以下に本発明について詳細に説明する。
本開示において「アルカリ可溶性」及び「アルカリ水溶液可溶性」とは、ポジ型感光性樹脂組成物若しくはその成分、又はポジ型感光性樹脂組成物の被膜若しくは硬化被膜が、2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に溶解可能であることを意味する。「アルカリ可溶性官能基」とは、そのようなアルカリ可溶性を、ポジ型感光性樹脂組成物若しくはその成分、又はポジ型感光性樹脂組成物の被膜若しくは硬化被膜に付与する基を意味する。アルカリ可溶性官能基としては、例えば、カルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、酸無水物基、及びメルカプト基が挙げられる。
本開示において「酸分解性基」とは、酸の存在下、必要に応じて加熱を行うことにより、分解(脱保護)し、アルカリ可溶性官能基を生成させる基を意味する。
本開示において「ラジカル重合性官能基」とは、エチレン性不飽和基を意味し、「ラジカル重合性化合物」とは、1又は複数のエチレン性不飽和基を有する化合物を意味する。
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
本開示において、樹脂、重合体、又は共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、gel permeation chromatography)によって測定される、標準ポリスチレン換算値を意味する。
本開示において「樹脂成分」とは、第1樹脂(A)、及び第2樹脂(D)を合計した成分を意味する。
本開示において「固形分」とは、ポジ型感光性樹脂組成物について、第1樹脂(A)、光酸発生剤(B)、金属錯体染料(C)、第2樹脂(D)、溶解促進剤(E)、及び任意成分(F)を含み、溶媒(G)を除く成分の合計質量を意味する。
[ポジ型感光性樹脂組成物の製造方法]
一実施態様のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法は、複数のアルカリ可溶性官能基を有し、前記複数のアルカリ可溶性官能基の少なくとも一部が酸分解性基で保護された第1樹脂(A)と、光酸発生剤(B)と、アンモニウムカチオンを含む金属錯体染料(C)と、を含むポジ型感光性樹脂組成物に係るものであって、以下の工程1及び工程2を含む。
工程1:アンモニウムカチオンを含む金属錯体染料前駆体(c)をアミン反応性官能基を有する化合物と反応させることにより、金属錯体染料前駆体(c)中のアンモニウムカチオン含有量を低減させて、金属錯体染料(C)を得る、変性工程
工程2:第1樹脂(A)、光酸発生剤(B)、及び工程1で得た前記金属錯体染料(C)を混合する混合工程
〈工程1〉
工程1はアンモニウムカチオンを含む金属錯体染料前駆体(c)を、アミン反応性官能基を有する化合物と反応させることにより、金属錯体染料前駆体(c)中のアンモニウムカチオン含有量が低減された金属錯体染料(C)を得る、変性工程である。
アンモニウムカチオンを含む金属錯体染料前駆体(c)は、金属錯体染料(C)の原料となるものである。金属錯体染料前駆体(c)において染料として機能する金属錯体構造は、金属錯体染料(C)と基本的に同一である。典型的な金属錯体染料前駆体(c)では、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はアミノ基のような配位能を有する官能基を有するモノアゾ染料が、クロム、銅、コバルト、ニッケル、鉄などの金属イオンに対して配位結合した金属錯イオン(アニオン)とアンモニウムカチオン等のカウンターカチオンとから構成されている。金属錯体染料前駆体(c)は、一般に、2つのクラス、すなわち1:1型金属錯体染料(金属1原子にモノアゾ染料1分子が配位結合)及び1:2型金属錯体染料(金属1原子にモノアゾ染料2分子が配位結合)に分類される。モノアゾ染料は、一般には、o,o’-ジヒドロキシアゾ、o-ヒドロキシ-o’-アミノアゾ、又はo-ヒドロキシ-o’-カルボキシアゾのいずれかの構造をもつ。金属錯体染料前駆体(c)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
金属錯体染料前駆体(c)におけるアンモニウムカチオン含有量(質量%)は以下の手順で決定される。金属錯体染料前駆体(c)に内部標準物質として安息香酸メチル及び希釈溶媒としてテトラヒドロフランを加え、必要に応じてガスクロマトグラフィー用の前処理剤を添加して試料を調製する。得られた試料を撹拌した後、GC又はGC-MSで内部標準法を用いて分析し、アンモニウムカチオン含有量(質量%)を算出する。金属錯体染料前駆体(c)が2種類以上組み合わされる場合、金属錯体染料前駆体(c)のアンモニウムカチオン含有量は、当該2種類以上の金属錯体染料前駆体(c)のアンモニウムカチオンの合計質量を、当該2種類以上の金属錯体染料前駆体(c)の合計質量で割ることにより決定される。金属錯体染料前駆体(c)におけるアンモニウムカチオン含有量は、21質量%超であることが好ましい。
金属錯体染料前駆体(c)に含まれる金属錯イオンを形成する金属元素は、クロム、銅、コバルト、ニッケル、及び鉄からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、クロムであることがより好ましい。
本開示において、「アンモニウムカチオン」とは、式(8)で表される化合物である。
RxRyNH2
+ (8)
(式(8)において、Rx及びRyは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。)
アンモニウムカチオンとは、アミン化合物がプロトン化した化合物であり、アミン反応性官能基を有する化合物と反応しうる。本開示において、アミン化合物にはアンモニアも包含される。
式(8)において、Rx及びRyを表す有機基としては、炭素原子数1~20のアルキル基が好ましく、炭素原子数2~14のアルキル基がより好ましい。前記アルキル基は、置換基を有してもよい。前記アルキル基の置換基としては、例えば、水酸基及びアルコキシ基が挙げられる。
式(8)で表されるアンモニウムカチオンは、水酸基又はアルコキシ基を有してもよい、炭素原子数2~14のアルキルアミンのプロトン付加体、及びNH4
+からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
式(8)で表されるアンモニウムカチオンとしては、具体的には、エタノールアミンのプロトン付加体、ジエタノールアミンのプロトン付加体、メトキシプロピルアミン(CH3OC3H6NH2)のプロトン付加体、オクトオキシプロピルアミン(C8H17OC3H6NH2)のプロトン付加体、テトラデシルアミン(C14H29NH2)のプロトン付加体、及びNH4
+が挙げられる。
金属錯体染料前駆体(c)は、アンモニウムカチオンの他にNa+、Li+、K+、H+等のカウンターカチオンを含んでもよい。カウンターカチオンは、単独で、又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
金属錯体染料前駆体(c)としては、例えば、ソルベントブラック22~47のカラーインデックス(C.I.)で規定される黒色染料、ソルベントブルー44、137のC.I.で規定される青色染料、ソルベントイエロー13、19、21、25、25:1、62、79、81、82、83、83:1、88、89、90、151、161のC.I.で規定される黄色染料、ソルベントオレンジ5、11、20、40:1、41、45、54、56、58、62、70、81、99のC.I.で規定されるオレンジ色染料、ソルベントレッド8、35、83:1、84:1、90、90:1、91、92、118、119、122、124、125、127、130、132、160、208、212、214、225、233、234、243のC.I.で規定される赤色染料、ソルベントバイオレット2、21、21:1、46、49、58、6のC.I.で規定される紫色染料、ソルベントブラウン28、42、43、44、53、62、63のC.I.で規定される茶色染料、アシッドイエロー59、121、アシッドオレンジ74、162、アシッドレッド211のC.I.で規定される染料が挙げられる。
金属錯体染料前駆体(c)は、好ましくは、ソルベントブラック22~47のC.I.で規定される黒色染料より選択される少なくとも1種であり、より好ましくはソルベントブラック27、29又は34のC.I.で規定される黒色染料より選択される少なくとも1種である。上記金属錯体染料前駆体(c)から得られる金属錯体染料(C)を用いた場合、硬化後のポジ型感光性樹脂組成物の被膜の遮光性を維持することができる。
工程1のアミン反応性官能基を有する化合物におけるアミン反応性官能基としては、例えば、エステル基、酸無水物基、ハロゲン化アシル基、カルボキシ基、カルボニル基、シアノ基、及びハロゲノ基が挙げられる。工程1において、アミン反応性官能基を有する化合物として例えばエステルを用いた場合、金属錯体染料前駆体(c)中のアンモニウムカチオンとの反応によりアミドが生成する。
工程1において、金属錯体染料前駆体(c)中のアンモニウムカチオンとアミン反応性官能基を有する化合物との反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム等のアミド溶媒;及びn-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒が挙げられる。溶媒は、単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
溶媒はアミン反応性官能基を有する化合物であってもよい。アミン反応性官能基を有する溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、酪酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、γ-ブチロラクトン等のエステル溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;及びアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒が挙げられる。アミン反応性官能基を有する溶媒は、単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。これらの中でも、金属錯体染料前駆体(c)を溶解させる能力が高く、溶媒自身がアミンと穏やかに反応することから、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル溶媒が好ましい。
アミン反応性官能基を有する溶媒の使用量は、金属錯体染料前駆体(c)100質量部を基準として一般に10~5000質量部、好ましくは50~3000質量部、より好ましくは100~2000質量部である。アミン反応性官能基を有する溶媒の使用量が10質量部以上であれば、金属錯体染料前駆体(c)中のアンモニウムカチオンとの反応によりアンモニアカチオン含有量を有効に低減して、化学増幅系感光性樹脂組成物の感度を高めることができる。アミン反応性官能基を有する溶媒の使用量が5000質量部以下であれば、工程1の後に当該溶媒を除去せずに工程2を行う場合、化学増幅系感光性樹脂組成物の固形分濃度を適切な範囲に維持することができる。
アミン反応性官能基を有する溶媒以外にアミン反応性官能基を有する化合物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、酪酸無水物、イソ酪酸無水物、吉草酸無水物、イソ吉草酸無水物、酢酸と酪酸との混合無水物等の脂肪族カルボン酸無水物;安息香酸無水物、ケイ皮酸無水物、サリチル酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物;酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド、塩化ベンゾイル等の酸ハロゲン化物;トリメチルシリルクロライド、ジメチルフェニルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、メチルジフェニルシリルクロライド、tert-ブチルジメチルシリルクロライド、トリフェニルシリルクロライド等のハロゲン化シリル化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセチルアセトン等の脂肪族カルボニル化合物;ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族カルボニル化合物;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化プロピル、塩化イソプロピル、ヨウ化イソプロピル、塩化ブチル、塩化イソブチル、臭化イソブチル、ヨウ化イソブチル等のハロゲン化アルキル化合物;塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル等のハロゲン化アルケニル化合物;及び塩化プロパルギル、臭化プロパルギル、ヨウ化プロパルギル、塩化-1-メチルプロパルギル、臭化-1-メチルプロパルギル等のハロゲン化アルキニル化合物が挙げられる。
溶媒以外のアミン反応性官能基を有する化合物の使用量は、金属錯体染料前駆体(c)100質量部を基準として一般に1~500質量部、好ましくは2~200質量部、より好ましくは5~100質量部である。
工程1の反応時間は、一般に0.01時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは2時間以上である。
工程1の反応温度は、一般に0~200℃、好ましくは10~150℃、より好ましくは20~120℃である。
アミン反応性官能基を有する化合物とアンモニウムカチオンとの反応の進行度は、一般に反応温度及び反応時間の両方に左右される。工程1の反応温度が0℃以上20℃未満の場合、反応時間は好ましくは1時間~4万時間、より好ましくは3時間~3万時間である。工程1の反応温度が20℃以上60℃未満の場合、反応温度は好ましくは1時間~3万時間、より好ましくは2時間~2万時間である。工程1の反応温度が60℃超120℃以下の場合、反応時間は好ましくは0.1時間~800時間、より好ましくは0.3時間~500時間である。工程1の反応温度が120℃超200℃以下の場合、反応温度は好ましくは0.01時間~100時間、より好ましくは0.02時間~30時間である。
工程1は、空気、酸素ガス、又は窒素ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
工程1は、金属錯体染料前駆体(c)とアミン反応性官能基を有する化合物を含む溶液を撹拌して行ってもよく、前記溶液を静置して行ってもよい。
工程1は、アミン反応性官能基を有する化合物を溶媒として用い、金属錯体染料前駆体(c)を前記溶媒に溶解させて撹拌又は静置することにより行うことが好ましい。アミン反応性官能基を有する化合物を溶媒として用いると、工程1の操作を容易にすることができる。
工程1で金属錯体染料前駆体(c)中のアンモニウムカチオン含有量を低減させて得られた金属錯体染料(C)は、溶液状態のまま工程2に使用してもよい。あるいは、金属錯体染料(C)を再結晶、再沈殿等の方法によって固体状態で取り出してもよく、金属錯体染料(C)を含む溶液をロータリエバポレーター等を使用して所望の濃度まで濃縮してもよい。
〈工程2〉
工程2は第1樹脂(A)、光酸発生剤(B)、及び前記工程1で得た金属錯体染料(C)を混合する混合工程である。第1樹脂(A)、光酸発生剤(B)及び金属錯体染料(C)の詳細は後述する。第1樹脂(A)及び光酸発生剤(B)は粉体で混合した後に溶媒に溶解させてもよく、一方又は両方を溶媒に溶解させて所望の濃度の溶液としてから混合してもよい。混合装置としては、撹拌浴を備えた反応釜、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ボールミル、ミックスロータ、超音波ミキサー、ビーズミル、フィルミックス分散装置等の一般的な撹拌装置を用いることができる。
[ポジ型感光性樹脂組成物]
一実施態様のポジ型感光性樹脂組成物は、複数のアルカリ可溶性官能基を有し、複数のアルカリ可溶性官能基の少なくとも一部が酸分解性基で保護された第1樹脂(A)と、光酸発生剤(B)と、金属錯体染料(C)とを含む。
〈第1樹脂(A)〉
第1樹脂(A)は、複数のアルカリ可溶性官能基を有し、複数のアルカリ可溶性官能基の少なくとも一部が酸分解性基で保護されたものであれば特に限定されない。アルカリ可溶性官能基としては、カルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、酸無水物基、及びメルカプト基を挙げることができる。中でも、アルカリ可溶性官能基は、カルボキシ基又はフェノール性水酸基であることが好ましく、フェノール性水酸基であることがより好ましい。
アルカリ可溶性官能基の一部が酸分解性基で保護されていることにより、第1樹脂(A)の露光前のアルカリ溶解性は抑制されている。第1樹脂(A)は、酸分解性基で保護されたアルカリ可溶性官能基以外のアルカリ可溶性官能基を有していてもよい。
露光時に発生した酸の存在下、必要に応じて露光後ベーク(PEB、post exposure bake)を行うことにより、酸分解性基の分解(脱保護)が促進され、アルカリ可溶性官能基が再生する。これにより現像時に露光部で第1樹脂(A)のアルカリ溶解が促進される。第1樹脂(A)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。例えば、第1樹脂(A)は、重合体の構造単位、酸分解性基、アルカリ可溶性官能基の保護率、又はこれらの組み合わせが異なる2種類以上の樹脂の組み合わせであってよい。
(酸分解性基によるアルカリ可溶性官能基の保護)
第1樹脂(A)は、複数のアルカリ可溶性官能基を有するベース樹脂(a)のアルカリ可溶性官能基の一部を酸分解性基で保護することによって得ることができる。例えば、アルカリ可溶性官能基がフェノール性水酸基の場合、酸分解性基で保護されたフェノール性水酸基を有する第1樹脂(A)は、Ar-O-R5の部分構造を有し、Arはフェノール由来の芳香環を表し、R5は酸分解性基を表す。
酸分解性基は、酸の存在下、必要に応じて加熱を行うことにより、分解(脱保護)し、アルカリ可溶性官能基を生成させる基である。具体的には、例えば、tert-ブチル基、1,1-ジメチル-プロピル基、1-メチルシクロペンチル基、1-エチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-エチルシクロヘキシル基、1-メチルアダマンチル基、1-エチルアダマンチル基、tert-ブトキシカルボニル基、1,1-ジメチル-プロポキシカルボニル基などの三級アルキル基を有する基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基などのシリル基;及び式(4)
-CR6R7-O-R8 (4)
(式(4)において、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の直鎖アルキル基、又は炭素原子数3~4の分岐アルキル基であり、R8は、炭素原子数1~12の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の分岐アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基、又は炭素原子数2~12のアルケニル基であり、あるいはR6又はR7の一方とR8とが結合して環員数3~10の環構造を形成してもよく、R6、R7、及びR8は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表される基が挙げられる。式(4)で表される基は、アルカリ可溶性官能基がアルコール性水酸基、又はフェノール性水酸基の場合、アルカリ可溶性官能基由来の酸素原子と一緒にアセタール構造又はケタール構造を形成する。これらの酸分解性基は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
低露光量でも高感度の感光性樹脂組成物が得られることから、酸分解性基は、式(4)で表される基であることが好ましい。R6及びR7は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4の直鎖アルキル基、又は炭素原子数3~4の分岐アルキル基であり、R8は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素原子数1~12の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の分岐アルキル基、又は炭素原子数3~12の環状アルキル基であることがより好ましい。そのような酸分解性基としては、例えば、1-アルコキシアルキル基が挙げられる。1-アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-n-プロポキシエチル基、1-n-ブトキシエチル基、1-イソブトキシエチル基、1-(2-クロロエトキシ)エチル基、1-(2-エチルヘキシルオキシ)エチル基、1-シクロヘキシルオキシエチル基、及び1-(2-シクロヘキシルエトキシ)エチル基が挙げられ、1-エトキシエチル基及び1-n-プロポキシエチル基が好ましい。酸分解性基として、式(4)で表される基であって、R6又はR7の一方とR8とが結合して環員数3~10の環構造を形成したものも好適に使用することができる。このとき、環構造の形成に関与しないR6又はR7は、水素原子であることが好ましい。そのような酸分解性基としては、例えば、2-テトラヒドロフラニル基、及び2-テトラヒドロピラニル基が挙げられ、2-テトラヒドロフラニル基が好ましい。
アルカリ可溶性官能基の保護反応は、一般的な保護剤を用いて公知の条件で行うことができる。例えば、無溶媒又はトルエン、ヘキサン等の溶媒中で、第1樹脂(A)のベース樹脂(a)と保護剤とを、酸又は塩基の存在下、反応温度-20~50℃で反応させることにより、第1樹脂(A)を得ることができる。
保護剤として、アルカリ可溶性官能基を保護することが可能な公知の保護剤を使用することができる。保護剤としては、例えば、酸分解性基がtert-ブチル基の場合はイソブテン、tert-ブトキシカルボニル基の場合は二炭酸ジ-tert-ブチルを用いることができる。酸分解性基がトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などのシリル基の場合は、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライドなどのケイ素含有塩化物、又はトリメチルシリルトリフラート、トリエチルシリルトリフラートなどのケイ素含有トリフラート化合物を用いることができる。酸分解性基がメトキシメチル基の場合はクロロメチルメチルエーテル、1-エトキシエチル基の場合はエチルビニルエーテル、1-n-プロポキシエチル基の場合はn-プロピルビニルエーテル、2-テトラヒドロフラニル基の場合は2,3-ジヒドロフラン、2-テトラヒドロピラニル基の場合は3,4-ジヒドロ-2H-ピランなどを用いることができる。
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等の無機酸、及びメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。有機酸の塩、例えばp-トルエンスルホン酸のピリジニウム塩なども酸供給源として使用することができる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の無機炭酸塩、水素化ナトリウム等の金属水素化物、及びピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、イミダゾール、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン化合物が挙げられる。
別の実施態様では、1又は複数のアルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体の当該アルカリ可溶性官能基の少なくとも一部又は全部を酸分解性基で保護した後、酸分解性基で保護されたアルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体及び必要に応じてその他の重合性単量体を重合又は共重合することにより、第1樹脂(A)を得ることもできる。アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体のアルカリ可溶性官能基の保護は、ベース樹脂(a)のアルカリ可溶性官能基の保護と同様の方法で行うことができる。
(ベース樹脂(a))
第1樹脂(A)のベース樹脂(a)としては、例えば、複数のアルカリ可溶性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体、シリコーン樹脂、環状オレフィンポリマー、カルド樹脂、及びこれらの樹脂の誘導体が挙げられる。例えば、フェノール樹脂の誘導体としては、アルケニル基がベンゼン環に結合したポリアルケニルフェノール樹脂、ポリスチレン樹脂の誘導体としては、フェノール性水酸基とヒドロキシアルキル基又はアルコキシ基とがベンゼン環に結合したヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体が挙げられる。ベース樹脂(a)として、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体の単独重合体又は共重合体を使用することもできる。これらのベース樹脂(a)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
ベース樹脂(a)はラジカル重合性官能基を有してもよい。一実施態様では、ベース樹脂(a)はラジカル重合性官能基として(メタ)アクリロイルオキシ基、アリル基又はメタリル基を有する。
(アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体(a1))
一実施態様では、第1樹脂(A)のベース樹脂(a)は、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体(a1)であり、共重合体(a1)は複数のアルカリ可溶性官能基を有する。この実施態様において、第1樹脂(A)は、共重合体(a1)の複数のアルカリ可溶性官能基の少なくとも一部が酸分解性基で保護されたものである。共重合体(a1)は、2種類以上のアルカリ可溶性官能基を有してもよい。
重合性単量体が有する重合性官能基としては、ラジカル重合性官能基を挙げることができ、例えば、CH2=CH-、CH2=C(CH3)-、CH2=CHCO-、CH2=C(CH3)CO-、及び-OC-CH=CH-CO-が挙げられる。
共重合体(a1)は、例えば、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。ラジカル重合により共重合体を合成した後に、アルカリ可溶性官能基を前記共重合体に付加してもよい。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体としては、例えば、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、マレイン酸無水物等のマレイン酸誘導体;(メタ)アクリル酸、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、α-クロル(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸等のアクリル酸誘導体;及びフマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸、3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸等の不飽和カルボン酸化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコール性水酸基を有する重合性単量体;4-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジルアクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルアクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有する重合性単量体;(メタ)アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホ基を有する重合性単量体;リン酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)等のリン酸基を有する重合性単量体;及び無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基を有する重合性単量体が挙げられる。その他の重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル化合物;アルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミドが挙げられる。
耐熱性等の観点から、共重合体(a1)は、脂環式構造、芳香族構造、多環式構造、無機環式構造、複素環式構造等の1種又は複数種の環式構造を有することが好ましい。感度の観点から、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体は、アクリル酸誘導体又はフェノール性水酸基を有する重合性単量体であることが好ましく、フェノール性水酸基を有する重合性単量体であることが更に好ましい。
フェノール性水酸基を有する重合性単量体として、重合後に式(1)
で表される構造単位を形成するものが好ましい。式(1)において、R1は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、aは1~5の整数である。
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基が好ましい。aは1~3の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。そのようなフェノール性水酸基を有する重合性単量体として、4-ヒドロキシフェニルメタクリレートが特に好ましい。
その他の重合性単量体として、重合後に式(2)
で表される構造単位を形成するものが好ましい。式(2)において、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1~3のフルオロアルキル基、又はハロゲン原子であり、R4は、水素原子、炭素原子数1~6の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。
式(2)において、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。R4は、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基であることが好ましく、炭素原子数3~12の環状アルキル基、又はフェニル基であることがより好ましい。そのようなその他の重合性単量体として、フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。
一実施態様では、共重合体(a1)は、式(1)
(式(1)において、R1は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、aは1~5の整数である。)
で表される構造単位、及び式(2)
(式(2)において、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1~3のフルオロアルキル基、又はハロゲン原子であり、R4は、水素原子、炭素原子数1~6の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。)
で表される構造単位を有する。
共重合体(a1)において、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位のモル比は、式(1):式(2)=70~95:30~5であることが好ましく、式(1):式(2)=75~90:25~10であることがより好ましい。
フェノール性水酸基を有する重合性単量体として4-ヒドロキシフェニルメタクリレートを用い、その他の重合性単量体としてフェニルマレイミド又はN-シクロヘキシルマレイミドを用いることが特に好ましい。これらの重合性単量体をラジカル重合させた樹脂を用いることにより、形状維持性、現像性を向上させるとともにアウトガスも低減することができる。
ベース樹脂(a)又は共重合体(a1)をラジカル重合によって製造する際の重合開始剤としては、以下に限定されないが、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(AVN)等のアゾ重合開始剤;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の10時間半減期温度が100~170℃の過酸化物重合開始剤;又は過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、1,1’-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシピバレート等の過酸化物重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤の使用量は、重合性単量体の合計100質量部に対して、0.01質量部以上、0.05質量部以上又は0.5質量部以上であることが好ましく、40質量部以下、20質量部以下又は15質量部以下であることが好ましい。
RAFT(Reversible Addition Fragmentation Transfer、可逆的付加開裂型連鎖移動)剤を重合開始剤と併用してもよい。RAFT剤としては、次のものに限定されないが、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボナート、キサンタートなどのチオカルボニルチオ化合物を使用することができる。
RAFT剤は、重合性単量体の合計100質量部に対して、0.005~20質量部の範囲で使用することができ、0.01~10質量部の範囲で使用することが好ましい。
ベース樹脂(a)又は共重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、3000~80000とすることができ、4000~70000であることが好ましく、5000~60000であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)は1000~30000とすることができ、1500~25000であることが好ましく、2000~20000であることがより好ましい。多分散度(Mw/Mn)は、1.0~3.5とすることができ、1.1~3.0であることが好ましく、1.2~2.8であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び多分散度(Mw/Mn)を上記範囲とすることで、アルカリ溶解性及び現像性に優れたポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
一実施態様では、第1樹脂(A)のアルカリ可溶性官能基の1モル%~99モル%、好ましくは3モル%~98モル%、より好ましくは5モル%~97モル%が酸分解性基で保護されている。第1樹脂(A)において、酸分解性基で保護されているアルカリ可溶性官能基の割合を1モル%以上とすることで、化学増幅機能を感光性樹脂組成物に付与して高感度を実現することができる。酸分解性基で保護されているアルカリ可溶性官能基の割合を99モル%以下とすることで、露光時に反応しない酸分解性基の残存量を低減し、露光部の溶解性を高めて高感度を実現することができる。酸分解性基で保護されているアルカリ可溶性官能基の割合は、熱重量示差熱分析装置(TG/DTA)による第1樹脂(A)の重量減少率(%)より算出される。本開示において、第1樹脂(A)が保護率及び/又は酸分解性基の異なる2種類以上の樹脂の組み合わせである場合、第1樹脂(A)のアルカリ可溶性官能基の保護割合は、2種以上の樹脂を全体として一つの第1樹脂(A)とみなしたときの数値である。
第1樹脂(A)は、式(3)
(式(3)において、R1は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、R5は酸分解性基であり、rは0~5の整数であり、sは0~5の整数であり、但しr+sは1~5の整数である。)で表される構造単位を有し、sが1以上の整数である式(3)で表される構造単位を少なくとも1つ有することが好ましい。R5の酸分解性基は、三級アルキル基を有する基、及び式(4)
-CR6R7-O-R8 (4)
で表される基から選択されるいずれかであることが好ましい。
三級アルキル基を有する基としては、tert-ブチル基、1,1-ジメチル-プロピル基、1-メチルシクロペンチル基、1-エチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-エチルシクロヘキシル基、1-メチルアダマンチル基、1-エチルアダマンチル基、tert-ブトキシカルボニル基、1,1-ジメチル-プロポキシカルボニル基などが挙げられる。三級アルキル基を有する基としては、tert-ブトキシカルボニル基が好ましい。
式(4)において、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の直鎖アルキル基、又は炭素原子数3~4の分岐アルキル基であり、R8は、炭素原子数1~12の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の分岐アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基、又は炭素原子数2~12のアルケニル基であり、あるいはR6又はR7の一方とR8とが結合して環員数3~10の環構造を形成してもよく、R6、R7、及びR8は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子で置換されていてもよい。
式(4)において、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の直鎖アルキル基、又は炭素原子数3~4の分岐アルキル基であり、R8は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素原子数1~12の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の分岐アルキル基、又は炭素原子数3~12の環状アルキル基であることがより好ましい。
そのような酸分解性基としては、例えば、1-アルコキシアルキル基が挙げられる。1-アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-n-プロポキシエチル基、1-n-ブトキシエチル基、1-イソブトキシエチル基、1-(2-クロロエトキシ)エチル基、1-(2-エチルヘキシルオキシ)エチル基、1-シクロヘキシルオキシエチル基、及び1-(2-シクロヘキシルエトキシ)エチル基が挙げられ、1-エトキシエチル基及び1-n-プロポキシエチル基が好ましい。
式(4)で表される基であって、R6又はR7の一方とR8とが結合して環員数3~10の環構造を形成した酸分解性基としては、例えば、2-テトラヒドロフラニル基、及び2-テトラヒドロピラニル基が挙げられ、2-テトラヒドロフラニル基が好ましい。
第1樹脂(A)は、式(2)
(式(2)において、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1~3のフルオロアルキル基、又はハロゲン原子であり、R4は、水素原子、炭素原子数1~6の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。)で表される構造単位を有することが好ましい。
式(2)において、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。R4は、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基であることが好ましく、炭素原子数3~12の環状アルキル基、又はフェニル基であることがより好ましい。
一実施態様では、式(3)で表され、かつsが1以上の整数である構造単位、すなわち少なくとも1つのアルカリ可溶性官能基が酸分解性基で保護されている式(3)で表される構造単位の数が、第1樹脂(A)の全構造単位数の1%~95%、好ましくは2%~90%、より好ましくは4%~85%である。上記構造単位の割合を1%以上とすることで、化学増幅機能を感光性樹脂組成物に付与して高感度を実現することができる。上記構造単位の割合を95%以下とすることで、未反応の酸分解性基の残存量を低減し、露光部の溶解性を高めて高感度を実現することができる。なお、第1樹脂(A)が保護率及び/又は酸分解性基の異なる2種類以上の樹脂の組み合わせである場合、上記構造単位の割合は、1種類の樹脂における、式(3)で表され、かつsが1以上の整数である構造単位の割合である。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、第1樹脂(A)を1質量%~80質量%、好ましくは2質量%~65質量%、より好ましくは3質量%~50質量%含む。第1樹脂(A)の含有量が、固形分100質量%を基準として1質量%以上であると、化学増幅機能を感光性樹脂組成物に付与して高感度を実現することができる。第1樹脂(A)の含有量が、固形分100質量%を基準として80質量%以下であると、未反応の酸分解性基の残存量を低減し、露光部の溶解性を高めて高感度を実現することができる。
〈光酸発生剤(B)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は光酸発生剤(B)を含む。光酸発生剤(B)は可視光、紫外光、γ線、電子線などの放射線が照射されると酸を生成する化合物である。光酸発生剤(B)は、第1樹脂(A)の酸分解性基の分解を促進してアルカリ可溶性官能基を再生させ、第1樹脂(A)のアルカリ溶解性を増大させる。また、放射線が照射された部分に光酸発生剤(B)から生じた酸が存在することで、その部分の樹脂が酸と一緒にアルカリ水溶液に溶解し易くなる。その結果、低露光量でも高感度で高解像度のパターンを形成することができる。光酸発生剤(B)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、光酸発生剤(B)を1質量%~50質量%、好ましくは2質量%~40質量%、より好ましくは3質量%~30質量%含む。光酸発生剤(B)の含有量が、固形分100質量%を基準として1質量%以上であると、高感度を実現することができる。光酸発生剤(B)の含有量が、固形分100質量%を基準として50質量%以下であるとアルカリ現像性が良好である。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は光酸発生剤(B)としてキノンジアジド化合物を含む。キノンジアジド化合物は、可視光、紫外光、γ線、電子線などの放射線が照射されると、下記反応式1に示す反応を経てアルカリ可溶性のカルボン酸化合物を生成する。生成したカルボン酸化合物は、第1樹脂(A)の酸分解性基の分解を促進してアルカリ可溶性官能基を再生させ、第1樹脂(A)のアルカリ溶解性を増大させる。キノンジアジド化合物は、感光前にはノボラック樹脂などのバインダー樹脂の官能基と相互作用(例えば水素結合形成)して、そのバインダー樹脂をアルカリ水溶液に対して不溶化させる。その一方で、放射線が照射された部分にアルカリ可溶性のカルボン酸化合物が存在することで、その部分にある樹脂がカルボン酸化合物と一緒にアルカリ水溶液に溶解し易くなる。更に、カルボン酸化合物は、化学増幅レジストに一般に使用される光酸発生剤から生じる酸、例えばp-トルエンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸などよりも分子構造が相対的に大きく、被膜中で拡散しにくい。これらが相乗的に作用する結果、未露光部と露光部のアルカリ可溶性の差を大きくすることができ、それにより低露光量でも高感度で高解像度のパターンを形成することができる。キノンジアジド化合物は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
一実施態様では、一般的な化学増幅レジストに必要な露光後の加熱処理(PEB)を行わなくても、高い解像度のパターンを形成することができる。キノンジアジド化合物は量子収率が比較的高く、露光部でカルボン酸化合物が効率よく生成される。カルボン酸化合物で分解が可能な酸分解性基が周囲に存在すると、生成したカルボン酸化合物により室温でも酸分解性基の分解が起こってアルカリ可溶性官能基が再生し、その結果、未露光部と露光部のアルカリ可溶性の差を大きくすることができる。PEBを省略することにより、光酸発生剤から生じた酸がPEB時の高温環境下で未露光部に過度に拡散することに起因するパターン形成性の低下を抑制することができる。また、任意成分として後述するエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂を使用する場合、PEBを省略するとエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂のエポキシ基の開環重合が進行しないため、現像時にエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂のアルカリ溶解性を維持することができる。
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合又はスルホンアミド結合したもの等が挙げられる。露光部と未露光部のコントラストの観点から、ポリヒドロキシ化合物又はポリアミノ化合物の官能基全体の20モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。
ポリヒドロキシ化合物としては、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP、DML-POP、ジメチロール-BisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-BP、TML-HQ、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業株式会社)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A、46DMOC、46DMOEP、TM-BIP-A(以上、商品名、旭有機材工業株式会社)、2,6-ジメトキシメチル-4-tert-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP-AP(商品名、本州化学工業株式会社)等が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリアミノ化合物としては、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリヒドロキシポリアミノ化合物としては、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジヒドロキシベンジジン等が挙げられるが、これらに限定されない。
キノンジアジド化合物は、ポリヒドロキシ化合物の1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステルであることが好ましい。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、キノンジアジド化合物を1質量%~50質量%、好ましくは2質量%~40質量%、より好ましくは3質量%~30質量%含む。キノンジアジド化合物の含有量が、固形分100質量%を基準として1質量%以上であると、高感度を実現することができる。キノンジアジド化合物の含有量が、固形分100質量%を基準として50質量%以下であるとアルカリ現像性が良好である。
キノンジアジド化合物以外の光酸発生剤(B)としては、放射線照射によりpKaが4以下の酸を発生するものが好ましく、pKaが3以下の酸を発生するものがより好ましい。このような光酸発生剤(B)は、酸分解性基の分解能力を有する酸を生成することができる。
キノンジアジド化合物以外の光酸発生剤(B)としては、放射線照射によりpKaが-15以上の酸を発生するものが好ましく、pKaが-5以上の酸を発生するものがより好ましい。このような光酸発生剤(B)は、露光及び露光後の加熱処理(PEB)時に、任意成分である後述する第2樹脂(D)となりうるエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂が存在している場合に、そのエポキシ基の開環重合を過度に進行させずに、現像時にエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂のアルカリ溶解性を維持することができる。
そのような光酸発生剤(B)として、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩、第四級アンモニウム塩、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及びオキシムスルホネート化合物が挙げられる。これらの中でも、高感度であり絶縁性が高いことから、オキシムスルホネート化合物を用いることが好ましい。
オキシムスルホネート化合物として、例えば、式(5)で表される化合物が挙げられる。
式(5)において、R9は、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のアリール基、又はハロゲン原子であり、R10及びR11は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換の複素環基、シアノ基、アシルオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又はフルオロアルキル基である。R10とR11とが結合して環構造を形成してもよい。環構造の環員数は3~10であることが好ましい。
R9の置換又は非置換のアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3~10の分岐アルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、又はn-プロピル基であることが好ましい。
R9の置換又は非置換のアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1~5の直鎖状アルコキシ基又は炭素原子数3~5の分岐アルコキシ基が挙げられ、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
R9のアルキル基及びアルコキシ基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子1~10のアルコキシ基、及び炭素原子数3~10のシクロアルキル基が挙げられる。
R9の置換のアルキル基は、フルオロアルキル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、又はヘプタフルオロプロピル基であることがより好ましく、トリフルオロメチル基であることが更に好ましい。
R9の置換又は非置換のアリール基としては、例えば、炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、フェニル基、4-メチルフェニル基、又はナフチル基であることが好ましい。
R9のアリール基の置換基としては、例えば、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、及びハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)が挙げられる。
R9のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
R10及びR11の置換又は非置換のアリール基としては、例えば、炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、フェニル基又はナフチル基であることが好ましい。
R10及びR11の置換又は非置換の複素環基としては、例えば、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、2-ベンゾイミダゾリル基、2-ベンゾオキサゾリル基、2-ベンゾチアゾリル基、2-インドリル基、3-クマリニル基、4-クマリニル基、3-イソクマリニル基、及び4-イソクマリニル基が挙げられる。
R10及びR11のアリール基及び複素環基の置換基としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数2~4のアシルオキシ基、及びハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)が挙げられる。
R10及びR11のアシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、及びベンゾイル基が挙げられる。R10及びR11のアルコキシカルボニル基としては、例えば、エトキシカルボニル基が挙げられる。
R10及びR11のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、及びヘプタフルオロプロピル基が挙げられる。
R10がシアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又はフルオロアルキル基であることが好ましく、シアノ基、又はトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
R11が置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換の複素環基であることが好ましく、4-メトキシフェニル基、又は置換若しくは非置換の2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、3-クマリニル基、4-クマリニル基、3-イソクマリニル基、若しくは4-イソクマリニル基であることが好ましい。
R10とR11とが結合して形成された環構造を有するオキシムスルホネート化合物として、例えば、式(5a)で表されるオキシムスルホネート化合物が挙げられる。
式(5a)において、R9は、式(5)について説明したとおりであり、R12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、mは0~5の整数を表す。
R12のアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3~10の分岐アルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、又はn-プロピル基であることが好ましい。
R12のアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1~5の直鎖状アルコキシ基又は炭素原子数3~5の分岐アルコキシ基が挙げられ、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
R12のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、塩素原子又はフッ素原子であることが好ましい。mは0又は1であることが好ましい。
オキシムスルホネート化合物として、例えば、(Z,E)-2-(4-メトキシフェニル)([((4-メチルフェニル)スルホニル)オキシ]イミノ)アセトニトリル、2-[2-(プロピルスルホニルオキシイミノ)チオフェン-3(2H)-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、及び2-[2-(4-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)チオフェン-3(2H)-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリルが挙げられる。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、キノンジアジド化合物以外の光酸発生剤(B)を0.5質量%~50質量%、好ましくは1質量%~40質量%、より好ましくは2質量%~30質量%含む。キノンジアジド化合物以外の光酸発生剤(B)の含有量が、固形分100質量%を基準として0.5質量%以上であると、高感度を実現することができる。キノンジアジド化合物以外の光酸発生剤(B)の含有量が、固形分100質量%を基準として50質量%以下であると、アルカリ現像性が良好である。
〈金属錯体染料(C)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は金属錯体染料(C)を含む。金属錯体染料(C)は、顔料と比較して現像時の残渣が少なく、高精細のパターンを被膜に形成することができる。また、金属錯体染料(C)は、有機溶媒に溶解しやすく、高濃度で配合しても溶液中で析出しにくい。更に、露光後の加熱処理時に退色しにくいため、硬化被膜の光学濃度(OD値)を効率的に高めることができる。金属錯体染料(C)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
金属錯体染料(C)は、前述のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法の工程1において金属錯体前駆体(c)をアミン反応性官能基を有する化合物と反応させることにより、金属錯体染料前駆体(c)中のアンモニウムカチオン含有量を低減させて得られるものである。いかなる理論に拘束される訳ではないが、金属錯体染料(C)中のアンモニウムカチオン含有量が多い場合、当該アンモニウムカチオンが脱プロトン化して生成する多量のアミンによってポジ型感光性樹脂組成物中のアルカリ可溶性官能基、例えばフェノール性水酸基がキャッピングされる。このキャッピングによりポジ型感光性樹脂組成物の露光部におけるアルカリ溶解性が低下する。その結果、未露光部と露光部の溶解性差が小さくなり、ポジ型感光性樹脂組成物の感度が低下する。本開示によれば、金属錯体染料(C)のアンモニウムカチオン含有量を低減させることで、高感度のポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
金属錯体染料(C)のアンモニウムカチオン含有量は、好ましくは21質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましく18質量%以下である。金属錯体染料(C)のアンモニウムカチオン含有量を21質量%以下とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の感度をより高めることができる。金属錯体染料(C)のアンモニウムカチオン含有量は好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。金属錯体染料(C)のアンモニウムカチオン含有量を0.5質量%以上とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物及びその被膜において、金属錯体染料(C)の安定性をより高めることができる。金属錯体染料(C)におけるアンモニウムカチオン含有量(質量%)は、前述の金属錯体前駆体(c)におけるアンモニウムカチオン含有量(質量%)と同じ手順で決定される。
金属錯体染料(C)に含まれる金属錯イオンを形成する金属元素は、クロム、銅、コバルト、ニッケル、及び鉄からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、クロムであることがより好ましい。
金属錯体染料(C)に含まれるアンモニウムカチオンとしては、上記式(8)で挙げたものを用いることができる。アンモニウムカチオンは、水酸基又はアルコキシ基を有してもよい、炭素原子数2~14のアルキルアミンのプロトン付加体、及びNH4
+からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。具体的には、エタノールアミンのプロトン付加体、ジエタノールアミンのプロトン付加体、メトキシプロピルアミン(CH3OC3H6NH2)のプロトン付加体、オクトオキシプロピルアミン(C8H17OC3H6NH2)のプロトン付加体、テトラデシルアミン(C14H29NH2)のプロトン付加体、及びNH4
+が挙げられる。
金属錯体染料(C)は、アンモニウムカチオンの他にNa+、Li+、K+、H+等のカウンターカチオンを含んでもよい。カウンターカチオンは、単独で、又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
金属錯体染料(C)としては、例えば、ソルベントブラック22~47のカラーインデックス(C.I.)で規定される黒色染料、ソルベントブルー44、137のC.I.で規定される青色染料、ソルベントイエロー13、19、21、25、25:1、62、79、81、82、83、83:1、88、89、90、151、161のC.I.で規定される黄色染料、ソルベントオレンジ5、11、20、40:1、41、45、54、56、58、62、70、81、99のC.I.で規定されるオレンジ色染料、ソルベントレッド8、35、83:1、84:1、90、90:1、91、92、118、119、122、124、125、127、130、132、160、208、212、214、225、233、234、243のC.I.で規定される赤色染料、ソルベントバイオレット2、21、21:1、46、49、58、6のC.I.で規定される紫色染料、ソルベントブラウン28、42、43、44、53、62、63のC.I.で規定される茶色染料、アシッドイエロー59、121、アシッドオレンジ74、162、アシッドレッド211のC.I.で規定される染料等の金属錯体染料中のアンモニウムカチオン含有量を低減させたものが挙げられる。
金属錯体染料(C)は、好ましくは、ソルベントブラック22~47のC.I.で規定される黒色染料より選択される少なくとも1種に対応するものであり、より好ましくはソルベントブラック27、29又は34のC.I.で規定される黒色染料より選択される少なくとも1種に対応するものである。上記金属錯体染料(C)を用いた場合、硬化後のポジ型感光性樹脂組成物の被膜の遮光性を維持することができる。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、金属錯体染料(C)を10質量%~60質量%、好ましくは15質量%~50質量%、より好ましくは20質量%~40質量%含む。金属錯体染料(C)の含有量が、固形分100質量%を基準として10質量%以上であると、硬化後の被膜の遮光性を維持することができる。金属錯体染料(C)の含有量が、上記合計100質量%を基準として60質量%以下であると、アルカリ現像性を損なうことなく被膜を着色することができる。
〈第2樹脂(D)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は第2樹脂(D)を更に含んでもよい。第2樹脂(D)は、第1樹脂(A)とは異なる樹脂であり、酸分解性基で保護されたアルカリ可溶性官能基を有していない。
第2樹脂(D)は特に限定されないが、アルカリ可溶性官能基を有し、アルカリ可溶性であることが好ましい。アルカリ可溶性官能基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、及びメルカプト基が挙げられる。2種以上のアルカリ可溶性官能基を有する第2樹脂(D)を使用してもよい。
第2樹脂(D)としては、例えば、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体の単独重合体又は共重合体、並びにエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂が挙げられる。他の第2樹脂(D)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体、シリコーン樹脂、環状オレフィンポリマー、カルド樹脂、及びこれらの樹脂の誘導体、並びにこれらの樹脂にアルカリ可溶性官能基を結合させたものが挙げられる。例えば、フェノール樹脂の誘導体として、アルケニル基がベンゼン環に結合したポリアルケニルフェノール樹脂、ポリスチレン樹脂の誘導体として、フェノール性水酸基とヒドロキシアルキル基又はアルコキシ基とがベンゼン環に結合したヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
第2樹脂(D)はラジカル重合性官能基を有してもよい。一実施態様では、第2樹脂(D)はラジカル重合性官能基として(メタ)アクリロイルオキシ基、アリル基又はメタリル基を有する。
一実施態様では、第2樹脂(D)は、第1樹脂(A)のベース樹脂(a)として用いることができる、上記のフェノール性水酸基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体(a1)を含む。第2樹脂(D)としての共重合体(a1)と、第1樹脂(A)のベース樹脂(a)としての共重合体(a1)とは、それらの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び多分散度(Mw/Mn)、並びにそれらを構成する重合性単量体の種類及び質量比のうち1つ又は複数について、同じであってもよく、異なっていてもよい。
一実施態様では、第2樹脂(D)は、式(1)
(式(1)において、R1は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、aは1~5の整数である。)
で表される構造単位、及び式(2)
(式(2)において、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1~3のフルオロアルキル基、又はハロゲン原子であり、R4は、水素原子、炭素原子数1~6の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。)
で表される構造単位を有する共重合体(a1)である。
一実施態様では、第2樹脂(D)は、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂を含む。エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂はアルカリ水溶液可溶性樹脂である。エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂はフェノール性水酸基以外のアルカリ可溶性官能基を有していてもよい。エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂は、例えば、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と表記することがある。)のエポキシ基の一部と、ヒドロキシ安息香酸化合物のカルボキシ基を反応させることで得ることができる。エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂のエポキシ基は、現像後の加熱処理(ポストベーク)時にフェノール性水酸基との反応により架橋を形成し、これにより被膜の耐薬品性、耐熱性などを向上させることができる。フェノール性水酸基は現像時のアルカリ水溶液に対する可溶性に寄与することから、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂は、低露光量で露光したときに酸分解性基が十分に分解(脱保護)されなかった第1樹脂(A)の溶解促進剤としても機能し、これにより感光性樹脂組成物を高感度にすることができる。
エポキシ化合物が有するエポキシ基の1つと、ヒドロキシ安息香酸化合物のカルボキシ基とが反応し、フェノール性水酸基を有する化合物となる反応の例を次の反応式2に示す。
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び複素環式エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有していればよく、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は熱硬化型であるため、当業者の常識として、エポキシ基の有無、官能基の種類、重合度などの違いからその構造を一義的に記載することができない。
ノボラック型エポキシ樹脂の構造の一例を式(6)に示す。式(6)において、例えば、R13は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~2のアルコキシ基又は水酸基であり、nは1~50の整数である。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、EPICLON(登録商標)N-770(DIC株式会社)、jER(登録商標)-152(三菱ケミカル株式会社)が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、EPICLON(登録商標)N-695(DIC株式会社)、EOCN(登録商標)-102S(日本化薬株式会社)が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、jER(登録商標)828、jER(登録商標)1001(三菱ケミカル株式会社)、YD-128(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER(登録商標)806(三菱ケミカル株式会社)、YDF-170(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、jER(登録商標)YX-4000、jER(登録商標)YL-6121H(三菱ケミカル株式会社)が挙げられる。ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えば、NC-7000(商品名、日本化薬株式会社)、EXA-4750(商品名、DIC株式会社)が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、EHPE(登録商標)-3150(ダイセル化学工業株式会社)が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、例えば、TEPIC(登録商標)、TEPIC-L、TEPIC-H、TEPIC-S(日産化学工業株式会社)が挙げられる。
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物は、ノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂に由来するエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物は、パターン形成性に優れており、アルカリ溶解性の調節が容易であり、アウトガスが少ない。
ヒドロキシ安息香酸化合物は、安息香酸の2~6位の少なくとも1つが水酸基で置換された化合物であり、例えば、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-5-ニトロ安息香酸、3-ヒドロキシ-4-ニトロ安息香酸、及び4-ヒドロキシ-3-ニトロ安息香酸が挙げられ、アルカリ現像性を高める点でジヒドロキシ安息香酸化合物が好ましい。ヒドロキシ安息香酸化合物は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
一実施態様では、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物とヒドロキシ安息香酸化合物との反応物であって、式(7)
の構造を有する。式(7)において、bは1~5の整数であり、*は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物の、反応にかかるエポキシ基を除く残基との結合部を表す。
エポキシ化合物とヒドロキシ安息香酸化合物からエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂を得る方法では、エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、ヒドロキシ安息香酸化合物を0.2~0.95当量使用することができ、好ましくは0.3~0.9当量、更に好ましくは0.4~0.8当量使用する。ヒドロキシ安息香酸化合物が0.2当量以上であれば、十分なアルカリ溶解性を得ることができ、1.0当量以下であれば、副反応による分子量増加を抑制することができる。
エポキシ化合物とヒドロキシ安息香酸化合物の反応を促進させるために触媒を使用してもよい。触媒の使用量は、エポキシ化合物及びヒドロキシ安息香酸化合物からなる反応原料混合物100質量部を基準として0.1~10質量部とすることができる。反応温度は60~150℃、反応時間は3~30時間とすることができる。
この反応で使用する触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、オクタン酸クロム、及びオクタン酸ジルコニウムが挙げられる。
エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂の数平均分子量(Mn)は、500~8000であることが好ましく、800~6000であることがより好ましく、1000~5000であることが更に好ましい。数平均分子量が500以上であれば、アルカリ溶解性が適切なため感光性材料の樹脂として良好であり、8000以下であれば、塗工性及び現像性が良好である。
一実施態様では、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂のエポキシ当量は、300~7000であり、好ましくは400~6000であり、更に好ましくは500~5000である。エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂のエポキシ当量が300以上であれば、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂に十分なアルカリ溶解性を発現させることができる。エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂のエポキシ当量が7000以下であれば、硬化後の被膜の強度及び耐熱性を高めることができる。エポキシ当量は、JIS K 7236:2009によって決定される。
一実施態様では、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂の水酸基当量は、160~500であり、好ましくは170~400であり、更に好ましくは180~300である。エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂の水酸基当量が160以上であれば、硬化後の被膜の強度及び耐熱性を高めることができる。エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂の水酸基当量が500以下であれば、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂に十分なアルカリ溶解性を発現させることができる。水酸基当量は、JIS K 0070:1992によって決定される。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、第2樹脂(D)を5質量%~80質量%、好ましく10質量%~75質量%、より好ましくは15質量%~70質量%含む。第2樹脂(D)の含有量が、固形分100質量%を基準として5質量%以上であると、露光部の溶解を促進して高感度を実現することができ、熱硬化後の被膜の安定性及び耐久性を確保することができる。第2樹脂(D)の含有量が、固形分100質量%を基準として80質量%以下であると、未露光部の溶解性を低く抑えて残膜率を高く保つことができる。感光性樹脂組成物が第2樹脂(D)を2種類以上含む場合、上記含有量はそれらの合計量である。
〈溶解促進剤(E)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は、現像時にアルカリ可溶性部分の現像液への溶解性を向上させるための溶解促進剤(E)を更に含んでもよい。
溶解促進剤(E)として、カルボキシ基を有する化合物及びフェノール性水酸基を有する化合物からなる群より選択される有機低分子化合物が挙げられる。溶解促進剤(E)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本開示において「低分子化合物」とは分子量1000以下の化合物をいう。上記有機低分子化合物は、カルボキシ基又は複数のフェノール性水酸基を有しておりアルカリ可溶性である。
そのような有機低分子化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘミメリット酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、没食子酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸;及びカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2,4-ベンゼントリオール、ピロガロール、フロログルシノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオールが挙げられる。
ポジ型感光性樹脂組成物中の溶解促進剤(E)の含有量は、固形分100質量%を基準として、0.1質量%~50質量%とすることができ、好ましくは1質量%~35質量%であり、より好ましくは2質量%~20質量%である。溶解促進剤(E)の含有量が、固形分100質量%を基準として0.1質量%以上であれば、樹脂成分の溶解を効果的に促進することができ、50質量%以下であれば樹脂成分の過度の溶解を抑制して、被膜のパターン形成性、表面品質等を高めることができる。
〈任意成分(F)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は、任意成分(F)として、熱硬化剤、界面活性剤、アミン化合物、金属錯体染料(C)以外の着色剤等を含むことができる。本開示において、任意成分(F)は(A)~(E)のいずれにも当てはまらないものと定義する。
熱硬化剤として、熱ラジカル発生剤を使用することができる。好ましい熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物を挙げることができ、具体的には、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の10時間半減期温度が100~170℃の有機過酸化物を挙げることができる。
熱硬化剤の含有量は、熱硬化剤を除く固形分の合計100質量部を基準として、5質量部以下が好ましく、より好ましくは4質量部以下であり、更に好ましくは3質量部以下である。
ポジ型感光性樹脂組成物は、例えば、塗工性を向上させるため、被膜の平滑性を向上させるため、又は被膜の現像性を向上させるために、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;メガファック(登録商標)F-251、同F-281、同F-430、同F-444、同R-40、同F-553、同F-554、同F-555、同F-556、同F-557、同F-558、同F-559、同F-562、同F-563(以上、商品名、DIC株式会社)、サーフロン(登録商標)S-242、同S-243、同S-386、同S-420、同S-611(以上、商品名、AGCセイミケミカル株式会社)等のフッ素系界面活性剤;及びオルガノシロキサンポリマーKP323、KP326、KP341(以上、商品名、信越化学工業株式会社)が挙げられる。界面活性剤は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の含有量は、界面活性剤を除く固形分の合計100質量部を基準として、2質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以下であり、更に好ましくは0.5質量部以下である。
ポジ型感光性樹脂組成物は、保存安定性を良好に保つため、アミン化合物を含有することができる。アミン化合物は、脂肪族第3級アミン、含窒素複素環式アミン、及びこれらアミンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。脂肪族第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、及びN,N-ジメチルドデシルアミンが挙げられる。含窒素複素環式アミンとしては、例えば、N-エチルモルホリン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N-エチルピペリジン、N-エチルピロリジン、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ルチジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、及びアミジンが挙げられる。これらアミンの誘導体としては、例えば、アミンの窒素原子に結合する有機基中のいずれかの水素原子を他の元素又は有機基で置換した化合物などが挙げられる。
アミン化合物の含有量は、アミン化合物を除く固形分の合計100質量部を基準として、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下であり、更に好ましくは2質量部以下である。
[コーティング組成物]
〈溶媒(G)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は、溶媒(G)に溶解させて溶液状態のコーティング組成物として用いることができる。例えば、第1樹脂(A)及び任意成分の第2樹脂(D)を溶媒(G)に溶解して得られた溶液に、光酸発生剤(B)、及び金属錯体染料(C)、並びに必要に応じて溶解促進剤(E)、熱硬化剤、界面活性剤等の任意成分(F)を所定の割合で混合することにより、ポジ型感光性樹脂組成物を含むコーティング組成物を調製することができる。コーティング組成物は、溶媒(G)の量を変化させることにより、使用する塗布方法に適した粘度に調整することができる。
溶媒(G)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート化合物;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;及びN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド化合物が挙げられる。溶媒は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
コーティング組成物の固形分濃度は、使用目的により適宜決定することができる。例えば、コーティング組成物の固形分濃度は1~60質量%としてもよく、3~50質量%、又は5~40質量%としてもよい。
調製されたコーティング組成物は、通常、使用前にろ過される。ろ過の手段としては、例えば、孔径0.05~1.0μmのミリポアフィルターが挙げられる。
このように調製されたコーティング組成物は、長期間の貯蔵安定性にも優れている。
[ポジ型感光性樹脂組成物の使用方法]
ポジ型感光性樹脂組成物を放射線リソグラフィーに使用する場合、まず、ポジ型感光性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散してコーティング組成物を調製する。次に、コーティング組成物を基板表面に塗布し、加熱等の手段により溶媒を除去して、被膜を形成することができる。基板表面へのコーティング組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、スリット法、又はスピンコート法を使用することができる。
コーティング組成物を基板表面に塗布した後、通常、加熱により溶媒を除去して被膜を形成する(プリベーク)。加熱条件は各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常70~130℃で、例えば、ホットプレート上なら30秒~20分間、オーブン中では1~60分間の加熱処理をすることによって、被膜を得ることができる。
次に、プリベークされた被膜に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して放射線(例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、ガンマ線、又はシンクロトロン放射線)を照射する(露光工程)。好ましい放射線は、250~450nmの波長を有する紫外線乃至可視光線である。一実施態様では、放射線はi線である。別の実施態様では、放射線はghi線である。
露光工程の後、光酸発生剤(B)から生じた酸により酸分解性基の分解を促進させるための加熱処理(PEB)を行うことができる。PEBにより、露光部の第1樹脂(A)における保護されたアルカリ可溶性官能基の脱保護を促進し、アルカリ可溶性をより高めることができる。加熱条件は各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常70~140℃で、例えばホットプレート上なら30秒~20分間、オーブン中では1~60分間加熱処理をすることによってPEBを行うことができる。一実施態様では、露光工程の後のPEBを省略することができる。
露光工程又はPEB工程の後、被膜を現像液に接触させることにより現像し、不要な部分を除去して被膜にパターンを形成する(現像工程)。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ化合物;エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一級アミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン等の第二級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノナン等の環状アミン等のアルカリ化合物の水溶液を用いることができる。アルカリ水溶液に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤等を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。現像時間は通常30~180秒間である。現像方法は、液盛り法、シャワー法、又はディッピング法のいずれでもよい。現像後、流水洗浄を30~90秒間行い、不要な部分を除去し、圧縮空気又は圧縮窒素で風乾させることによって、被膜にパターンを形成することができる。
その後、パターンが形成された被膜を、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、例えば、100~350℃で、20~200分間の加熱処理をすることによって硬化被膜を得ることができる(ポストベーク、加熱処理工程)。加熱処理において、温度を一定に維持してもよく、温度を連続的に上昇させてもよく、段階的に上昇させてもよい。加熱処理は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
ポジ型感光性樹脂組成物の硬化被膜の光学濃度(OD値)は、膜厚1μmあたり0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましい。硬化被膜のOD値が膜厚1μmあたり0.5以上であれば、十分な遮光性を得ることができる。
一実施態様の有機EL素子隔壁又は絶縁膜の製造方法は、ポジ型感光性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散してコーティング組成物を調製すること、コーティング組成物を基材に塗布して被膜を形成すること、被膜に含まれる溶媒を除去して被膜を乾燥すること、乾燥した被膜に放射線をフォトマスク越しに照射して被膜を露光すること、露光後の被膜を現像液に接触させることにより現像して、被膜にパターンを形成すること、及びパターンが形成された被膜を100℃~350℃の温度で加熱処理して、有機EL素子隔壁又は絶縁膜を形成することを含む。露光後かつ現像前に上記のPEBを行うこともできる。
一実施態様は、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子隔壁である。
一実施態様は、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子絶縁膜である。
一実施態様は、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(1)原料
実施例及び比較例で使用した原料を以下のとおり製造又は入手した。
第1樹脂(A)及び第2樹脂(D)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)に関しては、以下の測定条件で、ポリスチレンの標準物質を使用して作成した検量線を用いて算出した。
装置名:Shodex(登録商標)GPC-101
カラム:Shodex(登録商標)LF-804
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検出器:Shodex(登録商標)RI-71
温度:40℃
[製造例1]アルカリ可溶性官能基(フェノール性水酸基)を有する重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体(PCX-02e)の製造
4-ヒドロキシフェニルメタクリレート(昭和電工株式会社「PQMA」)25.5g、及びN-シクロヘキシルマレイミド(株式会社日本触媒)4.50gを、溶媒である1-メトキシ-2-プロピルアセテート(株式会社ダイセル)77.1gに完全に溶解させ、重合開始剤としてV-601(富士フイルム和光純薬株式会社)3.66gを、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(株式会社ダイセル)14.6gに完全に溶解させた。得られた2つの溶液を、300mLの3つ口型フラスコ中、窒素ガス雰囲気下で85℃に加熱した1-メトキシ-2-プロピルアセテート(株式会社ダイセル)61.2gに同時に2時間かけて滴下し、その後85℃で3時間反応させた。室温まで冷却した反応溶液を815gのトルエン中に滴下し、共重合体を沈殿させた。沈殿した共重合体をろ過により回収し、90℃で4時間真空乾燥し白色の粉体(PCX-02e)を32.4g回収した。得られたPCX-02eの数平均分子量は3100、重量平均分子量は6600であった。
[製造例2]アルカリ可溶性官能基(フェノール性水酸基)が2-テトラヒドロフラニル基で保護された第1樹脂(A)(PCX-02e-THF55)の製造
100mLの3つ口型フラスコ中で、フェノール性水酸基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体の共重合体(PCX-02e)10.00g、及び酸触媒としてp-トルエンスルホン酸のピリジニウム塩(東京化成工業株式会社)0.60gを、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社)50.00gに溶解させた。その後、窒素ガス雰囲気下で氷冷し、2,3-ジヒドロフラン(東京化成工業株式会社)5.51gを1時間かけて滴下した。その後室温で4時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で酸触媒を中和した後、水層を除去した。更に有機層を水で2回洗浄した。その後、テトラヒドロフランを留去した。得られた固体を酢酸エチル50.0gに溶解させ、200gのヘキサン中に滴下し、生成物を沈殿させた。沈殿物をろ過により回収し、80℃で4時間真空乾燥して白色の粉体7.84gを回収した。得られた粉体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、フェノール性水酸基が2-テトラヒドロフラニル基で保護された第1樹脂(A)(PCX-02e-THF55)の固形分20質量%溶液を得た。得られたPCX-02e-THF55の数平均分子量は3689、重量平均分子量は6863、酸分解性基で保護されているフェノール性水酸基の割合は55モル%、少なくとも1つのフェノール性水酸基が酸分解性基で保護されている式(3)で表される構造単位の数は第1樹脂(A)の全構造単位数の44%であった。酸分解性基で保護されているフェノール性水酸基の割合は、熱重量示差熱分析装置(TG/DTA6200、株式会社日立ハイテクサイエンス)を用い、窒素ガス気流中、昇温速度10℃/分の条件下で室温から250℃まで昇温し、10分保持し、更に昇温速度10℃/分の条件で400℃まで昇温したときの、260℃における第1樹脂(A)の重量減少率(%)より算出した。
[製造例3]アルカリ可溶性官能基(フェノール性水酸基)が1-n-プロポキシエチル基で保護された第1樹脂(A)(PCX-02e-POE48)の製造
300mLの3つ口型フラスコ中で、フェノール性水酸基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体の共重合体(PCX-02e)22.00g、及び酸触媒としてp-トルエンスルホン酸のピリジニウム塩(東京化成工業株式会社)13.16gを、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社)88.00gに溶解させた。その後窒素ガス雰囲気下で氷冷し、プロピルビニルエーテル(東京化成工業株式会社)9.93gを1時間かけて滴下した。その後室温で2.5時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で酸触媒を中和した後、水層を除去した。更に有機層を水で2回洗浄した。その後、テトラヒドロフランを留去した。得られた固体を酢酸エチル110.0gに溶解させ、400gのヘキサン中に滴下し、生成物を沈殿させた。沈殿物をろ過により回収し、80℃で4時間真空乾燥して白色の粉体24.3gを回収した。得られた粉体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、フェノール性水酸基が1-n-プロポキシエチル基で保護された第1樹脂(A)(PCX-02e-POE48)の固形分20質量%溶液を得た。得られたPCX-02e-POE48の数平均分子量は4336、重量平均分子量は7939、酸分解性基で保護されているフェノール性水酸基の割合は48モル%、少なくとも1つのフェノール性水酸基が酸分解性基で保護されている式(3)で表される構造単位の数は第1樹脂(A)の全構造単位数の41%であった。酸分解性基で保護されているフェノール性水酸基の割合は、熱重量示差熱分析装置(TG/DTA6200、株式会社日立ハイテクサイエンス)を用い、窒素ガス気流中、昇温速度10℃/分の条件下で室温から250℃まで昇温し、10分保持し、更に昇温速度10℃/分の条件で400℃まで昇温したときの、260℃における第1樹脂(A)の重量減少率(%)より算出した。
[製造例4]アルカリ可溶性官能基(フェノール性水酸基)がtert-ブトキシカルボニル基で保護された第1樹脂(A)(PCX-02e-Boc5)の製造
300mLの3つ口型フラスコ中で、フェノール性水酸基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体の共重合体(PCX-02e)10.00g、及び二炭酸ジ-tert-ブチル(東京化成工業株式会社)0.52gを、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社)40.00gに溶解させた。その後窒素ガス雰囲気下で、触媒としてジメチルアミノピリジン(東京化成工業株式会社)0.0058gを加えた。その後室温で2.5時間撹拌した。反応液を250gのヘキサン中に滴下し、生成物を沈殿させた。沈殿物をろ過により回収し、80℃で4時間真空乾燥して白色の粉体8.74gを回収した。得られた粉体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、フェノール性水酸基がtert-ブトキシカルボニル基で保護された第1樹脂(A)(PCX-02e-Boc5)の固形分20質量%溶液を得た。得られたPCX-02e-Boc5の数平均分子量は3814、重量平均分子量は6896、酸分解性基で保護されているフェノール性水酸基の割合は5モル%、少なくとも1つのフェノール性水酸基が酸分解性基で保護されている式(3)で表される構造単位の数は第1樹脂(A)の全構造単位数の4%であった。酸分解性基で保護されているフェノール性水酸基の割合は、熱重量示差熱分析装置(TG/DTA6200、株式会社日立ハイテクサイエンス)を用い、窒素ガス気流中、昇温速度10℃/分の条件下で室温から250℃まで昇温し、10分保持し、更に昇温速度10℃/分の条件で400℃まで昇温したときの、260℃における第1樹脂(A)の重量減少率(%)より算出した。
第1樹脂(A)として、製造例2のPCX-02e-THF55、製造例3のPCX-02e-POE48、及び製造例4のPCX-02e-Boc5を使用した。
光酸発生剤(B)としてキノンジアジド化合物であるTS-150A(4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(TrisP-PA)と6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソナフタレン-1-スルホン酸(1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸)とのエステル、東洋合成工業株式会社)を使用した。TS-150Aの構造を以下に示す。TS-150Aは、1分子あたり3個のRのうち、平均で1.5個のRがキノンジアジド構造を有する。
光酸発生剤(B)としてオキシム系光酸発生剤であるPAG-103(2-[2-(プロピルスルホニルオキシイミノ)チオフェン-3(2H)-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、BASF社、CAS No.852246-55-0)を使用した。PAG-103は光照射により1-プロパンスルホン酸(pKa=-2.8)を発生させる。
[製造例5]金属錯体染料C-1の製造
金属錯体染料前駆体として、ソルベントブラック27のカラーインデックスで規定される市販の黒色染料(前駆体(1))を用いた。3Lガロンビンに、前駆体(1)400gとγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社)1600gを加え、オーブン中、酸素ガス雰囲気下80℃で346時間加熱し、前駆体(1)中のC8H17OC3H6NH3
+をγ-ブチロラクトンと一部反応させてアミドに変換することにより、アンモニウムカチオン含有量を16.1質量%とした金属錯体染料C-1のγ-ブチロラクトン溶液を製造した。
[製造例6]金属錯体染料C-2の製造
金属錯体染料前駆体として、製造例5と同じ前駆体(1)を用いた。5Lセパラブルフラスコに、前駆体(1)800gとγ-ブチロラクトン3200g(三菱ケミカル株式会社)を加え、窒素ガス雰囲気下100℃で6時間撹拌し、前駆体(1)中のC8H17OC3H6NH3
+をγ-ブチロラクトンと一部反応させてアミドに変換することにより、アンモニウムカチオン含有量を16.5質量%とした金属錯体染料C-2のγ-ブチロラクトン溶液を製造した。
[製造例7]金属錯体染料C-3の製造
金属錯体染料前駆体として、製造例5と同じ前駆体(1)を用いた。3Lガロンビンに、前駆体(1)400gとγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社)1600gを加え、蓋をして室温(25℃)で2年間静置し、前駆体(1)中のC8H17OC3H6NH3
+をγ-ブチロラクトンと一部反応させてアミドに変換することにより、アンモニウムカチオン含有量を16.5質量%とした金属錯体染料C-3のγ-ブチロラクトン溶液を製造した。
金属錯体染料(C)として、表1に記載のC-1~C-4を使用した。C-4は、製造例5~7において金属錯体染料前駆体として用いた前駆体(1)であり、市販品を一切加工せず室温(25℃)でγ-ブチロラクトンに溶解し、溶解後30分以内にポジ型感光性樹脂組成物の調製に使用した。
金属錯体染料C-1~C-4のアンモニウムカチオン含有量(質量%)は以下の手順で決定した。金属錯体染料のγ-ブチロラクトン溶液を9mLサンプル瓶に0.5g秤量し、ガスクロマトグラフィー用の分析前処理用試薬を加え、得られた試料をミックスローター(VMR-5、アズワン)で1時間撹拌した。次いで、内部標準物質として安息香酸メチル(東京化成工業株式会社)0.1g及びテトラヒドロフラン(関東化学株式会社)6.0gを加え10分撹拌し、ガスクロマトグラフィー測定試料を調製した。GC(GC6850series、Agilent)で分析し、一般的な内部標準法を用いてアンモニウムカチオン含有量(質量%)を算出した。ガスクロマトグラフィーの測定条件は以下のとおりである。
装置: 6850series(Agilent)
カラム: HP-5ms UI(30m×0.25mm(0.50μm)、Agilent)
オーブン温度: 100℃(5分)→300℃(30分) +10℃/分
移動相: He
流速: 1.0mL/分
検出器: FID
スプリット比: 1:10
サンプル注入量: 1μL
注入口温度: 270℃
[製造例8]エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する第2樹脂(D)(N695OH70)の製造
300mLの3つ口型フラスコに溶媒として1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト(MMPGAC、株式会社ダイセル)2000g、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物としてEPICLON(登録商標)N-695(DIC株式会社クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量214)を500g仕込み、窒素ガス雰囲気下、60℃で溶解させた。そこへヒドロキシ安息香酸化合物として3,5-ジヒドロキシ安息香酸(富士フイルム和光純薬株式会社)を235.12g(エポキシ1当量に対して0.65当量)、反応触媒としてトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社)を2.20g(0.660mmol)追加し、110℃で25時間反応させた。反応溶液を室温に戻し、1-メトキシ-2-プロピルアセテ-トで固形分20質量%に希釈し、溶液をろ過して2676gのエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する第2樹脂(D)(N695OH70)の溶液を得た。得られた反応物の数平均分子量は2419、重量平均分子量は5051、エポキシ当量は1118であった。
第2樹脂(D)として、PCX-02e及びN695OH70を使用した。
溶解促進剤(E)としてフロログルシノールを使用した。
任意成分(F)として、界面活性剤(レベリング剤)であるメガファック(登録商標)F-559(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社)を使用した。添加剤として、トリオクチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社)、及び2-メチルピリジン(富士フイルム和光純薬株式会社)を使用した。
溶媒(G)として、γ-ブチロラクトン(GBL)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の混合溶媒(GBL:PGMEA=40:60(質量比))を使用した。
(2)評価方法
実施例及び比較例で使用した評価方法は以下のとおりである。
[未露光部溶解性]
ガラス基板(大きさ72mm×72mm×0.7mm)にポジ型感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が2.6μmになるようにバーコートし、常温真空乾燥60秒間の後、蓋つきホットプレート上100℃で100秒間加熱してプリベークを行った。更に蓋つきホットプレート上115℃で200秒間加熱してPEBを行った。乾燥膜厚を光学式膜厚測定装置(F20-NIR、フィルメトリクス株式会社)を用いて測定後、スピン現像装置(AD-1200、滝沢産業株式会社)を用い2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間アルカリ現像を行なった。アルカリ現像後の膜厚を再び光学式膜厚測定装置(F20-NIR、フィルメトリクス株式会社)を用いて測定し、現像前後で溶解した膜厚(μm)を未露光部溶解性の指標とした。現像前後で溶解した膜厚が0.9μm以下であったポジ型感光性樹脂組成物は、未露光部の耐アルカリ溶解性が適当であり未露光部と露光部の膜厚差が付きやすいため、高感度であると判断した。
[ホール径]
ガラス基板(大きさ72mm×72mm×0.7mm)にポジ型感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が2.6μmになるようにバーコートし、真空乾燥90秒間の後、蓋つきホットプレート上100℃で100秒間加熱してプリベークを行った。超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置(商品名マルチライトML-251A/B、ウシオ電機株式会社)で石英のフォトマスク(φ10μmパターンを有するもの)を介して150mJ/cm2で露光した。露光量は紫外線積算光量計(商品名UIT-150 受光部 UVD-S365、ウシオ電機株式会社)を用いて測定した。露光後、蓋つきホットプレート上115℃で200秒間加熱してPEBを行った。その後、スピン現像装置(AD-1200、滝沢産業株式会社)を用い2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間アルカリ現像を行なった。更に、被膜をイナートオーブン(DN411I、ヤマト科学株式会社)内にて250℃で60分加熱して硬化した。硬化後被膜に形成されているホールをマイクロスコープ(VHX-6000、キーエンス株式会社)で観察して得られたホール径(μm)を感度の指標とした。残渣なくホール形成でき、ホール径が6.0~11.0μmの範囲であったポジ型感光性樹脂組成物をパターン形成性が良好であると判断した。
[硬化被膜のOD値]
ガラス基板(大きさ100mm×100mm×1mm)にポジ型感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が約1.5μmになるようにスピンコートし、ホットプレート上120℃で80秒加熱し溶媒を乾燥した。その後、窒素ガス雰囲気下250℃で60分硬化させることにより被膜を得た。硬化後の被膜のOD値を透過濃度計(BMT-1、サカタインクスエンジニアリング株式会社)で測定し、ガラスのみのOD値で補正を行って、被膜の厚さ1μm当たりのOD値に換算した。被膜の厚みは光学式膜厚測定装置(F20-NIR、フィルメトリクス株式会社)を用いて測定した。
(3)ポジ型感光性樹脂組成物の調製及び評価
[実施例1~4、比較例1~2]
表2に記載の組成で第1樹脂(A)及び第2樹脂(D)を混合して溶解し、得られた溶液に、表2に記載の光酸発生剤(B)、金属錯体染料(C)、溶解促進剤(E)、任意成分(F)及びGBL/PGMEA混合溶媒(G)を加えて、更に混合した。成分が溶解したことを目視で確認した後、孔径0.22μmのミリポアフィルターで濾過し、固形分濃度12質量%のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。表2における組成の質量%は固形分換算値である。実施例1~4及び比較例1~2のポジ型感光性樹脂組成物の評価結果を表2に示す。