JPH0211665B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は銅表面を粗面化する方法、特に熱交
換器等に使用する銅板、銅中空材等において、高
性能伝熱面を形成するためにその表面を粗面化す
る方法に関する。

表面積を拡大して高伝熱性能を得るために金属
表面を粗面化する方法としては、サンドブラスト
法のような機械的な方法、薬品を用いた化学的な
いしは電気化学的な方法等が一般によく用いられ
る。しかしながら、これらのいずれの方法による
場合も、金属表面に焼結によつて多孔質層を形成
するように場合に較べると、伝熱性能において劣
るものしか得ることができない。かつ、機械的な
粗面化方法においては、中空材例えばパイプの内
面を粗面化するようなことは困難であり、化学的
エツチング法においては、エツチング後の薬品の
完全な除去が困難であるし、中空材の内面あるい
は外面のいずれか片面のみを粗面化処理するよう
な場合、その処理工程が複雑かつ厄介である等の
問題点があつた。

この発明は、上記のような実情に鑑み、金属の
表面に多孔質層を形成した場合と略同等な高伝熱
性能を具有せしめうると共に、パイプ等の中空材
の内面の粗面化にも容易に対応しうるところの、
特に銅表面の粗面化処理の方法を提供しようとす
るものである。

この発明は、銅表面を、該面にアルミニウム粉
末を拡散侵透せしめることによつて粗面化するも
のであり、更に詳しくは、銅表面に、アルミニウ
ム粉末、またはアルミニウム粉末と銅粉末との混
合物を均一に層状に付着せしめた後、真空、非酸
化性雰囲気または還元性雰囲気中でアルミニウム
と銅の共晶温度以上に加熱して銅表面に前記アル
ミニウム粉末を拡散侵透せしめることを特徴とす
る銅表面を粗面化する方法を提示するものであ
る。

この発明における上記アルミニウム粉末は、純
アルミニウム粉末の他、例えばAl−Si系、Al−
Cu系、Al−Mn系、Al−Mg系等の各種アルミニ
ウム合金粉末も含まれる。このアルミニウム粉末
の粒径は20〜500μｍ程度のものを用いるのが良
い。これが20μｍより小さい場合、および500μｍ
より大きい場合には、銅表面に十分な高伝熱性能
を有する粗面を得ることができない。最も好まし
くは20〜200μｍ程度のものを用いるのが良い。
またアルミニウム粉末を単独で用いても良いが、
銅基材に対する拡散侵透を良くするためには、そ
れを銅粉末との混合状態にして用いるのが有効で
ある。この場合、銅粉末も粒径20〜500μｍの範
囲のものを用いるのが好ましい。また、アルミニ
ウム粉末と銅粉末との混合割合は、重量比３：１
程度とするのが好ましいが、もとよりこれに限ら
れるものではない。

アルミニウム粉末またはアルミニウム粉末と銅
粉末の混合物を銅表面に層状に付着せしめるにつ
き、その手段は、この発明において特に限定され
るものではない。従つて、例えば従来、金属表面
に金属粉末をろう付けして多孔質層を形成する場
合に用いられている既知の方法に倣つて、上記粉
末ないしはその混合物を液状プラスチツク等の結
合剤と混ぜて適当な粘度のスラリー状のものをつ
くり、これを刷毛塗り、吹き付け等の手段で銅表
面に均一に塗布するものとしても良い。しかしな
がら、この方法の場合には、粉末の沈降現象によ
りそれが結合剤と分離し易いこと、均一な塗布が
難かしいこと、加熱時に結合剤が分解飛散して炉
内を汚染すること、パイプや中空材の内面への処
理が困難であること等の問題点があるため、次の
ような手段にて行うのが有利である。即ち、粗面
化すべき銅表面に、予め高級アルコールを塗布
し、然る後上記アルミニウム粉末ないしは粉末の
混合物をその上に振りかけて高級アルコール層に
付着保持せしめるものとするのが有利である。こ
こに高級アルコールとしては、例えばヘキシルア
ルコール、オクチルアルコール、セチルアルコー
ル、ステアリルアルコール、セリルアルコール、
デシルアルコール、ノニルアルコール、ラウリル
アルコール、オレインアルコールなどの任意のも
のを選んで使用しうる。またその塗布法は、刷毛
塗り、吹き付け、ロールコーター等の任意の手段
を採用しうる。

アルミニウム粉末を銅表面に拡散侵透せしめる
ために行う加熱は、アルミニウムと銅の共晶温度
である548℃以上の温度で行うことが必要であり、
好ましくは600〜620℃程度のやや高温域で10〜30
分程度の時間をかけて行うものとするのが良い。
かつまた、良好なアルミニウム粉末の拡散侵透を
生ぜしめるために、上記加熱処理は、真空、非酸
化性雰囲気または還元性雰囲気中で行うことが必
要である。

この発明によれば、銅表面にアルミニウム粉末
を拡散侵透せしめることにより、該銅表面を著し
く粗面化することができる。この粗面化された表
面層は、恰も多孔質層に近似したポーラスなもの
であり、従来の焼結法によつて銅表面に形成され
る多孔質層の場合と略同等の非常に優れた熱伝達
性能を有するものとなつて熱交換器等の顕著な性
能向上に役立つものである。しかも前述したよう
な高級アルコールを予め銅表面に塗布して、これ
にアルミニウム粉末ないしはそれと銅粉末との混
合物を付着保持せしめる手段等を採用することに
より、銅パイプ等の中空材の内面を粗面化処理す
ることも容易にできると共に、処理工程がいずれ
も簡易なものであつて作業性が良く、かつ銅表面
の所要の一部だけの部分的粗面化も容易になしう
る。

次に、この発明の実施例を示す。

実施例 １ C1220Pからなる２mm×50mm×100mmの銅板を希
硝酸液中で洗滌し、乾燥後、その表面にオイレン
アルコールを薄く均一に塗布した。一方、平均粒
径50μｍの純アルミニウム粉末と、平均粒径50μ
ｍの純銅粉末とを重量比３：１の割合で混合し、
この混合物を、前述のデシルアルコール塗布面上
に均一に振りかけ、然る後これを真空度１×
10^-4torr以下（加熱開始時）、加熱温度610℃、時
間20分の条件下で加熱し、その後250℃まで炉冷
した。

その結果、銅表面が著しく粗面化されたものが
得られた。

実施例 ２ 銅パイプの内面にデシルアルコールを塗布した
のち、これに平均粒径50μｍの純アルミニウム粉
末だけを付着保持せしめるものとして、他は実施
例１と同様に処理したところ、結果においても実
施例１と略同じ状態の粗面化を銅パイプ内面に実
現することができた。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 銅表面に、アルミニウム粉末、またはアルミ
   ニウム粉末と銅粉末との混合物を均一に層状に付
   着せしめた後、真空、非酸化性雰囲気または還元
   性雰囲気中でアルミニウムと銅の共晶温度以上に
   加熱して銅表面に前記アルミニウム粉末を拡散侵
   透せしめることを特徴とする銅表面を粗面化する
   方法。 ２ 銅表面に高級アルコールを塗布し、その上に
   アルミニウム粉末または粉末の混合物を振りかけ
   て上記高級アルコールに保持させることにより、
   銅表面に粉末ないしはその混合物を層状に付着せ
   しめることを特徴とする特許請求の範囲第１項記
   載の銅表面を粗面化する方法。