JP6387161B2 - 配管の損傷解析方法 - Google Patents
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Description
探傷装置本体22は、例えばコンピュータによって構成されており、プローブ24からの超音波の送受信制御や、受信信号の解析処理を行い、解析結果を断層画像としてディスプレイなどの表示装置(不図示)に表示可能に構成されている。
このように高速PA測定工程S10では、プローブ24を走査しながら溶接部12の全体に亘って高い測定感度で損傷状態を簡易的に測定する。これにより、溶接部が広範囲に亘る場合であっても、比較的短時間・低コストで損傷状態について信頼性のあるデータを取得することができる。
なお、余寿命とは、現時点から溶接部16がクリープ損傷により破断するまでの時間であるが、余寿命パラメータPrは、溶接部16の余寿命に関係する値を表すものであればよく、全寿命に対し現時点までに経過した時間の割合を示す寿命消費率であってもよい。
まず探傷装置20を高速PA測定に適した測定条件に設定する(ステップS20)。ここでは、一般的なPA測定に比べて測定感度が約10−20dB高く、且つ、プローブ24を手動走査可能なように測定条件が設定される。このような測定条件に設定することにより、プローブ24を手動走査した場合に、損傷状態を簡易的に把握可能な程度に波形情報を得ることができる。
この評価基準は、損傷状態に応じて、シンボル“A”、“B”、“C”及び“D”で示される4段階から構成される。シンボル“A”はエコーレベルが25%未満であり、波形に有意な指示が見られない場合に対応する。シンボル“B”はエコーレベルが25%以上&50%未満であり、波形に周囲と識別可能なエコーがある場合に対応する。シンボル“C”はエコーレベルが50%以上であり、波形に周囲と識別可能な高いエコーがある場合に対応する。シンボル“D”はエコーレベルが50%以上であり、波形に高いエコーが連続的に分布している場合に対応する。
S10の高速PA測定結果を取得し(ステップS30)、当該結果から評価レベルがシンボル“C”及び“D”である領域を検査対象領域として決定する(ステップS31)。これらの領域は、エコーレベルが50%以上と高いため、損傷が存在する可能性が高いため、詳細な検査を行う必要性が高いからである。
尚、後述する詳細PA測定工程にかける時間を更に確保可能である場合には、シンボル“B”についても検査対象領域に含めてもよい。
このように検査対象領域決定工程S12では、高速PA測定の結果に基づいて詳細検査を行う領域を、検査漏れリスクを抑えながら効率的に選定することができる。
まず探傷装置20を詳細PA測定に対応する測定条件に設定する(ステップS40)。ここでは、高速PA測定工程と同様に、一般的なPA測定に比べて測定感度が約10−20dB高く設定する一方で、プローブ24を自動走査するように測定条件が設定される。自動走査は、検査対象領域決定工程で決定された領域について詳細PA測定がなされるように設定される。
解析工程18では、予めクリープボイド個数密度と余寿命パラメータPr(例えば寿命消費率)との相関を示す特性曲線を用意しておく(ステップS50)。図14はクリープボイド個数密度と余寿命パラメータPrとの相関を示す特性曲線の一例を示すグラフである。
尚、特性曲線は、解析工程S18を実行する探傷装置本体22に内蔵又は外付けされた記憶媒体に予め記憶されている。
特性曲線は、予めクリープボイド個数密度及び余寿命パラメータPrが判明している複数の標準試料に基づいて規定される。これら標準試料は、検査対象となる配管10と同一又は類似の溶接部12を要するサンプルを高温クリープ試験に供し、当該高温クリープ試験を何回かに分けて中断し、その都度幾つかの標準試料32を抜き取ることにより用意される。これにより、異なるクリープボイド個数密度及び余寿命パラメータPrの組合せを有する複数の標準試料32が作成される。
なお例えば、前記抜き取りは、破断時間の20%、40%、60%、及び、80%に相当する時間で行われる。
上述した余寿命評価方法では、2種類のPA測定(高速PA測定及び詳細PA測定)を組み合わせることによって、溶接部12の内部における損傷評価を行った。このようにPA法を用いた測定は高精度で配管10の内部を探傷する手法として非常に有効であるが、表面近傍(例えば表面から数mm)の範囲は不感帯となるため、探傷ができない。
ここで図15は、MT法の測定例を示す図である。図15では、配管10の長手方向に沿って約70mmの連続した傷が存在していることが示されている。
まずMT法を用いて磁粉探傷することにより、表面状態の損傷を評価する(ステップS60)。また上述のPA法(図5を参照)を用いて、溶接部12の内部損傷について評価する(ステップS61)。上述したように、本実施形態で検査対象とされる配管10は、クロムを9〜12質量%程度含有する高クロム鋼や、高クロム鋼と類似組織を有しクロムを2〜3質量%程度含有する高強度低合金鋼から形成されるため、表面と内部の損傷状態に相関が少ない。そのため、ステップS60及びS61では、MT法とPA法によって、それぞれ表面及び内面の損傷状態が独立して評価される。
尚、ステップS60及びS61の実施順はこれに限定されず、同時であっても良いし、逆であっても良い。
一方、依然として表面キズが消失しない場合(ステップS68:NO)、処理をステップS64に進め、上記処理を行う。
尚、本願明細書では他の測定方法としてレプリカ法、斜角UT法、形状測定を組み合わせる例を示すが、これに限られない。
尚、斜角UTは測定に多くの時間を要さないため、溶接部12の全体に亘って行ってもよい。
尚、このような形状測定は比較的時間を要する作業であるため、例えば他の評価によって損傷可能性の高い箇所に限定して実施するとよい。
一方、内部の損傷状態については、図5に示すPA法(S73)に加えて、図18に示す斜角UT法の評価結果を考慮する(ステップS74)。そして更に、形状計測(外径、肉厚、溶金形状)も考慮する(S75)。これにより、PA法、斜角UT法、形状測定によって総合的に内部の損傷状態を評価して亀裂伝播解析(応力解析)が可能となる(ステップS76)。そして、当該解析結果に基づいて余寿命評価を行う(ステップS77)。
12 溶接部
14 溶金
16 熱影響部
20 フェイズドアレイ探傷装置
22 探傷装置本体
24 プローブ
Claims (5)
- 高クロム鋼又はクロム含有率が2〜3質量%である高強度フェライト鋼からなる配管の損傷解析方法であって、
フェイズドアレイ超音波探傷装置を用いて前記配管の内部にある第1領域の損傷状態を評価する第1評価工程と、
前記配管の内部のうち、前記フェイズドアレイ超音波探傷装置の不感帯である、前記第1領域より表面側の第2領域における損傷状態を、該第2領域からの反射波を前記配管の内側表面で全反射させてプローブで受信する斜角UT法により評価する第2評価工程と、
前記第1評価工程における前記第1領域の配管内部の損傷状態の評価結果、及び、前記第2評価工程における前記第2領域の配管内部の損傷状態の評価結果を少なくとも用い、亀裂伝播解析を行う解析工程と、
を備える、配管の損傷解析方法。 - 前記解析工程の前に、前記配管の溶接部の形状を測定する形状測定工程を更に備え、
前記解析工程は、前記形状測定工程の測定結果を用いて前記亀裂伝播解析を行う、請求項1に記載の配管の損傷解析方法。 - 前記第1評価工程および前記第2評価工程では、前記高クロム鋼又は前記高強度フェライト鋼からなる前記配管の長手方向に沿った溶接部における損傷状態を評価する請求項1又は2に記載の配管の損傷解析方法。
- 前記配管の表面損傷を評価する表面評価工程と、
前記解析工程及び前記表面評価工程の評価結果を総合的に考慮して、メンテナンス処置を決定するメンテナンス処置決定工程と、
を更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の配管の損傷解析方法。 - 前記表面評価工程は、MT法又はレプリカ法の少なくとも一方を含む、請求項4に記載の配管の損傷解析方法。
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