JP7843815B1 - 状態監視装置および状態監視方法 - Google Patents

状態監視装置および状態監視方法

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Abstract

【課題】軸受の面荒れ異常を早期に検出することが可能な状態監視装置を提供する。
【解決手段】状態監視装置100は、振動に起因する物理量を検出するセンサー20から得られた振動データを保存する記憶装置150と、記憶装置150から振動データを受け、異常判定を行なう演算装置160とを備える。演算装置160は、診断対象とする軸受12の振動データから診断対象のエンベロープスペクトルを求める処理と、診断対象のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が第1しきい値を超える診断対象データを抽出する処理と、抽出した診断対象データの振幅から、診断対象の比較値を算出する処理と、診断対象の比較値を基準の比較値で割った値を比較値の比率とし、比較値の比率が予め設定した第2しきい値以上であれば、異常と判定する処理とを実行するように構成される。
【選択図】図1

Description

本開示は、状態監視装置および状態監視方法に関する。
工作機械、発電機などの回転軸を有する装置には軸受が使用されており、軸受の異常を振動などから早期に検出することが望まれている。
たとえば、特開2023-106207号公報は、工作機械主軸について、振動が正常範囲を超えている場合に、軸受異常に起因する振動であるかを判定し、軸受異常であると判定した場合、異常の発生原因を特定する方法を開示している。
また、たとえば特許第714668号公報では、エンベロープスペクトルにおいて、回転周波数に比例した振動成分を強調し、そのピーク位置に基づいて軸受損傷部位を特定することで、軸受諸元を用いることなく軸受の異常を検出する方法を開示している。
特開2023-106207号公報 特許第7146683号公報
工作機械の超高速主軸用軸受ではエアオイル潤滑が主流だが、潤滑コストの削減および環境負荷の低減などの観点から、グリース潤滑の需要が高まっている。グリース潤滑では、グリース劣化による油膜切れにより、軸受軌道面の転走跡上に面荒れが発生し進行することが分かっている。面荒れは、主軸の加工精度悪化の一因となり、工作機械が不良品を出すことに繋がるため、初期段階での異常検出が重要である。
面荒れは、剥離や圧痕等と比較して損傷発生初期の表面粗さが小さく、振動波形から実効値を算出し、しきい値を用いて異常を検出するのは困難である。
たとえば、特開2023-106207号公報に記載されている異常検出方法では、軸受起因の振動であるかを判断する際に、その軸受に固有の損傷周波数を用いているため、面荒れの異常検出は困難である。
また、面荒れは軸受の軌道面や転動体の全面に発生するため、面荒れ起因の振動には周期性が見られない。そのため、剥離や圧痕等と同様に、軸受の損傷周波数とエンベロープスペクトルのピークに注目して異常を検出する手法は使用できない。
たとえば、特許第714668号公報に記載されている方法では、軸受の損傷周波数を用いてはいないが、エンベロープスペクトルのピークに規則性がなければ異常診断できないため、面荒れの異常検出は困難である。
本開示は、上記の課題を解決する状態監視装置であって、軸受の面荒れ異常を早期に検出することが可能な状態監視装置を提供することを目的とする。
本開示は、軸受の面荒れを検出する状態監視装置に関する。状態監視装置は、振動に起因する物理量を検出するセンサーから得られた振動データを保存する記憶装置と、記憶装置から振動データを受け、異常判定を行なう演算装置とを備える。演算装置は、診断対象とする軸受の振動データから診断対象のエンベロープスペクトルを求める処理と、診断対象のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が第1しきい値を超える診断対象データを抽出する処理と、抽出した診断対象データの振幅から、診断対象の比較値を算出する処理と、診断対象の比較値を基準の比較値で割った値を比較値の比率とし、比較値の比率が予め設定した第2しきい値以上であれば、異常と判定する処理とを実行するように構成される。
本開示の状態監視装置によれば、従来早期に検出することが困難であった軸受の面荒れ異常を早期に検出することが可能となる。
本実施の形態に係る状態監視装置の構成を示すブロック図である。 演算装置160のハードウェア構成の要部を示すブロック図である。 基準値の算出処理を説明するためのフローチャートである。 エンベロープスペクトルと基準値Rの関係を示す図である。 周波数帯域別に基準値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。 周波数帯域別に算出された基準値を説明するための図である。 複数の振動波形から基準値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。 比較値の算出処理を説明するためのフローチャートである。 ステップS33における抽出処理について説明するための図である。 周波数帯域別に比較値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。 ステップS43における抽出処理について説明するための図である。 複数の基準値データが有る場合に比較値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。 異常診断処理を説明するためのフローチャートである。 周波数帯域別に比較値を算出した場合の異常診断処理を説明するためのフローチャートである。 複数の振動信号に対して個別に第1しきい値および比較値を算出した場合の異常診断処理を説明するためのフローチャートである。 基準値と比較値の比率と第2しきい値との関係の一例を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[状態監視装置の基本構成]
図1は、本実施の形態に係る状態監視装置の構成を示すブロック図である。図1を参照して、状態監視装置100は、被試験装置10に設置された振動系のセンサー20から信号を受けて、被試験装置10の状態を監視し、異常を検出する。被試験装置10は、例えば工場、発電所などに設置された回転機器を含む設備である。回転機器は軸受12を含む。軸受12は、たとえば転がり軸受である。軸受12は、回転軸19に嵌合された内輪16と、被試験装置10に固定された外輪14と、内輪と外輪との間に配置された複数の転動体18と、転動体18の間隔を保持する保持器(図示せず)とを含む。
センサー20は、回転時に生じる異常振動を検出することができる。なお、本実施の形態では、監視対象として加速度を例示するが、センサー20は、加速度センサー以外にも、音響センサー、超音波センサー及びAEセンサーであっても良い。これらのセンサーは、振動に起因する物理量を検出し、振動を表わす振動信号を出力する。
状態監視装置100は、アンプ110と、フィルター120と、A/Dコンバータ130と、データ取得部140と、記憶装置150と、演算装置160と、表示部170とを含む。
回転機械に設置したセンサー20が出力する振動信号に含まれる電圧波形(以下、振動電圧波形)は、アンプ110において増幅され、フィルター120において分析に不要な帯域の信号を除去し必要な帯域のみ通過させるバンドパスフィルター処理(通過帯域1kHz~10kHz)が行なわれる。A/Dコンバータ130は、アンプ110の出力信号を受ける。データ取得部140は、A/Dコンバータ130からデジタル信号を受けて記憶装置150に測定データを記録する。記憶装置150としては、ハードディスク、各種メモリーなどを使用できる。演算装置160は、記憶装置150から測定しておいた測定データを読み出して、エンベロープ処理およびFFT解析を実施し、FFT解析実施後、後に説明する基準値R、比較値CAなどを計算する。
演算装置160は、被試験装置10の軸受の異常の有無を判断する。演算装置160は、異常の有無を判断した場合、表示部170に判断結果を表示させる。
図2は、演算装置160のハードウェア構成の要部を示すブロック図である。図2を参照して、演算装置160は、入力部161と、インターフェース(I/F)部162と、CPU(Central Processing Unit)163と、RAM(Random Access Memory)164と、ROM(Read Only Memory)165と、出力部166とを含む。
CPU163は、ROM165に格納された各種プログラムを実行することにより、後ほど詳細に説明される状態監視方法を実現する。RAM164は、CPU163によってワークエリアとして利用される。ROM165は、状態監視方法の手順が示されたフローチャート(後述)の各ステップを含むプログラムを記録する。入力部161は、キーボード、マウス、記録媒体、または通信装置等、外部からデータを読込むための手段である。出力部166は、ディスプレイ、記録媒体、または通信装置等、CPU163による演算結果を出力するための手段である。
本実施の形態に示す状態監視装置100は、監視対象の軸受に生じた面荒れを検出する。状態監視装置100は、以下に説明する1)基準値の算出処理、2)比較値の算出処理、3)異常診断処理、の3つの工程で構成される処理を実行する。
1)基準値の算出処理
まず、予め正常状態の軸受を用いて振動波形を取得する。正常状態の振動波形から基準値が算出される。
図3は、基準値の算出処理を説明するためのフローチャートである。この処理は、状態監視装置100において主として演算装置160が実行する。まずステップS1において、演算装置160は、正常状態の軸受を用いて振動波形を記憶装置150から取得する。続いて、ステップS2において、演算装置160は、取得した正常状態の振動波形に対して、フィルター処理を行なう。フィルター処理には、たとえば4kHz以上の周波数の波形を通過させるハイパスフィルターなどを用いることができる。
続いて、ステップS3,S4において、演算装置160は、フィルター処理後の振動波形に対して、エンベロープ処理を行ない、さらに高速フーリエ変換(FFT)によりエンベロープスペクトルを求める。以下、エンベロープスペクトルの各周波数におけるピークの大きさを振幅と表現することにする。
続いて、状態監視装置100は、ステップS4で求めたエンベロープスペクトルに対して、例えば、以下に示す式(1)の計算式から振幅の実効値を算出し、基準値Rとする。
なお、i番目のデータは、エンベロープスペクトルにおけるi番目のピークを示すデータであり、その振幅はピークの大きさである。状態監視装置100は、ステップS5において、全周波数帯域に対して1つの基準値Rを算出する。図4は、エンベロープスペクトルと基準値Rの関係を示す図である。
そして、状態監視装置100は、ステップS6において、算出した基準値Rと、エンベロープスペクトルと、基準値Rの算出方法とが紐づけられた基準値データをデータベースに保存する。
なお、基準値は、式(1)の計算式を使用する以外に、振幅の平均値、中央値などの基本統計量を使用して算出しても良い。
また、基準値の算出については、図3、図4に示したようにエンベロープスペクトルの全周波数帯域に対して1つの基準値Rを算出する以外に、エンベロープスペクトルの最大周波数を一定の間隔で分割し、周波数帯域別に基準値を算出しても良い。
図5は、周波数帯域別に基準値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。図5において、ステップS11~S14の処理は、図3のステップS1~S4の処理とそれぞれ同じであるので、説明は繰り返さない。
状態監視装置100は、ステップS15においてエンベロープスペクトルを一定の周波数間隔で分割することによって、複数の帯域に分ける。そしてステップS16において、状態監視装置100は、分割した周波数帯域1つに対して1つの基準値を図3のステップS5と同様な処理によって算出する。
そして、ステップS17において、状態監視装置100は、算出した周波数帯域別の基準値と、エンベロープスペクトルと、基準値の算出方法とが紐づけられた基準値データをデータベースに保存する。
図6は、周波数帯域別に算出された基準値を説明するための図である。図6に示した例では、エンベロープスペクトルの全周波数帯域が帯域BA,BB,BC,BD,BEの5つの帯域に分割されている。そして、帯域BA,BB,BC,BD,BEに対して、それぞれ、帯域別の基準値RA,RB,RC,RD,REが算出されている。
なお、正常状態の振動波形が複数得られる場合がある。たとえば風車などで1時間に1回振動波形を取得するような場合は、取得時の運転条件の違いによって得られる振動波形が多少ばらつく。このように、同じ軸受に対して複数の振動波形が得られた場合にも、精度良く軸受の異常を判定できることが望ましい。
図7は、複数の振動波形から基準値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。図7のフローチャートの処理のステップS21~S26は、図3のフローチャートのステップS1~S6の処理をそれぞれ、複数の振動波形(No.1~No.X)について個別に行なったものであるため、ここでは説明は繰り返さない。
このようにして、ステップS26においても、状態監視装置100は、S24で得られたエンベロープスペクトル、ステップS25で算出した基準値と、基準値の算出方法を紐づけてデータベースに保存する。
2)比較値の算出処理
続いて、異常判定に使用する比較値の算出処理について説明する。図8は、比較値の算出処理を説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS31において、状態監視装置100は、記憶装置150のデータベースに保存した基準値データを取得する。続いて、状態監視装置100は、ステップS31において取得した基準値データに含まれる基準値Rに基づいて、第1しきい値TH1を設定する。例えば、基準値Rの実数倍(たとえば2~5倍)を第1しきい値TH1とすることができる。
次にステップS33において、取得した基準値データに含まれるエンベロープスペクトルに対して、設定した第1しきい値TH1を超えるデータのみを抽出する。
図9は、ステップS33における抽出処理について説明するための図である。図9に示すように、エンベロープスペクトルの振幅に対して全体域について共通の第1しきい値TH1が設定されている。ステップS33の抽出処理では、エンベロープスペクトルから振幅が第1しきい値TH1を超えるデータ(図9において黒丸で示されるデータ)が抽出される。
再び図8に戻って、さらにステップS34において、比較値CAの算出が行なわれる。比較値CAは、振幅から得られる値であり、診断対象の軸受から得たデータと比較するための値である。ステップS33において抽出したデータに対して、たとえば、次の式(2)に示す計算式から振幅の実効値を算出し、比較値CAを得ることができる。
なお、i番目のデータは、エンベロープスペクトルから抽出されたデータのうちi番目のピークを示すデータであり、その振幅はピークの大きさである。
比較値CAは、エンベロープスペクトルの抽出部分の積算値とも表現することができる。なお、比較値CAは、式(2)を使用する以外に、抽出したデータに対する振幅の平均値、中央値などの基本統計量を使用しても良い。
続いて、状態監視装置100は、基準値データに対してステップS32で設定した第1しきい値TH1と、ステップS34で算出した正常状態の比較値CAとを紐づけた比較値データをデータベースに保存する。
また、第1しきい値TH1および比較値CAの算出については、図3、図4に示したようにエンベロープスペクトルの全周波数帯域に対して1つの基準値を算出する以外に、エンベロープスペクトルの最大周波数を一定の間隔で分割し、周波数帯域別に算出しても良い。
図10は、周波数帯域別に比較値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。図10において、ステップS41~S45の処理は、図8のステップS31~S35処理を周波数帯別に実行した処理である。
すなわち、周波数帯域別に算出した基準値データを用いる場合、周波数帯域別に第1しきい値が設定され(S42)、周波数帯域別に、第1しきい値を超えるデータのみが抽出される(S43)。
図11は、ステップS43における抽出処理について説明するための図である。図11に示すように、エンベロープスペクトルの振幅に対して、帯域BAについては第1しきい値TH1Aが設定され、帯域BBについては第1しきい値TH1Bが設定され、帯域BCについては第1しきい値TH1Cが設定されている。ステップS43の抽出処理では、各帯域BA,BB,BCについてそれぞれ対応する第1しきい値TH1A,TH1B,TH1Cを超えるデータ(図11において黒丸で示されるデータ)が抽出される。
そして抽出されたデータを用いて、前述の式(2)を用いて周波数帯域別に比較値CAA,CAB,CACが算出される(S44)。最後に、基準値データにステップS42で設定した第1しきい値TH1A,TH1B,TH1C、ステップS44で算出した正常状態の比較値CAA,CAB,CACを紐づけた比較値データが周波数帯域別にデータベースに保存される(S45)。
また、図7に示したように、基準値データを複数取得した場合は、それぞれの基準値データに対して個別に第1しきい値を設定する。図12は、複数の基準値データが有る場合に比較値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。図12において、ステップS51~S55の処理は、図8のステップS31~S35処理を基準値データ別に実行した処理である。
具体的には、基準値データ(No.1~No.X)の各々に含まれるエンベロープスペクトルに対して、個別に第1しきい値が設定され(S52)、個別に設定された第1しきい値を超えるデータが抽出され(S53)、それぞれの基準値データに対して個別に比較値が算出される(S54)。最後に、基準値データにステップS52で設定した第1しきい値、ステップS54で算出した正常状態の比較値を紐づけた比較値データが各基準値データ別にデータベースに保存される(S55)。
3)異常診断処理
基準値と比較値が算出されたら、その後、状態監視装置100は、対象軸受が異常であるか否かを診断する処理を実行する。
図13は、異常診断処理を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS101~S104において、状態監視装置100は、診断対象の軸受から得られた振動波形に対して、図3のステップS1~S4と同じ方法でエンベロープスペクトルを求める。
そして、ステップS105において、状態監視装置100は、予めデータベースに保存しておいた正常な軸受の比較値データをデータベースから取得する。つづいて、ステップS106において、状態監視装置100は、診断対象のエンベロープスペクトルに対して、データベースから取得した第1しきい値を超えるデータ(エンベロープスペクトルのピーク点)のみを抽出する。ステップS107においては、状態監視装置100は、ステップS106で抽出したデータについて、比較値(以下、診断対象の比較値)を算出する。
ステップS108では、状態監視装置100は、比較値の比率を算出する。ここで、比較値は式(2)で分かるように、振幅を積算した値に相当する。そして比較値の比率は、診断対象の比較値を正常状態の比較値で割った値である。ステップS109では、状態監視装置100は、比較値の比率を判定するためのしきい値(以下、第2しきい値)を設定する。たとえば、正常状態の比較値の実数倍(2~5倍)を比較値の比率のしきい値とすることができる。
そしてステップS110では、状態監視装置100は、比較値の比率が第2しきい値以上であるか否かを判断する。比較値の比率が、第2しきい値以上であれば(S110でYES)、状態監視装置100は、ステップS111において診断対象軸受の状態が異常であると判定する。一方、比較値の比率が、第2しきい値未満であれば(S110でNO)、状態監視装置100は、ステップS112において診断対象軸受の状態が正常であると判定する。
また、図10、図11に示したように、エンベロープスペクトルの最大周波数を一定の間隔で分割し、第1しきい値および比較値を周波数帯域別に算出した場合には、以下のように異常診断を行なう。
図14は、周波数帯域別に比較値を算出した場合の異常診断処理を説明するためのフローチャートである。図14において、ステップS121~S132の処理は、それぞれ図13のステップS101~S112を周波数帯別に実行した処理である。
周波数帯域別に算出した比較値データを用いる場合も同様に、周波数帯域別に、ステップS125で取得したしきい値を超えるデータのみを抽出する(S125,S126)。そして、抽出したデータを用いて周波数帯域別に比較値を算出する(S127)。その後、比較値の比率を周波数帯域別に算出し(S128)、周波数帯域別に比較値の比率の第2しきい値を設定する(S129)。
状態監視装置100は、比較値の比率が第2しきい値以上の周波数帯域が存在すれば(S130でYES)、診断対象軸受の状態が異常であると判定する(S131)。一方、比較値の比率が第2しきい値以上の周波数帯域が存在しなければ(S130でNO)、状態監視装置100は、診断対象軸受の状態が正常であると判定する(S132)。
また、図12に示したように、複数の振動信号に対して個別に第1しきい値および比較値を算出した場合には、以下のように異常診断を行なう。
図15は、複数の振動信号に対して個別に第1しきい値および比較値を算出した場合の異常診断処理を説明するためのフローチャートである。図15において、ステップS141~S144の処理は、それぞれ図13のステップS101~S104と同じ処理である。
続いて、複数の比較値データ(No.1~No.X)を取得し、取得した比較値データのしきい値を超えるデータを個別に抽出し(S145,S146)、No.1~No.Xに対応する比較値を先述の式(2)を用いて個別に算出する(S147)。続いて、ステップS147で得られたNo.1~No.Xの比較値(CA1~CAXとする)を、ステップS145でデータベースから取得したNo.1~No.Xに対応する比較値(CAt1~CAtXとする)で除算し、診断対象のNo.1~No.Xに対応する比較値の比率(CA1/CAt1,CA2/CAt2,…,CAX/CAtX)を個別に算出する(S148)。
ここで、ステップS149では、S148で個別に算出したX個の比較値の比率(CA1/CAt1,CA2/CAt2,…,CAX/CAtX)の平均値、中央値などの基本統計量を最終的な比較値の比率とする。
状態監視装置100は、比較値の比率が第2しきい値以上であれば(S151でYES)、診断対象軸受の状態が異常であると判定する(S152)。一方、比較値の比率が第2しきい値以上でなければ(S151でNO)、状態監視装置100は、診断対象軸受の状態が正常であると判定する(S153)。
以上説明したように、本実施の形態では、正常状態の軸受の振動波形に対し、フィルター処理を行なったエンベロープスペクトルを求め、エンベロープスペクトルの振幅の積算値または統計量に基づき第1しきい値を設定する。正常状態のエンベロープスペクトルと診断対象のエンベロープスペクトルの各々において、第1しきい値を超える振幅のデータを抽出し、抽出したデータの振幅を積算した振幅積算値を求める。正常状態の振幅積算値と診断対象の振幅積算値とを比較・評価することで、面荒れの発生を検出する。この比較・評価として比較値の比率(=診断対象の振幅積算値/正常状態の振幅積算値)を算出し、比較値の比率が第2しきい値を超える場合に面荒れ異常であると判定する。
本願発明者により正常な軸受と面荒れのある軸受とが本開示の診断方法で区別可能か実験を行なった。まず正常な軸受で得られた振動信号から基準値、比較値を算出し、次に診断対象の軸受(面荒れあり)で得られた振動信号から比較値を算出した。そして、得られた2つの比較値から比較値の比率を算出した。
振動信号を取得した試験条件は以下の通りである。
・試験軸受:アンギュラ玉軸受
・面荒れ箇所:軸受内輪および外輪
・回転速度:1000min-1
・サンプリング周波数:25.6kHz
また振動信号を分析した分析条件は以下の通りである。
・フィルター:ハイパスフィルター 4kHz
・基準値の算出方法:エンベロープ波形の実効値
・第1しきい値:基準値の2倍~5倍
・比較値の算出方法:第1しきい値を超えたエンベロープスペクトルデータの振幅の実効値
図16は、基準値と比較値の比率と第2しきい値との関係の一例を説明するための図である。
第1しきい値TH1を基準値Rの2倍に設定した場合は、正常な軸受では比較値が7.4であり、診断対象の軸受では46.2であった。この場合、比較値の比率は6.3となった。
第1しきい値TH1を基準値Rの3倍に設定した場合は、正常な軸受では比較値が4.5であり、診断対象の軸受では38.1であった。この場合、比較値の比率は8.4となった。
第1しきい値TH1を基準値Rの4倍に設定した場合は、正常な軸受では比較値が2.9であり、診断対象の軸受では比較値が31.8であった。この場合、比較値の比率は11.0となった。
第1しきい値TH1を基準値Rの5倍に設定した場合は、正常な軸受では比較値が2.0であり、診断対象の軸受では比較値が26.8であった。この場合、比較値の比率は13.6となった。
以上の各ケースにおいて、得られた比較値の比率が図16に示されている。正常な軸受では、比較値の比率は1.0であるから、図16において、丸印で示される。一方、面荒れがある診断対象の軸受は棒グラフの先端に対応するので図16において三角印で示される。
図16の破線に示したように、比較値の比率に適用する第2しきい値を2~5に設定すれば、面荒れのある軸受を正常な軸受と区別することができる。
以上説明したように、本実施の形態では、エンベロープスペクトルにおいて、比較値および基本統計量などを基準値として異常診断を行なうため、特定の周波数帯域におけるピークの有無や振幅の大きさの影響を受けにくい。そのため、エンベロープスペクトルにおいて、特定の周波数帯域(軸受固有の損傷周波数)にピークが見られない面荒れでも異常を検出できる。
さらに、エンベロープスペクトルにおいて、振幅から算出した基準値に基づいて設定したしきい値を超える振幅データのみを使用することで、ノイズの影響を受けにくく、正確に軸受の状態を評価できる。そのため、発生する振動が小さい初期段階の面荒れでも異常を検出できる。
[付記]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(1) 本開示は、軸受12の面荒れを検出する状態監視装置100に関する。状態監視装置100は、振動に起因する物理量を検出するセンサー20から得られた振動データを保存する記憶装置150と、記憶装置150から振動データを受け、異常判定を行なう演算装置160とを備える。演算装置160は、診断対象とする軸受12の振動データから診断対象のエンベロープスペクトルを求める処理と、診断対象のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が第1しきい値を超える診断対象データを抽出する処理と、抽出した診断対象データの振幅から、診断対象の比較値を算出する処理と、診断対象の比較値を基準の比較値で割った値を比較値の比率とし、比較値の比率が予め設定した第2しきい値以上であれば、異常と判定する処理とを実行するように構成される。
(2) 第1項に記載の状態監視装置において、演算装置160は、正常状態の軸受の振動信号から正常状態のエンベロープスペクトルを求める処理と、正常状態のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が第1しきい値を超える正常データを抽出する処理と、抽出した正常データの振幅から、基準の比較値CAを算出する処理とを実行するように構成される。
(3) 第2項に記載の状態監視装置において、演算装置160は、正常状態のエンベロープスペクトルの振幅から算出した基準値Rに基づいて第1しきい値を設定するように構成される。
(4) 第3項に記載の状態監視装置において、演算装置160は、基準値Rの実数倍を第1しきい値に設定し、基準の比較値CAの実数倍を第2しきい値に設定するように構成される。
(5) 第3項に記載の状態監視装置において、演算装置160は、正常状態の軸受に対応するエンベロープスペクトル、基準値R、基準値Rの算出方法、第1しきい値TH1、基準の比較値CAのいずれかを含む基準値データを記憶装置150に保存し、基準値データを記憶装置150から取得して異常診断に用いるように構成される。
(6) 第2項に記載の状態監視装置において、演算装置160は、図9に示すように、エンベロープスペクトルの全周波数帯域に対して1つの第1しきい値TH1を設定するように構成される。
(7) 第2項に記載の状態監視装置において、演算装置160は、図11に示すように、エンベロープスペクトルの帯域を複数の周波数帯域BA-BCに分割し、分割した周波数帯域BA-BEの各々に対して第1しきい値TH1A-TH1Cを設定するように構成される。
(8) 本開示は、他の局面では、軸受12の振動に起因する物理量を検出し、振動信号を出力するセンサー20から得られた振動データを分析し、軸受12の面荒れを検出する状態監視方法に関する。状態監視方法は、診断対象とする軸受の振動データから診断対象のエンベロープスペクトルを求めるステップ(S103,S104)と、診断対象のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が第1しきい値を超える診断対象データを抽出するステップ(S106)と、抽出した診断対象データの振幅から、診断対象の比較値を算出するステップ(S107)と、診断対象の比較値を基準の比較値で割った値を比較値の比率とし、比較値の比率が予め設定した第2しきい値以上であれば、異常と判定するステップ(S108-S112)とを備える。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 被試験装置、12 軸受、14 外輪、16 内輪、18 転動体、19 回転軸、20 センサー、100 状態監視装置、110 アンプ、120 フィルター、130 コンバータ、140 データ取得部、150 記憶装置、160 演算装置、161 入力部、162 I/F部、164 RAM、165 ROM、166 出力部、170 表示部。

Claims (7)

  1. 軸受の面荒れを検出する状態監視装置であって、
    振動に起因する物理量を検出するセンサーから得られた振動データを保存する記憶装置と、
    前記記憶装置から前記振動データを受け、異常判定を行なう演算装置とを備え、
    比較値が、振幅の実効値、平均値、中央値のいずれか1つであるとした場合に、
    前記演算装置は、
    診断対象とする軸受の振動データから診断対象のエンベロープスペクトルを求める処理と、
    前記診断対象のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が第1しきい値を超える診断対象データを抽出する処理と、
    抽出した前記診断対象データの振幅から、診断対象の比較値を算出する処理と、
    正常状態の軸受の振動データから正常状態のエンベロープスペクトルを求める処理と、
    前記正常状態のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が前記第1しきい値を超える正常データを抽出する処理と、
    抽出した前記正常データの振幅から、基準の比較値を算出する処理と、
    前記診断対象の比較値を前記基準の比較値で割った値を比較値の比率とし、前記比較値の比率が予め設定した第2しきい値以上であれば、異常と判定する処理とを実行するように構成される、状態監視装置。
  2. 前記演算装置は、前記正常状態のエンベロープスペクトルの振幅から算出した基準値に基づいて前記第1しきい値を設定するように構成される、請求項に記載の状態監視装置。
  3. 前記演算装置は、前記基準値の実数倍を前記第1しきい値に設定し、前記基準の比較値の実数倍を前記第2しきい値に設定するように構成される、請求項に記載の状態監視装置。
  4. 前記演算装置は、前記正常状態の軸受に対応するエンベロープスペクトル、前記基準値、前記基準値の算出方法、前記第1しきい値、前記基準の比較値のいずれかを含む基準値データを前記記憶装置に保存し、前記基準値データを前記記憶装置から取得して異常診断に用いるように構成される、請求項に記載の状態監視装置。
  5. 前記演算装置は、エンベロープスペクトルの全周波数帯域に対して1つの前記第1しきい値を設定するように構成される、請求項に記載の状態監視装置。
  6. 前記演算装置は、エンベロープスペクトルの帯域を複数の周波数帯域に分割し、分割した周波数帯域の各々に対して前記第1しきい値を設定するように構成される、請求項に記載の状態監視装置。
  7. 軸受の振動に起因する物理量を検出し、振動信号を出力するセンサーから得られた振動データを分析し、軸受の面荒れを検出する状態監視方法であって、
    診断対象とする軸受の振動データから診断対象のエンベロープスペクトルを求めるステップと、
    前記診断対象のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が第1しきい値を超える診断対象データを抽出するステップとを備え
    比較値が、振幅の実効値、平均値、中央値のいずれか1つであるとした場合に、
    前記状態監視方法は、
    正常状態の軸受の振動データから正常状態のエンベロープスペクトルを求めるステップと、
    前記正常状態のエンベロープスペクトルにおいて、振幅が前記第1しきい値を超える正常データを抽出するステップと、
    抽出した前記正常データの振幅から、基準の比較値を算出するステップと、
    抽出した前記診断対象データの振幅から、診断対象の比較値を算出するステップと、
    前記診断対象の比較値を前記基準の比較値で割った値を比較値の比率とし、前記比較値の比率が予め設定した第2しきい値以上であれば、異常と判定するステップとを備える、状態監視方法。
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