JPH0130983B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、耐熱保形性の優れた建築物の断熱
外壁構造体に関するものである。

一般に、鉄筋ケンクリート造、コンクリートブ
ロツク造などの建築物の壁を断熱構造とする場
合、従来は、壁躯体の室内側に断熱材を取りつけ
る所謂内断熱工法が広く用いられていた。この内
断熱工法に対し壁躯体の室外側に断熱材を取りつ
ける外断熱工法が知られているが、この外断熱工
法は、内断熱工法に比して、 (イ) 暖冷房を停止しても室温の低下が少ない。

(ロ) 壁躯体を含む壁体内部での結露が発生しにく
い。

(ハ) 壁躯体の保護に役立つ。

(ニ) 断熱改修を行なう場合、居住したままで居室
を狭くすることなく断熱改修が可能である。

などの特徴を有するので、次第に普及しはじめて
いる。

ところで、この外断熱工法には、断熱材と仕上
材とが一体となつた断熱パネルを断熱ボルトなど
により壁躯体に固定する方法、あるいは、断熱材
をコンクリート躯体に接着剤で貼り付け、更に断
熱材の上に躯体まで届くアンカーボルトでグラス
フアイバーメツシユを止め、その上にモルタルを
塗着して表面を仕上げる方法などがある。

この発明に係る断熱外壁構造体は、上述の外断
熱加工法のうち、後者の断熱材を壁躯体に接着剤
により貼り付けて表面を仕上げする方法により断
熱構造としたものである。その目的とするところ
は、隣家で火災が発生した場合、その火災のため
に外断熱加工を施した発泡プラスチツク系の断熱
材が高温により溶融し、表面の仕上材が脱落して
消火活動に支障を来たすような不都合、欠陥を改
善できる建築物の断熱外壁構造体を提供するにあ
る。

この発明が提供する建築物の断熱外壁構造体
は、壁躯体と、この壁躯体の外表面に貼り付けた
断熱材と、この断熱材の端部に、その表面から裏
面にかけて跨つた状態で被せ、かつ断熱材の裏面
側の端部を壁躯体に貼り付けた透過性の折返保持
シートと、この折返保持シートの前記断熱材の表
面側の端部と重ね合せて、同端部とともに、断熱
材の表面に接着剤で貼り付けた透過性の平坦状保
持シートとを有する建築物の断熱外壁構造体とを
有するものである。

以下に、この発明の実施例を図面について説明
する。

図において、１は鉄筋コンクリートまたはコン
クリートブロツクなどの建築物の壁躯体、２は壁
躯体１の室外側にモルタルなどの接着剤３で貼り
付けたポリウレタンフオーム、ポリスチレンフオ
ームなどの断熱材、４は断熱材２の端部２ａの表
面から裏面にかけて跨つた状態で被せたグラスフ
アイバーメツシユのような透過性のある折返保持
シート、５は断熱材２の表面に接着剤で貼り付け
た平坦状保持シートで、前記した折返保持シート
４と同様のグラスフアイバーメツシユのような材
料で形成してあり、透過性を有している。平坦状
保持シート５の側端部５ａは、前記折返保持シー
ト４の端部４ａと重ね合せて断熱材２の表面に後
述のモルタル６で一体に貼り付けられている。

６は両保持シート４，５を断熱材２の表面に貼
り付けるための接着剤で、例えばモルタルのよう
な材料、７は両保持シート４，５の表面に形成さ
れる仕上材で、化粧モルタルとか他の外装不燃化
粧板などをモルタルのような接着剤を用いて貼り
付けられるものである。

つぎに、施工手順を詳説する。

まず、第１図は、建築物の上端部Ａの構造体の
一例を示したもので、壁躯体１の室外壁において
断熱材２の上端部に相当する個処にあらかじめ折
返保持シート４の基部４ｂをモルタルなどの接着
剤３によつて貼り付けて置く。

そして、その後に断熱材２を接着剤３により壁
躯体１の外表面に貼り付ける。折返保持シート４
の自由端部は断熱材２の表面に被せる。このよう
にすると、折返保持シート４は、断熱材２の端部
２に、その表面から裏面にかけて跨つた状態で、
被せられることになる。

この状態で数日間養生して置き、断熱材２が壁
躯体１に完全に接着されたところで、断熱材２の
表面に平坦状保持シート５をモルタルなどの接着
剤６で貼り付ける。その際、平坦状保持シート５
の上端、すなわち側端部５ａは、折返保持シート
４の端部４ａと重ね合せる。この重ね合せ部を透
過した接着剤６により両者４ａ，５ｂは断熱材２
に一体に固着される。

そして、最後に化粧材または化粧モルタルなど
により接着剤６の上に仕上材７を形成して構造体
を得る。

なお、断熱材２は、所望の奥行と長さを有する
一定の大きさの平面体として形成し、この平面体
を連続して敷設するのが好ましい。

上述の構成において、隣家の火災などで室外側
より高温で壁表面が加熱された場合、断熱材２は
溶融して壁躯体１に沿つて変形しながら流下す
る。しかし、断熱材２の上端には壁躯体１に接着
した折返保持シート４があり、この折返保持シー
ト４の端部４ａは平坦状保持シート５の上端の側
端部５ａと重ね合せて一体に連結してあるため、
断熱材２の溶融に伴なつて変形することは殆どな
い。したがつて、上記構造によれば、仕上材７の
変形、脱落、破損などを防止できる。

つぎに、建築物の下端部に設ける断熱外壁構造
体の一例を、第２図によつて説明する。

壁躯体１の室外側において断熱材２の下端部に
相当する個処にあらかじめ折返保持シート４の基
部４ｂをモルタルなどの接着剤によつて貼り付け
て置く。

そして、その後に断熱材２を接着剤３により壁
躯体１の外表面に貼り付ける。なお、断熱材２の
下端部２ａには折返保持シート４の自由端部を、
前述したところと同様に、断熱材２の表面に被せ
る。

この状態で数日間養生して置き、断熱材２が壁
躯体１に完全に接着されたところで、断熱材２の
表面に平坦状保持シート５をモルタルなどの接着
剤６により貼り付ける。その際、平坦状保持シー
ト５の下端すなわち側端部５ａは、折返保持シー
ト４の端部４ａと重ね合せる。両者４ａ，５ａ
は、この重ね合せ部を透過した接着剤６により断
熱材２に一体に固着される。

つぎに、不燃化粧材または化粧モルタルなどに
より接着剤６の上に仕上材７を形成して構造体を
得る。

なお、この場合も断熱材２は所望の奥行と長さ
を有する一定大きさの平面体として形成し、この
平面体を連続して敷設するのが好ましい。

叙上の構成に成るから、前記したと同様に室外
側より高温で外壁が加熱された場合、断熱材２が
溶融して変形しても、断熱材２の下端には壁躯体
１と接着した折返保持シート４が平坦状保持シー
ト５と一体に連結されているので、接着剤６と仕
上材７は形くずれせず、仕上材７の破損、脱落な
どの不都合を防ぐことができる。

また、建築物の開口端部Ｃに設ける断熱外壁構
造体の一例を、第３図によつて説明する。

図示された開口部廻りは窓構造体８の周囲を示
しており、壁躯体１に形成される窓取付孔９に窓
構造体８の取付枠１０を固定し、前記壁躯体１と
取付枠１０に亘る室外側において折返保持シート
４の基部４ｂをモルタル等の接着剤によつて予じ
め貼り付けて置く。そして、その後に断熱材２を
接着剤３により壁躯体１および取付枠１０に沿つ
て貼り付ける。この場合、断熱材２の端縁部２ａ
には、前記折返保持シート４の自由端部を、前述
したところと同様に、断熱材２の表面に被せる。

この状態で数日間養生して置き、断熱材２が壁
躯体１に完全に接着されたところで、断熱材２の
表面に、一部を折返保持シート４と重合させた側
端部５ａを有する平坦状保持シート５を、モルタ
ルなどの接着剤６によつて貼り付ける。

そして、最後に不燃化粧材または化粧モルタル
などの仕上材７を接着剤６の上に形成して構造体
を得る。

なお、断熱材２は所望の奥行と長さを有する一
定大きさの平面体として形成し、この平面体を連
続して敷設するのが好ましい。

上述の窓構造体８は、図示では金属製サツシ窓
８ａと木製窓８ｂとによつて構成され、水切板１
１を取付けて構成してある。

叙上の構成において、前述したと同じように室
外側より火災などの高温、高熱作用を受けると、
断熱材２が溶融状態となつて流動し、変形するこ
ととなるが、壁躯体１に固着した折返保持シート
４が平坦状保持シート５の側端部５ａと連結され
ているので、接着剤６と仕上材７の形くずれがな
く、仕上材７の破損、脱落などの不都合はなくな
る。

なお、上記各実施例においては、接着剤として
モルタルを使用したが、断熱性を具備するもので
あれば、種類を問わない。また、保持シート４，
５は、グラスフアイバーメツシユに限定すること
なく、他の網状、織成、編成などで耐熱性と透過
性を有し、好ましくはモルタルなどの接着剤との
接着性に優れ、かつ断熱材２および仕上材７との
密着効果の優れたものであれば、その材質、構造
は問わない。グラスフアイバーメツシユの場合
は、グラスフアイバーメツシユの束を通常４〜６
mm程度の間隔の目の荒さのメツシユに織つたもの
を使用する。好ましくは、グラスフアイバーはア
ルカリ処理されたものがよい。接着剤としては耐
熱性を具備し、熱溶融し難いものを使用する。ま
た、折返保持シート４を取り付ける場合は、予じ
め断熱材２の端縁部２ａに折り曲げてかけてお
き、その状態の下に断熱材２と共にモルタルなど
の接着剤３により壁躯体１に接着することもでき
る。

さらに、平坦状保持シート５を長尺にして置い
て、その一部を折返保持シート４と同様に用い
て、全体を一枚物として使用することもできる。
要は、断熱材２の表面に貼り付けられる平坦状保
持シート５と共に断熱材２側端部２ａを抱持でき
る構成であれば良い。また、断熱材２は、保温性
があり、好ましくは軽量であれば種類を問わな
い。

この発明の断熱外壁構造体は、上述のように構
成したので、火災などによる高温、高熱が壁構造
体の室外側より作用して断熱材が溶融しても、保
持シートによつて構造体の端部は保形され、した
がつて、表面の仕上材が破損、落下する虞れはな
く、消火活動に支障を来たすおそれもない。

さらに、この発明によれば、耐火性に優れた建
築物の壁構造体が得られる。また、折返保持シー
トおよび平坦状保持シートとして一枚物を用いた
場合は、施工が簡単になるなどの効果が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図はこの発明に係る建築物の
上端部、下端部および窓構造物のそれぞれの各部
を示す断熱外壁構造体の断面図、第４図は同上保
持シートの貼着状態を示す拡大断面図である。 １……壁躯体、２……断熱材、４……折返保持
シート、５……平坦状保持シート、７……仕上
材、８……窓構造体、Ａ，Ｂ，Ｃ……端部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 壁躯体と、この壁躯体の外表面に貼り付けた
   断熱材と、この断熱材の端部に、その表面から裏
   面にかけて跨つた状態で被せ、かつ断熱材の裏面
   側の端部を壁躯体に貼り付けた透過性の折返保持
   シートと、この折返保持シートの前記断熱材の表
   面側の端部と重ね合せて、同端部とともに、断熱
   材の表面に接着剤で貼り付けた透過性の平坦状保
   持シートとを有する建築物の断熱外壁構造体。 ２ 折返保持シートと、これと重ね合せる平坦状
   保持シートとは、その重ね合せる部分があらかじ
   め一体に形成された一枚のシートである特許請求
   の範囲第１項記載の建築物の断熱外壁構造体。 ３ 折返保持シートと平坦状保持シートは、グラ
   スフアイバーメツシユである特許請求の範囲第１
   項または第２項記載の建築物の断熱外壁構造体。 ４ 断熱材は、発泡ポリスチレン、ウレタンフオ
   ーム等の発泡プラスチツク系材料で形成したもの
   である特許請求の範囲第１項、第２項または第３
   項記載の建築物の断熱外壁構造体。