以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は車両の概略構成図である。車両はエンジンENGと、スロットルバルブTVと、変速機TMと、コントローラ100とを備える。変速機TMはトルクコンバータTCと、前後進切替機構SWMと、バリエータVAとを有する構成とされる。
エンジンENGは車両の駆動源を構成する。エンジンENGの動力は変速機TMを介して駆動輪DWへと伝達される。換言すれば、変速機TMはエンジンENGと駆動輪DWとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。
スロットルバルブTVはエンジンENGに対して設けられる。スロットルバルブTVはエンジンENGの吸入空気量を調節する。スロットルバルブTVではスロットル開度THが低いほど弁体により吸気通路が狭くされる。スロットルバルブTVは電子制御式のスロットルバルブとされる。
変速機TMは自動変速機であり、本実施形態ではベルト無段変速機とされる。変速機TMは変速比IPを有する。変速比IPは変速機TMの変速機構の入力回転速度を出力回転速度で除算して得られる値であり、本実施形態ではバリエータVAの変速比が変速比IPを構成する。変速機TMは例えば、ステップ的な態様で変速を行うステップ自動変速機とされてもよい。
トルクコンバータTCは流体を介して動力を伝達する。トルクコンバータTCではロックアップクラッチLUを締結することで、動力伝達効率が高められる。
前後進切替機構SWMはエンジンENGとバリエータVAとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。前後進切替機構SWMは、入力される回転の回転方向を切り替えることで車両の前後進を切り替える。前後進切替機構SWMは、前進レンジ選択の際に係合される前進クラッチFWD/Cと、リバースレンジ選択の際に係合される後進ブレーキREV/Bとを備える。前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bを解放すると、変速機TMがニュートラル状態、つまり動力遮断状態になる。
バリエータVAは自動変速機構であり、プライマリプーリPRIと、セカンダリプーリSECと、プライマリプーリPRI及びセカンダリプーリSECに巻き掛けられたベルトBLTとを有するベルト無段変速機構を構成する。プライマリプーリPRIにはプライマリプーリPRIの油圧であるプライマリ圧Ppriが、セカンダリプーリSECにはセカンダリプーリSECの油圧であるセカンダリ圧Psecが、後述する油圧制御回路11からそれぞれ供給される。
変速機TMはメカオイルポンプ21と、電動オイルポンプ22と、モータ23とをさらに有する。メカオイルポンプ21は油圧制御回路11に油を圧送する。メカオイルポンプ21はエンジンENGの動力により駆動される機械式オイルポンプである。電動オイルポンプ22はメカオイルポンプ21とともに、或いは単独で油圧制御回路11に油を圧送する。電動オイルポンプ22はメカオイルポンプ21に対して補助的に設けられる。モータ23は電動オイルポンプ22を駆動する。電動オイルポンプ22はモータ23を有して構成されると把握されてもよい。
変速機TMは油圧制御回路11と、変速機コントローラ12とをさらに有する。油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成され、メカオイルポンプ21や電動オイルポンプ22から供給される油を調圧して変速機TMの各部位に供給する。変速機コントローラ12は変速機TMを制御するためのコントローラであり、エンジンENGを制御するためのエンジンコントローラ13と相互通信可能に接続される。エンジンコントローラ13はスロットルバルブTVのほか、燃料噴射量や点火時期を制御することでエンジンENGを制御する。エンジンコントローラ13から変速機コントローラ12には例えば、エンジンENGのトルクを表す出力トルク信号が入力される。
エンジンコントローラ13は変速機コントローラ12とともに、車両のエンジン始動装置であるコントローラ100を構成する。コントローラ100は例えば、変速機コントローラ12、エンジンコントローラ13等の統合制御を司る統合コントローラをさらに有した構成とされてもよい。
コントローラ100には各種センサ・スイッチを示すセンサ・スイッチ群40からの信号が入力される。センサ・スイッチ群40は例えば、車速VSPを検出する車速センサ、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ、エンジンENGの回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ、スロットル開度THを検出するスロットル開度センサ、ブレーキ液圧を検出するブレーキセンサを含む。
センサ・スイッチ群40はさらに例えば、プライマリ圧Ppriを検出するプライマリ圧センサ、セカンダリ圧Psecを検出するセカンダリ圧センサ、プライマリプーリPRIの入力側回転速度である回転速度Npriを検出するプライマリ回転速度センサ、セカンダリプーリSECの出力側回転速度である回転速度Nsecを検出するセカンダリ回転速度センサ、変速レバーの操作位置を検出する位置センサ、変速機TMの油温を検出する油温センサを含む。回転速度Npriは例えば、プライマリプーリPRIの入力軸の回転速度であり、回転速度Nsecは例えば、セカンダリプーリSECの出力軸の回転速度である。
変速機コントローラ12にはこれらの信号が直接入力されるか、エンジンコントローラ13等を介して入力される。変速機コントローラ12はこれらの信号に基づき変速機TMの制御を行う。変速機TMの制御はこれらの信号に基づき油圧制御回路11や電動オイルポンプ22を制御することで行われる。油圧制御回路11は変速機コントローラ12からの指示に基づき、ロックアップクラッチLU、前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B、プライマリプーリPRI、セカンダリプーリSEC等の油圧制御を行う。
車両で減速中に行われる燃料カットにはコーストストップ中に行われる燃料カットと、コーストストップ中以外のコースト減速中である通常コースト減速中に行われる燃料カットとがある。コーストストップは停車に先立って行われるエンジンENGの走行中停止制御であり、コーストストップ中はコースト減速(アクセル操作がない状態での減速)中となる。
コーストストップ中には車速VSPが停車を見据えた低車速になる。その一方で、燃料カット状態からの復帰の際の加速時つまり再加速時には、車速VSPが低いほど同じ加速を得るために必要とされる駆動力が大きくなる。このため、コーストストップ中の燃料カット状態から復帰する場合は通常コースト減速中の燃料カット状態から復帰する場合と比べて、再加速時に変速機TMがトルクをより増大させて伝達する状態になっている場合がある。結果、エンジンENGのトルクが変速機TMで必要以上に高められ、車両の押し出され感が強くなることが懸念される。
このような事情に鑑み、本実施形態では次に説明するようにコントローラ100が制御を行う。
図2はコントローラ100が行う制御の一例をフローチャートで示す図である。本フローチャートの各処理は変速機コントローラ12、エンジンコントローラ13のいずれかにより適宜行うことができる。本フローチャートの処理はエンジンENGが通常コースト減速中の燃料カット状態である場合に行われる。通常コースト減速中は例えば燃料カット条件が成立した場合に燃料カットが行われる。燃料カット条件はアクセルペダルの踏み込みがないこと、車速VSPが燃料カット許可車速よりも高いことを含む。燃料カット許可車速は例えば中高速域の車速VSPとされ、予め設定できる。燃料カット条件の成立に応じた燃料カット中、前進クラッチFWD/Cは締結状態とされる。
ステップS1では車速VSPがロックアップクラッチLUの解放車速VSP1未満か否かが判定される。ステップS1で肯定判定であれば処理はステップS2に進み、ロックアップクラッチLUが解放される。
ステップS3ではコーストストップ条件が成立したか否かが判定される。コーストストップ条件は、車速VSPが低車速であること(予め設定された設定車速VSP2未満であること)、アクセルペダルの踏み込みがないこと(アクセル操作が行われていないこと)、ブレーキペダルの踏み込みがあること(ブレーキ操作が行われていること)、変速機TMでDレンジ(前進レンジ)が選択されていることを含む。設定車速VSP2は例えば解放車速VSP1より若干低い車速VSPとされる。
ステップS3で否定判定であればコーストストップ条件が成立していないので、通常コースト減速中となる。ステップS1で否定判定の場合も同様である。ステップS3ではブレーキペダルが踏み込まれていない場合は否定判定され、この場合は車速VSPが設定車速VSP2未満であっても通常コースト減速中となる。ステップS1又はステップS3で否定判定の場合、処理はステップS4に進む。
ステップS4では、エンジンENGの再始動条件(燃料カット状態からの始動条件)が成立したか否かが判定される。エンジンENGの再始動条件は例えば燃料リカバの実行条件を含む。燃料リカバはエンジンENGへの燃料供給の再開であり、エンジンENGは燃料リカバにより自律回転状態に移行することで始動される。燃料リカバの実行条件は回転速度Neが予め設定された燃料リカバ回転速度Ne1未満になったこと(Ne<Ne1)とされる。
エンジンENGの再始動条件はこのほか例えば、アクセルペダルが踏み込まれたことを含む。燃料リカバの実行条件やアクセルペダルが踏み込まれたことは、燃料カット条件の成立に応じた燃料カット状態にあるエンジンENGの再始動条件を構成する。エンジンENGの再始動条件はエンジンENGの再始動条件が含むいずれかの条件が成立した場合に成立する。ステップS4で否定判定であれば処理はステップS1に戻る。ステップS3の否定判定に続いてステップS4で否定判定された場合、ステップS2はスキップすることができる。ステップS4で肯定判定であれば処理はステップS5に進む。
ステップS5では第1目標回転速度Ne_t1が設定される。第1目標回転速度Ne_t1は通常コースト減速中の燃料カット状態からのエンジンENGの始動を行う第1の場合、つまり通常コースト減速中を前提にエンジンENGを再始動する場合の目標回転速度Ne_tである。目標回転速度Ne_tは燃料カット状態からのエンジンENGの始動を行う場合の目標回転速度、つまりエンジンENG再始動時の目標回転速度である。第1の場合は燃料カット条件の成立に応じてエンジンENGの燃料カットが行われた場合とされる。第1目標回転速度Ne_t1はエンジンENGの再始動条件が成立した場合に限られず設定されてもよい。
ステップS6ではスロットル開度THが第1スロットル開度TH1に調整される。第1スロットル開度TH1は第1目標回転速度Ne_t1に応じたスロットル開度THであり、第1目標回転速度Ne_t1に基づき演算される。ステップS7ではエンジンENGの再始動が行われる。ステップS6に続いてステップS7の処理が行われた場合、再始動されたエンジンENGの回転速度Neは第1目標回転速度Ne_t1に制御される。
ステップS3で肯定判定された場合、処理がステップS11に進む。ステップS11ではコーストストップ条件の成立に応じてエンジンENGへの燃料供給が停止される。結果、エンジンENGがコーストストップ中の燃料カット状態になる。コーストストップ中の燃料カット状態は、通常コースト減速中からコーストストップ条件の成立によりコーストストップ中に遷移した際に引き続き燃料カットが行われる場合を含む。この場合、ステップS11はスキップすることができる。コーストストップ条件が成立しても、前進クラッチFWD/Cは特に解放されない。
ステップS12ではブレーキセンサの出力に基づきブレーキの検出が行われる。ステップS13ではステップS12での検出結果に基づきブレーキペダルがONか否か、つまりブレーキペダルが踏み込まれているか否かが判定される。ステップS13で肯定判定であればコーストストップ条件が成立していると判断され、処理はステップS12に戻る。
ステップS13で否定判定であれば、コーストストップ条件が不成立になったと判断される。この場合、処理はステップS14に進み、変速比IPが検出される。変速比IPは例えば回転速度Npriを回転速度Nsecで除算して得ることができる。
ステップS15では第2目標回転速度Ne_t2が設定される。第2目標回転速度Ne_t2はコーストストップ中の燃料カット状態から脱してエンジンENGを始動する第2の場合、つまりコーストストップ中を前提にエンジンENGを再始動する場合の目標回転速度Ne_tである。
コーストストップ中を前提にエンジンENGを再始動する第2の場合は、通常コースト減速中を前提にエンジンENGを再始動する第1の場合と比べて目標回転速度Ne_tが低くされる。つまり、第2目標回転速度Ne_t2は第1目標回転速度Ne_t1と比べて低く設定される。これは次の理由による。
第1に、変速機TMではコーストストップ中と通常コースト減速中とでともに車速VSPの低下に応じて変速比IPがロー側に向けて変更される。車速VSPが低いほど変速比IPをロー側に向けて変更することで、アクセルペダルの踏み込みに応じた再加速時や発進時の車両駆動力が確保される。
アクセルペダルが踏み込まれていない場合、燃料カット状態での通常コースト減速中は、ロックアップクラッチLU解放後、燃料リカバ回転速度Ne1でエンジンENGが再始動される。その一方で、コーストストップ中は、停車に向けて車速VSPがさらに低下しているときにもエンジンENGが再始動され得る。
つまり、第2の場合には第1の場合よりもエンジンENG再始動時の車速VSPが低くなり得る。このため、さらにアクセルペダルが踏み込まれ再加速が行われたときに、第2の場合には第1の場合よりも変速比IPが大きくなり得る。従って、これらの間で目標回転速度Ne_tが同じに設定されていると、第2の場合には第1の場合よりも変速機TMでトルクがより増大された上で駆動輪DWに伝達され得る。結果、第2の場合に第1目標回転速度Ne_t1を目標回転速度Ne_tとして設定していると、車両の押し出され感が強くなり得る。
第2に、通常コースト減速中を前提に再始動を行う第1の場合は、前進クラッチFWD/Cは締結状態のままとされ、燃料リカバによるエンジンENGの再始動が行われる。この場合にロックアップクラッチLUはエンジンENGの再始動に先立って解放される結果、トルクコンバータTCが流体結合状態になる。
その一方で、第1の場合はアクセルペダルの踏み込みに応じてロックアップクラッチLUが締結される。結果、トルクコンバータTCでは再加速時にロックアップクラッチLUを介したトルク伝達が行われる。従ってこの場合は、再加速時にエンジンENGのトルクがトルクコンバータTCで増幅され駆動輪DWに伝達されることは抑制される。
これに対し、コーストストップ後には停車状態からの再発進も行われることから、車速VSPがロックアップクラッチLUの締結車速になるまで、ロックアップクラッチLUは締結されない。従って、第2の場合は車速VSPが締結車速になるまではトルクコンバータTCは流体結合状態のままとなる。結果、エンジンENGが再始動されるとトルクは流体結合状態のトルクコンバータTCに伝達される。
流体結合状態のトルクコンバータTCでは、入力回転速度のほうが出力回転速度よりも高いドライブ状態の場合にトルクが増幅され、再加速時には回転速度Neの上昇によりトルクコンバータTCがドライブ状態になる。従ってこの場合は、車速VSPが締結車速になるまでは、再加速時にトルクコンバータTCで増幅されたトルクが駆動輪DWに伝達されることになる。
結果、第2の場合に第1目標回転速度Ne_t1を目標回転速度Ne_tとして設定していると、第1の場合と比べ車両の押し出され感が強くなり得る。さらに、トルクコンバータTCのトルク増幅作用と変速機TMのトルク増大作用とは互いに助長し合う。このため、これらの作用が同時に働くと車両の押し出され感がより一層強まることになる。
このようなことから、第2目標回転速度Ne_t2は第1目標回転速度Ne_t1と比べて低く設定される。第2目標回転速度Ne_t2は例えば第1目標回転速度Ne_t1より予め設定された所定回転速度低く設定できる。第2目標回転速度Ne_t2はコーストストップ条件が不成立になった場合に限らず設定されてもよい。本実施形態では第2目標回転速度Ne_t2は前述のステップS14で検出した変速比IPに基づき次のように設定される。
図3は変速比IPに応じた第2目標回転速度Ne_t2の設定を示す図である。図3では変速比IPに応じた第2目標回転速度Ne_t2の設定傾向を示す。図3に示すように、第2目標回転速度Ne_t2は変速比IPに応じて変更される。変速比IPにはコーストストップ条件が不成立になった際の変速比IPが用いられる。第2目標回転速度Ne_t2は変速比IPが大きいほど、つまり変速比IPがロー側に向かうほど低くなるように設定される。これにより、変速比IPが大きいほど変速機TMでトルクが増大されることに対し、車両の押し出され感を適切に抑制可能になる。
図2に戻り、ステップS16ではスロットル開度THが第2スロットル開度TH2に調整される。第2スロットル開度TH2は第2目標回転速度Ne_t2に応じたスロットル開度THであり、第2目標回転速度Ne_t2に基づき演算される。ステップS16の後には処理はステップS7に進み、エンジンENGの再始動が行われる。ステップS16に続いてステップS7の処理が行われた場合、再始動されたエンジンENGの回転速度Neは第2目標回転速度Ne_t2に制御される。ステップS7の後には本フローチャートの処理は終了する。
図4は図2に示すフローチャートに対応するタイミングチャートの一例を示す図である。図4ではコーストストップ中を前提にエンジンENGを再始動する第2の場合を実線で示す。一点破線で示す回転速度Ne、ブレーキペダル及びコーストストップフラグの変化は通常コースト減速中を前提にエンジンENGを再始動する第1の場合を示す。二点破線で示す回転速度Neは比較例の場合を示す。比較例は第2の場合において第1目標回転速度Ne_t1を目標回転速度Ne_tとして設定する場合を示す。第1目標回転速度Ne_t1は例えばアイドル回転速度に設定される。図4では第1の場合、第2の場合、比較例の場合ともに、タイミングT1より前で燃料カット条件の成立に応じてエンジンENGが燃料カットされている場合を示す。
タイミングT1では車速VSPが解放車速VSP1未満になり、ロックアップクラッチLUの解放指示が行われる。タイミングT2では車速VSPが設定車速VSP2未満になる。また、ブレーキペダルはON、アクセルペダルはOFFで、選択レンジはDレンジとなっている。このため、コーストストップ条件が成立し、コーストストップフラグがONになるとともにコーストストップが開始される(CS開始)。結果、タイミングT2からはコーストストップ中となる。タイミングT2からは、燃料カット状態で通常コースト減速中からコーストストップ中に遷移することで、コーストストップ中の燃料カット状態になる。回転速度NeはタイミングT1での解放指示に応じてロックアップクラッチLUが解放され始めると低下し始める。
タイミングT3では回転速度Neが燃料リカバ回転速度Ne1未満になる。
第1の場合は一点破線で示すようにブレーキペダルがOFFのままなので、車速VSPが設定車速VSP2未満になってもコーストストップ条件は成立せず、コーストストップフラグはOFFのままになる。つまり、通常コースト減速中の燃料カット状態となっている。このため、第1の場合はタイミングT3で燃料リカバによる再始動が行われ、これにより回転速度Neが上昇し始める。
実線で示す第2の場合はタイミングT3でコーストストップ中の燃料カット状態になっている。このため、燃料リカバによる再始動は行われない。結果、回転速度Neは引き続き低下する。タイミングT3経過後にはタイミングT3と比べ、車速VSPの低下に応じて変速比IPはさらに大きくなる。
タイミングT4ではブレーキペダルがOFFになる。結果、コーストストップ条件が不成立になる。このため、コーストストップフラグがOFFになるとともにコーストストップが解除され(CS解除)、コーストストップ中でなくなる。コーストストップが解除されるとエンジンENGが再始動される。結果、タイミングT4からは回転速度Neが上昇し始める。タイミングT4では車速VSPはロックアップクラッチLUの締結車速より低くなっている。
この例ではアクセルペダルの踏み込みに応じてエンジンENGの再始動が行われていない。このため、第1の場合はタイミングT3以降にアクセルペダルが踏み込まれ得る状態になっている。また、第2の場合はタイミングT4以降にアクセルペダルが踏み込まれ得る状態になっている。アクセルペダルが踏み込まれた場合、トルクコンバータTCでは第1の場合はロックアップクラッチLUを介した動力の伝達が行われ、第2の場合は流体結合状態で動力の伝達が行われる。
このため、第2の場合は第1の場合とエンジンENGのトルクが同じであっても、駆動輪DWに伝達されるトルクは第1の場合と比べて大きくなる。従って、二点破線で示す比較例のように、第1の場合と同様に第1目標回転速度Ne_t1を目標回転速度Ne_tとしてエンジンENGを再始動すると、第1の場合と比べて大きなトルクが駆動輪DWに伝達されることになる。
さらに、タイミングT4ではタイミングT3よりも車速VSPが低下している。従って、アクセルペダルが踏み込まれるタイミング次第では、第2の場合には第1の場合よりも大きい変速比IPでエンジンENGから駆動輪DWにトルクが伝達され得る。この場合、トルクコンバータTCのトルク増幅作用と変速機TMのトルク増大作用とが相乗的に働くことで、さらに大きなトルクが駆動輪DWに伝達され得る。結果、車両の押し出され感がさらに強くなり得る。
アクセルペダルが踏み込まれるタイミングについては一概にはいえないものの、第1の場合ではタイミングT3以降、タイミングT4より前にアクセルペダルが踏み込まれると、アクセルペダルの踏み込みタイミングが第2の場合より早くなる。結果、例えばこの場合に、第2の場合のほうが第1の場合より変速比IPが大きくなる。
タイミングT4でブレーキペダルがOFFになると、これに応じて車速VSPはブレーキペダルがONの場合よりも緩やかに低下する。車速VSPの低下が緩やかになってからは変速比IPの変化も緩やかになる。また、変速比IPは最大変速比以上には大きくならない。従って、車速VSP緩やかに変化し始めてからは、第2の場合のほうが第1の場合よりもアクセルペダルが踏み込まれるタイミングが遅くなっても、変速機TMでのトルク増大に差がないか或いは比較的小さい場合もあり得る。
但しこのような場合でも、比較例の場合はトルクコンバータTCでトルクが増幅される。さらに比較例の場合は、トルクコンバータTCのトルク増幅作用が変速比IPのトルク増大作用を助長することも相俟って、車両の押し出され感が強くなる。
実線で示す本実施形態の場合、第2目標回転速度Ne_t2を目標回転速度Ne_tとしてエンジンENGが再始動される。結果、回転速度Neは第1目標回転速度Ne_t1より低い第2目標回転速度Ne_t2になる。このため、本実施形態の場合は比較例の場合と比べて再加速時に駆動輪DWに伝達されるトルクが抑制される。結果、比較例の場合に生じる車両の押し出され感が抑制される。
本実施形態の場合はさらに、図3を用いて前述したように第2目標回転速度Ne_t2がタイミングT4での変速比IPに応じて変更される。このため、タイミングT4での変速比IPが大きいほど第2目標回転速度Ne_t2を低くすることで、車両の押し出され感が適切に抑制される。
本実施形態の場合は比較例の場合と比べて目標回転速度Ne_tを低くしている。これにより、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、タイミングT4からの回転速度Neの上昇度合いが緩やかになり、また、目標回転速度Ne_tへの回転速度Neの到達タイミングが遅くなっている。
このような傾向に照らし、本実施形態の場合は変速比IPが大きいほど回転速度Neの上昇度合いが小さくされ、また、第2目標回転速度Ne_t2への回転速度Neの到達タイミングが遅くされる。回転速度Neは第2目標回転速度Ne_t2に応じてスロットル開度THを調整することで、このように制御される。
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
本実施形態にかかる車両のエンジン始動方法は、エンジンENGと、エンジンENGから駆動力が入力される変速機TMとを備え、エンジンENGはコーストストップが行われる車両で用いられる。本実施形態にかかる方法は、通常コースト減速中の燃料カット状態から脱してエンジンENGを始動する第1の場合と比べて、コーストストップ中の燃料カット状態から脱してエンジンENGを始動する第2の場合は、目標回転速度Ne_tを低くすることを含む。
このような方法によれば、第2の場合には第1の場合と比べて目標回転速度Ne_tを低くするので、燃料カット状態から脱して始動されたエンジンENGのトルクを抑制できる。このため、コーストストップ中の燃料カット状態からの復帰の際の加速時に発生し得る車両の押し出され感を抑制できる。
本実施形態では、車両はエンジンENGからの駆動力を変速機TMに伝達する前進クラッチFWD/Cをさらに備える。変速機TMはロックアップクラッチLUを有するトルクコンバータTCを備える。本実施形態にかかる方法では、通常コースト減速中の燃料カット状態では前進クラッチFWD/Cが締結状態とされ、コーストストップ中の燃料カット状態ではロックアップクラッチLUが解放状態とされる。
この場合、第1の場合は再加速時にロックアップクラッチFWD/Cが締結される結果、エンジンENGのトルクはロックアップクラッチLUを介して駆動輪DWに伝達される。その一方で、第2の場合は再加速時にロックアップクラッチLUが解放状態のままで前進クラッチFWD/Cが締結されている。結果、エンジンENGのトルクが流体結合状態のトルクコンバータTCで増幅された上で駆動輪DWに伝達される。
本実施形態にかかる方法によれば、このような場合に車両の押し出され感を抑制できる。また、このような場合に車両の押し出され感を抑制すべく例えば前進クラッチFWD/Cを長くスリップさせずに済むので、再加速の遅れも回避できる。
本実施形態にかかる方法は、第2の場合には変速比IPに応じて目標回転速度Ne_tを変更すること、つまり変速比IPに応じて第2目標回転速度Ne_t2を変更することをさらに含む。このような方法によれば、変速比IPが大きいほど変速機TMでトルクが増大されることに対し、車両の押し出され感を適切に抑制できる。
本実施形態にかかる方法は、第2の場合には変速比IPが大きいほど回転速度Neの上昇度合いを小さくすることをさらに含む。このようにすれば、変速比IPが大きいほど変速機TMでトルクが増大されることに対し、車両の押し出され感を適切に抑制できる。
本実施形態にかかる方法は、第2の場合には変速比IPが大きいほど回転速度Neが目標回転速度Ne_tに到達するタイミングを遅らせること、つまり変速比IPが大きいほど回転速度Neが第2目標回転速度Ne_t2に到達するタイミングを遅らせることをさらに含む。このようにすれば、変速比IPが大きいほど変速機TMでトルクが増大されることに対し、車両の押し出され感を適切に抑制できる。
本実施形態では、第2の場合には目標回転速度Ne_tに応じてスロットル開度THを調整することで、つまり第2目標回転速度Ne_t2に応じてスロットル開度THを第2スロットル開度TH2に調整することで、回転速度Neを制御する。
このような方法によれば、第2の場合に変速比IPが大きいほど回転速度Neの上昇度合いを小さくすることや、第2目標回転速度Ne_t2への回転速度Neの到達タイミングを遅らせることを適切に行うことができる。結果、車両の押し出され感を適切に抑制できる。またこれにより、図3に示すような関係、つまり変速比IPと回転速度Neの上昇度合いとの関係や、変速比IPと第2目標回転速度Ne_t2への回転速度Neの到達タイミングとの関係を特段規定することなく、車両の押し出され感を適切に抑制できる。
第2目標回転速度Ne_t2は次のように第1目標回転速度Ne_t1より低くされてもよい。
図5は変形例の制御の一例をフローチャートで示す図である。図6は変形例のタイミングチャートの一例を示す図である。まず、図6を用いて説明すると、この例では回転速度Neが燃料リカバ回転速度Ne1未満になるタイミングT3から、変速比IPに応じて第2目標回転速度Ne_t2を第1目標回転速度Ne_t1から次第に変化させている。このように第2目標回転速度Ne_t2を変化させることも、第2の場合に変速比IPに応じて目標回転速度Ne_tを変更することに含まれる。
図5に示すように、この例ではステップS3で肯定判定であった場合にステップS21で燃料の供給が停止され、ステップS22で回転速度Neが燃料リカバ回転速度Ne1未満になったか否かが判定される。ステップS22では第2目標回転速度Ne_t2を設定すべきか否かが判断される。ステップS22で否定判定であれば処理はステップS22に戻り、ステップS22で肯定判定であれば処理はステップS23からステップS26に進む。ステップS23では変速比IPが検出され、ステップS24では第2目標回転速度Ne_t2が設定される。ステップS25ではブレーキの検出が行われ、ステップS26ではブレーキペダルがONになったか否かが判定される。
ステップS26で否定判定であればコーストストップ条件が不成立と判断され、処理はステップS27からステップS29に進む。ステップS27ではスロットル開度THが第2スロットル開度TH2に調整され、ステップS28ではエンジンENGが再始動される。ステップS29では、回転速度Neが第2目標回転速度Ne_t2未満か否かが判定される。この例ではステップS26又はステップS29で肯定判定であれば、処理がステップS23に戻る。
従って、ブレーキペダルがOFFになり、且つ回転速度Neが第2目標回転速度Ne_t2以上になるまでの間は、変速比IPの検出が行われるとともに、検出された変速比IPに応じた第2目標回転速度Ne_t2が設定される。これにより、図6を用いて前述したように、第2目標回転速度Ne_t2が変速比IPに応じて次第に変化する。ステップS29で肯定判定された場合、ステップS28はスキップできる。
この例ではステップS26で否定判定され、ステップS29で肯定判定されている間は、ステップS27で第2目標回転速度Ne_t2に応じて第2スロットル開度TH2が変更される。結果、エンジンENGの再始動中に変速比IPに応じて引き続き変化する第2目標回転速度Ne_t2に合わせて回転速度Neの調整が図られる。ステップS29で否定判定の場合は処理は終了する。
この場合でも、駆動輪DWに伝達されるトルクを抑制することで車両の押し出され感を抑制することもできる。但しこの場合は、エンジンENGの再始動中に第2スロットル開度TH2に応じた回転速度Neの調整を行うので、調整が十分に間に合わないと回転速度Neが本来意図するタイミングよりも早く第2目標回転速度Ne_t2に到達し得る。結果、上述した本実施形態の場合と比べて車両の押し出され感の抑制効果が低下し得る。或いは、回転速度Neを適切に制御するために更なる補正等が必要になる。このため、このような観点からは本実施形態の場合のほうがこのような比較例の場合よりも好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上述した実施形態ではコントローラ100が制御部を構成する場合について説明した。しかしながら、制御部は単一のコントローラで構成されてもよい。