JP7817153B2 - 発酵乳及びその製造方法、並びに脱リン酸乳 - Google Patents
発酵乳及びその製造方法、並びに脱リン酸乳Info
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Description
本発明は、発酵乳及びその製造方法、並びに脱リン酸乳に関する。
発酵乳は、原料の乳を乳酸菌等の微生物で発酵させることにより製造される。近年は、発酵時に乳酸菌が菌体外に産生する菌体外多糖(EPS)の生理機能が注目されている。
乳の主要なタンパク質はカゼインであり、発酵によりpHが低下すると、カゼインミセルは凝集し、ゲルを形成する。カゼインは主にαS1、αS2、β、κの4種類に分類され、それぞれ8個、11個、5個、1個のセリン残基に結合したリン酸を有している。このカゼインにおけるリン酸修飾は、カゼインミセル表面や疎水性コアの疎水度に関与することが知られている。
乳の主要なタンパク質はカゼインであり、発酵によりpHが低下すると、カゼインミセルは凝集し、ゲルを形成する。カゼインは主にαS1、αS2、β、κの4種類に分類され、それぞれ8個、11個、5個、1個のセリン残基に結合したリン酸を有している。このカゼインにおけるリン酸修飾は、カゼインミセル表面や疎水性コアの疎水度に関与することが知られている。
発酵乳の組織(物性)は経時的に変化し、そのなかでも保存中の離水(乳清の分離)は商品価値を下げる要因の一つである。そこで、これまでに、離水防止等を目的にペクチン等の安定剤や、乳タンパク質濃縮物等の機能性乳原料が利用されている。また、酵素の利用についても検討が行われ、例えば、トランスグルタミナーゼ等の凝乳活性を有する酵素、グルコースオキシダーゼ等を利用する方法が報告されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、カゼインのホスホセリンに作用する酵素を利用した乳及び発酵乳の製造については知られていない。
しかしながら、カゼインのホスホセリンに作用する酵素を利用した乳及び発酵乳の製造については知られていない。
本発明の課題は、安定的な品質の発酵乳及びその製造方法、並びに脱リン酸乳を提供することにある。
本発明者は、カゼインのホスホセリンに着目し、鋭意検討したところ、カゼインのセリン残基からリン酸が脱離した脱リン酸化カゼインが発酵乳の物性に関わり、当該脱リン酸化カゼインを所定量含む発酵乳は離水が抑制され、粘度及び破断応力の上昇が見られること、また、菌体外多糖(EPS)の産生量が増加していることを見出した。また、プロテインホスファターゼの存在下に原料乳を発酵させるか、或いはプロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳を発酵させることにより、発酵乳の離水の抑制、粘度及び破断応力の上昇の効果が認められること、また、菌体外多糖(EPS)の産生が増加することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔6〕を提供するものである。
〔1〕脱リン酸化カゼインを0.8g/100g以上含有する発酵乳。
〔2〕脱リン酸化カゼインの含有量が0.8~1.5g/100gである〔1〕記載の発酵乳。
〔3〕遊離のリン酸の含有量が15mM以上である〔1〕又は〔2〕記載の発酵乳。
〔4〕ヨーグルトである〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の発酵乳。
〔5〕脱リン酸化カゼインを含有する脱リン酸乳。
〔6〕脱リン酸化カゼインの含有量が0.8g/100g以上である〔5〕記載の脱リン酸乳。
〔1〕脱リン酸化カゼインを0.8g/100g以上含有する発酵乳。
〔2〕脱リン酸化カゼインの含有量が0.8~1.5g/100gである〔1〕記載の発酵乳。
〔3〕遊離のリン酸の含有量が15mM以上である〔1〕又は〔2〕記載の発酵乳。
〔4〕ヨーグルトである〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の発酵乳。
〔5〕脱リン酸化カゼインを含有する脱リン酸乳。
〔6〕脱リン酸化カゼインの含有量が0.8g/100g以上である〔5〕記載の脱リン酸乳。
また、本発明は、以下の〔7〕~〔13〕を提供するものである。
〔7〕以下のいずれかの工程を含む、発酵乳の製造方法。
(a)プロテインホスファターゼの存在下で、原料乳を発酵させる工程
(b)プロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳を発酵させる工程
〔8〕プロテインホスファターゼが、トリコデルマ属に属する微生物由来のプロテインホスファターゼである〔7〕記載の発酵乳の製造方法。
〔9〕トリコデルマ属に属する微生物がトリコデルマ・ビレンスである〔8〕記載の発酵乳の製造方法。
〔10〕プロテインホスファターゼが、下記(i)~(iii)のいずれかである〔7〕~〔9〕のいずれか記載の発酵乳の製造方法。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
〔11〕発酵乳がヨーグルトである〔7〕~〔10〕のいずれか記載の発酵乳の製造方法。
〔12〕プロテインホスファターゼを含有する発酵乳用酵素剤。
〔13〕下記(i)~(iii)のいずれかであるプロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
〔7〕以下のいずれかの工程を含む、発酵乳の製造方法。
(a)プロテインホスファターゼの存在下で、原料乳を発酵させる工程
(b)プロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳を発酵させる工程
〔8〕プロテインホスファターゼが、トリコデルマ属に属する微生物由来のプロテインホスファターゼである〔7〕記載の発酵乳の製造方法。
〔9〕トリコデルマ属に属する微生物がトリコデルマ・ビレンスである〔8〕記載の発酵乳の製造方法。
〔10〕プロテインホスファターゼが、下記(i)~(iii)のいずれかである〔7〕~〔9〕のいずれか記載の発酵乳の製造方法。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
〔11〕発酵乳がヨーグルトである〔7〕~〔10〕のいずれか記載の発酵乳の製造方法。
〔12〕プロテインホスファターゼを含有する発酵乳用酵素剤。
〔13〕下記(i)~(iii)のいずれかであるプロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
本発明の発酵乳は、離水が少なく、粘性が高くしっかりした組織を有する。また、多くの菌体外多糖(EPS)を含有し生理機能に優れるものである。
また、本発明の発酵乳の製造方法によれば、離水が少なく、粘性が高くしっかりした組織で、かつ多くの菌体外多糖(EPS)を含有する発酵乳を提供することができる。
また、本発明の脱リン酸乳は、カゼイン分子の疎水度が上昇することにより、口当たりを変化させる。当該効果は、脱リン酸乳を使用した乳製品でも同様に得られる。
また、本発明の発酵乳の製造方法によれば、離水が少なく、粘性が高くしっかりした組織で、かつ多くの菌体外多糖(EPS)を含有する発酵乳を提供することができる。
また、本発明の脱リン酸乳は、カゼイン分子の疎水度が上昇することにより、口当たりを変化させる。当該効果は、脱リン酸乳を使用した乳製品でも同様に得られる。
本明細書において、発酵乳は、乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、昭和26年厚生省令第52号)において定義された発酵乳及び乳酸菌飲料を意味する。発酵乳は「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したもの」、乳酸菌飲料は「乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させたものを加工し、又は主要原料とした飲料(発酵乳を除く。)」と定義されている。
上記「糊状にしたもの」に分類される発酵乳としてハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、「液状にしたもの」に分類される発酵乳として飲むヨーグルト(ドリンクヨーグルト)、「凍結したもの」に分類される発酵乳としてフローズンヨーグルトが挙げられる。本発明の発酵乳は、本発明の効果を享受し易い点から、ハードヨーグルト、ソフトヨーグルトが好ましい。
上記「糊状にしたもの」に分類される発酵乳としてハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、「液状にしたもの」に分類される発酵乳として飲むヨーグルト(ドリンクヨーグルト)、「凍結したもの」に分類される発酵乳としてフローズンヨーグルトが挙げられる。本発明の発酵乳は、本発明の効果を享受し易い点から、ハードヨーグルト、ソフトヨーグルトが好ましい。
本発明の発酵乳は、脱リン酸化カゼインを0.8g/100g以上含有する。脱リン酸化カゼインは、乳中のカゼインのセリンリン酸が脱離して生成する。
発酵乳中の脱リン酸化カゼインの含有量は、発酵乳の離水抑制効果、粘度及び破断応力の上昇効果、並びにEPS産生量の増大効果の観点から、0.9g/100g以上であることが好ましく、1.0g/100g以上であることがより好ましく、また、1.5g/100g以下であることが好ましく、1.4g/100g以下であることがより好ましく、1.3g/100g以下であることが更に好ましい。
本発明の発酵乳において、カゼイン中の脱リン酸化カゼインの割合としては、好ましくは25~45%、より好ましくは26~43%である。
本明細書において、カゼインの分析は、既知濃度の各カゼイン(αカゼイン、βカゼイン及びκカゼイン)と試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供し、クマシーブリリアントブルー染色(CBB染色)したのち、画像解析ソフトを使用してバンドの強度を数値化することで検量線を作成し、試料中のカゼイン量を算出することができる。
また、本明細書において、脱リン酸化カゼインの分析は、以下に記載の方法に従うものとする。
発酵乳中の脱リン酸化カゼインの含有量は、発酵乳の離水抑制効果、粘度及び破断応力の上昇効果、並びにEPS産生量の増大効果の観点から、0.9g/100g以上であることが好ましく、1.0g/100g以上であることがより好ましく、また、1.5g/100g以下であることが好ましく、1.4g/100g以下であることがより好ましく、1.3g/100g以下であることが更に好ましい。
本発明の発酵乳において、カゼイン中の脱リン酸化カゼインの割合としては、好ましくは25~45%、より好ましくは26~43%である。
本明細書において、カゼインの分析は、既知濃度の各カゼイン(αカゼイン、βカゼイン及びκカゼイン)と試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供し、クマシーブリリアントブルー染色(CBB染色)したのち、画像解析ソフトを使用してバンドの強度を数値化することで検量線を作成し、試料中のカゼイン量を算出することができる。
また、本明細書において、脱リン酸化カゼインの分析は、以下に記載の方法に従うものとする。
脱リン酸化カゼインは電気泳動方法で定量することができる。この方法はリン酸化カゼインと脱リン酸化カゼイン量を電気泳動結果から算出する。図1を用いて説明する。なお、電気泳動方法は、後掲の実施例に記載のとおりである。
図1はウシ乳の電気泳動図を概念的に示したものである。リン酸化されているカゼインはαカゼイン1、βカゼイン2及びκカゼイン3の3領域があり、これらを積算することでリン酸化カゼイン量を算出することができる。それ以外のリン酸化カゼインも存在するが、微量であるため無視できる。なお、ウシの乳中の全カゼイン量に占めるαs-1カゼイン、αs-2カゼイン、βカゼイン及びκカゼインの総和は約97%である。
脱リン酸化カゼインは、各カゼインのバンドに隣接して存在する。脱リン酸化カゼインは、脱リン酸の程度がさまざまであることから、電気泳動後においてスメアな状態になる。リン酸化カゼインバンドと脱リン酸化カゼイン領域は、濃度が異なるため、目視で確認することができる。各脱リン酸化カゼイン領域11、21、31を積算することで、脱リン酸化カゼイン量を算出することができる。脱リン酸化カゼイン領域31の終端は、染色領域と非染色領域の境目を目視で確認し、終端とすればよい。
ウシ由来の乳を使用すると、リン酸化カゼイン量が多い順に、αカゼイン、βカゼイン及びκカゼインの順となる。由来が異なる乳についても上記と同様の方法で脱リン酸化カゼインの程度を測定することができる。全カゼイン量の90%以上を占めるよう、特定のカゼインを一以上選択して測定すればよい。
図1はウシ乳の電気泳動図を概念的に示したものである。リン酸化されているカゼインはαカゼイン1、βカゼイン2及びκカゼイン3の3領域があり、これらを積算することでリン酸化カゼイン量を算出することができる。それ以外のリン酸化カゼインも存在するが、微量であるため無視できる。なお、ウシの乳中の全カゼイン量に占めるαs-1カゼイン、αs-2カゼイン、βカゼイン及びκカゼインの総和は約97%である。
脱リン酸化カゼインは、各カゼインのバンドに隣接して存在する。脱リン酸化カゼインは、脱リン酸の程度がさまざまであることから、電気泳動後においてスメアな状態になる。リン酸化カゼインバンドと脱リン酸化カゼイン領域は、濃度が異なるため、目視で確認することができる。各脱リン酸化カゼイン領域11、21、31を積算することで、脱リン酸化カゼイン量を算出することができる。脱リン酸化カゼイン領域31の終端は、染色領域と非染色領域の境目を目視で確認し、終端とすればよい。
ウシ由来の乳を使用すると、リン酸化カゼイン量が多い順に、αカゼイン、βカゼイン及びκカゼインの順となる。由来が異なる乳についても上記と同様の方法で脱リン酸化カゼインの程度を測定することができる。全カゼイン量の90%以上を占めるよう、特定のカゼインを一以上選択して測定すればよい。
図1には良好なバンドの形を示したが、実際には各種条件を揃えてもバンドの形が歪むことが多い。このときのリン酸化カゼイン及び脱リン酸化カゼインを測定する方法を図2で説明する。
図2のバンド先端100(泳動開始側)とバンド先端の基端110の間に非バンド領域が存在する場合、非バンド領域の面積が目視で50%になるところに積算開始線Aを設定し、そこからバンド領域の面積を算出すればよい。積算開始線Aを設定するにあたり、泳動パターンをグラフ化したものを参考にしても良い。
図2のバンド先端200(泳動終了側)とバンド先端の基端210の間に非バンド領域が存在する場合、非バンド領域の面積が目視で50%になるところに積算終了線Bを設定し、そこまでのバンド領域の面積を算出すればよい。積算終了線Bを設定するにあたり、泳動パターンをグラフ化したものを参考にしても良い。
上記の方法で積算開始線と積算終了線を設定し、それらの間に存在するバンド領域における濃度を定量すればよい。
上記と同様の方法で脱リン酸領域の濃度を定量することができる。
図2のバンド先端100(泳動開始側)とバンド先端の基端110の間に非バンド領域が存在する場合、非バンド領域の面積が目視で50%になるところに積算開始線Aを設定し、そこからバンド領域の面積を算出すればよい。積算開始線Aを設定するにあたり、泳動パターンをグラフ化したものを参考にしても良い。
図2のバンド先端200(泳動終了側)とバンド先端の基端210の間に非バンド領域が存在する場合、非バンド領域の面積が目視で50%になるところに積算終了線Bを設定し、そこまでのバンド領域の面積を算出すればよい。積算終了線Bを設定するにあたり、泳動パターンをグラフ化したものを参考にしても良い。
上記の方法で積算開始線と積算終了線を設定し、それらの間に存在するバンド領域における濃度を定量すればよい。
上記と同様の方法で脱リン酸領域の濃度を定量することができる。
本発明の発酵乳は、さらに、遊離リン酸を含有することが好ましい。
発酵乳中の遊離リン酸の含有量は、発酵乳の離水抑制効果、粘度及び破断応力の上昇効果、並びにEPS産生量の増大効果の観点から、15mM以上であることが好ましく、15mM~40mMの範囲内にあることがより好ましい。
発酵乳中の遊離リン酸の含有量は、発酵乳の離水抑制効果、粘度及び破断応力の上昇効果、並びにEPS産生量の増大効果の観点から、15mM以上であることが好ましく、15mM~40mMの範囲内にあることがより好ましい。
脱リン酸化カゼインを発酵乳に含有させるには、例えば、プロテインホスファターゼの存在下に発酵乳の原料である原料乳を発酵させればよい。また、原料乳の発酵前に、原料乳をプロテインホスファターゼ処理し、当該処理後の脱リン酸乳を発酵させればよい。
すなわち、本発明の発酵乳の製造方法は、
(a)プロテインホスファターゼの存在下で、原料乳を発酵させる工程
(b)プロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳を発酵させる工程
のいずれかの工程を有する。
すなわち、本発明の発酵乳の製造方法は、
(a)プロテインホスファターゼの存在下で、原料乳を発酵させる工程
(b)プロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳を発酵させる工程
のいずれかの工程を有する。
原料乳は、カゼインを含有すればよく、一般的な乳由来の原料が用いられる。例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー等が挙げられる。
原料乳に含まれるカゼインの量は、特に限定されないが、0.01~10g/100gが好ましく、0.1~8g/100gがより好ましく、1~5g/100gがさらに好ましい。
原料乳に含まれるカゼインの量は、特に限定されないが、0.01~10g/100gが好ましく、0.1~8g/100gがより好ましく、1~5g/100gがさらに好ましい。
原料乳のpHは、pH4.0~8.0が好ましく、pH4.7~7.5がより好ましく、pH5.3~6.8がさらに好ましい。下記原料乳以外の他の成分を添加した原料乳のpHも同様である。
原料乳には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、発酵の前に配合し得る他の成分や、発酵の後に配合し得る他の成分を含有させてもよい。当該他の成分としては、例えば、甘味料(単糖、少糖、糖アルコール、合成甘味料等)、安定剤(ゼラチン、ペクチン、カラギナン、キサンタンガム等)、果汁、果肉、香料等が挙げられる。
プロテインホスファターゼは、リン酸化タンパク質を脱リン酸化する酵素であり、本明細書においては原料乳中のカゼインのセリンリン酸を脱離できるものであればよい。プロテインホスファターゼは発酵中に原料乳のカゼインのセリンリン酸を脱離することが好ましい。
プロテインホスファターゼの最適(至適)pHは4.0~7.5の範囲にあることが好ましく、4.5~7.0がより好ましく、5.0~6.0がさらに好ましい。
プロテインホスファターゼは発酵乳の製造中に徐々に失活し、発酵乳中では失活していることが好ましい。具体的には、pH5.0~6.0の弱酸性下でも作用し、pH4.5未満で失活することが好ましい。原料乳の発酵過程において、徐々にカゼインからリン酸が脱離することになる。遊離リン酸が乳中で増加し、乳酸菌が遊離リン酸を代謝する過程で、EPSが生成されやすくなると考えられる。発酵終了後にプロテインホスファターゼが失活していることで、発酵乳の品質を安定的に保ちやすくなり好ましい。
プロテインホスファターゼの最適温度は1℃~60℃の範囲にあることが好ましく、10℃~55℃の範囲にあることがより好ましい。
本発明で使用するプロテインホスファターゼは、上記の最適pH及び最適温度を有することが好ましい。プロテインホスファターゼの種類及び起源は問わないが、好ましくはトリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、サッカロマイセス属(Sccharomyces)、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)に属する微生物由来のプロテインホスファターゼであり、より好ましくはトリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)由来のプロテインホスファターゼであり、さらに好ましくはトリコデルマ・ビレンス Gv29-8由来の仮想タンパク質(XP_013951069.1 hypothetical protein TRIVIDRAFT_87714)である。当該仮想タンパク質(XP_013951069.1 hypothetical protein TRIVIDRAFT_87714)は、本発明者によってプロテインホスファターゼ活性が明らかにされ、下記の性質を有する。
(a)最適温度:50℃
(b)温度安定性:43℃、2時間で80%以上の残存活性
(c)最適pH:pH5.42
(d)pH安定性:pH4.7~6.8、6時間で80%以上の残存活性
(e)金属イオン要求性:2.5~5.0mMのCa2+、Mg2+、Mn2+、Co2+等の2価金属陽イオンで活性化する
トリコデルマ・ビレンス Gv29-8由来のプロテインホスファターゼ(XP_013951069.1 hypothetical protein TRIVIDRAFT_87714)をコードするDNAの塩基配列は配列表の配列番号1に示され、アミノ酸配列は配列表の配列番号2に示される。
プロテインホスファターゼは、野生型の他、これをコードする遺伝子を大腸菌等の宿主で発現させたものや当該遺伝子を各種遺伝子操作によって改変、発現させたものであってプロテインホスファターゼ活性を有するものであってもよい。
(a)最適温度:50℃
(b)温度安定性:43℃、2時間で80%以上の残存活性
(c)最適pH:pH5.42
(d)pH安定性:pH4.7~6.8、6時間で80%以上の残存活性
(e)金属イオン要求性:2.5~5.0mMのCa2+、Mg2+、Mn2+、Co2+等の2価金属陽イオンで活性化する
トリコデルマ・ビレンス Gv29-8由来のプロテインホスファターゼ(XP_013951069.1 hypothetical protein TRIVIDRAFT_87714)をコードするDNAの塩基配列は配列表の配列番号1に示され、アミノ酸配列は配列表の配列番号2に示される。
プロテインホスファターゼは、野生型の他、これをコードする遺伝子を大腸菌等の宿主で発現させたものや当該遺伝子を各種遺伝子操作によって改変、発現させたものであってプロテインホスファターゼ活性を有するものであってもよい。
プロテインホスファターゼは、好ましくは下記(i)~(iii)のいずれかのタンパク質である。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列における、アミノ酸の欠失、置換又は付加の数は、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるプロテインホスファターゼと同等の酵素活性を示すものであれば限定されないが、1~20個が好ましく、1~10個がさらに好ましく、1~8個がさらに好ましい。
また、配列番号2で示されるアミノ酸配列との配列同一性は、80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がよりさらに好ましい。このような配列の同一性パーセンテージは、基準配列を照会配列として比較するアルゴリズムをもった公開又は市販されているソフトウエアを用いて計算することができる。例として、BLAST、FASTA又はGENETYX(ゼネティックス社製)等を用いることができる。
また、配列番号2で示されるアミノ酸配列との配列同一性は、80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、99%以上がよりさらに好ましい。このような配列の同一性パーセンテージは、基準配列を照会配列として比較するアルゴリズムをもった公開又は市販されているソフトウエアを用いて計算することができる。例として、BLAST、FASTA又はGENETYX(ゼネティックス社製)等を用いることができる。
本発明で用いられるプロテインホスファターゼは、発酵乳の品質を安定化させ、またその生理機能を増強することから、発酵乳用の酵素剤として有用である。
工程(a)では、プロテインホスファターゼは、原料乳の発酵時に存在していればよく、これを添加するタイミングは特に制限されない。
工程(a)でのプロテインホスファターゼの使用量は、原料乳中のカゼインのセリンリン酸を脱離できる濃度であればよい。例えば、原料乳1mLに対して0.1~25Uであることが好ましく、0.5~15Uであることがより好ましく、1~10Uであることが更に好ましい。ここで、本明細書において、1Uとは、10mMのTris-HClを含むpH6.0の20mM MES-NaOH緩衝液1mLあたり、20mgのウシミルクカゼインを溶解した基質液に対し、1/10量の酵素液を添加し、37℃で反応させ、等量の反応停止液を添加する条件において、1分間あたり1μmolのリン酸を遊離する酵素量をいう。
工程(a)でのプロテインホスファターゼの使用量は、原料乳中のカゼインのセリンリン酸を脱離できる濃度であればよい。例えば、原料乳1mLに対して0.1~25Uであることが好ましく、0.5~15Uであることがより好ましく、1~10Uであることが更に好ましい。ここで、本明細書において、1Uとは、10mMのTris-HClを含むpH6.0の20mM MES-NaOH緩衝液1mLあたり、20mgのウシミルクカゼインを溶解した基質液に対し、1/10量の酵素液を添加し、37℃で反応させ、等量の反応停止液を添加する条件において、1分間あたり1μmolのリン酸を遊離する酵素量をいう。
工程(a)での発酵方法は、一般的な方法に準じる。例えば、原料乳及びその他の原材料を混合、溶解して調製した発酵ミックスを均質化、加熱殺菌、冷却後、微生物(スターター)及びプロテインホスファターゼを添加し、発酵させる。冷却後は、必要に応じて破砕、均質化してもよい。
発酵温度は、微生物(スターター)が生育する温度かつ酵素が失活しない温度であればよく、その種類に応じて適宜設定することができるが、20℃~45℃が好ましく、30℃~37℃がより好ましい。
発酵時間は、例えば1~48時間、2~24時間が好ましく、3~10時間がより好ましく、3~6時間がさらに好ましく、3~5時間が特に好ましい。
発酵乳のpHは、4.0~5.0が好ましい。
発酵温度は、微生物(スターター)が生育する温度かつ酵素が失活しない温度であればよく、その種類に応じて適宜設定することができるが、20℃~45℃が好ましく、30℃~37℃がより好ましい。
発酵時間は、例えば1~48時間、2~24時間が好ましく、3~10時間がより好ましく、3~6時間がさらに好ましく、3~5時間が特に好ましい。
発酵乳のpHは、4.0~5.0が好ましい。
工程(b)で発酵に供するプロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳(脱リン酸乳)は、プロテインホスファターゼにより原料乳中のカゼインが脱リン酸化されていればよい。予め原料乳をプロテインホスファターゼで酵素処理すると、より多くのカゼインを脱リン酸化することができ、また、カゼインの脱リン酸化度合を制御し易い。
工程(b)でのプロテインホスファターゼの使用量は、原料乳中のカゼインのセリンリン酸を脱離できる濃度であればよい。例えば、原料乳1質量部に対して0.1~25Uであることが好ましく、0.5~15Uであることがより好ましく、1~10Uであることが更に好ましい。
工程(b)でのプロテインホスファターゼの使用量は、原料乳中のカゼインのセリンリン酸を脱離できる濃度であればよい。例えば、原料乳1質量部に対して0.1~25Uであることが好ましく、0.5~15Uであることがより好ましく、1~10Uであることが更に好ましい。
原料乳の酵素処理は、1℃~60℃の反応温度にて、0.1時間~24時間反応を行うことが好ましい。反応温度は10℃~60℃であることが好ましく、30℃~55℃であることがより好ましく、40℃~50℃であることがさらに好ましい。反応時間は0.3時間~12時間であることが好ましく、0.5時間~5時間であることがより好ましく、1時間~4時間であることが特に好ましい。
原料乳をプロテインホスファターゼで酵素処理する前に、原料乳のpHを調整してもよい。
原料乳をプロテインホスファターゼで酵素処理する前に、原料乳のpHを調整してもよい。
酵素処理後は、酵素を失活させることなく原料乳を発酵させてもよく、或いは加熱等により酵素を失活させる処理を行った後に発酵させてもよい。好ましくは失活させることなく原料乳を発酵させることである。発酵時においても徐々にカゼインの脱リン酸化が進行する。
酵素を失活させる処理における加熱の条件は、高温短時間の加熱が好ましく、例えば、60~100℃で1分間~30分間加熱するのが好ましい。原料乳の殺菌工程前に酵素処理した後、原料乳の殺菌工程において酵素を失活させてもよい。
酵素を失活させる処理における加熱の条件は、高温短時間の加熱が好ましく、例えば、60~100℃で1分間~30分間加熱するのが好ましい。原料乳の殺菌工程前に酵素処理した後、原料乳の殺菌工程において酵素を失活させてもよい。
工程(b)での発酵方法は、工程(a)と同様、一般的な方法に準じ、例えば、プロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳及びその他の原材料を含む発酵ミックスを均質化、加熱殺菌、冷却後、微生物(スターター)を添加し、発酵させる。また、冷却後は、必要に応じて破砕、均質化してもよい。
発酵温度は、工程(a)と同様、適宜設定することができるが、20℃~45℃が好ましく、30℃~37℃がより好ましい。
発酵時間は、例えば1~48時間、2~24時間が好ましく、3~10時間がより好ましく、3~6時間がさらに好ましく、3~5時間が特に好ましい。
発酵乳のpHは、4.0~5.0が好ましい。
発酵温度は、工程(a)と同様、適宜設定することができるが、20℃~45℃が好ましく、30℃~37℃がより好ましい。
発酵時間は、例えば1~48時間、2~24時間が好ましく、3~10時間がより好ましく、3~6時間がさらに好ましく、3~5時間が特に好ましい。
発酵乳のpHは、4.0~5.0が好ましい。
本発明では、均一なカードを形成し易く、また、ハンドリング性及びコスト面で優れる観点から、工程(a)により発酵乳を製造することが好ましい。
原料乳をプロテインホスファターゼ処理することによって、原料乳中のカゼインが脱リン酸化され、脱リン酸化カゼインを含有する脱リン酸乳が得られる。カゼインの脱リン酸化でカゼイン分子の疎水度が上昇することにより、乳の口当たりは変化する。この口当たりの変化を生かして、本発明の脱リン酸乳は、原料乳と同様に、発酵乳以外にも、様々な乳製品に使用することができる。
本発明の脱リン酸乳中の脱リン酸化カゼインの含有量は、口当たりを良好とする観点、安定的な品質の発酵乳を得る観点から、0.8g/100g以上であることが好ましく、0.9g/100g以上であることがより好ましく、1.0g/100g以上であることが更に好ましく、また、1.5g/100g以下であることが好ましく、1.4g/100g以下であることがより好ましい。
本発明の脱リン酸乳において、カゼイン中の脱リン酸化カゼインの割合としては、好ましくは45%~65%、より好ましくは48~63%である。
本発明の脱リン酸乳中の脱リン酸化カゼインの含有量は、口当たりを良好とする観点、安定的な品質の発酵乳を得る観点から、0.8g/100g以上であることが好ましく、0.9g/100g以上であることがより好ましく、1.0g/100g以上であることが更に好ましく、また、1.5g/100g以下であることが好ましく、1.4g/100g以下であることがより好ましい。
本発明の脱リン酸乳において、カゼイン中の脱リン酸化カゼインの割合としては、好ましくは45%~65%、より好ましくは48~63%である。
また、脱リン酸乳は、さらに、遊離リン酸を含有することが好ましく、脱リン酸乳中の遊離リン酸の含有量は、口当たりを良好とする観点、安定的な品質の発酵乳を得る観点から、1mM~100mMの範囲内にあることが好ましく5mM~50mMの範囲内にあることがより好ましく、10mM~40mMの範囲内にあることがさらに好ましく、12mM~30mMの範囲内にあることがよりさらに好ましい。
原料乳の発酵、及びプロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳(脱リン酸乳)の発酵には、一般的な乳酸菌や酵母等のスターターが用いられる。
乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス属細菌(Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus等)、ラクトコッカス属細菌(Lactococcus lactis等)、ロイコノストック属細菌(Leuconostoc mesenteroides等)、エンテロコッカス属細菌(Enterococcus faecalis等)、ビフィドバクテリウム属細菌(Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve等)が挙げられる。
酵母としては、例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces cerevisiae等)の酵母が挙げられる。
乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス属細菌(Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus等)、ラクトコッカス属細菌(Lactococcus lactis等)、ロイコノストック属細菌(Leuconostoc mesenteroides等)、エンテロコッカス属細菌(Enterococcus faecalis等)、ビフィドバクテリウム属細菌(Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve等)が挙げられる。
酵母としては、例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces cerevisiae等)の酵母が挙げられる。
スターターに含まれる乳酸菌または酵母の菌数(生菌)は、例えば105~1013cfu/mL、好ましくは106~1012cfu/mL、より好ましくは107~1011cfu/mL、さらに好ましくは108~1010cfu/mLである。
スターターの使用量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜設定することができるが、例えば、原料乳及び/又は脱リン酸乳の0.01~10質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
本発明の発酵乳は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、発酵の前に配合し得る他の成分や、発酵の後に配合し得る他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、甘味料(単糖、少糖、糖アルコール、合成甘味料等)、安定剤(ゼラチン、ペクチン、カラギナン、キサンタンガム等)、果汁、果肉、香料等が挙げられる。
後掲の実施例に示すとおり、本発明の発酵乳は、離水が少なく、粘性が高くしっかりした固さを有する。
発酵乳の粘度は、後述する測定方法で発酵乳を30秒間処理したときの粘度が3,000Pa・s以上であることが好ましい。上限値は特に限定されないが、例えば、10000Pa・sである。
また、発酵乳の固さは、後掲の実施例に記載の破断強度解析の値として、破断荷重が0.41N以上であることが好ましく、0.45N以上であることがより好ましく、0.5N以上であることがさらに好ましい。上限値は特に限定されないが、例えば、1.0Nである。
発酵乳の粘度は、後述する測定方法で発酵乳を30秒間処理したときの粘度が3,000Pa・s以上であることが好ましい。上限値は特に限定されないが、例えば、10000Pa・sである。
また、発酵乳の固さは、後掲の実施例に記載の破断強度解析の値として、破断荷重が0.41N以上であることが好ましく、0.45N以上であることがより好ましく、0.5N以上であることがさらに好ましい。上限値は特に限定されないが、例えば、1.0Nである。
また、本発明の発酵乳は、多くの菌体外多糖(EPS)を含む。発酵乳中のEPS量は、発酵乳1gあたり、40μg以上、60μg以上、80μg以上、110μg以上、180μg以上であっても良い。上限値は特に限定されないが、例えば300μgである。
次に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
製造例1 トリコデルマ・ビレンス Gv29-8由来プロテインホスファターゼ(以下、「PPase」)の精製
トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)NBRC6355株をポテトデキストロース寒天培地(栄研)に接種し、25℃で3日間好気性培養した。ポテトデキストロース寒天培地上に生育した生産菌のコロニーを、約5mm角に寒天培地ごと切出し、5.0%スクロース、2.0%TUBERMINE FV(ロケット・ジャパン)、0.3%塩化カルシウム、0.1%硫酸マグネシウム、0.001%リン酸水素二カリウムから成る生産培地(pH4.0)へ植菌し、27℃、220r/minの条件で4日間旋回振とう培養した。
約700mLの培養液をアドバンテックNo.2ろ紙(アドバンテック)及び3.0%KC-フロック(日本製紙)を用いた吸引ろ過によって固液分離し、得られたろ液をUF(AHP、旭化成)によって約1/10量まで濃縮後した。次いでPEG4000(ナカライテクス)を終濃度15%となるように濃縮液へ添加し、溶解したのち、4℃にて一晩静置した。その後、8000r/min、4℃の条件で20分間遠心分離(HIMAC CENTRIFUGE CR20B2、HITACHI)し、上清を廃棄した。得られた沈殿を、約10mLの20mM 酢酸‐酢酸カリウム緩衝液(pH4.8)にて溶解し、その液を50℃にて1時間保温したのち、14800r/min、4℃の条件で10分間遠心分離(LEGEND MICRO 21R、サーモフィッシャーサイエンス)し、その上清を精製タンパク質として回収した。
トリコデルマ・ビレンス(Trichoderma virens)NBRC6355株をポテトデキストロース寒天培地(栄研)に接種し、25℃で3日間好気性培養した。ポテトデキストロース寒天培地上に生育した生産菌のコロニーを、約5mm角に寒天培地ごと切出し、5.0%スクロース、2.0%TUBERMINE FV(ロケット・ジャパン)、0.3%塩化カルシウム、0.1%硫酸マグネシウム、0.001%リン酸水素二カリウムから成る生産培地(pH4.0)へ植菌し、27℃、220r/minの条件で4日間旋回振とう培養した。
約700mLの培養液をアドバンテックNo.2ろ紙(アドバンテック)及び3.0%KC-フロック(日本製紙)を用いた吸引ろ過によって固液分離し、得られたろ液をUF(AHP、旭化成)によって約1/10量まで濃縮後した。次いでPEG4000(ナカライテクス)を終濃度15%となるように濃縮液へ添加し、溶解したのち、4℃にて一晩静置した。その後、8000r/min、4℃の条件で20分間遠心分離(HIMAC CENTRIFUGE CR20B2、HITACHI)し、上清を廃棄した。得られた沈殿を、約10mLの20mM 酢酸‐酢酸カリウム緩衝液(pH4.8)にて溶解し、その液を50℃にて1時間保温したのち、14800r/min、4℃の条件で10分間遠心分離(LEGEND MICRO 21R、サーモフィッシャーサイエンス)し、その上清を精製タンパク質として回収した。
精製したタンパク質を同定したところ、アミノ酸配列情報から、トリコデルマ・ビレンス Gv29-8由来の仮想タンパク質(XP_013951069.1 hypothetical protein TRIVIDRAFT_87714)であった。このタンパク質は機能未知であった。
精製タンパク質について、プロテインホスファターゼ(PPase)活性が確認された。
1)PPase活性測定
0.2gのウシミルクカゼイン(CALBIOCHEM製、Casein,Bovine Milk,Carbohydrate and Fatty Acid Free)を20mL容ビーカーに量り取り、2.0mLの0.1M Tris-HCl緩衝液(pH9.0)と少量の蒸留水を添加し、マグネチックスターラーを用いて溶解した。続いて、2.0mLの0.2M MES-NaOH緩衝液(pH6.0)と約10mLの蒸留水を添加し、1.0規定の塩酸を用いてpH6.0に調整したのち、20mLに定容した。これを基質液とした。1.5mL容エッペンドルフチューブに、基質液を450μL分注し、酵素サンプルを50μL加え、正確に20分間反応した。反応後、1Lあたり18.0g トリクロロ酢酸、18.0g 無水酢酸ナトリウム、19.8g 酢酸からなる反応停止液を500μL添加し、激しく撹拌し、15000r/min、4℃の条件で5分間遠心分離した。その上清の適宜希釈液200μLを、800μLの蒸留水へ添加し、次いで2M硫酸及び40g/Lモリブデン酸アンモニウム水溶液を30μL添加し、よく撹拌した。そこへ、0.1Mアスコルビン酸ナトリウム水溶液を50μL添加し、再度撹拌したのち、40℃で20分間保温した。その後、分光光度計(UV-1240、島津製作所製)を用いて880nmにおける吸光度を測定し、リン酸二水素カリウムを用いてあらかじめ作成した検量線によってリン酸濃度(μM)を算出した。活性値は、下記の式で算出した。
活性値(U/mL)=リン酸濃度(μM)×反応液量(L)/反応時間(分)/酵素量(mL)×希釈率
1)PPase活性測定
0.2gのウシミルクカゼイン(CALBIOCHEM製、Casein,Bovine Milk,Carbohydrate and Fatty Acid Free)を20mL容ビーカーに量り取り、2.0mLの0.1M Tris-HCl緩衝液(pH9.0)と少量の蒸留水を添加し、マグネチックスターラーを用いて溶解した。続いて、2.0mLの0.2M MES-NaOH緩衝液(pH6.0)と約10mLの蒸留水を添加し、1.0規定の塩酸を用いてpH6.0に調整したのち、20mLに定容した。これを基質液とした。1.5mL容エッペンドルフチューブに、基質液を450μL分注し、酵素サンプルを50μL加え、正確に20分間反応した。反応後、1Lあたり18.0g トリクロロ酢酸、18.0g 無水酢酸ナトリウム、19.8g 酢酸からなる反応停止液を500μL添加し、激しく撹拌し、15000r/min、4℃の条件で5分間遠心分離した。その上清の適宜希釈液200μLを、800μLの蒸留水へ添加し、次いで2M硫酸及び40g/Lモリブデン酸アンモニウム水溶液を30μL添加し、よく撹拌した。そこへ、0.1Mアスコルビン酸ナトリウム水溶液を50μL添加し、再度撹拌したのち、40℃で20分間保温した。その後、分光光度計(UV-1240、島津製作所製)を用いて880nmにおける吸光度を測定し、リン酸二水素カリウムを用いてあらかじめ作成した検量線によってリン酸濃度(μM)を算出した。活性値は、下記の式で算出した。
活性値(U/mL)=リン酸濃度(μM)×反応液量(L)/反応時間(分)/酵素量(mL)×希釈率
a 温度依存性は、室温(23.5℃)、37℃、43℃、50℃、60℃の各温度におけるPPase活性を測定した。
b 温度安定性は、4℃、25℃、37℃、43℃、50℃、60℃の各温度でPPaseサンプルを2時間保温し、15000r/min、4℃の条件で遠心分離し、その上清の残存活性を測定した。
c pH依存性は、カゼイン濃度を3倍にした基質液を、0.2M 酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH3.6、4.2、4,7、5.2、5.6)、MES-NaOH緩衝液(pH5.3、6.0、6.8)、Tris-HCl緩衝液(pH7.0、7.5、8.0、9.0)の各緩衝液にて3倍希釈し、4℃にて6時間静置したのち、各サンプルの残存活性を測定した。なお、基質を各緩衝液で希釈したのちのpHを測定し、その値を反応時のpHとした。
d pH安定性は、0.2M 酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH3.6、4.2、4,7、5.6、6.0)、MES-NaOH緩衝液(pH5.3、6.0、6.8)、Tris-HCl緩衝液(pH7.5、8.0、9.0)の各緩衝液にて10倍希釈し、4℃にて6時間静置したのち、各サンプルの残存活性を測定した。
e 金属イオン要求性は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、コバルト、マンガンの塩化物塩及びEDTA・2ナトリウム水溶液を、反応液内で2.5mM、5mM、10mMとなるように添加し、その時のPPase活性を測定した。
b 温度安定性は、4℃、25℃、37℃、43℃、50℃、60℃の各温度でPPaseサンプルを2時間保温し、15000r/min、4℃の条件で遠心分離し、その上清の残存活性を測定した。
c pH依存性は、カゼイン濃度を3倍にした基質液を、0.2M 酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH3.6、4.2、4,7、5.2、5.6)、MES-NaOH緩衝液(pH5.3、6.0、6.8)、Tris-HCl緩衝液(pH7.0、7.5、8.0、9.0)の各緩衝液にて3倍希釈し、4℃にて6時間静置したのち、各サンプルの残存活性を測定した。なお、基質を各緩衝液で希釈したのちのpHを測定し、その値を反応時のpHとした。
d pH安定性は、0.2M 酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH3.6、4.2、4,7、5.6、6.0)、MES-NaOH緩衝液(pH5.3、6.0、6.8)、Tris-HCl緩衝液(pH7.5、8.0、9.0)の各緩衝液にて10倍希釈し、4℃にて6時間静置したのち、各サンプルの残存活性を測定した。
e 金属イオン要求性は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、コバルト、マンガンの塩化物塩及びEDTA・2ナトリウム水溶液を、反応液内で2.5mM、5mM、10mMとなるように添加し、その時のPPase活性を測定した。
PPaseの温度依存性を図3aに、温度安定性を図3bに、pH依存性を図3cに、pH安定性を図3dに、金属イオン要求性を図4にそれぞれ示す。図3a~dより、PPaseは、最適温度は50℃、最適pHはpH5.42にあり、43℃ 2時間、及びpH4.7~6.8 6時間で80%以上の残存活性を維持した。
また、図4より、PPaseは、2.5~5.0mMのCa2+、Mg2+、Mn2+、Co2+等の2価金属陽イオンで活性化した。
また、図4より、PPaseは、2.5~5.0mMのCa2+、Mg2+、Mn2+、Co2+等の2価金属陽イオンで活性化した。
実施例1
(1)発酵乳の調製
おいしい牛乳(明治製)へ2%のスキムミルク(森永乳業製)を添加し、良く振り混ぜて溶解させ、沸騰水中で20分間撹拌しながら殺菌した。殺菌後の原料乳を43℃で約30分間保温したのち、スターターL812(Chr.Hansen社製)と表1に示したPPaseまたは20mM 酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH5.2)を酵素活性の終濃度が0~10U/mL-milkになるよう添加し、43℃にて4.5時間発酵させ、発酵乳を得た。
なお、PPaseは20mM酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH5.2)で適宜希釈したものを用いた。実施例1の発酵乳中のカゼイン量は3.3g/100gであった。
(1)発酵乳の調製
おいしい牛乳(明治製)へ2%のスキムミルク(森永乳業製)を添加し、良く振り混ぜて溶解させ、沸騰水中で20分間撹拌しながら殺菌した。殺菌後の原料乳を43℃で約30分間保温したのち、スターターL812(Chr.Hansen社製)と表1に示したPPaseまたは20mM 酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH5.2)を酵素活性の終濃度が0~10U/mL-milkになるよう添加し、43℃にて4.5時間発酵させ、発酵乳を得た。
なお、PPaseは20mM酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH5.2)で適宜希釈したものを用いた。実施例1の発酵乳中のカゼイン量は3.3g/100gであった。
(2)脱リン酸化カゼインの測定
発酵乳を蒸留水にて50倍希釈し、×2サンプルバッファーと等倍混合し、沸騰水中で5分間加熱し、測定サンプルとした。SuperSepTM Phos-tag(12.5%、富士フィルム和光純薬)へ、測定サンプル10μLをアプライし、25mMの定電流で泳動した。泳動後のゲルを染色・脱色したのち、画像処理ソフト(Image J)を用いて泳動パターンをグラフ化した。次いで、リン酸修飾の有無により変動する領域を設定し、各エリア面積を算出したのち、各酵素量における脱リン酸化カゼインの割合と脱リン酸化カゼイン量(絶対量)を算出した。
発酵乳を蒸留水にて50倍希釈し、×2サンプルバッファーと等倍混合し、沸騰水中で5分間加熱し、測定サンプルとした。SuperSepTM Phos-tag(12.5%、富士フィルム和光純薬)へ、測定サンプル10μLをアプライし、25mMの定電流で泳動した。泳動後のゲルを染色・脱色したのち、画像処理ソフト(Image J)を用いて泳動パターンをグラフ化した。次いで、リン酸修飾の有無により変動する領域を設定し、各エリア面積を算出したのち、各酵素量における脱リン酸化カゼインの割合と脱リン酸化カゼイン量(絶対量)を算出した。
(3)遊離リン酸濃度(mM)の測定
上記(1)で調製した発酵乳を激しく振り混ぜることでカードを均一化した。カードを均一化した発酵乳を1.5mL容エッペンチューブへ1mL分注し、15000r/min、4℃の条件で10分間遠心分離した。その上清の適宜希釈液200μLを、800μLの蒸留水へ添加し、次いで2M硫酸及び40g/Lモリブデン酸アンモニウム水溶液を30μL添加し、よく撹拌した。そこへ、0.1Mアスコルビン酸ナトリウム水溶液を50μL添加し、再度撹拌したのち、40℃で20分間保温した。その後、分光光度計(UV-1240、島津製作所製)を用いて880nmにおける吸光度を測定し、リン酸二水素カリウムを用いてあらかじめ作成した検量線によってリン酸濃度(mM)を算出した。
上記(1)で調製した発酵乳を激しく振り混ぜることでカードを均一化した。カードを均一化した発酵乳を1.5mL容エッペンチューブへ1mL分注し、15000r/min、4℃の条件で10分間遠心分離した。その上清の適宜希釈液200μLを、800μLの蒸留水へ添加し、次いで2M硫酸及び40g/Lモリブデン酸アンモニウム水溶液を30μL添加し、よく撹拌した。そこへ、0.1Mアスコルビン酸ナトリウム水溶液を50μL添加し、再度撹拌したのち、40℃で20分間保温した。その後、分光光度計(UV-1240、島津製作所製)を用いて880nmにおける吸光度を測定し、リン酸二水素カリウムを用いてあらかじめ作成した検量線によってリン酸濃度(mM)を算出した。
(4)結果
脱リン酸化カゼインの測定結果を表2に示す。遊離リン酸濃度の測定結果を図5に示した。
脱リン酸化カゼインの測定結果を表2に示す。遊離リン酸濃度の測定結果を図5に示した。
実施例2
(1)脱リン酸乳の調製
1N HClを用いてpH5.9に調整したおいしい牛乳(明治製)へ、300U/mLのPPaseを表3に示した量を添加し、43℃にて4時間静置し脱リン酸乳を得た。実施例2の脱リン酸乳中のカゼイン量は2.5g/100gであった。
(1)脱リン酸乳の調製
1N HClを用いてpH5.9に調整したおいしい牛乳(明治製)へ、300U/mLのPPaseを表3に示した量を添加し、43℃にて4時間静置し脱リン酸乳を得た。実施例2の脱リン酸乳中のカゼイン量は2.5g/100gであった。
(2)脱リン酸化カゼインの測定
PPaseを作用させた脱リン酸乳を用いた以外は、実施例1と同様の方法で脱リン酸化カゼインを測定した。
PPaseを作用させた脱リン酸乳を用いた以外は、実施例1と同様の方法で脱リン酸化カゼインを測定した。
(3)遊離リン酸濃度(mM)の測定
PPaseを作用させた脱リン酸乳を用いた以外は、実施例1と同様の方法で遊離リン酸濃度を測定した。
PPaseを作用させた脱リン酸乳を用いた以外は、実施例1と同様の方法で遊離リン酸濃度を測定した。
(4)結果
脱リン酸化カゼインの測定結果を表4に示す。遊離リン酸濃度の測定結果を図6に示した。
脱リン酸化カゼインの測定結果を表4に示す。遊離リン酸濃度の測定結果を図6に示した。
実施例3
(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)392gとスキムミルク(森永乳業製)8gを量り取り、良く振り混ぜて溶解させ、沸騰水中で20分間撹拌しながら殺菌した。殺菌後の原料乳を43℃で約30分間保温したのち、スターターL812(Chr.Hansen社製、以下同じ)を0.01g/mLになるように添加し、10回程度穏やかに転倒混和した。その後、表5のサンプルをあらかじめ添加した15mL容スクリューキャップチューブへ、スターターを添加した原料乳を10mLずつ分注し、フタをして2~3回穏やかに転倒混和したのち、43℃にて5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵乳のpHをpHメーター(F72-S、HORIBA)で測定した。
(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)392gとスキムミルク(森永乳業製)8gを量り取り、良く振り混ぜて溶解させ、沸騰水中で20分間撹拌しながら殺菌した。殺菌後の原料乳を43℃で約30分間保温したのち、スターターL812(Chr.Hansen社製、以下同じ)を0.01g/mLになるように添加し、10回程度穏やかに転倒混和した。その後、表5のサンプルをあらかじめ添加した15mL容スクリューキャップチューブへ、スターターを添加した原料乳を10mLずつ分注し、フタをして2~3回穏やかに転倒混和したのち、43℃にて5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵乳のpHをpHメーター(F72-S、HORIBA)で測定した。
(2)離水率の測定
上記(1)で調製した発酵乳サンプルを激しく振り混ぜることでカードを均一化し、約5mLを15mL容目盛り付きスクリューキャップチューブへ分注したのち、3000r/min(KOKUSAN製、H-19F MR)、8℃の条件で10分間遠心分離した。その後、サンプル全量と固形分の体積を読み取り、次式で離水率を算出した。
離水率(%)=100-((固形分体積/サンプル体積)×100)
上記(1)で調製した発酵乳サンプルを激しく振り混ぜることでカードを均一化し、約5mLを15mL容目盛り付きスクリューキャップチューブへ分注したのち、3000r/min(KOKUSAN製、H-19F MR)、8℃の条件で10分間遠心分離した。その後、サンプル全量と固形分の体積を読み取り、次式で離水率を算出した。
離水率(%)=100-((固形分体積/サンプル体積)×100)
(3)遊離リン酸濃度(mM)の測定
カードを均一化した発酵乳サンプルを1.5mL容エッペンチューブへ1mL分注し、15000r/min(TOMY製、微量高速冷却遠心機 MRX-150)、4℃の条件で10分間遠心分離した。その上清の適宜希釈液200μLを、800μLの蒸留水へ添加し、次いで2M硫酸及び40g/Lモリブデン酸アンモニウム水溶液を30μL添加し、よく撹拌した。そこへ、0.1Mアスコルビン酸ナトリウム水溶液を50μL添加し、再度撹拌したのち、40℃で20分間保温した。その後、分光光度計(UV-1240、島津製作所製)を用いて880nmにおける吸光度を測定し、リン酸二水素カリウムを用いてあらかじめ作成した検量線によってリン酸濃度(mM)を算出した。
カードを均一化した発酵乳サンプルを1.5mL容エッペンチューブへ1mL分注し、15000r/min(TOMY製、微量高速冷却遠心機 MRX-150)、4℃の条件で10分間遠心分離した。その上清の適宜希釈液200μLを、800μLの蒸留水へ添加し、次いで2M硫酸及び40g/Lモリブデン酸アンモニウム水溶液を30μL添加し、よく撹拌した。そこへ、0.1Mアスコルビン酸ナトリウム水溶液を50μL添加し、再度撹拌したのち、40℃で20分間保温した。その後、分光光度計(UV-1240、島津製作所製)を用いて880nmにおける吸光度を測定し、リン酸二水素カリウムを用いてあらかじめ作成した検量線によってリン酸濃度(mM)を算出した。
(4)結果
結果を図7に示す。図7より、PPaseを加えた発酵乳は無添加(Blank)と比べて離水率が低かった。他方、PPaseの反応生成物であるリン酸を含有するが脱リン酸化カゼインを含有しない発酵乳は離水抑制されなかった。
また、図7より、発酵時のPPaseの添加によって、無添加(Blank)と比べて離水抑制の効果が認められた。他方、PPaseの反応生成物であるリン酸を添加しても離水は抑制されなかった。
結果を図7に示す。図7より、PPaseを加えた発酵乳は無添加(Blank)と比べて離水率が低かった。他方、PPaseの反応生成物であるリン酸を含有するが脱リン酸化カゼインを含有しない発酵乳は離水抑制されなかった。
また、図7より、発酵時のPPaseの添加によって、無添加(Blank)と比べて離水抑制の効果が認められた。他方、PPaseの反応生成物であるリン酸を添加しても離水は抑制されなかった。
実施例4
(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)を392gとスキムミルク(森永乳業製)を8g量り取り、良く振り混ぜて溶解し、沸騰水中で20分間加熱殺菌したのち、43℃で約30分間保温した。そこへ、スターターL812を40mg添加し、穏やかに10回転倒混和した。その後、1.46mLの適宜希釈した精製PPase(1.0U/mL-milk又は3.0U/mL-milk)又は20mM酢酸-酢酸K緩衝液(pH5.2)をあらかじめ分注したジャム瓶へ原料乳を60gずつ量り入れ、5回転倒混和したのち、43℃で4.5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵乳のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)を392gとスキムミルク(森永乳業製)を8g量り取り、良く振り混ぜて溶解し、沸騰水中で20分間加熱殺菌したのち、43℃で約30分間保温した。そこへ、スターターL812を40mg添加し、穏やかに10回転倒混和した。その後、1.46mLの適宜希釈した精製PPase(1.0U/mL-milk又は3.0U/mL-milk)又は20mM酢酸-酢酸K緩衝液(pH5.2)をあらかじめ分注したジャム瓶へ原料乳を60gずつ量り入れ、5回転倒混和したのち、43℃で4.5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵乳のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(2)離水率の測定
実施例3と同様の方法で測定した。
実施例3と同様の方法で測定した。
(3)遊離リン酸濃度(mM)の測定
実施例3と同様の方法で測定した。
実施例3と同様の方法で測定した。
(4)EPS測定
発酵乳サンプルを0.4g秤量し、100%(w/v)TCA溶液を200μL添加して転倒混和し、15000r/min(TOMY製、微量高速冷却遠心機 MRX-150、以下同じ)、4℃の条件で10分間遠心分離した。その上清全量を新しいエッペンチューブへ回収し、アセトンを500μL添加し、4℃で一晩静置した。その後、15000r/min、4℃の条件で10分間遠心分離し、上清を廃棄したのち、沈殿したペレットを400μLのMilliQ水で溶解し、次いでアセトンを400μL添加して転倒混和し4℃で一晩静置した。その後、15000r/min、4℃の条件で10分間遠心分離し、上清を廃棄したのち、沈殿物を300μLのMilliQ水に溶解した。その溶解液を15000r/min、4℃の条件で10分間遠心分離し、上清を回収した。そのうち100μLを用いてHPLC(Waters)により単糖及び二糖量を測定した。さらに残りの200μLを用いてフェノール硫酸法によって全糖量を測定した。全糖量から単糖及び二糖を差し引くことで、3糖以上の菌体外多糖量を算出した。
発酵乳サンプルを0.4g秤量し、100%(w/v)TCA溶液を200μL添加して転倒混和し、15000r/min(TOMY製、微量高速冷却遠心機 MRX-150、以下同じ)、4℃の条件で10分間遠心分離した。その上清全量を新しいエッペンチューブへ回収し、アセトンを500μL添加し、4℃で一晩静置した。その後、15000r/min、4℃の条件で10分間遠心分離し、上清を廃棄したのち、沈殿したペレットを400μLのMilliQ水で溶解し、次いでアセトンを400μL添加して転倒混和し4℃で一晩静置した。その後、15000r/min、4℃の条件で10分間遠心分離し、上清を廃棄したのち、沈殿物を300μLのMilliQ水に溶解した。その溶解液を15000r/min、4℃の条件で10分間遠心分離し、上清を回収した。そのうち100μLを用いてHPLC(Waters)により単糖及び二糖量を測定した。さらに残りの200μLを用いてフェノール硫酸法によって全糖量を測定した。全糖量から単糖及び二糖を差し引くことで、3糖以上の菌体外多糖量を算出した。
(5)粘度測定
発酵乳サンプルを激しく振り混ぜることで均一化し、粘度計(DV-I Prime、BROOK FIERD)用使い捨てサンプルチャンバー(アルミ製)へ13.5g分注した。スピンドルはSC4-29を用い、10r/minにて測定し、30秒毎に粘度を読み取り、記録した。なお、すべての操作は10℃環境下で行った。
発酵乳サンプルを激しく振り混ぜることで均一化し、粘度計(DV-I Prime、BROOK FIERD)用使い捨てサンプルチャンバー(アルミ製)へ13.5g分注した。スピンドルはSC4-29を用い、10r/minにて測定し、30秒毎に粘度を読み取り、記録した。なお、すべての操作は10℃環境下で行った。
(6)破断強度解析
装置はクリープメーターRE2-33005C(山電製)を用い、プランジャーはNo.3を用いた。
測定は、ロードセル0.01、アンプ倍率0.1、格納ピッチ0.07秒、測定歪率60%、測定速度1mm/秒、サンプル厚さ自動測定で行った。
装置はクリープメーターRE2-33005C(山電製)を用い、プランジャーはNo.3を用いた。
測定は、ロードセル0.01、アンプ倍率0.1、格納ピッチ0.07秒、測定歪率60%、測定速度1mm/秒、サンプル厚さ自動測定で行った。
(7)結果
離水率、遊離リン酸濃度及び発酵後pHの測定結果を図8に、EPS濃度を図9に、粘度の測定結果を図10に、破断強度解析結果を図11にそれぞれ示す。
脱リン酸化カゼインを含有する発酵乳は、無添加(Blank)と比べて、離水率が低く(図8)、菌体外多糖(EPS)量は多かった(図9)。当該発酵乳の粘度は、無添加より1000cP以上高かった(図10)。また、当該発酵乳の破断応力は、無添加に比べて高く、破断後の応力の低下(=もろさ)が減少した(図11)。
離水率、遊離リン酸濃度及び発酵後pHの測定結果を図8に、EPS濃度を図9に、粘度の測定結果を図10に、破断強度解析結果を図11にそれぞれ示す。
脱リン酸化カゼインを含有する発酵乳は、無添加(Blank)と比べて、離水率が低く(図8)、菌体外多糖(EPS)量は多かった(図9)。当該発酵乳の粘度は、無添加より1000cP以上高かった(図10)。また、当該発酵乳の破断応力は、無添加に比べて高く、破断後の応力の低下(=もろさ)が減少した(図11)。
実施例5
(1)発酵乳の調製
250mL容メヂューム瓶5本へ低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)を147gとスキムミルク(森永乳業製)を3g量り取り、よく振り混ぜて溶解した。その後、沸騰水中で20分間加熱殺菌したのち、43℃で約30分間保温した。そこへ、表6に示した各種スターター(すべてChr.hansen社製)を添加し、穏やかに10回転倒混和した。その後、0.488mLの123U/mLの精製PPase(Final 1.0U/mL-milk)又は20mM酢酸-酢酸K緩衝液(pH5.2)をあらかじめ分注したジャム瓶へ原料乳を60gずつ量り入れ、5回転倒混和したのち、43℃で4.5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。
(1)発酵乳の調製
250mL容メヂューム瓶5本へ低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)を147gとスキムミルク(森永乳業製)を3g量り取り、よく振り混ぜて溶解した。その後、沸騰水中で20分間加熱殺菌したのち、43℃で約30分間保温した。そこへ、表6に示した各種スターター(すべてChr.hansen社製)を添加し、穏やかに10回転倒混和した。その後、0.488mLの123U/mLの精製PPase(Final 1.0U/mL-milk)又は20mM酢酸-酢酸K緩衝液(pH5.2)をあらかじめ分注したジャム瓶へ原料乳を60gずつ量り入れ、5回転倒混和したのち、43℃で4.5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。
(2)脱リン酸化カゼインの測定、(3)離水率の測定、(4)遊離リン酸濃度(mM)の測定、(5)EPS測定、(6)粘度測定、(7)破断強度解析
上記実施例4と同様の方法により測定した。
上記実施例4と同様の方法により測定した。
(8)結果
離水率、遊離リン酸濃度及び発酵後pHの測定結果を図12に、EPS濃度を図13に、粘度の測定結果を図14に、破断強度解析結果を図15にそれぞれ示す。
脱リン酸化カゼインを含有する発酵乳は、無添加(Blank)と比べて、離水率が低く(図12)、菌体外多糖(EPS)量は多かった(図13)。当該発酵乳の粘度は、無添加より1000~2000cP高かった(図14)。また、当該発酵乳の破断応力は、無添加に比べて高かった(図15)。
また、PPaseの添加により、無添加(Blank)と比べて、すべてのスターターで離水抑制、遊離リン酸量増加、pHの低下が見られた(図12)。菌体外多糖(EPS)量は、すべてのスターターで無添加より増加した(図13)。発酵乳の粘度測定の結果、粘度は1000~2000cP上昇した(図14)。また、発酵乳の破断強度解析を実施した結果、すべてのスターターで破断応力の上昇を確認した(図15)。
離水率、遊離リン酸濃度及び発酵後pHの測定結果を図12に、EPS濃度を図13に、粘度の測定結果を図14に、破断強度解析結果を図15にそれぞれ示す。
脱リン酸化カゼインを含有する発酵乳は、無添加(Blank)と比べて、離水率が低く(図12)、菌体外多糖(EPS)量は多かった(図13)。当該発酵乳の粘度は、無添加より1000~2000cP高かった(図14)。また、当該発酵乳の破断応力は、無添加に比べて高かった(図15)。
また、PPaseの添加により、無添加(Blank)と比べて、すべてのスターターで離水抑制、遊離リン酸量増加、pHの低下が見られた(図12)。菌体外多糖(EPS)量は、すべてのスターターで無添加より増加した(図13)。発酵乳の粘度測定の結果、粘度は1000~2000cP上昇した(図14)。また、発酵乳の破断強度解析を実施した結果、すべてのスターターで破断応力の上昇を確認した(図15)。
実施例6(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)を392gとスキムミルク(森永乳業製)を8g量り取り、良く振り混ぜて溶解し、沸騰水中で20分間加熱殺菌したのち、43℃で約30分間保温した。そこへ、スターターL812を40mg添加し、穏やかに10回転倒混和した。その後、1.46mLの適宜希釈した精製PPaseまたは20mM酢酸-酢酸K緩衝液(pH5.2)をあらかじめ分注したジャム瓶へ原料乳を60gずつ量り入れ、5回転倒混和したのち、43℃で4.5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵乳のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
500mL容メヂューム瓶へ低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)を392gとスキムミルク(森永乳業製)を8g量り取り、良く振り混ぜて溶解し、沸騰水中で20分間加熱殺菌したのち、43℃で約30分間保温した。そこへ、スターターL812を40mg添加し、穏やかに10回転倒混和した。その後、1.46mLの適宜希釈した精製PPaseまたは20mM酢酸-酢酸K緩衝液(pH5.2)をあらかじめ分注したジャム瓶へ原料乳を60gずつ量り入れ、5回転倒混和したのち、43℃で4.5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵乳のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(2)離水率の測定、(3)遊離リン酸濃度(mM)の測定、(4)EPS測定
上記実施例4と同様の方法により測定した。
上記実施例4と同様の方法により測定した。
(5)粘度測定
発酵乳サンプルを激しく振り混ぜることで均一化し、粘度計(DV-I Prime、BROOK FIERD)用使い捨てサンプルチャンバー(アルミ製)へ13.5g分注した。スピンドルはSC4-29を用い、10r/minにて測定し、30秒毎に粘度を読み取り、記録した。なお、すべての操作は10℃環境下で行った。
発酵乳サンプルを激しく振り混ぜることで均一化し、粘度計(DV-I Prime、BROOK FIERD)用使い捨てサンプルチャンバー(アルミ製)へ13.5g分注した。スピンドルはSC4-29を用い、10r/minにて測定し、30秒毎に粘度を読み取り、記録した。なお、すべての操作は10℃環境下で行った。
(6)破断強度解析
装置はクリープメーターRE2-33005C(山電製)を用い、プランジャーはNo.3を用いた。測定は、ロードセル0.01、アンプ倍率0.1、格納ピッチ0.07秒、測定歪率60%、測定速度1mm/秒、サンプル厚さ自動測定で行った。
装置はクリープメーターRE2-33005C(山電製)を用い、プランジャーはNo.3を用いた。測定は、ロードセル0.01、アンプ倍率0.1、格納ピッチ0.07秒、測定歪率60%、測定速度1mm/秒、サンプル厚さ自動測定で行った。
(7)結果
離水率、遊離リン酸濃度及び発酵後pHの測定結果を図16に、EPS濃度を図17に、粘度の測定結果を図18に、破断強度解析結果を図19にそれぞれ示す。発酵乳に0.1~3.0U/mL-milkの範囲でPPaseを添加したところ、無添加(Blank)と比べて、離水抑制、遊離リン酸量増加、pHの低下が見られた(図16)。菌体外多糖(EPS)量は、1.0及び3.0U/mL-milkのPPase添加において、無添加より増加した(図17)。PPaseを添加した発酵乳の粘度を測定した結果、0.1~0.5U/mL-milkのPPase添加で、無添加より1000cP程度上昇し、1.0及び3.0U/mL-milkのPPase添加でさらに上昇した(図18)。また、PPaseを添加した発酵乳の破断強度解析を実施した結果、濃度依存性は見られなかったものの、無添加に比べて破断応力が増加した。また、0.5U/mL-milk以上のPPase添加では、破断後の応力の低下(=もろさ)が減少した(図19)。
離水率、遊離リン酸濃度及び発酵後pHの測定結果を図16に、EPS濃度を図17に、粘度の測定結果を図18に、破断強度解析結果を図19にそれぞれ示す。発酵乳に0.1~3.0U/mL-milkの範囲でPPaseを添加したところ、無添加(Blank)と比べて、離水抑制、遊離リン酸量増加、pHの低下が見られた(図16)。菌体外多糖(EPS)量は、1.0及び3.0U/mL-milkのPPase添加において、無添加より増加した(図17)。PPaseを添加した発酵乳の粘度を測定した結果、0.1~0.5U/mL-milkのPPase添加で、無添加より1000cP程度上昇し、1.0及び3.0U/mL-milkのPPase添加でさらに上昇した(図18)。また、PPaseを添加した発酵乳の破断強度解析を実施した結果、濃度依存性は見られなかったものの、無添加に比べて破断応力が増加した。また、0.5U/mL-milk以上のPPase添加では、破断後の応力の低下(=もろさ)が減少した(図19)。
実施例7(原料乳の酵素処理)
(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ超高温瞬間殺菌牛乳(明治製 おいしい牛乳)または低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)を392gとスキムミルク(森永乳業製)を8g量り取り、良く振り混ぜて溶解した。そこへ、2mLの精製PPase(700U/mL、Final 23.3U/mL-milk)または20mM酢酸-酢酸K緩衝液(pH5.2)を添加し、5回転倒混和した。次いで、60gずつジャム瓶へ量り入れ、5回転倒混和したのち、37℃で3時間静置し、酵素処理乳を得た。各ジャム瓶を沸騰水中で20分間煮沸することでPPaseを失活させた。次いで、室温まで冷却後、各ジャム瓶にスターターL812を20mg添加し、穏やかに10回転倒混和し、43℃で4.5時間発酵させた。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵乳のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ超高温瞬間殺菌牛乳(明治製 おいしい牛乳)または低温殺菌牛乳(タカナシ乳業製)を392gとスキムミルク(森永乳業製)を8g量り取り、良く振り混ぜて溶解した。そこへ、2mLの精製PPase(700U/mL、Final 23.3U/mL-milk)または20mM酢酸-酢酸K緩衝液(pH5.2)を添加し、5回転倒混和した。次いで、60gずつジャム瓶へ量り入れ、5回転倒混和したのち、37℃で3時間静置し、酵素処理乳を得た。各ジャム瓶を沸騰水中で20分間煮沸することでPPaseを失活させた。次いで、室温まで冷却後、各ジャム瓶にスターターL812を20mg添加し、穏やかに10回転倒混和し、43℃で4.5時間発酵させた。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵乳のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(2)離水率の測定、(3)遊離リン酸濃度(mM)の測定
上記実施例4と同様の方法により測定した。
上記実施例4と同様の方法により測定した。
(4)結果
離水率、遊離リン酸濃度及び発酵後pHの測定結果を図20に示す。PPase処理原料乳の発酵により、無添加(Blank)と比べて、離水抑制、遊離リン酸量増加、pHの低下が見られた(図20)。この結果は、乳に含まれるカゼインが脱リン酸化されていれば良く、発酵中または発酵乳中においてPPaseが活性状態で存在する必要は必ずしもないことが示唆された。
離水率、遊離リン酸濃度及び発酵後pHの測定結果を図20に示す。PPase処理原料乳の発酵により、無添加(Blank)と比べて、離水抑制、遊離リン酸量増加、pHの低下が見られた(図20)。この結果は、乳に含まれるカゼインが脱リン酸化されていれば良く、発酵中または発酵乳中においてPPaseが活性状態で存在する必要は必ずしもないことが示唆された。
実施例8
(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ超高温瞬間殺菌牛乳(明治製 おいしい牛乳)392gとスキムミルク(森永乳業製)8gを量り取り、良く振り混ぜて溶解させ、沸騰水中で20分間撹拌しながら殺菌した。殺菌後の原料乳を43℃で約30分間保温したのち、0.571mLの精製PPase(350U/mL、Final 1U/mL-milk)または20mM酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH4.5)とスターターL812を20mg添加し、10回程度穏やかに転倒混和した。15mL容スクリューキャップチューブへ10gずつ8本分注し、フタをして2~3回穏やかに転倒混和したのち、43℃にて5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵前、発酵開始から2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(1)発酵乳の調製
500mL容メヂューム瓶へ超高温瞬間殺菌牛乳(明治製 おいしい牛乳)392gとスキムミルク(森永乳業製)8gを量り取り、良く振り混ぜて溶解させ、沸騰水中で20分間撹拌しながら殺菌した。殺菌後の原料乳を43℃で約30分間保温したのち、0.571mLの精製PPase(350U/mL、Final 1U/mL-milk)または20mM酢酸-酢酸カリウム緩衝液(pH4.5)とスターターL812を20mg添加し、10回程度穏やかに転倒混和した。15mL容スクリューキャップチューブへ10gずつ8本分注し、フタをして2~3回穏やかに転倒混和したのち、43℃にて5時間発酵した。発酵後、4℃で一晩冷却して発酵乳を得た。発酵前、発酵開始から2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(2)結果
結果を図21に示す。酢酸-酢酸カリウム緩衝液を加えた無添加(Blank)に対して、PPaseを添加したものはpHの低下が早くなることを確認した。PPaseによりリン酸が増大したものと推測される。また、PPaseを添加したものは凝乳が早くなることも確認した。
結果を図21に示す。酢酸-酢酸カリウム緩衝液を加えた無添加(Blank)に対して、PPaseを添加したものはpHの低下が早くなることを確認した。PPaseによりリン酸が増大したものと推測される。また、PPaseを添加したものは凝乳が早くなることも確認した。
実施例9(発酵後のpHを約4.5に合わせるように発酵時間を調整)
(1)発酵乳の調製
15mL容スクリューキャップチューブのかわりにジャム瓶へ60g分注したこと、発酵後のpHを合わせるために、緩衝液を添加した系の発酵時間を4.75時間、PPaseを添加した系の発酵時間を3.5時間としたこと以外は実施例8と同様にして発酵乳を調製した。発酵乳のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(1)発酵乳の調製
15mL容スクリューキャップチューブのかわりにジャム瓶へ60g分注したこと、発酵後のpHを合わせるために、緩衝液を添加した系の発酵時間を4.75時間、PPaseを添加した系の発酵時間を3.5時間としたこと以外は実施例8と同様にして発酵乳を調製した。発酵乳のpHをpHメーター(サーモフィッシャー製、ORION 3 STAR)で測定した。
(2)離水率の測定、(3)遊離リン酸濃度(mM)の測定
上記実施例4と同様の方法により測定した。
上記実施例4と同様の方法により測定した。
(4)結果
結果を図22に示す。発酵後のpHが約4.5と同じにもかかわらず、無添加(Blank)と比べて、発酵時のPPaseの添加によって離水抑制、遊離リン酸量増加が見られた。このことから、離水率の減少や遊離リン酸量増加は、発酵後のpHによる影響ではなく、PPaseの作用によって得られることが示唆された。
結果を図22に示す。発酵後のpHが約4.5と同じにもかかわらず、無添加(Blank)と比べて、発酵時のPPaseの添加によって離水抑制、遊離リン酸量増加が見られた。このことから、離水率の減少や遊離リン酸量増加は、発酵後のpHによる影響ではなく、PPaseの作用によって得られることが示唆された。
参考例(酵素処理乳における遊離リン酸濃度及びカルシウムイオン濃度)
(1)酵素処理乳の調製
超高温瞬間殺菌牛乳(明治製 おいしい牛乳 pH6.76)0.45mLまたは当該牛乳に1M塩酸を加えてpH5.48に調整した乳に、精製PPase0.05mL(700U/mL)を添加し、37℃で所定時間反応させたのち、18%トリクロロ酢酸を0.5mL添加し混合して反応を停止させ、酵素処理乳を得た。
(1)酵素処理乳の調製
超高温瞬間殺菌牛乳(明治製 おいしい牛乳 pH6.76)0.45mLまたは当該牛乳に1M塩酸を加えてpH5.48に調整した乳に、精製PPase0.05mL(700U/mL)を添加し、37℃で所定時間反応させたのち、18%トリクロロ酢酸を0.5mL添加し混合して反応を停止させ、酵素処理乳を得た。
(2)遊離リン酸濃度の測定
酵素処理前後の遊離リン酸濃度(mM)を、上記実施例3と同様の方法により測定した。
酵素処理前後の遊離リン酸濃度(mM)を、上記実施例3と同様の方法により測定した。
(3)カルシウムイオン濃度の測定 カルシウムイオンセンサー(堀場製作所製 LAQUA twin)に酵素処理前後の乳を無希釈で乗せ測定した。
(4)結果
結果を図23に示した。pH5.48に調整した乳は、pH6.76の乳よりもPPaseの反応性が高く、遊離リン酸濃度が一時的に上昇したが、一定値に収束した。pH6.76の乳は経時的に上昇し、一定値に収束した。PPaseを添加したいずれの乳においても遊離リン酸濃度は一定値に収束した。酵素反応に伴い、カルシウムイオン濃度も変化するため、乳中にリン酸カルシウムが生成しており、一定の濃度で平衡状態となっていることが示唆された。
結果を図23に示した。pH5.48に調整した乳は、pH6.76の乳よりもPPaseの反応性が高く、遊離リン酸濃度が一時的に上昇したが、一定値に収束した。pH6.76の乳は経時的に上昇し、一定値に収束した。PPaseを添加したいずれの乳においても遊離リン酸濃度は一定値に収束した。酵素反応に伴い、カルシウムイオン濃度も変化するため、乳中にリン酸カルシウムが生成しており、一定の濃度で平衡状態となっていることが示唆された。
Claims (17)
- 脱リン酸化カゼインを0.8g/100g以上と、遊離リン酸を15mM以上含有する発酵乳。
- 脱リン酸化カゼインの含有量が0.8~1.5g/100gである請求項1記載の発酵乳。
- カゼイン中の脱リン酸化カゼインの割合が25~45%である請求項1又は2記載の発酵乳。
- ヨーグルトである請求項1~3のいずれか1項記載の発酵乳。
- 原料乳中のカゼインが脱リン酸化された脱リン酸化カゼインと、遊離リン酸を5~50mM含有する脱リン酸乳であって、脱リン酸乳の原料乳が生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳又は無脂肪牛乳である脱リン酸乳。
- 脱リン酸化カゼインの含有量が0.8g/100g以上である請求項5記載の脱リン酸乳。
- カゼイン中の脱リン酸化カゼインの割合が45~65%である請求項5又は6記載の脱リン酸乳。
- 以下のいずれかの工程を含む、遊離リン酸を15mM以上含有する発酵乳の製造方法。
(a)プロテインホスファターゼの存在下で、原料乳を発酵させる工程
(b)プロテインホスファターゼで酵素処理してなる原料乳を発酵させる工程 - プロテインホスファターゼが、トリコデルマ属に属する微生物由来のプロテインホスファターゼである請求項8記載の発酵乳の製造方法。
- トリコデルマ属に属する微生物がトリコデルマ・ビレンスである請求項9記載の発酵乳の製造方法。
- プロテインホスファターゼが、下記(i)~(iii)のいずれかである請求項8~10のいずれか1項記載の発酵乳の製造方法。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質 - 発酵乳がヨーグルトである請求項8~11のいずれか1項記載の発酵乳の製造方法。
- プロテインホスファターゼを含有する発酵乳用酵素剤であって、脱リン酸化カゼインを0.8g/100g以上と、遊離リン酸を15mM以上含有する発酵乳に使用される発酵乳用酵素剤。
- プロテインホスファターゼが、トリコデルマ属に属する微生物由来のプロテインホスファターゼである請求項13記載の発酵乳用酵素剤。
- トリコデルマ属に属する微生物がトリコデルマ・ビレンスである請求項14記載の発酵乳用酵素剤。
- プロテインホスファターゼが、下記(i)~(iii)のいずれかである請求項13~15のいずれか1項記載の発酵乳用酵素剤。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質 - 下記(i)~(iii)のいずれかであるプロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質。
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、プロテインホスファターゼ活性を有するタンパク質
Applications Claiming Priority (5)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2020071708 | 2020-04-13 | ||
| JP2020071708 | 2020-04-13 | ||
| JP2020071709 | 2020-04-13 | ||
| JP2020071709 | 2020-04-13 | ||
| PCT/JP2021/015188 WO2021210539A1 (ja) | 2020-04-13 | 2021-04-12 | 発酵乳及びその製造方法、並びに脱リン酸乳 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPWO2021210539A1 JPWO2021210539A1 (ja) | 2021-10-21 |
| JP7817153B2 true JP7817153B2 (ja) | 2026-02-18 |
Family
ID=
Citations (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN105695542A (zh) | 2016-03-11 | 2016-06-22 | 江南大学 | 一种制备部分脱磷酸化牛乳酪蛋白以模拟人乳酪蛋白磷酸化水平的方法 |
| WO2017006926A1 (ja) | 2015-07-06 | 2017-01-12 | 合同酒精株式会社 | 乳製品 |
| JP2017184682A (ja) | 2016-04-07 | 2017-10-12 | 森永乳業株式会社 | 発酵乳の製造方法 |
Patent Citations (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2017006926A1 (ja) | 2015-07-06 | 2017-01-12 | 合同酒精株式会社 | 乳製品 |
| CN105695542A (zh) | 2016-03-11 | 2016-06-22 | 江南大学 | 一种制备部分脱磷酸化牛乳酪蛋白以模拟人乳酪蛋白磷酸化水平的方法 |
| JP2017184682A (ja) | 2016-04-07 | 2017-10-12 | 森永乳業株式会社 | 発酵乳の製造方法 |
Non-Patent Citations (2)
| Title |
|---|
| UniProtKB, [online], Accession No. A0A1T3CP59,Last modified: May 10, 2017,2021年06月08日,URL: http://www.uniprot.org/uniprot/A0A1T3CP59 |
| UniProtKB, [online], Accession No. G9NAA9,Last modified: February 22, 2012,2021年06月08日,URL: http://www.uniprot.org/uniprot/G9NAA9 |
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