JP7846439B2 - 鋼板及び液化co2用容器 - Google Patents
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Description
本願は、2024年01月15日に、日本に出願された特願2024-004182号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
[1]本発明の一実施形態に係る鋼板は、液化CO2輸送タンク用の鋼板であって、化学成分が、質量%で、C :0.070~0.110%、Si:0.10~0.15%、Mn:0.70~1.20%、Ni:1.00~2.50%、Cr:0.20~0.80%、Mo:0.20~0.80%、V :0.005~0.070%、Al:0.030~0.100%、B :0.0005~0.0030%、N :0.0015~0.0050%、P :0.006%以下、S :0.0030%以下、Cu:0~1.00%、Nb:0~0.030%、Ti:0~0.010%、Ca:0~0.0030%、Mg:0~0.0030%、REM:0~0.0030%、O :0.0040%以下、残部:Fe及び不純物であり、下記(1)式によって定義されるα値が1.00~1.50質量%であり、下記(2)式によって定義されるβ値が10.00~15.00であり、下記(3)式によって定義されるγ値が0.70~1.50質量%であり、下記(4)式によって定義されるCeqが0.550~0.620質量%であり、降伏強度が670~870MPaであり、引張強さが780~940MPaであり、板厚をtとしたとき、前記tが25~60mmであり、板厚方向の断面のt/4位置において、マルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織が合計で85.0面積%以上であり、t/4位置での0.5mm×0.5mm、0.05mmピッチの硬度分布測定において、121点の測定位置における硬度の平均値が265Hv~290Hv、標準偏差が20以下であり、中心偏析部の最大硬度HVmaxが400HV以下であり、板厚中心部の偏析度が下記(5)式~(8)式を全て満たし、板厚方向の断面の、t/4位置及びt/2位置をそれぞれ中心位置とする一辺4mmの矩形の領域における円相当径が0.5μm以上かつTiを20質量%以上含む介在物粒子のうち、99%以上の個数割合の介在物粒子の円相当径が4.0μm以下であり、電子ビーム後方散乱回析パターン解析法を用いた結晶方位解析を行うことにより判別される、結晶方位差が15°以上の粒界で囲まれる領域を結晶粒と定義し、前記結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、結晶粒毎の面積で重みづけをした面積加重平均で算出した値を、平均結晶粒径と定義したとき、前記鋼板の板厚中心部における前記平均結晶粒径が15.0μm以下である。
α=[C]+6×[Si]+100×[P] …(1)
β=0.65×[C]1/2×(1+0.64×[Si])×(1+4.10×[Mn])×(1+0.27×[Cu])×(1+0.52×[Ni])×(1+2.33×[Cr])×(1+3.14×[Mo]) …(2)
γ=[Mn]+20×[Nb]+36×[Ti] …(3)
Ceq=[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo]+[V])/5 …(4)
[Si]max/[Si]≦1.9 …(5)
[P]max/[P]≦20.0 …(6)
[Cu]max/[Cu]≦2.5 …(7)
[Ni]max/[Ni]≦2.0 …(8)
ここで、(1)式~(8)式における[C]、[Si]、[P]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[Nb]、[Ti]及び[V]は、それぞれC、Si、P、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、Ti及びVの含有量(質量%)であって不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入する。
また、(5)式~(8)式における[Si]max、[P]max、[Cu]max及び[Ni]maxは、それぞれ、前記鋼板の板厚方向の断面のうち、t/2位置を中心に板厚方向に±5mm、圧延方向に10mmの一次領域から、各元素のEPMA線分析結果に基づき各元素の濃度が最大となる一辺が1mmの矩形の二次領域を選定し、更に、前記二次領域から、各元素のEPMA面分析結果に基づき各元素の濃度が最大となる一辺が20μmの矩形の三次領域を選定した場合の、前記三次領域内の各元素の平均濃度値である。また、前記三次領域を前記中心偏析部とする。
[2]上記[1]の鋼板は、下記(A)式~(E)式によって求められる[fB]が0.0003%以上であってもよい。
[fB]=[B]-0.77×[fN] …(A)
[fN]=[N]-0.29×[fTi]-0.52×[fAl] …(B)
[fTi]=[Ti]-2×[fO] …(C)
[fAl]=[Al]-1.125×[fO] …(D)
[fO]=[O]-0.4×[Ca]-0.66×[Mg]-0.11×[REM] …(E)
ここで、(A)式~(E)式における[B]、[N]、[Ti]、[Al]、[O]、[Ca]、[Mg]、[REM]はそれぞれ、B、N、Ti、Al、O、Ca、Mg、REMの含有量(質量%)であって、不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入し、また、[fN]、[fTi]、[fAl]、[fO]の計算値が0%未満の場合は0を代入する。
[3]上記[1]又は[2]に記載の鋼板は、保持温度が600~620℃の範囲であり、保持時間が2.0~2.8時間の範囲であり、且つ、降温速度が、425℃以上の温度域において55~100℃/hの範囲である応力除去焼鈍を前記鋼板に対し行った場合、前記応力除去焼鈍が行われた箇所の、降伏強度が670~870MPaであり、引張強さが780~940MPaであり、-45℃におけるシャルピー吸収エネルギーが40J以上であってもよい。
[4]本発明の別の態様に係る液化CO2用容器は、[1]~[3]のいずれかに記載の鋼板を含む。
本実施形態における「応力除去焼鈍」とは、特に断りが無い限り、JIS Z 3700:2009「溶接後熱処理方法」に規定された内容に準拠する応力除去焼鈍を意味する。
本実施形態における「溶接」とは、特に断りが無い限り、溶接入熱が1.1~4.5kJ/mmである溶接を意味する。これら条件は、本発明が属する技術分野における一般的な条件である。しかし、上述の条件とは異なる条件下で応力除去焼鈍又は溶接を行ったとしても、上述の条件下で行われた応力除去焼鈍又は溶接と同等の効果が得られる。従って、本実施形態に係る鋼板に、上述の条件とは異なる条件下で応力除去焼鈍又は溶接を行ってもよい。
本実施形態において、鋼板の、板厚をtとしたときの、表面から板厚方向に板厚の1/2の位置(t/2の位置)をt/2位置、表面から板厚方向に板厚の1/4の位置(t/4の位置)をt/4位置として説明する。
まず、本実施形態に係る鋼板の化学組成を構成する元素の含有量の範囲とその限定理由を述べる。以下、特に断りが無い限り、「%」とは質量%を意味する。
Cは、母材の強度を改善する元素である。本実施形態に係る鋼板が目的とする強度を達成するために、C含有量を0.070%以上とする。C含有量は、好ましくは0.080%以上である。一方、Cを多量に含有させた場合、溶接熱影響部の硬さが上昇すると同時にその靭性が低下するので、C含有量を0.110%以下とする。C含有量は、好ましくは0.100%以下、更に好ましくは0.100%未満とする。
Siは、一般的に脱酸元素として鋼に含有させる場合が多い。しかし本実施形態においては、Siは応力除去焼鈍後の鋼の靭性を低下させる元素である。そのため、Si含有量を0.15%以下とする。Si含有量は、好ましくは0.14%以下、0.13%以下又は0.12%以下とする。また、応力除去焼鈍後の溶接熱影響部の靭性の低下を抑制するためにも、Si含有量は低い方が好ましい。
一方、脱酸を目的としてSiを含有させるために、Si含有量を0.10%以上とする。
Mnは、脱酸のために有効な元素であるとともに、鋼の強度を改善する元素である。従って、Mn含有量を0.70%以上とする。Mn含有量は、好ましくは0.90%以上とする。
一方、Mnを過剰に含有させると、焼戻し脆化によって、応力除去焼鈍後の鋼の靭性を損なう虞がある。従って、Mn含有量を1.20%以下とする。Mn含有量は、好ましくは1.10%以下とする。
Niは、鋼の焼入れ性及び靭性の改善のために有効な元素である。従って、Ni含有量を1.00%以上とする。Ni含有量は、好ましくは1.20%以上とする。
一方、Niを過剰に含有させると、応力除去焼鈍後の鋼の靭性が低下する虞がある。また、応力除去焼鈍後の溶接熱影響部の靭性が悪化する虞がある。従って、Ni含有量を2.50%以下とする。Ni含有量は、好ましくは2.00%以下とする。
Crは、鋼の焼入れ性の改善、及び、焼戻し時の析出強化による鋼の強度の改善のために有効な元素である。従って、Cr含有量を0.20%以上とする。Cr含有量は、好ましくは0.40%以上とする。
一方、Crを過剰に含有させると、応力除去焼鈍後における母材及び溶接熱影響部の靭性が低下する虞がある。従って、Cr含有量を0.80%以下とする。Cr含有量は、好ましくは0.70%以下とする。
Moは、Crと同様に、焼入れ性の改善、及び焼戻し時の析出強化による鋼の強度の改善のために有効な元素である。従って、Mo含有量を0.20%以上とする。Mo含有量は、好ましくは0.30%以上、より好ましくは0.35%以上、更に好ましくは0.40%以上とする。
一方、Moを過剰に含有させると、応力除去焼鈍後において、Mo炭化物が粒界に析出して母材及び溶接熱影響部の靭性が低下する虞がある。特に溶接熱影響部に与える影響が大きい。従って、Mo含有量を0.80%以下とする。Mo含有量は、好ましくは0.60%以下とする。
Vは、Cr及びMoと同様に、焼入れ性の改善、及び焼戻し時の析出強化による鋼の強度の改善のために有効な元素である。従って、V含有量を0.005%以上とする。V含有量は、好ましくは0.010%以上とする。
一方、Vを過剰に含有させると、応力除去焼鈍後において、母材靭性及び溶接熱影響部の靭性が低下する虞がある。従って、V含有量を0.070%以下とする。V含有量は、好ましくは0.050%以下とする。
Alは、脱酸に有用な元素であり、且つ、窒化物を形成することにより焼入れの際に結晶粒径を細粒化させる元素である。本実施形態に係る鋼板においては、Al含有量は0.030%以上とする。Al含有量は、好ましくは0.040%以上とする。
一方、Alを過剰に含有させると、Alが粗大な窒化物を形成し、母材及び溶接熱影響部の靭性が低下する虞がある。従って、Al含有量を0.100%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.080%以下とする。
Bは、本実施形態においては、微量に含有させることにより、鋼の焼入れ性を改善する元素である。従って、B含有量を0.0005%以上とする。B含有量は0.0006%以上、0.0008%以上又は0.0010%以上としてもよい。
一方、B過剰に含有させると、Bが粗大な窒化物及び/又は炭化物を形成して母材が靭性を低下する場合がある。従って、B含有量を0.0030%以下とする。B含有量は0.0020%以下又は0.0010%以下としてもよい。
Nは、窒化物を形成して母材の結晶粒径を細粒化させ、靱性を向上させる元素である。従って、N含有量を0.0015%以上とする。N含有量は0.0030%以上又は0.0035%以上としてもよい。
一方、Nを過剰に含有させると、窒化物が粗大化し、溶接まま(As Weld)での溶接熱影響部の靭性が低下する。従って、N含有量を0.0050%以下とする。
(S:0.0030%以下)
P及びSは、鋼中に含まれる不純物元素であり、その含有量は少ないほど好ましい。このため、P含有量及びS含有量の下限は0%である。P含有量が0.006%超、又はS含有量が0.0030%超であると靱性への悪影響が著しくなるので、本実施形態においては、応力除去焼鈍後における溶接部の靭性の向上のために、P含有量を、0.006%以下とし、S含有量を0.0030%以下とする。P含有量は、好ましくは0.005%以下とする。また必要に応じて、S含有量を0.0020%以下としてもよい。
Cuは、本実施形態においては必須元素ではないので、Cu含有量の下限は0%である。しかしながら、Cuは鋼の強度を改善する効果を有するので、必要に応じて含有させることができる。Cuを含有させる場合、その効果を利用するためには、Cu含有量を0.10%以上とすることが好ましく、0.20%以上としてもよい。必要に応じて、Cu含有量を0.15%以上又は0.30%以上としてもよい。
一方、Cuを過剰に含有させると、鋼板表面での割れ発生、及びCuの析出によって、母材の靭性が低下する虞がある。従って、Cu含有量を1.00%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.80%以下とする。必要に応じて、Cu含有量の上限を0.70%以下、0.60%以下、0.50%以下又は0.40%以下としてもよい。
Nbは、本実施形態においては必須元素ではないので、Nb含有量の下限は0%である。しかしながら、Nbは焼入れの際に結晶粒を微細化させる元素であるので、必要に応じて含有させることができる。Nbを含有させる場合、その効果を利用するためには、Nbを0.001%以上含有させることが好ましい。
一方、Nbを過剰に含有させると、Nbが粗大な炭窒化物を形成して、母材靭性が低下する虞がある。従って、Nb含有量を0.030%以下とする。Nbが少ない方が溶接熱影響部の靭性が向上するので、Nb含有量を、0.020%以下、0.010%以下、0.005%以下としてもよい。
Tiは、本実施形態においては必須元素ではないので、Ti含有量の下限は0%である。しかしながら、Tiは、スラブ加熱などによって鋼が高温になった際に、結晶粒を細粒化させる場合があるので、必要に応じて含有させることができる。Tiを含有させる場合、その効果を利用するためには、Ti含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
一方、Tiを過剰に含有させると、Nbと同様に、Tiが粗大な炭窒化物を形成して、母材靭性が低下する虞がある。従って、Ti含有量を0.010%以下とする。必要に応じて、Ti含有量を、0.005%以下又は0.002%以下としてもよい。
(Mg:0~0.0030%)
(REM:0~0.0030%)
本実施形態に係る鋼板では、Ca、Mg、及びREMのうち1種以上を含有させてもよい。Ca、Mg、及びREMは必須元素ではないので、Ca、Mg、及びREM含有量の下限はいずれも0%である。
一方、Caを多量に含有させた場合、鋼の溶接性が損なわれる虞があるので、Ca含有量を0.0030%以下とする。必要に応じて、Ca含有量を、0.0015%以下、0.0010%以下、0.0005%以下又は0.0002%以下としてもよい。
一方、Mg及びREMを多量に含有させると、粗大な酸化物が形成され、鋼の靭性が低下する虞がある。従って、Mg含有量及びREM含有量をそれぞれ0.0030%以下とする。必要に応じて、Mg含有量及びREM含有量を、それぞれ、0.015%以下、0.010%以下、0.005%以下又は0.002%以下、0.0015%未満としてもよい。REMとはScやY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Tb、Luを含むレアアースメタルの総称である。他の添加元素に比べて、脱酸性が強いことが特徴であり、鋼中で安定な酸化物を形成する。
酸素(O)は、鋼中に含まれる不純物元素であり、鋼中では多くの場合、脱酸力の強いCa、Mg、REM、Al、Tiなどとともに数μm~数十μmのサイズの酸化物を形成する。粗大な酸化物が含まれる場合や、酸化物の個数密度が高い場合には、酸化物が脆性破壊の発生起点となりうる。そのため、O含有量は少ないほど好ましい。したがって、O含有量の下限は0%である。本実施形態においては、溶接部の靭性の向上のために、O含有量を、0.0040%以下とする。O含有量は、好ましくは0.0030%以下とする。
本実施形態に係る鋼板は、上記の成分のほか、残部がFeと不純物とからなる。ここで、不純物とは、鋼板を工業的に製造する際に、鉱石若しくはスクラップ等のような原料、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
C、Si、Mn、P、S、Nb、V、Ni、Cu、Cr、Mo、Ti、Al、Ca、B、Mg、REMなどの元素については、ICP発光分析装置などを使用した誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)が適用される。ppmオーダーなど含有量が微量のS、O、Nについては、CS分析装置、ON分析装置、などを使用した赤外線吸収法や熱伝導度法が適用できる。必要に応じて、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、原子吸光分析法(AAS)、など他の分析法を適用しても良い。
本実施形態に係る鋼板は、製造過程において化学組成はほとんど変化しないので、製鋼段階でタンディッシュ内の溶鋼からで採取したサンプルによって測定した化学組成が判明している場合には、その化学組成を本実施形態に係る鋼板の化学組成とみなしてもよい。
[fN]=[N]-0.29×[fTi]-0.52×[fAl] …(B)
[fTi]=[Ti]-2×[fO] …(C)
[fAl]=[Al]-1.125×[fO] …(D)
[fO]=[O]-0.4×[Ca]-0.66×[Mg]-0.11×[REM] …(E)
α値は、以下の(1)式によって示される。
ここで、(1)式における[C]、[Si]及び[P]は、鋼中のC、Si及びPの含有量(質量%)であって不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入する。
一方、α値は、1.00質量%以上である。この下限値(1.00質量%)は、適用分野の規格上の成分制約や製造上の元素制御の限界などによって定められ、上述したC、Si、及びPの含有量の下限値及び製造上の現実的な最小値を式(1)に代入することにより、算出された値である。α値の好ましい下限値は、C、Si、及びPの含有量の好ましい下限値から算出することができる。α値は、1.10質量%超でもよく、1.30質量%以上でもよい。
β値は、以下の(2)式によって算出される。
ここで、(2)式における[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]及び[Mo]は、鋼中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr及びMoの含有量(質量%)であって不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入する。
必要に応じて、β値を11.00以上としてもよい。また、β値を14.00以下としてもよい。
γ値は、以下の(3)式によって算出される。
ここで、(3)式における[Mn]、[Nb]、[Ti]は、鋼中のMn、Nb、Tiの含有量(質量%)であって不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入する。
一方で、一定の焼入れ性を確保し、強度靭性バランスに優位なミクロ組織を得るためにはMn、Nb及びTiは一定量含有させることが好ましく、γ値を0.70質量%以上とする。γ値は、0.75質量%以上でもよく、1.40質量%以下でもよい。
ここで、(4)式における[C]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]は、鋼中のC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量(質量%)であって不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入する。
化学組成、Ceq、fB、α値、β値、γ値はそれぞれ元素の含有量によって制御されるが、精錬工程で特定の元素を排出、添加するとその他の元素量も変化する可能性があるため、単一の要素だけを変化させることは容易ではない。また、溶鋼中及び鋼材中で複数の元素が化合物を形成する場合もあるため、他の成分との添加バランスを狙い範囲に含めないと、期待する効果が得られない場合がある。
次に、鋼板中におけるSi、P、Cu及びNiの偏析について説明する。
本実施形態に係る鋼板は、板厚中心部(t/2位置を含む板厚方向に±5mmの範囲)の偏析度が下記(5)式~(8)式を全て満たす必要がある。
[P]max/[P]≦20.0 …(6)
[Cu]max/[Cu]≦2.5 …(7)
[Ni]max/[Ni]≦2.0 …(8)
また、(5)式~(8)式における[Si]max、[P]max、[Cu]max及び[Ni]maxは、それぞれ、鋼板の板厚方向の断面のうち、t/2位置を中心に板厚方向に±5mm、圧延方向に10mmの一次領域から、各元素のEPMA線分析結果に基づき各元素の濃度が最大となる一辺が1mmの矩形の二次領域を選定し、更に、二次領域から、各元素のEPMA面分析結果に基づき各元素の濃度が最大となる一辺が20μmの矩形の三次領域を選定した場合の、三次領域内の各元素の平均濃度(含有量)値である。また、三次領域は、板幅方向の中心位置である1/2幅の位置、及び板幅方向端部から板幅の1/4の位置である1/4幅の位置における領域で測定し、どちらか高い方の値をその鋼板の代表値とする。
先ず図1に示すように、鋼板10の圧延方向と平行かつ板厚方向に平行な断面(TD面)において、板幅方向位置を1/2幅の位置及び1/4幅の位置とした上で、t/2位置を含む位置において金属組織観察用試料11を加工する。そして、図2に示すように、金属組織観察用試料11に現れるTD面において、t/2位置を中心にして板厚方向に50μmピッチで、EPMA測定により分析長さ10mmの線分析を板厚中心に±5mmの範囲12(一次領域)で行ってMnの質量%を測定する。そして、各線分析Mn濃度平均を板厚方向に±0.5mmで平均したMn濃度平均値が最も高い板厚位置範囲(領域)13を特定する。その板厚位置範囲(領域)13のうち、圧延方向に±0.5mm範囲でMn濃度平均値が高い範囲を求め、次のように1mm×1mmの視野領域14(二次領域)を特定する。
即ち、金属組織観察用試料11に現れるTD面において、Mn濃度平均値が高い領域13の板厚方向中心を縦方向中心位置とし、領域13のうち圧延方向に±0.5mm範囲でのMn濃度平均値が高い領域の圧延方向中心を横方向の中心する1mm×1mmの正方形の視野領域14を二次領域と特定する。そして、この視野領域14において縦横それぞれの方向(圧延方向と板厚方向)にそれぞれ2μmピッチでEPMA測定による面分析を行い、Si、P、Cu、Niの各質量%を測定する。
次に、図3に示すように、1mm×1mmの正方形の視野領域14(二次領域)において、20×20μmの正方形部分15を縦横方向(圧延方向と板厚方向)に走査していき、それぞれの位置において正方形部分15の領域内に含まれる測定点のSi、P、Cu、Niのそれぞれの含有量(質量%)から当該領域の各含有量の平均値を定める。そして、その平均値が最大となる正方形部分15を三次領域と特定し、この三次領域のSi、P、Cu、Niの含有量の平均値を、それぞれの最大値([Si]max、[P]max、[Cu]max、[Ni]max)とする。第三領域を中心偏析部とする。
それぞれの最大値([Si]max、[P]max、[Cu]max、[Ni]max)を、各元素の鋼板における含有量([Si]、[P]、[Cu]、[Ni])で割った値([Si]max/[Si]、[P]max/[P]、[Cu]max/[Cu]、[Ni]max/[Ni])を板厚中心部における各元素の偏析度とする。
EPMAでの解析の際の測定条件は、LaB6の電子銃のEPMA装置を用いて、加速電圧を15kV、照射電流を100nAとし、ビーム径は測定ピッチと同じ値とし、測定時間は50msで実施する。50μmピッチの線分析及び面分析では、測定時間を20msとした短時間測定でも差し支えない。
本実施形態に係る鋼板は、板厚方向の断面のt/4位置及びt/2位置をそれぞれ中心位置とする一辺4mmの矩形の領域において、円相当径が0.5μm以上かつTiを20質量%以上含む介在物粒子を特定した場合に、その介在物粒子のうち、99%以上の個数割合の介在物粒子の円相当径が4.0μm以下である必要がある。言い換えると、特定した介在物粒子の円相当径についての粒度分布において、累積分布関数99%に対応する円相当径が4.0μm以下である必要がある。個数割合で99%以上の介在物粒子の円相当径が4.0μmを超えると、応力除去焼鈍後の靭性の低下が顕著になる。個数割合で99%以上の介在物粒子の円相当径は、3.0μm以下でもよく、2.5μm以下でもよい。
個数割合で99%以上の介在物粒子の円相当径は、鏡面仕上げした鋼板の観察面に対して、板厚方向の断面の板厚t/4位置及びt/2位置をそれぞれ中心位置とする一辺4mmの矩形の領域を無作為に選出し、当該領域に対してEDS分析装置などを備えたSEMを用いて、加速電圧を3~30kVとして観察を行う。領域内で視野を走査させ、観察される母相と異なるコントラストの介在物粒子を抽出し、画像解析により面積を求めるとともに、粒子中央付近のEDS点分析を実施する。円相当径は、介在物粒子の面積をAとすると、√(4A/π)で求められる。各介在物粒子のうち、円相当径が0.5μm以上かつTiを20質量%以上含む介在物粒子を特定し、それら介在物粒子の円相当径についての粒度分布において、累積分布関数99%に対応する円相当径円を求める。
(引張強さ:780~940MPa)
本実施形態では、鋼板の降伏強度を670~870MPaとし、鋼板の引張強さを780~940MPaとする。液化CO2用の輸送タンクのような大型溶接構造物の重量を軽減するためには、板厚が薄くても構造物の強度が確保できる鋼板が必要とされる。通常、このような用途で用いられる鋼板として選択されるものは、上述した降伏強度及び引張強さを有する鋼板であるので、本実施形態も上述した降伏強度及び引張強さを有するように製造される。必要に応じて、降伏強度を690MPa以上としてもよく、830MPa以下としてもよい。引張強さを800MPa以上としてもよく、900MPa以下としてもよい。
本実施形態に係る鋼板は、t/4位置での0.5mm×0.5mm、0.05mmピッチの硬度分布測定において、121点の測定位置における硬度の平均値が265Hv~290Hv、標準偏差が20以下である必要がある。
硬さの分布が不均一となると、母材の靭性が劣化するおそれがあり、硬度の平均値が265Hv未満かつ標準偏差が20を超えると母材靭性が確保できない。
一方で、平均値が290Hvを超えると、強度が高くなりすぎることで、靭性が低下するおそれがある。
本実施形態に係る鋼板の組織は、主として、強度靭性バランスに優位なマルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織の混合組織が好ましい。硬度の標準偏差、及び硬度の平均値が上記の範囲にある場合、マルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織が主として含まれる組織となっていると考えられる。上部ベイナイトが含まれている場合、硬度の平均値が265Hv未満又は標準偏差が20を超えることが懸念される。上部ベイナイトは、局所的なγ粒径やミクロ偏析のバラツキにより、部分的に焼入れ性が低下することで形成される場合がある。
母材靭性は、硬さが硬い程、応力除去焼鈍後の靭性が低下する。応力除去焼鈍後の靭性を維持するためには、偏析度[M]max/[M]の測定位置における最高硬さを400HV以下とする必要がある。すなわち、上記の三次領域(中心偏析部)の領域内において、光学顕微鏡観察を無作為に例えば5視野撮影し、各視野中央の硬度を荷重100gのビッカース試験で測定し、最大硬度を中心偏析部の最大硬度HVmaxとする。Si、P、Cu、Niで三次領域が異なる場合には、Niの三次領域(偏析度[Ni]max/[Ni]の測定位置)において、最高硬さを400HV以下とする。
板厚が25mm未満の鋼板を溶接する場合では、一般的に応力除去焼鈍が不要である。しかしながら、本実施形態に係る鋼板は、応力除去焼鈍が必要な鋼板を対象とするので、板厚は25mm以上とする。
一方、板厚が60mmを超える鋼板は、輸送用タンクの重量増となり好ましくない。したがって、本実施形態に係る鋼板の板厚は60mm以下とする。
本実施形態に係る鋼板は、板厚方向の断面のt/4位置における組織が、マルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織の混合組織であることが好ましい。マルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織は合計で85.0面積%以上であるとよい。この場合、上記の硬さの標準偏差、平均硬さを満足しやすい。
各金属組織の面積率の測定は、鋼板のL断面、即ち鋼板の圧延方向RDに平行で、板表面に対して垂直な面で測定される。観察視野は、観察視野の面積は40000μm2以上とする。例えば、鋼板の表面に沿った寸法が250μmであり、且つ鋼板の厚さ方向に沿った寸法が200μmである、面積50000μm2の長方形形状である。
金属組織は、ナイタールエッチングによって現出させる。光学顕微鏡による組織観察と以下の要領による組織判定によって、各観察領域における金属組織の面積率が得られる。
上部ベイナイトは、白いコントラストで観察されるフェライト地の粒内に、明瞭な黒いコントラストで点状あるいは粒状で観察されるセメンタイト及びオーステナイト・マルテンサイト混成物の一種又は二種以上が観察される、塊状又は針状や不定形(主に湾曲した粒界を有し塊状)の組織である。上部ベイナイト中に観察される上記セメンタイト及びオーステナイト・マルテンサイト混成物は、フェライトラスに沿って列状に生成する場合もあるが、ランダムに並んでいるように観察される場合もある。上部ベイナイトのラス組織は、ラス幅が1.0μm以上で、複数のラス状組織が平行に並んだ形態であるが、ラスの間隔や方向があまり整っていない形態のものもある。旧オーステナイト粒界は、コントラストが不鮮明である場合や、凹凸のある鋸刃上の形態で判別が困難な場合がある。例えば図5の左側の組織写真は、上部ベイナイト組織の組織写真である。
マルテンサイト組織及び下部ベイナイト混合組織は、白いコントラストで観察される母相の粒内に、明瞭な黒いコントラストの細かいラスが観察される組織である。本実施形態においては、ラス幅が1.0~3.0μmで、ラス内及びラス境界に黒いコントラストで観察されるセメンタイトが多数観察される組織である。ただし、焼戻しマルテンサイト中に観察されるセメンタイトは微細で析出密度も高いため、光学顕微鏡では無数の白い粒状のコントラストや微細なものが集まった雲状のコントラストの濃淡として観察される場合もある。旧オーステナイト粒界は、線状の黒いコントラストが鮮明に観察できるが、粒内のラスと見分けがつかず、その判別が困難な場合がある。
例えば図5の右側の組織写真は、マルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織の組織写真である。
本実施形態では、所定の靱性を確保するため、鋼板の板厚中心部における平均結晶粒径を15.0μm以下とする。応力除去焼鈍の前後の母材靭性を向上させるために、必要に応じて、平均結晶粒径の上限を14.5μm以下、14.0μm以下としてもよい。鋼板の板厚中心部における平均結晶粒径は小さい方が好ましいので、その下限値を規定する必要はない。通常、平均結晶粒径は、最も小さい場合約10.0μm程度となる。
L断面が観察できるように、鋼板から長手方向に10~20×板厚方向に10~30mmのサンプルを切り出す。このサンプルを、コロイダルシリカによって研磨する。対象となる断面の500×500μmの範囲を、1.0μmのステップで、EBSD装置(TSL社製、又はAmetek-EDAX社製)を用いて、電子ビーム後方散乱回析パターン解析法(Electron BackScatter Diffraction method:EBSD法)を用いた結晶方位測定を行う。その際、加速電圧は10~30kVとする。
得られた結晶方位を結晶方位解析ソフトウエア(TSL OIM Analysis7 x64)を用いて解析し、結晶方位差が15°以上の粒界で囲まれる領域を結晶粒と定義し、結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、結晶粒毎の面積で重みづけをした面積加重平均で算出した値を、平均結晶粒径とする。
結晶方位解析ソフトウエアでは、観察面上に作成された6角形のピクセルごとに結晶の方位データが記録されている、したがってこれらのピクセルのそれぞれには隣接するピクセルがあり、隣接するピクセルとの間の境界(6角形の1辺)にはそれぞれ結晶方位差(degree)が定義される。
隣接ピクセル間の結晶方位差が15°以上(以下15°境界)の場合、そのピクセル境界は結晶粒界に相当している可能性があるものとしてマップ上に粒界候補として保持する。このような方位差の計算をすべてのピクセル境界に対して行い、隣接する粒界候補が連続している場合にそれを連結し、観察(データ採取)領域内で一つの閉曲線(折れ線)を形成する場合、その閉曲線で包囲された領域を一つの粒と定義する。
15°境界が閉曲線を形成せず、観察領域内で端部を持つ場合、それは結晶粒界とはみなさず(亜粒界として)無視する。また、15°境界が観察領域の辺と交差する場合は、結晶粒は観察領域の外側にも広がっていることを意味し、その領域はひとつの結晶粒の領域を反映していないので、半領域として無視する。このようにして、観察領域内で15°境界で完全に閉じた領域だけを結晶粒に相当するものとみなし、その数と1ピクセルの(ステップサイズを1辺とする6角形の)面積を掛け合わせたものを結晶粒の面積とみなす。最後に各閉領域の面積を同じ面積を持つ円の直径を求め、一つの結晶粒の径と定義する。
15°境界が観察領域内で閉曲線を形成する場合でも、その中のピクセル数が1個以下の場合はノイズとみなし、粒径の算定には用いない。
本実施形態に係る鋼板は、破壊を未然に防止することを目的として、輸送用タンクに組み立てられた後に溶接部に対して応力除去焼鈍を行うが、この際に、溶接部のみならず母材も加熱される。母材が加熱されると、母材の靭性が低下する傾向になる。原因は明確ではないが、P(リン)が粒界に拡散し、また、組織中に介在物の成長又は凝集が起きることによって、脆性が低下して靭性が低下するものと推測される。よって、本実施形態に係る鋼板は、好ましくは、応力除去焼鈍後の-45℃におけるシャルピー吸収エネルギーが40J以上とする。これにより、安全性をより高めることができる。
本実施形態に係る鋼板は、上記の特徴によって、優れた靱性が得られるが、本実施形態に係る鋼板よりなる輸送用タンクの安全性の確保の観点で、-35℃におけるCTOD試験のδ値が0.05mm以上であることが好ましい。
また、本実施形態に係る鋼板は、-70℃におけるシャルピー吸収エネルギーが50J以上であることが好ましい。これにより、本実施形態に係る鋼板を含む、又は本実施形態に係る鋼板からなる輸送用タンクの安全性の確保が可能となる。
-70℃におけるシャルピー吸収エネルギーは、t/4位置で測定した数値である。また、本実施形態において、シャルピー吸収エネルギーが50J以上を満たすとは、t/4位置の異なる3つの測定位置で測定した場合に、最小値が50J以上であることを意味する。
本実施形態に係る鋼板は、応力除去焼鈍後の降伏強度が670~870MPa、引張強さが780~940MPaであることが好ましい。この場合、応力除去焼鈍がなされた液化CO2用の輸送用タンクにおいて、十分な強度を確保できる。
本実施形態に係る液化CO2用容器は、上述した本実施形態に係る鋼板を加工し、溶接することで形成される。そのため、本実施形態に係る液化CO2用容器本実施形態に係る鋼板を含む。実質的に、本実施形態に係る鋼板(母材部)と、本実施形態に係る鋼板と溶接材料が溶融して再凝固して形成された溶接部と、からなっていてもよい。
次に、本実施形態に係る鋼板及び液化CO2用容器の製造方法について、以下に説明する。本実施形態に係る鋼板は、製造方法によらず、上記の特徴を有していれば、その効果を奏するが、以下に示す製造方法によれば、安定して製造できる。
上述の成分を有する鋼を鋼板として製造するためには、転炉法又は電炉法によって製造され、二次精錬設備で精錬された鋼を、連続鋳造あるいは造塊分塊によりスラブとする。その後、スラブを、スラブ加熱炉により950~1250℃程度に加熱した後、熱間圧延により所定の板厚まで圧延して、鋼板とすることが好ましい。更に、この鋼板に焼入れ及び焼戻しを行って、所定の特性を有する鋼板(最終鋼板)を得る。
各工程の好ましい条件について説明する。
(二次精錬工程)
二次精錬工程は、公知の方法で行うことができる。本実施形態に係る鋼板は、P含有量を0.006%以下に低減する必要がある。通常の脱リン方法ではP含有量を0.006%以下まで低減させられない場合があるが、その場合、脱リン処理の時間を長くするなどの対応を行えばよい。
鋳造工程では、スラブを得る。その際、個数割合で99%以上の介在物粒子の円相当径を4.0μm以下に制御するために、タンディッシュでの介在物の浮上分離と、鋳型での凝固初期における溶鋼流の電磁ブレーキによる介在物の浮上分離と、鋳造時における軽圧下とによる中心偏析の軽減とを行う。軽圧下は、例えば、3%以下、2%以下又は1%以下の圧下率でよい。軽圧下は、凝固末期に行うことが好ましい。
次に熱間圧延工程について説明する。
圧延前の加熱温度が1250℃を超えると、平均結晶粒径の粗大化を招く。従って、圧延前の加熱温度を1250℃以下とすることが好ましい。また、圧延前の加熱温度が950℃を下回ると、圧延時に低温圧延となり1パスあたりの圧下量が小さくなり、板厚中心部付近で十分な圧下効果が得られなくなる。従って、圧延前の加熱温度を950℃以上とすることが好ましい。
熱間圧延後は、直接焼入れ処理、熱間圧延後に鋼板を一旦冷却した後に再加熱する再加熱焼入れ処理、のいずれか一方又は両方を行う。両方を行う場合は、直接焼入れ処理後に再加熱焼入れ処理を行う。直接焼入れ処理とは、熱間圧延後に直ちに水冷する焼入れ処理である。再加熱焼入れ処理とは、熱間圧延後に鋼板を一旦冷却し、その後に再加熱する焼入れ処理である。
焼入れ処理時の加熱温度(つまり焼入れ温度)は、925℃以下とすることが望ましく、920℃以下でもよく、915℃以下でもよく、910℃以下でもよい。何故なら、厚手の鋼板は、圧延後に金属組織が十分に微細化されない場合があるからである。十分に金属組織が微細化されていない鋼板に対する焼入れ温度が925℃超であると、加熱に伴い形成する逆変態γ組織が粗大となり、その後の冷却によってγ/α変態した後の最終組織の平均結晶粒径も粗大となるためである。一方で、焼入れ温度の下限は、Ac3点をわずかに上回る温度(例えば、Ac3点以上且つAc3点+20℃以下の温度範囲内)では、逆変態γ粒径のばらつきやBを含む炭化物の固溶が十分でなく、焼入れ性が不足する場合があるので好ましくない。したがって、焼入れ温度の下限は880℃以上が好ましく、より好ましくは890℃以上である。
Ar3(℃)=910-310×C-80×Mn-20×Cu-15×Cr-55×Ni-80×Mo+0.35×(t-8) …(A)
上記(A)式において、C、Mn、Cu、Cr、Ni、Moは鋼中の各元素の含有量(質量%)であり、tは熱間圧延後の鋼板の板厚(mm)である。また、鋼片温度は、鋼片の表面温度を意味する。
本実施形態に係る鋼板の製造方法では、焼入れ工程後の鋼板に、更に焼戻しを行う。焼戻しの加熱温度(つまり焼戻し温度)は、660℃以下とする。焼戻し温度が660℃超であると、焼戻し効果が過剰となり、降伏強度及び引張強さを確保することが困難となる。
一方、焼戻し温度が低過ぎると、焼戻しが不十分になり、降伏強度及び引張強さを確保することが困難となる。そのため、焼戻し温度は、500℃以上とする。焼戻し温度は、好ましくは600℃以上とする。
溶接に際しては、溶接入熱が1.1~4.5kJ/mmとし、一般的な条件で行えばよい。
応力除去焼鈍は、JIS Z 3700:2009「溶接後熱処理方法」に規定された内容に準拠する応力除去焼鈍を行えばよい。
その後、スラブを、加熱炉により表4A、表4Bに示す加熱温度に加熱した後、熱間圧延により所定の板厚まで圧延して、鋼板とした。
更に、この鋼板に焼入れ、焼戻しを行って、所定の特性を有する鋼板(最終鋼板)を得た。
表4A、表4Bに、鋳造時における軽圧下の有無、圧延前の加熱温度、熱間圧延の1150~900℃の累積圧下率、圧延後の板厚、直接焼入れ処理の条件(冷却開始温度、冷却終了温度、平均冷却速度)、再加熱焼入れ処理の条件(焼入れ温度)及び焼戻しの条件(焼戻し温度)を示す。
再加熱焼入れ及び焼戻し後の冷却は水冷により行い、300℃までの平均冷却速度を0.1℃/秒以上とした。
11 金属組織観察用試料
Claims (5)
- 液化CO2輸送タンク用の鋼板であって、
化学成分が、質量%で、
C :0.070~0.110%、
Si:0.10~0.15%、
Mn:0.70~1.20%、
Ni:1.00~2.50%、
Cr:0.20~0.80%、
Mo:0.20~0.80%、
V :0.005~0.070%、
Al:0.030~0.100%、
B :0.0005~0.0030%、
N :0.0015~0.0050%、
P :0.006%以下、
S :0.0030%以下、
Cu:0~1.00%、
Nb:0~0.030%、
Ti:0~0.010%、
Ca:0~0.0030%、
Mg:0~0.0030%、
REM:0~0.0030%、
O :0.0040%以下、
残部:Fe及び不純物であり、
下記(1)式によって定義されるα値が1.00~1.50質量%であり、
下記(2)式によって定義されるβ値が10.00~15.00であり、
下記(3)式によって定義されるγ値が0.70~1.50質量%であり、
下記(4)式によって定義されるCeqが0.550~0.620質量%であり、
降伏強度が670~870MPaであり、
引張強さが780~940MPaであり、
板厚をtとしたとき、前記tが25~60mmであり、
板厚方向の断面のt/4位置において、マルテンサイト組織及び下部ベイナイト組織が合計で85.0面積%以上であり、
t/4位置での0.5mm×0.5mm、0.05mmピッチの硬度分布測定において、121点の測定位置における硬度の平均値が265Hv~290Hv、標準偏差が20以下であり、
中心偏析部の最大硬度HVmaxが400HV以下であり、
板厚中心部の偏析度が下記(5)式~(8)式を全て満たし、
板厚方向の断面の、t/4位置及びt/2位置をそれぞれ中心位置とする一辺4mmの矩形の領域における円相当径が0.5μm以上かつTiを20質量%以上含む介在物粒子のうち、99%以上の個数割合の介在物粒子の円相当径が4.0μm以下であり、
電子ビーム後方散乱回析パターン解析法を用いた結晶方位解析を行うことにより判別される、結晶方位差が15°以上の粒界で囲まれる領域を結晶粒と定義し、前記結晶粒の円相当粒径を結晶粒径と定義し、結晶粒毎の面積で重みづけをした面積加重平均で算出した値を、平均結晶粒径と定義したとき、前記鋼板の板厚中心部における前記平均結晶粒径が15.0μm以下である、
鋼板。
α=[C]+6×[Si]+100×[P] …(1)
β=0.65×[C]1/2×(1+0.64×[Si])×(1+4.10×[Mn])×(1+0.27×[Cu])×(1+0.52×[Ni])×(1+2.33×[Cr])×(1+3.14×[Mo]) …(2)
γ=[Mn]+20×[Nb]+36×[Ti] …(3)
Ceq=[C]+[Mn]/6+([Cu]+[Ni])/15+([Cr]+[Mo]+[V])/5 …(4)
[Si]max/[Si]≦1.9 …(5)
[P]max/[P]≦20.0 …(6)
[Cu]max/[Cu]≦2.5 …(7)
[Ni]max/[Ni]≦2.0 …(8)
ここで、(1)式~(8)式における[C]、[Si]、[P]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[Nb]、[Ti]及び[V]は、それぞれC、Si、P、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、Ti及びVの含有量(質量%)であって不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入する。
また、(5)式~(8)式における[Si]max、[P]max、[Cu]max及び[Ni]maxは、それぞれ、前記鋼板の板厚方向の断面のうち、t/2位置を中心に板厚方向に±5mm、圧延方向に10mmの一次領域から、各元素のEPMA線分析結果に基づき各元素の濃度が最大となる一辺が1mmの矩形の二次領域を選定し、更に、前記二次領域から、各元素のEPMA面分析結果に基づき各元素の濃度が最大となる一辺が20μmの矩形の三次領域を選定した場合の、前記三次領域内の各元素の平均濃度値である。また、前記三次領域を前記中心偏析部とする。 - 下記(A)式~(E)式によって求められる[fB]が0.0003%以上である、
請求項1に記載の鋼板。
[fB]=[B]-0.77×[fN] …(A)
[fN]=[N]-0.29×[fTi]-0.52×[fAl] …(B)
[fTi]=[Ti]-2×[fO] …(C)
[fAl]=[Al]-1.125×[fO] …(D)
[fO]=[O]-0.4×[Ca]-0.66×[Mg]-0.11×[REM] …(E)
ここで、(A)式~(E)式における[B]、[N]、[Ti]、[Al]、[O]、[Ca]、[Mg]、[REM]はそれぞれ、B、N、Ti、Al、O、Ca、Mg、REMの含有量(質量%)であって、不純物として混入する元素量も含め、含有しない元素は0を代入し、また、[fN]、[fTi]、[fAl]、[fO]の計算値が0%未満の場合は0を代入する。 - 保持温度が600~620℃の範囲であり、保持時間が2.0~2.8時間の範囲であり、且つ、降温速度が、425℃以上の温度域において55~100℃/hの範囲である応力除去焼鈍を前記鋼板に対し行った場合、前記応力除去焼鈍が行われた箇所の、降伏強度が670~870MPaであり、引張強さが780~940MPaであり、-45℃におけるシャルピー吸収エネルギーが40J以上である、
請求項1又は請求項2に記載の鋼板。 - 請求項1又は請求項2に記載の鋼板を含む液化CO2用容器。
- 請求項3に記載の鋼板を含む液化CO2用容器。
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