JP7862018B2 - 単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法 - Google Patents
単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法Info
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Description
本発明は、単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法に関する。
シリコンは近年のエレクトロニクスの発展を支えてきた半導体である。1990年に可視光発光がポーラスシリコンの形状とすることで確認されて以来、発光素子への応用のために、シリコンフォトニクス分野の研究開発が進められてきている。シリコンは半導体であるが、可視光の発光や吸収を考える場合、直接遷移型と間接遷移型の2種類の半導体に分類されて考察されている。直接遷移型の半導体では、運動量に対するエネルギー空間において、価電子帯エネルギーの頂上と、伝導帯エネルギーの底部は同一運動量に位置しているため、可視光のエネルギーだけで運動量を満足できるため、発光(蛍光)の効率が高い。しかし、通常の半導体シリコンが含まれる間接遷移型の半導体では、価電子帯のエネルギーの頂上と、伝導帯のエネルギーの底部が一致していないため、発光にあたっては、可視光の運動量に半導体シリコンの格子振動の運動量も加えた運動量となるため、発光(蛍光)の効率は直接遷移型半導体に比べて低くなっている。通常のシリコンでは、そのバンドギャップに相当するエネルギー1.2eVを波長に換算した約1μmの波長となる近赤外光の蛍光が得られるが、10nm未満のシリコンナノ粒子径とすることで、可視光発光に相当する蛍光が得られるようになってきている。この理由は、シリコンをナノ化することで、間接遷移型から直接遷移型に移行していることが指摘されている。なお、シリコンナノ粒子が表面から酸化された場合では、可視光発光に寄与する実質的なシリコンナノ粒子径は減少するため、実際には20nmまでのシリコン粒子径まで許容できる。
可視光の蛍光を生じるシリコンナノ粒子に関して、特許文献1には、市販のシリコン粒子(粒径100nm、シリコン純度98%以上)を用いて、結晶シリコン粉末をフッ酸処理して表面の酸化膜を除去し、硝酸で表面を再度酸化して酸化膜を生成させ、これをフッ酸で除去していくことによるシリコンナノ粒子の製造方法が開示されている。しかし、市販のシリコン粒子を用いているため、製造されたシリコンナノ粒子は単結晶ではなく、実験例2の粒子の粒子径は2000nm程度及び10~20nmの2山の粒度分布であった。また、この製造方法では、フッ酸と硝酸の酸性物質を使用するため、取り扱いに非常に注意が必要であり、工業的に容易に製造することができにくい。
特許文献2には、シリコン粉末にパルスレーザーを照射させて、蒸発したシリコンを所望の基板上に堆積させることによるシリコンナノ粒子の製造方法が開示されている。しかし、製造されたシリコンナノ粒子の粒子径は50~100nm程度であった。また、この製造方法では、パルス発振可能なレーザーが必要であり、安価に半導体シリコン微粒子を製造できない。
特許文献3には、シリコン原料の化合物としてシリコン化合物とアルコールを混合した逆ミセル構造を還元物質で還元することによるシリコンナノ粒子の製造方法が開示されている。しかし、実験No.9で得られたシリコンナノ粒子は、300nm~350nmの紫外波長領域で蛍光したとされており、可視光の波長領域ではない。そのため、その工業的な応用範囲は狭く、照明やディスプレイの分野に適用できない。
特許文献4には、0℃以下の反応温度の還元剤を用いた有機溶媒中でシリコンナノ粒子の製造方法が開示されている。副反応を抑える等のために0℃以下の反応温度に限定されることが[0065]~[0067]に記載されている。しかし、製造されたシリコンナノ粒子が単結晶及び球状であるかは記載されていない。また、フラスコ内での閉鎖された条件での製造方法であり、反応によるシリコンナノ粒子と反応物質が共存する雰囲気でシリコンナノ粒子の生成が行われるため、シリコンナノ粒子と反応物質との副反応の懸念がある。実施例1で、金属リチウムにDBB(4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を加えて、室温で2~4時間攪拌して還元液を調液し、-60℃で四塩化シリコンを一気に加えて反応させて、塩素終端シリコンナノ粒子を製造し、臭化ヘキシルマグネシウムで表面安定化処理を行って、アルキル基終端シリコンナノ粒子を作製している。しかし、本明細書の比較例1に記載の通り、特許文献4の実施例1のアルキル基終端シリコンナノ粒子は、多結晶であり、単結晶及び球状ではない。
本出願の出願人に係る特許文献5には、接近、離反可能な相対的に回転する処理用面間を備えた流体処理装置を用いることによるシリコンナノ粒子の製造方法が開示されている。また、製造されたシリコンナノ粒子は、製造温度の変化に従って、青色から近赤外までの蛍光を生じることができることが記載されている。しかし、シリコンナノ粒子が単結晶及び球状であることは開示されていない。実施例6~9において作製されたシリコンナノ粒子は、臭化ヘキシルマグネシウムと反応させることによって、アルキル基(ヘキシル基)終端シリコンナノ粒子が製造されている。シリコンナノ粒子中には塩素と酸素は検出されない純度であることが開示されている。また、本明細書の比較例1に記載の通り、特許文献5の実施例6のアルキル基終端シリコンナノ粒子は、多結晶であり、単結晶及び球状ではない。実施例10~13では、シリコンナノ粒子が界面活性剤を用いた逆ミセル法によって作製できることが開示されているが、界面活性剤の洗浄除去に伴うシリコンナノ粒子の回収量の損失が大きいことが課題となっていた。更に実施例14~17では、流体処理装置に供給する第1流体と第2流体は両方ともに水溶液を使用しているため、シリコンナノ粒子の生成収率が非常に低いことが課題となっていた。
特許文献6には、マイクロ化学プロセスと呼ばれる幅1mm以下の流路内で反応を行うことによるコアシェル構造を有する半導体微粒子の製造方法が開示されている。具体的には、マイクロリアクター中の微小流路内で反応を行うことで混合速度、効率を向上させて、流路内の反応条件における濃度や温度均一性を改善し、副反応等を抑制することで粒子サイズの均一化、反応生成物の単一化を効果的かつ効率的に行うことができると言われている。しかし、シリコンナノ粒子や還元反応によって生ずる副生成物が流路に詰まることによってマイクロ流路の閉鎖が起こる可能性が高いことや、基本的には分子の拡散だけで反応を進行させるため、全ての反応に対して適応可能ではなかった。また、マイクロ化学プロセスでは、平行して小さな反応器を並べるナンバリングアップというスケールアップ法を用いるが、1つの反応器の製造能力が小さく、大きなスケールアップが現実的でないことや、また各々の反応器の性能を揃えることが難しく、均一な生成物を得られない等の問題があった。更に、粘度の高い反応液や、粘度上昇を伴なような反応では微少な流路を流通させるためには非常に高い圧力が必要であり、使用できるポンプが限られることや、高圧にさらされるため装置からの漏れが解決出来ないという問題点があった。
本発明の課題は、200nm~300nmの深紫外線の光から可視光までの広い波長の光による励起によって、高い蛍光量子効率で青色から橙色の蛍光を生じことができ、太陽電池や二次イオン電池の電極材料等を高密度に充填することができるシリコンナノ粒子を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決するため、鋭意検討をした結果、単結晶であり、球状であり、平均粒子径が1nm~20nmである単結晶球状シリコンナノ粒子が、蛍光効率を低減する粒界を持たない単結晶であるために、200nm~300nmの深紫外線の光から可視光までの広い波長の光による励起によって、高い蛍光量子効率で蛍光を生じることができ、太陽電池や二次イオン電池の電極材料等を高密度に充填できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1] 単結晶であり、球状であり、平均粒子径が1nm~20nmである単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法であって、
ハロゲン化シリコンを含む原料液と、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物から生成される前記縮合芳香族化合物のアニオンを含む還元液とを混合して反応させる工程を含み、
前記縮合芳香族化合物のアニオンが、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して調液される製造方法。
[2] 接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用面の間にできる薄膜流体中で、前記原料液と前記還元液とを混合して反応させる、[1]に記載の製造方法。
ハロゲン化シリコンを含む原料液と、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物から生成される前記縮合芳香族化合物のアニオンを含む還元液とを混合して反応させる工程を含み、
前記縮合芳香族化合物のアニオンが、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して調液される製造方法。
[2] 接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用面の間にできる薄膜流体中で、前記原料液と前記還元液とを混合して反応させる、[1]に記載の製造方法。
[3] 被処理流動体に圧力を付与する流体圧付与機構と、第1処理用部、及び前記第1処理用部に対して相対的に接近・離反可能な第2処理用部の少なくとも2つの処理用部と、上記の第1処理用部と第2処理用部とを相対的に回転させる回転駆動機構とを備える装置であって、
上記の各処理用部において互いに対向する位置に、第1処理用面及び第2処理用面の少なくとも2つの処理用面が設けられており、上記の各処理用面は、上記圧力の被処理流動体が流される、密封された流路の一部を構成するものであり、上記の両処理用面間にて、少なくともいずれかに反応物を含む、2種以上の被処理流動体を混合し反応させるものであり、
上記第1処理用部と第2処理用部のうち、少なくとも第2処理用部は受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が上記の第2処理用面により構成され、この受圧面は、上記の流体圧付与機構が被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面から第2処理用面を離反させる方向に移動させる力を発生させ、接近・離反可能、且つ相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に上記圧力の被処理流動体が通されることにより、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、さらに上記圧力の被処理流動体が流される各処理用面間の流路とは独立した別途の導入路を備えており、上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れかに、上記別途の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、上記別途の導入路から送られてきた少なくとも一つの被処理流動体を、上記両処理用面間に導入することにより、少なくとも上記の各被処理流動体のいずれかに含まれる上記の反応物と、前記被処理流動体とは異なる被処理流動体とが、上記薄膜流体内で混合される装置を用いて、前記原料液と前記還元液とを混合して反応させる、[2]に記載の製造方法。
上記の各処理用部において互いに対向する位置に、第1処理用面及び第2処理用面の少なくとも2つの処理用面が設けられており、上記の各処理用面は、上記圧力の被処理流動体が流される、密封された流路の一部を構成するものであり、上記の両処理用面間にて、少なくともいずれかに反応物を含む、2種以上の被処理流動体を混合し反応させるものであり、
上記第1処理用部と第2処理用部のうち、少なくとも第2処理用部は受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が上記の第2処理用面により構成され、この受圧面は、上記の流体圧付与機構が被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面から第2処理用面を離反させる方向に移動させる力を発生させ、接近・離反可能、且つ相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に上記圧力の被処理流動体が通されることにより、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、さらに上記圧力の被処理流動体が流される各処理用面間の流路とは独立した別途の導入路を備えており、上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れかに、上記別途の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、上記別途の導入路から送られてきた少なくとも一つの被処理流動体を、上記両処理用面間に導入することにより、少なくとも上記の各被処理流動体のいずれかに含まれる上記の反応物と、前記被処理流動体とは異なる被処理流動体とが、上記薄膜流体内で混合される装置を用いて、前記原料液と前記還元液とを混合して反応させる、[2]に記載の製造方法。
[4] 上記開口部が、上記両処理用面間に通された被処理流動体の流れが層流となる点よりも下流側に設置されている、[3]に記載の製造方法。
[5] 前記還元液を5℃以下とし、前記原料液と前記還元液を混合して反応させる、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記リチウム、ナトリウム又はカリウムと前記ハロゲン化シリコンのモル比が7:1~4:1である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記還元液を5℃以下とし、前記原料液と前記還元液を混合して反応させる、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記リチウム、ナトリウム又はカリウムと前記ハロゲン化シリコンのモル比が7:1~4:1である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 縮合芳香族化合物が、ビフェニル、ナフタレン、1,2-ジヒドロナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びピレンからなる群から選択される少なくとも1つである、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記還元液に含まれる溶媒が、残留水分が10ppm以下であるテトラヒドロフラン及び/又はジメトキシエタンである、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記還元液に含まれる溶媒が、フェノール系の重合禁止剤を含み、残留水分が10ppm以下であり、残留酸素濃度が0.1ppm未満であるテトラヒドロフランである、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 前記原料液含まれる溶媒が、残留水分が10ppm以下であり、残留酸素濃度が0.1ppm未満であるテトラヒドロフランである、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 前記ハロゲン化シリコンが、四塩化シリコン、四臭化シリコン又は四ヨウ化シリコンである、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記還元液に含まれる溶媒が、残留水分が10ppm以下であるテトラヒドロフラン及び/又はジメトキシエタンである、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記還元液に含まれる溶媒が、フェノール系の重合禁止剤を含み、残留水分が10ppm以下であり、残留酸素濃度が0.1ppm未満であるテトラヒドロフランである、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 前記原料液含まれる溶媒が、残留水分が10ppm以下であり、残留酸素濃度が0.1ppm未満であるテトラヒドロフランである、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 前記ハロゲン化シリコンが、四塩化シリコン、四臭化シリコン又は四ヨウ化シリコンである、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、透過電子顕微鏡によって観察される単結晶球状シリコンナノ粒子の投影像の周囲長(Z)及び面積(S)を用いて、数式:4πS/Z2で算出される円形度の平均値が0.9以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、IR吸収スペクトルにおいて、1950cm-1~2150cm-1の波数領域にSi-H結合に帰属される吸収を示す、[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、IR吸収スペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をAとし、400cm-1~500cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をBとして、算出される比率:B/Aが0.2未満である、[1]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
[13] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、IR吸収スペクトルにおいて、1950cm-1~2150cm-1の波数領域にSi-H結合に帰属される吸収を示す、[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、IR吸収スペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をAとし、400cm-1~500cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をBとして、算出される比率:B/Aが0.2未満である、[1]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、IR吸収スペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をAとし、530cm-1~630cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をCとして、算出される比率:C/Aが0.2未満である、[1]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる、[1]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、励起光の波長が300nm以下の深紫外線によって、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる、[1]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[16] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる、[1]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17] 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、励起光の波長が300nm以下の深紫外線によって、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる、[1]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
本発明の製造方法で製造される単結晶球状シリコンナノ粒子は、蛍光効率を低減する粒界を持たない単結晶であるために、200nm~300nmの深紫外線の光から可視光までの広い波長の光による励起によって、高い蛍光量子効率で蛍光を生じることができ、従来までに知られているシリコンナノ粒子の蛍光量子効率を1%前後から10%以上に増加させることが可能となる。また、本発明の製造方法で製造される単結晶球状シリコンナノ粒子は、カドミウムやセレン、テルルから形成される化合物半導体がもつ生体への毒性がない。更に、本発明の製造方法で製造される単結晶球状シリコンナノ粒子は、球状であるために、太陽電池や二次イオン電池の電極材料等を高密度に充填することができ、リチウムイオン電池の負極、太陽電池の電極材料、また半導体デバイスの基板への接合材料として使用することができる。
以下、本発明の実施態様を説明する。しかし、本発明は、以下に記載の実施態様のみに限定されるものではない。また、例示的に蛍光を生じる発光材料への適用例を説明するが、本発明の単結晶球状シリコンナノ粒子の用途はこれらに限定されるものではない。
1.単結晶球状シリコンナノ粒子
本発明の製造方法で得られる単結晶球状シリコンナノ粒子は、単結晶であり、球状であり、平均粒子径が1nm~20nmである。
単結晶球状シリコンナノ粒子は、好ましくは、透過電子顕微鏡によって観察される単結晶球状シリコンナノ粒子の投影像の周囲長(Z)及び面積(S)を用いて、数式:4πS/Z2で算出される円形度の平均値が0.9以上であり、より好ましくは0.92以上であり、更に好ましくは0.95以上である。
平均粒子径は、好ましくは1.2nm~10nmが挙げられ、より好ましくは1.5nm~7nmが挙げられ、更に好ましくは2nm~5nmが挙げられる。
本発明の製造方法で得られる単結晶球状シリコンナノ粒子は、単結晶であり、球状であり、平均粒子径が1nm~20nmである。
単結晶球状シリコンナノ粒子は、好ましくは、透過電子顕微鏡によって観察される単結晶球状シリコンナノ粒子の投影像の周囲長(Z)及び面積(S)を用いて、数式:4πS/Z2で算出される円形度の平均値が0.9以上であり、より好ましくは0.92以上であり、更に好ましくは0.95以上である。
平均粒子径は、好ましくは1.2nm~10nmが挙げられ、より好ましくは1.5nm~7nmが挙げられ、更に好ましくは2nm~5nmが挙げられる。
単結晶球状シリコンナノ粒子は、その表面にSi-H結合が存在することが好ましい。単結晶球状シリコンナノ粒子の表面に、シリコン原子の結合が切断された箇所が存在すれば、不安定であり、バンドギャップ中に新たなエネルギーレベルを生成させて蛍光波長に影響を与えることがある。従って、その結合が切断されたシリコン原子が水素原子に結合したSi-H結合が存在することで、安定化し、蛍光波長に対する影響が低減される。従って、単結晶球状シリコンナノ粒子は、好ましくは、IR吸収スペクトルにおいて、Si-H結合の伸縮振動に帰属される1950cm-1~2150cm-1の波数領域に吸収が存在する。実施例1-2の単結晶球状シリコンナノ粒子は、図4に記載の通り、2105cm-1に吸収ピークが存在する。
単結晶球状シリコンナノ粒子は、固溶酸素が少ないことが好ましい。具体的には、例えば、IR吸収スペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をAとし、400cm-1~500cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をBとして、算出される比率:B/Aが0.2未満である。例えば、実施例1-1~1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子は、図5aと5bに記載の通り、1095cm-1の極大ピークのピーク強度をAとし、460cm-1の極大ピークのピーク強度をBとして、表3に記載の通り、比率:B/Aは0.08~0.10であり、0.2未満である。
単結晶球状シリコンナノ粒子は、Si-Cl結合が少ないことが好ましい。具体的には、例えば、IR吸収スペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をAとし、530cm-1~630cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をCとして、算出される比率:C/Aが0.2未満である。例えば、実施例1-1~1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子は、図5aと5cに記載の通り、1095cm-1の極大ピークのピーク強度をAとし、612cm-1の極大ピークのピーク強度をCとして、表3に記載の通り、比率:C/Aは0.06~0.08であり、0.2未満である。
シリコンナノ粒子の蛍光は、以下の3つの異なるメカニズムで生じることが知られている。
(A)シリコンナノ粒子の粒子径に応じて、電子エネルギーのバンドギャップを変化させるという物理的要因の制御による蛍光色の制御(量子効果として知られる)
(B)シリコンナノ粒子表面を種々の化学物質で処理するという表面修飾によって、シリコンナノ粒子表面に、分子鎖の長さの異なるアルキル基やアミノ基などの様々な置換基を化学結合させた状態で、表面置換基を介在した蛍光色の制御
(C)シリコンナノ粒子中に含まれる酸素や窒素を介する組成変化を利用することによる化学的な要因による蛍光色の制御
(A)シリコンナノ粒子の粒子径に応じて、電子エネルギーのバンドギャップを変化させるという物理的要因の制御による蛍光色の制御(量子効果として知られる)
(B)シリコンナノ粒子表面を種々の化学物質で処理するという表面修飾によって、シリコンナノ粒子表面に、分子鎖の長さの異なるアルキル基やアミノ基などの様々な置換基を化学結合させた状態で、表面置換基を介在した蛍光色の制御
(C)シリコンナノ粒子中に含まれる酸素や窒素を介する組成変化を利用することによる化学的な要因による蛍光色の制御
本発明の製造方法で得られる単結晶球状シリコンナノ粒子は、上記(A)~(C)の3つのメカニズム中、(A)量子効果のメカニズムと(C)酸素を介するメカニズムが相乗的に作用して、蛍光を生じる。(A)量子効果のメカニズムと(B)表面修飾のメカニズムを用いる特許文献4及び特許文献5のアルキル基終端シリコンナノ粒子とは、メカニズムが異なる。
本発明の製造方法で得られる単結晶球状シリコンナノ粒子は、好ましくは、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる。より好ましくは、励起光の波長が300nm以下の深紫外線によって、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる。
本発明の製造方法で得られる単結晶球状シリコンナノ粒子は、好ましくは、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる。より好ましくは、励起光の波長が300nm以下の深紫外線によって、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる。
2.単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法
本発明の製造方法は、単結晶であり、球状であり、平均粒子径が1nm~20nmである単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法であって、ハロゲン化シリコンを含む原料液と、リチウム、ナトリム又はカリウムと縮合芳香族化合物から生成される前記縮合芳香族化合物のアニオンを含む還元液とを混合して反応させる工程を含み、前記縮合芳香族化合物のアニオンが、リチウム、ナトリム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して調液される製造方法である。
本発明の製造方法は、単結晶であり、球状であり、平均粒子径が1nm~20nmである単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法であって、ハロゲン化シリコンを含む原料液と、リチウム、ナトリム又はカリウムと縮合芳香族化合物から生成される前記縮合芳香族化合物のアニオンを含む還元液とを混合して反応させる工程を含み、前記縮合芳香族化合物のアニオンが、リチウム、ナトリム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して調液される製造方法である。
(単結晶球状シリコンナノ粒子の原料液)
単結晶球状シリコンナノ粒子の原料液に含まれるハロゲン化シリコンは、例えば四塩化シリコン、四臭化シリコン、四ヨウ化シリコン等が挙げられ、好ましくは四塩化シリコン、四臭化シリコン等が挙げられる。
単結晶球状シリコンナノ粒子の原料液に含まれるハロゲン化シリコンは、例えば四塩化シリコン、四臭化シリコン、四ヨウ化シリコン等が挙げられ、好ましくは四塩化シリコン、四臭化シリコン等が挙げられる。
単結晶球状シリコンナノ粒子原料液に含まれる溶媒としては、ハロゲン化シリコンを還元して単結晶球状シリコンナノ粒子を析出させることができ、還元反応に影響を与えず不活性である物質であれば、特に限定されない。溶媒としては、好ましくはエーテル等が挙げられ、より好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、又はこれらの混合物等が挙げられ、更に好ましくはTHF、DME等が挙げられる。好ましい溶媒としては、残留水分が10ppm以下であり、残留酸素濃度が0.1ppm未満であるテトラヒドロフラン等が挙げられる。
THFを溶媒に用いる場合、親電子試薬であるルイス酸によってTHFの開環重合が開始されるため、ハロゲン化シリコンのTHF溶液の保管中に、THFの重合物が生成する可能性がある。しかし、THFが過酸化物を生成することを抑制する2,6-ジ-tert―4-メチルフェノール(BHT)を原料液に添加することで、THFの重合を抑制することができる。従って、THF溶媒にBHTを添加することが好ましい。
単結晶球状シリコンナノ粒子原料液中のハロゲン化シリコンの濃度としては、特に限定されないが、例えば0.01~1モル/Lが挙げられ、好ましくは0.02~0.5モル/Lが挙げられ、より好ましくは0.05~0.2モル/Lが挙げられる。
(単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液)
本発明で用いられる単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液は、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物から生成される前記縮合芳香族化合物のアニオンを含み、前記縮合芳香族化合物のアニオンが、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して調製される還元液である。リチウム、ナトリウム及びカリウムの電気化学的な平衡電位は、非常に低く卑な電位を持つため、これらの金属のいずれかを単独で、あるいは混合物として用いることで、理論的にはハロゲン化シリコンを還元することができる。しかし、リチウム、ナトリウム又はカリウムは、エーテル等の有機溶媒には溶解させることはできない。リチウム、ナトリウム又はカリウムをエーテル等の有機溶媒に溶解させるためには、縮合芳香族化合物を共存させて、リチウム、ナトリウム又はカリウムがアルカリ金属イオンとなると同時に生成する1電子を縮合芳香族化合物の最低空軌道(LUMO)に移動させて、前記縮合芳香族化合物のアニオン(ラジカルアニオン)を生成させることが必要である。
本発明で用いられる単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液は、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物から生成される前記縮合芳香族化合物のアニオンを含み、前記縮合芳香族化合物のアニオンが、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して調製される還元液である。リチウム、ナトリウム及びカリウムの電気化学的な平衡電位は、非常に低く卑な電位を持つため、これらの金属のいずれかを単独で、あるいは混合物として用いることで、理論的にはハロゲン化シリコンを還元することができる。しかし、リチウム、ナトリウム又はカリウムは、エーテル等の有機溶媒には溶解させることはできない。リチウム、ナトリウム又はカリウムをエーテル等の有機溶媒に溶解させるためには、縮合芳香族化合物を共存させて、リチウム、ナトリウム又はカリウムがアルカリ金属イオンとなると同時に生成する1電子を縮合芳香族化合物の最低空軌道(LUMO)に移動させて、前記縮合芳香族化合物のアニオン(ラジカルアニオン)を生成させることが必要である。
本発明で用いられる縮合芳香族化合物としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムから縮合芳香族化合物に1電子移動してアルカリ金属イオンと縮合芳香族化合物アニオン(ラジカルアニオン)を生成できるものが挙げられる。ハロゲン化シリコンをシリコンに還元するためには、縮合芳香族化合物のアニオンの電位は、-2.0Vより電位が卑である必要がある。ここで、電位とは基準電極(参照電極)として銀(Ag)/塩化銀(AgCl)に対する値である。-2.0Vより電位が低い縮合芳香族化合物としては、例えば、ナフタレン(-2.53V)、DBB(-2.87V)、ビフェニル(-2.68V)、1,2-ジヒドロナフタレン(-2.57V)、フェナントレン(-2.49V)、アントラセン(-2.04V)、ピレン(-2.13V)、又はこれらの混合物等が挙げられ、好ましくは、ナフタレン、ビフェニル等が挙げられる。他方、テトラセン(-1.55V)、アズレン(-1.62V)は、ハロゲン化シリコンの還元には適さない。
単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液に含まれる溶媒としては、ハロゲン化シリコンを還元して単結晶球状シリコンナノ粒子を析出させることができ、還元反応に影響を与えず不活性である物質であれば、特に限定されない。溶媒としては、好ましくはエーテル等が挙げられ、より好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、又はこれらの混合物等が挙げられ、更に好ましくはTHF、DME等が挙げられる。好ましくは、残留水分が10ppm以下であるテトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等が挙げられ、より好ましくはフェノール系の重合禁止剤を含み、残留水分が10ppm以下であり、残留酸素濃度が0.1ppm未満であるテトラヒドロフラン等が挙げられる。
単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液中のリチウム、ナトリウム又はカリウムの濃度としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム又はカリウムとハロゲン化シリコンのモル比に従って決められる。
リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物のモル比は、例えば1:1~1.5:1が挙げられ、好ましくは1:1~1.2:1が挙げられ、より好ましくは1:1~1.1:1が挙げられる。
リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物のモル比は、例えば1:1~1.5:1が挙げられ、好ましくは1:1~1.2:1が挙げられ、より好ましくは1:1~1.1:1が挙げられる。
リチウム、ナトリウム又はカリウムとハロゲン化シリコンのモル比は、例えば7:1~4:1が挙げられ、好ましくは6:1~4:1が挙げられ、より好ましくは5:1~4:1が挙げられる。リチウム、ナトリウム又はカリウムを単結晶球状シリコンナノ粒子の原料よりも過剰に用いることが好ましい。過剰に用いることで、残留ハロゲン元素の少ない単結晶球状シリコンナノ粒子を製造することができる。リチウム、ナトリウム又はカリウムを単結晶球状シリコンナノ粒子の原料より少ない量を用いた場合、例えば、比較例1に示すように3/4の量を用いた場合は、完全に還元されないために、単結晶球状シリコンナノ粒子にハロゲン化シリコンに由来するハロゲン原子が残存し、多結晶になり、球状ではなくなる。
(還元液の低温調液)
本発明において、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して、単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液を調液する。調液温度としては、例えば、-50℃~0℃未満が挙げられ、好ましくは-40℃~-10℃が挙げられ、より好ましくは-30℃~-15℃が挙げられる。実施例1では、-20℃で調液した。それに対して、溶解温度が0℃以上では、縮合芳香族化合物アニオンが不安定となり、縮合芳香族化合物とアルカリ金属原子との化学反応が生じてしまうことで還元液の効果が損なわれる問題がある。例えば、縮合芳香族化合物にナフタレン(分子式:C10H8)、カリウム(K)を用いた場合では、C10H7Kのような化合物が生成することで、還元剤として作用するナフタレンアニオン濃度の変化が生じてしまう傾向があることが問題となる。特許文献4の実施例1及び特許文献5の実施例6~9では、室温で還元液を調液している。本明細書の比較例1で、特許文献5の実施例6を追試しており、15~16℃(室温)で調液したところ、還元剤が不安定になり、副生物が生成し、単結晶球状シリコンナノ粒子が多結晶になり、球状ではなくなる。
本発明において、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して、単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液を調液する。調液温度としては、例えば、-50℃~0℃未満が挙げられ、好ましくは-40℃~-10℃が挙げられ、より好ましくは-30℃~-15℃が挙げられる。実施例1では、-20℃で調液した。それに対して、溶解温度が0℃以上では、縮合芳香族化合物アニオンが不安定となり、縮合芳香族化合物とアルカリ金属原子との化学反応が生じてしまうことで還元液の効果が損なわれる問題がある。例えば、縮合芳香族化合物にナフタレン(分子式:C10H8)、カリウム(K)を用いた場合では、C10H7Kのような化合物が生成することで、還元剤として作用するナフタレンアニオン濃度の変化が生じてしまう傾向があることが問題となる。特許文献4の実施例1及び特許文献5の実施例6~9では、室温で還元液を調液している。本明細書の比較例1で、特許文献5の実施例6を追試しており、15~16℃(室温)で調液したところ、還元剤が不安定になり、副生物が生成し、単結晶球状シリコンナノ粒子が多結晶になり、球状ではなくなる。
(溶媒分子介在アルカリ金属カチオンと縮合芳香族化合物アニオン)
リチウム、ナトリウム又はカリウムの電子が、縮合芳香族化合物に電子移動して生成する縮合芳香族化合物アニオン(ラジカルアニオン)は、電子移動を行って生成するリチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンとクーロン力を介して結合することができる。この場合、一旦生成した縮合芳香族化合物アニオンから電子が、リチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンへ逆電子移動することによる還元力の変化が懸念される。還元力の変動は、得られる単結晶球状シリコンナノ粒子の粒子径分布につながるため、逆電子移動による還元力の変動を抑制するためには、リチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンと縮合芳香族化合物アニオンとが溶媒分子を介したクーロン力による結合状態をもつことで可能となる。このような溶液内のアニオンとカチオンの状態は、紫外-可視吸光分光スペクトルの測定から確認できることが知られている。それによれば、例えば、リチウムとナフタレンをTHFに溶解した組み合わせでは、25℃においてTHFが介在した状態は60%~80%である。金属ナトリウムとナフタレンをTHFに溶解させた組み合わせでは、ほとんどTHFを介在しない直接ナトリウムカチオンとナフタレンアニオンとが直接クーロン力で結合した状態であるが、-50℃に冷却することで、THFがほぼ100%介在できることが知られている。
リチウム、ナトリウム又はカリウムの電子が、縮合芳香族化合物に電子移動して生成する縮合芳香族化合物アニオン(ラジカルアニオン)は、電子移動を行って生成するリチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンとクーロン力を介して結合することができる。この場合、一旦生成した縮合芳香族化合物アニオンから電子が、リチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンへ逆電子移動することによる還元力の変化が懸念される。還元力の変動は、得られる単結晶球状シリコンナノ粒子の粒子径分布につながるため、逆電子移動による還元力の変動を抑制するためには、リチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンと縮合芳香族化合物アニオンとが溶媒分子を介したクーロン力による結合状態をもつことで可能となる。このような溶液内のアニオンとカチオンの状態は、紫外-可視吸光分光スペクトルの測定から確認できることが知られている。それによれば、例えば、リチウムとナフタレンをTHFに溶解した組み合わせでは、25℃においてTHFが介在した状態は60%~80%である。金属ナトリウムとナフタレンをTHFに溶解させた組み合わせでは、ほとんどTHFを介在しない直接ナトリウムカチオンとナフタレンアニオンとが直接クーロン力で結合した状態であるが、-50℃に冷却することで、THFがほぼ100%介在できることが知られている。
(低温調液における溶媒和)
溶媒を介在するためには溶媒の温度を低温とすることで可能となる。溶媒を介在させるとは、リチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンと縮合芳香族化合物アニオンそれぞれが溶媒分子によって取り囲まれて、溶媒和されたカチオンと溶媒和されたアニオンが存在しており、互いの溶媒和したイオン同士がクーロン力で結合する状態を意味している。このような溶媒が介在してカチオンとアニオンが接している状態を溶液内に生成させることができるため、縮合芳香族化合物アニオンは安定に存在でき、縮合芳香族化合物アニオンから、アルカリ金属カチオンへの逆電子移動を抑制できる。0℃以上の温度で溶媒和が十分に行われない状態や、溶媒和状態に分布が生じている状態で調液された還元液を、シリコンナノ粒子製造時に低温としても、溶媒和は完全には行われないために、還元力のばらつきを生じることによって、溶液内部においてシリコンナノ粒子の粒子径の分布を生じる原因となる。直接イオン同士がクーロン力で結合して平衡状態となっている状態は、シリコンナノ粒子の製造時に低温に冷却されてもクーロン力に打ち勝って溶媒分子がカチオンとアニオン間に侵入していくことはできにくい。従って、調液時の温度はシリコンナノ粒子製造時の温度よりも重要である。
溶媒を介在するためには溶媒の温度を低温とすることで可能となる。溶媒を介在させるとは、リチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンと縮合芳香族化合物アニオンそれぞれが溶媒分子によって取り囲まれて、溶媒和されたカチオンと溶媒和されたアニオンが存在しており、互いの溶媒和したイオン同士がクーロン力で結合する状態を意味している。このような溶媒が介在してカチオンとアニオンが接している状態を溶液内に生成させることができるため、縮合芳香族化合物アニオンは安定に存在でき、縮合芳香族化合物アニオンから、アルカリ金属カチオンへの逆電子移動を抑制できる。0℃以上の温度で溶媒和が十分に行われない状態や、溶媒和状態に分布が生じている状態で調液された還元液を、シリコンナノ粒子製造時に低温としても、溶媒和は完全には行われないために、還元力のばらつきを生じることによって、溶液内部においてシリコンナノ粒子の粒子径の分布を生じる原因となる。直接イオン同士がクーロン力で結合して平衡状態となっている状態は、シリコンナノ粒子の製造時に低温に冷却されてもクーロン力に打ち勝って溶媒分子がカチオンとアニオン間に侵入していくことはできにくい。従って、調液時の温度はシリコンナノ粒子製造時の温度よりも重要である。
還元液の低温での調液の必要性は上記溶媒和の観点から記載した通りであるが、これに加えて、調液後の保管温度も低温としておく必要がある。これは、還元液の保管温度が高くなると、溶媒にTHFを用いた場合では、縮合芳香族化合物アニオンによって、THFの還元重合反応を生じる。このようなTHFの重合による重合物の発生は、ハロゲン化シリコンの還元によって生成する単結晶球状シリコンナノ粒子に混在するため、重合反応を抑制することが必要である。THFの重合反応抑制剤としては、THFの過酸化物の生成を抑制するために添加されるBHT(2,6-ジ-tert-ブチルー4-メチルフェノール)を利用することができる。
(単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法:装置)
本発明の製造方法では、例えば、本願の出願人によって提案された特開2009-112892号公報に記載された装置等が用いられる。前記の装置は、断面形状が円形である内周面を有する攪拌槽と、該攪拌槽の内周面と僅かな間隙を在して付設される攪拌具とを有し、攪拌槽には、少なくとも二箇所の流体入口と、少なくとも一箇所の流体出口とを備え、流体入口のうち一箇所からは、被処理流体のうち、反応物の一つを含む第一の被処理流体を攪拌槽内に導入し、流体入口のうちで上記以外の一箇所からは、上記反応物とは異なる反応物の一つを含む第二の被処理流体を、上記第一の被処理流体とは異なる流路より攪拌槽内に導入するものである。攪拌槽と攪拌具の少なくとも一方が他方に対し高速回転することにより被処理流体を薄膜状態とし、この薄膜中で少なくとも上記第一の被処理流体と第二の被処理流体とに含まれる反応物同士を反応させるものである。また、特許文献5に記載の流体処理装置と同様の原理の装置が挙げられる。
本発明の製造方法では、例えば、本願の出願人によって提案された特開2009-112892号公報に記載された装置等が用いられる。前記の装置は、断面形状が円形である内周面を有する攪拌槽と、該攪拌槽の内周面と僅かな間隙を在して付設される攪拌具とを有し、攪拌槽には、少なくとも二箇所の流体入口と、少なくとも一箇所の流体出口とを備え、流体入口のうち一箇所からは、被処理流体のうち、反応物の一つを含む第一の被処理流体を攪拌槽内に導入し、流体入口のうちで上記以外の一箇所からは、上記反応物とは異なる反応物の一つを含む第二の被処理流体を、上記第一の被処理流体とは異なる流路より攪拌槽内に導入するものである。攪拌槽と攪拌具の少なくとも一方が他方に対し高速回転することにより被処理流体を薄膜状態とし、この薄膜中で少なくとも上記第一の被処理流体と第二の被処理流体とに含まれる反応物同士を反応させるものである。また、特許文献5に記載の流体処理装置と同様の原理の装置が挙げられる。
(単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法:方法概要)
本発明の製造方法では、単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液を5℃以下とした溶液状態と、単結晶球状シリコンナノ粒子の原料液を混合することで、単結晶球状シリコンナノ粒子が製造される。単結晶球状シリコンナノ粒子は、まず単結晶球状シリコンナノ粒子の核が生じてから、単結晶球状シリコンナノ粒子が成長するという2段階のステップで製造される。5℃以下の温度とした還元液に対して原料液が接して反応が開始しても、単結晶球状シリコンナノ粒子の核の発生頻度が低くなっているため、単結晶球状シリコンナノ粒子の核同士の接触頻度も低下する。このため、単結晶球状シリコンナノ粒子成長においては、周囲の単結晶球状シリコンナノ粒子の成長による原料液濃度の変化の影響を受けにくくなり、単結晶球状シリコンナノ粒子成長に必要な原料のハロゲン化シリコンの供給が均一となる。
本発明の製造方法では、単結晶球状シリコンナノ粒子の還元液を5℃以下とした溶液状態と、単結晶球状シリコンナノ粒子の原料液を混合することで、単結晶球状シリコンナノ粒子が製造される。単結晶球状シリコンナノ粒子は、まず単結晶球状シリコンナノ粒子の核が生じてから、単結晶球状シリコンナノ粒子が成長するという2段階のステップで製造される。5℃以下の温度とした還元液に対して原料液が接して反応が開始しても、単結晶球状シリコンナノ粒子の核の発生頻度が低くなっているため、単結晶球状シリコンナノ粒子の核同士の接触頻度も低下する。このため、単結晶球状シリコンナノ粒子成長においては、周囲の単結晶球状シリコンナノ粒子の成長による原料液濃度の変化の影響を受けにくくなり、単結晶球状シリコンナノ粒子成長に必要な原料のハロゲン化シリコンの供給が均一となる。
(多結晶シリコンナノ粒子の生成抑制)
生成物を反応液からすみやかに排出することが可能なフローリアクターを用いることで、反応中間体であるハロゲン化シリコンの還元中間体であるハロゲン原子が脱離してシリコン原子がラジカル状態となった多価シリコンラジカルが生じることがないため、多結晶シリコンナノ粒子生成を抑制できる要因の一つを提供できる。
生成物を反応液からすみやかに排出することが可能なフローリアクターを用いることで、反応中間体であるハロゲン化シリコンの還元中間体であるハロゲン原子が脱離してシリコン原子がラジカル状態となった多価シリコンラジカルが生じることがないため、多結晶シリコンナノ粒子生成を抑制できる要因の一つを提供できる。
(単結晶球状シリコンナノ粒子還元反応における無機副生成物)
単結晶球状シリコンナノ粒子の製造時において生じる還元反応副生成物は、ハロゲン化シリコンから脱離するハロゲンイオンと、リチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンからなるリチウム、ナトリウム又はカリウムのハロゲン化物である。エーテル系有機溶媒中では、それぞれがイオンとして溶解しているが、単結晶球状シリコンナノ粒子として分離する場合、例えば、リチウムを用いた場合では、塩化リチウムのエーテル系有機溶媒における溶解度が、塩化ナトリウム、塩化カリウムに比べて大きく、リチウムイオンと塩化物イオンに電離しているため、単結晶球状シリコンナノ粒子との遠心分離による分離が容易である利点がある。すなわち、リチウム以外のアルカリ金属元素を、単結晶球状シリコンナノ粒子作製に用いることは可能であるが、反応副生成物であるアルカリ金属元素のハロゲン化物との化合物である塩のエーテル系有機溶媒に対する溶解度が、塩化リチウムに比べて低く単結晶球状シリコンナノ粒子に混入するため、遠心分離による分離が困難である。従って、このような還元反応副生成物と単結晶球状シリコンナノ粒子との分離の観点から、リチウムを用いることが好ましい。
単結晶球状シリコンナノ粒子の製造時において生じる還元反応副生成物は、ハロゲン化シリコンから脱離するハロゲンイオンと、リチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンからなるリチウム、ナトリウム又はカリウムのハロゲン化物である。エーテル系有機溶媒中では、それぞれがイオンとして溶解しているが、単結晶球状シリコンナノ粒子として分離する場合、例えば、リチウムを用いた場合では、塩化リチウムのエーテル系有機溶媒における溶解度が、塩化ナトリウム、塩化カリウムに比べて大きく、リチウムイオンと塩化物イオンに電離しているため、単結晶球状シリコンナノ粒子との遠心分離による分離が容易である利点がある。すなわち、リチウム以外のアルカリ金属元素を、単結晶球状シリコンナノ粒子作製に用いることは可能であるが、反応副生成物であるアルカリ金属元素のハロゲン化物との化合物である塩のエーテル系有機溶媒に対する溶解度が、塩化リチウムに比べて低く単結晶球状シリコンナノ粒子に混入するため、遠心分離による分離が困難である。従って、このような還元反応副生成物と単結晶球状シリコンナノ粒子との分離の観点から、リチウムを用いることが好ましい。
(単結晶球状シリコンナノ粒子還元反応における有機副生成物)
縮合芳香族化合物アニオンによるハロゲン化シリコンの還元反応では、例えば、四塩化シリコンの塩素原子が脱離したシリコン原子がラジカル状態となるために非常に反応性が高く、隣り合うシリコン原子のラジカル状態との結合が進むことで単結晶球状シリコンナノ粒子が製造できる。また同時に、縮合芳香族化合物との反応による縮合芳香族化合物にシリコンが結合した化合物も生成する。一旦、シリコン原子に縮合芳香族化合物が結合すると、縮合芳香族化合物アニオンでは容易に還元されず、単結晶球状シリコンナノ粒子以外の副生成物を生じる。すなわち、ハロゲン化シリコンの一部が縮合芳香族化合物で結合したことで安定となったハロゲン化アルキルシリコンが生成する。この化合物は、アルキル基が結合していないハロゲン原子と結合しているシリコンの個所は、還元液でシリコンラジカルとなることができるため、このハロゲン化アルキルシリコンのハロゲンが還元剤で連続的に脱離してシリコンラジカル同士が結合したアルキルポリシランが生成する。ポリシランの生成は、シリコンナノ粒子より重く沈殿するため損失をもたらす。このような有機副生成物による損失反応につながるような反応温度とならないように、還元液の温度を5℃以下に制御する必要がある。
縮合芳香族化合物アニオンによるハロゲン化シリコンの還元反応では、例えば、四塩化シリコンの塩素原子が脱離したシリコン原子がラジカル状態となるために非常に反応性が高く、隣り合うシリコン原子のラジカル状態との結合が進むことで単結晶球状シリコンナノ粒子が製造できる。また同時に、縮合芳香族化合物との反応による縮合芳香族化合物にシリコンが結合した化合物も生成する。一旦、シリコン原子に縮合芳香族化合物が結合すると、縮合芳香族化合物アニオンでは容易に還元されず、単結晶球状シリコンナノ粒子以外の副生成物を生じる。すなわち、ハロゲン化シリコンの一部が縮合芳香族化合物で結合したことで安定となったハロゲン化アルキルシリコンが生成する。この化合物は、アルキル基が結合していないハロゲン原子と結合しているシリコンの個所は、還元液でシリコンラジカルとなることができるため、このハロゲン化アルキルシリコンのハロゲンが還元剤で連続的に脱離してシリコンラジカル同士が結合したアルキルポリシランが生成する。ポリシランの生成は、シリコンナノ粒子より重く沈殿するため損失をもたらす。このような有機副生成物による損失反応につながるような反応温度とならないように、還元液の温度を5℃以下に制御する必要がある。
このため粒子径分布が狭く、等方的な原料の供給が行われることによって、球状の単結晶シリコンナノ粒子(本発明では、単結晶球状シリコンナノ粒子と呼ぶ)を製造することができる。反応温度が高い場合では、単結晶球状シリコンナノ粒子の核の発生頻度は高くなるが、単結晶球状シリコンナノ粒子の核の周囲には多数の別の単結晶球状シリコンナノ粒子の核が存在するため、成長に必要なハロゲン化シリコンの均一な供給ができにくくなり、単結晶球状シリコンナノ粒子形状は、分布をもった状態で製造される。従って、本発明の製造方法では、還元液の温度を5℃以下として、単結晶球状シリコンナノ粒子の核の発生頻度を抑制して、原料液の単結晶球状シリコンナノ粒子の核への均一な供給を行うように制御することで、粒子径分布の狭い単結晶球状シリコンナノ粒子を製造できる。
好ましくは、前記薄膜流体中で前記原料液と5℃以下の前記還元液を混合することで、単結晶球状シリコンナノ粒子を製造する。単結晶球状シリコンナノ粒子は、まず単結晶球状シリコンナノ粒子の核が生じてから、単結晶球状シリコンナノ粒子が成長するという2段階のステップで製造される。5℃以下の前記還元液に対して前記原料液が接して反応が開始しても、単結晶球状シリコンナノ粒子の核の発生頻度が低くなっているため、単結晶球状シリコンナノ粒子の核同士の接触頻度も低下する。このため、単結晶球状シリコンナノ粒子成長においては、周囲の単結晶球状シリコンナノ粒子の成長による原料液濃度の変化の影響を受けにくくなり、単結晶球状シリコンナノ粒子成長に必要な原料の供給が均一となる。
対向して配設された接近、離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する2つの処理用面の間にできる薄膜流体に導入する前記還元液の温度としては、例えば、-30℃~5℃が挙げられ、好ましくは-10℃~5℃が挙げられ、より好ましくは0℃~5℃が挙げられる。実施例1及び2では、前記原料液の温度を5℃として製造を行った結果、単結晶であり、球状であり、高い蛍光量子効率で蛍光を生じる単結晶球状シリコンナノ粒子を製造することができた。比較例4では、前記原料液の温度を25℃として製造を行った結果、蛍光量子効率が低下した。
特許文献4の[0065]~[0067]に、副反応を抑える等のために0℃以下の反応温度に限定されることが強調され、実施例では遥かに低温の-60℃で反応が行われた。特許文献5の実施例6~9でも、遥かに低温の-50℃~-90℃で反応が行われた。それに対して、本発明では、特許文献4で阻害された0℃以上の反応温度5℃でも、極めて満足な単結晶球状シリコンナノ粒子を得ることができるとの顕著な効果を有する。この顕著な効果は、特許文献4及び特許文献5に基づいて当業者には予想できないものであった。
特許文献4の[0065]~[0067]に、副反応を抑える等のために0℃以下の反応温度に限定されることが強調され、実施例では遥かに低温の-60℃で反応が行われた。特許文献5の実施例6~9でも、遥かに低温の-50℃~-90℃で反応が行われた。それに対して、本発明では、特許文献4で阻害された0℃以上の反応温度5℃でも、極めて満足な単結晶球状シリコンナノ粒子を得ることができるとの顕著な効果を有する。この顕著な効果は、特許文献4及び特許文献5に基づいて当業者には予想できないものであった。
対向して配設された接近、離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する2つの処理用面の間にできる薄膜流体に導入する前記原料液の温度としては、例えば、-10℃~25℃が挙げられ、好ましくは0℃~20℃が挙げられ、より好ましくは10℃~18℃が挙げられる。実施例1及び2では、前記原料液の温度を15℃として製造を行った結果、単結晶であり、球状であり、高い蛍光量子効率で蛍光を生じる単結晶球状シリコンナノ粒子を製造することができた。
(シリコンナノ粒子の蛍光と製造方法)
シリコンナノ粒子からの蛍光は、製造方法に応じて(1)紫外線から緑色、(2)緑色から近赤外線の蛍光が得られることが知られている。(1)は、液体中でのレーザー照射によるシリコンナノ粒子の作製(レーザーアブレーション)と、溶液中での還元(ハロゲン化シリコンの電子による還元)によるシリコンナノ粒子の作製で得られている。(2)は、電気化学的なエッチング、シリコン前駆体の熱分解、真空あるいは不活性ガス中におけるレーザーアブレーション、Si/SiO2ナノ構造のフッ酸(HF)によるエッチングといった方法で得られている。
シリコンナノ粒子からの蛍光は、製造方法に応じて(1)紫外線から緑色、(2)緑色から近赤外線の蛍光が得られることが知られている。(1)は、液体中でのレーザー照射によるシリコンナノ粒子の作製(レーザーアブレーション)と、溶液中での還元(ハロゲン化シリコンの電子による還元)によるシリコンナノ粒子の作製で得られている。(2)は、電気化学的なエッチング、シリコン前駆体の熱分解、真空あるいは不活性ガス中におけるレーザーアブレーション、Si/SiO2ナノ構造のフッ酸(HF)によるエッチングといった方法で得られている。
(シリコンナノ粒子内の水素の存在)
シリコンナノ粒子の製造中に、シリコン原子の結合が切断された箇所は、シリコン原子が水素原子と結合したSi-H結合によってシリコンナノ粒子を安定化させることができる。本発明による単結晶球状シリコンナノ粒子も、作製中にランダムに生成する可能性があるシリコン原子の結合が切断された箇所は、バンドギャップ中に新たなエネルギーレベルを生成させて蛍光波長に影響を与えるが、Si-H結合によって、その影響を低減させることができる。
シリコンナノ粒子の製造中に、シリコン原子の結合が切断された箇所は、シリコン原子が水素原子と結合したSi-H結合によってシリコンナノ粒子を安定化させることができる。本発明による単結晶球状シリコンナノ粒子も、作製中にランダムに生成する可能性があるシリコン原子の結合が切断された箇所は、バンドギャップ中に新たなエネルギーレベルを生成させて蛍光波長に影響を与えるが、Si-H結合によって、その影響を低減させることができる。
製造された単結晶球状シリコンナノ粒子を含む反応液から、常法に従って、単結晶球状シリコンナノ粒子を単離することができる。例えば、超遠心分離等を行うことができる。
3.単結晶球状シリコンナノ粒子の用途
本発明の製造方法で製造される単結晶球状シリコンナノ粒子は、例えば、発光素子、蛍光を生じる発光材料、リチウムイオン電池の負極、太陽電池の電極材料、半導体デバイスの基板への接合材料等として使用することができる。
本発明の製造方法で製造される単結晶球状シリコンナノ粒子は、例えば、発光素子、蛍光を生じる発光材料、リチウムイオン電池の負極、太陽電池の電極材料、半導体デバイスの基板への接合材料等として使用することができる。
以下、本発明について実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(透過型電子顕微鏡(TEM):TEM観察用試料の調製)
実施例及び比較例で得られた単結晶球状シリコンナノ粒子を、容器中で凡そ0.001%程度の濃度でTHF中に分散させた。得られた分散液を含む容器をアルゴン雰囲気のグローブボックス内に導入し、前記分散液をカーボン支持膜に滴下し、乾燥させてTEM観察用試料とした。
実施例及び比較例で得られた単結晶球状シリコンナノ粒子を、容器中で凡そ0.001%程度の濃度でTHF中に分散させた。得られた分散液を含む容器をアルゴン雰囲気のグローブボックス内に導入し、前記分散液をカーボン支持膜に滴下し、乾燥させてTEM観察用試料とした。
(TEM観察)
単結晶球状シリコンナノ粒子のTEM観察には、透過型電子顕微鏡 JEM-2100(日本電子株式会社製)を用いた。試料として上記TEM観察用試料を用いた。観察条件は、加速電圧を200kVとし、観察倍率を1万倍以上とした。TEMによって観察された単結晶球状シリコンナノ粒子の最大外周間の距離より粒子径を算出し、50個の粒子について単結晶球状シリコンナノ粒子径を測定した結果の平均値(平均粒子径)を算出した。
単結晶球状シリコンナノ粒子のTEM観察には、透過型電子顕微鏡 JEM-2100(日本電子株式会社製)を用いた。試料として上記TEM観察用試料を用いた。観察条件は、加速電圧を200kVとし、観察倍率を1万倍以上とした。TEMによって観察された単結晶球状シリコンナノ粒子の最大外周間の距離より粒子径を算出し、50個の粒子について単結晶球状シリコンナノ粒子径を測定した結果の平均値(平均粒子径)を算出した。
(走査透過電子顕微鏡(STEM))
単結晶球状シリコンナノ粒子のSTEM観察には、原子分解能分析電子顕微鏡 JEM-ARM200F(日本電子株式会社製)を用いた。試料として上記TEM観察用試料を用いた。観察条件は、加速電圧80kV、観察倍率を5万倍以上とし、直径0.2nmのビーム径を用いて分析した。
単結晶球状シリコンナノ粒子のSTEM観察には、原子分解能分析電子顕微鏡 JEM-ARM200F(日本電子株式会社製)を用いた。試料として上記TEM観察用試料を用いた。観察条件は、加速電圧80kV、観察倍率を5万倍以上とし、直径0.2nmのビーム径を用いて分析した。
(赤外線(IR)吸収スペクトル)
単結晶球状シリコンナノ粒子のIR吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計 FT/IR-6600(日本分光株式会社製)を用いて、全反射減衰(ATR)法で測定した。測定条件は、分解能4.0cm-1、積算回数128回、FT/IR―6600の付属品 ATRPRO ONEに、ダイヤモンドプリズム(PKS-D1F)(広領域):屈折率2.4)を組みこみ、入射角は45°とした。実施例で製造された単結晶球状シリコンナノ粒子、及び比較例で製造された多結晶シリコンナノ粒子に対して測定した赤外線(IR)吸収スペクトルは、IRスペクトルと表記する。
単結晶球状シリコンナノ粒子のIR吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計 FT/IR-6600(日本分光株式会社製)を用いて、全反射減衰(ATR)法で測定した。測定条件は、分解能4.0cm-1、積算回数128回、FT/IR―6600の付属品 ATRPRO ONEに、ダイヤモンドプリズム(PKS-D1F)(広領域):屈折率2.4)を組みこみ、入射角は45°とした。実施例で製造された単結晶球状シリコンナノ粒子、及び比較例で製造された多結晶シリコンナノ粒子に対して測定した赤外線(IR)吸収スペクトルは、IRスペクトルと表記する。
(蛍光スペクトル)
単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光スペクトルは、分光蛍光光度計FT-6500(日本分光株式会社製)を用いて測定した。試料として、THFあるいはDMEに分散した試料液を、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、石英セル(光路長:1cm)に入れて上部を密栓後、グローブボックスから取り出して測定した。測定条件は、励起バンド幅3nm、蛍光バンド幅3nm、レスポンス0.1秒、走査速度100nm/min、データ取り込み間隔0.5nmとした。同様にして、相対蛍光量子効率の基準物質としての9,10-ジフェニルアントラセンについても同条件で蛍光スペクトルを測定した。
単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光スペクトルは、分光蛍光光度計FT-6500(日本分光株式会社製)を用いて測定した。試料として、THFあるいはDMEに分散した試料液を、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、石英セル(光路長:1cm)に入れて上部を密栓後、グローブボックスから取り出して測定した。測定条件は、励起バンド幅3nm、蛍光バンド幅3nm、レスポンス0.1秒、走査速度100nm/min、データ取り込み間隔0.5nmとした。同様にして、相対蛍光量子効率の基準物質としての9,10-ジフェニルアントラセンについても同条件で蛍光スペクトルを測定した。
(蛍光スペクトルの波形分離)
測定された単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光スペクトルは、9,10-ジフェニルアントラセンの蛍光量子効率に対する相対蛍光量子効率算出のため、波形分離を行って、430nmにピークを示す蛍光スペクトルの面積%を算出した。波形分離は、IR吸収スペクトル測定で用いたFT/IR-6600内蔵の波形分離ソフトを用いて行った。
測定された単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光スペクトルは、9,10-ジフェニルアントラセンの蛍光量子効率に対する相対蛍光量子効率算出のため、波形分離を行って、430nmにピークを示す蛍光スペクトルの面積%を算出した。波形分離は、IR吸収スペクトル測定で用いたFT/IR-6600内蔵の波形分離ソフトを用いて行った。
(相対蛍光量子効率)
蛍光物質における蛍光量子効率は、励起光に対して生じる蛍光の効率で評価することができる。本発明において、単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光量子効率は、基準物質として9,10-ジフェニルアントラセンの蛍光量子効率を1.0として、これに対する相対値である蛍光量子効率として算出した。相対蛍光量子効率は以下の式(1)によって算出した。
Φx=Φs(Fx/Fs)(As/Ax)(Is/Ix)(nx 2/ns 2)・・・(1)
〔式中、xは単結晶球状シリコンナノ粒子を意味する。sは9,10-ジフェニルアントラセンを意味する。Φxは単結晶球状シリコンナノ粒子の相対蛍光量子効率である。Φsは9,10-ジフェニルアントラセンの量子効率である。Fは蛍光スペクトルの面積である。Aは励起波長での吸光度である。Iは励起光の強度である。nは使用した溶媒の屈折率である。〕
本発明では、基準物質である9,10-ジフェニルアントラセンと、単結晶球状シリコンナノ粒子とでは、蛍光を測定する分光蛍光光度計の測定条件である励起光のバンドパス幅、蛍光バンドパス幅、走査速度、データ取り込み間隔、測定感度を全て一定とし、また同一の溶媒であるTHFを用いているため、式(1)における(Is/Ix)(nx 2/ns 2)は1.0である。従って、単結晶球状シリコンナノ粒子のTHF分散液と9,10-ジフェニルアントラセンのTHF溶液におけるそれぞれの蛍光スペクトルの面積と、測定時の吸光度の値によって算出した。
蛍光物質における蛍光量子効率は、励起光に対して生じる蛍光の効率で評価することができる。本発明において、単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光量子効率は、基準物質として9,10-ジフェニルアントラセンの蛍光量子効率を1.0として、これに対する相対値である蛍光量子効率として算出した。相対蛍光量子効率は以下の式(1)によって算出した。
Φx=Φs(Fx/Fs)(As/Ax)(Is/Ix)(nx 2/ns 2)・・・(1)
〔式中、xは単結晶球状シリコンナノ粒子を意味する。sは9,10-ジフェニルアントラセンを意味する。Φxは単結晶球状シリコンナノ粒子の相対蛍光量子効率である。Φsは9,10-ジフェニルアントラセンの量子効率である。Fは蛍光スペクトルの面積である。Aは励起波長での吸光度である。Iは励起光の強度である。nは使用した溶媒の屈折率である。〕
本発明では、基準物質である9,10-ジフェニルアントラセンと、単結晶球状シリコンナノ粒子とでは、蛍光を測定する分光蛍光光度計の測定条件である励起光のバンドパス幅、蛍光バンドパス幅、走査速度、データ取り込み間隔、測定感度を全て一定とし、また同一の溶媒であるTHFを用いているため、式(1)における(Is/Ix)(nx 2/ns 2)は1.0である。従って、単結晶球状シリコンナノ粒子のTHF分散液と9,10-ジフェニルアントラセンのTHF溶液におけるそれぞれの蛍光スペクトルの面積と、測定時の吸光度の値によって算出した。
(ICP-OES測定)
単結晶球状シリコンナノ粒子中のシリコンとリチウムの濃度は、ICP-OES(高周波誘導結合型プラズマ発光分析装置 ICPS-8100,株式会社島津製作所製)を用いて測定した。測定条件は、単結晶球状シリコンナノ粒子を4mg計量し、フッ化水素酸と硝酸に溶解後、25mLメスフラスコに定容して、リチウムを定量後、試料溶液を純水で希釈してシリコンを定量した。原子吸光分析用シリコン標準溶液(関東化学株式会社製)と原子吸光分析用リチウム標準溶液(関東化学株式会社製)を用いて、検量線を作製した。リチウムの同定と定量には670.784nmの発光線、シリコンの同定と定量には251.611nmの発光線を用いた。
単結晶球状シリコンナノ粒子中のシリコンとリチウムの濃度は、ICP-OES(高周波誘導結合型プラズマ発光分析装置 ICPS-8100,株式会社島津製作所製)を用いて測定した。測定条件は、単結晶球状シリコンナノ粒子を4mg計量し、フッ化水素酸と硝酸に溶解後、25mLメスフラスコに定容して、リチウムを定量後、試料溶液を純水で希釈してシリコンを定量した。原子吸光分析用シリコン標準溶液(関東化学株式会社製)と原子吸光分析用リチウム標準溶液(関東化学株式会社製)を用いて、検量線を作製した。リチウムの同定と定量には670.784nmの発光線、シリコンの同定と定量には251.611nmの発光線を用いた。
(紫外可視:UV-vis吸収スペクトル測定)
単結晶球状シリコンナノ粒子のUV-vis(紫外-可視)吸収スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計(製品名:V-770,日本分光製)を使用した。測定範囲は、200nm~900nmとして、サンプリングレートを0.2nm、測定速度を低速として測定した。測定には、厚さ10mmの液体用石英セルを用いた。単結晶球状シリコンナノ粒子の相対蛍光量子効率算出のため、波長300nm~400nmにかけての吸光度が0.05以下となるようにTHFで希釈して測定した。同様の測定条件で9,10-ジフェニルアントラセンのTHF溶液の吸光度を測定した。
単結晶球状シリコンナノ粒子のUV-vis(紫外-可視)吸収スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計(製品名:V-770,日本分光製)を使用した。測定範囲は、200nm~900nmとして、サンプリングレートを0.2nm、測定速度を低速として測定した。測定には、厚さ10mmの液体用石英セルを用いた。単結晶球状シリコンナノ粒子の相対蛍光量子効率算出のため、波長300nm~400nmにかけての吸光度が0.05以下となるようにTHFで希釈して測定した。同様の測定条件で9,10-ジフェニルアントラセンのTHF溶液の吸光度を測定した。
(円形度)
単結晶球状シリコンナノ粒子の球状を評価する指数として円形度を、以下のようにして算出した。単結晶球状シリコンナノ粒子の円形度は、TEM観察によって得られた画像を、TEM用画像ソフトウエアiTEM(Olympus Soft Imaging Solutions GmbH製)を使用して楕円として近似した。次にTEM画像解析ソフトウエアの解析結果より、単結晶球状シリコンナノ粒子の投影像である楕円の長径(D)、周囲長(Z)及び面積(S)を求めた。周囲長(Z)及び面積(S)の値を用いて4πS/Z2を算出して、円形度とした。円形度の値が1に近いほど、粒子が球形に近く、粒子形状が真球の場合には、円形度は最大1となる。
また、楕円の長径(D)の平均値を求め、平均粒子径とした。測定は独立した単結晶球状シリコンナノ粒子50個について算出した。
単結晶球状シリコンナノ粒子の球状を評価する指数として円形度を、以下のようにして算出した。単結晶球状シリコンナノ粒子の円形度は、TEM観察によって得られた画像を、TEM用画像ソフトウエアiTEM(Olympus Soft Imaging Solutions GmbH製)を使用して楕円として近似した。次にTEM画像解析ソフトウエアの解析結果より、単結晶球状シリコンナノ粒子の投影像である楕円の長径(D)、周囲長(Z)及び面積(S)を求めた。周囲長(Z)及び面積(S)の値を用いて4πS/Z2を算出して、円形度とした。円形度の値が1に近いほど、粒子が球形に近く、粒子形状が真球の場合には、円形度は最大1となる。
また、楕円の長径(D)の平均値を求め、平均粒子径とした。測定は独立した単結晶球状シリコンナノ粒子50個について算出した。
実施例1
実施例1では、原料である四塩化シリコン(SiCl4)のTHF溶液(単結晶球状シリコンナノ粒子原料液)を、金属リチウムのナフタレン溶解THF溶液(単結晶球状シリコンナノ粒子還元液)を用いて還元して単結晶球状シリコンナノ粒子を製造した。
表1に、実施例1-1~実施例1-4の処方を示す。実施例1で用いた溶媒は、残留水分10ppm以下の超脱水テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)で、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む。アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、単結晶球状シリコンナノ粒子還元液(A液)と単結晶球状シリコンナノ粒子原料液(B液)を調液した。具体的には、A液の単結晶球状シリコンナノ粒子還元液は、調液温度-20℃、ナフタレンを0.4モル/Lとなるように溶解させたTHF溶液に、0.4モル/Lの濃度となるように金属リチウムをガラスコートマグネティックスターラーで溶解させて調液した。同様にB液の単結晶球状シリコンナノ粒子原料である四塩化シリコンをTHFに溶解後、ガラスコートマグネティックスターラーで少なくとも60分間撹拌した。表1に記載の化学式や略記号で示された物質については、SiCl4は四塩化シリコン(東京化成工業株式会社製)、Liは金属リチウム(キシダ化学株式会社製)、C10H8はナフタレン(関東化学株式会社製)である。
実施例1では、原料である四塩化シリコン(SiCl4)のTHF溶液(単結晶球状シリコンナノ粒子原料液)を、金属リチウムのナフタレン溶解THF溶液(単結晶球状シリコンナノ粒子還元液)を用いて還元して単結晶球状シリコンナノ粒子を製造した。
表1に、実施例1-1~実施例1-4の処方を示す。実施例1で用いた溶媒は、残留水分10ppm以下の超脱水テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)で、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む。アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、単結晶球状シリコンナノ粒子還元液(A液)と単結晶球状シリコンナノ粒子原料液(B液)を調液した。具体的には、A液の単結晶球状シリコンナノ粒子還元液は、調液温度-20℃、ナフタレンを0.4モル/Lとなるように溶解させたTHF溶液に、0.4モル/Lの濃度となるように金属リチウムをガラスコートマグネティックスターラーで溶解させて調液した。同様にB液の単結晶球状シリコンナノ粒子原料である四塩化シリコンをTHFに溶解後、ガラスコートマグネティックスターラーで少なくとも60分間撹拌した。表1に記載の化学式や略記号で示された物質については、SiCl4は四塩化シリコン(東京化成工業株式会社製)、Liは金属リチウム(キシダ化学株式会社製)、C10H8はナフタレン(関東化学株式会社製)である。
次に、本願の出願人による特許文献5に記載の流体処理装置を用いて、調製した単結晶球状シリコンナノ粒子還元液(A液)と単結晶球状シリコンナノ粒子原料液(B液)を混合した。ここで、特許文献5に記載の流体処理装置とは、同公報の図1(A)に記載の装置であって、第2導入部の開口部d2がリング状に形成されたディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であるものを用いた。具体的には、A液を第1導入部d1から処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数700rpm~5000rpmで運転しながら、B液を第2導入部d2から処理用面1と2間に導入して、単結晶球状シリコンナノ粒子原料液と単結晶球状シリコンナノ粒子還元液とを薄膜流体中で混合し、処理用面1と2間において、単結晶球状シリコンナノ粒子を析出させた。単結晶球状シリコンナノ粒子を含む吐出液を流体処理装置の処理用面1と2間から吐出させた。吐出させた単結晶球状シリコンナノ粒子分散液は、ベッセルを介してビーカーに回収した。
表2に、実施例1の流体処理装置の運転条件を示す。表2に示したA液とB液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1と2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1と第2導入部d2)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表2に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度である。
流体処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した単結晶球状シリコンナノ粒子分散液から、ウェットケーキサンプルを作製した。作製方法としては、常法に従って行い、吐出された単結晶球状シリコンナノ粒子分散液を回収し、この回収液から単結晶球状シリコンナノ粒子を超遠心分離(1,000,000Gで4時間)で沈降させて、上澄み液を分離した。その後、THFでの超音波洗浄と沈降とを繰り返し行い、最終的に得られた単結晶球状シリコンナノ粒子のウェットケーキとした。また、一部を-0.10MPaGにて25℃、20時間乾燥させて乾燥粉体とした。
図1は、実施例1-1の単結晶球状シリコンナノ粒子のTEM観察像を示す。実施例1-2~実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子についても同様の結果が確認された。
図2は、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子のSTEM観察像を示し、図3は、STEM観察像のフーリエ変換された電子線回折パターンを示す。実施例1-1~実施例1-3の単結晶球状シリコンナノ粒子も同様の電子線による粒子内の電子線のシリコン結晶格子面による干渉像と、単結晶の場合にみられるドットパターンによる電子線回折パターンが確認された。従って、実施例1において製造された球状シリコンナノ粒子は、単結晶であることが確認された。得られた電子線回折パターンから算出した格子面間隔は0.162nmとなり、結晶シリコンの(311)面からの電子線の回折パターンであることが確認された。
(Si-H結合)
図4は、実施例1-2の単結晶球状シリコンナノ粒子のIRスペクトル測定結果における波数1800cm-1~2300cm-1の領域について測定した結果を示す。2105cm-1の吸収は、Si-H結合の伸縮振動に帰属されることから、単結晶球状シリコンナノ粒子表面が水素化されていることが確認された。実施例1-1、実施例1-3と実施例1-4についても同様に確認された。Si-H結合は、単結晶球状シリコンナノ粒子表面を疎水化できることから、単結晶球状シリコンナノ粒子は有機溶媒中で良好に分散できることが確認された。図1に示すように、5nm前後の極微小の距離でも、本発明の単結晶球状シリコンナノ粒子が分散されることが観察された。
図4は、実施例1-2の単結晶球状シリコンナノ粒子のIRスペクトル測定結果における波数1800cm-1~2300cm-1の領域について測定した結果を示す。2105cm-1の吸収は、Si-H結合の伸縮振動に帰属されることから、単結晶球状シリコンナノ粒子表面が水素化されていることが確認された。実施例1-1、実施例1-3と実施例1-4についても同様に確認された。Si-H結合は、単結晶球状シリコンナノ粒子表面を疎水化できることから、単結晶球状シリコンナノ粒子は有機溶媒中で良好に分散できることが確認された。図1に示すように、5nm前後の極微小の距離でも、本発明の単結晶球状シリコンナノ粒子が分散されることが観察された。
(Si-O結合)
図5aは、900cm-1~1300cm-1の波数領域におけるIRスペクトルを示す。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子には、1095cm-1に吸収極大が確認され、この吸収ピーク波数は試薬のアモルファス(非晶質)シリカ(SiO2)の吸収ピーク波数1095cm-1と一致する。比較として、単結晶シリコンウエハーのIRスペクトルを示す。この吸収極大の波数は1105cm-1に確認され、シリコン結晶格子間に酸素が固溶した状態の吸収である。
図5bは、400cm-1~550cm-1の波数領域のIRスペクトルを示す。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子では、明瞭な極大を示す吸収ピークが認められないが、試薬のアモルファス(非晶質)シリカ(SiO2)では460cm-1に極大吸収ピークが認められる。このことから、一般的に知られているSi-O結合によるとされる1100cm-1近傍のピークと、アモルファス(非晶質)シリカ(SiO2)が示す460cm-1のピークとが同時に確認される場合に、その物質が酸化されたSiO2とみなされることを意味する。
図5aは、900cm-1~1300cm-1の波数領域におけるIRスペクトルを示す。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子には、1095cm-1に吸収極大が確認され、この吸収ピーク波数は試薬のアモルファス(非晶質)シリカ(SiO2)の吸収ピーク波数1095cm-1と一致する。比較として、単結晶シリコンウエハーのIRスペクトルを示す。この吸収極大の波数は1105cm-1に確認され、シリコン結晶格子間に酸素が固溶した状態の吸収である。
図5bは、400cm-1~550cm-1の波数領域のIRスペクトルを示す。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子では、明瞭な極大を示す吸収ピークが認められないが、試薬のアモルファス(非晶質)シリカ(SiO2)では460cm-1に極大吸収ピークが認められる。このことから、一般的に知られているSi-O結合によるとされる1100cm-1近傍のピークと、アモルファス(非晶質)シリカ(SiO2)が示す460cm-1のピークとが同時に確認される場合に、その物質が酸化されたSiO2とみなされることを意味する。
(シリコン結晶中の固溶酸素)
図5aと図5bに示したIRスペクトルによれば、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子のIRスペクトルは、SiO2とみなされる上記の2か所の吸収が同時に確認されない。従って、1095cm-1の吸収はシリコン結晶中に酸素が固溶した様々の状態によって、固溶した酸素による吸収ピーク波数である1105cm-1から10cm-1異なり、スペクトル幅が広がって測定されたと考えられる。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子は蛍光スペクトルを示すため、シリコン結晶であることが確認される。更に、シリコン結晶中のシリコン原子と結合することが可能な酸素の存在はできるだけ少ないことが望ましい。IRスペクトルで波数1000cm-1~1200cm-1の領域で確認される極大ピークのピーク強度をAとし、波数400cm-1~500cm-1において確認される極大ピークのピーク強度をBとして、比率:B/Aが0.2未満であることが望ましい。実施例1-4では、比率:B/Aが0.1であり、0.2未満である。それに対して、試薬のアモルファスシリカ(SiO2)では、ピーク波数460cm-1で極大ピークを示し、比率:B/Aが0.4であり、0.2を超えている。
図5aと図5bに示したIRスペクトルによれば、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子のIRスペクトルは、SiO2とみなされる上記の2か所の吸収が同時に確認されない。従って、1095cm-1の吸収はシリコン結晶中に酸素が固溶した様々の状態によって、固溶した酸素による吸収ピーク波数である1105cm-1から10cm-1異なり、スペクトル幅が広がって測定されたと考えられる。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子は蛍光スペクトルを示すため、シリコン結晶であることが確認される。更に、シリコン結晶中のシリコン原子と結合することが可能な酸素の存在はできるだけ少ないことが望ましい。IRスペクトルで波数1000cm-1~1200cm-1の領域で確認される極大ピークのピーク強度をAとし、波数400cm-1~500cm-1において確認される極大ピークのピーク強度をBとして、比率:B/Aが0.2未満であることが望ましい。実施例1-4では、比率:B/Aが0.1であり、0.2未満である。それに対して、試薬のアモルファスシリカ(SiO2)では、ピーク波数460cm-1で極大ピークを示し、比率:B/Aが0.4であり、0.2を超えている。
(Si-Cl結合)
図5cは、シリコン原子と塩素原子が結合したSi-Cl結合について検討した結果を示す。Si-Cl結合が存在する場合、IRスペクトルの530cm-1~630cm-1の波数領域にシリコン原子と結合する塩素原子数に応じて吸収する波数が変化する吸収がみられる。Si-Cl結合は、大気中の水分で加水分解してシリコンの酸化物や水酸化物の生成につながる可能性が高く、そこで、できるだけ低減させておくことが望ましい。Si-Cl結合の割合は、1000cm-1~1200cm-1において確認される極大ピークのピーク強度をAとし、530cm-1~630cm-1の波数領域において確認されるSi-Cl結合の極大ピークのピーク強度をCとして、比率:C/Aが0.2未満であることが望ましい。比率:C/Aが0.2未満となっている場合、単結晶球状シリコンナノ粒子を大気中に取り出しても、ただちに変色してシリコン酸化物やシリコン水酸化物へ変化することがみられなかった。実施例1-4では、比率:C/Aが0.06であり、0.2未満である。実施例1-1~実施例1-3においても同様の結果が得られた。
図5cは、シリコン原子と塩素原子が結合したSi-Cl結合について検討した結果を示す。Si-Cl結合が存在する場合、IRスペクトルの530cm-1~630cm-1の波数領域にシリコン原子と結合する塩素原子数に応じて吸収する波数が変化する吸収がみられる。Si-Cl結合は、大気中の水分で加水分解してシリコンの酸化物や水酸化物の生成につながる可能性が高く、そこで、できるだけ低減させておくことが望ましい。Si-Cl結合の割合は、1000cm-1~1200cm-1において確認される極大ピークのピーク強度をAとし、530cm-1~630cm-1の波数領域において確認されるSi-Cl結合の極大ピークのピーク強度をCとして、比率:C/Aが0.2未満であることが望ましい。比率:C/Aが0.2未満となっている場合、単結晶球状シリコンナノ粒子を大気中に取り出しても、ただちに変色してシリコン酸化物やシリコン水酸化物へ変化することがみられなかった。実施例1-4では、比率:C/Aが0.06であり、0.2未満である。実施例1-1~実施例1-3においても同様の結果が得られた。
(シリコン結晶中の置換炭素)
図5dは、550cm-1~700cm-1の波数領域のIRスペクトルを示す。この領域には、シリコン結晶中のシリコン原子と炭素原子が置換したことによる吸収が存在することが知られている。従って、Si-C結合による吸収の波数領域は、前段落に記載したSi-Cl結合による吸収の530cm-1~630cm-1と重なる。実施例1-4では、波数612cm-1の吸収をSi-Cl結合によるとしたが、たとえ波数612cm-1の吸収が固溶した炭素原子によるSi-C結合によるものであるとしても、シリコンウエハーで確認される波数610cm-1に基づく比率:C/Aの0.5と比較すると、実施例1-4では比率:C/Aの0.06であるため、シリコンウエハー以下の炭素濃度であることになる。本発明における単結晶球状シリコンナノ粒子は、ハロゲン化シリコンを芳香族化合物を含む還元液で製造しているため、単結晶球状シリコンナノ粒子中に炭素が不純物として混入してくることが予想されたにも関わらず、本発明の単結晶球状シリコン粒子には炭素原子がほとんど含まれておらず、純度の高い単結晶球状シリコンナノ粒子であることになる。Si-C結合による吸収波数とSi-Cl結合による吸収波数が重なっているため、実施例1-4で確認された612cm-1の吸収がいずれの吸収かは一義的には決定できないが、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子は、炭素と塩素の濃度が低い単結晶球状シリコンナノ粒子である。
図5dは、550cm-1~700cm-1の波数領域のIRスペクトルを示す。この領域には、シリコン結晶中のシリコン原子と炭素原子が置換したことによる吸収が存在することが知られている。従って、Si-C結合による吸収の波数領域は、前段落に記載したSi-Cl結合による吸収の530cm-1~630cm-1と重なる。実施例1-4では、波数612cm-1の吸収をSi-Cl結合によるとしたが、たとえ波数612cm-1の吸収が固溶した炭素原子によるSi-C結合によるものであるとしても、シリコンウエハーで確認される波数610cm-1に基づく比率:C/Aの0.5と比較すると、実施例1-4では比率:C/Aの0.06であるため、シリコンウエハー以下の炭素濃度であることになる。本発明における単結晶球状シリコンナノ粒子は、ハロゲン化シリコンを芳香族化合物を含む還元液で製造しているため、単結晶球状シリコンナノ粒子中に炭素が不純物として混入してくることが予想されたにも関わらず、本発明の単結晶球状シリコン粒子には炭素原子がほとんど含まれておらず、純度の高い単結晶球状シリコンナノ粒子であることになる。Si-C結合による吸収波数とSi-Cl結合による吸収波数が重なっているため、実施例1-4で確認された612cm-1の吸収がいずれの吸収かは一義的には決定できないが、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子は、炭素と塩素の濃度が低い単結晶球状シリコンナノ粒子である。
図6は、実施例1-3の単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光スペクトルを示す。それぞれの励起波長ごとに得られた蛍光スペクトルの最大強度を1.0として規格化した蛍光スペクトルであり、励起波長を340nm~600nmまで40nmごとに変化させた結果である。図6の結果から、実施例1-3の単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光は、400nm~610nmに極大ピークを示すことが確認された。
図7は、図6の結果に基づいて作成したものであり、実施例1-3の単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光ピーク波長の励起波長依存性を示す。シリコンナノ粒子の粒子径が増加すると、蛍光ピーク波長は長波長側に移動することが知られていることから、単結晶球状シリコンナノ粒子の粒子径分布を反映した蛍光が得られていることが確認された。
図7は、図6の結果に基づいて作成したものであり、実施例1-3の単結晶球状シリコンナノ粒子の蛍光ピーク波長の励起波長依存性を示す。シリコンナノ粒子の粒子径が増加すると、蛍光ピーク波長は長波長側に移動することが知られていることから、単結晶球状シリコンナノ粒子の粒子径分布を反映した蛍光が得られていることが確認された。
図8は、実施例1-1~実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子のディスク回転数に対する粒子径と蛍光ピーク波長の測定結果を示す。ディスク回転数の増加に従って、単結晶球状シリコンナノ粒子の粒子径が減少することが確認された。従って、単結晶球状シリコンナノ粒子の粒子径をディスク回転数で制御できることが確認された。また、ディスク回転数の増加に従って、すなわちシリコンナノ粒子径の減少に従って、蛍光ピーク波長が短波長側にシフトすることが確認された。この粒子径による蛍光ピーク波長の変化は、前記(A)~(C)の3つのメカニズム中の(A)量子効果で説明される。すなわち、シリコンナノ粒子の蛍光ピーク波長は、シリコンナノ粒子の粒子径が減少するにつれてシリコンナノ粒子のバンドギャップが増加するために、蛍光ピーク波長は短波長側にシフトしたものと考えられ、(A)量子効果のメカニズムによる結果である。また、本発明のシリコンナノ粒子は、アルキル基やアミノ基などの表面修飾を行っておらず、前記3つのメカニズム中の(B)表面修飾のメカニズムが存在しないため、シリコン結晶中に酸素を固溶していることによる(C)酸素を介するメカニズムが、(A)量子効果のメカニズムと共に相乗的に作用していると考えられる。
図9は、実施例1-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の深紫外線の波長での可視光蛍光スペクトルを示す。深紫外線とは、200nm~300nmの波長範囲の光を意味する。図6に示した可視光の光による励起での蛍光スペクトルに加えて、更に波長の短い深紫外線の光によっても、470nmと550nmに蛍光ピークを示す400nm~600nmの波長範囲の可視光の蛍光が得られることが確認された。実施例1-1、実施例1-3と実施例1-4においても同様の結果を得た。このように深紫外線の光から可視光までの広い波長の励起光によって可視光の蛍光が得られるため、本発明の単結晶球状シリコンナノ粒子は、蛍光を利用できる応用範囲が広がったことが確認された。
実施例1-1~実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子のICP-OESで測定したリチウム濃度が1ppm未満であることが確認された。このことから、本発明の単結晶球状シリコンナノ粒子は、単結晶球状シリコンナノ粒子還元液に含まれている金属リチウムの取り込みが無く、純度の高いことが確認された。
表3は、実施例1-1~実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。実施例1-1~実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子は、比率:B/Aが0.08~0.10であり、比率:C/Aが0.06~0.08であり、共に0.2未満である。
実施例2
実施例2では、実施例1で用いた四塩化シリコン(SiCl4)に代えて四臭化シリコン(SiBr4)を用いて、四臭化シリコンのTHF溶液(単結晶球状シリコンナノ粒子原料液)を、金属リチウムのナフタレン溶解THF溶液(単結晶球状シリコンナノ粒子還元液)を用いて還元して単結晶球状シリコンナノ粒子を製造した。
表4に、実施例2-1~実施例2-4の処方を示す。実施例2で用いた溶媒は、残留水分10ppm以下の超脱水テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)で、重合禁止剤としてBHTを含む。実施例1と同様にして、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、単結晶球状シリコンナノ粒子還元液(A液)と単結晶球状シリコンナノ粒子原料液(B液)を調製した。
実施例2では、実施例1で用いた四塩化シリコン(SiCl4)に代えて四臭化シリコン(SiBr4)を用いて、四臭化シリコンのTHF溶液(単結晶球状シリコンナノ粒子原料液)を、金属リチウムのナフタレン溶解THF溶液(単結晶球状シリコンナノ粒子還元液)を用いて還元して単結晶球状シリコンナノ粒子を製造した。
表4に、実施例2-1~実施例2-4の処方を示す。実施例2で用いた溶媒は、残留水分10ppm以下の超脱水テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)で、重合禁止剤としてBHTを含む。実施例1と同様にして、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、単結晶球状シリコンナノ粒子還元液(A液)と単結晶球状シリコンナノ粒子原料液(B液)を調製した。
次に、実施例1と同様にして、本願の出願人による特許文献5に記載の流体処理装置を用いて、調製した単結晶球状シリコンナノ粒子還元液(A液)と単結晶球状シリコンナノ粒子原料液(B液)を混合した。表5に、流体処理装置の運転条件を示す。
流体処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した単結晶球状シリコンナノ粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。作製方法としては、常法に従って行い、吐出された単結晶球状シリコンナノ粒子分散液を回収し、回収液から単結晶球状シリコンナノ粒子を超遠心分離(1,000,000Gで4時間)で沈降させて上澄み液を分離した。その後、THFでの超音波洗浄と沈降とを繰り返し行い、最終的に得られた単結晶球状シリコンナノ粒子のウェットケーキの一部を-0.10MPaGにて25℃、20時間乾燥させて乾燥粉体とした。残りをウェットケーキサンプルとした。
表6は、実施例2-1~実施例2-4の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。実施例2-1~実施例2-4の単結晶球状シリコンナノ粒子は、比率:B/Aが0.09又は0.10であり、比率:C/Aが0.06~0.08であり、共に0.2未満である。
比較例1
比較例1では、特許文献5の実施例6に従って、四塩化シリコンのTHF溶液(シリコンナノ粒子原料液)を、金属リチウムのDBB(4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル)溶解THF溶液(シリコンナノ粒子還元液)を用いて還元してシリコンナノ粒子を製造した。
表7に、比較例1-1~比較例1-3の処方を示す。比較例1で用いたTHFは、残留水分10ppm以下の超脱水テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)で、重合禁止剤としてBHTを含む。アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、シリコンナノ粒子還元液(A液)とシリコンナノ粒子原料液(B液)を調液した。具体的には、A液のシリコンナノ粒子還元液は、調液温度16℃~17℃の室温で、フラスコ内に予め金属リチウム30ミリモルを測り取り、DBB40ミリモルを溶解させたTHF溶液200mLを注入して、ガラスコートマグネティックスターラーで溶解させて調液した。同様にB液のシリコンナノ粒子原料である四塩化シリコンをTHFに溶解後、ガラスコートマグネティックスターラーで少なくとも60分間撹拌した。表7に記載の化学式や略記号で示された物質については、SiCl4は四塩化シリコン(東京化成工業株式会社製)、Liは金属リチウム(キシダ化学株式会社製)、DBBは4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル(東京化成工業製)である。
比較例1では、特許文献5の実施例6に従って、四塩化シリコンのTHF溶液(シリコンナノ粒子原料液)を、金属リチウムのDBB(4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル)溶解THF溶液(シリコンナノ粒子還元液)を用いて還元してシリコンナノ粒子を製造した。
表7に、比較例1-1~比較例1-3の処方を示す。比較例1で用いたTHFは、残留水分10ppm以下の超脱水テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)で、重合禁止剤としてBHTを含む。アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、シリコンナノ粒子還元液(A液)とシリコンナノ粒子原料液(B液)を調液した。具体的には、A液のシリコンナノ粒子還元液は、調液温度16℃~17℃の室温で、フラスコ内に予め金属リチウム30ミリモルを測り取り、DBB40ミリモルを溶解させたTHF溶液200mLを注入して、ガラスコートマグネティックスターラーで溶解させて調液した。同様にB液のシリコンナノ粒子原料である四塩化シリコンをTHFに溶解後、ガラスコートマグネティックスターラーで少なくとも60分間撹拌した。表7に記載の化学式や略記号で示された物質については、SiCl4は四塩化シリコン(東京化成工業株式会社製)、Liは金属リチウム(キシダ化学株式会社製)、DBBは4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル(東京化成工業製)である。
次に、実施例1と同様にして、本願の出願人による特許文献5に記載の流体処理装置を用いて、調液したシリコンナノ粒子還元液(A液)とシリコンナノ粒子原料液(B液)を混合した。表8に、比較例1-1~比較例1-3における流体処理装置の運転条件を示す。
(ヘキシル基終端シリコンナノ粒子の調製)
次に、流体処理装置から吐出させて回収したシリコンナノ粒子分散液に、特許文献5の実施例6に記載の表面安定化処理を行った。具体的には、アルゴン雰囲気のグローブボックス内でシリコンナノ粒子分散液10mLを100mL三ツ口フラスコにいれて、IPAを冷媒として-3℃に維持した冷却槽に保持した。三ツ口フラスコにアルゴン通気できるように三方コックを接続後、臭化ヘキシルマグネシウム(東京化成工業製)を、シリコンナノ粒子分散液中のシリコンモル濃度の4倍濃度になるように調液した溶液を、三ツ口フラスコのラバーセプタム越しにメタルニードルを貫通させたガラスシリンジで、吐出液に滴下した。滴下後、冷却槽を外して、徐々に室温の16℃~17℃に昇温してアルゴン雰囲気下で24時間撹拌を行った。これによって、吐出液中に分散した塩素化シリコンナノ粒子表面が、ヘキシル基終端されたシリコンナノ粒子を得た。ヘキシル基終端シリコンナノ粒子を精製するため、フラスコにヘキサンを加えて、THF溶液中に分散しているヘキシル基終端シリコンナノ粒子をヘキサン層に抽出した。ヘキサン層を分液してから、このヘキサン層に純水を加えて、反応生成物である塩化リチウムや臭化ヘキシルマグネシウム起因の残渣などを溶解洗浄した。
次に、流体処理装置から吐出させて回収したシリコンナノ粒子分散液に、特許文献5の実施例6に記載の表面安定化処理を行った。具体的には、アルゴン雰囲気のグローブボックス内でシリコンナノ粒子分散液10mLを100mL三ツ口フラスコにいれて、IPAを冷媒として-3℃に維持した冷却槽に保持した。三ツ口フラスコにアルゴン通気できるように三方コックを接続後、臭化ヘキシルマグネシウム(東京化成工業製)を、シリコンナノ粒子分散液中のシリコンモル濃度の4倍濃度になるように調液した溶液を、三ツ口フラスコのラバーセプタム越しにメタルニードルを貫通させたガラスシリンジで、吐出液に滴下した。滴下後、冷却槽を外して、徐々に室温の16℃~17℃に昇温してアルゴン雰囲気下で24時間撹拌を行った。これによって、吐出液中に分散した塩素化シリコンナノ粒子表面が、ヘキシル基終端されたシリコンナノ粒子を得た。ヘキシル基終端シリコンナノ粒子を精製するため、フラスコにヘキサンを加えて、THF溶液中に分散しているヘキシル基終端シリコンナノ粒子をヘキサン層に抽出した。ヘキサン層を分液してから、このヘキサン層に純水を加えて、反応生成物である塩化リチウムや臭化ヘキシルマグネシウム起因の残渣などを溶解洗浄した。
図10は、比較例1-1で調製されたヘキシル基終端シリコンナノ粒子のSTEM観察像を示す。STEM観察像からは、ヘキシル基終端シリコンナノ粒子は結晶であるが、シリコンナノ粒子内の格子面が一定の方向にそろって観察されておらず、格子面が交差している多結晶となっていることが確認された。
また、実施例1とは異なり、シリコンナノ粒子は球状ではなく、いびつな粒子形状を呈していることが確認された。表9に記載の通り、比較例1-1~比較例1-3のヘキシル基終端シリコンナノ粒子の円形度は、0.83又は0.84であり、0.9以上ではなかった。
また、実施例1とは異なり、シリコンナノ粒子は球状ではなく、いびつな粒子形状を呈していることが確認された。表9に記載の通り、比較例1-1~比較例1-3のヘキシル基終端シリコンナノ粒子の円形度は、0.83又は0.84であり、0.9以上ではなかった。
多結晶になった理由として、以下の理由が考えられる。
単結晶球状シリコンナノ粒子還元液の調液を、本発明の実施例1では-20℃の温度で行ったが、比較例1では16℃~17℃の室温で行った。それは、特許文献4の実施例1、及び特許文献5の実施例6で、金属リチウムとDBBから室温で還元液を調液したことに合わせたためである。還元液の調液を室温で行ったことで、金属リチウムがTHF中で電子を放出して溶解する反応で、金属リチウムの電子がDBB分子に一電子移動することで生成するDBBアニオン(ラジカルアニオン)は、不均化反応によって、DBBジアニオンと電荷をもたないDBB分子が生成する平衡反応となるために、DBBアニオンの濃度が低くなる。このように、THF溶液内で様々な分子種が混在していることが、四塩化シリコンからシリコンナノ粒子への均一な結晶成長による球状化を阻害し、反応速度の分布がシリコン粒子の多結晶化となる原因となったことが考えられる。
単結晶球状シリコンナノ粒子還元液の調液を、本発明の実施例1では-20℃の温度で行ったが、比較例1では16℃~17℃の室温で行った。それは、特許文献4の実施例1、及び特許文献5の実施例6で、金属リチウムとDBBから室温で還元液を調液したことに合わせたためである。還元液の調液を室温で行ったことで、金属リチウムがTHF中で電子を放出して溶解する反応で、金属リチウムの電子がDBB分子に一電子移動することで生成するDBBアニオン(ラジカルアニオン)は、不均化反応によって、DBBジアニオンと電荷をもたないDBB分子が生成する平衡反応となるために、DBBアニオンの濃度が低くなる。このように、THF溶液内で様々な分子種が混在していることが、四塩化シリコンからシリコンナノ粒子への均一な結晶成長による球状化を阻害し、反応速度の分布がシリコン粒子の多結晶化となる原因となったことが考えられる。
(還元液の送液温度)
DBBアニオンは、金属リチウムがリチウムイオンとしてTHF中に溶解する際に生じる電子がDBBに移動することで生成される。THF中では、DBBアニオンとリチウムイオンとは、THFを介して存在することができるが、調液時の温度が0℃以上では、DBBアニオンはTHFを介さずに、直接、リチウムイオンとイオン結合を生じ得る。そこで、一旦、DBBアニオンとリチウムイオンとがイオン結合すると、シリコンナノ粒子を製造する場合の送液温度を低温としても、THFがDBBアニオンとリチウムイオンとの間に介在することが困難である。リチウムイオンとDBBアニオンとが直接、イオン結合している状態では、DBBアニオンからリチウムイオンへの逆電子移動が生じやすい。このことによって、シリコンナノ粒子還元力のばらつきがもたらされ、シリコン粒子の結晶成長速度が不均一となり、得られるシリコン粒子形状は、球状からのずれが大きくなり、単結晶から多結晶となる原因となったことが考えられる。
DBBアニオンは、金属リチウムがリチウムイオンとしてTHF中に溶解する際に生じる電子がDBBに移動することで生成される。THF中では、DBBアニオンとリチウムイオンとは、THFを介して存在することができるが、調液時の温度が0℃以上では、DBBアニオンはTHFを介さずに、直接、リチウムイオンとイオン結合を生じ得る。そこで、一旦、DBBアニオンとリチウムイオンとがイオン結合すると、シリコンナノ粒子を製造する場合の送液温度を低温としても、THFがDBBアニオンとリチウムイオンとの間に介在することが困難である。リチウムイオンとDBBアニオンとが直接、イオン結合している状態では、DBBアニオンからリチウムイオンへの逆電子移動が生じやすい。このことによって、シリコンナノ粒子還元力のばらつきがもたらされ、シリコン粒子の結晶成長速度が不均一となり、得られるシリコン粒子形状は、球状からのずれが大きくなり、単結晶から多結晶となる原因となったことが考えられる。
また、比較例1では、続いてヘキシル基による表面安定化処理を行うために、シリコンナノ粒子の表面に塩素原子が結合した状態にしている。そこで、四塩化シリコンのモル数に対して、還元剤である金属リチウムのモル数を3/4倍としている。それは、特許文献4の実施例1、及び特許文献5の実施例6における金属リチウムのモル比に合わせたためである。表面安定化処理前のシリコンナノ粒子は、表面が意図的に塩素化されている点でも、本発明の単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なる。また、表面安定化処理の後、ヘキシル基で置換されずに残存する塩素原子がシリコンナノ粒子の表面に存在するため、その塩素原子が、ヘキサン抽出後の純水洗浄時に加水分解を受けてシリコンナノ粒子の形状を変化させていることも推測される。比較例1-2と比較例1-3のシリコンナノ粒子についても同様の結果が確認された。
(比較例1の多結晶シリコンナノ粒子のSi-H結合)
図11に、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子の1800cm-1~2300cm-1の波数範囲のIRスペクトルを示す。比較例1-1では、実施例1-2で確認された2100cm-1近傍のSi-H結合による吸収ピークはみられなかった。これは、比較例1-1~比較例1-3の多結晶シリコンナノ粒子は、多結晶シリコンナノ粒子表面に塩素が残存できるように、還元液の金属リチウムモル数をシリコンナノ粒子原料液の金属リチウム原料濃度の3/4として、塩素化多結晶シリコンナノ粒子を調製し、その後、臭化ヘキシルマグネシウムで塩素原子をヘキシル基で置換していることによると考えられる。
図11に、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子の1800cm-1~2300cm-1の波数範囲のIRスペクトルを示す。比較例1-1では、実施例1-2で確認された2100cm-1近傍のSi-H結合による吸収ピークはみられなかった。これは、比較例1-1~比較例1-3の多結晶シリコンナノ粒子は、多結晶シリコンナノ粒子表面に塩素が残存できるように、還元液の金属リチウムモル数をシリコンナノ粒子原料液の金属リチウム原料濃度の3/4として、塩素化多結晶シリコンナノ粒子を調製し、その後、臭化ヘキシルマグネシウムで塩素原子をヘキシル基で置換していることによると考えられる。
(比較例1の多結晶シリコンナノ粒子のSi-O結合)
図12aと図12bは、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子のIRスペクトルを示す。実施例1-4では、1095cm-1にスぺクトル幅が広い吸収ピークが見られているが、比較例1-1では、1084cm-1にスペクトル幅が狭い吸収ピークが確認された。また、比較例1-1では、低波数側の450cm-1にも吸収ピークが確認された。IRスペクトルで1000cm-1~1200cm-1の領域で確認される極大ピークのピーク強度をAとし、400cm-1~500cm-1において確認される極大ピークのピーク強度をBとして、比率:B/Aは0.38であり、0.2未満ではなかった。この結果から、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子のSi-O結合状態は、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なっていることが確認された。比較例1-2と比較例1-3についても比較例1-1と同様の結果が得られた。
図12aと図12bは、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子のIRスペクトルを示す。実施例1-4では、1095cm-1にスぺクトル幅が広い吸収ピークが見られているが、比較例1-1では、1084cm-1にスペクトル幅が狭い吸収ピークが確認された。また、比較例1-1では、低波数側の450cm-1にも吸収ピークが確認された。IRスペクトルで1000cm-1~1200cm-1の領域で確認される極大ピークのピーク強度をAとし、400cm-1~500cm-1において確認される極大ピークのピーク強度をBとして、比率:B/Aは0.38であり、0.2未満ではなかった。この結果から、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子のSi-O結合状態は、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なっていることが確認された。比較例1-2と比較例1-3についても比較例1-1と同様の結果が得られた。
(比較例1の多結晶シリコンナノ粒子のSi-Cl結合)
図12cに、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子の波数450cm-1~650cm-1におけるIRスペクトルを示す。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子と異なって、620cm-1に明瞭な極大吸収ピークが確認され、Si-Cl結合の存在が確認された。IRスペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の領域で確認される極大ピークのピーク強度をAとし、530cm-1~630cm-1において確認される極大ピークのピーク強度をCとして、比率:C/Aは0.25となり、0.2未満ではない。比較例1-2と比較例1-3についても比較例1-1と同様の結果が得られた。ここから、塩素化多結晶シリコンナノ粒子の表面に、臭化ヘキシルマグネシウムによる表面安定化処理によっても完全にはヘキシル基と置換できない塩素原子が存在することが推測される。
図12cに、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子の波数450cm-1~650cm-1におけるIRスペクトルを示す。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子と異なって、620cm-1に明瞭な極大吸収ピークが確認され、Si-Cl結合の存在が確認された。IRスペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の領域で確認される極大ピークのピーク強度をAとし、530cm-1~630cm-1において確認される極大ピークのピーク強度をCとして、比率:C/Aは0.25となり、0.2未満ではない。比較例1-2と比較例1-3についても比較例1-1と同様の結果が得られた。ここから、塩素化多結晶シリコンナノ粒子の表面に、臭化ヘキシルマグネシウムによる表面安定化処理によっても完全にはヘキシル基と置換できない塩素原子が存在することが推測される。
(比較例1の多結晶シリコンナノ粒子中の置換炭素)
図12dに、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子の波数550cm-1~700cm-1におけるIRスペクトルを示す。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なり、620cm-1に吸光度0.25の吸収ピークが見られた。この波数領域は、[0101]に記載したように、シリコン原子と塩素原子が結合した場合にも吸収を生じる530cm-1~630cm-1とも重なっている。上記の通り、比率:C/Aは0.25となり、0.2未満ではない。この結果は、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子中に、Si-Cl結合又は置換炭素が存在することを示しており、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なる組成を有していることが確認された。
図12dに、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子の波数550cm-1~700cm-1におけるIRスペクトルを示す。実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なり、620cm-1に吸光度0.25の吸収ピークが見られた。この波数領域は、[0101]に記載したように、シリコン原子と塩素原子が結合した場合にも吸収を生じる530cm-1~630cm-1とも重なっている。上記の通り、比率:C/Aは0.25となり、0.2未満ではない。この結果は、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子中に、Si-Cl結合又は置換炭素が存在することを示しており、実施例1-4の単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なる組成を有していることが確認された。
(比較例1の多結晶シリコンナノ粒子の蛍光スペクトル)
比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子からは、波長範囲400nm~600nmに蛍光極大を示すことが確認された。しかし、図13aと図13bに示す通り、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子の300nm以下の深紫外線の励起波長による蛍光スペクトルにおいては、蛍光ピーク波長は400nm以下であることが確認され、比較例1-2と比較例1-3の多結晶シリコンナノ粒子の深紫外線の励起による蛍光スペクトルも同様に400nm以下にピークを示すことが認められた。これらの結果は、実施例1-4が励起波長220nmで蛍光ピーク波長が547mn、励起波長260nmで568nmに蛍光ピークを示す結果とは異なった。比較例1-1~比較例1-3の多結晶シリコンナノ粒子からの深紫外線の励起による蛍光ピーク波長は、いずれも400nm以下であったことから、400nm~600nmの可視光領域に蛍光ピークを示す単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なる電子エネルギーの構造をもつことが確認された。これは、比較例1のシリコンナノ粒子が異なる結晶子径をもつ単結晶の集合体である多結晶であるため、励起光の吸収と蛍光を放出する電子エネルギーレベルが単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なっていることとして説明される。とりわけ、実施例及び比較例で調製されたシリコン粒子径が5nm前後となっていることで、わずかな結晶子径の変化が、シリコンのバンドギャップの大きさに大きな影響を与えることと、多結晶は、単結晶のそれぞれの結晶子が接する粒界の存在のために、この粒界存在による電子エネルギーレベルの存在が考えられるためである。
比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子からは、波長範囲400nm~600nmに蛍光極大を示すことが確認された。しかし、図13aと図13bに示す通り、比較例1-1の多結晶シリコンナノ粒子の300nm以下の深紫外線の励起波長による蛍光スペクトルにおいては、蛍光ピーク波長は400nm以下であることが確認され、比較例1-2と比較例1-3の多結晶シリコンナノ粒子の深紫外線の励起による蛍光スペクトルも同様に400nm以下にピークを示すことが認められた。これらの結果は、実施例1-4が励起波長220nmで蛍光ピーク波長が547mn、励起波長260nmで568nmに蛍光ピークを示す結果とは異なった。比較例1-1~比較例1-3の多結晶シリコンナノ粒子からの深紫外線の励起による蛍光ピーク波長は、いずれも400nm以下であったことから、400nm~600nmの可視光領域に蛍光ピークを示す単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なる電子エネルギーの構造をもつことが確認された。これは、比較例1のシリコンナノ粒子が異なる結晶子径をもつ単結晶の集合体である多結晶であるため、励起光の吸収と蛍光を放出する電子エネルギーレベルが単結晶球状シリコンナノ粒子とは異なっていることとして説明される。とりわけ、実施例及び比較例で調製されたシリコン粒子径が5nm前後となっていることで、わずかな結晶子径の変化が、シリコンのバンドギャップの大きさに大きな影響を与えることと、多結晶は、単結晶のそれぞれの結晶子が接する粒界の存在のために、この粒界存在による電子エネルギーレベルの存在が考えられるためである。
表9は、比較例1-1~比較例1-3の多結晶シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。比較例1のシリコンナノ粒子は、多結晶シリコンナノ粒子となっており、比率:B/Aと、比率:C/Aの値は0.2以上となっている。これらの値は、実施例1と実施例2の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aと比較すると、異なっていることが確認された。
実施例3
表10は、実施例3-1と実施例3-2における処方を示す。表11は、実施例3-1と実施例3-2における流体処理装置の運転条件を示す。表12は、実施例3-1と実施例3-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。
還元液のアルカリ金属がナトリウムの場合、相対蛍光量子効率は11から13%となった。実施例3のシリコンナノ粒子の比率:B/Aと、比率:C/Aの値は0.1以下となっている。これらの値は、実施例1と実施例2の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aと同等であることが確認された。
表10は、実施例3-1と実施例3-2における処方を示す。表11は、実施例3-1と実施例3-2における流体処理装置の運転条件を示す。表12は、実施例3-1と実施例3-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。
還元液のアルカリ金属がナトリウムの場合、相対蛍光量子効率は11から13%となった。実施例3のシリコンナノ粒子の比率:B/Aと、比率:C/Aの値は0.1以下となっている。これらの値は、実施例1と実施例2の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aと同等であることが確認された。
実施例4
表13は、実施例4-1と実施例4-2における処方を示す。表14は、比較例4-1と実施例4-2における流体処理装置の運転条件を示す。表15は、実施例4-1と実施例4-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。
還元液の金属がカリウムの場合、相対蛍光量子効率は11%から13%となった。比率B:/Aと比率:C/Aの値は、実施例1~実施例3の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aと同等となっていることが確認された。
表13は、実施例4-1と実施例4-2における処方を示す。表14は、比較例4-1と実施例4-2における流体処理装置の運転条件を示す。表15は、実施例4-1と実施例4-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。
還元液の金属がカリウムの場合、相対蛍光量子効率は11%から13%となった。比率B:/Aと比率:C/Aの値は、実施例1~実施例3の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aと同等となっていることが確認された。
比較例2
表16は、比較例2-1と比較例2-2の処方を示す。表17は、比較例2-1と比較例2-2の流体処理装置の運転条件を示す。還元液のアルカリ金属は金属リチウムとして、A液の還元液の温度は25℃とした。ディスク回転数は3500rpmと5000rpmとした。表18は、比較例2-1と比較例2-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。
A液の還元剤の温度が高いため、ディスク回転数を高くしても平均粒子径は4nm以上と大きくなり、相対蛍光量子効率も5%未満に低下した。比率:B/A、比率:C/Aの値は、実施例1~実施例4の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aよりも大きく、異なっていることが確認された。
表16は、比較例2-1と比較例2-2の処方を示す。表17は、比較例2-1と比較例2-2の流体処理装置の運転条件を示す。還元液のアルカリ金属は金属リチウムとして、A液の還元液の温度は25℃とした。ディスク回転数は3500rpmと5000rpmとした。表18は、比較例2-1と比較例2-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。
A液の還元剤の温度が高いため、ディスク回転数を高くしても平均粒子径は4nm以上と大きくなり、相対蛍光量子効率も5%未満に低下した。比率:B/A、比率:C/Aの値は、実施例1~実施例4の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aよりも大きく、異なっていることが確認された。
比較例3
表19は、比較例3-1と比較例3-2の処方を示す。表20は、比較例3-1と比較例3-2の流体処理装置の運転条件を示す。A液の還元液のアルカリ金属は金属リチウムとして、還元液の温度は5℃に維持した。表21は、比較例3-1と比較例3-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。
還元液の温度は5℃に低温に維持したが、ディスク回転数を350rpmと500rpmとしたことで、平均粒子径が増加して、相対蛍光量子効率は5%未満に低下した。比率:B/A、比率:C/Aの値は、実施例1~実施例4の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aよりも大きく、異なっていることが確認された。
表19は、比較例3-1と比較例3-2の処方を示す。表20は、比較例3-1と比較例3-2の流体処理装置の運転条件を示す。A液の還元液のアルカリ金属は金属リチウムとして、還元液の温度は5℃に維持した。表21は、比較例3-1と比較例3-2の単結晶球状シリコンナノ粒子の平均粒子径、円形度、相対蛍光量子効率、IRスペクトルで得られた比率:B/Aと比率:C/Aの値を示す。
還元液の温度は5℃に低温に維持したが、ディスク回転数を350rpmと500rpmとしたことで、平均粒子径が増加して、相対蛍光量子効率は5%未満に低下した。比率:B/A、比率:C/Aの値は、実施例1~実施例4の単結晶球状シリコンナノ粒子の比率:B/Aと比率:C/Aよりも大きく、異なっていることが確認された。
本発明の製造方法によって製造される単結晶球状シリコンナノ粒子によって、蛍光効率を低減する粒界を持たない単結晶であるために、200nm~300nmの深紫外線の光から可視光までの広い波長の光による励起によって、高い蛍光量子効率で蛍光を生じることができ、従来までに知られているシリコンナノ粒子の蛍光量子効率を1%前後から10%以上に増加させることが可能となる。
Claims (15)
- 単結晶であり、球状であり、平均粒子径が1nm~20nmである単結晶球状シリコンナノ粒子の製造方法であって、
接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用面の間にできる薄膜流体中で、ハロゲン化シリコンを含む原料液と、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物から生成される前記縮合芳香族化合物のアニオンを含む5℃以下の還元液とを混合して反応させる工程を含み、
前記処理用面の回転数が700rpm以上であり、
前記縮合芳香族化合物のアニオンが、リチウム、ナトリウム又はカリウムと縮合芳香族化合物を0℃未満で混合して調液される、製造方法。 - 被処理流動体に圧力を付与する流体圧付与機構と、第1処理用部、及び前記第1処理用部に対して相対的に接近・離反可能な第2処理用部の少なくとも2つの処理用部と、上記の第1処理用部と第2処理用部とを相対的に回転させる回転駆動機構とを備える装置であって、
上記の各処理用部において互いに対向する位置に、第1処理用面及び第2処理用面の少なくとも2つの処理用面が設けられており、上記の各処理用面は、上記圧力の被処理流動体が流される、密封された流路の一部を構成するものであり、上記の両処理用面間にて、少なくともいずれかに反応物を含む、2種以上の被処理流動体を混合し反応させるものであり、
上記第1処理用部と第2処理用部のうち、少なくとも第2処理用部は受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が上記の第2処理用面により構成され、この受圧面は、上記の流体圧付与機構が被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面から第2処理用面を離反させる方向に移動させる力を発生させ、接近・離反可能、且つ相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に上記圧力の被処理流動体が通されることにより、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、さらに上記圧力の被処理流動体が流される各処理用面間の流路とは独立した別途の導入路を備えており、上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れかに、上記別途の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、上記別途の導入路から送られてきた少なくとも一つの被処理流動体を、上記両処理用面間に導入することにより、少なくとも上記の各被処理流動体のいずれかに含まれる上記の反応物と、前記被処理流動体とは異なる被処理流動体とが、上記薄膜流体内で混合される装置を用いて、前記原料液と前記還元液とを混合して反応させる、請求項1に記載の製造方法。 - 上記開口部が、上記両処理用面間に通された被処理流動体の流れが層流となる点よりも下流側に設置されている、請求項2に記載の製造方法。
- 前記リチウム、ナトリウム又はカリウムと前記ハロゲン化シリコンのモル比が7:1~4:1である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 縮合芳香族化合物が、ビフェニル、ナフタレン、1,2-ジヒドロナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びピレンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記還元液に含まれる溶媒が、残留水分が10ppm以下であるテトラヒドロフラン及び/又はジメトキシエタンである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記還元液に含まれる溶媒が、フェノール系の重合禁止剤を含み、残留水分が10ppm以下であり、残留酸素濃度が0.1ppm未満であるテトラヒドロフランである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記原料液に含まれる溶媒が、残留水分が10ppm以下であり、残留酸素濃度が0.1ppm未満であるテトラヒドロフランである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記ハロゲン化シリコンが、四塩化シリコン、四臭化シリコン又は四ヨウ化シリコンである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、透過電子顕微鏡によって観察される単結晶球状シリコンナノ粒子の投影像の周囲長(Z)及び面積(S)を用いて、数式:4πS/Z2で算出される円形度の平均値が0.9以上である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、IR吸収スペクトルにおいて、1950cm-1~2150cm-1の波数領域にSi-H結合に帰属される吸収を示す、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、IR吸収スペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をAとし、400cm-1~500cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をBとして、算出される比率:B/Aが0.2未満である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、IR吸収スペクトルにおいて、1000cm-1~1200cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をAとし、530cm-1~630cm-1の波数範囲における極大ピークのピーク強度をCとして、算出される比率:C/Aが0.2未満である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記単結晶球状シリコンナノ粒子が、励起光の波長が300nm以下の深紫外線によって、400nm~600nmの波長範囲に蛍光極大を生じる、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
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| JP2007012702A (ja) | 2005-06-28 | 2007-01-18 | Toshiba Corp | 半導体ナノ粒子の製造方法及び半導体材料の表面を半導体元素で被覆する方法、並びにそれらにより製造された半導体ナノ粒子、表面が被覆された半導体材料、及び発光素子 |
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