JPH0146243B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はシヤンクに長手方向溝が形成された手
持工具用のドリルに関するものである。

コンクリートまたは岩石等の硬質材料に孔を穿
つにはパーカツシヨンドリル装置やハンマードリ
ルが用いられている。これら２種類の工具のう
ち、パーカツシヨンドリル装置は製造原価が比較
的安いために最も広く使用されている。パーカツ
シヨンドリル装置の別の利点はドリルの工具部分
とシヤンクの直径が等しいことである。直径が等
しいことによりドリルが経済的に製造でき、安価
に購入可能となるからである。使用に際してドリ
ルは、そのシヤンクにおいて異なる直径のチヤツ
クに不動に固定される。ドリルの直径が比較的大
きければドリルに対するトルクの伝達効率が高
い。これは、直径が大であるほどクランプ面積、
すなわちシヤンクとチヤツクとの接触面積が増加
することによるものである。したがつてパーカツ
シヨンドリル装置においては最大出力をドリルに
及ぼすことが可能となる。

ハンマドリルはパーカツシヨンドリル装置と対
比して構成がより複雑であり、使用条件が相違す
るためにドリルを装着・保持する態様を本質的に
別異のものとする必要がある。特に、使用時にド
リルに及ぼされる衝撃力の運動エネルギが高いた
め、ドリルは工具保持具内である程度の可動性を
有する必要がある。したがつてハンマドリル用に
は特別のドリルが用いられるようになつており、
最も普及しているドリルはシヤンクに工具保持具
の鎖錠素子と係合する軸線方向に閉鎖した長手方
向溝が形成されたものである。

パーカツシヨンドリル装置およびハンマドリル
におけるドリル保持手段が本質的に異なる概念に
基づいているため、この種の工具におけるドリル
に互換性を持たせる経済的必要性が生じるに至つ
ている。かかる必要性は、パーカツシヨンドリル
装置とハンマドリルの双方を使用する全ての産業
分野に存在する。現時点では、直径の異なる多数
のドリルを用意するのが通例であるが、それらは
何れも特定の工具でしか使用できない。換言すれ
ば、パーカツシヨンドリル装置用の安価に入手可
能なドリルはハンマドリルの工具保持具に設けら
れた鎖錠素子によつて固定することができない。
その逆に、ハンマドリル用のドリルは溝を有して
いるため、パーカツシヨンドリル装置のチヤツク
におけるジヨーによりドリルを心出し状態下で保
持具内に保持することもできない。

したがつて本発明の目的は、工具保持具内に正
確に装着できる従来品の利点を維持しつつ経済的
に製造可能であり、しかもパーカツシヨンドリル
装置用としてもハンマドリル用としても好適なド
リルを提案するにある。

この目的を達成するために本発明は、ドリルの
シヤンクに形成された長手方向溝を少なくとも１
つのウエブによつて複数の長手方向部分に分割
し、ウエブの表面をシヤンクの輪郭と一致させる
ことを特徴とする。

シヤンクの上記構成により、工具部分とシヤン
クの直径が等しいドリルを安価に製造し、異なる
工具に対する互換性をもたせることが可能とな
る。ウエブは長手方向溝の各長手方向部分に隣接
する領域と協働して、パーカツシヨンドリル装置
のチヤツクのジヨーに対する支持部分として機能
するので、パーカツシヨンドリル装置内でドリル
を軸線方向に正確かつ確実に位置決めすることが
可能である。そして結果的にドリルの摩耗量およ
び動力伝達損失の最小化が達成される。

本発明におけるシヤンクの上記構成により、ド
リルをハンマドリルに最良の性能の発揮される態
様で装着することも可能となる。工具保持具の鎖
錠素子を溝の長手方向部分の数および配置に対応
させて設け、かつ長手方向部分内に突入させるこ
とによりドリルを軸線方向の遊びがほとんど生じ
ない状態で確実に保持することができる。

上記の長手方向溝は数個の相互に離間したウエ
ブによつて更に長手方向部分に分割することがで
きる。かかる構成は全長のかなりの部分にわたつ
て案内を必要とする大形のドリルに適当である。
ハンマドリル操作に際しての摩耗を減少し、力の
伝達効率を向上するために、長手方向溝の各長手
方向部分に２以上の鎖錠素子を係合させることが
できる。各ウエブはシヤンクの初期断面形状が加
工されずに残されている領域により形成し、その
両側で各長手方向溝の長手方向部分と隣接させる
のが有利である。

本発明の好適な実施例においては、シヤンクの
端面と、これに近接する長手方向溝の端部との間
の間隔をシヤンクの直径の0.3〜1.0倍とする。こ
れにより工具保持具におけるチヤツクのジヨーま
たは鎖錠素子の軸線方向の係合位置が特定され
る。このように位置が特定されることは、ドリル
の鎖錠素子を工具保持具の中心軸線に対して直角
な方向に開閉調整してその都度長手方向部分と係
合可能とする場合に特に有利である。シヤンクの
直径が10mmであれば、上記の間隔は例えば６mmと
することができる。

本発明の好適な実施例においては、ウエブの幅
をシヤンクの直径の0.4〜1.1倍とする。この範囲
内の幅を有するウエブを設けることにより、チヤ
ツクのジヨーがウエブの領域のみにおいてシヤン
クの外周と接する構成である場合にシヤンクの中
央長手方向部分の適切な区域においてチヤツクの
ジヨーを良好に支持することが可能となる。ウエ
ブの幅は、シヤンクの直径が10mmであれば例えば
８mmとすることができる。

本発明の好適な実施例においては、長手方向溝
の各長手方向部分の長さをシヤンクの直径の0.7
〜1.7倍とする。かかる構成によれば長手方向部
分の長さが鎖錠素子を力の吸収作用を伴なつて係
合させるに十分な長さとなり、さらに、長手方向
部分上に位置するチヤツクのジヨーが長手方向部
分内に落込まずに溝の形成されていないシヤンク
上の領域またはウエブ上で良好に支持されること
になる。長手方向部分の長さは、シヤンクの直径
が10mmであれば、例えば８mmとすることができ
る。

本発明の好適な実施例においては、長手方向溝
の深さをシヤンクの直径の0.1〜0.3倍とする。溝
の深さを上記の範囲内で定めることにより、一方
では鎖錠素子を支障なく係合させることができ、
他方ではシヤンクの強度低下を最小とすることが
可能となる。さらに、長手方向部分の上記範囲内
での深さは、例えば弧状またはＵ字断面形状の溝
と組合わせて使用する場合に、シヤンクの比較的
僅かな領域のみを加工すれば良い点でも有利であ
る。

ドリルの回転防止は、溝の長手方向部分の断面
形状をＶ字形状とすることによつて最も効果的に
達成される。この場合、長手方向部分の各フラン
クは相互に傾斜するので、鎖錠素子を対応するく
さび形状に形成する。そのために溝のフランクと
鎖錠素子のフランクとが大面積で接触するので、
この領域における摩耗を大幅に低減することが可
能となる。上記の配置により力の伝達容量が高ま
るのみならず、シヤンクの外周における加工面積
が最小となるので、チヤツクのジヨーを良好に支
持することが可能となる。

パーカツシヨンドリル装置においてはドリルの
心出しをチヤツクのジヨーにより行なつているの
に対し、ハンマドリルでは長手方向溝の形状に対
応させて形成した鎖錠素子によつて心出しを行な
う。長手方向溝の断面形状がＶ字形状である場合
には、鎖錠素子によりドリルの心出しを行なうに
あたつて主として溝の底部を用いる可能性もあれ
ば溝のフランクを用いる可能性も考えられる。い
ずれの態様で心出しを行なう場合でも、各長手方
向部分のフランクのなす角度を50゜〜130゜とする
のが有利であることを確認した。もつとも心出し
の基準面が溝の底部である場合には上記の範囲内
で若干大きめの角度、例えば約120゜を採用するの
が望ましい。また、心出しの基準面が溝のフラン
クである場合には接線方向の分力を考慮して角度
を50゜〜70゜とするのが望ましい。

以下、本発明を図示の実施例について説明す
る。

第１図に示す本発明の第１実施例において、ド
リル１は工具部分２と、これと連続するシヤンク
３とを具えている。シヤンクの外周上にＵ字断面
形状の３本の長手方向溝４を等角度間隔に分散さ
せて形成する。各溝４は２つのウエブ５により長
手方向部分４ａ，４ｂ，４ｃに分割し、そのウエ
ブの表面はシヤンク３の突面の輪郭と一致させ
る。

シヤンク３の前端3aと、これに近接する長手
方向溝４の各端部との間の間隔Ａはシヤンクの直
径Ｄの0.4倍とする。本例において各ウエブ５の
幅Ｂはシヤンクの直径の0.6倍とする。溝４の各
長手方向部分４ａ，４ｂ，４ｃの幅は相互に等し
いものとし、本例においてはシヤンクの直径の
0.8倍とする。同様に各長手方向部分の深さＴは
本例においてはシヤンク３の直径の0.2倍とする。

第２図に示す本発明の第２実施例において、ド
リル１１は工具部分１２とシヤンク１３とを具え
ている。３本の長手方向溝１４をシヤンク１３の
外周に形成し、各溝１４をウエブ１５により第３
図に明示するごとく断面Ｖ字形状の２つの長手方
向部分１４ａ，１４ｂに分割する。長手方向部分
１４ａ，１４ｂの各フランク１６のなす角度は本
例においては100゜とする。

シヤンク１３の前端１３ａと、これに近接する
長手方向溝１４の各端部との間隔Ａは本例におい
てはシヤンクの直径Ｄの0.6倍とする。ウエブの
幅Ｂおよび溝の各長手方向部分１４ａ，１４ｂの
長さＬはそれぞれシヤンク１３の直径Ｄの0.8倍
とする。溝１４の深さＴはシヤンク１３の直径の
0.2倍とする。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の第１実施例によるドリルを一
部破断して示す側面図；第２図は本発明の第２実
施例によるドリルを示す第１図と同様な側面図；
そして第３図は第２図の―線に沿う横断面図
である。 ３，１３…シヤンク、４，１４…長手方向溝、
４ａ，４ｂ，４ｃ，１４ａ，１４ｂ…長手方向部
分、５，１５…ウエブ、１６…フランク。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 手持工具用のドリルであつて、シヤンクに長
   手方向溝が形成されたものにおいて、長手方向溝
   を少なくとも１つのウエブによつて複数の長手方
   向部分に分割し、ウエブの表面をシヤンクの輪郭
   と一致させることを特徴とするドリル。 ２ 請求の範囲１記載のドリルにおいて、シヤン
   クの端面と、これに近接する長手方向溝の端部と
   の間の間隔をシヤンクの直径の0.3〜1.0倍とする
   ことを特徴とするドリル。 ３ 請求の範囲１又は２記載のドリルにおいて、
   ウエブの幅をシヤンクの直径の0.4〜1.1倍とする
   ことを特徴とするドリル。 ４ 請求の範囲１、２又は３記載のドリルにおい
   て、長手方向溝の各長手方向部分の長さをシヤン
   クの直径の0.7〜1.7倍とすることを特徴とするド
   リル。 ５ 請求の範囲１〜４のいずれか１つに記載のド
   リルにおいて、長手方向溝の深さをシヤンクの直
   径の0.1〜0.3倍とすることを特徴とするドリル。 ６ 請求の範囲１〜５のいずれか１つに記載のド
   リルにおいて、溝の長手方向部分の断面形状をＶ
   字形状とすることを特徴とするドリル。 ７ 請求の範囲６記載のドリルにおいて、各長手
   方向部分のフランクのなす角度を50゜〜130゜とす
   ることを特徴とするドリル。 ８ 請求の範囲７記載のドリルにおいて、各長手
   方向部分のフランクのなす角度を50゜〜70゜とする
   ことを特徴とするドリル。