以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の診断対象について説明する図である。図1では、橋10の一部が示されている。橋10は、例えば、斜張橋である。橋10は、複数の桁12および複数のケーブル14を備える。桁12は、橋台間、橋脚間、橋台と橋脚との間に架け渡され、橋10の路面を支える。
ケーブル14は、複数の素線16および被覆18を備える。複数の素線16が集合され、複数の素線16の集合体の外周部に被覆18が形成されて、ケーブル14が構成される。素線16の数および素線16のサイズは、ケーブル14の種類ごとに決められている。素線16は、例えば、亜鉛めっき鋼線である。被覆18は、例えば、高密度ポリエチレンで構成される。ケーブル14は、橋10の塔から桁12に斜めに張られる。ケーブル14は、桁12を吊持する。図1では、ケーブル14が桁12に繋がれる部分が示されている。
ケーブル14の端部には、ソケット20が設けられる。ソケット20は、筒状に形成される。ソケット20の長手方向の一方側の端部には、口金20aが設けられる。ケーブル14の先端部は、口金20aを介してソケット20の内部に挿通され、ソケット20の内部に収容される。ソケット20の外径は、ケーブル14の外径よりも大きい。ソケット20の内径は、ソケット20における口金20aが設けられている基端部側からソケット20の先端部側に向かうに連れて拡大している。
複数の素線16は、長手方向の所定の位置において所定の曲げ角度で屈曲する屈曲部22を有する。より詳細には、ソケット20の内部では、ケーブル14の被覆18が取り除かれ、複数の素線16が被覆18から露出している。屈曲部22は、ソケット20の内部において、被覆18から素線16が露出している部分と被覆18との境界部分に位置する。
複数の素線16は、屈曲部22で屈曲し、屈曲部22と素線16の先端面24との間では、概ね直線的に延びている。複数の素線16は、屈曲部22から素線16の先端面24に向かうに連れて互いに離れるように広がっている。
ソケット20の内部の複数の素線16は、ソケット20の内部形状に合わせて円錐状に形成された金属コーン26により固定されている。金属コーン26は、例えば、複数の素線16が配置されたソケット20の内部に金属材料を鋳込むことで形成される。ケーブル14に対するソケット20の定着構造は、複数の素線16と一体化した金属コーン26と内部形状が円錐形状となっているソケット20とのクサビ効果により実現される。複数の素線16の先端面24は、金属コーン26から露出している。
ソケット20の先端部には、ソケットカバー28がソケット20に対して着脱可能に設けられる。ソケットカバー28は、複数の素線16の先端面24を覆い隠すように設けられ、複数の素線16を保護する。
ケーブル14およびソケット20は、桁12の下部に設けられた支圧板30を介して桁12に支持される。支圧板30の上側には、鋼管32が配置される。ケーブル14は、鋼管32の内部に挿通されている。鋼管32の上端には、鋼管32の上端を塞ぐ鋼管カバー34が設けられる。鋼管32および鋼管カバー34は、ケーブル14を保護する。
ここで、ケーブル14の被覆18が損傷した場合、被覆18の損傷した部分を通じて、雨などの水がケーブル14の内部に入ることがある。ケーブル14の内部に入った水は、ケーブル14の下方に移動し、ソケット20の口金20aの近傍に溜まることがある。
そうすると、口金20aの近傍の素線16は、水に触れたり、空気に触れたりが繰り返され、当該素線16に腐食が生じるおそれがある。口金20aは、複数の素線16の屈曲部22の近傍であって、屈曲部22よりも上側、すなわち、屈曲部22よりも先端面24とは反対側に位置する。すなわち、屈曲部22よりも先端面24とは反対側において、素線16に腐食が生じるおそれがある。素線16に腐食が生じると、素線16の径方向の厚さが減少する減肉が素線16に生じることがある。腐食による減肉などの損傷が素線16に生じると、素線16の引張強度が低下するおそれがある。
そこで、本実施形態の超音波診断装置は、ケーブル14の素線16の損傷を診断する。すなわち、本実施形態では、ケーブル14を構成する複数の素線16のいずれかを、超音波診断装置による診断対象とする。超音波診断装置は、診断対象の素線16を順次切り替え、ケーブル14を構成する全ての素線16について診断を行う。
なお、本実施形態の超音波診断装置による診断対象は、例えば、ケーブル14の素線16であるが、かかる例に限られない。例えば、超音波診断装置による診断対象は、長手方向の所定の位置において所定の曲げ角度で屈曲する屈曲部を有する各種の線材であってもよい。以下、超音波診断装置の構成および動作を説明する。
図2は、本実施形態の超音波診断装置50の構成を示すブロック図である。超音波診断装置50は、超音波探触子52、探傷装置54および制御用コンピュータ56を備える。
超音波探触子52は、1または複数の振動子を有する。振動子は、例えば、圧電素子で形成される。振動子に電圧が印加されると、当該振動子が振動する。超音波探触子52は、当該振動子が振動することで超音波を発生する。
診断作業を行う作業者は、ソケットカバー28をソケット20から取り外して、複数の素線16の先端面24を露出させる。作業者は、複数の素線16のうちの1つの素線16の先端面24に超音波探触子52を当接させる。超音波探触子52が素線の先端面に当接されると、超音波探触子52は、素線16の内部に超音波を照射することができる。
素線16の内部に照射された超音波は、素線16の内部を伝播し、例えば、素線16の側面などで反射する。反射した超音波の一部は、素線16の内部を伝播して超音波探触子52に戻ってくる。以下では、照射した超音波に対して反射して超音波探触子52に到達する超音波を、超音波エコーという場合がある。超音波探触子52は、素線16の内部で反射した超音波の信号を受信することができる。素線16の内部で反射した超音波が超音波探触子52の振動子に到達すると、到達した超音波によって当該振動子が振動し、当該振動子は、当該振動を電圧に変換する。変換された電圧は、超音波エコーを示すものであり、探傷装置54に送られる。
なお、素線16に限らず各種の線材の損傷を診断する場合には、作業者は、診断対象の線材の先端面24に超音波探触子52を当接させるようにしてもよい。その場合、超音波探触子52は、診断対象の線材の内部に超音波を照射し、線材の内部で反射した超音波の信号を受信可能である。
探傷装置54は、超音波探触子52と電気的に接続される。探傷装置54は、制御用コンピュータ56の制御の下、超音波探触子52から超音波を照射させる制御を行う。また、探傷装置54は、超音波エコーを示す電圧を超音波探触子52から取得することができる。探傷装置54は、取得した電圧に対してA/D変換を行い、A/D変換後の信号を制御用コンピュータ56に送信する。制御用コンピュータ56に送信される信号は、A/D変換が行われているものの、超音波探触子52が受信した信号に相当し、超音波エコーを示す信号に相当する。
制御用コンピュータ56は、探傷装置54と電気的に接続されている。制御用コンピュータ56は、入出力装置60、記憶装置62および制御装置64を備える。
入出力装置60は、表示装置70を含む。表示装置70は、例えば、液晶ディスプレイなどであり、各種の画像および各種の情報を表示する。入出力装置60は、表示装置70の他、例えば、スピーカなどのユーザに各種の情報を提示する任意の出力装置を含んでもよい。また、入出力装置60は、ユーザの入力操作を受け付けるキーボードなどの任意の入力装置を含んでもよい。
記憶装置62は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどであり、不揮発性の記憶素子で構成される。記憶装置62には、超音波診断装置50で利用されるデータの集合体であるデータベース80が予め記憶されている。データベース80については、後に詳述する。
制御装置64は、1つまたは複数のプロセッサ90と、プロセッサ90に接続される1つまたは複数のメモリ92とを備える。メモリ92は、プログラム等が格納されたROMおよびワークエリアとしてのRAMを含む。プロセッサ90は、メモリ92に含まれるプログラムと協働して、制御用コンピュータ56全体を制御する。制御装置64のプロセッサ90は、プログラムを実行することで、進行管理部100、信号補正部102および評価部104としても機能する。
進行管理部100は、素線16などの線材の損傷を診断する診断作業の進行を管理する。より詳細には、進行管理部100は、ケーブル14を構成する複数の素線16のうちから1つの素線16を診断対象として選定する。進行管理部100は、選定された素線16に対する超音波の照射および超音波エコーの取得を行う。そして、進行管理部100は、診断対象の素線16を順次切り替え、超音波の照射および超音波エコーの取得を素線16ごとに行う。以後、超音波の照射および超音波エコーの取得の作業を総称して、探傷作業という場合がある。
また、進行管理部100は、ケーブル14の端面における複数の素線16の配置を示す配置画像を表示装置70に表示させる。配置画像では、ソケットカバー28が取り外されたソケット20の先端部側からソケット20の内部を見たときの、複数の素線16の先端面24の位置が画像で示されている。
図3は、表示装置70に表示された配置画像110の一例を示す図である。図3で示す配置画像110中、例えば黒色表示された素線16Aは、探傷作業が完了した素線16を示す。図3で示す配置画像110中、クロスハッチング表示された素線16Bは、診断対象として選定された素線16を示し、これから探傷作業を行う素線16を示す。図3で示す配置画像110中、例えば白抜き表示された素線16Cは、未だ探傷作業が行われておらず、診断対象としても未だ選定されていない素線16を示す。
図3で示すように、進行管理部100は、配置画像110において診断対象として選定した1つの素線16(図3中の素線16B)を、他の素線16(図3中の素線16A、素線16C)と区別可能に表示させる。
これにより、作業者は、配置画像110中の素線16の表示態様を見ることで、次の診断対象として、複数の素線16のうち、どの素線16に超音波探触子52を当接すればよいかを、容易に認識することができる。さらに、診断作業の進捗状況(例えば、複数の素線16のうちどの程度の割合まで探傷作業が完了したかなど)も容易に把握することができる。
また、図3で示すように、進行管理部100は、配置画像110において探傷作業が完了している素線16(図3中の素線16A)を、他の素線16(図3中の素線16B、素線16C)と区別可能に表示させる。
これにより、作業者は、配置画像110中の素線16の表示態様を見ることで、複数の素線16のうち、探傷作業が完了した素線16を、容易に認識することができる。さらに、診断作業の進捗状況(例えば、複数の素線16のうちどの程度の割合まで探傷作業が完了したかなど)も容易に把握することができる。
なお、図3では、探傷作業が完了した素線を黒色表示で表示させ、診断対象として選定された素線をクロスハッチング表示で表示させ、それ以外の素線を白抜き表示で表示させていた。しかし、複数の素線16の表示態様は、この例に限らず、探傷作業が完了した素線16、診断対象として選定された素線16およびそれ以外の素線16を区別可能な任意の表示態様とされてもよい。
上述のように、複数の素線16は、長手方向の所定の位置において屈曲部22を有している。素線16の先端面24から超音波を照射した場合、素線16の内部において屈曲部22よりも先端面24から遠い位置で反射した超音波は、屈曲部22を通過して超音波探触子52に戻ってくることになる。反射した超音波が屈曲部22を通過する際、反射した超音波の振幅は、屈曲部22が存在することによって減衰する。そうすると、屈曲部22よりも先端面24から遠い位置の超音波エコーの信号強度が、屈曲部22がない場合と比べて小さくなる。その結果、屈曲部22よりも先端面24から遠い位置での素線16の損傷を適切に検出できないおそれがある。
そこで、超音波診断装置50の制御装置64のプロセッサ90は、信号補正部102としても機能する。信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号の少なくとも一部を、屈曲部22の曲げ角度に応じた増幅率で増幅させる。例えば、信号補正部102は、デジタル信号プロセッサ(DSP)などで実現されてもよい。
また、超音波エコーのうち、素線16の内部における超音波の反射位置から素線16の先端面24に至る距離が長い超音波エコーほど、超音波エコーの信号強度が低下する。
これを踏まえ、信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号を、素線16の長手方向における先端面24から超音波の反射位置までの距離に応じた増幅率で増幅させる補正をさらに行う。信号補正部102の動作については、後に詳述する。
評価部104は、信号補正部102による補正後の信号に基づいて素線16の損傷を評価する。例えば、評価部104は、信号補正部102による補正後の信号のうち、信号強度が、予め設定された閾値を超えた部分があれば、素線16における信号強度が閾値を超えた位置において素線16の損傷が発生していると判定する。
信号補正部102による信号の増幅を適切に実現するために、記憶装置62には、屈曲部22の位置および曲げ角度が素線16ごとに設定されたデータベース80が予め記憶されている。
図4は、データベース80の一例を示す図である。図4で示すように、データベース80では、ケーブル14の種類と、当該ケーブル14を構成する複数の素線16の素線番号とが関連付けられている。素線番号は、ケーブル14中のそれぞれの素線16を識別可能な識別子に相当する。素線番号は、素線16の先端面24の位置に関連付けられている。
データベース80では、素線番号ごとに、曲げ位置および曲げ角度が素線番号に関連付けられている。曲げ位置は、素線16の先端面24を基準とした屈曲部22の位置であり、先端面24からの素線16の長手方向に沿った距離に相当する。
曲げ角度は、素線16における先端面24から屈曲部22に向かう第1の方向に対する、素線16における屈曲部22から先端面24とは反対側に向かう第2の方向の傾斜角に相当する。ケーブル14の径方向の内側に位置する素線16ほど、屈曲部22の曲げ角度が小さくなっており、ケーブル14の径方向外側に位置する素線16ほど、屈曲部22の曲げ角度が大きくなっている。
ケーブル14の種類、および、複数の素線16のうちの1つの素線16が選定された場合、データベース80を参照することで、選定された素線16の曲げ位置および曲げ角度を特定することができる。
なお、曲げ位置および曲げ角度は、図4で例示した数値に限らず、ケーブル14の種類および素線番号に対応する任意の数値とされてもよい。また、データベース80では、図4で例示したケーブル「A」に限らず、他の種類のケーブル14についても、素線番号、曲げ位置および曲げ角度が設定されていてもよい。
図5は、信号補正部102による補正を行う前の信号の信号強度の一例を示す図である。図5の横軸は、探傷距離を示す。探傷距離は、素線16の長手方向における先端面24から超音波の反射位置までの距離を意味する。図5の縦軸は、取得した超音波エコーの信号強度を示す。図5の例では、探傷距離「400mm」のところに曲げ位置があるとする。図5の閾値は、損傷の有無を判定するための判定基準に相当する。
図5の例では、探傷距離が「400mm」から「500mm」の間において、素線16の損傷が生じているとする。しかし、探傷距離「400mm」のところに曲げ位置があるため、曲げ位置よりも探傷距離が遠い位置での超音波エコーの信号強度は、本来の信号強度よりも低下している。また、図5の探傷距離が「400mm」よりも近い範囲で示されているように、超音波エコーの信号強度は、探傷距離が遠くなるほど距離に応じて低下している。
これらより、探傷距離が「400mm」から「500mm」の間の超音波エコーの信号強度が、閾値よりも小さくなって、探傷距離が「400mm」から「500mm」の間の素線16の損傷を検知することができないことがある。
図6は、信号補正部102による曲げ角度に応じた補正を説明する図である。図6の横軸は、探傷距離を示す。図6の縦軸は、曲げ角度に応じた信号強度の増幅率を示す。以後、曲げ角度に応じた信号強度の増幅率を、説明の便宜のため、曲げ増幅率という場合がある。図6の例では、探傷距離「400mm」のところに曲げ位置があるとする。以後、説明の便宜のため、探傷距離が先端面24から曲げ位置までの距離以上となる任意の位置を、曲げ位置以降という場合がある。また、探傷距離が「400mm」よりも先端面24に近い範囲では、診断対象の素線16が概ね直線的に延びており、曲げ角度が実質的にゼロであるとする。
図6において、探傷距離が「400mm」未満の任意の位置では、実質的に曲げ角度がゼロであるため、曲げ増幅率は、概ねゼロとする。これに対し、図6において、探傷距離「400mm」のところに曲げ位置があるため、探傷距離が「400mm」以上の任意の位置では、曲げ増幅率を、曲げ位置での曲げ角度に応じた所定の増幅率とする。このように、探傷距離に対する曲げ増幅率は、曲げ位置を境界として階段状に変化する。曲げ位置以降での曲げ増幅率は、曲げ位置での曲げ角度が大きくなるに従って大きくなるように設定される。
これらを踏まえ、信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号のうち、素線16の内部において屈曲部22よりも先端面24から遠い位置で反射した信号を、屈曲部22の曲げ角度の応じた増幅率で増幅させる。信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号のうち、素線16の内部において屈曲部22よりも先端面24に近い位置で反射した信号を、屈曲部22の曲げ角度に応じた増幅率で増幅させない。
信号補正部102は、データベース80を参照することで、曲げ位置および曲げ角度を取得することができる。このため、信号補正部102は、データベース80を参照して取得した曲げ位置により、曲げ増幅率が概ねゼロから曲げ角度に応じた所定の増幅率に変化する境界を特定することができる。また、信号補正部102は、データベース80を参照して取得した曲げ角度に基づいて、曲げ位置以降の曲げ増幅率を決定することができる。
図7は、信号補正部102による距離に応じた補正を説明する図である。図7の横軸は、探傷距離を示す。図7の縦軸は、距離に応じた信号強度の増幅率を示す。以後、距離に応じた信号強度の増幅率を、説明の便宜のため、距離増幅率という場合がある。
図7で示すように、距離増幅率は、探傷距離が長くなるに従って大きくなるように設定される。
これを踏まえ、信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号を、素線16の長手方向における先端面24から超音波の反射位置までの距離に応じた増幅率で増幅させる。例えば、探傷距離が「200mm」の位置の信号強度は、探傷距離が「200mm」の位置の距離増幅率で増幅され、探傷距離が「300mm」の位置の信号強度は、探傷距離が「300mm」の位置の距離増幅率で増幅される。
図8は、信号補正部102による曲げ角度に応じた補正と距離に応じた補正とを合わせた補正を説明する図である。図8の横軸は、探傷距離を示す。図8の縦軸は、図6の曲げ増幅率と、図7の距離増幅率とを合計した増幅率を示す。以後、曲げ増幅率と距離増幅率とを合計した増幅率を、説明の便宜のため、合計増幅率という場合がある。
図8で示すように、合計増幅率は、先端面24から曲げ位置までにおいて探傷距離が長くなるに従って大きくなり、曲げ位置において階段状に増加し、曲げ位置以降において探傷距離が長くなるに従って大きくなるように設定される。
信号補正部102は、図6を用いて説明した曲げ角度に応じた増幅率での増幅と、図7を用いて説明した距離に応じた増幅率での増幅との両方を行う。すなわち、信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号を、図8で示す合計増幅率に従って増幅させる。
図9は、信号補正部102による補正後の信号の一例を示す図である。図9は、図5で例示した超音波エコーの信号強度を、図8を用いて説明した合計増幅率で増幅した後の信号強度を示す。図9の例では、探傷距離が「400mm」から「500mm」の間において、素線16の損傷が生じているとする。
図9で示すように、補正後の信号強度は、曲げ位置以降での信号強度が大きくなっているとともに、探傷距離が遠い位置での信号強度ほど大きくなっている。
そして、図9の例では、探傷距離が「400mm」から「500mm」の間の一部において、信号強度が閾値を超えている。評価部104は、信号強度が閾値を超えている位置において素線16に損傷が生じていると判定する。
このように、本実施形態の超音波診断装置50では、素線16の長手方向の所定の位置に屈曲部22があっても、素線16の損傷を適切に診断することができる。
なお、信号補正部102は、曲げ角度に応じた増幅と、距離に応じた増幅との両方を適用する態様に限らない。信号補正部102は、曲げ角度に応じた増幅を適用し、距離に応じた増幅を省略してもよい。少なくとも曲げ角度に応じた増幅を行うことで、屈曲部22を有する素線16の損傷を適切に診断することが可能である。ただし、距離に応じた増幅を省略する態様と比べ、曲げ角度に応じた増幅と距離に応じた増幅との両方を行うことで、屈曲部22を有する素線16の損傷を、より適切に診断することが可能である。
図10は、制御装置64の動作を説明するフローチャートである。作業者は、制御用コンピュータ56の入出力装置60を通じて、診断の開始を指示する診断開始指示を入力する入力操作を行う。診断開始指示には、診断の開始を指示する情報に加え、ケーブル14の種類を示す情報も含まれる。
制御装置64の進行管理部100は、開始指示を受信すると、診断開始指示に含まれるケーブル14の種類を示す情報により、診断するケーブル14の種類を特定する(S10)。
進行管理部100は、特定されたケーブル14を構成する複数の素線16のうち、1つの素線16を診断対象として決定する(S11)。進行管理部100は、決定した診断対象の素線16とデータベース80とから、診断対象の素線16に対応する曲げ位置および曲げ角度を決定する(S12)。例えば、進行管理部100は、素線番号「1」の素線を診断対象として決定した場合、データベース80を参照し、素線番号「1」に対応する曲げ位置および曲げ角度を取得することができる。
次に、進行管理部100は、診断対象として決定された素線16を他の素線16と区別して表した配置画像110を生成する(S13)。進行管理部100は、生成した配置画像110を表示装置70に表示させる(S14)。
作業者は、表示装置70に表示された配置画像110を確認することで、超音波探触子52を当接させる素線16を把握することができる。作業者は、配置画像110により指示された素線16の先端面24に超音波探触子52を取り付ける。そして、作業者は、入出力装置60を通じて、超音波の照射を指示する照射開始指示を入力する入力操作を行う。
進行管理部100は、照射開始指示を受信したか否かを判断する(S20)。進行管理部100は、照射開始指示を受信するまで待機する(S20におけるNO)。
照射開始指示を受信した場合(S20におけるYES)、進行管理部100は、探傷装置54を制御して、超音波探触子52から超音波を照射させる(S21)。超音波の照射後、超音波探触子52は、照射した超音波に対する超音波エコーを受信する。探傷装置54は、超音波探触子52が受信した超音波エコーを示す電圧をA/D変換して制御用コンピュータ56に送信する。これにより、進行管理部100は、超音波探触子52が受信した超音波エコーを示す信号を取得する(S22)。
次に、信号補正部102は、ステップS22により取得した信号を補正する信号処理を行う(S23)。より詳細には、信号補正部102は、ステップS12で決定した曲げ位置および曲げ角度に基づいて、探傷距離に対する曲げ増幅率を設定する。信号補正部102は、探傷距離に対する距離増幅率を設定する。信号補正部102は、設定した曲げ増幅率と距離増幅率を合計して、探傷距離に対する合計増幅率を設定する。信号補正部102は、合計増幅率に基づいて、ステップS22により取得した信号を、設定した探傷距離に対する合計増幅率に基づいて増幅させる。
信号補正部102は、補正後の信号、すなわち、合計増幅率に基づいて増幅された後の信号を、診断対象の素線16と関連付けて記憶装置62に記憶させる(S24)。
次に、進行管理部100は、ステップS10で特定されたケーブル14を構成する全ての素線16に対して、超音波の照射および超音波エコーの取得が完了したかを判定する(S25)。
超音波の照射および超音波エコーの取得が完了していない残りの素線がある場合(S25におけるNO)、進行管理部100は、ステップS11に戻り、残りの素線16のうち1つの素線16を診断対象として決定する(S11)。このようにして、診断対象の素線16が順次切り替えられる。診断対象の素線16が切り替えられる都度、配置画像110が更新される(S13)。そして、切り替え後の素線16について、超音波の照射が行われて(S21)、超音波エコーを示す信号が取得され(S22)、取得された信号の補正が行われ(S23)、補正後の信号が記憶装置62に蓄積される(S24)。
全ての素線に対して、超音波の照射および超音波エコーの取得が完了した場合(S25におけるYES)、評価部104は、記憶装置62に蓄積された補正後の信号に基づいて、それぞれの素線16の損傷を評価する(S30)。進行管理部100は、評価結果を表示装置70に表示させ、一連の処理を終了する。
以上のように、本実施形態の超音波診断装置50は、長手方向の所定の位置において所定の曲げ角度で屈曲する屈曲部22を有する線材(例えば、橋梁用のケーブル14の素線16)の損傷を診断する。本実施形態の超音波診断装置50の信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号の少なくとも一部を、屈曲部22の曲げ角度に応じた増幅率で増幅させる。これにより、本実施形態の超音波診断装置50では、超音波探触子52が受信した信号の強度が屈曲部22の影響で低下したとしても、屈曲部22がない場合の適切な信号の強度に補正される。
したがって、本実施形態の超音波診断装置50によれば、屈曲している線材の損傷を適切に診断することが可能となる。
また、本実施形態の信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号のうち、線材の内部において屈曲部22よりも先端面24から遠い位置で反射した信号を、屈曲部22の曲げ角度に応じた増幅率で増幅させる。本実施形態の信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号のうち、線材の内部において屈曲部22よりも先端面24に近い位置で反射した信号を、屈曲部22の曲げ角度に応じた増幅率で増幅させない。
これにより、本実施形態の超音波診断装置50では、屈曲部22の影響を受ける屈曲部22よりも遠い位置で反射した信号に対してだけ、曲げ角度に応じた増幅が行われるため、超音波探触子52が受信した信号の強度を、より適切に補正することができる。その結果、本実施形態の超音波診断装置50では、屈曲している線材の損傷を、より適切に診断することができる。
また、本実施形態の信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号を、線材の長手方向における先端面24から超音波の反射位置までの距離に応じた増幅率で増幅させる補正をさらに行う。すなわち、信号補正部102は、超音波探触子52が受信した信号を、曲げ角度に応じた増幅率と距離に応じた増幅率とを合計した増幅率で増幅させる。
これにより、本実施形態の超音波診断装置50では、線材の損傷位置が先端面24から遠い位置にあったとしても、線材の損傷位置を適切に診断することができる。
また、本実施形態の進行管理部100は、ケーブル14の端面における複数の素線16の配置を示す配置画像110を表示装置70に表示させ、配置画像110において、診断対象として選定した素線16を他の素線16と区別可能に表示させる。
これにより、本実施形態の超音波診断装置50では、ケーブル14を構成する素線16の数が多くても、診断対象の素線16を作業者に容易に認識させることが可能となる。その結果、本実施形態の超音波診断装置50では、診断作業を円滑に進めることができる。また、本実施形態の超音波診断装置50では、診断対象の素線16とは異なる素線16に超音波探触子52を当接させるなどの誤診断を抑制することが可能となる。
また、本実施形態の記憶装置62には、屈曲部22の位置および曲げ角度が素線16ごとに設定されたデータベース80が予め記憶されている。本実施形態の信号補正部102は、診断対象の素線16とデータベース80とから曲げ角度を決定し、超音波探触子52が受信した信号を、決定した曲げ角度に応じた増幅率で増幅させる。
これにより、本実施形態の超音波診断装置50では、ケーブル14を構成する素線16ごとに曲げ角度が異なっていても、超音波探触子52が受信した信号を、診断対象の素線16の曲げ角度に応じて、適切に補正することができる。その結果、本実施形態の超音波診断装置50では、屈曲している線材の損傷を、より適切に診断することができる。
なお、本実施形態では、超音波診断装置50について説明していた。しかし、超音波診断装置50に限らず、長手方向の所定の位置において所定の曲げ角度で屈曲する屈曲部22を有する線材の損傷を診断する超音波診断方法が提供されてもよい。超音波診断方法は、線材の先端面24に当接された超音波探触子52から線材の内部に超音波を照射し、線材の内部で反射した超音波の信号を超音波探触子52により受信するステップを含む。超音波診断方法は、超音波探触子52が受信した信号の少なくとも一部を、屈曲部22の曲げ角度に応じた増幅率で増幅させる補正ステップを含む。超音波診断方法は、補正ステップによる補正後の信号に基づいて線材の損傷を評価するステップを含む。このような超音波診断方法によれば、屈曲している線材の損傷を適切に診断することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
本開示は、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に貢献することができる。