JP7842340B2 - 構造部材 - Google Patents

構造部材

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Description

本開示は、車体用の構造部材に関する。
自動車等の車体に用いられる構造部材には、車体の衝突時等に入力される荷重に対する耐力が要求される。例えば、車体の衝突時に軸方向の圧縮力が入力され得る構造部材は、軸圧縮力に対して高い耐力を発揮するように構成される。しかしながら、構造部材が実際の車体に設けられた状態では、構造部材に対し、重心軸から例えば高さ方向にずれた位置に軸圧縮力が負荷されることがある。この場合、構造部材は、軸圧縮力に加えて曲げモーメントを受けることになる。
例えば、特許文献1には、ロッカ骨格部材及びフロアクロスメンバを含む自動車の車体構造が開示されている。フロアクロスメンバは、自動車の側面衝突時に軸圧縮力が入力される構造部材である。特許文献1では、従来、ロッカ骨格部材の断面の図心に対してフロアクロスメンバの断面の図心が下方に大きく変位していたため、側面衝突時の荷重によってフロアクロスメンバに曲げモーメントが作用すると説明されている。そのため、特許文献1は、車幅方向に沿った凸部をフロアパネルに形成し、フロアクロスメンバとフロアパネルの凸部とで画定される閉断面の図心を自動車の高さ方向においてロッカ骨格部材の断面の図心に接近させることを提案している。特許文献1には、このような構成により、側面衝突によって車体構造に入力される荷重は、曲げモーメントではなく、軸力としてフロアクロスメンバに作用すると記載されている。
特開2010-95218号公報
近年、軽量で頑丈な自動車の実現に向け、車体用の構造部材には、例えばハイテンや超ハイテン等といった高強度の素材が使用されている。素材の高強度化に伴って構造部材を薄肉化した場合、構造部材において軸圧縮力による弾性座屈が生じやすくなる。弾性座屈は、素材の強度に関係なく、構造部材を薄肉化するほど発生しやすくなる。構造部材の断面形状は、弾性座屈の発生を回避することができるように設計されていることが好ましい。構造部材には軸圧縮力及び曲げモーメントの双方が負荷されることがあるため、軸圧縮力及び曲げモーメントが同時に負荷された場合にも構造部材が高い耐力を発揮することができるように、構造部材の断面形状が設計されることが好ましい。
例えば、軸圧縮力に対する耐力(耐軸圧縮力性能)を向上させる場合、一般的には、構造部材の断面において、軸圧縮力を実質的に支持することができない非有効部が存在しないように平行部を短くする。平行部を短くすると、構造部材の断面のサイズは小さくなる。しかしながら、曲げモーメントに対する耐力(耐曲げモーメント性能)を向上させるためには、構造部材の断面サイズを大きくする必要がある。すなわち、従来の構造部材の断面形状の設計では、耐軸圧縮力性能の向上と耐曲げモーメント性能の向上とがトレードオフとなっている。したがって、耐軸圧縮力性能と耐曲げモーメント性能とを同時に確保するためには、従来はなかった構造部材の断面形状を新たに考案する必要がある。
本開示は、耐軸圧縮力性能と耐曲げモーメント性能とを同時に確保することができる車体用の構造部材を提供することを課題とする。
本開示に係る車体用の構造部材は、天板と、2つの縦壁とを備える。2つの縦壁は、天板の両側縁に接続され、互いに対向する。構造部材の軸方向に垂直な断面において、構造部材の幅方向における天板の長さをW、構造部材の高さ方向における縦壁の長さをLとし、天板の板厚をt、縦壁の板厚をtとしたとき、構造部材は、L/W≧1.2及びt/t≦0.7を満たしている。
本開示に係る車体用の構造部材によれば、耐軸圧縮力性能と耐曲げモーメント性能とを同時に確保することができる。
図1は、実施形態に係る構造部材の斜視図である。 図2は、図1に示す構造部材の横断面図である。 図3は、2500MPa以上の引張強度を有する鋼板で形成された構造部材について、t/tと、基準の構造部材に対する最大モーメント発生時の軸力の比との関係を示す図である。 図4は、2500MPa以上の引張強度を有する鋼板で形成された構造部材について、L/Wと、基準の構造部材に対する最大モーメント発生時の軸力の比との関係を示す図である。 図5は、1470MPa以上の引張強度を有する鋼板で形成された構造部材について、t/tと、基準の構造部材に対する最大モーメント発生時の軸力の比との関係を示す図である。 図6は、1470MPa以上の引張強度を有する鋼板で形成された構造部材について、L/Wと、基準の構造部材に対する最大モーメント発生時の軸力の比との関係を示す図である。
実施形態に係る車体用の構造部材は、天板と、2つの縦壁とを備える。2つの縦壁は、天板の両側縁に接続され、互いに対向する。構造部材の軸方向に垂直な断面において、構造部材の幅方向における天板の長さをW、構造部材の高さ方向における縦壁の長さをLとし、天板の板厚をt、縦壁の板厚をtとしたとき、構造部材は、L/W≧1.2及びt/t≦0.7を満たしている(第1の構成)。
天板及び2つの縦壁を含む構造部材に対し、例えば重心軸から天板側にずれた位置に軸圧縮力が入力された場合、天板では圧縮変形が生じ、各縦壁のうち天板から離れた部位では引張変形が生じる。天板は、発生した圧縮応力によって弾性座屈をする可能性がある。弾性座屈が発生した場合、構造部材に所望の耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能を発揮させることが困難となる。そこで、実施形態に係る構造部材では、弾性座屈が生じやすい天板の板厚tを縦壁の板厚tと比較して大きくするとともに、幅方向における天板の長さWを高さ方向における縦壁の長さLと比較して小さくしている。より具体的には、構造部材の軸方向に垂直な断面において、天板の板厚t及び縦壁の板厚tは、t/t≦0.7を満たすように設定されている。また、構造部材の軸方向に垂直な断面において、天板の長さW及び縦壁の長さLは、L/W≧1.2を満たすように設定されている。このような構成により、構造部材に対して軸圧縮力が入力されたとき、天板の弾性座屈が生じにくくなり、軸圧縮力性能及び曲げモーメントに対する耐力の双方を同時に構造部材に発揮させることができる。すなわち、耐軸圧縮力性能と耐曲げモーメント性能とを同時に確保することができる。
天板及び縦壁は、1470MPa以上の引張強度を有する鋼板によって形成されていることが好ましく(第2の構成)、2500MPa以上の引張強度を有する鋼板によって形成されていることがより好ましい(第3の構成)。
第2又は第3の構成のように、天板及び縦壁が高強度材によって形成される場合、実施形態に係る構造部材は特に有効である。具体的に説明すると、1470MPa以上又は2500MPa以上の引張強度を有する鋼板(高強度材)を構造部材に使用する場合、軽量化を実現するため、構造部材が全体的に薄肉化されるのが通常である。しかしながら、構造部材が薄肉化された場合、構造部材では、軸圧縮力の入力時に弾性座屈が生じやすくなる。弾性座屈が生じた場合、構造部材は、高強度材に期待される耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能を発揮することができない。これに対して、実施形態に係る構造部材では、上述した通り、弾性座屈が生じやすい天板の板厚tが増加するとともに天板の長さWが減少していることで、弾性座屈が抑制される。そのため、構造部材は、軸圧縮力性能及び曲げモーメントに対して優れた耐力を発揮することができる。一方、実施形態に係る構造部材では、弾性座屈が生じにくい縦壁が薄肉化されていることにより、軽量化を図ることができる。したがって、実施形態に係る構造部材によれば、高強度材に期待される耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能の向上と、高強度材の採用に伴う構造部材の軽量化とを両立することができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
[構造部材の構成]
図1は、実施形態に係る車体用の構造部材10の斜視図である。構造部材10は、例えば、自動車の車体に用いられる。構造部材10は、例えば、自動車のフロアクロスメンバ、ルーフクロスメンバ、ダッシュクロスメンバ、ロアフロアクロスメンバ、サイドシル、又はトンネル等であってもよい。
図1に示すように、構造部材10は、長尺形状を有している。構造部材10は、天板11と、2つの縦壁121,122とを備える。構造部材10は、さらに、2つのフランジ131,132と、2つの第1稜線部141,142と、2つの第2稜線部151,152とを備えている。
天板11は、構造部材10の軸方向(長手方向)に延びている。縦壁121,122は、互いに対向している。縦壁121,122は、天板11の両側縁に接続されている。一方の縦壁121は、天板11において構造部材10の軸方向に延びる2つの側縁のうち、一方の側縁に接続されている。他方の縦壁122は、天板11の他方の側縁に接続されている。縦壁121は、第1稜線部141を介して天板11に接続されている。縦壁122は、第1稜線部142を介して天板11に接続されている。縦壁121,122及び第1稜線部141,142は、天板11に沿って構造部材10の軸方向に延びている。
フランジ131,132は、それぞれ、縦壁121,122から構造部材10の外側に向かって突出している。一方のフランジ131は、天板11の反対側で一方の縦壁121に接続されている。フランジ131は、第2稜線部151を介して縦壁121に接続されている。他方のフランジ132は、天板11の反対側で他方の縦壁122に接続されている。フランジ132は、第2稜線部152を介して縦壁122に接続されている。フランジ131,132及び第2稜線部151,152は、縦壁121,122と同様、構造部材10の軸方向に延びている。
構造部材10は、典型的には金属板によって形成される。天板11及び縦壁121,122を含む構造部材10は、鋼板によって形成されていてもよい。当該鋼板は、構造部材10の高強度化の観点から、1470MPa以上の引張強度を有することが好ましく、2500MPa以上の引張強度を有することがより好ましい。構造部材10は、例えば、鋼板等の金属板にプレス加工を施すことによって製造することができる。このプレス加工は、冷間プレスであってもよいし、熱間プレス(ホットスタンプ)であってもよい。
構造部材10は、車体に設けられた状態において、他の構造部材20に固定される。図1に示す例において、構造部材20は平板状を有している。構造部材20は、構造部材10のフランジ131,132側の開口を封鎖している。構造部材20は、例えば溶接によってフランジ131,132に接合されている。
構造部材20は、構造部材10と同様、典型的には金属板で形成される。構造部材20は、鋼板で形成されていてもよい。構造部材10,20が鋼板で形成されている場合、構造部材20に用いられる鋼板の引張強度は、構造部材10に用いられる鋼板の引張強度以下であってもよいし、構造部材10に用いられる鋼板の引張強度よりも大きくてもよい。
図2は、構造部材10の横断面図である。構造部材10の横断面とは、構造部材10をその軸方向に対して垂直な平面で切断した断面である。以下、構造部材10の横断面において、縦壁121,122が対向する方向を構造部材10の幅方向、軸方向及び幅方向に対して垂直な方向を構造部材10の高さ方向という。
図2を参照して、天板11は、構造部材10の横断面視で実質的に幅方向に延びている。図2に示す例において、天板11は、構造部材10の横断面視で幅方向に対して平行に配置されている。ただし、天板11は、構造部材10の横断面視で幅方向に対して若干傾斜していてもよい。
縦壁121,122は、それぞれ、構造部材10の横断面視で概ね高さ方向に延びている。図2に示す例において、縦壁121,122は、天板11側からフランジ131,132側に向かうにつれて互いに離間するように、構造部材10の高さ方向に対して傾斜している。ただし、構造部材10の横断面視で、縦壁121,122の少なくとも一方が高さ方向と平行であってもよい。天板11に対する縦壁121の角度は、天板11に対する縦壁122の角度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1稜線部141,142は、構造部材10の横断面視で実質的に又は概ね円弧状を有する。第1稜線部141は、天板11と一方の縦壁121との間に配置され、天板11と縦壁121との間のコーナー部を構成する。第1稜線部142は、天板11と他方の縦壁122との間に配置され、天板11と縦壁122との間のコーナー部を構成する。
第2稜線部151,152は、構造部材10の横断面視で実質的に又は概ね円弧状を有する。第2稜線部151は、縦壁121とフランジ131との間に配置され、縦壁121とフランジ131との間のコーナー部を構成する。第2稜線部152は、縦壁122とフランジ132との間に配置され、縦壁122とフランジ132との間のコーナー部を構成する。
構造部材10の横断面において、幅方向における天板11の長さを構造部材10の幅W、高さ方向における縦壁121,122の長さを構造部材10の高さLとしたとき、高さLは幅Wよりも大きい。より具体的には、構造部材10は、その横断面においてL/W≧1.2を満たしている。構造部材10は、その横断面においてL/W≧1.5を満たすことがより好ましい。
幅Wは、構造部材10の横断面において、天板11の外表面の延長線と一方の縦壁121の外表面の延長線との交点i1から、天板11の外表面の延長線と他方の縦壁122の外表面の延長線との交点i2までの幅方向の距離である。高さLは、構造部材10の横断面において、例えば、第2稜線部151,152の外表面上のフランジ131,132側R止まりから交点i1,i2までの高さ方向の距離である。図2に示す例において、第2稜線部151の外表面上のフランジ131側のR止まりから交点i1までの高さ方向の距離(縦壁121側の高さ)は、第2稜線部152の外表面上のフランジ132側のR止まりから交点i2までの高さ方向の距離(縦壁122側の高さ)と実質的に等しい。縦壁121側の高さが縦壁122側の高さと異なる場合には、両者のうち大きい方が構造部材10の高さLとなる。
幅Wは、例えば、カルマンの有効幅理論に基づく以下の式を用いて決定することができる。以下の式において、tは板厚(t=t)、kは座屈係数、Eはヤング率、νはポアソン比、σは降伏応力である。構造部材10の横断面の幅Wは、以下の式によって計算される有効幅be以下であることが好ましい。有効幅beの計算では、周辺単純支持平板の圧縮を想定し、k=4とすることができる。
構造部材10の横断面において、天板11は板厚tを有する。天板11は、構造部材10の横断面視で、実質全体にわたって板厚tを有している。構造部材10の横断面において、縦壁121,122は、それぞれ板厚tを有する。縦壁121,122は、構造部材10の横断面視で、実質全体にわたって板厚tを有している。天板11の板厚tは、縦壁121,122の板厚tよりも大きい。より具体的には、構造部材10は、その横断面においてt/t≦0.7を満たしている。本実施形態の例において、縦壁121の板厚tは縦壁122の板厚tと等しいが、縦壁121の板厚tと縦壁122の板厚tとが異なっていてもよい。縦壁121の板厚tと縦壁122の板厚tとが異なる場合、縦壁121の板厚t及び縦壁122の板厚tの双方がt/t≦0.7を満たしていてもよいし、縦壁121,122のうち一方のみの板厚tがt/t≦0.7を満たしていてもよい。縦壁121の板厚tと縦壁122の板厚tとが異なる場合、少なくとも、縦壁121,122のうち高さが大きい方の縦壁の板厚tがt/t≦0.7を満たせばよい。縦壁121,122のうち高さが小さい方の縦壁の板厚tは、天板11の板厚tと等しくてもよい。構造部材10は、その横断面においてt/t≦0.5を満たすことがより好ましい。
構造部材10の素材として、例えばパッチワークブランク又はテーラードブランクを使用することにより、天板11の板厚tを縦壁121,122の板厚tよりも大きくすることができる。パッチワークブランクは、ブランク本体である金属板に補強材としての金属板を重ね、溶接等で両者を接合して形成された素材である。テーラードブランクは、テーラーウェルドブランクであってもよいし、テーラーロールドブランクであってもよい。テーラーウェルドブランクは、板厚が異なる金属板同士を突き合わせて溶接することで形成された素材である。テーラーロールドブランクは、金属板に圧延を施して板厚が異なる部位を形成した素材である。例えば、縦壁121,122の双方の板厚tが天板11の板厚tよりも小さい構造部材10の製造に際し、素材としてテーラーウェルドブランクを使用する場合、縦壁121に相当する金属板、天板11に相当する金属板、及び縦壁122に相当する金属板が接合される。一方、縦壁121,122の一方が天板11よりも小さい板厚を有し、縦壁121,122の他方が天板11と同じ板厚を有する場合は、縦壁121,122の一方に相当する金属板と、天板11及び縦壁121,122の他方に相当する金属板とを接合すればよいため、金属板同士の接合部の数を減少させることができる。
構造部材10の横断面において、天板11に連続する第1稜線部141,142の板厚は、天板11の板厚tと同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、第1稜線部141,142の少なくとも一部の板厚が天板11の板厚tと等しくなっている。構造部材10の横断面において、第1稜線部141,142は、その全体にわたって天板11の板厚tと同じ板厚を有することが好ましいが、第1稜線部141,142の一部のみが天板11の板厚tと同じ板厚を有していてもよい。例えば、構造部材10の横断面視で、第1稜線部141,142のうち、天板11側の部位が天板11の板厚tと同じ板厚を有し、縦壁121,122側の部位が縦壁121,122の板厚tと同じ板厚を有していてもよい。
構造部材10の横断面において、縦壁121,122にそれぞれ連続する第2稜線部151,152の板厚は、天板11の板厚t又は縦壁121,122の板厚tと同じであってもよいし、異なっていてもよい。構造部材10の横断面において、第2稜線部151,152にそれぞれ連続するフランジ131,132の板厚も、天板11の板厚t又は縦壁121,122の板厚tと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
他の構造部材20は、構造部材10のフランジ131,132に接合され、構造部材10とともに閉断面を構成する。構造部材20は、構造部材10,20の横断面視で実質的に又は概ね幅方向に延びている。構造部材20の板厚は、例えば、天板11の板厚t未満である。ただし、構造部材20の板厚は、天板11の板厚t以上であってもよい。また、構造部材20の板厚は、縦壁121,122の板厚tと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
[効果]
本実施形態に係る構造部材10は、他の構造部材20とともに形成する閉横断面において、縦壁121,122の板厚t/天板11の板厚tが0.7以下となるように構成されている。さらに、構造部材10は、当該閉横断面において、高さ方向における縦壁121,122の長さL/幅方向における天板11の長さWが1.2以上となるように構成されている。これにより、例えば車体の衝突によって構造部材10に対して重心軸から天板11側にずれた位置に軸圧縮力が入力され、軸圧縮力及び曲げモーメントの双方が同時に構造部材10に負荷された場合であっても、天板11の弾性座屈が生じにくくなる。よって、軸圧縮力及び曲げモーメントに対する高い耐力を構造部材10に発揮させることができ、構造部材10の耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能を同時に向上させることができる。
本実施形態に係る構造部材10は、1470MPa以上の引張強度を有する鋼板で形成されることが好ましく、2500MPa以上の引張強度を有する鋼板で形成されることがより好ましい。この場合、構造部材10の軽量化を実現しつつ、超ハイテンである高強度材に期待される耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能を得ることができる。具体的には、構造部材10では、弾性座屈が生じやすい天板11の板厚tを縦壁121,122との板厚tと比較して大きくし、天板11の長さWを縦壁121,122の長さLと比較して大きくしている。これにより、構造部材10に対して重心軸から天板11側にずれた位置に軸圧縮力が入力されたとき、天板11の弾性座屈を抑制することができる。そのため、構造部材10について、高強度材に期待される耐軸圧縮力性能と耐曲げモーメント性能を実現することができる。一方、弾性座屈が生じにくい縦壁121,122の板厚tは小さくなっているため、構造部材10の軽量化を実現することもできる。
本実施形態に係る構造部材10は、軸方向の全長にわたってL/W≧1.2及びt/t≦0.7を満たす横断面を有していてもよいし、軸方向の一部分において当該横断面を有していてもよい。例えば、L/W≧1.2及びt/t≦0.7を満たす横断面の軸方向における長さが10mm以上となるように構造部材10を構成することができる。構造部材10は、当該構造部材10の軸方向の全長の少なくとも1/6の範囲の横断面において、L/W≧1.2及びt/t≦0.7を満たすように構成されることが好ましい。この場合、構造部材10の軸方向の全長の少なくとも1/6の範囲において、等間隔の複数箇所で取得したt,t、L,Wの平均値がL/W≧1.2及びt/t≦0.7を満たしていればよい。L/W≧1.2及びt/t≦0.7を満たす横断面は、少なくとも、構造部材10の軸方向の端部側、すなわち軸圧縮力が入力される側の部位に設けられていることが好ましい。
本実施形態に係る構造部材10において、幅方向における天板11の長さWは、カルマンの有効幅理論に基づいて算出された有効幅be以下とすることができる。この場合、構造部材10に対して軸圧縮力が入力されたとき、天板11が幅方向の全長で荷重を支持することができ、天板11の座屈を防止することができる。
本実施形態に係る構造部材10において、天板11に連続する第1稜線部141,142は、天板11と同様、縦壁121,122の板厚よりも大きい板厚を有することができる。第1稜線部141,142は、少なくとも天板11側の部位において天板11の板厚tと同一の板厚を有することが好ましく、その全体にわたって天板11の板厚tと同一の板厚を有することがより好ましい。第1稜線部141,142を増肉することにより、構造部材10に対して重心軸から天板11側にずれた位置に軸圧縮力が入力されたとき、天板11及びその近傍での弾性座屈がより生じにくくなる。よって、構造部材10の耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能をさらに向上させることができる。
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
以下、実施例によって本開示をさらに詳しく説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
本開示に係る構造部材による効果を確認するため、市販の解析ソフトウェア(LS-DYNA,Livermore Software Technology Corporation(LSTC)製)を用い、軸圧縮力が入力されたときの構造部材の挙動について構造解析を実施した。解析では、上記実施形態で説明した構造部材10に関し、軸方向の一端側について軸方向(z方向)、幅方向(y方向)、及び高さ方向(x方向)の変位を拘束するとともに、x,z軸周りの回転を拘束し、軸方向の他端側についてx,y方向の変位及びx,z軸周りの回転を拘束した状態で、重心から天板11側に40mmオフセットした位置に他端側から軸圧縮荷重を入力した。そして、構造部材10の軸方向の中央位置での横断面における軸力(耐軸方向荷重)及びy軸周りのモーメントを確認した。
本解析では、t/t及びL/Wの条件を変化させ、t/t及びL/Wの軸力及びモーメントへの影響について調査した。表1にt/t及びL/Wの条件を示す。
本解析では、既存のフロアクロスメンバと同等のt/t及びL/Wを有する構造部材を基準とし、基準の構造部材に対する比で軸力及びモーメントを評価した。基準の構造部材については、既存のフロアクロスメンバに基づいて、引張強度(TS)980MPaクラス(引張強度:980MPa以上)の鋼板を素材とし、その板厚を全体にわたって一定とした。一方、基準以外の構造部材10の素材は、TS2500MPaクラス(引張強度:2500MPa以上)又はTS1470MPaクラス(引張強度:1470MPa以上)の鋼板とした。各構造部材とともに閉断面を形成する他の構造部材20については、1470MPaの引張強度を有する鋼板を素材とし、その板厚を基準の構造部材の板厚の1/2とした。
図3は、TS2500MPaクラスの構造部材10(No.2~No.6)について、t/tと、基準の構造部材(No.1)に対する最大モーメント発生時の軸力の比との関係を示す図である。図4は、TS2500MPaクラスの構造部材10について、L/Wと、基準の構造部材に対する最大モーメント発生時の軸力の比との関係を示す図である。構造部材に曲げモーメントが作用して曲げ変形が生じると高い軸力を得にくくなることが通常であるため、本解析では、最大モーメント発生時の軸力を評価し、最大モーメント発生時の軸力が大きくなるほど耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能が良好であると判断した。
No.2~No.6の構造部材10は、基準であるNo.1の構造部材に対して、約50%軽量となるように構成されている。図3及び図4に示すように、これらの構造部材10のうち、t/tを0.7以下とし、L/Wを1.2以上としたNo.2及びNo.3の構造部材10では、基準の構造部材と比較して最大モーメント発生時の軸力が大きくなった。図3及び図4より、最大モーメント発生時の軸力は、t/tが減少するほど、またL/Wが増加するほど大きくなることがわかる。
図5は、TS1470MPaクラスの構造部材10(No.7~No.11)について、t/tと、基準の構造部材(No.1)に対する最大モーメント発生時の軸力の比との関係を示す図である。図6は、TS1470MPaクラスの構造部材10について、L/Wと、基準の構造部材に対する最大モーメント発生時の軸力の比との関係を示す図である。
No.7~No.11の構造部材10は、基準であるNo.1の構造部材に対して、約30%軽量となるように構成されている。図5及び図6に示すように、素材の引張強度を1470MPa以上とした場合も、t/tを0.7以下とし、L/Wを1.2以上としたNo.7及びNo.8の構造部材10において、最大モーメント発生時の軸力が基準の構造部材と比較して大きくなった。図5及び図6より、素材の引張強度を2500MPa以上とした場合と同様、最大モーメント発生時の軸力は、t/tが減少するほど、またL/Wが増加するほど大きくなる傾向にあることがわかる。
以上の解析結果より、構造部材10の素材を高強度化し、それに伴って構造部材10を軽量化しても、t/t≦0.7及びL/W≦1.2を満たす場合、良好な耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能を確保できるといえる。特に、構造部材10を引張強度:2500MPa以上の鋼板によって形成する場合、構造部材10を大幅に軽量化しながら、優れた耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能を確保することができる。
なお、本解析では、天板11に連続する第1稜線部141,142のうち、その中心から天板11側の部位の板厚を天板11の板厚tと同一とした。また、フランジ131,132の板厚、及び、第2稜線部151,152のうち、その中心からフランジ131,132側の部位の板厚を天板11の板厚tと同一とした。ただし、構造部材10に対し、重心から天板11側にずれた位置に軸圧縮力を入力する条件では、フランジ131,132及び第2稜線部151,152には引張変形が生じるため、フランジ131,132及び第2稜線部151,152の板厚は、耐軸圧縮力性能及び耐曲げモーメント性能に実質的に影響しない。
10:構造部材
11:天板
121,122:縦壁

Claims (3)

  1. 車体用の構造部材であって、
    天板と、
    前記天板の両側縁に接続され、互いに対向する2つの縦壁と、
    を備え、
    前記構造部材は、鋼板によって形成されたホットスタンプ構造部材であり、
    前記構造部材の軸方向に垂直な断面において、
    前記構造部材の幅方向における前記天板の長さをW、前記構造部材の高さ方向における前記縦壁の長さをLとし、
    前記天板の板厚をt 、前記縦壁の板厚をtとしたとき、
    L/W≧1.2及びt/t≦0.7を満たす、構造部材。
  2. 請求項1に記載の構造部材であって、
    前記天板及び前記縦壁は、1470MPa以上の引張強度を有する鋼板によって形成されている、構造部材。
  3. 請求項2に記載の構造部材であって、
    前記天板及び前記縦壁は、2500MPa以上の引張強度を有する鋼板によって形成されている、構造部材。
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