JP7846471B2 - 三酸化モリブデン微粒子の製造方法 - Google Patents

三酸化モリブデン微粒子の製造方法

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Description

本発明は、三酸化モリブデン微粒子の製造方法に関する。
本願は、2023年11月24日に、日本に出願された特願2023-199113号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
三酸化モリブデン微粒子は触媒、鋼鉄や耐腐食性合金添加剤、モリブデン金属や化合物原料、抗菌抗ウイルスなど幅広い用途がある。
三酸化モリブデンは800℃以上の温度で溶融し、かつ、昇華性を有する。そのため、昇華した三酸化モリブデンガスを冷却するか、あるいは800℃以下の空気、不活性ガスと接触させることによって、三酸化モリブデンを固化して粒子化することができる(例えば、特許文献1)。
特許第6455747号公報
しかしながら、従来のバーナーによるガス加熱やヒーターによる電気加熱では、加熱する三酸化モリブデン周囲の雰囲気も加熱される。そのため、加熱エネルギーの投入を遮断しても、三酸化モリブデンの昇華を抑制できない。その結果、原料の三酸化モリブデンから、微細な粒子径を有する三酸化モリブデン微粒子を効率よく製造することは困難であった。低消費エネルギーでも高い回収率で三酸化モリブデン微粒子を製造することができる製造方法が求められている。
本発明者らの鋭意検討の結果、三酸化モリブデン(粉末)はマイクロ波などの電磁波をよく吸収し、速やかに加熱、昇温されて気化すること、および該電磁波によって雰囲気は加熱されないため、電磁波エネルギーの投入を遮断することにより、直ちに気化が抑制されるため、該三酸化モリブデンの気化量が制御でき、結果として三酸化モリブデン微粒子を効率よく製造することができることを見出した。すなわち、本実施形態は、電磁波照射による加熱はON/OFF制御や照射強度制御が容易であり且つ雰囲気を加熱することなく、三酸化モリブデンへ選択的な加熱が可能である。本実施形態は、そのことより、低消費エネルギーでも高い回収率で三酸化モリブデン微粒子を製造することができる三酸化モリブデン微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本実施形態は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
[1] 三酸化モリブデンに電磁波を照射することにより、前記三酸化モリブデンを加熱し、気化させる気化工程と、
前記気化させた三酸化モリブデンを加熱されていない雰囲気中で冷却して、粒子化し、三酸化モリブデン微粒子を得る粒子化工程と、含み、
前記電磁波の周波数が300~30000MHzの範囲にあることを特徴とする、三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
[2] 前記電磁波の周波数が900~3000MHzの範囲にある、[1]に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
[3] 前記三酸化モリブデンに0.1~50重量%の金属酸化物を配合する、[1]又は[2]に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
[4] 前記金属酸化物が水酸化アルミニウム、べーマイト、酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタン、及び酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種である、[3]に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
[5] 前記三酸化モリブデン微粒子の平均粒子径が10nm~100μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
[6] 前記三酸化モリブデン微粒子のBET比表面積が0.01m/g~500m/gである、[1]~[5]のいずれかに記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
[7] 前記三酸化モリブデン微粒子がα結晶構造を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
[8] 前記三酸化モリブデン微粒子がさらにβ結晶構造を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
本実施形態によれば、容易なON/OFF制御および選択的な加熱より、低消費エネルギーでも高い回収率で三酸化モリブデン微粒子を製造することができる、三酸化モリブデン微粒子の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態の三酸化モリブデン微粒子の製造に用いられる装置の一例の概略図である。
(三酸化モリブデン微粒子の製造方法)
本発明の一実施形態の三酸化モリブデン微粒子製造方法は、以下の2つの工程を含む。(I)気化工程:三酸化モリブデンに電磁波を照射することにより、前記三酸化モリブデンを加熱し、気化させる工程。(II)粒子化工程:前記気化させた三酸化モリブデンを加熱されていない雰囲気中で冷却して、粒子化し、三酸化モリブデン微粒子を得る工程。なお、前記電磁波の周波数は300~30000MHzの範囲である。
本実施形態の三酸化モリブデン微粒子の製造方法は、例えば、図1に示す三酸化モリブデン微粒子の製造装置10を用いて好適に実施することができる。
図1は、本実施形態の三酸化モリブデン微粒子の製造に用いられる装置の一例の概略図である。前記チャンバー1の上部に前記電磁波を照射することができる装置(「電磁波照射装置」ということがある。図示せず)が配置されている。三酸化モリブデン微粒子の製造装置10は、電磁波照射装置で発生した電磁波を、容器2に設置された前記三酸化モリブデンに照射することにより、前記三酸化モリブデンを加熱(以後、「電磁波加熱」ということがある。)し、前記三酸化モリブデンを気化させるチャンバー1と、前記チャンバー1に接続され、前記照射により気化した三酸化モリブデン蒸気を微粒子化する粒子回収装置3と、を有する。この際、前記チャンバー1および粒子回収装置3は、接続されている。また、前記チャンバー1は、左端部には外気吸気口6が配置され、前記粒子回収装置3は、右端部には排気口8が配置されている。また、前記吸気口6に送風手段である排風装置(図示せず)が接続されている。なお、製造装置1は、外部冷却装置(図示せず)を有していてもよく、これによってチャンバー1から生じる三酸化モリブデン蒸気の冷却条件を任意に制御することが可能となる。
[三酸化モリブデン微粒子]
本実施形態の三酸化モリブデン微粒子は、三酸化モリブデンの結晶構造を含む一次粒子の集合体を含有する。本実施形態の三酸化モリブデン微粒子は、本実施形態の三酸化モリブデン粉体ということもできる。前記結晶構造は、例えば、α結晶構造でもよく、β結晶構造でもよく、α結晶構造とβ結晶構造両方を含んでもよい。
本実施形態の三酸化モリブデン微粒子は、従来の三酸化モリブデン微粒子に比べて、他の化合物、例えば硫黄との反応性が良好である。
本実施形態において、三酸化モリブデンのα結晶構造は、MoOのα結晶の(021)面(2θ:27.32°付近_No.166363(無機結晶構造データベース、ICSD))のピークの存在によって、確認することができる。また、β結晶構造は、X線源としてCu-Kα線を用いた粉末X線回折(XRD)から得られるプロファイルにおいて、MoOのβ結晶の(011)面に帰属するピークの存在によって、確認することができる。上記ピークが、2θ:23.01°付近、No.86426(無機結晶構造データベース、ICSD)のピークである。
本実施形態の三酸化モリブデン微粒子の平均粒子径は、10nm~100μmであることが好ましい。本実施形態の三酸化モリブデン微粒子の平均粒子径は、例えば、公知の粒度分布測定方法で測定することができる。本実施形態の三酸化モリブデン微粒子の平均粒子径は、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが更に好ましい。また、100μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。
本実施形態の三酸化モリブデン微粒子の平均粒子径が上記の好ましい範囲内であると、例えば、三酸化モリブデン微粒子を用いて、硫化モリブデンを製造する場合、三酸化モリブデン微粒子の硫黄との反応性がより良好となりやすい。
前記三酸化モリブデン微粒子のBET比表面積は0.01m/g~500m/gであることが好ましい。本実施形態の三酸化モリブデン微粒子において、前記BET比表面積は、他の化合物、例えば硫黄との反応性がより向上する等の観点から、1m/g以上であることがより好ましく、10m/g以上であることがより好ましく、20m/g以上であることが更に好ましい。また、本実施形態の三酸化モリブデン微粒子において、製造が容易になることから、500m/g以下であってもよく、200m/g以下であってもよく、100m/g以下であってもよい。
本実施形態の三酸化モリブデン微粒子において、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影したときの二次元画像における一次粒子の形状は、目視観察又は画像写真で、粒子状、球状、板状(シート状)、針状、紐形状、又はリボン状であってもよく、これらの形状が組み合わさって含まれていてもよい。本実施形態において、三酸化モリブデン微粒子の一次粒子の形状は、ナノオーダーの厚みを有するリボン状またはシート状であってもよい。前記三酸化モリブデン粒子50個の一次粒子の形状が、平均で、長さ(縦)×幅(横)=5~2000nm×5~2000nmの範囲の大きさを有することが好ましく、5~1000nm×5~1000nmの範囲の大きさを有することがより好ましく、10~500nm×10~500nmの範囲の大きさを有することが特に好ましい。
三酸化モリブデンのβ結晶構造は、ラマン分光測定から得られるラマンスペクトルにおいて、波数773、848cm-1及び905cm-1でのピークの存在によっても、確認することができる。三酸化モリブデンのα結晶構造は、波数663、816cm-1及び991cm-1でのピークの存在によって、確認することができる。
本実施形態の三酸化モリブデン微粒子は、硫黄との反応性が良好であるため、硫化モリブデン(MoS)の原料として有用である。また、本実施形態の三酸化モリブデン微粒子は、高純度にできるため、工業グレードでの適用が可能である。また、本実施形態の三酸化モリブデン微粒子は、各種触媒用途への適用が期待される。
[気化工程]
本実施形態の三酸化モリブデン微粒子の製造方法における気化工程は、三酸化モリブデンに電磁波を照射することにより、前記三酸化モリブデンを加熱(以下、「電磁波加熱」ということがなる。)し、気化させる工程である。前記電磁波の周波数は300~30000MHzの範囲にある。
<三酸化モリブデン>
原料として本実施形態に係る気化工程に用いる三酸化モリブデンは、前記三酸化モリブデン微粒子の前駆体であり、例えば、市販のα結晶の三酸化モリブデンを用いることができる。
前記三酸化モリブデン微粒子の前駆体である三酸化モリブデンは、酸化モリブデン前駆体化合物を電磁波加熱して形成された三酸化モリブデンを用いてもよい。すなわち、本実施形態の三酸化モリブデン微粒子の製造方法は、上記気化工程の前に、前記酸化モリブデン前駆体化合物を電磁波加熱して三酸化モリブデンを形成する工程を更に含んでもよい。そして、上記気化工程において、形成した三酸化モリブデンを用いて、三酸化モリブデン微粒子を製造してもよい。
前記酸化モリブデン前駆体化合物としては、電磁波加熱することで三酸化モリブデン蒸気を形成するものであれば特に制限されない。また、前記酸化モリブデン前駆体化合物としては、例えば、三酸化モリブデン、金属モリブデン、二酸化モリブデン、硫化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸(HPMo1240)、ケイモリブデン酸(HSiMo1240)、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸ケイ素、モリブデン酸マグネシウム(MgMo3n+1(n=1~3))、モリブデン酸ナトリウム(NaMo3n+1(n=1~3))、モリブデン酸チタニウム、モリブデン酸鉄、モリブデン酸カリウム(KMo3n+1(n=1~3))、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸ホウ素、モリブデン酸リチウム(LiMo3n+1(n=1~3))、モリブデン酸コバルト、モリブデン酸ニッケル、モリブデン酸マンガン、モリブデン酸クロム、モリブデン酸セシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸イットリウム、モリブデン酸ジルコニウム、モリブデン酸銅等が挙げられる。これらの酸化モリブデン前駆体化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化モリブデン前駆体化合物の形態は、特に限定されず、例えば、三酸化モリブデンなどの粉体状であっても良く、モリブデン酸アンモニウム水溶液のような液体であっても良い。好ましくは、ハンドリング性かつエネルギー効率の良い粉体状である。
また、酸化モリブデン前駆体化合物として、モリブデン酸アンモニウムを用いる場合には、電磁波加熱により熱力学的に安定な三酸化モリブデンに変換されることから、気化する酸化モリブデン前駆体化合物は前記三酸化モリブデンとなる。
<その他の金属化合物>
本実施形態に係る気化工程において、前記三酸化モリブデン以外に、さらに他の金属酸化物等の金属化合物を含んでもよい。前記三酸化モリブデン以外に、さらに他の金属酸化物を含む場合、前記三酸化モリブデンと他の金属酸化物との合計100重量%に対して、0.1~50重量%の金属酸化物を配合することが好ましく、1~20重量%の金属酸化物を配合することがより好ましく、5~10重量%の金属酸化物を配合することがさらに好ましい。
前記三酸化モリブデン以外の金属化合物としては、特に制限されない。また、前記三酸化モリブデン以外の金属化合物としては、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物、亜鉛化合物、銅化合物、鉄化合物等が挙げられる。これらのうち、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物、鉄化合物を用いることが好ましく、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、鉄化合物を用いることが好ましい。
三酸化モリブデンと前記三酸化モリブデン以外の金属化合物とが中間体を生成する場合があるが、この場合でも電磁波加熱により中間体が分解して、三酸化モリブデンを熱力学的に安定な形態で気化させることができる。
前記三酸化モリブデン以外の金属化合物としては、これらのうち、アルミニウム化合物を用いることが、使用する反応装置の傷つき防止のために好ましい。また、三酸化モリブデン微粒子の純度を向上させるために前記三酸化モリブデン以外の金属化合物を用いないことでもよい。
アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、遷移酸化物アルミニウム(γ-酸化物アルミニウム、δ-酸化物アルミニウム、θ-酸化物アルミニウムなど)、α-酸化物アルミニウム、2種以上の結晶相を有する混合酸化物アルミニウム等が挙げられる。前記アルミニウム化合物は、例えば、水酸化アルミニウム、べーマイト、および酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ケイ素化合物としては、シリカ等のケイ素酸化物が挙げられる。
チタン化合物としては、酸化チタン等のチタン酸化物が挙げられる。
鉄化合物としては、酸化鉄等の鉄酸化物が挙げられる。
前記金属酸化物が水酸化アルミニウム、べーマイト、酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタン、及び酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種であるが好ましい。
<電磁波照射>
本実施形態に係る気化工程に用いる電磁波の周波数が300~30000MHzの範囲にある。前記電磁波の周波数が900~3000MHzの範囲にあることが好ましい。
本実施形態にかかる電磁波は、例えば、公知の電磁波加熱装置に用いる電磁波発生装置を用いることができる。前記電磁波発生装置は、例えば、共栄電気炉製作所製のMRK-3050、株式会社モトヤマ製マイクロ波加熱装置AMU-RUSHが挙げられる。
本実施形態に係る気化工程は、電磁波加熱装置を用いて、三酸化モリブデンに前記電磁波を照射することにより、前記三酸化モリブデンを加熱し、気化させる工程であってもよい。
前記電磁波加熱装置は、電磁波発生装置と加熱部とを含むことができる。前記加熱部は、例えば、図1に示す三酸化モリブデン粒子の製造装置10のチャンバー1と容器2とを含む。
本実施形態に係る気化工程において、照射する電磁波の強度は、照射対象の原料の形態、組成、重量、配置態様、設置場所などに合わせて適宜で選択することができる。照射する電磁波の強度は、例えば、照射対象の原料の温度、あるいは、気化量で調整することができる。
照射対象の原料の温度に従って電磁波の照射強度を調整する場合、例えば、電磁波を照射している中に、その原料の(表面もしくは内部)温度(電磁波加熱温度といることがある)を測定しながら照射強度の調整を行うことができる。電磁波加熱温度としては、使用する原料の三酸化モリブデン、金属化合物、および所望とする生成物の三酸化モリブデン微粒子等によっても異なる。電磁波加熱温度は、800℃以上であることが好ましく、850℃以上であることがより好ましく、900℃以上であることがさらに好ましい。また、1100℃以下であってもよく、1000℃以下であってもよい。
また。上記気化工程の原料である三酸化モリブデンは、前記酸化モリブデン前駆体化合物由来の場合、前記酸化モリブデン前駆体化合物が三酸化モリブデンを生成することができる電磁波加熱温度とすることが好ましい。また、他の金属化合物を含む場合、例えば、金属化合物としてアルミニウム化合物を用いる場合には、中間体として、モリブデン酸アルミニウムが形成されうることから、電磁波加熱温度はその中間体を分解できる温度が好ましい。その場合、電磁波加熱温度は、例えば、500℃~1500℃であることが好ましく、600℃~1550℃であることがより好ましく、700℃~1600℃であることがさらに好ましい。
電磁波照射(加熱)時間についても特に制限はなく、例えば、10分以上とすることができ、20分~10時間とすることができ、30分~5時間とすることができる。ここで該照射時間は処理する三酸化モリブデンの量に応じて、任意に選択することができる。
電磁波の照射(加熱)は、連続的に一定時間で照射してもよく、断続的にON/OFFして照射してもよい。その際の電磁波の照射強度は、一定でもよく、または、前記電磁波加熱温度を維持して電磁波の照射強度を変化してもよい。本実施形態の製造方法は、従来の電気炉などでの加熱方法に比べて、ON/OFFを容易に制御することができる点を特徴とする。
前記電磁波加熱温度の昇温速度は、使用する酸化モリブデン前駆体化合物、前記金属化合物、および所望とする三酸化モリブデン微粒子の特性等によっても異なる。前記電磁波加熱温度の昇温速度は、1~200℃/分であることが好ましく、2~100℃/分であることがより好ましく、5~50℃/分であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る気化工程において、原料付近の内部圧力(例えば、図1に示す例の場合、チャンバー1の気圧)は、特に制限されず、陽圧であっても減圧であってもよい。また、三酸化モリブデンを好適に気化工程の容器から粒子化工程の容器に排出する観点から、気化工程は減圧下で行われることが好ましい。具体的な減圧度としては、-5000~-10Paであることが好ましく、-2000~-20Paであることがより好ましく、-1000~-50Paであることがさらに好ましい。減圧度が-5000Pa以上であると、気化工程の容器(例えば、図1に示す例の場合、チャンバー1)の高気密性や機械的強度が過度に要求されず、製造コストが低減できることから好ましい。一方、減圧度が-10Pa以下であると、気化工程の容器の排出口での酸化モリブデン前駆体化合物の詰まりを防止できることから好ましい。
なお、気化工程の電磁波加熱中に気化工程に気体を送風してもよい。その場合、送風する気体の温度は、5~500℃であることが好ましく、10~100℃であることがより好ましい。
また、気体の送風速度は、気化工程の容器の有効容積が100Lに対して、1~500L/minであることが好ましく、10~200L/minであることがより好ましい。
気化した三酸化モリブデン蒸気の温度は、使用する三酸化モリブデンの種類によっても異なるが、200~2000℃であることが好ましく、400~1500℃であることがより好ましい。なお、気化した三酸化モリブデン蒸気の温度が2000℃以下であると、通常、冷却配管において、外気(0~100℃)の送風により容易に微粒子化することができる傾向がある。
気化工程の容器から排出される三酸化モリブデン蒸気の排出速度は、使用する前記三酸化モリブデン量、必要に応じて配合した前記金属化合物量、電磁波加熱の温度、気化工程の容器への気体の送風、排気口の口径により制御することができる。冷却配管の冷却能力によっても異なるが、気化工程の容器から冷却配管への三酸化モリブデン蒸気の排出速度は、0.001~100g/minであることが好ましく、0.1~50g/minであることがより好ましい。
また、気化工程の容器から排出される気体中に含まれる三酸化モリブデン蒸気の含有量は、0.01~1000mg/Lであることが好ましく、1~500mg/Lであることがより好ましい。
[粒子化工程]
本実施形態の製造方法における粒子化工程は、前記気化させた三酸化モリブデンを加熱されていない雰囲気中で冷却して、粒子化し、三酸化モリブデン微粒子を得る工程である。
三酸化モリブデン蒸気の冷却は、例えば、図1に示す粒子回収装置3の内部において、あるいは、粒子回収装置3とチャンバー1の間において、例えば、冷却配管(図示なし)を配置してもよい。前記冷却配管を低温にすることにより行われる。この際、冷却手段としては、上述のように冷却配管中への気体の送風による冷却、冷却配管が有する冷却機構による冷却、外部冷却装置による冷却等が挙げられる。
冷却温度(冷却配管の温度)は、特に制限されないが、-100~600℃であることが好ましく、-50~400℃であることがより好ましい。
三酸化モリブデン蒸気の冷却速度は、特に制限されないが、100~100000℃/sであることが好ましく、1000~50000℃/sであることがより好ましい。なお、三酸化モリブデン蒸気の冷却速度が早くなるほど、粒径の小さく、比表面積の大きい三酸化モリブデン微粒子が得られる傾向がある。
冷却手段が、冷却配管中への気体の送風による冷却である場合、送風する気体の温度は-100~300℃であることが好ましく、-50~100℃であることがより好ましい。
また、気体の送風速度は、0.1~20m/minであることが好ましく、1~10m/minであることがより好ましい。気体の送風速度が0.1m/min以上であると、高い冷却速度を実現することができ、冷却配管の詰まりを防止できることから好ましい。一方、気体の送風速度が20m/min以下であると、高価な第1の送風手段(排風機等)が不要となり、製造コストを低くすることができることから好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
(原料等)
三酸化モリブデン:太陽鉱工株式会社製、平均粒子径5μm
水酸化アルミニウム:日本軽金属株式会社製
(三酸化モリブデン微粒子の回収率の評価方法)
三酸化モリブデン微粒子の回収率は下記の式で求めた。
回収した三酸化モリブデン微粒子の量(g)/投入した三酸化モリブデン粉体の量(g)*100=回収率(%)
(三酸化モリブデン1kg換算消費電力量の評価方法)
加熱装置の積算電力計の出力値(kW・hr)/三酸化モリブデン重量(1kg)
(実施例1)
アルミナ製るつぼに三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社製、平均粒子径5μ)100gを投入し、電磁波照射口、ガス導入口、ガス排気口、および粒子回収フィルターを具備するステンレス製チャンバーに設置した。外気は送風機を用いて毎分10Lの流量で該チャンバーに供給した。しかる後にチャンバー上部の電磁波照射口から周波数2450MHzの電磁波を1000Wの強度で該三酸化モリブデンに、表面温度が850℃になるまで、照射した。850℃に到達後は、電磁波照射強度のON/OFF制御により、800℃を維持するように、電磁波照射を継続した、75分経過後、急激な温度低下が確認され、るつぼ内の三酸化モリブデンは揮発したと考えられた。ただちに電磁波照射を停止し、るつぼ内を確認したところ、原料の三酸化モリブデンがほとんど残留していないことを確認した。
その後、粒子回収フィルター上に補足された三酸化モリブデン微粒子を回収した。ここで、微粒子化した三酸化モリブデン微粒子の回収率は90%であった。また投入した電磁波の積算電力量は0.5kW・hrであり、原料の三酸化モリブデン1kg換算で、消費電力量は5kW・hr/kgであった。
(実施例2)
ボンベを用いてから毎分2Lの窒素を供給すること、および周波数が900MHzの電磁波を照射する以外は、実施例1と同様にして、三酸化モリブデン微粒子を得た。酸化モリブデン微粒子の製造に要した電磁波の電力量は、0.7kW・hrであり、原料の三酸化モリブデン1kg換算で、消費電力量は7kW・hr/kgであった。該三酸化モリブデン微粒子の回収率は88%であった。
(実施例3)
三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社製、平均粒子径5μm)50gと水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製)50gとの混合物を用いること以外は実施例1と同様にして、三酸化モリブデン微粒子を得た。粒子回収フィルター上に補足された三酸化モリブデン微粒子を回収した。酸化モリブデン微粒子の製造に要した電磁波の積算消費電力量は0.6kW・hrであり、原料の三酸化モリブデン1kg換算で、消費電力量は12kW・hr/kgであった。該三酸化モリブデンの回収率は85%であった。
(比較例1)
上記特許文献1の実施例1に記載の製造方法を参考し、アルミナ製るつぼに三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社製、平均粒子径5μm)100gを用いて、電気式加熱(SiCヒーター(1000W))で酸化モリブデン微粒子の製造を実施した。粒子回収フィルター上に補足された三酸化モリブデン微粒子を回収したところ、回収率は70%であった。また加熱に使用した積算電力量は2.1kW・hrで、三酸化モリブデン1kg換算で、21kW・hr/kgの加熱電力を必要とした。1kg酸化モリブデン微粒子の製造には、電磁波照射より消費エネルギーが高いことを確認した。
(考察)
実施例1および2の結果から、三酸化モリブデン(粉末)はマイクロ波などの電磁波(実施例1:2450MHz、実施例2:周波数900MHz)をよく吸収し、速やかに加熱、昇温されて気化すること、および該電磁波によって雰囲気は加熱されないため、電磁波エネルギーの投入を遮断することにより、直ちに気化が抑制されるため、該三酸化モリブデンの気化量が制御できる。その結果として高い回収率で微細な粒子径を有する三酸化モリブデン微粒子を製造することができた。
すなわち、三酸化モリブデンの周囲の雰囲気(空気、または窒素等の不活性気体)は電磁波を吸収しないため、低温である一方、三酸化モリブデンのみが加熱され、昇華による気化に至る。気化した三酸化モリブデンは直ちに雰囲気で冷却されるか、もしくは外部から供給した雰囲気気体(空気、不活性気体)と混合されることで冷却され、粒子化した。
例えば、回収率および1kg換算の消費電力量について、従来の電気炉による焼成方法を用いた比較例1と対比する場合、いずれも有利な結果が得られた。
実施例3において、原料の三酸化モリブデンに水酸化アルミニウム、あるいはべーマイトを配合した。この場合は三酸化モリブデン微粒子および酸化物(アルミナ)を両方得ることができた。これにより、三酸化モリブデンの溶融液化を抑制し、腐食性を低減できると考えられる。
1 チャンバー
2 容器
3 粒子回収装置
6 吸気口
8 排気口
10 製造装置(三酸化モリブデン粒子の製造装置)

Claims (8)

  1. 三酸化モリブデンに電磁波を照射することにより、前記三酸化モリブデンを加熱し、気化させる気化工程と、
    前記気化させた三酸化モリブデンを加熱されていない雰囲気中で冷却して、粒子化し、三酸化モリブデン微粒子を得る粒子化工程と、含み、
    前記電磁波の周波数が300~30000MHzの範囲にあることを特徴とする、三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
  2. 前記電磁波の周波数が900~3000MHzの範囲にある、請求項1に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
  3. 前記三酸化モリブデンに0.1~50重量%の金属酸化物を配合する、請求項1又は2に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
  4. 前記金属酸化物が水酸化アルミニウム、べーマイト、酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタン、及び酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
  5. 前記三酸化モリブデン微粒子の平均粒子径が10nm~100μmである、請求項1又は2に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
  6. 前記三酸化モリブデン微粒子のBET比表面積が0.01m/g~500m/gである、請求項1又は2に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
  7. 前記三酸化モリブデン微粒子がα結晶構造を含む、請求項1又は2に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
  8. 前記三酸化モリブデン微粒子がさらにβ結晶構造を含む、請求項1又は2に記載の三酸化モリブデン微粒子の製造方法。
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