JP7843922B2 - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物の製造方法

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Description

本開示は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート(PC)樹脂は、機械、自動車、家電製品、OA機器等の様々な製品の筐体や部品に使用されている。また、PC樹脂に他の熱可塑性樹脂や添加剤等を配合し、機能性や難燃性を付与することで、高機能化されたPC樹脂組成物として多くの用途に使用されている。特に、PC樹脂と、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの共重合体であるABS樹脂に代表されるスチレン系樹脂と、のアロイであるPC/スチレン系樹脂組成物は、低コスト化やPC樹脂の成形性、耐衝撃性等が改善されることから、上記用途に広く使用されている。
PC/スチレン系樹脂組成物の代表であるPC/ABS樹脂組成物に使用されるABS樹脂は、コストの観点から、乳化重合により製造されたABS樹脂が使用される場合が多い。しかしながら、非特許文献1には、塊状重合により製造されたABS樹脂が、乳化重合により製造されたABS樹脂よりも湿熱特性に優れることが開示されている。このように、低コスト化のためには、PC/ABS樹脂組成物に使用されるABS樹脂は、乳化重合により製造されたABS樹脂を使用することが好ましいが、湿熱特性に劣るという不具合があった。
また、近年では環境への配慮から、樹脂のリサイクルへの取り組みが求められている。しかしながら、一般的に、使用済みの熱可塑性樹脂組成物は、長く使用するほど劣化し、特性低下を引き起こすという問題がある。
特許文献1(特開2002-60610号公報)には、PC樹脂に、熱安定性の改良のために、ホスファイト化合物やホスホナイト化合物等が酸化防止剤として配合されていること、これらの化合物はPC樹脂よりも熱や水分により加水分解し易く、加水分解により酸成分を生じること、該酸成分がPC樹脂の加水分解を促進し、PC樹脂の湿熱特性を悪化させる原因となっていること、が開示されている。また、特許文献1には、炭酸金属塩、珪酸金属塩、および特定の金属酸化物等から選択される化合物の表面に上記酸成分等の悪影響を与える成分を吸着または配位させ、該成分を失活させる方法も開示されている。
特開2002-60610号公報
成形加工 第30巻 第4号 p.155-157 2018
しかしながら、特許文献1に記載のPC樹脂の加水分解機構の解明は十分にはなされておらず、以前として、PC樹脂の湿熱特性の悪化には改善の余地がある。また、使用済みの樹脂を使用する場合、湿熱特性の悪化により、成形品の外観が悪化するおそれがある。
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、湿熱特性に優れ、外観不良の低減した熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂組成物に含まれるマグネシウムおよびカルシウムを、炭酸イオンと反応させることにより除去する結果、湿熱特性に優れ、外観不良の低減した熱可塑性樹脂組成物を得ることができることを見出した。
本開示は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
第1ポリカーボネート樹脂および第1ABS樹脂を含むポリカーボネート/ABSアロイと、炭酸塩と、を混合する工程を含み、
前記第1ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
前記炭酸塩の含有量が、前記ポリカーボネート/ABSアロイ100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
第1ポリカーボネート樹脂および第1ABS樹脂を含むポリカーボネート/ABSアロイと、第2ポリカーボネート樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、炭酸塩と、を混合する工程を含み、
前記第1ABS樹脂および前記第2ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
前記炭酸塩の含有量が、前記ポリカーボネート/ABSアロイと、前記第2ポリカーボネート樹脂および前記第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
第2ポリカーボネート樹脂と、第2ABS樹脂と、前記炭酸塩と、を混合する工程を含み、
前記第2ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
前記炭酸塩の含有量が、前記第2ポリカーボネート樹脂と前記第2ABS樹脂との合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
本開示によれば、湿熱特性に優れ、外観不良の低減した熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
図1は、ポリカーボネート/ABSアロイにおけるマグネシウムイオンおよびカルシウムイオンの捕捉メカニズムを説明する図である。
以下、本開示の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、第1PC樹脂および第1ABS樹脂を含むポリカーボネート/ABSアロイ(PC/ABSアロイ)と、炭酸塩と、を混合する工程を含む。第1ABS樹脂は、乳化重合により得られたものである。炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、200℃以上の分解温度を有する。炭酸塩の含有量は、PC/ABSアロイ100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である。なお、本実施の形態において、第1PC樹脂は単に「PC樹脂」と、第1ABS樹脂は単に「ABS樹脂」と、それぞれ称する。
《混合工程》
混合工程では、PC/ABSアロイおよび炭酸塩を混合する。この際、添加剤等のその他の成分を添加してもよい。
本工程では、PC/ABSアロイおよび炭酸塩は、例えば、フレーク状、ペレット状、粉末状または粒状等で用いられる。
混合方法は、特に限定されない。例えば、溶融混練、溶媒キャストブレンド、ラテックスブレンド、ポリマーコンプレックス等の物理的混合を行うことができる。混合は、好ましくは溶融混練である。
混合工程では、タンブラ、ヘンシェルミキサ(登録商標)、ロータリーミキサ、スーパーミキサ、リボンタンブラ、Vブレンダ等の混合装置を用いることができる。予め、これらの混合装置を用いて、材料を均一に混合することにより、混合物を調製する。さらに溶融混練を行い、最終的にペレットにすることが好ましい。
溶融混練およびペレット化には、単軸式、多軸式、タンデム式等の押出混練機を用いることができる。あるいは、バンバリーミキサ、ローラ、コニーダ、ブラストミル、プラベンダーブラウトグラフ等を用いてもよい。押出混練機等の運転は、回分式であってもよく、連続式であってもよい。
あるいは、溶融混練を行わずに、PC/ABSアロイおよび炭酸塩を混合することにより、混合物を調製する。混合物を成形機に供給し、成形機の加熱筒内で溶融混練してもよい。すなわち、モールドブレンドを行ってもよい。
なお、この実施の形態の製造方法で製造された熱可塑性樹脂組成物は、従来公知の成形方法により、成形品に加工できる。成形方法は、例えば、射出成形法等である。
《ポリカーボネート/ABSアロイ》
本実施の形態のPC/ABSアロイは、PC樹脂とABS樹脂との混合体(ポリマーアロイ)である。PC/ABSアロイは、相溶化剤を用いることによって、または、ブロック重合やグラフト重合させることで、製造されてもよく、または市販品を使用してもよい。
PC/ABSアロイは、使用済みの製品等から回収されたPC/ABSアロイ(以下、「使用済みPC/ABSアロイ」と称する。)であってもよく、未だ使用されていないPC/ABSアロイ(以下、「未使用PC/ABSアロイ」と称する。)であってもよい。
PC/ABSアロイは、使用済みPC/ABSアロイおよび未使用PC/ABSアロイの混合物であってもよい。使用済みPC/ABSアロイと未使用PC/ABSアロイとの混合割合は、特に制限はない。ただし、資源効率の観点から、使用済みPC/ABSアロイの含有率が高いことが好ましい。
(ポリカーボネート樹脂)
PC樹脂としては、特に制限はなく、様々なものが挙げられる。例えば、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法(界面重縮合法)または溶融法(エステル交換法)により製造される芳香族ポリカーボネートを使用することができる。すなわち、2価フェノールとホスゲンとの界面重縮合法、2価フェノールとジフェニルカーボネート等とのエステル交換法等により反応させて製造されたものを使用してもよい。また、PC樹脂は、市販品を使用してもよい。
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン等、または、これらのハロゲン置換体等が挙げられる。この他、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等も挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系が好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、ハロホルメート等であり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等である。
PC樹脂は、使用済みの製品等から回収されたPC樹脂(以下、「使用済みPC樹脂」と称する。)であってもよく、未だ使用されていないPC樹脂(以下、「未使用PC樹脂」と称する。)であってもよい。
PC樹脂は、使用済みPC樹脂および未使用PC樹脂の混合物であってもよい。使用済みPC樹脂と未使用PC樹脂との混合割合は、特に制限はない。ただし、資源効率の観点から、使用済みPC樹脂の含有率は、未使用PC樹脂の含有率よりも高いことが好ましい。
PC/ABSアロイに含まれるPC樹脂の含有率は、45質量%以上90質量%以下である。PC樹脂は、ABS樹脂よりも耐熱性および難燃性に優れることから、PC樹脂の含有量がABS樹脂よりも多いことが好ましい。ただし、PC/ABSアロイに含まれるPC樹脂の含有率が90質量%を超える場合、成形時の流動性が低下する、すなわち、成形性が低下するおそれがある。PC/ABSアロイに含まれるPC樹脂の含有率は、50質量%以上であってもよく、55質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。PC/ABSアロイに含まれるPC樹脂の含有率は、85質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、75質量%以下であってもよい。
《ABS樹脂》
ABS樹脂は、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの共重合体である。ABS樹脂の成形品は、表面の光沢および衝撃強度に優れる。そのため、ABS樹脂は、家電製品、OA機器等に多用されている。本実施の形態において、ABS樹脂のアクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの構成比率は、特に限定されない。
ABS樹脂は、使用済みの製品から回収されたABS樹脂(以下、「使用済みABS樹脂」と称する。)であってもよく、未だ使用されていないABS樹脂(以下、「未使用ABS樹脂」と称する。)であってもよい。
ABS樹脂は、使用済みABS樹脂および未使用ABS樹脂の混合物であってもよい。使用済みABS樹脂と未使用ABS樹脂との混合割合は、特に制限はない。ただし、資源効率の観点から、使用済みABS樹脂の含有率は、未使用ABS樹脂の含有率よりも高いことが好ましい。
PC/ABSアロイに含まれるABS樹脂の含有率は、5質量%以上50質量%以下である。PC/ABSアロイに含まれるABS樹脂の含有率が50質量%を超える場合、耐熱性および難燃性が低下するおそれがある。PC/ABSアロイに含まれるABS樹脂の含有率は、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。PC/ABSアロイに含まれるABS樹脂の含有率は、45質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよい。
本実施例におけるABS樹脂は、乳化重合により得られたものである。ABS樹脂は、公知の乳化重合による方法で製造してもよく、または市販の乳化重合品を使用してもよい。
乳化重合によるABS樹脂の製造方法は、一般的には以下の通りである。すなわち、乳化剤を用いて、ブタジエンを水溶性重合開始剤によって乳化重合を行い、重合体ラテックスを得る。得られた重合体ラテックスおよび乳化剤の存在下、アクリロニトリルおよびスチレンの重合を行い、ABS系重合体ラテックスを得る。得られたABS系重合体ラテックスに凝固剤を加えて重合体を分離し、分離された重合体を洗浄、乾燥することでABSが製造される。
乳化剤、水溶性重合開始剤および凝固剤は、従来公知のものが使用される。乳化剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、ロジン酸石鹸等が挙げられる。水溶性重合開始剤としては、ペルオキソ二硫酸カリウム、α-クミルヒドロペルオキシド等が挙げられる。凝固剤としては、無機酸、金属塩等が挙げられる。
ここで、洗浄による乳化剤の完全な除去は通常なされず、得られたABS樹脂に乳化剤が残存する。また、得られたABS樹脂を予め十分に洗浄する方法も考えられるが、水やメタノール等の有機溶媒で徹底した洗浄を行っても、ABS樹脂中に取り込まれた乳化剤は容易に除去することができない。このような乳化剤由来の残渣のうち、周期表第1族元素および周期表第2族元素は、空気中の水分と反応して水酸化物イオンを生成し、アルカリ環境となることで、PC樹脂の加水分解が促進され、湿熱特性を悪化させるものと考えられる。
ここで、本発明者らが使用済みPC/ABSアロイおよび未使用PC/ABSアロイを誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)により分析した結果、各PC/ABSアロイには周期表第1族元素および周期表第2族元素として、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)がそれぞれ0.01質量%含まれていることが確認された。そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、Naイオンを捕捉することは困難であるものの、MgイオンおよびCaイオンは、硫酸イオンや炭酸イオンと反応することで水中で沈殿を形成し、水分と反応しにくくなることから、硫酸イオンや炭酸イオンを樹脂に混合させることで、アルカリ環境になることを防止できることを見出した(図1参照)。なお、使用済みPC/ABSアロイおよび未使用PC/ABSアロイは市販のものを用いた。
また、常温での水への溶解度は、硫酸マグネシウムは2.1mol/L、硫酸カルシムムは0.018mol/Lであるのに対して、炭酸マグネシウムは0.0012mol/L、炭酸カルシウムは0.00015mol/Lである。このように、MgイオンおよびCaイオンでは、炭酸塩の水への溶解度は硫酸塩の水への溶解度よりも低いため、本実施の形態のおいては、後述する炭酸塩を混合させることで、アルカリ環境になることを防止する効果が格段に高いと考えられる。ただし、炭酸塩は加熱により二酸化炭素を放出して分解するため、分解温度の高い炭酸塩を混合させることが好ましい。
(添加剤)
PC/ABSアロイは、本実施の形態の目的を阻害しない範囲において、吸油性無機化合物、流動調整剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、金属不活性剤、染料、顔料、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、PC/ABSアロイに1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
吸油性無機化合物としては、特に限定されない。例えば、アルミナおよびベーマイト等の酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、カオリナイト、炭酸カルシウム等が挙げられる。
流動調整剤としては、特に限定されない。例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等の炭化水素;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸;ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸;ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等のエステル;等が挙げられる。
可塑剤としては、特に限定されない。例えば、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、ミネラルオイル等が挙げられる。
離型剤としては、特に限定されない。例えば、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸金属塩等が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されない。例えば、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスフォナイト等のリン酸系酸化防止剤、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル-3,3’-チオジプロピオネート等硫黄系酸化防止剤、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
難燃剤としては、特に限定されない。本実施の形態においては、従来公知の難燃剤を用いることができる。例えば、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス-3-クロロプロピルホスフェート等のリン系難燃剤、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモプロポキシル)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン、ビス(3,5-ジブロモ-4-ジブロモプロピルオキシフェニル)スルホン、エチレンビスペンタブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン等の臭素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物系難燃剤等が挙げられる。
難燃剤の難燃効果を高めるため、難燃助剤を併用してもよい。難燃助剤としては、特に限定されない。例えば、ポリテトラフルオロエチレンにアクリル変性を施した添加剤、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物等が挙げられる。
金属不活性剤としては、特に限定されない。例えば、2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド等が挙げられる。
PC/ABSアロイに含まれる各添加剤の含有率は、例えば、0質量%以上20質量%以下である。PC/ABSアロイに含まれる各添加剤の含有率は、2質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、17質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよく、13質量%以下であってもよい。
(使用済み樹脂)
PC樹脂、ABS樹脂およびPC/ABSアロイのうち少なくとも1種は使用済みである、すなわち、少なくとも1種は使用済みPC樹脂、使用済みABS樹脂または使用済みPC/ABSアロイであることが好ましい。また、PC樹脂、ABS樹脂およびPC/ABSアロイのうち少なくとも1種は使用済みを含む、すなわち、少なくとも1種は使用済みPC樹脂と未使用PC樹脂との混合物、使用済みABS樹脂と未使用ABS樹脂との混合物、または、使用済みPC/ABSアロイと未使用PC/ABSアロイとの混合物、であることが好ましい。資源効率の観点からである。
ただし、使用済みPC/ABSアロイ、使用済みPC樹脂および使用済みABS樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂組成物の機械特性や湿熱特性等の各種特性が低下するおそれがある。そのため、PC/ABSアロイ、PC樹脂およびABS樹脂のうち少なくとも1種が使用済みである場合、熱可塑性樹脂組成物の各種特性を向上させる観点から、未使用PC/ABSアロイ、未使用PC樹脂および未使用ABS樹脂のうち少なくとも1種を添加することが好ましい。
《炭酸塩》
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物に含有される炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まない。炭酸塩が周期表第1族元素および周期表第2族元素を含む場合、上述のように空気中の水分と反応して水酸化物イオンを生成し、アルカリ環境となることで、PC樹脂の加水分解が促進され、湿熱特性を悪化させるおそれがあるからである。
また、炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有する。ここで、本実施の形態における「分解温度」とは、炭酸塩を加熱した際に、ある一定の温度または温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。分解温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)等の熱分析により測定され、窒素ガス雰囲気下で一定の昇温速度で室温から加熱した際に吸熱または発熱を開始する温度である。分解温度が200℃未満の場合、熱可塑性樹脂組成物の粘度が上昇し、十分に混合できないおそれがある。分解温度は、成形時の流動性(成形性)の観点から、220℃以上であることが好ましく、240℃以上であることがより好ましい。また、分解温度が高すぎると、成形後の熱可塑性樹脂組成物の物性が低下するおそれがある観点から、分解温度は、例えば、300℃以下であり、280℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましい。
本実施の形態における炭酸塩としては、例えば、炭酸コバルト(分解温度:280℃)、炭酸マンガン(分解温度:200℃)、炭酸カドミウム(分解温度:357℃)、炭酸鉄(分解温度:200℃)、炭酸銀(分解温度:210℃)等が挙げられる。これらの中でも、最適な分解温度を有する炭酸コバルトが好ましい。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物における炭酸塩の含有量は、PC/ABSアロイ100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である。炭酸塩の含有量が0.1質量部以下の場合、湿熱特性を十分に改善することができないおそれがある。炭酸塩の含有量が6.0質量部以上の場合、炭酸塩がブリードアウトし、外観不良となるおそれがある。炭酸塩の含有量は、0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
《その他》
本実施の形態における熱可塑性樹脂組成物は、本実施の形態の目的を阻害しない範囲において、吸油性無機化合物、流動調整剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、金属不活性剤、染料、顔料、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、熱可塑性樹脂組成物に1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。各添加剤の詳細は、上述の通りである。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物における各添加剤の含有量は、PC/ABSアロイ100質量部に対して、例えば、0質量部以上20質量部以下である。熱可塑性樹脂組成物における各添加剤の含有量は、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよく、17質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよく、13質量部以下であってもよい。
実施の形態2.
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、第1PC樹脂および第1ABS樹脂を含むPC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、炭酸塩と、を混合する工程を含む。第1ABS樹脂および第2ABS樹脂は、乳化重合により得られたものである。炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、200℃以上の分解温度を有する。炭酸塩の含有量は、PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である。
以下、本実施の形態について説明するが、実施の形態1と重複する説明は省略する。記述の便宜上、PC/ABSアロイに含まれるPC樹脂を第1PC樹脂とし、第2PC樹脂と区別しているが、第1PC樹脂と第2PC樹脂とは同じであってもよく、異なっていてもよい。同様に、記述の便宜上、PC/ABSアロイに含まれるABS樹脂を第1ABS樹脂とし、第2ABS樹脂と区別しているが、第1ABS樹脂と第2ABS樹脂とは同じであってもよく、異なっていてもよい。第2PC樹脂および第2ABS樹脂に関して、下記説明以外の点については、実施の形態1における第1PC樹脂および第1ABS樹脂に係る記述が引用される。
本実施の形態においては、樹脂として、第1PC樹脂および第1ABS樹脂を含むPC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、を用いる。
PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計に対する、第1PC樹脂および第2PC樹脂の合計(以下、第1PC樹脂および第2PC樹脂の合計を「全PC樹脂」とも称する。)の含有率は、45質量%以上90質量%以下である。PC樹脂は、ABS樹脂よりも耐熱性および難燃性に優れることから、PC樹脂の含有量がABS樹脂よりも多いことが好ましい。ただし、PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計に対する、全PC樹脂の含有率が90質量%を超える場合、成形時の流動性が低下する、すなわち、成形性が低下するおそれがある。PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計に対する、全PC樹脂の含有率は、50質量%以上であってもよく、55質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計に対する、全PC樹脂の含有率は、85質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、75質量%以下であってもよい。
PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計に対する、第1ABS樹脂および第2ABS樹脂の合計(以下、第1ABS樹脂および第2ABS樹脂の合計を「全ABS樹脂」とも称する。)の含有率は、5質量%以上50質量%以下である。PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計に対する、全ABS樹脂の含有率が50質量%を超える場合、耐熱性および難燃性が低下するおそれがある。PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計に対する、全ABS樹脂の含有率は、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計に対する、全ABS樹脂の含有率は、45質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよい。
本実施の形態においては、炭酸塩の含有量は、PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である。炭酸塩の含有量が0.1質量部以下の場合、湿熱特性を十分に改善することができないおそれがある。炭酸塩の含有量が6.0質量部以上の場合、炭酸塩がブリードアウトし、外観不良となるおそれがある。炭酸塩の含有量は、0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物における各添加剤の含有量は、PC/ABSアロイと、第2PC樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計100質量部に対して、例えば、0質量部以上20質量部以下である。熱可塑性樹脂組成物における各添加剤の含有量は、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよく、17質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよく、13質量部以下であってもよい。
第1PC樹脂、第2PC樹脂、第1ABS樹脂、第2PC樹脂およびPC/ABSアロイのうち少なくとも1種は使用済みである、すなわち、少なくとも1種は使用済みPC樹脂、使用済みABS樹脂または使用済みPC/ABSアロイであることが好ましい。また、第1PC樹脂、第2PC樹脂、第1ABS樹脂、第2PC樹脂およびPC/ABSアロイのうち少なくとも1種は使用済みを含む、すなわち、少なくとも1種は使用済みPC樹脂と未使用PC樹脂との混合物、使用済みABS樹脂と未使用ABS樹脂との混合物、または、使用済みPC/ABSアロイと未使用PC/ABSアロイとの混合物、であることが好ましい。資源効率の観点からである。
実施の形態3.
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、第2PC樹脂、第2ABS樹脂および炭酸塩を混合する工程を含む。第2ABS樹脂は、乳化重合により得られたものである。炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、200℃以上の分解温度を有する。炭酸塩の含有量は、第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である。
以下、本実施の形態について説明するが、実施の形態1および2と重複する説明は省略する。
本実施の形態においては、樹脂として、第2PC樹脂および第2ABS樹脂を用いる。すなわち、PC/ABSアロイは用いない。
第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計に対する第2PC樹脂の含有率は、45質量%以上90質量%以下である。PC樹脂は、ABS樹脂よりも耐熱性および難燃性に優れることから、PC樹脂の含有量が多いことが好ましい。ただし、第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計に対する第2PC樹脂の含有率が90質量%を超える場合、成形時の流動性が低下する、すなわち、成形性が低下するおそれがある。第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計に対する第2PC樹脂の含有率は、50質量%以上であってもよく、55質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計に対する第2PC樹脂の含有率は、85質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、75質量%以下であってもよい。
第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計に対する第2ABS樹脂の含有率は、5質量%以上50質量%以下である。第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計に対する第2ABS樹脂の含有率が50質量%を超える場合、耐熱性および難燃性が低下するおそれがある。第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計に対する第2ABS樹脂の含有率は、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計に対する第2ABS樹脂の含有率は、45質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよい。
本実施の形態においては、炭酸塩の含有量は、第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である。炭酸塩の含有量が0.1質量部以下の場合、湿熱特性を十分に改善することができないおそれがある。炭酸塩の含有量が6.0質量部以上の場合、炭酸塩がブリードアウトし、外観不良となるおそれがある。炭酸塩の含有量は、0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物における各添加剤の含有量は、第2PC樹脂と第2ABS樹脂との合計100質量部に対して、例えば、0質量部以上20質量部以下である。熱可塑性樹脂組成物における各添加剤の含有量は、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよく、17質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよく、13質量部以下であってもよい。
第2PC樹脂および第2ABS樹脂のうち少なくとも1種は使用済みである、すなわち、少なくとも1種は使用済みPC樹脂または使用済みABS樹脂であることが好ましい。また、第2PC樹脂および第2ABS樹脂のうち少なくとも1種は使用済みを含む、すなわち、少なくとも1種は使用済みPC樹脂と未使用PC樹脂との混合物、使用済みABS樹脂と未使用ABS樹脂との混合物であることが好ましい。資源効率の観点からである。
以下、実施例を挙げて本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
<試験例1>
試験例1では、使用済みPC/ABSアロイと未使用PC/ABSアロイとの比較を行うため、下記の試験を行った。使用済みPC/ABSアロイは、使用済みの家電製品から選別し回収したものであり、未使用PC/ABSアロイは、市販のPC/ABSアロイである。なお、各PC/ABSアロイに含まれるABS樹脂は、電子顕微鏡を用いて粒子の形状を確認することにより、乳化重合により得られたものであることが確認されている。
(測定)
使用済みPC/ABSアロイおよび未使用PC/ABSアロイに含まれる成分および含有量を熱重量分析法(TGA)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)およびICP-AESにより測定した。
試料として、各PC/ABSアロイを10mgずつ量り取り、10℃/minの昇温速度で30℃から1000℃の温度範囲についてTGA装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、STA7200)を用いて測定した。
試料として、各PC/ABSアロイを0.5mgずつ量り取り、テトラヒドロフラン20mLに浸漬し、50℃に加温してペレット形状がなくなるまで攪拌した。撹拌後の混合液をエタノール80mLに加え、加熱温度340℃、24分間の条件でGC-MS装置(日本電子株式会社製、Jms-Q1000GCK9 Ultra Quad GC/MS)を用いて測定した。
試料として、各PC/ABSアロイを150mgずつ量り取り、各種酸を加えて密栓し、マイクロウェーブ前処理装置にて溶解し、不溶物をろ過した。ろ液をメスフラスコに移して定容した(検液A)。不溶物をろ紙ごと白金皿に移し、バーナーを用いて灰化した後、再度酸を加えて加熱溶解し、放冷後、メスフラスコに移して定容した(検液B)。上記で得られた検液AおよびBをそれぞれICP測定液とし、ICP-AES装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、SPS-3100)を用いて測定した。
測定の結果、使用済みPC/ABSアロイは、PC樹脂を59質量%、ABS樹脂を26質量%、リン酸エステル系難燃剤であるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を13質量%、無機物およびその他不純物を2質量%含んでいた。無機物としては、Naを0.01質量%、Mgを0.01質量%、Caを0.01質量%、ケイ素(Si)を0.3質量%、チタン(Ti)を0.3質量%、アルミニウム(Al)を0.06質量%、鉄(Fe)を0.04質量%、スズ(Sb)を0.03質量%含んでいた。一方、未使用PC/ABSアロイは、PC樹脂を70質量%、ABS樹脂を16質量%、リン酸エステル系難燃剤であるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を11質量%、無機物およびその他不純物を3質量%含んでいた。無機物としては、Naを0.01質量%、Mgを0.01質量%、Caを0.01質量%、Siを0.3質量%、Tiを0.1質量%含んでいた。なお、未使用PC/ABSアロイにはAl、FeおよびSbは含まれていなかった。
(曲げ試験)
各PC/ABSアロイを射出成形機により、成形温度240℃、金型温度60℃の条件でISOダンベル試験片A型を成形した。各試験片の曲げ強度を曲げ試験により測定した。曲げ試験は、JIS K 7171に準拠する方法で行った。具体的には、温度65℃、相対湿度85%の湿熱環境下に1340時間曝露した後の各試験片において、試験速度2mm/minで万能試験機(株式会社島津製作所製、AG-X20KN)を用いて測定した。各試験片は、曝露前の強度の75%未満となる時間まで行った。
曲げ試験の結果、上記の強度となるまでの時間は、未使用PC/ABSアロイでは2500時間であったのに対し、使用済みPC/ABSアロイでは1200時間であった。このように、使用済みPC/ABSアロイの湿熱特性は、未使用PC/ABSアロイの湿熱特性と比較して大幅に低下していることが確認された。
(メルトフローレート試験)
各PC/ABSアロイのメルトフローレート(MFR)をMFR試験により測定した。MFR試験は、JIS K 7210に準拠する方法で行った。具体的には、温度260℃、荷重2.16kgfの条件でメルトフローインデクサ(テスター産業株式会社製、メルトインデクサーTP-401)を用いて測定した。MFRの数値が大きい程、樹脂の流動性は大きいが、PCの分子量が低下し、PC/ABSアロイは劣化しているものと考えられる。
MFR試験の結果、未使用PC/ABSアロイでは20g/10minであったのに対し、使用済みPC/ABSアロイでは70g/10min以上であった。このように、使用済みPC/ABSアロイの流動性は、未使用PC/ABSアロイの流動性と比較して大幅に増加していることが確認された。これは、経年劣化によりPC樹脂の加水分解が進んだことが原因と考えられる。
また、各PC/ABSアロイの重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、未使用PC/ABSアロイは47000であったのに対し、使用済みPC/ABSアロイは40000であった。PC/ABSアロイの物性はPCの分子量に依存するため、重量平均分子量が小さいほどPC樹脂の加水分解が進み、湿熱劣化により物性が低下したものと考えられる。
<試験例2>
試験例2では、試験例1で使用した使用済みPC/ABSアロイ等を含む熱可塑性樹脂組成物を製造し、湿熱特性を評価した。
(実施例1)
試験例1と同じ使用済みPC/ABSアロイと、炭酸コバルト(Thermo Scientific社製)とを準備した。これらの材料を表1に示す容量で混合し、得られた混合物を、混練機に供給し、240℃で加熱しながら溶融した。その後、射出成形機により、成形温度240℃、金型温度60℃の条件でISOダンベル試験片A型(以下、単に「試験片」と称する。)を成形した。
(実施例2~3)
炭酸コバルトの添加量を表1に示す質量に変更した点を除いては、実施例1と同じ条件で各試験片を成形した。
(実施例4~6)
試験例1と同じ使用済みPC/ABSアロイと、上記炭酸コバルトとに加えて、未使用PC樹脂(コベストロ社製、マクロロン)を準備した。これらの材料を表1に示す容量で混合した。得られた混合物を、実施例1と同じ条件で加熱溶融および射出成形することで、各試験片を成形した。
(実施例7~9)
上記炭酸コバルトと、上記未使用PC樹脂とに加えて、使用済みABS樹脂を準備した。これらの材料を表1に示す容量で混合した。得られた混合物を、実施例1と同じ条件で加熱溶融および射出成形することで、各試験片を成形した。なお、使用済みABS樹脂は、使用済みの大型家電製品を破砕した混合プラスチックから低比重のポリプロピレンおよび高比重のエンジニアリングプラスチックを湿式選別により分離した後に、静電選別によりPS樹脂を分離して得られたものである。該使用済みABS樹脂は、試験例1と同じ方法により、乳化重合により得られたものであることが確認されている。
(比較例1)
上記使用済みPC/ABSアロイを準備した。炭酸コバルトを混合しなかった点を除いては、実施例1と同じ条件で試験片を成形した。
(比較例2~3)
炭酸コバルトの添加量を表1に示す質量に変更した点を除いては、実施例1と同じ条件で各試験片を成形した。
(評価方法)
評価は下記の方法により行った。
[外観]
各試験片に関して、添加した炭酸コバルトがブリードアウトしているか否かを目視にて確認した。その結果を表1に示す。ブリードアウトしていない場合を「A」、ブリードアウトしている場合を「B」とする。
[曲げ試験]
各試験片の曲げ強度を曲げ試験により測定した。曲げ試験は、JIS K 7171に準拠する方法で行った。具体的には、温度65℃、相対湿度85%の湿熱環境下に1340時間曝露した後の各試験片において、試験速度2mm/minで行い、降伏時の曲げ強度を試験例1と同じ万能試験機を用いて測定した。また、曝露前の曲げ強度に対する曝露後の曲げ強度の保持率(曲げ強度保持率)を算出した。その結果を表1に示す。各試験片は、曲げ強度保持率が75%以上であった場合を「A」、75%未満であった場合を「B」とする。
[総合評価]
上記の外観および曲げ試験の評価により総合的に判断を行い、双方「A」の場合を「A」、外観および曲げ試験のうち少なくとも一方が「B」の場合を「B」とした。
(結果)
表1より、実施例に係る熱可塑性樹脂組成物は、外観および曲げ試験の結果が「A」であり、外観および湿熱特性に優れることが確認された。
一方、比較例に係る熱可塑性樹脂組成物は、外観および曲げ試験のいずれか一方が「B」であり、外観または湿熱特性のいずれかが劣ることが確認された。
比較例1および2においては、曲げ強度が劣っていた。これは、炭酸コバルトを含んでいないことまたは炭酸コバルトの添加量が少ないことにより、湿熱特性が向上されなかったためと考えられる。比較例3は、外観が劣っていた。これは、炭酸コバルトの添加量が多かったためと考えられる。
[付記]
〔1〕 熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
第1ポリカーボネート樹脂および第1ABS樹脂を含むポリカーボネート/ABSアロイと、炭酸塩と、を混合する工程を含み、
前記第1ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
前記炭酸塩の含有量が、前記ポリカーボネート/ABSアロイ100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔2〕 前記第1ポリカーボネート樹脂、前記第1ABS樹脂および前記ポリカーボネート/ABSアロイのうち少なくとも1種が使用済みである、または使用済みを含む、〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔3〕 熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
第1ポリカーボネート樹脂および第1ABS樹脂を含むポリカーボネート/ABSアロイと、第2ポリカーボネート樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、炭酸塩と、を混合する工程を含み、
前記第1ABS樹脂および前記第2ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
前記炭酸塩の含有量が、前記ポリカーボネート/ABSアロイと、前記第2ポリカーボネート樹脂および前記第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔4〕 前記第1ポリカーボネート樹脂、前記第2ポリカーボネート樹脂、前記第1ABS樹脂、前記第2ABS樹脂および前記ポリカーボネート/ABSアロイのうち少なくとも1種が使用済みである、または使用済みを含む、〔3〕に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔5〕 熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
第2ポリカーボネート樹脂と、第2ABS樹脂と、酸塩と、を混合する工程を含み、
前記第2ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
前記炭酸塩の含有量が、前記第2ポリカーボネート樹脂と前記第2ABS樹脂との合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔6〕 前記第2ポリカーボネート樹脂および前記第2ABS樹脂のうち少なくとも1種が使用済みである、または使用済みを含む、〔5〕に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔7〕 前記炭酸塩は、炭酸コバルト、炭酸マンガン、炭酸カドミウム、炭酸鉄および炭酸銀からなる群から選択される少なくとも1種である、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
    第1ポリカーボネート樹脂および第1ABS樹脂を含むポリカーボネート/ABSアロイと、炭酸塩と、を混合する工程を含み、
    前記第1ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
    前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
    前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
    前記炭酸塩の含有量が、前記ポリカーボネート/ABSアロイ100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記第1ポリカーボネート樹脂、前記第1ABS樹脂および前記ポリカーボネート/ABSアロイのうち少なくとも1種が使用済みである、または使用済みを含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  3. 熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
    第1ポリカーボネート樹脂および第1ABS樹脂を含むポリカーボネート/ABSアロイと、第2ポリカーボネート樹脂および第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、炭酸塩と、を混合する工程を含み、
    前記第1ABS樹脂および前記第2ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
    前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
    前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
    前記炭酸塩の含有量が、前記ポリカーボネート/ABSアロイと、前記第2ポリカーボネート樹脂および前記第2ABS樹脂からなる群から選択される少なくとも1種と、の合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記第1ポリカーボネート樹脂、前記第2ポリカーボネート樹脂、前記第1ABS樹脂、前記第2ABS樹脂および前記ポリカーボネート/ABSアロイのうち少なくとも1種が使用済みである、または使用済みを含む、請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  5. 熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
    第2ポリカーボネート樹脂と、第2ABS樹脂と、酸塩と、を混合する工程を含み、
    前記第2ABS樹脂は、乳化重合により得られたものであり、
    前記炭酸塩は、周期表第1族元素および周期表第2族元素を含まず、
    前記炭酸塩は、200℃以上の分解温度を有し、
    前記炭酸塩の含有量が、前記第2ポリカーボネート樹脂と前記第2ABS樹脂との合計100質量部に対して、0.1質量部超6.0質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記第2ポリカーボネート樹脂および前記第2ABS樹脂のうち少なくとも1種が使用済みである、または使用済みを含む、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記炭酸塩は、炭酸コバルト、炭酸マンガン、炭酸カドミウム、炭酸鉄および炭酸銀からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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