後、ノズル６、ストツパ１７及
びセントラルプランジヤ１５は第１図の位置に戻
り、燃料噴射が終了する。以上のことによつて高
速性能が損なわれず、又、スモークの悪化も起こ
らない。

（考案の効果） 以上詳述した如く本考案の燃料噴射弁によれ
ば、燃料噴射ポンプに接続される流入口を有する
ノズルホルダと、該ノズルホルダに支持され且つ
下端側に前記流入口に連通する噴孔を有するノズ
ルボデイと、該ノズルボデイ内に摺動可能に装着
されノズルスプリングにより前記噴孔を閉じる方
向に付勢された針弁と、該針弁の上方に初期リフ
ト用間隙を存して配設され該針弁が初期リフト後
全リフトするまでの間該針弁と一体にリフトする
と共にストツパスプリングにて下方に付勢された
ストツパと、該ストツパの上方に前記針弁の全リ
フト間隙より大なるパイロツト噴射用ストローク
間隙を存して設けられ且つ前記ストツパスプリン
グにて上方に付勢され上端に前記流入口に連通す
る通路内の燃料油圧を受けるヘツドを有するセン
トラルプランジヤとを具備し、該セントラルプラ
ンジヤのヘツド直径を前記針弁の受圧部直径より
小さく且つ前記通路の直径より大きく設定するよ
うにしたので、低速低負荷域ではパイロツト噴射
が行われ、燃焼騒音及びNOxの発生が確実に低
減され、高速高負荷域ではパイロツト噴射が行わ
れず、エンジンに高出力が得られ、スモークが悪
化しないという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示し、第１図は本考
案の燃料噴射弁の側断面図、第２図は第１図の要
部拡大図、第３図及び第４図は夫々低速低負荷時
及び高速高負荷時における本考案の燃料噴射弁の
特性を示す線図である。 １……ノズルホルダ、１ａ……流入口、１ｂ，
２ｂ，３ｂ……通路、３……ノズルボデイ、６…
…針弁、７……噴孔、１２……ノズルスプリン
グ、１５……セントラルプランジヤ、１６……ス
トツパスプリング、１７……ストツパ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 燃料噴射ポンプに接続される流入口を有するノ
   ズルホルダと、該ノズルホルダに支持され且つ下
   端側に前記流入口に連通する噴孔を有するノズル
   ボデイと、該ノズルボデイ内に摺動可能に装着さ
   れノズルスプリングにより前記噴孔を閉じる方向
   に付勢された針弁と、該針弁の上方に初期リフト
   用間隙を存して配設され該針弁が初期リフト後全
   リフトするまでの間該針弁と一体にリフトすると
   共にストツパスプリングにて下方に付勢されたス
   トツパと、該ストツパの上方に前記針弁の全リフ
   ト間隙より大なるパイロツト噴射用ストローク間
   隙を存して設けられ且つ前記ストツパスプリング
   にて上方に付勢され上端に前記流入口に連通する
   通路内の燃料油圧を受けるヘツドを有するセント
   ラルプランジヤとを具備し、該セントラルプラン
   ジヤのヘツド直径を前記針弁の受圧部直径より小
   さく且つ前記通路の直径より大きく設定したこと
   を特徴とする燃料噴射弁。