JP7841983B2 - 鉄骨梁の設計方法 - Google Patents
鉄骨梁の設計方法Info
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Description
スチフナ補剛長さの設計については、スチフナにより補剛された鉄骨梁の耐力上昇を適切に評価した設計が必要であるが、現状確立されていない。
また、水平スチフナの断面の設計については、必要剛性に対して水平スチフナの断面を設計する手法は提案されているが、このような手法では安全側の設計式であるため水平スチフナが過剰な断面形状になるケースがある。
また、本発明では、従来の水平スチフナの断面の設計手法と比較して,補剛効果を確保しつつより合理的な断面設計が可能である。
図1、図2に示すように、本実施形態による鉄骨梁1は、H形鋼である。鉄骨梁1は、上フランジ2と下フランジ3と、ウェブ4と、を有している。鉄骨梁1は、水平方向に延び、両端部が柱12に接合されている。以下では、鉄骨梁1が延びる水平方向を長さ方向と表記する。長さ方向に直交する水平方向を幅方向と表記する。鉄骨梁1の説明において鉛直方向を高さ方向と表記する。図1、図2では、鉄骨梁1の長さ方向の一方の端部1aの近傍を示している。
スチフナ補剛部6は、ウェブ4の長さ方向の両方の端部近傍に設けられている。ウェブ4におけるスチフナ補剛部6以外の領域を「無補剛部7」と表記する。無補剛部7は、ウェブ4の長さ方向の中間部に設けられている。
スチフナ補剛部6の長さ方向の端部のうち、柱12に近接する側の端部を第1端部6aと表記する。スチフナ補剛部6の長さ方向の端部のうち、柱12と離間する側、すなわち、無補剛部7側の端部を第2端部6bと表記する。第1端部6aは、ウェブ4の長さ方向の端部4aに位置している。
スチフナ補剛長さ設計工程では、必要となるスチフナ補剛長さLstを以下のように設計する。
スチフナ補剛長さLstは、スチフナ補剛部6の第2端部6bに生じる曲げモーメントM2よりも無補剛部7の耐力Ma0が大きくなるように設計する。無補剛部7の耐力Ma0は、下式(1.1)および(1.2)により算定する。
ウェブ4の幅厚比が大きくなり、鉄骨梁1の最大耐力(WF0による無補剛部耐力Mmax)が無補剛部断面の全塑性モーメントMpを下回る場合についても適切な耐力評価が可能である。
ここで、スチフナ補剛長さLstの設計用の鉄骨梁1の端部1aの曲げモーメントM1は、下記の文献1による幅厚比指標WFを用いた最大耐力の評価式を用いて算定する。
文献1 五十嵐規矩夫、末國良太、篠原卓馬、王韜:鋼構造H形断面梁の耐力及び塑性変形能力評価のための新規幅厚比指標と幅厚比区分、日本建築学会構造系論文集(668)、pp.1865-1872、2011.10)
スチフナ補剛長さLstの算定においては、端部応力を大きく評価し安全側の設計をするため、最大耐力の下限値を取る形で導出された文献1の最大耐力の評価式を、最大耐力の上限値を取るように修正した下式(1.3)を用いて算出する。
図4に、スチフナ補剛部6が設けられた鉄骨梁1の設計用曲げ応力を示す。なお、上記の文献1においては最大耐力近似式をせん断耐力として表現しているが、本実施形態の鉄骨梁の設計方法においては、両辺にせん断スパンを乗じることで曲げモーメントに変換して表現している。
図5に、文献1による最大耐力近似式と本実施形態の鉄骨梁の設計方法における梁端部想定耐力の近似式を示す。
上記の鉄骨梁の設計方法によるスチフナ補剛長さLstの設計式の妥当性を検証するために大変形非線形解析(FEM解析)を実施し、スチフナ補剛長さLstと塑性変形能力との関係を確認した。
図6に解析ケースを示す。いずれのケースにおいても鉄骨梁はH形鋼である。梁断面は、H-650×200×6×13、せん断スパンは、4000mmと設定した。本解析ではスチフナ補剛長さLstをパラメータにした解析検討を実施した。
解析ケースCase2は、スチフナ補剛長さlstが必要スチフナ補剛長さLstを超える場合を想定した解析ケースである。必要スチフナ補剛長さLstに対するスチフナ補剛長さlstの比率は、1.00である。
梁端部の耐力上昇に伴い、スチフナ補剛部6と無補剛部7の境界に作用する曲げモーメントが全塑性耐力に達すると、スチフナ補剛部6と無補剛部7の境界に塑性ヒンジが形成され、2ヒンジ状態となるため、塑性変形能力が急激に低下するCase1のような変形状態になる可能性がある。このような破壊状況を防ぐために端部の応力上昇を考慮して存在応力が全塑性耐力を下回る位置まで水平スチフナ51,52を確保する上記のスチフナ補剛長さLstの設計(本実施形態の鉄骨梁の設計方法)は有効であることが確認できる。
水平スチフナ断面設計工程では、水平スチフナ51,52の断面を以下のように設計する。図11に、スチフナ5の配置と各種寸法の定義を示す。図12、図13に、水平スチフナの断面二次モーメントの算定位置を示す。
水平スチフナの断面二次モーメントIshは、下式(2.1a)より算定し、水平スチフナの必要断面二次半径reqishは、下式(2.1b)および下式(2.1c)より算定する。
文献2 日本建築学会:鋼構造許容応力度設計基準 第1版 2019年10月
文献3 五十嵐規矩夫、柳下義博:曲げせん断力を受ける補剛平板の弾性座屈性状と最適補剛剛性、日本建築学会構造系論文集、第80巻 第708号、pp.321-331、2015.2
文献4 五十嵐規矩夫、井川直大、柳下義博、三井和也:水平スチフナにより補剛されたウェブの座屈性状および水平スチフナの設計法、日本建築学会構造系論文集、第85巻 第773号、pp.957-967、2020.1
上記の鉄骨梁の設計方法による水平スチフナ51,52の断面の設計式の妥当性を検証するために大変形非線形解析(FEM解析)を実施した。
図14に解析ケースを示す。いずれのケースにおいても鉄骨梁はH形鋼である。梁断面は、H-650×200×8×11、せん断スパンは、1550mmと設定した。
解析ケースCase2の水平スチフナの断面は、上記の鉄骨梁の設計方法によって算出される水平スチフナの断面よりも安全側となる断面形状である。
縦スチフナ53の必要剛性は、日本建築学会「鋼構造許容応力度設計規準」において、サブパネルの辺長比βが1より小さい場合と1以上の場合とで算定式が場合分けされている。本実施形態では、水平スチフナの長さを、梁せいの1.2倍以上(3.3適用範囲)と規定することにより、サブパネルの辺長比βは1より大きくなることが明らかであるため、β≧1の必要剛性の算定式(日本建築学会「鋼構造許容応力度設計規準」本文4.18式、下式参照)を準用している。
縦スチフナについては、必要剛性を満足している小梁のガセットプレートと併用することも可能である。
スチフナ補剛部6における第2端部6b、すなわち無補剛部との境界に生じる曲げモーメントM2よりも無補剛部の耐力Ma0が小さい場合、スチフナ補剛部6と無補剛部7との境界に生じる曲げモーメントM2が無補剛部7の耐力Ma0に達するとスチフナ補剛部6と無補剛部7との境界に塑性ヒンジが形成され、2ヒンジ状態となり塑性変形能力が急激に低下する変形状態になる虞がある。これに対し、本実施形態では、スチフナ補剛部6と無補剛部7との境界に生じる曲げモーメントM2よりも無補剛部7の耐力Ma0が大きくなるようにスチフナ補剛長さLstを設計しているため、上記のような変形状態になる虞が無く、スチフナ補剛による耐力上昇を考慮したスチフナ補剛長さLstの設計が可能である。
また、本実施形態では、従来の水平スチフナの断面の設計手法と比較して、補剛効果を確保しつつより合理的な断面設計が可能である。これにより、水平スチフナ51,52の鋼材量を2割程度削減できる。
例えば、上記の実施形態では、スチフナ補剛部6と無補剛部7との境界部分に縦スチフナ53が設けられているが、縦スチフナ53は設けられていなくてもよい。
上記の実施形態では、1つのスチフナ補剛部6に2つの水平スチフナ51,52が設けられているが、1つのスチフナ補剛部6に設けられる水平スチフナの数は適宜設定されてよい。
4 ウェブ
5 スチフナ
6 スチフナ補剛部
7 無補剛部
43 サブパネル
51 水平スチフナ
52 水平スチフナ
Claims (2)
- ウェブの長さ方向の端部から中央に向かった所定の長さ範囲に水平方向に延びる水平スチフナを接合したスチフナ補剛部が設けられた鉄骨梁における前記スチフナ補剛部の長さ寸法を算定するスチフナ補剛長さ設計工程と、
前記水平スチフナの断面形状を算定する水平スチフナ断面設計工程と、を有し、
前記スチフナ補剛長さ設計工程では、
前記スチフナ補剛部における前記ウェブの前記長さ方向の中央側の端部の位置に生じる曲げモーメントM2よりも前記ウェブに前記水平スチフナが設けられていない無補剛部の耐力Ma0が大きくなるように前記スチフナ補剛部の長さ寸法を設計し、
前記無補剛部の耐力Ma0は、下式(1.1)および(1.2)により算定し、
前記曲げモーメントM2は、前記ウェブの前記長さ方向の端部の位置に生じる曲げモーメントM1を前記無補剛部の長さと鉄骨梁の内法長さの比率で減少させて算出し、前記曲げモーメントM1は、下式(1.3)により算定し、
前記水平スチフナ断面設計工程では、
前記スチフナ補剛部における、前記水平スチフナが接合されている位置から前記ウェブの上端部までの領域、前記水平スチフナが接合されている位置から前記ウェブの下端部までの領域、前記水平スチフナが上下方向に間隔をあけて複数設けられる場合には上下に配置された前記水平スチフナの間の領域をそれぞれサブパネルと称し、
前記水平スチフナの断面二次モーメントIshが前記水平スチフナの必要断面二次半径reqishの二乗と前記水平スチフナの断面積Ashとの積に0.7を乗じた値以上となる下式(2.1)を満たし、
前記水平スチフナの断面積Ashと前記ウェブの断面積Awとの比δshが0.1以上となる下式(2.2)を満たすように前記水平スチフナの断面形状を設計し、
前記水平スチフナの断面二次モーメントIshは、下式(2.1a)より算定し、
前記水平スチフナの必要断面二次半径reqishは、下式(2.1b)および下式(2.1c)より算定する鉄骨梁の設計方法。
- 前記水平スチフナを前記ウェブの一方の面のみに設ける請求項1に記載の鉄骨梁の設計方法。
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| 五十嵐 規矩夫,「曲げせん断力を受ける補剛平板の弾性座屈性状と最適補剛剛性」,日本建築学会構造系 論文集,第80巻第708号,日本建築学会,2015年02月28日,p.321-331 |
| 五十嵐 規矩夫,「鋼構造H形断面梁の耐力及び塑性変形能力評価のための新規幅厚比指標と幅厚比区分」,日本建築学会構造系 論文集,第76巻第668号,日本建築学会,2011年10月31日,p.1865-1872 |
| 日本建築学会,鋼構造許容応力度設計規準,第1版第1刷,日本建築学会,2019年10月15日,p.42,p.136 |
| 日本建築学会,鋼構造限界状態設計指針・同解説,第3版第1刷,日本建築学会,2010年02月25日,p.175-176 |
| 石井 大吾,「スチフナ補剛した薄肉ウェブ鉄骨大梁構法の開発」,清水建設研究報告[online],清水建設,2018年11月30日,p.61-68,[2026年3月3日検索],https://www.shimztechnonews.com/tw/sit/report/vol96/pdf/96_008.pdf |
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