JP7843250B2 - 可溶性gpc3のイムノアッセイにおける可溶性gpc3含有検体の処理方法 - Google Patents

可溶性gpc3のイムノアッセイにおける可溶性gpc3含有検体の処理方法

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Description

本発明は、可溶性グリピカン-3(GPC3)のイムノアッセイにおける可溶性GPC3含有検体の処理方法などに関する。
GPC3は、そのC末端に存在するグリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して細胞膜に結合している、ヘパラン硫酸鎖を有するプロテオグリカンであるグリピカンファミリーに属する約65kDaの分子量を有するタンパク質である。GPC3は、ゴルジ体においてFurinと呼ばれる酵素により358位のアルギニン残基と359位のセリン残基との間で切断されてN末端断片(約40kDa)およびGPIアンカー含有C末端断片(約30kDa)を生成する。しかし、このような2つの断片は通常、ジスルフィド結合により連結していることが確認されている。したがって、GPC3は、ジスルフィド結合により連結された2つの断片を含む全長型タンパク質の形態において、GPIアンカーを介して細胞膜に結合していると考えられている。
GPC3はまた、肝臓癌等の癌において特異的な発現が認められるタンパク質であるため、GPC3を標的とする癌患者の検査に有用な方法の開発が模索されている。例えば、特許文献1では、可溶性GPC3の測定による癌患者の検査方法が提案されている。また、特許文献2では、GPC3のN末端領域に存在する異なるエピトープに結合する異なる2つの抗体を用いるGPC3の測定方法が提案されている。
国際公開第2004/038420号 国際公開第2015/097928号
本発明の課題は、可溶性GPC3の検査に有用な方法および試薬を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、可溶性GPC3のイムノアッセイにおいて、検体を還元剤で処理することにより、陽性検体と陰性検体との判別精度を向上できることを見出した。本発明者らはまた、可溶性GPC3のイムノアッセイにおいて、検体を還元剤および界面活性剤の双方で処理することにより、陽性検体と陰性検体との判別精度を向上できること、およびマトリックス効果を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕可溶性GPC3含有検体を還元剤と混合することを含む、可溶性GPC3のイムノアッセイにおける可溶性GPC3含有検体の処理方法。
〔2〕還元剤が、0.05~1,000mMの終濃度で用いられる、〔1〕の方法。
〔3〕可溶性GPC3含有検体を界面活性剤とさらに混合することを含む、〔1〕または〔2〕の方法。
〔4〕界面活性剤が、0.005~10重量%の終濃度で用いられる、〔3〕の方法。
〔5〕イムノアッセイが、可溶性GPC3中の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体を用いるサンドイッチイムノアッセイである、〔1〕~〔4〕のいずれかの方法。
〔6〕可溶性GPC3含有検体が血液検体である、〔1〕~〔5〕のいずれかの方法。
〔7〕可溶性GPC3含有検体が、癌に罹患している被験体から得られる、〔1〕~〔6〕のいずれかの方法。
〔8〕癌が肝臓癌である、〔7〕の方法。
〔9〕下記(a)および(b)を含む、可溶性GPC3のイムノアッセイ方法:
(a)可溶性GPC3含有検体を還元剤と混合すること;および
(b)(a)で得られた混合液中の可溶性GPC3量を、可溶性GPC3に対する1種以上の抗体を用いて測定すること。
〔10〕可溶性GPC3含有検体を界面活性剤とさらに混合することを含む、〔9〕の方法。
〔11〕測定が、可溶性GPC3中の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体を用いるサンドイッチイムノアッセイにより行われる、〔9〕または〔10〕の方法。
〔12〕下記(a)および(b)を含む、可溶性GPC3のイムノアッセイ試薬:
(a)還元剤;および
(b)可溶性GPC3に対する1種以上の抗体。
〔13〕さらに(c)界面活性剤を含む、〔12〕のイムノアッセイ試薬。
〔14〕可溶性GPC3に対する1種以上の抗体が、可溶性GPC3中の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体であり、かつ、前記イムノアッセイ試薬がサンドイッチイムノアッセイ用である、〔12〕または〔13〕のイムノアッセイ試薬。
〔15〕前記試薬が癌の診断用である、〔12〕~〔14〕のいずれかのイムノアッセイ試薬。
本発明によれば、可溶性GPC3のイムノアッセイにおいて、陽性検体と陰性検体との判別精度を向上できる。したがって、本発明は、可溶性GPC3のイムノアッセイにおいて、特定の状態(例、癌等の疾患)に対する高い診断感度の実現に有用である。
図1は、ウェスタンブロッティング(WB)による、抗原タンパク質中の抗体Aおよび抗体Bの認識部位の解析を示す図である。抗原タンパク質として、ヒトGPC3の1-559番目のアミノ酸残基からなる組み換えヒトGPC3(rhGPC3)、およびGPC3高発現のヒト肝癌細胞HepG2の培養上清を用いた。レーン中にアプライしたタンパク質の量は、それぞれ1.4ng/レーンと7.2ng/レーンであった。
本発明は、可溶性GPC3のイムノアッセイにおける検体の処理方法を提供する。
本発明では、可溶性GPC3は、GPC3発現細胞から分泌される可溶性GPC3をいう。可溶性GPC3としては、任意の被験体由来の可溶性GPC3を利用することができる。このような被験体としては、例えば、哺乳動物(例、ヒト、サル等の霊長類;マウス、ラット、ウサギ等の齧歯類;ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄類、イヌ、ネコ等の食肉類)、鳥類(例、ニワトリ)が挙げられる。好ましくは、被験体は、ヒト等の哺乳動物である。GPC3は、動物において広く保存されており、特に哺乳動物間ではそのアミノ酸配列が高度に保存されている。臨床応用の観点からは、被験体は、好ましくはヒトである。したがって、可溶性GPC3は、好ましくはヒト可溶性GPC3である。
好ましくは、ヒト可溶性GPC3は、580個のアミノ酸残基からなるヒトGPC3タンパク質(アクセッション番号:P51654.1)における358位のアルギニン残基と359位のセリン残基との間の切断により生成するN末端断片、またはヒトGPC3タンパク質のC末端に存在するGPIアンカーの切断により遊離する可溶性全長型GPC3である。可溶性全長型GPC3としては、例えば、ヒトGPC3タンパク質における358位のアルギニン残基と359位のセリン残基との間の切断により生成するN末端断片とC末端断片がジスルフィド結合を介して互いに連結したGPC3断片が挙げられる。より具体的には、このようなヒト可溶性GPC3は、(a)配列番号1のアミノ酸配列における1~358位のアミノ酸残基からなるN末端断片またはそのバリアント、(b)配列番号1のアミノ酸配列における1~358位のアミノ酸残基からなるN末端断片またはそのバリアントと、配列番号1のアミノ酸配列における359~560位のアミノ酸残基からなる可溶性C末端断片またはそのバリアントとがジスルフィド結合によって連結した可溶性全長型GPC3、あるいは(c)人種間および/または個人間において天然に生じ得るそれらの変異体である。このような変異体は、(a)N末端断片またはそのバリアント、または(b)可溶性全長型GPC3またはそのバリアントに対して、人種間および/または個人間において天然に生じ得る1個以上のアミノ酸残基の変異(例、置換、挿入、欠失)が導入されたものである。このような変異体におけるアミノ酸残基の変異の個数は、例えば1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~15個、さらにより好ましくは1~10個、特に好ましくは1個、2個、3個、4個又は5個であってもよい。
本発明では、イムノアッセイとは、可溶性GPC3に対する1種以上の抗体を用いる可溶性GPC3のイムノアッセイをいう。抗体としては、例えば、ポリクローナル抗体、およびモノクローナル抗体が挙げられる。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体である。抗体はまた、アイソタイプにより特定することができる。このようなアイソタイプとしては、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、およびIgYが挙げられる。好ましくは、抗体は、IgG、IgM、またはIgAであり、より好ましくはIgG、またはIgMであり、さらにより好ましくはIgGである。抗体はさらに、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であってもよい。抗体はまた、可変領域および定常領域を各々含む重鎖および軽鎖を含む全長抗体もしくはその断片であってもよい。抗体断片としては、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、およびFvが挙げられる。また、抗体は、単鎖抗体(scFv)やVHH抗体であってもよい。
本発明で用いられる、可溶性GPC3に対する抗体は、1種以上である限り特に限定されず、1種、2種、3種、4種、または5種であってもよい。本発明において可溶性GPC3に対する2種以上の抗体が用いられる場合、このような2種以上の抗体は、同一または異なるエピトープを認識することができる。好ましくは、このような2種以上の抗体は、異なるエピトープを認識してもよい。可溶性GPC3のイムノアッセイにおいて利用可能なエピトープ(例、サンドイッチアッセイで利用可能な異なる2種以上のエピトープ)、および当該エピトープに対する抗体としては種々のものが知られているので(例、国際公開第2015/097928号、国際公開第2004/038420号、国際公開第2004/022739号を参照)、本発明では、このような既知のエピトープおよびそれに対する抗体を用いてもよい。また、可溶性GPC3に対する抗体は市販されているため、本発明では市販抗体を用いることもできる。簡便なイムノアッセイ等の観点から、可溶性GPC3に対する1種または2種の抗体の使用が好ましい。本発明で用いられる、可溶性GPC3に対する抗体は、GPC3のN末端断片中の領域に結合する能力を有する抗体であることが好ましく、GPC3のN末端断片中の領域に特異的に結合する能力を有する抗体であることがより好ましい。
イムノアッセイは、可溶性GPC3に対する1種以上の抗体を用いる任意のイムノアッセイにより行うことができる。このようなイムノアッセイとしては、例えば、化学発光イムノアッセイ(CLIA)〔例、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)〕、免疫比濁法(TIA)、酵素免疫測定法(EIA)(例、直接ELISA、間接ELISA、競合ELISA、およびサンドイッチELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、ラテックス凝集反応法、蛍光イムノアッセイ(FIA)、およびイムノクロマトグラフィー法、ウェスタンブロッティング、免疫染色が挙げられる。
イムノアッセイはまた、可溶性GPC3に対する標識抗体および固相抗体を含む、可溶性GPC3に対する2種以上の抗体を用いる任意のイムノアッセイにより行うことができる。標識抗体は、標識物質で標識された抗体またはイムノアッセイの工程において標識物質で標識される抗体である。標識物質としては、例えば、蛍光物質、発光物質、色素、および酵素が挙げられる。固相抗体は、固相に固定された抗体またはイムノアッセイの工程で固相に固定される抗体である。固相としては、例えば、粒子(例、マイクロ粒子、ナノ粒子、マイクロビーズ、ナノビーズ、マイクロスフェア、ナノスフェア)、支持体(例、メンブレン)、および基板(例、プレート)が挙げられる。固相は、磁性を有する固相(例、磁性粒子)であってもよい。
イムノアッセイはまた、任意の様式において行うことができる。このような様式としては、例えば、直接法、間接法、競合法、およびサンドイッチ法が挙げられる。好ましくは、イムノアッセイは、可溶性GPC3の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体を用いるサンドイッチイムノアッセイにより行われてもよい。このようなサンドイッチイムノアッセイでは、可溶性GPC3の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体として、可溶性GPC3に対する標識抗体および固相抗体を含む2種以上の抗体が用いられる。簡便なイムノアッセイ等の観点から、イムノアッセイは、可溶性GPC3中の異なる2種のエピトープに対する2種の抗体(標識抗体および固相抗体)を用いるサンドイッチイムノアッセイにより行われてもよい。可溶性GPC3の異なる2種のエピトープに対する2種の抗体(標識抗体および固相抗体)は、N末端断片の異なるエピトープに対する2種の抗体であっても、C末端断片の異なるエピトープに対する2種の抗体であってもよい。あるいは、このような2種の抗体は、N末端断片のエピトープに対する1種の抗体と、C末端断片のエピトープに対する1種の抗体との組合せであってもよい。好ましくは、このような2種の抗体は、N末端断片の異なるエピトープに対する2種の抗体である。
本発明による可溶性GPC3含有検体の処理方法は、可溶性GPC3含有検体を還元剤と混合することを含む。これにより、可溶性GPC3含有検体および還元剤の混合液が生成する。
可溶性GPC3含有検体は、上述の可溶性GPC3を含有する任意の検体である。可溶性GPC3含有検体としては、例えば、被験体から得られる液体検体(例、血液、リンパ液、尿、乳汁、唾液、涙液)、被験体から得られる組織の抽出液検体、被験体から回収できる洗浄液検体(例、気管支等の粘膜組織を洗浄して得られるもの)、被験体由来の細胞培養物から得られる検体、および組換え可溶性GPC3を含む検体(例、可溶性GPC3標品)、ならびにこれらの検体を処理(例、分画)して得られる液体検体が挙げられる。可溶性GPC3を豊富に含む検体の簡便な入手等の観点から、可溶性GPC3含有検体は、好ましくは、血液検体(例、全血、血清、血漿)である。
特定の実施形態では、可溶性GPC3含有検体は、特定の状態にある被験体から得られる検体であってもよい。このような被験体としては、例えば、特定の疾患に罹患している被験体、および特定の疾患に罹患している可能性がある被験体が挙げられる。特定の疾患としては、例えば、癌(例、肝臓癌、前立腺癌、悪性黒色腫)、肝臓疾患(例、肝炎、肝硬変)が挙げられる(例えば、国際公開第2004/038420号;国際公開第2007/081790号;国際公開第2005/039380;Detection of glypican-3-specific CTLs in chronic hepatitis and liver cirrhosis,Oncology Reports 22,p.149-54,2009を参照)。
可溶性GPC3含有検体を還元剤と混合する場合、任意の還元剤を使用することができる。このような還元剤としては、例えば、2-(ジメチルアミノ)エタンチオール(DEAET)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、チオグリセロール、亜硫酸ナトリウム、およびボロハイドライド、ならびにそれらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等の一価の金属塩、およびカルシウム塩、マグネシウム塩等の二価の金属塩)、無機塩(例、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩、およびアンモニウム塩)、有機塩(例、アルキル基で置換されたアンモニウム塩)、および酸付加塩(例、硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸等の無機酸との塩、および酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸との塩)が挙げられる。溶液中で高度に安定である還元剤の使用等の観点では、DEAET、もしくはTCEP、またはそれらの塩が好ましい。
還元剤は、陰性検体からの検出シグナル強度(例、カウント)を低減できる終濃度で用いることができる。終濃度とは、混合の際の濃度である。したがって、終濃度は、混合により生成する混合液中の濃度としても表現できる。このような終濃度は、例えば0.05~1,000mM、好ましくは0.5~500mM、より好ましくは1~300mM、さらにより好ましくは3~200mMである。
可溶性GPC3含有検体および還元剤の混合では、可溶性GPC3含有検体を界面活性剤とさらに混合することを含んでいてもよい。このような場合、可溶性GPC3含有検体、還元剤、および界面活性剤の混合液が生成する。
界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、および陽イオン性界面活性剤、ならびにそれらの塩が挙げられる。塩は、上述のものと同様である。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルを挙げることができる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(Tween40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80)が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100)、ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル(Triton X-114)、ポリオキシエチレン(30)オクチルフェニルエーテル(Triton X-305)、およびポリオキシエチレン(40)オクチルフェニルエーテル(Triton X-405)が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij35)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij58)が挙げられる。非イオン性界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)、およびポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100)が挙げられる。両イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホベタイン型界面活性剤が挙げられる。スルホベタイン型界面活性剤としては、例えば、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)、3-[3-コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシプロパンスルホナート(CHAPSO)、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、およびN-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネートが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、N-ラウロイルサルコシンナトリウム(NLS)ドデシル硫酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびデオキシコール酸塩が挙げられる。陽イオン界面活性剤としては、例えば、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドが挙げられる。好ましくは、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、もしくは両イオン性界面活性剤、またはそれらの塩である。
界面活性剤は、陰性検体からの検出シグナル強度を低減する還元剤の効果を増強できる、および/または検体のマトリックス効果を低減できる終濃度で用いることができる。終濃度とは、混合の際の濃度である。したがって、終濃度は、混合により生成する混合液中の濃度としても表現できる。このような終濃度は、例えば0.005~10重量%、好ましくは0.01~9重量%、より好ましくは0.02~7.5重量%、さらにより好ましくは0.05~6重量%、特に好ましくは0.05~5重量%である。
好ましくは、還元剤および界面活性剤は、陰性検体からの検出シグナル強度の低減、および/または検体のマトリックス効果の低減において効果を増強することができる比率で用いることができる。このような比率は、還元剤1mMあたりの界面活性剤の濃度範囲により規定することができる。還元剤1mMあたりの界面活性剤の濃度範囲は、例えば0.000025~3重量%、好ましくは0.00005~0.1重量%、より好ましくは0.0005~0.01重量%、さらにより好ましくは0.005~0.05重量%である。
可溶性GPC3含有検体が還元剤および界面活性剤の双方と混合される場合、混合は、同時または別々に行うことができる。混合が同時に行われる場合、可溶性GPC3含有検体を、還元剤および界面活性剤の混合液と混合することができる。混合が別々に行われる場合、可溶性GPC3含有検体を、先ず還元剤、次に界面活性剤と混合してもよく、または先ず界面活性剤、次に還元剤と混合してもよい。
還元剤および/または界面活性剤は、水溶液中に溶解して用いることができる。このような水溶液としては、例えば、水(例、蒸留水、滅菌水、滅菌蒸留水、純水)、および緩衝液が挙げられる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、MES緩衝液、クエン酸緩衝液、Tris緩衝液、炭酸緩衝液、HPEPS緩衝液、MOPS緩衝液が挙げられる。緩衝液のpHは、還元剤の種類および濃度等の因子に応じて変動するが、還元剤の効果の向上等の観点から、1.0~9.0(好ましくは4.0~6.0)であってもよい。所望のpH範囲で還元剤の効果を安定して発揮させる等の観点から、水溶液は、好ましくは緩衝液である。水溶液は、有機溶媒(例、アルコール)等の他の成分を含んでいてもよい。可溶性GPC3含有検体と、還元剤および/または界面活性剤を含む水溶液とで混合されるべき容量の比率(可溶性GPC3含有検体:還元剤および/または界面活性剤を含む水溶液)は、例えば10:1~1:10であり、好ましくは5:1~1:5であり、より好ましくは2:1~1:2である。
混合は、還元剤単独、または還元剤および界面活性剤の双方による検体の処理に十分な条件下で行われる。このような温度条件は、例えば15~60℃、好ましくは20~50℃、より好ましくは25~45℃である。混合時間は、例えば、30秒以下である。迅速な処理等の観点から、混合時間は、好ましくは20秒以下であり、より好ましくは15秒以下である。このような条件下で混合することにより、陰性検体からの検出シグナル強度を低減することができる。
本発明の方法は、混合後に、さらに混合液をインキュベートすることを含んでいてもよい。インキュベート時間は、還元剤の種類および濃度、界面活性剤の併用の有無、界面活性剤の種類および濃度、混合時間、および検出シグナル強度において所望される低減度、ならびに抗体を用いた測定(イムノアッセイ)が行われる場合には、それに要する時間等の因子に応じて変動するが、例えば120分以下、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。迅速な処理等の観点から、インキュベート時間は、さらにより好ましくは20分以下であり、特に好ましくは10分以下、または5分以下であってもよい。インキュベート温度は、上述の混合における温度条件と同様である。
本発明はまた、下記(a)および(b)を含む、可溶性GPC3のイムノアッセイ方法を提供する:
(a)可溶性GPC3含有検体を還元剤と混合すること;および
(b)(a)で得られた混合液中の可溶性GPC3量を、可溶性GPC3に対する1種以上の抗体を用いて測定すること。
可溶性GPC3のイムノアッセイ方法における各種要素の定義、例、および好ましい例は、本発明による可溶性GPC3含有検体の処理方法において述べたものと同様である。
工程(a)は、本発明による可溶性GPC3含有検体の処理方法と同様にして行うことができる。工程(b)は、上述のイムノアッセイにより行うことができる。工程(a)および(b)は、並行してまたは別々に行うことができる。例えば、工程(a)および(b)が並行して行われる場合、可溶性GPC3含有検体、還元剤(および界面活性剤)、ならびに可溶性GPC3に対する1種以上の抗体を同時に混合することにより、還元剤(および界面活性剤)による可溶性GPC3含有検体の処理と抗原抗体反応を同時に行うことができる。しかし、陰性検体からの検出シグナル強度(例、カウント)を十分に低減させるためには、還元剤(および界面活性剤)による可溶性GPC3含有検体の処理を十分に行い、次いで、可溶性GPC3に対する1種以上の抗体を用いた抗原抗体反応により可溶性GPC3量を測定することが好ましい。また、本発明で用いられる抗体がジスルフィド結合を含む場合、抗体と還元剤を長時間共存させると、還元剤は、抗体中のジスルフィド結合の切断により抗体を破壊するので、イムノアッセイの測定精度に影響し得る。したがって、本発明で用いられる抗体がジスルフィド結合を含む場合、工程(a)および(b)は、別々に行われることが好ましい。勿論、本発明で用いられる抗体がジスルフィド結合を含まない場合(例、単鎖抗体)、工程(a)および(b)を並行して行うこともまた好ましい。
本発明はさらに、下記(a)および(b)を含む、可溶性GPC3のイムノアッセイ試薬を提供する:
(a)還元剤;および
(b)可溶性GPC3に対する1種以上の抗体。
本発明の試薬は、さらに(c)界面活性剤を含んでいてもよい。
構成成分(a)~(c)の還元剤、抗体、および界面活性剤の定義、例、および好ましい例は、本発明による可溶性GPC3含有検体の処理方法において述べたものと同様である。
特定の実施形態では、本発明の試薬は、可溶性GPC3に対する1種以上の抗体が、可溶性GPC3中の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体であり、かつ、前記試薬がサンドイッチイムノアッセイ用である試薬であってもよい。好ましくは、このような試薬は、上記2種以上の抗体として、可溶性GPC3に対する標識抗体および/または固相抗体を含む。あるいは、このような試薬は、標識物質で標識された標識抗体および/または固相に固定された固相抗体を含まない場合、標識物質および/または固相を含んでいてもよい。標識物質としては、例えば、蛍光物質、発光物質、色素、および酵素が挙げられる。標識物質が酵素である場合、このような試薬は、酵素の基質(例、検出シグナルを発生する基質、または酵素により検出シグナルを発生する生成物に変換される基質、あるいは、検出シグナルを発生する基質、または酵素により検出シグナルを発生する生成物に変換される基質を利用する他の酵素反応と共役し得る反応における基質)を含んでいてもよい。固相は、上述したものと同様である。
本発明の試薬は、特定の状態の判定(例、疾患の診断)に用いることができる。特定の状態(例、疾患)は、上述したものと同様である。好ましくは、本発明の試薬は、肝臓癌、前立腺癌等の癌の診断に用いることができる。
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
参考例1:グリピカン-3(GPC3)と抗体の反応性の確認
GPC3の1-559番目のアミノ酸残基からなる組み換えヒトGPC3(rhGPC3)(R&D Systems)抗原、またはGPC3高発現のヒト肝癌細胞HepG2の培養上清を用いたウェスタンブロッティングにより、抗GPC3抗体Aおよび抗GPC3抗体B(いずれもモノクローナルIgG抗体)の認識部位の解析を行った。
rhGPC3とHepG2培養上清にSDS-PAGE用サンプルバッファーを添加し、それぞれ1.4ngタンパク質/レーンと7.2ngタンパク質/レーンとなるようにrhGPC3とHepG2培養上清を5-20%のポリアクリルアミドゲル(スーパーセットエース5-20%、WAKO)にアプライした。電気泳動(30mA、60分)後、トランスブロット(登録商標)SDセミドライ電気泳動転写セル(Bio-Rad)を用いてブロッティングメンブレン(イモビロンISEQ、メルクミリポア)へタンパク質を転写した(15V、60分)。ブロッティングメンブレンを、TBS-Tで軽く洗った後、ブロッキング液(0.5%ECL Blоck(GEヘルスケア ライフサイエンス)、0.5%BSA、TBS-T)中で1時間、室温で振とうした。TBS-Tで2回洗浄後、ブロッティングメンブレンを、反応液(ブロッキング液をTBS-Tで2倍希釈)で1μg/mLに各々希釈した抗GPC3抗体Aと抗GPC3抗体Bとを含む溶液中で4℃で一晩振とうした。TBS-Tで4回洗浄後、ブロッティングメンブレンを、反応液で20,000倍希釈したPOD標識抗マウス F(ab’)(Jackson)を含む溶液中で1時間振とう後、TBS-Tで洗浄した。発色反応はSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Fisher Scientific)を用いて行い、ケミルミイメージングシステム(FUSION SYSTEM、ビルバー・ルーマット)を用いて現像した。ウェスタンブロッティングの解析結果を図1に示す。
その結果、抗GPC3抗体Aと抗GPC3抗体Bはいずれも、GPC3のN末端断片(358番目のアミノ酸残基よりもN末端側の断片)に相当する40kDaのバンドに反応した(図1)。このことは、抗GPC3抗体Aおよび抗GPC3抗体Bは、GPC3のN末端領域を認識することを示す。したがって、抗GPC3抗体Aおよび抗GPC3抗体Bが可溶性GPC3を認識することが確認された。
参考例2:抗GPC3抗体固相化粒子の調製
10mM MES緩衝液(pH5.0)中で磁性粒子に抗GPC3抗体Aを添加して、0.2mg/mL 抗GPC3抗体Aおよび0.01g/mL 磁性粒子を含む懸濁液を得た。この懸濁液をゆるやかに攪拌しながら5℃で1時間インキュベートして、抗GPC3抗体Aを磁性粒子に固相化した。その後、磁性粒子を磁石で集磁し、磁性粒子を洗浄液(50mM トリス緩衝液、150mM NaCl、2.0%BSA、pH7.2)にて洗浄し、抗GPC3抗体A固相化粒子を得た。測定では、抗GPC3抗体A固相化粒子を、粒子希釈液(50mM Tris緩衝液、1mM EDTA2Na、0.1% NaN、2.0%BSA、pH7.2)中に懸濁した。
参考例3:アルカリホスファターゼ標識抗GPC3抗体の調製
脱塩したアルカリホスファターゼ(ALP)とN-(4-マレイミドブチリロキシ)-スクシンイミド(GMBS)(終濃度0.3mg/mL)を混合し、30℃で1時間静置して、ALPをマレイミド化した。次いで、カップリング用反応液(100mMリン酸緩衝液、1mM EDTA2Na、pH6.3)中で、Fab’化した抗GPC3抗体Bと、マレイミド化ALPを1:1のモル比で混合し、25℃で1時間反応させた。Superdex200 10/300(GE Healthcare)のカラムクロマトグラフィーを用いて、精製用緩衝液(50mM MES緩衝液、150mM NaCl、0.1%NaN、pH8.0)で、流速0.5mL/minで主要ピークを分取して精製し、ALP標識抗GPC3抗体Bを得た。測定では、ALP標識抗GPC3抗体Bを標識体希釈液(50mM MES緩衝液、150mM NaCl、0.3mM ZnCl、1mM MgCl、0.1% NaN、2.0% BSA、pH6.8)中に懸濁した。
参考例4:可溶性GPC3の測定
前処理液20μLを反応槽に分注し、次に検体20μLを反応槽に分注した。前処理液と検体の混合液を、37℃で6.5分間インキュベーションした後、反応槽に抗GPC3抗体A固相化粒子50μLを分注し、混合液を攪拌した。混合液を37℃で8分間インキュベーションし、B/F分離・洗浄を行った。ALP標識抗GPC3抗体B 50μLを反応槽に分注した後、混合液を攪拌した。混合液を37℃で8分間インキュベーションし、B/F分離・洗浄を行った。その後、化学発光基質である3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’’-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン・2ナトリウム塩(AMPPD)を含むルミパルス基質液200μLを反応槽に分注し、混合液を攪拌した。その後、混合液を37℃で4分間インキュベーションし、次に、発光量をルミノメーターで測定した。実際の測定は、全自動化学発光酵素免疫測定システム(ルミパルスL2400(富士レビオ社製))にて行った。
実施例1:可溶性GPC3の測定における還元剤DEAETによる検体の前処理
健常人由来の血清検体(陰性検体)、およびα-フェトプロテイン(AFP)陽性である肝臓がん患者由来の血清検体(Trina社)(陽性検体)を、可溶性GPC3評価用検体として使用した。前処理液として、6.25mM~600mMの2-(ジメチルアミノ)エタンチオール塩酸塩(DEAET)を含むリン酸緩衝液(10mMリン酸緩衝液,6.25~600mM DEAET,pH6.0)を用いた。コントロール液として、10mMリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。陰性検体、陽性検体および緩衝液サンプル(10mMリン酸緩衝液)を、それぞれ、前処理液と体積比1:1で混合し、37℃で6.5分間反応させた(前処理あり)。同様に、陰性検体、陽性検体および緩衝液サンプルを、それぞれ、コントロール液と混合し、反応させた(前処理なし)。
各検体について、参考例4に記載の測定方法により可溶性GPC3を測定した。各検体のカウントを表1に示す。また、カウントから下記計算式により算出された(1)低下率(%)、(2)陽性と陰性のカウント差(%)、および(3)マトリックス差(%)を表1に示す。
計算式
(1)低下率(%)=100-(各DEAET濃度の「前処理あり」のカウント/「前処理なし」のカウント)×100
(2)陽性と陰性のカウント差(%)=(陽性検体のカウント平均値)/(陰性検体のカウント平均値)×100
(3)マトリックス差(%)=(緩衝液サンプルのカウント)/(陰性検体のカウント平均値)×100
低下率(%)は、個別検体における前処理の影響を評価するための指標である。陰性検体の低下率が大きいほど、また、陽性検体の低下率が小さいほど、陰性検体と陽性検体の測定値の差が広がり、両者をより区別可能となるため、高い診断感度を実現できる。したがって、陰性検体の低下率が大きいほど、また、陽性検体の低下率が小さいほど、可溶性GPC3の測定系の前処理条件として有用である。
陽性と陰性のカウント差(%)は、前処理による陽性検体と陰性検体のカウントの差を評価するための指標である。陽性と陰性のカウント差(%)が大きいほど、高い診断感度を実現できるため、可溶性GPC3の測定系に有用である。
マトリックス差(%)は、緩衝液サンプルと陰性検体のカウントの差を評価するための指標である。検体を用いたイムノアッセイでは、検体に含まれる物質によって免疫反応が影響することがある(マトリックス効果)。マトリックス差(%)が100%に近いほど、マトリックス効果の低減を実現できる。低減したマトリックス効果は、検体種に依存しない真値の出力を達成できるため、可溶性GPC3の測定系に有用である。
表1に示すように、陰性検体をDEAETで前処理した場合、検討した全ての濃度(6.25mM~600mM)において陰性検体のカウントは低下し、その低下率は非常に大きかった。一方、陽性検体をDEAETで前処理した場合、陽性検体のカウントは低下しないか、または低下しても陰性検体に比べてその低下率は小さかった。特に、DEAETを50mM~400mMの濃度で添加した場合、陽性と陰性のカウント差(%)は、非常に大きかった。このことは、還元剤DEAETによる検体の前処理が可溶性GPC3の測定における陽性検体と陰性検体との判別精度を向上できることを示す。また、DEAETで陰性検体を前処理した場合、マトリックス差が100%に近づき、マトリックス効果が低減された。したがって、還元剤DEAETによる検体の前処理は、可溶性GPC3の測定に有用であることが確認された。
実施例2:可溶性GPC3の測定における還元剤2MEAによる検体の前処理
前処理液として、6.25mM~100mMの2-メルカプトエチルアミン塩酸塩(2MEA)を含むリン酸緩衝液(10mMリン酸緩衝液,6.25~100mM 2MEA,pH6.0)を用いた。コントロール液として、10mMリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。陰性検体、陽性検体および緩衝液サンプルを、それぞれ、前処理液と体積比1:1で混合し、37℃で6.5分間反応させた(前処理あり)。同様に、陰性検体、陽性検体および緩衝液サンプルを、それぞれ、コントロール液と混合し、反応させた(前処理なし)。
各検体について、参考例4に記載の測定方法により可溶性GPC3を測定した。各検体のカウントを表2に示す。また、実施例1と同様に、低下率(%)、陽性と陰性のカウント差(%)、およびマトリックス差(%)を算出した。
表2に示すように、陰性検体を2MEAで前処理した場合、検討した全ての濃度(6.25mM~100mM)において陰性検体のカウントは低下し、その低下率は非常に大きかった。一方、陽性検体を2MEAで前処理した場合、陽性検体のカウントは低下しないか、または低下しても陰性検体に比べてその低下率は小さかった。このことは、還元剤2MEAによる検体の前処理が可溶性GPC3の測定における陽性検体と陰性検体との判別精度を向上できることを示す。また、2MEAで陰性検体を前処理した場合、マトリックス差が100%に近づき、マトリックス効果が低減された。したがって、還元剤2MEAによる検体の前処理は、可溶性GPC3の測定に有用であることが確認された。
実施例3:可溶性GPC3の測定における還元剤TCEPによる検体の前処理
前処理液として、6.25mM~100mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)を含むリン酸緩衝液(10mMリン酸緩衝液,6.25~100mM TCEP,pH6.0)を用いた。コントロール液として、10mMリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。陰性検体、陽性検体および緩衝液サンプルを、それぞれ、前処理液と体積比1:1で混合し、37℃で6.5分間反応させた(前処理あり)。同様に、陰性検体、陽性検体および緩衝液サンプルを、それぞれ、コントロール液と混合し、反応させた(前処理なし)。
各検体について、参考例4に記載の測定方法により可溶性GPC3を測定した。各検体のカウントを表3に示す。また、実施例1と同様に、低下率(%)、陽性と陰性のカウント差(%)、およびマトリックス差(%)を算出した。
表3に示すように、陰性検体をTCEPで前処理した場合、検討した全ての濃度(6.25mM~100mM)において陰性検体のカウントは低下し、その低下率は非常に大きかった。一方、陽性検体をTCEPで前処理した場合、陽性検体のカウントは低下しないか、または低下しても陰性検体に比べてその低下率は小さかった。このことは、還元剤TCEPによる検体の前処理が可溶性GPC3の測定における陽性検体と陰性検体との判別精度を向上できることを示す。また、TCEPで陰性検体を前処理した場合、マトリックス差が100%に近づき、マトリックス効果が低減された。したがって、還元剤TCEPによる検体の前処理は、可溶性GPC3の測定に有用であることが確認された。
(実施例1~3のまとめ)
実施例1~3の結果を考慮すると、還元剤による検体の前処理は、還元剤の種類および構造にかかわらず、可溶性GPC3の測定における陽性検体と陰性検体との判別精度を向上できると考えられる。また、還元剤による陰性検体の前処理は、マトリックス効果の低減により、検体種に依存しない真値の出力を実現できると考えられる。したがって、還元剤による検体の前処理は、可溶性GPC3の測定に有用である。
実施例4:可溶性GPC3の測定における還元剤と界面活性剤の組合せによる検体の前処理
前処理液として、表4Aに示す試験例2~11のリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。試験例2~11のリン酸緩衝液は、還元剤としてDEAET、および界面活性剤として3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、またはポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween20)を含んでいた。コントロール液として、表4Aに示す試験例1の10mMリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。陰性検体、陽性検体および緩衝液サンプルを、それぞれ、前処理液と体積比1:1で混合し、37℃で6.5分間反応させた(前処理あり)。同様に、陰性検体、陽性検体および緩衝液サンプルを、それぞれ、コントロール液と混合し、反応させた(前処理なし)。
各検体について、参考例4に記載の測定方法により可溶性GPC3を測定した。各検体のカウントを表4Bに示す。また、実施例1と同様に、低下率(%)、陽性と陰性のカウント差(%)、およびマトリックス差(%)を算出した。
表4に示すように、陰性検体を還元剤と界面活性剤の組合せで前処理した場合、検討した全ての界面活性剤濃度(各0.1~10重量%)において陰性検体のカウントは低下し、その低下率は非常に大きかった。一方、陽性検体を還元剤と界面活性剤の組合せで前処理した場合、陽性検体のカウントの低下率は陰性検体に比べて小さかった。特に、界面活性剤を所定の濃度で添加した場合(0.1~2.5重量% CHAPS、および0.1~10重量% Tween20)、陽性と陰性のカウント差(%)は、非常に大きかった。また、還元剤と界面活性剤の組合せで陰性検体を前処理した場合、マトリックス差がより100%に近づき、マトリックス効果をさらに低減された。このことは、還元剤と界面活性剤の組合せによる検体の前処理が可溶性GPC3の測定における陽性検体と陰性検体との判別精度を向上できること、および検体のマトリックス効果を低減できることを示す。したがって、還元剤と界面活性剤の組合せによる検体の前処理は、可溶性GPC3の測定に有用であることが確認された。

Claims (15)

  1. 可溶性GPC3含有検体を還元剤と混合することを含む、可溶性GPC3のイムノアッセイにおける可溶性GPC3含有検体の処理方法であって、
    イムノアッセイが、可溶性GPC3中の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体を用いるサンドイッチイムノアッセイである、方法。
  2. 還元剤が、0.05~1,000mMの終濃度で用いられる、請求項1記載の方法。
  3. 可溶性GPC3含有検体を界面活性剤とさらに混合することを含む、請求項1または2記載の方法。
  4. 界面活性剤が、0.005~10重量%の終濃度で用いられる、請求項3記載の方法。
  5. 界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、もしくは両イオン性界面活性剤、またはそれらの塩である、請求項3または4記載の方法。
  6. 可溶性GPC3含有検体が血液検体である、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
  7. 可溶性GPC3含有検体が、癌に罹患している被験体から得られる、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
  8. 癌が肝臓癌である、請求項7記載の方法。
  9. 下記(a)および(b)を含む、可溶性GPC3のイムノアッセイ方法:
    (a)可溶性GPC3含有検体を還元剤と混合すること;および
    (b)(a)で得られた混合液中の可溶性GPC3量を、可溶性GPC3中の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体を用いてサンドイッチイムノアッセイにより測定すること。
  10. 可溶性GPC3含有検体を界面活性剤とさらに混合することを含む、請求項9記載の方法。
  11. 界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、もしくは両イオン性界面活性剤、またはそれらの塩である、請求項10記載の方法。
  12. 下記(a)および(b)を含む、可溶性GPC3のサンドイッチイムノアッセイ試薬:
    (a)還元剤;および
    (b)可溶性GPC3中の異なる2種以上のエピトープに対する異なる2種以上の抗体
  13. さらに(c)界面活性剤を含む、請求項12記載のサンドイッチイムノアッセイ試薬。
  14. 界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、もしくは両イオン性界面活性剤、またはそれらの塩である、請求項13記載のサンドイッチイムノアッセイ試薬。
  15. 前記試薬が癌の診断用である、請求項12~14のいずれか一項記載のサンドイッチイムノアッセイ試薬。
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