以下において、図面を参照して、本発明の具体例の例示として、第1~第5実施形態に係る音響素子を説明する。以下の第1~第5実施形態に係る音響素子の説明及び図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して統一的に説明する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、以下に示す第1~第5実施形態に係る音響素子は、本発明の技術的思想を具体化するためのデバイス構造、製造方法等を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成要素の材質、形状、構造、又は配置、並びに製造方法の手順等を第1~第5実施形態に示したものに特定するものではない。即ち、本発明の技術的思想は、以下に説明する第1~第5実施形態に係る音響素子で説明した内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができるものである。
従来のPMUTでは、固定電位電極の両側に圧電層を形成したバイモルフ型構造が一般的であった。2枚の圧電層ではなく、固定電位電極の一方に圧電層を、他方に圧電層とは異なる剛性を有する材料からなる弾性層を構成したバイモルフ型構造も知られている。しかし、以下に示す第1~第5実施形態に係る音響素子では、例えば図11Aに例示するように単層の圧電層からなる振動体22fと、この振動体22fの受信面に接した固定電位電極24aを有するモノモルフ型(ユニモルフ型)構造の電圧発生部を基本として説明する。即ち、第1~第5実施形態に係る音響素子の説明では、モノモルフ型構造の電圧発生部と、電圧発生部の特定の箇所(局所)の電位を制御電圧として動作するインピーダンス変換素子を備える受信素子を中心に説明する。但し、モノモルフ型構造の説明は、便宜上であって、本発明の適用の対象範囲をモノモルフ型構造に限定する趣旨ではなく、バイモルフ型構造であっても構わない。
図11Aに示すような平坦円板型の振動空洞の構造は、振動空洞に着目すれば従来から知られている構造である。しかし、モノモルフ型構造に対し、図11Aに示すような平坦円板型の振動空洞を構成すれる例は、発明者の知る限り、一般的ではない。図11Aに例示した薄い平坦円板型の振動空洞21fに対して、図31に示すように、円板の法線方向(図31においてY方向)に沿って、上側と下側に平板状の圧電層からなる振動体22fが撓む振動を考える。図31に示すように、上側に平板状の振動体22fが撓んで上に凸となる曲面を構成したときと、下側に平板状の振動体22fが撓んで下に凸となる曲面を構成したときでは、○と○の間隔が異なる互いに非対称の振動をする。図31はモデル図であり、無負荷状態で振動体22fは水平方向(図31においてX方向)に平坦であるとしている。
図31(a)は、X方向に直径66μmの円板状の振動空洞21fが構成された場合のPZTからなる振動体22fの変位を示す図である。図31(a)は、無負荷状態でX方向にピッチ約3.7μmで等間隔の○が19個並んでいると仮定して、中心からそれぞれX方向に離間した位置の○がY方向に、どのくらい変位するかを示している。図31(a)の場合は、上側に振動体22fが上に凸となるように撓んだとき振動体22fの中央の○と○の間隔がX方向に拡がる傾向と、下側に振動体22fが下に凸となるように撓んだとき振動体22fの中央の○と○の間隔がX方向に縮まる傾向を示しており、振動体22fの歪みが一様ではなく、したがって、振動体22fの内部の応力も一様ではないことが分かる。図31(a)の下側に振動体22fが撓んだ場合の○の配列を示す形状は、超音波のインパルスが到達後0.13μS経過後のそれぞれの○の変位の位置を示し、上側に振動体22fが撓んだ場合の○の配列を示す形状は、超音波が到達後0.18μS経過後のそれぞれの○の変位の位置を示す。
図31(b)は、X方向に直径40μmの円板状の振動空洞21fが構成された場合である。チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrxTi1-xO3:PZT)からなる振動体22fの無負荷状態を、X方向にピッチ約2.2μmで等間隔の○が19個並んだ状態でモデル化している。図31(b)のモデルの場合は、上側に平板状の振動体22fが撓んで曲面を構成したとき振動体22fの中央の○と○の間隔がX方向に縮まり、下側に平板状の振動体22fが撓んで曲面を構成したとき振動体22fの中央の○と○の間隔がX方向に広がる傾向を示している。図31(b)の下側に振動体22fが撓んだ場合の○の配列を示す形状は、超音波のインパルスが到達後0.14μS経過後のそれぞれの○の変位の位置を示し、上側に振動体22fが撓んだ場合の○の配列を示す形状は、超音波が到達後0.19μS経過後のそれぞれの○の変位の位置を示す。図31(b)の場合も振動体22fの歪みが一様ではなく、したがって振動体22fの内部の応力も一様ではないことが分かる。
即ち、モノモルフ型構造においては、電圧発生部を構成する振動体22fの歪みや応力は一様ではないので、振動体22fの受信面に対向する(受信面の反対側の面となる)出力面(図11Aにおいて下側の主面)の特定の箇所に、他の箇所より高い電圧を発生する、発生電圧の面内不均一性を特徴としている。振動体22fの出力面の「特定の箇所」とは、振動体22fの応力集中箇所に対応する領域であり、この面内の特定の箇所に第1~第5実施形態に係る音響素子の電位伝達ゾーンが定義される。インピーダンス変換素子は、電位伝達ゾーンの電位を制御電圧として動作し、圧電層に印加される超音波の圧力を、インピーダンス変換素子の出力信号とし、この出力信号を第1~第5実施形態に係る音響素子の出力信号とする。
インピーダンス変換素子が単一の能動素子で構成されている場合において、その能動素子の「第1主電極領域」とは、電界効果トランジスタ(FET)、静電誘導トランジスタ(SIT)や高電子移動度トランジスタ(HEMT)若しくはこれらに等価な新たなトランジスタ構造においてソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。バイポーラ接合トランジスタ(BJT),絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)若しくはIGBTに等価な新たな構造の半導体素子においてはエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。又、MIS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタ若しくはサイリスタに等価な新たな構造の半導体素子においては、アノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。「第2主電極領域」とは、FET、SITやHEMT等においては上記第1主電極領域とはならないソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。BJTやIGBT等においては上記第1主電極領域とはならないエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる領域を意味する。SIサイリスタ等においては上記第1主電極領域とはならないアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。
このように、インピーダンス変換素子が単一の能動素子で構成されている場合、「第1主電極領域」がソース領域であれば、「第2主電極領域」はドレイン領域を意味し、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間を「主電流」が流れる。「第1主電極領域」がエミッタ領域であれば、「第2主電極領域」はコレクタ領域を意味する。「第1主電極領域」がアノード領域であれば、「第2主電極領域」はカソード領域を意味する。バイアス関係を交換すれば、MISFET等の場合、「第1主電極領域」の機能と「第2主電極領域」の機能を交換可能の場合がある。インピーダンス変換素子がCMOS型の回路構成や差動増幅器の場合のように、複数の能動素子で構成されている場合は、複数の能動素子のそれぞれに対して第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの対、第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの対、……が、順次定義される。例えば第3実施形態で説明するCMOS型の回路構成において、「第3主電極領域」とは、FET、SITやHEMT等においてソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味し、「第4主電極領域」とは、FET、SITやHEMT等において第3主電極領域と対をなすドレイン領域又はソース領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。
また、以下の説明における「上部」、「下部」、「上」、「下」等の語、更には「上」や「下」の語を用いた方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また以下の説明では、第1導電型がp型、第2導電型がn型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても構わない。第1導電型と第2導電型は、以下の第1~第5実施形態において共通に定義される必要はない。例えば以下のMIS型のトランジスタ(以下において「MISトランジスタ」と略記する。)に関する第1~第4実施形態の説明では、第1導電型がp型、第2導電型がn型と定義しているが、接合型のトランジスタに関する第5実施形態の説明では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としている。各実施形態の説明の内部で、第1導電型と第2導電型の定義が共通していれば構わない。又、各実施形態の説明の内部で導電型を逆の関係に選択しても構わない。
同様に、第1~第4実施形態の説明では、第1主電極領域をドレイン領域、第2主電極領域をソース領域として説明しているが、第2~第5実施形態の説明では、第1主電極領域をソース領域、第2主電極領域をドレイン領域とした方が理解しやすい定義になっている。各実施形態の説明の内部で、第1主電極領域と第2主電極領域の定義が共通していれば構わない。又、各実施形態の説明の内部で、第1主電極領域と第2主電極領域の定義を逆の関係に選択しても構わない。また、「n」や「p」に付す「+」や「-」は、「+」及び「-」が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物密度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。更に「n」や「p」に付す「--」は、真性半導体(i層)に近い非常に比抵抗の高い半導体領域であることを意味する。但し、同じ「+」と「-」とが付された半導体領域あるいは、「+」や「-」が付されていない半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物密度が厳密に同じであることを意味するものではない。
(第1実施形態)
図1Aに例示した正六角形の単位セルXi,jは、図示を省略しているが、単位セルXi,jに隣接する他の正六角形の単位セルX(i-1),(j+2),…,X(i-1),(j+1),Xi,(j+1),X(i+1),(j+1),…,X(i-1),j,X(i+1),j,…,Xi,(j-1),X(i+1),(j-1),…と共に、二次元マトリクスを構成するように配列されて、音響素子集積回路のパターンを形成することが可能な要素素子である。即ち、本発明の第1実施形態に係る音響素子は、図1A,図1B及び図2に示すように、圧電効果で非一様の電圧を発生する電圧発生部(22a1,24a)と、電圧発生部(22a1,24a)の特定の箇所(局所)の電位を制御電圧として動作するインピーダンス変換素子(14,15a,15b)を備える。以下の説明から分かるように、第1実施形態に係る音響素子は、受信感度を高めることができるので受信素子に好適である。図1Aに示す単位セルXi,jは、同一平面上(同一曲面上)に二次元マトリクスを構成するように配列されることが可能である。
図1Aでは、平面パターンが正六角形の場合を例示しているが、電圧発生部(22a1,24a)の平面パターンは、正六角形に限定されず、正八角形、正12角形、正20角形等種々の平面パターンが採用可能である。製造プロセスに用いるフォトリソグラフィ工程における角の丸まりを考慮すると、マスクレベルでの正20角形は、製造プロセス後の仕上がり形状として真の形状に近づいてくる。但し、電圧発生部(22a1,24a)が太鼓状に振動する場合の高調波の発生を抑制する意味では正六角形以上の正多角形が好ましい。又、振動体22a1としての窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、酸化亜鉛(ZnO)や硫化カドミウム(CdS)等のウルツ鉱型の化合物半導体は六方晶系であるので、正六角形の形状に相性がよい(PZT等のペロブスカイト構造は立方晶系である。)。
図2の断面図から分かるように、電圧発生部(22a1,24a)は、振動体22a1及びこの振動体22a1の受信面(図2において上側の主面)に接した固定電位電極24aを有するモノモルフ型構造をなしている。このモノモルフ型構造の電圧発生部(22a1,24a)は、振動体22a1の受信面に対向する(受信面の反対側の面となる)出力面(図2において下側の主面)の特定の箇所に、他の箇所より高い電圧を圧電効果で発生する、図6Cに例示したような非一様の発生電圧の電圧分布を有する。図6Cでは中心からの距離を横軸に示しているが、振動体22a1の出力面の「特定の箇所」とは、例えば図4Bに符号P0を付した箇所の内側の領域のような、振動体22a1の応力集中箇所に対応する電位伝達ゾーンである。振動体22a1は図2に例示したように全体を圧電層で構成してもよく、応力集中箇所となる一部のみを圧電層で構成し、残余の部分を非圧電層としてもよい。例えば中央の凸部を構成する柱状の部分のみを圧電層で構成し、残余の板状の部分や周辺部分を非圧電層としてもよい。即ち、電圧発生部は、振動体22a1の一部であって振動体22a1の応力集中箇所に、少なくとも圧電層が設けられた構造であればよい。よって、インピーダンス変換素子(14,15a,15b)は、少なくとも応力集中箇所に位置する圧電層の特定の局所を電位伝達ゾーンとして、この電位伝達ゾーンの電位を制御電圧として動作する。
インピーダンス変換素子(14,15a,15b)は、図2において中央部に、振動体22a1の出力面側の下向きの凸部として位置する電位伝達ゾーンの電位を制御電圧として動作する。即ち、振動体22a1に印加される超音波の圧力によって生じた電圧発生部(22a1,24a)の出力電圧を、インピーダンス変換素子(14,15a,15b)の入力信号としている。そして、インピーダンス変換素子(14,15a,15b)でインピーダンス変換された出力信号が、受信素子Xi,jの出力信号になる。振動体22a1の出力面側に下向きに突出した凸部は、図1Aに破線で示し、図1Bには二点鎖線で正六角形の外形を示したように、正六角柱状の凸部である。図2が示すように、振動体22a1の出力面側の中央部に段差構造として設けられた凸部の周りには、平行トーラス型の振動空洞21a1が、凸部を囲むように中心対称に設けられている。図1Aの平面図から理解できるように、振動空洞21a1を構成するトーラスは、平面パターンが正六角形となるトポロジである。図2の断面図の表現では、振動空洞21a1が中央の下向きの凸部の両側に位置している。しかし、見かけ上、中央凸部の両側に位置している2つの振動空洞21a1は、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。
図1Aに示すように、正六角形の振動空洞21a1の外側の外壁を示す破線の外には、正六角形をなす固定電位電極24aのパターンの外形線を定義する破線が、振動空洞21a1の平面パターンを内包するように設けられている。図1Aに対応して、図1Bの左右の両側には、二点鎖線で振動空洞21a1の外側の内壁の位置と、固定電位電極24aの外周の位置を示した。振動空洞21a1を構成するトーラスの平面パターンや、トーラスの中央に位置する凸部の平面パターンが正六角形となるのは、図1Aに示した単位セルXi,jの形状が正六角形であることに起因した幾何学的相似形の要請である。例えば、単位セルXi,jの形状が正八角形、正12角形、正20角形や円形等であれば、トーラスの最外周やトーラスの中央に位置する凸部の平面パターンが、相似形として正八角形、正12角形、正20角形や円形等を採用することが好ましいことは勿論である。
第1実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子(14,15a,15b)は、図1B及び図2に示すように、第1導電型(p型)の半導体領域からなる基体領域14と、この基体領域14の上部に互いに離間して配置された第2導電型(n+型)の半導体領域からなる第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bを有する能動素子である。図2に示すように、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に位置する基体領域14の上面に振動体22a1の電位伝達ゾーン(図2において中央部に位置する局在した箇所)を、接合(ヘテロ接合)する。例えば、基体領域14を禁制帯幅3.4~3.5eVのGaNとして、振動体22a1を禁制帯幅5~6.2eVのAlNとしてAlN/GaNヘテロ接合を構成して、ヘテロ接合電界効果トランジスタ(ヘテロ接合FET)を構成してもよい。共にウルツ鉱型の結晶構造を有するGaNとAlNとは、GaNのa軸方向の格子定数が0.318nmであるのに対し、AlNのa軸方向の格子定数が0.311nmであるので格子不整合が2.4%程度にできヘテロ接合として相性がよい。
c軸方向に面方位を有するGaNのGa面に、ボンド長の長いAlNをエピタキシャル成長すると、両者の格子定数の違いによりAlNに引張歪みが発生し、AlNの内部に圧電分極が加わる。GaNの方も極性結晶であるので圧電分極を有している。この2つの圧電分極の作用により、AlN/GaN界面には正の固定電荷が発生し、界面に2次元電子ガスが生成される。GaN基板からなる基体領域14を用いる場合は、インピーダンス変換素子(14,15a,15b)の第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bも、GaNで構成すればよい。Si基板からなる基体領域14を用いる場合であっても、後述する図14に示すような、バッファ層13hを用いれば、バッファ層13hの上にAlNをエピタキシャルすることができる。又、ヘテロ接合界面での欠陥を考慮しなければ、Si基板の上にAlNを直接エピタキシャル成長することもできる。
基体領域14の周辺には、素子分離絶縁膜16が活性領域の敷地を定義するように額縁状に設けられている。図2の断面の表現では素子分離絶縁膜16が活性領域の両側に位置しているが、活性領域の両側に位置している素子分離絶縁膜16は、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域のパターンの内部には、基体領域14の上面の敷地(領域)が定義され、素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域の上面(表面)近傍の上部に、第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bが配置されている。第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に挟まれた矩形の基体領域14の内部において、基体領域14のヘテロ接合界面の近傍にキャリアの流れるチャネルが形成される。図1Bの中央に、二点鎖線で正六角形の電位伝達ゾーンの範囲を示した。振動体22a1の出力面側の凸部として定義される正六角形の電位伝達ゾーンは、ヘテロ接合界面の近傍のチャネルの上方に、チャネルに対して選択的な静電誘導効果を局所的に付与するように、配置される。チャネルは、ヘテロ接合界面の近傍に、ヘテロ接合を構成している材料の仕事関数の差による表面ポテンシャル分布の深さ方向の変化により、キャリアが蓄積されるバンドの曲がりが生じることにより形成される。AlN/GaNヘテロ接合の場合において、2次元電子雲をバンドの曲がりに蓄積したいときは、GaNをi型、AlNをn型にしてGaNの伝導帯端部のバンドを、フェルミレベルより低くなるように曲げることが好ましい。
そして、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間のn-p-nフック構造によって、チャネル中にはキャリアの移動を制御する電位障壁が形成される。二点鎖線の正六角形で示した領域において、ヘテロ接合からデバイ長程度の範囲の深さに選択的な静電誘導効果が及ぶ。この結果、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に生じる電位障壁の高さが、振動体22a1の電位伝達ゾーンの電位で制御される。基体領域14の電位は接地電位等の固定電位にしておけばよい。この動作は通常のヘテロ接合FETと類似の動作であるが、通常のヘテロ接合FETとは異なりゲート電極が存在しない。図2に示した構造において、固定電位電極24aを接地しておけばバンドダイアグラムのフェルミレベルは固定電位電極24aの位置で0Vになる。超音波が入力すると振動体22a1の内部、特にヘテロ接合界面近傍のフェルミレベルが振動する。ヘテロ接合界面のフェルミレベルが振動すると、n-p-nフック構造の電位障壁の高さが変化する。第1実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子(14,15a,15b)の場合は、図3Bの等価回路に示すように、振動体22a1そのものが通常のMISトランジスタのゲート誘電体層として機能する。そして、ゲート電極が存在しない構造であるが、図3Bに示した第1制動容量Cd1(=Cgs)及び第2制動容量Cd2(=Cgd)の両端の電圧等が、局所領域であるチャネルに対するゲート電圧を規定する。
第1実施形態に係る音響素子にはゲート電極が存在しないので、非特許文献2で紹介したような個別素子としてのPMUTと、個別素子としてのFETを外部配線で接続する必要もない。よって、第1実施形態に係る音響素子には浮遊インピーダンスの問題は本来的に存在しない。しかも、以下の図4A~図6Cに例示するような応力強化構造を電圧発生部(22a1,24a)が採用して高感度化及び広帯域化をしているので、第1実施形態に係る音響素子は高感度化及び広帯域化が可能である。特に発生電圧が最も高くなる振動体22a1の出力面の特定の箇所を電位伝達ゾーンとして選び、インピーダンス変換素子(14,15a,15b)の能動素子を駆動しているので、高感度化が容易である。
第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの上には図2に示すように、層間絶縁膜17が設けられている。層間絶縁膜17に開孔されたコンタクトホールを介して、第1主電極領域15aには第1主電極配線25aが、第2主電極領域15bには第2主電極配線25bが接続されている。図1Bにおいて、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25bの下に一部を隠れ線で矩形の領域を示したように、能動素子の第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bが、互いに短辺を対向させ、且つ離間して設けられている。
固定電位電極24aの外周を構成する六角形の右上の斜辺に、第1電源に接続された第3コンタクトプラグ41cが配置され、第3コンタクトプラグ41cは固定電位電極24aに接続されている。図1Aでは第1電源が接地電位(GND)として例示されているが、接地電位(GND)に限定されるものではなく、固定電位であればよい。更に、六角形をなす固定電位電極24aの外周には、平面パターンとして2つの矩形のリセス(切り込み)が設けられ、2つのリセスのそれぞれに第2電源VDDに接続された第1コンタクトプラグ41a及び信号配線Riに接続された第2コンタクトプラグ41bが配置されている。即ち、固定電位電極24aの外周を構成する六角形の平面パターンの左側の縦辺に設けられたリセスの内部に、第1コンタクトプラグ41aが、右側の縦辺に設けられたリセスの内部に第2コンタクトプラグ41bが配置されている。第1コンタクトプラグ41aは第1主電極配線25aに接続され、第2コンタクトプラグ41bは第2主電極配線25bに接続されている。信号配線Riは、出力抵抗Rsを介して増幅器81に接続されている。第1主電極領域15aをドレイン領域、第2主電極領域15bをソース領域とすれば、図1Aに示す回路はソース接地の回路形式の一例となる。
図3Aの上段は、図2に示した電圧発生部(22a1,24a)として機能する圧電素子の等価回路を示す。上段の中央左側の□に囲まれた理想変成器を示す「A」は、「力係数」と呼ばれ、トランスの増幅率に対応する。力係数Aは、機械系の力 Fo と電気系の電圧Vo の変換係数であり、
Fo = AVo ……(1)
の関係で上段右側の機械系の回路と上段左側の電気系の回路を結びつけている。圧電材料で議論にされる d 定数,e 定数の大小により、力係数Aの大小が決まる。即ち、力係数Aは,構造,圧電材料の電気機械結合係数等に依存するが、単なる変換比としてしか作用しない。式(1)が示すように、力係数Aが大きいほど、電気と機械エネルギの変換効率が高い。
図3Aの上段右側に示された機械系の等価回路は、機械損失抵抗(等価機械抵抗) r 、等価質量(m+M)及び等価コンプライアンスs が力係数Aの理想変成器に直列接続された回路が構成されている。等価コンプライアンスsは、等価スティフネスcの逆数である(s=1/c)。等価質量Mは、機械系の力を発生する部分に対応し、入力した超音波に寄与する質量成分である。等価質量mは等価質量M以外の圧電素子に内在する質量成分である。そして、直列回路を構成する機械損失抵抗r と等価コンプライアンスs のところに、内部抵抗Z0がほぼ無限大の電流源として、超音波の入力で振動する振動源が接続されることを示している。上段左側に示された電気系の等価回路は、力係数Aの理想変成器に並列接続された制動容量Cdと制動抵抗(誘電損失抵抗)Rdで表現される。
図3Aの下段には、ゲート絶縁膜(ゲート酸化膜)構造を有するMISトランジスタ(絶縁ゲート型トランジスタ)の小信号等価回路が示されている。ヘテロ接合FETやHEMTもMISトランジスタの類型である。図3Aの上段の回路と下段の回路を接続する接続ノードとしてMISトランジスタのゲート端子Gが示されている。ゲート端子Gはゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極に対応する。下段の左側にインピーダンス変換素子(14,15a,15b)の第1主電極領域15aに対応する端子としてMISトランジスタのドレイン端子Dが、下段の右側に第2主電極領域15bに対応する端子としてMISトランジスタのソース端子Sが示され、図3Aの一番下側にMISトランジスタの基板端子Bが示されている。ゲート端子Gとソース端子Sの間にはゲート・ソース間容量Cgsが、ゲート端子Gとドレイン端子Dの間にはゲート・ドレイン間容量Cgdが、ゲート端子Gと基板端子Bの間にはゲート・基板間容量Cgbが示されている。
基板端子Bとソース端子Sの間には基板・ソース間容量Cbsが、基板端子Bとドレイン端子Dの間には基板・ドレイン間容量Cbdが示され、ソース端子Sとドレイン端子Dの間にはソース・ドレイン間コンダクタンスgsd=1/rsd(=ΔIDS/ΔVDS)が示されている。更にソース端子Sとドレイン端子Dの間には電流源としてgmvgs及び電流源gmbvbsが並列接続されている。gmは、ゲート相互コンダクタンスΔIDS/ΔVGSであり、gmbは、基板相互コンダクタンスΔIDS/ΔVBSである。図3Aの下段に示されたMISトランジスタの小信号等価回路のゲート・ソース間容量Cgs及びゲート・ドレイン間容量Cgdは、MISトランジスタのゲート絶縁膜容量に対応する。ゲート・基板間容量Cgbの一部もゲート絶縁膜容量の一部に対応する。
しかし、図2に示したインピーダンス変換素子(14,15a,15b)は、電圧発生部(22a1,24a)の直下にゲート絶縁膜が存在する構造ではないので、図3Aは第1実施形態に係る音響素子を示す等価回路ではない。第1実施形態に係る音響素子では、振動体22a1がMISトランジスタのゲート絶縁膜として機能している。図2に示した電圧発生部(22a1,24a)に接続されたインピーダンス変換素子(14,15a,15b)の構成に対応し、振動体22a1自身がゲート絶縁膜として機能する構造である第1実施形態に係る音響素子の等価回路は、図3Bになる。
図3Bの左側には、ゲート・ソース間容量Cgs及びゲート・ドレイン間容量Cgdが、電圧発生部(22a1,24a)の電気系の等価回路において、力係数Aの理想変成器及び制動抵抗Rdに並列接続された梯子型回路が構成されている。即ち、ゲート・ソース間容量Cgsは第1制動容量Cd1として(Cgs=Cd1)、ゲート・ドレイン間容量Cgdは第2制動容量Cd2として(Cgd=Cd2)、それぞれ機能している。ゲート・基板間容量Cgbの一部も、電圧発生部(22a1,24a)の制動容量として機能している。そして、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に定義されるチャネルに発生する、キャリアの移動を制御する電位障壁の高さが、第1制動容量Cd1(=Cgs)、第2制動容量Cd2(=Cgd)及びゲート・基板間容量Cgbの一部を介して、振動体22a1の電位で制御される。
圧電定数にはd形式(歪み・電荷形式)、e形式(応力・電荷形式)、g形式(歪み・電界形式)、h形式(応力・電界形式)が存在する。各形式に対してはそれぞれ線形圧電基礎式が与えられ、用途によって使い分けがなされている。線形圧電基礎式をd形式で表すと
Di = diαTα+εij
TEj ……(2a)
Sα = sαβ
ETβ+dαiEi ……(2b)
α,β=xx,yy,zz,……,xy ……(2c)
i,j=x,y,z ……(2d)
となる。ここで、Diは電束密度(C/m2)、Tαは応力(N/m2)、Sαは歪み(単位なし)、Eiは電界(V/m)である。また、diαは圧電d定数(C/N)、sαβ
Eは一定電界における弾性コンプライアンス(m2/N)、εij
Tは一定応力における誘電率(pF/m)である。式(2c)及び(2d)に定義する下付の添え字は方向を示している。なお、既に説明した図31のY方向(縦方向)は、式(2a)及び(2d)で採用しているz方向に対応し、図31のX方向(水平方向)は、式(2a)及び(2d)で採用しているx方向又はy方向に対応することに留意が必要である。式(2a)の係数右辺第2項及び(2b)の右辺第1項の上付きの添え字は、条件を示している。上付きの添え字でEと書いてある係数は、電界一定の条件において測定した値、Tと書いてあるは応力一定の状態で測定をした値を示す。
一方、圧電基礎式をe形式で表すと、
Di = eiαSα+εij
SEj ……(3a)
Tα = cαβ
ESβ-eαiEi ……(3b)
となる。ここで、eiαは圧電e定数(C/m2)、cαβ
Eは一定電界における弾性スティフネス(N/m2)、εij
Sは一定歪みにおける誘電率(pF/m)である。下付の添え字は、式(2c)及び(2d)で定義した方向を意味している。式(3a)の右辺第2項及び(3b)の右辺第1項の上付きの添え字は、条件を示している。上付きの添え字でEと書いてある係数は、電界一定の条件において測定した値、S と書いてある係数は歪み一定の状態で測定をした値を示す。式(2a),(3a)が正圧電効果を、式(2b),(3b)が逆圧電効果をそれぞれ表している。分極方向がz方向に揃った理想的な単結晶の圧電体材料においては、材料の等方性により弾性コンプライアンステンソル等から独立な成分の数を減らすことができる。
例えばAlNのe形式の線形圧電基礎式(3a)は、
と表現できる。圧電e定数eiαが小さいとして線形圧電基礎式(3b)の右辺第2項を省略する。圧電膜の端面における電束密度Dx=Dy=Dz=0(開放)の条件において、AlNが圧電膜の場合の線形圧電基礎式(3b)は、
と簡略化することができる。
AlNが圧電膜の場合において、応力Tαに応答する電界Ex,Ey,Ezは、式(4a)及び(4b)で電束密度Di=0とすると,
となる。電界Ex,Ey,Ezから圧電起電力を求めることができる。
PZTは、組成によりPZT-4,PZT-5,PZT-5A,PZT-5H,PZT-8等に分類された種々の材料が商品化されている。このうち圧電定数が大きなソフトPZTとして、受信用プローブ等に一般的に用いられているPZT-5Hに着目すると、PZT-5Hのe形式の線形圧電基礎式(3a)は、
と表現できる。式(3b)の右辺第2項を省略する。そして、圧電膜の端面における電束密度Dx=Dy=Dz=0(開放)の条件において、PZT-5Hが圧電膜の場合の線形圧電基礎式(3b)は、
と簡略化することができる。
PZT-5Hが圧電膜の場合において、応力Tαに応答する電界Ex,Ey,Ezは、式(4a)及び(4b)で電束密度Di=0とすると,
となる。式(5c)の電界Ex,Ey,Ezから圧電起電力を求めることができるが、式(4c)と式(5c)を比較すると、焦電体であるAlNと強誘電体であるPZT-5Hとでは、電束密度Di=0のときの応力に応答する圧電起電力は、互いに有意な差異がほとんどないと判断できる。
以下の式(6)に示すように、誘電体は圧電体を含み、圧電体は焦電体(極性結晶)を含み、焦電体は強誘電体を含む。第1実施形態に係る音響素子の電圧発生部(22a1,24a)の振動体22a1は、応力場として連続した構造をなしていれば、振動体22a1の少なくとも一部をなす応力集中箇所の材料が、圧電体であれば、残余の部分は非圧電体でも構わない。
誘電体 ∋ 圧電体 ∋ 焦電体(極性結晶) ∋ 強誘電体 ……(6)
結晶構造の対称性により結晶は32種類の晶族に分類されるが、その内21種類は対称性を持たない。このうち1つの結晶点群(立方点群O-432)が、別の対称性により圧電性を持たないが、この例外を除き20種類の結晶点群が圧電性を有する。誘電体の部分集合である圧電体には、水晶(SiO2)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、リン酸ガリウム(GaPO4)等が圧電体として有名である。更に結晶性にも依存するが、コランダム型酸化物のアルミニウム酸化物(Al2O3)、ルチル型酸化物の酸化チタン(TiO2)、岩塩型酸化物のマグネシウム酸化物(MgO)、蛍石型酸化物のハフニウム酸化物(HfO2)やジルコニウム酸化物(ZrO2)等が、振動体22a1の少なくとも一部を構成する、振動体22a1の応力集中箇所の材料として使用可能である。
即ち、振動体22a1は図2に例示したように全体構造のすべてを、20種類の結晶点群の圧電体で構成してもよく、中央の下向き凸部(応力集中箇所)のみを20種類の結晶点群の圧電体で構成し、残余の板状部分等を、32種類の内の残余の12種類の結晶点群に属する非圧電体の層としてもよい。即ち、応力場として連続した構造であれば、電圧発生部(22a1,24a)は、振動体22a1が構成する応力場の応力集中箇所に、少なくとも圧電層が設けられた構造であればよい。よって、第1実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子(14,15a,15b)は、少なくとも下向き凸部(応力集中箇所)に設けられた圧電層の特定の局所を電位伝達ゾーンとして、この電位伝達ゾーンの電位を制御電圧として動作可能である。
ハフニウム・アルミネート(HfAlOx)やケイ酸ハウニウム(HfSixOy)のような3元系の化合物も、振動体22a1の応力集中箇所に少なくとも用いる材料として使用可能である。即ち、ストロンチウム(Sr)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、イットリウム(Y)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)のいずれか1つの元素を少なくとも含む酸化物、又はこれらの元素を含むシリコン窒化物が、振動体22a1の応力集中箇所に少なくとも用いる材料として使用可能である。ガリウム砒素(GaAs)、ガリウム燐(GaP)、硫化亜鉛(ZnS)、テルル化亜鉛(ZnTe)、セレン化亜鉛(ZnSe)やカドミウムテルル(CdTe)等の閃亜鉛鉱型の化合物半導体、並びにAlN、GaN、CdS、ZnOやセレン化カドミウム(CdSe)等のウルツ鉱型の化合物半導体も圧電性を有するので、振動体22a1の応力集中箇所に少なくとも用いる材料として使用可能である。一方、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ダイヤモンド(C)等のダイヤモンド構造(点対称群Oh=m3m)の単元素半導体は圧電性を示し得ないので、振動体22a1の応力集中箇所に用いる材料には使えないが、応力集中箇所以外の残余の板状部分等の材料として採用可能である。
焦電体は式(6)に示すように圧電体の部分集合であり、圧電体の中で通常から分極していて温度変化によって電荷が現れやすいものが焦電体である。圧電性を有する20種類の晶族のうち、焦電性を示すのは10種類の結晶点群で、「極性結晶」とも言われる。すなわち、シェーンフリースの記法で三斜晶系C1、単斜晶系Cs、C2、斜方晶系C2v、正方晶系C4、C4v、三方晶系C3、C3v、六方晶系C6、C6vの結晶点群が焦電性を示す。ウルツ鉱構造の結晶点群は六方晶系C6vである。AlN、GaN、ZnOやCdS等のウルツ鉱型の化合物半導体は焦電体である。六方晶系の炭化ケイ素(SiC)も焦電体である。AlNやGaNは、結晶の特定の一方向に圧電性を示すが、Scを添加すると結晶構造が少し変化して、その方向にイオンが動きやすくなり、圧電性が向上する。例えば、ScxAl1-xNは、Sc濃度xの増大と共に圧電性が大きくなり、x~43%でLiTaO3に匹敵する非常に大きな圧電性を示す。トルマリン((Ca,Na)X3Al6(BO3)3Si6O18(OH,F)4;X=Mg,Fe,Mn,Li,Al)も焦電性がある。
強誘電体は式(6)に示すように焦電体の部分集合であり、焦電体で自発分極の方向が外部電界の印加で変わるものが強誘電体である。圧電体や焦電体は結晶構造の対称性による裏づけがあるが、強誘電体の結晶構造の対称性による定義には、曖昧さがある。強誘電体にはPZTの他、HfO2、酸化ハフニウム・ジルコニウム(Hf1-xZrxO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、バリウム・チタン酸ストロンチウム(BaSrTiO3)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、タンタル酸ストロンチウム・ビスマス(SrBi2Ta2O9)等のペロブスカイト型酸化物、ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ロッシェル塩(NaKC4H3O64H2O)等がある。
<応力分布強化構造の検討>
非特許文献2に記載された発明等、従来のPMUTの技術では、PMUT自身の高感度化及び広帯域化を図るための新たな内部構造や幾何学的形状の検討がされていなかった。第1実施形態に係る音響素子は、振動体22a1の出力面側の場所によって電位の異なる非一様な電位分布を示す電圧発生部(22a1,24a)の構造を配慮した設計により、高感度化及び広帯域化を図っている。例えば、非一様な電位分布を考慮し、応力集中箇所にのみ圧電層を配置した複合構造も許容して、高感度化及び広帯域化を図っている。式(2a)~(5c)に示すように、場所に依存する電位分布を発生させるためには、振動体22a1の内部に非一様な電位分布を発生させる「応力分布強化構造」の採用が好ましい。
図31を用いて既に説明したが、従来知られている平坦円板型の振動空洞を用いた場合であっても、上側に振動体22fが撓んで上に凸となるときと、下側に撓んで下に凸となる曲面を構成するときでは、○と○の間隔が異なる互いに非対称の振動をする。場所に依存する電位分布を発生させるための応力分布強化構造として、どのような圧電層及び振動空洞の形状が好ましいかを、米国ワイドリンガー・アソシエイツ(Weidlinger Associates)社が最初に開発した「圧電波動解析ソフトェアPZFlex」を用いてシミュレーションした。種々の応力分布強化構造における発生電圧の過渡応答のシミュレーションをすることにより、どのような構造が圧電効果による高感度化及び広帯域化する新たな構造として有効かを探索する。そして、特定の候補箇所を電位伝達ゾーンとして選択し、少なくともその電位伝達ゾーンに圧電層を配置することが可能なように、発生電圧が高くなる特定の箇所を、種々の応力分布強化構造のそれぞれにおいてミクロに探索する。
-平行トーラス型-
先ず、図4Aに示すような中央部の凸部の周りに平行トーラス型の振動空洞21a1が設けられた応力分布強化構造中の発生電圧を場所毎にシミュレーションし、出力面上の電圧分布を検討し、高感度化及び広帯域化への基礎とした。「平行トーラス型」とはトーラスを構成する空間を定義する主面となる上面と下面が互いに平行である3次元構造を意味する。平行トーラス型の振動空洞21a1は、直径d11(=2r11)程度の円筒形の凹部を有するシリコン基板11sa1上に出力面(下面)の中央部に円柱状の下向きの凸部を有する振動体22a1が挿入された構造を基礎としている。断面に現れる下向きの凸部の周りの長方形の空間は、紙面の奥と手前で連続する平行トーラスを構成している。図1A及び図1Bの平面図に示すように、第1実施形態に係る音響素子は、平面パターンが六角形となる平行トーラス型の振動空洞21a1である。図1A等に示した構造は、振動空洞21a1の中央部に正六角柱状の凸部を有する振動体22a1が挿入された構造であり、シミュレーションで簡単化して用いた軸対称の3次元形状とは、幾何学的な平面パターンが相違する。しかし、平面パターンが円形であるか六角形であるかは、圧電効果で発生する発生電圧の分布に対するシミュレーションの結果に、原理的な大きな影響を与えるものではない。
振動体22a1の中央凸部以外の平板状の部分の厚さをt
22a1とする。中央凸部の直径はd
22a1とする。振動体22a1の上面には、接地電位に接続された固定電位電極24aを配置した。固定電位電極24a及び固定電位電極24aが存在しない箇所の振動体22a1上には、マッチング層として機能するエポキシ樹脂からなる固定電位電極保護膜23を、厚さt
23で配置した。なお、シミュレーションにおいては、振動体22a1の下面には、圧電効果で発生する電圧分布を検証するために、図4Bに示すように、5個の電位検出用理想電極(図4Bにおいて金属の斜めハッチングを付した矩形で示しているが厚さゼロである。)を配置する。そして、表1に示すように、5個の電位検出用理想電極の配列に従って、内側から分割基準半径r
11=(d
11-d
22a1)/2方向に沿って(外側に向かって)順に附番される位置P
0, P
1,……, P
4に対し、電位伝達ゾーンの個別名称を、中央ゾーンP
0、第1周辺ゾーンP
1、……、第4周辺ゾーンP
4と定義する。
中央ゾーンP0の外側を半径方向に沿って線幅とスペース幅を同一とし、同一ピッチで囲む4本の第1周辺ゾーンP1、第2周辺ゾーンP2、第3周辺ゾーンP4、第4周辺ゾーンP4は、それぞれ同心円状の円環の帯(ゾーン)である。線幅とスペース幅を同一としているので、振動空洞21a1の分割基準半径r11=d11-d22a1)/2を9分割して、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の半径に沿った位置が表1に定義される。即ち、図4Bに示すように、中央ゾーンP0の電位検出用理想電極は中央の下向き凸部を囲む環状のゾーンであるので、中央の下向き凸部の半径をd22a1/2として、中央ゾーンP0は、半径位置d22a1/2から半径位置(1/9)r11+d22a1/2までの一定線幅の円環状の領域(ゾーン)として定義される。
同様に表1に定義するように、第1周辺ゾーンP1は、半径位置(2/9)r11+d22a1/2から半径位置(3/9)r11+d22a1/2までの一定線幅の円環状の領域として定義される。又、第2周辺ゾーンP2は、半径位置(4/9)r11+d22a1/2から半径位置(5/9)r11+d22a1/2までの一定線幅の円環状の領域として定義され、第3周辺ゾーンP3は、半径位置(6/9)r11+d22a1/2から半径位置(7/9)r11+d22a1/2までの一定線幅の円環状の領域として定義される。そして、第4周辺ゾーンP4は、半径位置(8/9)r11+d22a1/2から最外周集(半径位置r11)までの領域として定義される。
シミュレーションでは、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ配置された5個の電位検出用理想電極は、いずれも電気的に開放状態(オープン)で厚さゼロ、振動体22a1に対する接触抵抗ゼロの仮想電極である。そして、開放状態の電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4において、圧電効果でそれぞれ発生する発生電圧の過渡応答を検証して、振動体22a1の出力面における電圧分布を調べた。振動体22a1の出力面においては、それぞれの中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4における電位検出用理想電極の内部に位置する半径方向の電界は短絡されていることになる。又、図4Bでは第4周辺ゾーンP4の電位検出用理想電極の外周がシリコン基板11sa1に接しているが、シリコン基板11sa1は半絶縁性(高比抵抗)であり、第4周辺ゾーンP4の電位検出用理想電極は電気的な浮遊状態と仮定してシミュレーションしている。
図4Cは、AlNを振動体22a1の全体に用いた場合であって、電圧発生部(22a1,24a)の平行トーラス型の振動空洞21a1の中央部にある凸部の直径d22a1=1.2μmとしたときの超音波受信時における発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとしてシミュレーションした結果を示す図である。中央凸部以外の振動体22a1の厚さt22a1=0.2μm、固定電位電極保護膜23の厚さt23=3μmの場合である。図4Cの右上に線種の凡例をしめしたとおり、太い実線は中央ゾーンP0における発生電圧である中央電圧Vp0の過渡応答を示す。又、図4Cにおいて太い破線は第1周辺ゾーンP1における発生電圧である第1周辺電圧Vp1、細い破線は第2周辺ゾーンP2における発生電圧である第2周辺電圧Vp2、細い実線は第3周辺ゾーンP3における発生電圧である第3周辺電圧Vp3、一点鎖線は第4周辺ゾーンP4における発生電圧である第4周辺電圧V4pのそれぞれの過渡応答を示す。図4Cの左側に示すような最大±1Paの振動振幅の圧力で振動する単発の正弦波からなる超音波が、電圧発生部(22a1,24a)に入力したときに、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4に圧電効果でそれぞれ発生するインパルス応答の電圧信号は、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
具体的には、図4A及び図4Bに示した固定電位電極24aが接地電位(GND)に接続されている場合、図4Cに示すように、接地電位(GND=0V)を中心として、正方向と負方向に振動する過渡応答を示す。図4Cに太い実線で示した中央電圧Vp0は、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.34μV程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、-0.52μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が+0.25μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は-0.13μV程度まで減衰する。
なお、図4Bとは異なり、中央ゾーンP0の電位検出用理想電極を中央の下向き凸部の下端部に島状に設けると(位置のみの定義に関しては、表1で中央凸部の直径を維持したまま、d22a1/2=0とする場合に対応する。)、中央電圧Vp0は図4Cに示す場合の2倍程度に増大する(図示省略)。振動体22a1の中央の下向き凸部の近傍の膜横方向の圧縮伸長による圧電起電力と、振動体22a1の中央の下向き凸部に沿った縦方向の圧縮伸長による圧電起電力とが強め合った結果と考えられる。
図4Cにおいて細い破線で示した第2周辺電圧Vp2は、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.26μV程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、+0.38μV程度となり最大振幅値に達する。しかし、第2周辺電圧Vp2の振幅の絶対値absVp2は中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0よりも小さく、中央電圧Vp0と第2周辺電圧Vp2は逆位相の関係である。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2周辺ゾーンP2における発生電圧である第2周辺電圧Vp2の第3発目の振動振幅が-0.18μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は+0.09μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。
図4Cにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4は、約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.25μV程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、-0.32μV程度となり最大振幅値に達する。第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、中央電圧Vp0及び第2周辺電圧Vp2の絶対値absVp0及びabsVp2よりも小さく3番目の値である。第4周辺電圧Vp4と第2周辺電圧Vp2は逆位相の関係で、第4周辺電圧Vp4と中央電圧Vp0は同位相の関係である。その後、第4周辺電圧Vp4は、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が+0.17μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は-0.08μV程度まで減衰する。
図4Cにおいて太い破線で示した第1周辺電圧Vp1の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値absVp1は、第4周辺電圧Vp4の絶対値absVp4よりも小さく4番目の値である。第1周辺電圧Vp1と第2周辺電圧Vp2とは、互いに同位相の関係で振動し、第1周辺電圧Vp1と中央電圧Vp0及び第4周辺電圧Vp4は、互いに逆位相の関係で振動する。又、図4Cにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値absVp3は、第1周辺電圧Vp1の絶対値absVp1よりも小さく5番目の値で、最も小さい。第3周辺電圧Vp3と第1周辺電圧Vp1及び第2周辺電圧Vp2とは、互いに同位相の関係で振動する。第3周辺電圧Vp3と中央電圧Vp0及び第4周辺電圧Vp4は、互いに逆位相の関係で振動する。
即ち、図4A及び図4Bの電圧発生部(22a1,24a)の振動体22a1の出力面において、圧電効果により発生する電位の関係は、
absVp0 > absVp2 > absVp4 > absVp1 > absVp3 ……(7)
となる、場所によって電位の異なる非一様な電位分布を示す。図4Cは、図1Aに例示したような第1電源を接地電位(GND)に接続した場合の発生電圧である中央電圧Vp0 ,第1周辺電圧Vp1, 第2周辺電圧Vp2 ,第3周辺電圧Vp3及び第4周辺電圧Vp4 の関係を示すものである。図1Aに例示した回路接続とは異なり、第1電源をバイアス電圧Vbias>0に接続すれば、電圧発生部(22a1,24a)が発生する中央電圧Vp0 ,第1周辺電圧Vp1,……,第4周辺電圧Vp4 は、0Vとは異なるバイアス電圧Vbiasを中心にバイアス電圧Vbiasの上下に振動する振動波形となる。即ち、インピーダンス変換素子(14,15a,15b)の増幅率が最も高くなるVbiasを選んで第1電源をVbiasに接続すれば、第1実施形態に係る音響素子の感度を高くすることができる。
図4Dは、図4Cと同様に、図4A及び図4Bの電圧発生部(22a1,24a)を構成する振動体22a1にAlNを使用した場合であって、電圧発生部(22a1,24a)の平行トーラス型の振動空洞21a1の中央部にある凸部の直径d22a1=2.0μmと、図4Cの場合よりも太くしたときの超音波受信時における発生電圧の過渡応答を、図4Bに位置を定義する中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとしてシミュレーションした結果を示す図である。電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置は表1に示したとおりである。中央凸部以外の振動体22a1の厚さt22a1=1μmで図4Cの場合よりも厚い。固定電位電極保護膜23の厚さt23=3μmで図4Cの場合と同じである。
図4Dに太い実線で示した振動体22a1の中央部の中央電圧Vp0は、超音波のインパルス入力後約0.03μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.14μV程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、-0.24μV程度となり最大振幅値に達する。図4Cの場合においては、超音波インパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近の第1発目の中央電圧Vp0の振動振幅が+0.34μV程度で、約0.13μs経過後の時刻付近の第2発目の振動振幅は、0.52μV程度であったので、図4Dに示す中央電圧Vp0の振動振幅は、図4Cの場合に比して小さな値になっている。しかも、インパルス入力後約0.03μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動は、約0.06μs程度に至るまで次第に減衰する波形の歪みが認められ、単一の正弦波を示す波形ではなく、図4Cの場合の0.06μsにピークを有する正弦波の振動とは異なる。中央電圧Vp0は、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が+0.15μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は-0.06μV程度まで減衰する。第3発目及び第4発目の振動にも波形の歪みが認められる。
なお、図示を省略するが、中央ゾーンP0の電位検出用理想電極を中央の下向き凸部の下端部に島状に設けると(位置のみの定義に着目すると、表1で凸部の直径を維持したままd22a1/2=0とする場合に対応する。)、中央電圧Vp0は図4Dに示す場合の2倍程度に増大することは、図4Cの場合と同様である。振動体22a1の中央の下向き凸部の近傍の膜横方向の圧縮伸長による圧電起電力と、振動体22a1の中央の下向き凸部に沿った縦方向の圧縮伸長による圧電起電力とが強め合った結果と考えられる(中央凸部の縦方向圧電効果の増大については、図4E及び図4Fを用いて後述する。)。
図4Dにおいて細い破線で示した第2周辺電圧Vp2は、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.14μV程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、+0.24μV程度となり最大振幅値に達する。図4Dに示すように、中央電圧Vp0と第2周辺電圧Vp2は逆位相の関係であるが、第2周辺電圧Vp2の絶対値absVp2は、中央電圧Vp0の絶対値absVp0と同程度である。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2周辺電圧Vp2の第3発目の振動振幅が-0.14μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は+0.06μV程度まで減衰する。
図4Dにおいて一点鎖線で示した振動空洞21a1の外壁(側壁)近傍で、中央凸部からもっとも離れた位置である第4周辺電圧Vp4は、約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.15μV程度であり、中央電圧Vp0の第1発目の振動振幅の+0.14μV程度に比し少し大きい。第1発目の振動振幅に対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、-0.24μV程度となり最大振幅値に達するが、中央電圧Vp0の第2発目の振動振幅と同程度である。したがって、第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、中央電圧Vp0の絶対値absVp0及び第2周辺電圧Vp2の絶対値absVp2と、ほぼ同程度である。第4周辺電圧Vp4と第2周辺電圧Vp2は逆位相の関係で、中央電圧Vp0とは同位相の関係で過渡応答の振動をする。その後、第4周辺電圧Vp4は、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅は、中央電圧Vp0よりもごく僅か小さな+0.13μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は-0.06μV程度まで減衰する。
図4Dにおいて太い破線で示した第1周辺電圧Vp1の過渡応答は、超音波のインパルス入力後約0.03μs経過後の時刻付近で第1発目の振動ピークとして+0.05μV程度まで正方向に振れる。更にその後、約0.06μs経過後の時刻付近で第2発目の振動ピークとして-0.03μV程度まで負方向に振れ、第1周辺電圧Vp1は中央電圧Vp0,第2周辺電圧Vp2,第4周辺電圧Vp4とは異なる特異な振動波形を示す。又、図4Cに示した第1周辺電圧Vp1の過渡応答の挙動とも異なる。図4Dの第1周辺電圧Vp1の過渡応答の挙動は約0.06μs付近で+0.07μV程度まで大きくなる点では図4Cに示した第1周辺電圧Vp1の過渡応答の挙動と同様であるが、図4Cでは第2発目の振動ピークであるが、図4Dでは第3発目の振動ピークになる点で異なる。第1周辺電圧Vp1の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値absVp1は、中央電圧Vp0,第2周辺電圧Vp2,第4周辺電圧Vp4の絶対値absVp0,absVp2,absVp4よりも小さく4番目の値である。第1周辺電圧Vp1と第2周辺電圧Vp2とは、約0.03μs付近の第1発目の振動ピークを除けば、互いに同位相の関係で振動する。又、第1発目の振動ピークを除けば、第1周辺電圧Vp1と中央電圧Vp0及び第4周辺電圧Vp4は、互いに逆位相の関係で振動する。
又、図4Dにおいて細い実線で示した、第3周辺電圧Vp3の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値は、第1周辺電圧Vp1よりも小さく5番目の値で、最も小さい。第3周辺電圧Vp3と第1周辺ゾーンP1及び第1周辺電圧Vp1及び第2周辺電圧Vp2とは、互いに逆位相の関係で振動する点で、図4Cに示した過渡応答とは異なる。同様に、第3周辺電圧Vp3と第4中央電圧Vp0及び第4周辺電圧Vp4は、互いに同位相の関係で振動する点で、図4Cに示した過渡応答とは異なる。即ち、振動空洞21a1の中央部にある凸部の直径d22a1が図4Cの場合よりも太く、振動体22a1の厚さt22a1が図4Cの場合よりも厚い場合では、振動体22a1の出力面において圧電効果により発生する電位の関係は、
absVp0 ≒ absVp2 ≒ absVp4 ……(8a)
absVp0 ,absVp2 ,absVp4 > absVp1 > absVp3 ……(8b)
となる、場所依存性を有する非一様な電位分布を示す。
図4Eは、PZTを振動体22a1の全体に用いた場合であって、中央凸部の直下に設けた電位検出用理想電極で検出される中央ゾーンP0の中央電圧Vp0 の感度の周波数依存性を示す。中央凸部以外の振動体22a1の平板状の部分の厚さt22a1=2.4μmとする。図4Bに示した中央凸部の直径d22a1を直径Dと再定義し、直径D=2.4μm=t22a1として、一定の直径Dに対する中央凸部の高さHのアスペクト比(=H/D)を変えた場合の電圧感度の周波数依存性を示す。図4Eに示すように、アスペクト比H/D=1のときは、受信超音波の周波数帯域5~10MHzの範囲内でピーク周波数7.3MHzを示す感度曲線となる。アスペクト比H/D=1のときは、中央電圧Vp0 の最大電圧感度が26.4μV/Pa程度となっている。アスペクト比H/D=1のときに対し、アスペクト比H/D=2と高さを高くしたときは、ピーク周波数6.8MHzと少し低周波側に感度曲線がシフトして比帯域が狭くなっている。中央電圧Vp0 の最大電圧感度が47.7μV/Pa程度となり、最大電圧感度が約1.8倍に増大し、アスペクト比H/Dの増大に伴う縦方向圧電効果の増大が認められる。
又、アスペクト比H/D=3と高さを更に高くしたときは、ピーク周波数6.5MHzとH/D=2のときよりも少し更に低周波側に感度曲線がシフトして比帯域が少し更に狭くなり、中央電圧Vp0 の最大電圧感度が68.2μV/Pa程度となっている。アスペクト比H/D=3では最大電圧感度がH/D=1のときの約2.6倍に増大し、アスペクト比H/Dの増大に伴う縦方向圧電効果の増大が認められる。更に、アスペクト比H/D=4と高さを更に高くしたときは、ピーク周波数6.3MHzとH/D=3のときよりも少し更に低周波側にシフトし、比帯域が少し更に狭くなった感度曲線となり、中央電圧Vp0 の最大電圧感度が85.5/Pa程度となる。アスペクト比H/D=4では最大電圧感度がH/D=1のときの約3.2倍に増大し、アスペクト比H/Dの増大に伴う縦方向圧電効果の増大が認められる。更に、アスペクト比H/D=8と、高さを更に高くしたときは、ピーク周波数5.6MHzとH/D=4のときよりも低周波側に感度曲線がシフトして比帯域が少し更に狭くなり、中央電圧Vp0 の最大電圧感度が139.5/Pa程度となる。アスペクト比H/D=8になると、最大電圧感度がH/D=1のときの約5.3倍に増大し、アスペクト比H/Dの増大に伴う縦方向圧電効果の増大が認められる。
図4Fは、図4Eと同様に、PZTを振動体22a1の全体に用いた場合であって、中央凸部の直下で検出される中央ゾーンP0の中央電圧Vp0 の感度の周波数依存性を示す。図4Eでは、直径D=2.4μm(一定)として、直径Dに対する中央凸部の高さHのアスペクト比(=H/D)を変えた場合の電圧感度の周波数依存性を示したが、図4Fでは、アスペクト比H/D=1(一定)として、直径D=d22a1を変えた場合の電圧感度の周波数依存性を示す。図4Fでも、中央凸部以外の振動体22a1の平板状の部分の厚さt22a1=2.4μm(一定)としている。図4Fに示す直径d22a1=2.4μmの感度曲線は、図4Eに示したアスペクト比H/D=1のときの感度曲線と同一であり、ピーク周波数7.3MHzにおける中央電圧Vp0 の最大電圧感度が26.4μV/Pa程度である。
直径d22a1=2.4μmのときに対し、直径d22a1=4.8μmと中央凸部を太くしたときは、ピーク周波数7.8MHzと少し高周波側に感度曲線がシフトして比帯域が広くなっている。直径d22a1=4.8μmのときの中央電圧Vp0 の最大電圧感度が12.8μV/Pa程度となり、最大電圧感度が直径d22a1=2.4μmのときの約0.48倍に減少し、直径d22a1の増大に伴う縦方向圧電効果の相対的な減少が認められる。更に、直径d22a1=7.2μmと中央凸部が太くなったときは、ピーク周波数8.6MHzとなり、直径d22a1=4.8μmのときよりも更に高周波側に感度曲線がシフトして比帯域も更に少し広くなった感度曲線となっている。直径d22a1=7.2μmの場合の中央電圧Vp0 の最大電圧感度が8.3μV/Pa程度に減少しているので、直径d22a1=7.2μmでは最大電圧感度が直径d22a1=2.4μmのときの約0.31倍になり、中央凸部の直径d22a1の増大に伴う縦方向圧電効果の相対的な減少が認められる。
平行トーラス型の応力分布強化構造は、振動体の出力面側の下向きの凸部を中心に構成しても、シリコン基板側の上向きの凸部を中心に構成してもよい。図4Aとは異なり、図5Aに示すように、振動空洞中央部の凸部がシリコン基板11sa2の一部の上向きの突出部である場合の数値計算シミュレーションの結果を、図5C及び図5Dに示す。円筒形の凹部を有するシリコン基板11sa2の中央部に上向凸部を段差構造として有するので、シリコン基板11sa2上には振動体22a2が挿入されることにより、シリコンからなる中央部の上向凸部の周りに平行トーラス型の振動空洞21a2が構成される。振動体22a2の上面には、接地電位に接続された固定電位電極24aを配置した。固定電位電極24a及び固定電位電極24aが存在しない箇所の振動体22a2上には、エポキシ樹脂からなる固定電位電極保護膜23を配置した。
図5Bの場合は、表2に示すように、5個の電位検出用理想電極の配列に従っ側から半径r
11(=d
11/2)方向に沿って(外側に向かって)順に附番される位置P
0, P
1,……, P
4に対し、電位伝達ゾーンの個別名称を、中央ゾーンP
0、第1周辺ゾーンP
1、……、第4周辺ゾーンP
4と定義する。表1に示した図4Bの場合の定義とは異なり、中央の電位伝達ゾーン(中央ゾーン)P
0の電位検出用理想電極は円形の島領域である。
中央ゾーンP0の外側を半径方向に沿って線幅とスペース幅を同一とし、同一ピッチで囲む4本の第1周辺ゾーンP1、第2周辺ゾーンP2、第3周辺ゾーンP4、第4周辺ゾーンP4は、それぞれ同心円状の円環の帯(ゾーン)である。線幅とスペース幅を同一としているので、振動空洞21a1の半径r11(=d11/2)を9分割して、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の半径に沿った位置が定義される。即ち、表2に定義するように、振動空洞21a1の半径r11=d11/2として、中央ゾーンP0は、中心から半径位置(1/9)r11までの一定線幅の円環状の領域(ゾーン)として定義される。同様に表2に定義するように、第1周辺ゾーンP1は、半径位置(2/9)r11から半径位置(3/9)r11までの一定線幅の円環状の領域として定義される。又、第2周辺ゾーンP2は、半径位置(4/9)r11から半径位置(5/9)r11までの一定線幅の円環状の領域として定義され、第3周辺ゾーンP3は、半径位置(6/9)r11から半径位置(7/9)r11までの一定線幅の円環状の領域として定義される。そして、第4周辺ゾーンP4は、半径位置(8/9)r11から最外周集(半径位置r11)までの領域として定義される。
便宜上、図5Bでは5個の電位検出用理想電極が振動体22a2の下面に埋め込まれた構造として図示されているが、シミュレーションでは厚さゼロの電位検出用理想電極としているので、図5Bのように振動体22a2の面に埋め込まれているのか、図4Bのように振動体22a1の面から突出した板としての構造であるかは、本質的な差異をもたらすものではない。中央ゾーンP0の外側を半径方向に沿って線幅とスペース幅を同一とし、同一ピッチで囲む4本の第1周辺ゾーンP1、第2周辺ゾーンP2、第3周辺ゾーンP4、第4周辺ゾーンP4は、それぞれ同心円状の円環の帯である。なお、図4Bに対して言及したのと同様に、図5Bにおいて第4周辺ゾーンP4の電位検出用理想電極の外周がシリコン基板11sa2に接している。シミュレーションでは、シリコン基板11sa2は半絶縁性であり、第4周辺ゾーンP4の電位検出用理想電極は電気的な浮遊状態であると仮定している。同様に、中央ゾーンP0の電位検出用理想電極の下面の全面がシリコン基板11sa2の上向きの凸部の上部端部に接しているが、シリコン基板11sa2は半絶縁性であり、中央ゾーンP0の電位検出用理想電極は電気的な浮遊状態であると仮定している。
線幅とスペース幅を同一としているので、図5Bに示す配列では、振動空洞21a1の半径r11(=d11/2)が第1周辺ゾーンP1,……,第4周辺ゾーンP4等により9分割される。よって、第1周辺ゾーンP1,……,第4周辺ゾーンP4のそれぞれは一定の線幅ΔrL=r11/9である。振動空洞21a2の中央部にある上向凸部の直径d22a2=2ΔrLとなる。即ち、表2の定義と同様に、中央ゾーンP0, 第1周辺ゾーンP1,……,第4周辺ゾーンP4の位置が定められ、中央ゾーンP0, 第1周辺ゾーンP1,……,第4周辺ゾーンP4のそれぞれ発生する中央電圧Vp0、第1周辺電圧Vp1、……、第4周辺電圧V4pのそれぞれの過渡応答を図5Cに示す。
図5Cは、PZTを振動体22a2の全体に用いた場合のシミュレーション結果である。電圧発生部(22a2,24a)の平行トーラス型の振動空洞21a2の中央部にある凸部の直径d22a2=2ΔrL=6.7μmとしたときの超音波受信時における発生電圧として、中央電圧Vp0、第1周辺電圧Vp1、……、第4周辺電圧V4pのそれぞれの過渡応答が示されている。振動体22a2の厚さt22a2=2.4μm、固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmの場合である。図5Cの右上に凡例を示したとおり、太い実線は中央電圧Vp0の過渡応答を示す。又、図5Cにおいて太い破線は第1周辺電圧Vp1、細い破線は第2周辺電圧Vp2、細い実線は第3周辺電圧Vp3、一点鎖線は第4周辺電圧Vp4のそれぞれの過渡応答を示す。図5Cの左側に示すような最大±1Paの振動振幅の圧力で振動する単発の正弦波からなる超音波が、電圧発生部(22a2,24a)に入力したときに、中央ゾーンP0, 第2周辺ゾーンP1,……,第4周辺ゾーンP4に圧電効果でそれぞれ発生するインパルス応答の電圧信号は、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
具体的には、図5Cに示す中央電圧Vp0は、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.62μV程度である。これに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、+0.92μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が-0.55μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は+0.33μV程度まで減衰する。図5Cに示す第1周辺電圧Vp1は、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.13μV程度である。これに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、-0.18μV程度となり最大振幅値に達する。しかし、第1周辺電圧Vp1の振幅の絶対値absVp1が中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0よりも小さく、中央電圧Vp0と第1周辺電圧Vp1は逆位相の関係である。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1周辺電圧Vp1の第3発目の振動振幅が+0.12μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は-0.03μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。
図5Cに一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4は、約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.06μV程度である。これに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、-0.09μV程度となり最大振幅値に達する。第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0及び第1周辺電圧Vp1の振幅の絶対値absVp1よりも小さく3番目の値である。第1周辺電圧Vp1、第3周辺電圧Vp3、第4周辺電圧Vp4と、中央電圧Vp0、第2周辺電圧Vp2とは逆位相の関係で、中央電圧Vp0と第2周辺電圧Vp2は同位相の関係である。その後、第4周辺電圧Vp4は、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が+0.03μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は-0.01μV程度まで減衰する。
図5Cにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値absVp3は、第4周辺電圧Vp4の絶対値absVp4と同程度であるが、第4周辺電圧Vp4の絶対値absVp4よりも全体的に少し小さく、4番目の値である。第3周辺電圧Vp3と、第1周辺電圧Vp1、第4周辺電圧Vp4とは、互いに同位相の関係で振動する。第3周辺電圧Vp3と、中央電圧Vp0、第2周辺電圧Vp2とは、互いに逆位相の関係で振動する。又、図5Cにおいて細い破線で示した第2周辺電圧Vp2の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値absVp2は、第3周辺電圧Vp3の絶対値absVp3、第4周辺電圧Vp4の絶対値absVp4よりも小さく、最も小さい5番目の値である。第2周辺電圧Vp2と中央電圧Vp0とは、互いに同位相の関係で振動し、第2周辺電圧Vp2と、第1周辺電圧Vp1、第3周辺電圧Vp3、第4周辺電圧Vp4とは互いに逆位相の関係で振動する。即ち、図5A及び図5Bの電圧発生部(22a2,24a)の振動体22a2の出力面で圧電効果により発生する電位の関係は、
absVp0 > absVp1 > absVp4 > absVp3 > absVp2 ……(9)
となる大小関係の場所依存性を有する電位分布を示す。
図5Dは、図5Cと同様に、図5A及び図5Bの電圧発生部(22a2,24a)を構成する振動体22a2にPZTを使用した場合の電圧感度(μV/Pa)の周波数依存性を示すシミュレーション結果である。シミュレーションは、振動体22a2の厚さt22b=2.4μmとし、振動体22a2上の固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmとし、電圧発生部の平行トーラス型の振動空洞の中央部にある凸部の直径d22bをパラメータとしている。
図5Dに示したように、受信周波数5MHz~10MHzにおいて、凸部の直径d22b=1.2μm(基準値)のときの最大電圧感度は10.6μV/Pa程度であり、シミュレーションで使用したパラメータのなかで最大である。受信周波数5MHz~10MHzにおいて、凸部の直径d22b=2.4μmと基準値の2倍としたときの最大電圧感度は5.4(μV/Pa)程度と半分程度に低下する。凸部の直径d22b=3.6μmと基準値の3倍としたときの最大電圧感度は3.3μV/Pa程度と1/3程度に低下し、凸部の直径d22b=4.8μmと基準値の4倍としたときの最大電圧感度は2.5μV/Pa程度と1/4程度に低下する。凸部の直径d22b=6.0μmと基準値の5倍としたときの最大電圧感度は2.0μV/Pa程度と1/5程度に低下し、凸部の直径d22b=7.2μmと基準値の6倍としたときの最大電圧感度は1.7μV/Pa程度と1/6程度に低下する。即ち、図5Dから、電圧発生部(22a2,24a)の平行トーラス型の振動空洞21a2の中央部にある凸部の直径d22bを大きくするほど、最大電圧感度が小さくなることが分かる。
図5A及び図5Bに示す電圧発生部(22a2,24a)は、中央部の凸部の箇所で振動体22a2の上下方向(図5EにおいてY方向)の振動が、シリコン基板11sa2に対して固定されている。このような、中央部が固定された状況におけるトーラス状の振動空洞21a2の上方に位置する振動体22a2は、図5Eに示すように翼状に、中央部の凸部の両側において、上に凸に撓んだ曲面及び下に凸に撓んだ曲面として振動する。図5Eは、上に凸に撓んだ曲面の内部の変位と、下に凸に撓んだ曲面の内部の変位が互いに非対称であることを示している。図5Eは、振動体22a2の内部の変位や応力を説明するモデル図であるが、撓みのない無負荷状態では、振動体22a2は水平方向(図5EにおいてX方向)に平坦でな平面を構成していると仮定している。無負荷状態で平坦に並んだ場合において、X方向にピッチ約3.7μmで等間隔の○が18個、互いに横方向に弾性体(バネ)で接続されて並んでいるモデルを示す。
図5Eで使用しているY方向は、式(2a)~(5c)のz方向に対応し、図5EのX方向は、式(2a)~(5c)のx方向又はy方向に対応することに留意が必要である。図5Eに示す応力のモデルは、図5A及び図5Bに示す電圧発生部(22a2,24a)は、中央部の凸部の箇所で振動体22a2が固定される構造の直径d11=66μmのトーラス状の振動空洞21a2が構成されている。図5Eは、図5A及び図5Bに示す構造において、振動体22a2にPZTが用いられる場合において、振動状態における振動体22a2の内部の変位を説明する図である。図5Eの下段には、振動体22a2が2つの下に凸の曲線として下側方向に撓んだ場合の○の配列を示し、超音波のインパルスが到達後0.13μS経過後のそれぞれの○の変位の位置を示す。一方、上段には振動体22a2が2つの上に凸の曲線として上側方向に撓んだ場合の○の配列を示し、超音波が到達後0.18μS経過後のそれぞれの○の変位の位置を示す。無負荷状態でX方向に等間隔に並んだ○が振動体22a2が振動することにより、X方向及びY方向に、どのくらい変位するかを示している。
図5Eの場合は、中央部の固定箇所の両側において、上側に振動体22a2が上に凸となるように撓んだとき、中央部の固定箇所の近傍において、○と○の間隔がX方向に縮まる傾向が認められる。一方、中央部の固定箇所の両側において、下側に振動体22a2が下に凸となるように撓んだときは、中央部の固定箇所の近傍において、○と○の間隔がX方向に広がる傾向が認められるので、振動体22a2の○と○の間隔の変化が上側への撓みと下側への撓みで非対称である。したがって、振動体22a2の内部の応力も一様ではないことが分かる。
図5A及び5Bの振動体22a2にPZTを使用した場合において、図5F(a)は、XX方向の応力変化を、図5F(b)は、YY方向の応力変化を、図5F(c)は、XY方向の応力変化を示す図である。図5F(a)~図5F(c)で使用しているX方向及びY方向は、図5Eで定義したX方向及びY方向と同じである。図5F(a)~図5F(c)のそれぞれの右上に線種の凡例を示したとおり、太い実線は中央ゾーンP0において発生する中央応力Tp0の過渡応答を示す。又、図5F(a)~図5F(c)において太い破線は第1周辺ゾーンP1において発生する第1周辺応力Tp1、細い破線は第2周辺ゾーンP2において発生する第2周辺応力Tp2、細い実線は第3周辺ゾーンP3において発生する第3周辺応力Tp3、一点鎖線は第4周辺ゾーンP4において発生する第4周辺応力T4pのそれぞれの過渡応答を示す。図5Cの左側に示すと同様に、最大±1Paの振動振幅の圧力で振動する単発の正弦波からなる超音波が、電圧発生部(22a2,24a)に入力すると、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4に対応する振動体22a2に生じるXX方向の中央応力Tp0、第1周辺応力Tp1、……、第4周辺応力T4pは、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
図5F(a)に太い実線で示したXX方向の中央応力Tp0を例にとると、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が-50N/m2程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、+120N/m2程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が-110N/m2程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は+60N/m2程度となり、約0.31μs経過後の時刻付近でピーク値となる第5発目の振動振幅は-40N/m2程度となり、約0.37μs経過後の時刻付近でピーク値となる第6発目の振動振幅は+20N/m2程度まで減衰する。その他の第1周辺応力Tp1、……、第4周辺応力T4pについても同様の傾向を示す。図5F(a)によれば、振動体22a2に生じるXX方向の中央応力Tp0、第1周辺応力Tp1、……、第4周辺応力T4pについては、中央応力Tp0が最大である。
図5F(b)に示すように、振動体22a2に生じるYY方向における応力(N/m2)も、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。太い実線で示したYY方向の中央応力Tp0を例にとると、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が+15N/m2程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅が-42N/m2程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が+39N/m2程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は-22N/m2程度となり、約0.31μs経過後の時刻付近でピーク値となる第5発目の振動振幅は+12N/m2程度となり、約0.37μs経過後の時刻付近でピーク値となる第6発目の振動振幅は-8N/m2程度まで減衰する。その他の第1周辺応力Tp1、……、第4周辺応力T4pについても同様の傾向を示す。図5F(b)によれば、振動体22a2に生じるYY方向の中央応力Tp0、第1周辺応力Tp1、……、第4周辺応力T4pについては、XX方向と同様に、中央応力Tp0が最大である。
同様に、正弦波からなる超音波のインパルスが、電圧発生部(22a2,24a)に入力すると、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4に対応する振動体22a2に生じるXY方向の中央応力Tp0、第1周辺応力Tp1、……、第4周辺応力T4pも、図5F(c)に示すように、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。図5F(c)に太い実線で示したXY方向の中央応力Tp0を例にとると、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が+12N/m2程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅が-35N/m2程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が+32N/m2程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は-20N/m2程度となり、約0.31μs経過後の時刻付近でピーク値となる第5発目の振動振幅は+11N/m2程度となり、約0.37μs経過後の時刻付近でピーク値となる第6発目の振動振幅は-7N/m2程度まで減衰する。その他の第1周辺応力Tp1、……、第4周辺応力T4pについても同様の傾向を示す。図5F(c)によれば、振動体22a2に生じるXY方向の応力については、XX方向及びYY方向と同様に、中央応力Tp0が最大である。
次に、図5Bの中央を拡大し、図5Bの中央ゾーンP0を図6Aに示すように細分化中央ゾーンP00、第1細分化周辺ゾーンP01、第2細分化周辺ゾーンP02、第3細分化周辺ゾーンP03と分割し、図5Bの中央凸部及び中央凸部近傍における発生電圧の微細な電位分布を検証した。中央凸部の中心に細分化中央ゾーンP00が位置する。中心の細分化中央ゾーンP00を囲み、第1細分化周辺ゾーンP01、第2細分化周辺ゾーンP02、第3細分化周辺ゾーンP03が位置する。図6Aには、細分化中央ゾーンP00、第1細分化周辺ゾーンP01、第2細分化周辺ゾーンP02、第3細分化周辺ゾーンP03の位置に、それぞれ図5Bの場合よりも細かな電位検出用理想電極が配置されている。シリコン基板11sa上には振動体22a2が挿入され、中央部の凸部の周りに平行トーラス型の振動空洞21a2が設けられ、振動体22a2の上に固定電位電極24a、固定電位電極保護膜23が配置されている構成は図5Bと同様である。
電位検出用理想電極の外側の第1細分化周辺ゾーンP01、第2細分化周辺ゾーンP02、第3細分化周辺ゾーンP034の位置を3本の電位検出用理想電極が、それぞれ同心円状の円環の帯として囲む。第1細分化周辺ゾーンP01、第2細分化周辺ゾーンP02、第3細分化周辺ゾーンP034の電位検出用理想電極は、半径方向に沿って線幅ΔrLとスペース幅ΔrSを同一(ΔrL=ΔrS)とし、同一ピッチで配列されている。電位検出用理想電極の線幅とスペース幅を同一としているので、中央凸部の半径r22a2(=d22a2/2)を電位検出用理想電極が7分割して、細分化中央ゾーンP00、第1細分化周辺ゾーンP01、第2細分化周辺ゾーンP02、第3細分化周辺ゾーンP03の半径に沿った位置が定義される。このため、振動空洞中央部の凸部の直径d22a2は、第3細分化周辺ゾーンP03に配置された電位検出用理想電極P03の外周径である14ΔrSと概ね等しくなる(14ΔrS=d22a2)。そして、中央凸部の半径r22a2=d22a2/2として、細分化中央ゾーンP00は、中心から半径位置(1/7)r22a2までの一定線幅の円環状の電位検出用理想電極が配置された領域として定義される。
同様に、第1細分化周辺ゾーンP01は、半径位置(2/7)r22a2から半径位置(3/7)r22a2までの一定線幅の円環状の電位検出用理想電極が配置された領域として定義される。又、第2細分化周辺ゾーンP02は、半径位置(4/7)r22a2から半径位置(5/7)r22a2までの一定線幅の円環状の電位検出用理想電極が配置された領域として定義され、第3細分化周辺ゾーンP03は、半径位置(6/7)r22a2から半径位置(7/7)r22a2までの一定線幅の円環状の電位検出用理想電極が配置された領域として定義される。更に、第4細分化周辺ゾーンP04が、半径位置(8/7)r22a2から半径位置(9/7)r22a2まで、中央凸部の外側の振動空洞21a2の上に、一定線幅の円環状の電位検出用理想電極が配置された領域として定義される。更に、第5細分化周辺ゾーンP03が、半径位置(10/7)r22a2から半径位置(11/7)r22a2までの中央凸部の外側の振動空洞21a2の上に、一定線幅の円環状の電位検出用理想電極が配置された領域として定義される。
シミュレーションでは、細分化中央ゾーンP00、第1細分化周辺ゾーンP01、……、第5細分化周辺ゾーンP05にそれぞれ配置された6個の電位検出用理想電極は、いずれも電気的に開放状態(オープン)であるとする。振動体22a2の出力面においては、それぞれの細分化中央ゾーンP00、第1細分化周辺ゾーンP01、……、第5細分化周辺ゾーンP05における電位検出用理想電極の内部に位置する半径方向の電界は電位検出用理想電極で短絡されていることになる。
図6Bは、PZTを振動体22a2の全体に用いた場合であって、電圧発生部(22a2,24a)の平行トーラス型の振動空洞21a2の中央部にある凸部の直径d22a2=2.4μmとしたときの超音波受信時における発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである細分化中央ゾーンP00、第1細分化周辺ゾーンP01、……、第5細分化周辺ゾーンP05の位置をパラメータとして示す図である。中央凸部以外の振動体22a2の厚さt22a2=2.4μm、固定電位電極保護膜23の厚さt0203=6.0μmの場合である。図6Bの右上に線種の凡例を示したとおり、太い実線は細分化中央ゾーンP00における発生電圧である細分化中央電圧Vp00の過渡応答を示す。又、図6Bにおいて太い破線は第1細分化周辺ゾーンP01における発生電圧である第1細分化周辺電圧Vp01、点線は第2細分化周辺ゾーンP02における発生電圧である第2細分化周辺電圧Vp02、一点鎖線は第3細分化周辺ゾーンP03における発生電圧である第3細分化周辺電圧Vp03、細い実線は第4細分化周辺ゾーンP04における発生電圧である第4細分化周辺電圧Vp04、細い破線は第5細分化周辺ゾーンP05における発生電圧である第5細分化周辺電圧Vp05のそれぞれの過渡応答を示す。
図6Bの左側に示すようなプラス側に0.3Pa、マイナス側に1Paと非対称に振動する1.5周期の正弦波からなる超音波が、電圧発生部(22a2,24a)に入力したときに、細分化中央ゾーンP00、第1細分化周辺ゾーンP01、……、第5細分化周辺ゾーンP05に発生する電圧信号は、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
具体的には、図6Bに太い実線で示した振動体22a2の中央部の第1細分化中央ゾーンP00における細分化中央電圧Vp00は、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が-1.3μV程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、+3.5μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が-3.2μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は+1.8μV程度まで減衰する。図6Bにおいて太い破線で示した第1細分化周辺ゾーンP01における第1細分化周辺電圧Vp01は、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が-1.2μV程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、+3.4μV程度となり最大振幅値に達する。しかし、第1細分化周辺電圧Vp01の振幅の絶対値absVp01は、細分化中央電圧Vp00の振幅の絶対値absVp00よりも小さい。その後、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1細分化周辺電圧Vp01の第3発目の振動振幅が-3.1μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は+1.7μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。
図6Bにおいて点線で示した第2細分化周辺ゾーンP02における第2細分化周辺電圧Vp02の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値absVp02は、第1細分化周辺ゾーンP01における第1細分化周辺電圧Vp01の絶対値absVp01よりも全体的に少し小さく、3番目の値である。又、図6Bにおいて一点鎖線で示した第3細分化周辺ゾーンP03における第3細分化周辺電圧Vp03の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値absVp03は、第2細分化周辺電圧Vp02の絶対値absVp02よりも全体的に少し小さく、4番目の値である。又、図6Bにおいて細い実線で示した第4細分化周辺ゾーンP04における第4細分化周辺電圧Vp04の過渡応答振動が呈する振幅の絶対値absVp04は、第3細分化周辺電圧Vp03の絶対値absVp03よりも全体的に少し小さく、5番目の値である。
そして、図6Bにおいて細い破線で示した第5細分化周辺ゾーンP05における第5細分化周辺電圧Vp05は、約0.06μs経過後の時刻付近でピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.2μV程度であるのに対し、約0.13μs経過後の時刻付近でピーク値となる第2発目の振動振幅は、+0.6μV程度となり最大振幅値に達する。第5細分化周辺電圧Vp05の振幅の絶対値absVp05は、細分化中央電圧Vp00~第4細分化周辺電圧Vp04の絶対値absVp00~absVp04よりも小さく、もっとも小さい値である。なお、細分化中央電圧Vp00~第5細分化周辺電圧Vp05はすべて同位相の関係となっている。その後、第5細分化周辺電圧Vp05は、約0.19μs経過後の時刻付近でピーク値となる第3発目の振動振幅が-0.4μV程度となり、約0.26μs経過後の時刻付近でピーク値となる第4発目の振動振幅は+0.2μV程度まで減衰する。即ち、電圧発生部(22a2,24a)の振動体22a2の出力面で圧電効果により発生する電位の関係は、
absVp00 > absVp01 > absVp02 > absVp03 > absVp04 > absVp05 ……(10)
となる大小関係の場所依存性を有する電位分布を示す。
図6Cは、振動体22a2にPZTを使用した場合について、振動体22a2に発生する電圧(μV)と、中心から測った発生位置(μm)との関係を、振動空洞21a2の中央凸部の直径d22a2をパラメータとして示す。振動体22a2の厚さt22a2=2.4μm、固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmの場合である。図6Cに示したように、電圧の場所依存性を示す曲線は、電圧発生部(22a2,24a)の中心に対して対称的となり、振動空洞21a2の中央部にある凸部の直径d22a2が小さいほど発生電圧が大きくなることが分かる。具体的には、凸部の直径d22a2=2.4μm(基準値)のときの最大発生電圧は3.2μV程度であり、シミュレーションで使用したパラメータのなかで最大である。又、凸部の直径d22a2=4.8μmと基準値の2倍としたときの最大発生電圧は1.5μV程度と半分程度に低下し、凸部の直径d22a2=7.2μmと基準値の3倍としたときの最大発生電圧は1.0μV程度と1/3程度に低下し、凸部の直径d22a2=9.6μmと基準値の4倍としたときの最大発生電圧は0.8μV程度と1/4程度に低下した。即ち、図6Cからは、振動空洞21a2の中央部にある凸部の直径d22a2を大きくするほど、最大発生電圧が小さくなることが分かる。
-V字型(傾斜トーラス)―
次に、電圧発生部(22b,24b)を構成する振動体22bが、図7Aに示すようにV字型の断面構造となる応力分布強化構造の出力面上の電圧分布を場所毎に検討し、高感度化及び広帯域化への基礎とした。シリコン基板11sbの凹部の上には振動体22bが配置され、振動体22b上には接地された固定電位電極24bが配置され、固定電位電極24bの上には、樹脂からなる固定電位電極保護膜23が配置されている。振動体22bは、シリコン基板11sbの凹部上において、下方に尖った円錐形である。即ち、図7Aから明らかなように、断面形状がV字型になるため、V字型の下方先端がシリコン基板11sbの凹部の底面に接触している。したがって、凹部が構成する空間においてV字型に切り込まれた領域の両側において、断面が2つの三角形となる傾斜トーラス型の振動空洞21bが設けられる。「傾斜トーラス型」とはトーラスを構成する空間の断面構造が、図7Aに示すように、一つの主面が他の主面に対し傾斜している3次元構造を意味する。シミュレーションにおいては、表2と同様な定義で、V字型の下方先端となる位置に中央ゾーンP0に電位検出用理想電極を配置し、中央ゾーンP0の周囲に、V字型の形状に沿って、中央ゾーンP0を取り囲む4本の同心円環状の第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4が配置される。
図7Bは、PZTを振動体22bの全体に用いた場合のシミュレーション結果である。振動空洞21bの中央部でシリコン基板11sbと振動体22bが点接触(接触幅d22b=0μmと仮定)したときの発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとして示す。振動体22bの厚さt22b=4.8μm、固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmの場合である。図7Bの左側に示すような最大±1Paの振動振幅の単発正弦波が、電圧発生部(22b,24b)に入力したときに、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ発生するインパルス応答は、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
具体的には、図7Bに太い実線で示した中央ゾーンP0における中央電圧Vp0の過渡応答の過渡応答は、超音波のインパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目の振動振幅は-0.8μV程度である。これに対し、約0.13μs経過後にピーク値となる第2発目の振動振幅は、+1.5μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後にピーク値となる第3発目の振動振幅が-1.2μV程度となり、約0.26μs経過後にピーク値となる第4発目の振動振幅は+0.7μV程度まで減衰する。図7Bにおいて太い破線で示した第1周辺電圧Vp1の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目の振動振幅は-0.6μV程度である。これに対し、約0.13μs経過後にピーク値となる第2発目の振動振幅は、+1.2μV程度となり最大振幅値に達する。しかし、第1周辺電圧Vp1の振幅の絶対値absVp1は、中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0よりも小さい。その後、約0.19μs経過後にピーク値となる第1周辺電圧Vp1の第3発目の振動振幅が-0.7μV程度となり、約0.26μs経過後にピーク値となる第4発目の振動振幅は+0.6μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。
図7Bにおいて点線で示した第2周辺電圧Vp2の振幅の絶対値absVp2は、第1周辺電圧Vp1の振幅の絶対値absVp1よりも全体的に少し小さく、3番目の値である。又、図7Bにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3の振幅の絶対値absVp3は、第2周辺電圧Vp2の振幅の絶対値absVp2よりも全体的に少し小さく、4番目の値である。
そして、図7Bにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4の過渡応答は、約0.06μs経過後の第1発目の振動振幅が0.2μV程度である。これに対し、約0.13μs経過後にピーク値となる第2発目の振動振幅は、+0.4μV程度となり最大振幅値に達する。しかし、第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、中央電圧Vp0~第3周辺電圧Vp3の振幅の絶対値absVp0~absVp2よりも小さく、最小値である。なお、中央電圧Vp0~第4周辺電圧Vp4はすべて同位相の関係となっている。よって、振動体22bの出力面で発生する電位の絶対値のそれぞれの相互関係は、
absVp0 > absVp1 > absVp2 > absVp3 > absVp4 ……(11)
となる大小関係の場所依存性を有する電位分布を示す。
図7Cは、図7Bと同様に、図7Aの振動体22bにPZTを使用した場合のシミュレーション結果を示す。振動空洞21bの中央部におけるシリコン基板11sbと振動体22bの接触幅d22b=6.7μmと仮定したときの発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとして示す。振動体22bの厚さt22b=2.4μm、固定電位電極保護膜23の厚さt23=4μmの場合である。図7Cの左側に示すような最大±1Paの振動振幅の単発正弦波が、電圧発生部(22b,24b)に入力したときに、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ発生するインパルス応答は、図7Bの例と同様に、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
具体的には、図7Cに太い実線で示した中央ゾーンP0における中央電圧Vp0の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目の振動振幅が0.6μV程度である。これに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.9μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の第3発目ピークの振動振幅が-0.5μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は+0.3μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。
図7Cにおいて太い破線で示した第1周辺電圧Vp1の過渡応答の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が0.16μV程度である。これに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.18μV程度となり最大振幅値に達する。しかし、第1周辺電圧Vp1の振幅の絶対値absVp1が中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0よりも小さい。その後、約0.19μs経過後にピーク値となる第1周辺電圧Vp1の第3発目の振動振幅が-0.12μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は+0.6μV程度まで減衰する。
図7Cにおいて点線で示した第2周辺電圧Vp2の振幅の絶対値absVp2は、第1周辺電圧Vp1の振幅の絶対値absVp1よりも全体的に少し大きい値である。又、図7Cにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3の絶対値absVp3は、第1周辺電圧Vp1及び第2周辺電圧Vp2の振幅の絶対値absVp1及びabsVp2よりも全体的に小さく、4番目の値である。
そして、図7Cにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4も、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅が最大振幅値となる。しかし、第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、中央電圧Vp0~第3周辺電圧Vp3の振幅の絶対値absVp0~absVp3よりも小さく、最小値である。なお、中央電圧Vp0~第4周辺電圧Vp4はすべて同位相の関係となっている。よって、振動体22bの出力面で発生する電位の絶対値のそれぞれの相互関係は、
absVp0 > absVp2 > absVp1 > absVp3 > absVp4 ……(12)
となる大小関係の場所依存性を有する電位分布を示す。
-Λ字型―
次に、図8Aに示すように、断面構造がΛ字型となる応力分布強化構造の出力面上の電圧分布を場所毎に検討し、高感度化及び広帯域化への基礎とした。シリコン基板11sc上には振動体22cが配置され、振動体22c上には接地された固定電位電極24cが配置され、固定電位電極24cの上には、樹脂からなる固定電位電極保護膜23が配置されている。振動体22cは、シリコン基板11sc上において、上方に尖った円錐形、即ち、図8Aから明らかなように、断面形状がΛ字型を有し、Λ字型の裾野部分の両側がシリコン基板11scの表面に接触している。したがって、シリコン基板11sc上には、断面が二等辺三角形となる円錐型の振動空洞21cが設けられる。又、振動体22cの下面には、発生する電圧の分布を検証するために、Λ字型の上方先端に1本の円状の電位検出用理想電極を配置し、中央の電位検出用理想電極P0を取り囲んで4本の同心円環状の電位検出用理想電極を配置し、内側から順に、電位伝達ゾーンとして、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4を定義した(表2参照。)。そして、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4において、それぞれ発生する電圧の過渡応答を検証して、振動体22cの出力面(下面)における電圧分布をシミュレーションした。
図8Bは、PZTを振動体22cの全体に用いた場合のシミュレーション結果を示す。円錐型の振動空洞21c上の振動体22cの厚さt22c=3.6μmとし、振動体22c上の固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmとしたときの発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0~第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとして示す。図8Bの左側に示すような最大±1Paの振動振幅の単発正弦波が、電圧発生部(22c,24c)に入力したときに、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ発生するインパルス応答の過渡応答は、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
具体的には、図8Bに太い実線で示した振動体22cの中央部の中央電圧Vp0の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が+0.61μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、-1.0μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の第3発目ピークの振動振幅が+0.63μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は-0.5μV程度まで減衰する。図8Bにおいて太い破線で示した第1周辺電圧Vp1の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が+0.42μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、-0.74μV程度となり最大振幅値に達する。しかし、第1周辺電圧Vp1の振幅の絶対値absVp1が中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0よりも小さい。その後、約0.19μs経過後にピーク値となる第1周辺電圧Vp1の第3発目の振動振幅が+0.45μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は-0.38μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。
図8Bにおいて点線で示した第2周辺電圧Vp2の絶対値absVp2は、第1周辺電圧Vp1の絶対値absVp1よりも全体的に少し小さく、3番目の値である。又、図8Bにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3の絶対値absVp3は、第2周辺電圧Vp2の絶対値absVp2よりも全体的に少し小さく、4番目の値である。
そして、図8Bにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4の過渡応答は、約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が+0.28μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、-0.5μV程度となり最大振幅値に達する。しかし、第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、中央電圧Vp0~第3周辺電圧Vp3のそれぞれの絶対値absVp0~absVp3よりも小さく、最小値である。なお、中央電圧Vp0~第4周辺電圧Vp4はすべて同位相の関係となっている。よって、振動体22cの出力面で発生する電位の絶対値のそれぞれの相互関係は、式(11)と同様なる大小関係の場所依存性を有する電位分布を示す。
-M字型―
次に、図9Aに示すように、振動体22dの断面構造がM字型の出力面上の電圧分布を場所毎に検討し、高感度化及び広帯域化への基礎とした。シリコン基板11sd上には振動体22dが配置され、振動体22d上には接地された固定電位電極24dが配置され、固定電位電極24dの上には、樹脂からなる固定電位電極保護膜23が配置されている。断面構造がM字型であるので、振動体22dは中央部で下方に尖った円錐形を有し、その円錐形の周囲でその円錐形を取り囲む上方に尖った部分を有する。又、M字型の振動体22dの中央部の円錐形の下方先端部がシリコン基板11sdの表面に近接し、裾野部分となる両側がそれぞれシリコン基板11sdの表面に接触している。したがって、シリコン基板11sd上には、断面がほぼ二等辺三角形の2つの空間が鏡像対象で構成する傾斜トーラス型の振動空洞21dが設けられる。又、発生する電圧の分布を検証するために、M字型の振動体22dの中央部の円錐形の下方先端部に1本の円状の電位検出用理想電極と、中央部の電位検出用理想電極を取り囲む4本の同心円環状の電位検出用理想電極を配置し、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4を定義している。中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4において、それぞれ発生する電圧の過渡応答を検証して、振動体22dの出力面(下面)における電圧分布をシミュレーションした。
図9Bは、PZTを振動体22dの全体に用いた場合のシミュレーション結果を示す。傾斜トーラス型の振動空洞21d上の振動体22dの厚さt22d=3.6μmとし、振動体22d上の固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmとしたときの発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとして示す。図9Bの左側に示すような最大±1Paの振動振幅の単発正弦波が、電圧発生部(22d,24d)に入力したときに、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ発生するインパルス応答の過渡応答は、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
具体的には、図9Bに太い実線で示した振動体22dの中央部の中央電圧Vp0の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が+0.38μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、-0.65μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の第3発目ピークの振動振幅が+0.4μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は-0.35μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。図9Bにおいて太い破線で示した第1周辺電圧Vp1の過渡応答は、インパルス入力後、不規則に変化し、約0.13μs経過後にピーク値となる。第1周辺電圧Vp1は、それ以外の中央電圧Vp0 ,第2周辺電圧Vp2 ~第4周辺電圧Vp4のそれぞれの絶対値absVp0,absVp2 ~absVp4のいずれよりも小さく最小値である。
図9Bにおいて点線で示した第2周辺電圧Vp2の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が0.42μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.65μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の第3発目ピークの振動振幅が-0.44μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は+0.35μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。第2周辺電圧Vp2の振幅の絶対値absVp2は、中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0とほぼ同じであり、最大値である。
又、図9Bにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が0.3μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.5μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の第3発目ピークの振動振幅が-0.4μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は+0.24μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。
そして、図9Bにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4の過渡応答は、約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が0.3μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.5μV程度となり最大振幅値に達する。第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、第3周辺電圧Vp3の振幅の絶対値absVp3とほぼ同じである。しかし、第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0,第2周辺電圧Vp2の振幅の絶対値absVp2よりも小さい値である。なお、第2周辺電圧Vp2~第4周辺電圧Vp4は、互いに同位相の関係で振動し、これらと中央電圧Vp0とは互いに逆位相の関係で振動する。よって、振動体22dの出力面で発生する電位の絶対値のそれぞれの相互関係は、
absVp0 ≒ absVp2 > absVp3 ≒ absVp4 > absVp1 ……(13)
となる大小関係の場所依存性を有する電位分布を示す。
-W字型―
次に、図10Aに示すように、振動体22eの断面構造がW字型の出力面上の電圧分布を場所毎に検討し、高感度化及び広帯域化への基礎とした。円筒形の凹部を有するシリコン基板11se上には振動体22eが配置され、振動体22e上には接地された固定電位電極24eが配置され、固定電位電極24eの上には、樹脂からなる固定電位電極保護膜23が配置されている。断面形状がW字型であるので、W字の中央部で振動体22eが上方に尖った円錐形を有している。そして、W字の中央部の円錐形の空間の周囲で、円錐形を円環状に取り囲む下方に尖った陵となる部分を有している。断面構造ではW字の中央部の三角形の空間を両側から取り囲む、下方に尖った2つの逆三角形で表現される傾斜トーラス型の構造をなしている。又、W字型の振動体22eの中央部から振動空洞21eの半径方向のほぼ半ばに位置する下方に尖った陵部分の下方先端部がシリコン基板11seの表面に近接している。
したがって、シリコン基板11seの凹部上には、その中央部に円錐型の振動空洞21eの部分空間が設けられ、その端部には断面が直角三角形となる振動空洞21eの他の部分空間がそれぞれ設けられる。又、発生する電圧の分布を検証するために、W字型の振動体22eの中央部の円錐形の上方先端部に1本の円状の電位検出用理想電極を配置し、中央の電位検出用理想電極を取り囲む1本の同心円環状の電位検出用理想電極が配置され、電位伝達ゾーンとして中央ゾーンP0及び第1周辺ゾーンP1、がそれぞれ定義される(表2参照。)。又、W字型の振動体22eの中央部の円錐形を取り囲む下方に尖った陵部分の下方先端部に1本の同心円環状の電位検出用理想電極が配置され、第2周辺ゾーンP2が定義される。
更に、第2周辺ゾーンP2の周囲の振動空洞21eに露出した振動体22eの斜面上に第2周辺ゾーンP2を取り囲む同心円環状の電位検出用理想電極が配置されて、第3周辺ゾーンP3が定義される。そして、振動空洞21eの最外周となる振動体22eの下面に、第3周辺ゾーンP3を取り囲む同心円環状の電位検出用理想電極が配置されて、第4周辺ゾーンP4が定義される。そして、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4において、それぞれ発生する電圧の過渡応答を検証して、振動体22eの出力面(下面)における電圧分布をシミュレーションした。
図10Bは、PZTを振動体22eの全体に用いた場合のシミュレーション結果を示す。振動体22eの厚さt22e=4.5μmとし、振動体22e上の固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmとしたときの発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとして示す。図10Bの左側に示すような最大±1Paの振動振幅の単発正弦波が、電圧発生部(22e,24e)に入力したときに、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ発生するインパルス応答の過渡応答は、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
具体的には、図10Bに点線で示した第2周辺ゾーンP2の第2周辺電圧Vp2の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が0.6μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.98μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の第3発目ピークの振動振幅が-0.68μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は+0.45μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。第2周辺電圧Vp2の絶対値absVp2は、中央電圧Vp0,第1周辺電圧Vp1,第3周辺電圧Vp3及び第4周辺電圧Vp4のそれぞれの絶対値absVp0,absVp1,absVp3及びabsVp4のいずれよりも大きく最大値である。
図10Bに太い実線で示した中央ゾーンP0の中央電圧Vp0の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が+0.28μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、-5.0μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の第3発目ピークの振動振幅が+0.28μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は-0.22μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。中央電圧Vp0は、第2周辺電圧Vp2と逆位相の関係にあり、その絶対値absVp0は、第2周辺電圧Vp2の絶対値absVp2に続いて2番目に大きい。
図10Bにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3の過渡応答は、インパルス入力後約0.06μs経過後の第1発目ピークの振動振幅が0.26μV程度である。第1発目ピークに対し、約0.13μs経過後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.4μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs経過後の第3発目ピークの振動振幅が-0.32μV程度となり、約0.26μs経過後の第4発目ピークの振動振幅は+0.18μV程度まで減衰する。第5発目以降の説明は、振動振幅のピーク値が小さくなるので省略する。第3周辺電圧Vp3は、3番目に大きな値である。
図10Bにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、第3周辺電圧Vp3よりも全体的に少し小さく、4番目の値である。又、図10Bにおいて太い破線で示した第1周辺電圧Vp1の振幅の絶対値absVp1は、第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4よりも全体的に少し小さく、最小値である。なお、電位伝達ゾーンである第1周辺ゾーンP1~第4周辺ゾーンP4における第1周辺電圧Vp1~第4周辺電圧Vp4は、互いに同位相の関係で振動し、これらと中央ゾーンP0における中央電圧Vp0とは互いに逆位相の関係で振動する。よって、W字型応力分布強化構造の場合、振動体22eの出力面で発生する電位の絶対値のそれぞれの相互関係は、
absVp2 > absVp0 > absVp3 > absVp4 > absVp1 ……(14)
となる大小関係の場所依存性を有する電位分布を示す。
-平坦円板型通常構造(従来型構造)―
最後に比較のため、図11Aに示すように、振動体22fが構成する振動空洞の断面が平行平板となる平坦円板型通常構造(応力分布非強化構造)の場合において、振動体22fの出力面に発生する電圧の分布を場所毎にシミュレーションした。振動体22fとしてPZTを使用した場合のシミュレーション結果を図11Bに、AlNを使用した場合のシミュレーション結果を図11C及び図11Dに示す。平坦円板型通常構造は、図11Aに示すように、電圧発生部(22f,24f)は、一様な平坦な平面をなす振動体22fと、振動体22fの上の接地された固定電位電極24fと、固定電位電極24fの上のエポキシ樹脂からなる固定電位電極保護膜23から構成されている。そして、凹部を有するシリコン基板11sf上に電圧発生部(22f,24f)が配置されている。振動体22fの互いに対向する受信面と出力面は、シリコン基板11sfの凹部上において、共にガウス曲率と平均曲率が常にゼロとなるユークリッド平面を構成している。したがって、シリコン基板11sfの凹部上には、薄い円筒型(円板型)の振動空洞21fが構成され、振動空洞21fの断面構造は一定の厚さで受信面と出力面が平行に対向した平行平板構造になる。
応力分布非強化構造において、発生する電圧分布を検証するために、図11Aに示すように振動体22fの下面の中央部に1本の円板状の電位検出用理想電極と、中央の電位検出用理想電極を取り囲む4本の同心円環状の電位検出用理想電極を配置されている。応力分布非強化構造においても、中心から順にP0, P1,……, P4と付番された1本の円板と、4本の同心円環に対し、表2に定義したのと同様に、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の電位伝達ゾーンを定義した。
図11Bは、PZTを振動体22fの全体に用いた場合の応力分布非強化構造のシミュレーション結果を示す。振動体22fの厚さt22f=5μm、固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmとしたときの発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとして示す。図11Bの左側に示すような最大±1Paで振動する単発正弦波の超音波が、電圧発生部(22f,24f)に入力したときに、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ発生する電圧信号は、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
図11Bに太い破線で示した第1周辺電圧Vp1は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.12μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、-0.22μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が+0.15μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は-0.12μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第1周辺電圧Vp1は、その他の中央電圧Vp0,第2周辺電圧Vp2~第4周辺電圧Vp4のいずれよりも大きく、最大値である。
図11Bに点線で示した第2周辺電圧Vp2は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.1μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、-0.16μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が+0.11μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は-0.08μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第2周辺電圧Vp2は、第1周辺電圧Vp1と同位相の関係にあり、第2周辺電圧Vp2の絶対値absVp2は、第1周辺電圧Vp1の絶対値absVp1に続いて2番目に大きい。
図11Bにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.06μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、-0.1μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が+0.06μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は-0.05μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第3周辺電圧Vp3は、3番目に大きな値である。
図11Bにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp4は、第1周辺電圧Vp1~第3周辺電圧Vp3の振幅の絶対値absVp1~absVp3よりも全体的に小さく、4番目の値である。又、図11Bにおいて太い実線で示した中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0は、第4周辺電圧Vp4の絶対値absVp4よりも全体的に少し小さく、最小である。なお、これら中央電圧Vp0~第4周辺電圧Vp4は、互いに概ね同位相の関係で振動している。よって、PZTを振動体22fに使用し、応力分布の強化を積極的に意図しない平坦円板型通常構造の場合、振動体22fの出力面で発生する電位の絶対値の関係は、
absVp1 > absVp2 > absVp3 > absVp4 > absVp0 ……(15)
となる。したがって、図11Aに示すような応力分布の強化を積極的に意図しない通常の構造であっても、場所に依存した電位分布が存在することが分かる。
図11Cは、AlNを振動体22fの全体に用いた場合の平坦円板型通常構造のシミュレーション結果を示す。振動体22fの厚さt22f=0.2μm、固定電位電極保護膜23の厚さt23=3μmとしたときの発生電圧の過渡応答を、電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとして示す。図11Cの左側に示すような最大±1Paで振動する超音波が、電圧発生部(22f,24f)に入力したときに、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ発生する電圧信号は、図11Bの場合と同様に、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
図11Cに太い実線で示した中央電圧Vp0は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.57μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.9μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が-0.48μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は+0.28μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。中央電圧Vp0の振幅の絶対値absVp0は、他の第1周辺電圧Vp1~第4周辺電圧Vp4の振幅の絶対値absVp1~absVp3のいずれよりも大きく、最大値である。
図11Cに太い破線で示した第1周辺電圧Vp1は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.42μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.7μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が-0.4μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は+0.22μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第1周辺電圧Vp1は、中央電圧Vp0と同位相の関係にあり、第1周辺電圧Vp1の絶対値absVp1は、中央電圧Vp0の絶対値absVp0に続いて2番目に大きい。
図11Cにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.32μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、-0.46μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が+0.25μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は-0.16μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第4周辺電圧Vp4は、中央電圧Vp0,第1周辺電圧Vp1と逆位相の関係にあり、絶対値absVp4は3番目に大きな値である。
図11Cにおいて点線で示した第1周辺電圧Vp2は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.2μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.34μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が-0.18μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は+0.12μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第2周辺電圧Vp2は、中央電圧Vp0,第1周辺電圧Vp1と同位相、第4周辺電圧Vp4と逆位相の関係にあり、絶対値absVp2は4番目に大きな値である。
図11Cにおいて細い実線で示した第1周辺電圧Vp3の振幅の絶対値absVp3は、第4周辺電圧Vp4と同位相の関係にあるが、第4周辺電圧Vp4の絶対値absVp4よりも全体的に小さく、最小である。よって、AlNを振動体22fに使用し、応力分布の強化を積極的に意図しない平坦円板型通常構造の場合、振動体22fの出力面で発生する電位の絶対値の関係は、
absVp0 > absVp1 > absVp4 > absVp2 > absVp3 ……(16)
となり、応力分布の強化を積極的に意図しない通常の構造であっても、場所に依存した電位分布が存在することが分かる。
図11Dは、図11Cと同様に、AlNを振動体22fの全体に用いた場合の平坦円板型通常構造のシミュレーション結果を示す。振動体22fの厚さt22f=0.2μmと図11Cの場合と同じにし、固定電位電極保護膜23の厚さt23=6μmとして、図11Cの場合よりも厚くしたときの発生電圧の過渡応答を、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4の位置をパラメータとして示す。図11Dの左側に示すような最大±1Paで振動する超音波が、電圧発生部(22f,24f)に入力したときに、中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4にそれぞれ発生する電圧信号は、図11Cの場合と同様に、約0.13μs付近の第2発目の振動振幅が最大となり、第3発目以降が減衰振動となる過渡応答を示す。
図11Dに太い実線で示した中央電圧Vp0は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.29μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.34μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が-0.22μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は+0.12μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。中央電圧Vp0の絶対値absVp0は、他の第1周辺電圧Vp1~第4周辺電圧Vp4のそれぞれの絶対値absVp1~absVp4のいずれよりも大きく、最大値である。
図11Dに太い破線で示した第1周辺電圧Vp1は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.24μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.26μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が-0.18μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は+0.08μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第1周辺電圧Vp1は、中央電圧Vp0と同位相の関係にあり、第1周辺電圧Vp1の絶対値absVp1は、中央電圧Vp0の絶対値absVp0に続いて2番目に大きい。
図11Dにおいて一点鎖線で示した第4周辺電圧Vp4は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が+0.17μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、-0.21μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が+0.12μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は-0.06μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第4周辺電圧Vp4は、中央電圧Vp0,第1周辺電圧Vp1と逆位相の関係にあり、絶対値absVp4は3番目に大きな値である。
図11Dにおいて点線で示した第2周辺電圧Vp2は、超音波のインパルス入力後約0.06μs後にピーク値となる第1発目の振動振幅が-0.12μV程度である。第1発目のピークに続き、約0.13μs後の第2発目ピークの振動振幅は、+0.15μV程度となり最大振幅値に達する。その後、約0.19μs後の第3発目ピークの振動振幅が-0.09μV程度となり、約0.26μs後の第4発目ピークの振動振幅は+0.05μV程度まで減衰する。第5発目以降は振動振幅が小さくなるので説明を省略する。第1周辺電圧Vp2は、中央電圧Vp0,第1周辺電圧Vp1と同位相、第4周辺電圧Vp4と逆位相の関係にあり、絶対値absVp2は4番目に大きな値である。
図11Dにおいて細い実線で示した第3周辺電圧Vp3の振幅の絶対値absVp3は、第4周辺電圧Vp4と同位相の関係にあるが、第4周辺電圧Vp4の絶対値absVp4よりも全体的に小さく、最小である。よって、AlNを振動体22fに使用した平坦円板型通常構造の場合、固定電位電極保護膜23の厚さt23が厚くなっても、振動体22fの出力面で発生する電位の絶対値の関係は、図11Cの場合と同様に、式(16)で示される大小関係になる。したがって、図11Aに示すような応力分布の強化を積極的に意図しない通常の構造であっても、場所に依存した電位分布が存在することが分かる。
-応力分布強化構造の特性比較―
圧電層としてPZTを用いた場合に着目し、図5A及び5Bに示した平行トーラス型の応力分布強化構造(T)、図7Aに示したV字型の応力分布強化構造(V1,V2)、図8Aに示したΛ型の応力分布強化構造(Λ)、図9Aに示したM字型の応力分布強化構造(M)、図10Aに示したW字型の応力分布強化構造の(W)のそれぞれの電圧感度や周波数帯域を、平坦円板型通常構造(P)の特性と比較し、高感度化及び広帯域化への基礎とした。
図12に示すように、受信超音波の周波数帯域5~10MHzの範囲内において、V1の符号を付した太い実線で表現したV字型の応力分布強化構造の感度曲線が示す最大電圧感度が2.9μV/Pa程度となっており、最も高くなっている。続いて、Wの符号を付した破線で表現したW字型の応力分布強化構造の感度曲線が示す最大電圧感度が2.2μV/Pa程度となっており2番目に高い。Λの符号を付した細い実線で表現したΛ型の応力分布強化構造の感度曲線が示す最大電圧感度が1.9μV/Pa程度となっており3番目に高く、Mの符号を付した細い実線で表現したM字型の応力分布強化構造の感度曲線が示す最大電圧感度が1.4μV/Pa程度となっており4番目に高くなっている。これらの応力強化構造に対し、Pの符号を付した一点鎖線で表現した従来型構造(平坦円板型通常構造)の最大受信感度は0.4μV/Pa程度にとどまり、最も低くなっている。
図13に示すように、Tの符号を付した実線で表現した平行トーラス型の応力分布強化構造の最大電圧感度と、V2の符号を付した破線で表現したV字型(傾斜トーラス型)の応力分布強化構造の最大電圧感度は、共に1.2μV/Paを少し超える程度の値となっており、最も高い。これに対し、Pの符号を付した一点鎖線で表現した従来型構造(平坦円板型通常構造)の最大電圧感度は0.4μV/Paを少し超える程度にとどまり、最も低くなっている。平行トーラス型の応力分布強化構造の感度の周波数特性は、周波数帯域5~15MHzの範囲内において0.6μV/Paを超える値で広い帯域を示している。V字型の応力分布強化構造の感度の周波数特性も、平行トーラス型の応力分布強化構造の周波数特性より少し狭いが、平行トーラス型の応力分布強化構造に近い帯域を示している。一方、一点鎖線で示す従来型構造(平坦円板型通常構造)の感度の周波数特性は、平行トーラス型及びV字型の応力分布強化構造に比して非常に狭いことが分かる。
――第1実施形態の第1変形例――
図2では、平行トーラス型の応力分布強化構造において、振動体22a1の出力面側の凸部として定義される六角形の電位伝達ゾーンが、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に挟まれた矩形の領域の表面に形成されるチャネルに、シングルヘテロ接合するヘテロ接合FETの構造の例を示した。しかし、図14に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る音響素子では、バッファ層13hを、振動体22a1と基体領域14の間に挟んで、ダブルヘテロ接合としている。既に述べたとおり、AlNとGaNとはヘテロ接合として相性がよいので、GaN基板からなる基体領域14の上に、AlNを振動体22a1としてヘテロエピタキシャル成長しても、GaNとAlNの間の界面準位や格子欠陥は比較的少ない。しかし、GaNとAlNの間に、Ga1-xAlxNの層をバッファ層13hとして挿入すれば、GaNとAlNの間の界面準位や格子欠陥を更に低減できる。c軸方向に面方位を有するGaNのGa面に、ボンド長の長いGa1-xAlxNをエピタキシャル成長した場合も、両者の格子定数の違いによりGa1-xAlxNに引張歪みが発生し、Ga1-xAlxNの内部に圧電分極が加わる。極性結晶であるGaNも圧電分極を有している。Ga1-xAlxN/GaNヘテロ接合界面には、仕事関数の差により、通常のヘテロ接合FETと同様に、界面に垂直な方向にポテンシャル分布が生じるため、界面に近づくに従い、伝導帯及び価電子帯の端部のバンド構造が曲がる。
GaNをi型、Ga1-xAlxNをn型とすれば、Ga1-xAlxN/GaNヘテロ接合界面には2次元電子ガスが生成される。更に、2つの圧電分極の作用を伴わせることも可能である。通常のヘテロ接合FETとは異なり、第1実施形態の第1変形例に係る音響素子にはゲート電極が存在しない。ゲート電極が存在しないが、Ga1-xAlxNの内部、特にGa1-xAlxN/GaNヘテロ接合界面のフェルミレベルが超音波入力により振動する。第1実施形態の第1変形例に係る音響素子にはゲート電極が存在しないので、非特許文献2で紹介したようなPMUTとFETを外部配線で接続する必要もないので浮遊インピーダンスの問題は本来的に存在しない。しかも、図4A~図6Cで例示したような応力強化構造の電圧発生部(22a1,24a)を採用しているので、電圧発生部(22a1,24a)自身が高感度化及び広帯域化され、第1実施形態の第1変形例に係る音響素子は高感度化及び広帯域化が可能である。特に、応力強化構造の内部構造をミクロに検討し、発生電圧が最も高くなる振動体22a1の出力面の特定の箇所を電位伝達ゾーンとして選び、インピーダンス変換素子(14,15a,15b)の能動素子を駆動しているので、高感度化が容易である。
一方、ダイヤモンド型の結晶構造を有するSi基板からなる基体領域14の上に、振動体22a1としてGaNやAlNをヘテロエピタキシャル成長して、第1実施形態の第1変形例に係る音響素子を構成する場合は、Siの格子定数が0.543nmであるので、格子不整合が大きい。Si基板からなる基体領域14を用いてGaNやAlNを振動体22a1としてヘテロエピタキシャル成長する場合は、図14に示すように、Ga1-xAlxN等のバッファ層13hを設けてダブルヘテロ接合構造とすることが必要になる。Siのような無極性基板にGaNやAlN等の極性結晶層をエピタキシャル成長する場合には、原子配列の位相の入れ替わりが生じることがある。これは、基板のステップが1原子から構成されるか、2原子で構成されるかで極性結晶の原子配列が異なることが原因で「アンチフェーズドメイン」と称される。アンチフェーズドメインを防止するには、オフアングル基板を用いることが好ましい。
Si基板からなる基体領域14上に、振動体22a1として極性結晶であるSiCをヘテロエピタキシャル成長して、第1実施形態の第1変形例に係る音響素子を構成する場合は、Si基板の表面をC2H4等の炭化水素ガスで炭化し、これをバッファ層13hとしてSiCを成長させてもよい。S1表面を炭化するとβ-SiC(立方晶)がエピタキシャル成長する。或いは、閃亜鉛鉱型結晶である燐化硼素(BP)をバッファ層13hとしてSi基板からなる基体領域14上に形成し、バッファ層13hを介してSiCをヘテロエピタキシャル成長させてダブルヘテロ接合を構成してもよい。図14に示したバッファ層13h以外の他の構造は、図2において説明した内容と重複するので省略する。
――第1実施形態の第2変形例――
図2に示した構造と同様に、図15に示す第1実施形態の第2変形例に係る音響素子においても平行トーラス型の応力分布強化構造が採用されている。図15に示すように、第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの上に設けられた層間絶縁膜17に開孔されたコンタクトホールを介して、第1主電極領域15aには第1主電極配線25aが、第2主電極領域15bには第2主電極配線25bが接続されている。図15において、第1主電極配線25aが素子分離絶縁膜16を経由して左側に引き出され、第2主電極配線25bは素子分離絶縁膜16を経由して右側に引き出されている。第1実施形態の第2変形例に係る音響素子においては、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25bの上を空洞内壁保護膜19が被覆している構造が、図2に示した構造とは異なる。空洞内壁保護膜19を貫通して、振動体22a1の出力面側の凸部が、基体領域14の上面に到達し、振動体22a1の電位伝達ゾーンが基体領域14の上面とヘテロ接合している。図15に示した空洞内壁保護膜19以外の他の構造は、図2において説明した内容と重複するので省略する。
第1実施形態の第2変形例に係る音響素子にはゲート電極が存在しないので、非特許文献2で紹介したような浮遊インピーダンスの問題は本来的に存在しない。しかも、図4A~図6Cに示したような応力強化構造の電圧発生部(22a1,24a)を採用しているので、電圧発生部(22a1,24a)自身が高感度化及び広帯域化される結果、第1実施形態の第2変形例に係る音響素子は、高感度化及び広帯域化が可能である。特に応力強化構造の内部構造をミクロに検討し、発生電圧が最も高くなる振動体22a1の出力面の特定の箇所を電位伝達ゾーンとして選び、インピーダンス変換素子(14,15a,15b)の能動素子を駆動しているので、高感度化が容易である。
=第1実施形態の第2変形例に係る音響素子の製造方法=
図15に例示した第1実施形態の第2変形例に係る音響素子の製造方法を、図16A~図16Rを用いて説明する。なお、以下に述べる音響素子の製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した構造が実現できるのであれば、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。又、以下の説明で用いている「第1フォトレジスト膜」等の序数を冠した名称は、単に他のフォトレジスト膜と峻別するための修辞学上の要請に依拠した名称であって、実際の工程で用いられる一番目のフォトレジスト膜等を意味するものではない。実際のところ、図16Aに示す構造以前の段階でフォトレジスト膜を用いた処理が実施されているのが通常である。
(a)先ず、0.1~10Ωcm程度の(100)面を主表面とするp型シリコン基板からなる基体領域14を用意する。そして周知のLOCOSやSTIの手法を用い、シリコン酸化膜等の素子分離絶縁膜16を0.5~1.2μm程度の厚さに形成する。素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域のパターンの内部に、図16Aに示すようなn+型の第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bが、互いに対向して形成された断面構造を実現する。第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの平面パターンの例は、例えば図2に示したような長方形のパターンである。この後、MOSFETの閾値制御用のイオン注入の工程を必要に応じて追加してもよい。
(b)その後、第1主電極領域15a、第2主電極領域15b、並びに第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に露出した基体領域14の上に、図16Bに示すようにシリコン酸化膜等の第1絶縁膜17pを、10~250nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により堆積する。基体領域14がSiの場合は熱酸化でもよい。第1絶縁膜17pをCVD法等で堆積した場合は化学的機械研磨(CMP)等の手法で、図16Bに示すように素子分離絶縁膜16の上面が露出するまで平坦化する。その後、第1絶縁膜17pの上に、第1フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第1フォトレジスト膜を露光・現像し、コンタクトホール開孔用の第1エッチングマスクを形成する。第1エッチングマスクを用い、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング技術を用いて、図16Fに示すように第1絶縁膜17pを選択エッチングして、第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの上部にコンタクトホールのパターンを開孔する。以後、コンタクトホールが開孔された第1絶縁膜17pを「層間絶縁膜17」と称する。
(c)更に、第1絶縁膜17pの上に不純物を添加した多結晶シリコン(ドープドポリシリコン:DOPOS)膜や高融点金属等の導電体層からなる第1導電体膜を、80~200nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により全面に堆積する。第1導電体膜の上に、第2フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第2フォトレジスト膜を露光・現像し、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25bのパターニング用の第2エッチングマスクを形成する。第2エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて、図16Cに示すように第1導電体膜を選択エッチングして、第1主電極領域15aに接続された第1主電極配線25aのパターンと、第2主電極領域15bに接続された第2主電極配線25bのパターンを形成する。図16Cにおいて、第1主電極配線25aと第2主電極配線25bの間に露出した層間絶縁膜17を、「チャネル保護絶縁膜17c」と定義する。
(d)その後、チャネル保護絶縁膜17c、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25bの上に、第3フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第3フォトレジスト膜を露光・現像し、チャネル上部露出用の第3エッチングマスクを形成する。第3エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いてチャネル保護絶縁膜17cを選択エッチングして、図16Dに示すように、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に基体領域14の上面を露出させるコンタクトホールのパターンを開孔する。
(e)その後、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25b、並びに第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に露出した基体領域14の上に、図16Eに示すようにシリコン酸化膜等の空洞内壁保護膜19を、180~250nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により堆積する。そして、スパッタリング法、真空蒸着法又はCVD法等の堆積方法を用いてタングステン(W)等の犠牲層用材料層27pを、全面に堆積する。そしてCMP法等により平坦化する。
(f)その後、犠牲層用材料層27pの上に、第4フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第4フォトレジスト膜を露光・現像し、犠牲層形成用の第4エッチングマスクを形成する。第4エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて、図16Gに示すように犠牲層用材料層27pを選択エッチングして、犠牲層27のパターンを形成する。図16Gの断面図の表現では、2つの犠牲層27のパターンが左右対称に両側に位置している。しかし、見かけ上、左右対称に図16Gの両側に位置している2つの犠牲層27は、図16Gの紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続したトーラス構造をなす一体構造である。
(g)更に、トーラス構造をなす犠牲層27、このトーラス構造をなす犠牲層27の中央に露出した空洞内壁保護膜19の上に、第5フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第5フォトレジスト膜を露光・現像し、チャネル上部露出用の第5エッチングマスクを形成する。第5エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて空洞内壁保護膜19cを選択エッチングして、トーラス構造の犠牲層27の中央に露出した基体領域14の上面を露出させる。
(h)トーラス構造の犠牲層27の中央に露出した基体領域14の上面を露出させるコンタクトホールのパターンを介して、基体領域14の上面に図16Hに示すように振動体22a1をヘテロエピタキシャル成長させる。例えば、基体領域14がGaNの場合、振動体22a1としてAlN層を、光励起分子層エピタキシャル成長(MLE)すればよい。AlN層のMLEは、例えば、真空中でIII属元素ガスとしてのトリメチルアルミニウム(TMAl)とV属元素ガスとしてのアンモニア(NH3)等の原料ガスを、時分割でビーム状に交互に導入し、AlN層を1分子層単位で成長する。光励起MLEは、このMLEの手法に、更にエキシマレーザ光等の紫外線を、成長層表面に照射して、紫外線のエネルギの支援により成長させるエピタキシャル成長方法である。光励起MLEにより、光エネルギによる表面マイグレーションを利用すれば、1分子層単位のAlN層を、1000℃以下の低温でヘテロエピタキシャル成長させることが可能である。AlN層は350~1200℃程度で成長できるが、紫外線のエネルギを利用することにより、1000℃以下の低温でも良好な結晶性が得られる。或いは、基体領域14がSiの場合、振動体22a1としてHfO2層を、テトラエチルメチルアミノハウニウム(TEMAH)等を用いて400℃程度でCVD成長してもよい。振動体22a1の表面は必要に応じてCMP等の手法により平坦化する。
(i)そして、振動体22a1の上に、スパッタリング法、真空蒸着法若しくはCVD法等の堆積方法を用いて、アルミニウム(Al)若しくはアルミニウム合金等の第2導電体膜を全面に堆積する。更に、第2導電体膜の上に第6フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、固定電位電極形成用のパターンを形成する。第6フォトレジスト膜を第6エッチングマスクとして用いて、第2導電体膜を選択的にエッチングして、図16Iに示すような、固定電位電極24のパターンを形成する。
(j)次に、振動体22a1の上に、固定電位電極24のパターンを覆うように、スピンコート等の手法を用いて、エポキシ樹脂等の固定電極保護下地膜(図示省略)を堆積する。更に、固定電極保護下地膜の上に第7フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、除去液導入用のパターンを形成する。第7フォトレジスト膜を第7エッチングマスクとして用いて、固定電極保護下地膜及び振動体22a1を貫通し犠牲層27に到達する液導入孔28を図16Jのように形成する。図16Jは、第7エッチングマスクとしての第7フォトレジスト膜を除去した後の断面形状を示しているが上述したように固定電極保護下地膜の図示は省略されている。
(k)そして、例えば、加熱した過酸化水素水(H2O2)を、犠牲層27に対して液導入孔28から導入する。加熱した過酸化水素水が液導入孔28から導入されると、犠牲層27は、ウェットエッチングで選択的に溶解する。犠牲層27が溶解すると、図16Kに示すように、空洞内壁保護膜19の上に平行トーラス型の振動空洞21a1が形成される。この後、スピンコート等の手法を用いて、エポキシ樹脂等の固定電位電極保護膜23を、図16Lに示すように固定電極保護下地膜の上に厚さ400~600nm程度に堆積して、液導入孔28を閉じる。液導入孔28を塞ぐこの工程の際に、主成分をヘリウム(He)ガス等の不活性ガスとして、1kPa程度の減圧雰囲気中で処理することで、振動空洞21a1の内部は、不活性ガスが主成分となる、ほぼ真空と見なせる減圧状態となり、第1実施形態の第2変形例に係る音響素子が完成する。
(第2実施形態)
第1実施形態に係る音響素子では、振動体22a1がゲート絶縁層として機能する図3Bの等価回路でモデル化される構造に着目して説明した。本発明の第2実施形態に係る音響素子では、図3Bの前提となった図3Aに示す等価回路に対応する構造に着目する。即ち、第2実施形態に係る音響素子は、図17,図18A及び図18Bに示すように、圧電効果で非一様の電圧を発生する電圧発生部1aと、電圧発生部1aの特定の箇所(局所)の電位を制御電圧として動作するインピーダンス変換素子2bを備える受信素子Xi,jである。図18Bの断面図から分かるように、電圧発生部1aは、第1実施形態に係る音響素子と同様な振動体22a1及び振動体22a1の受信面(図18Bにおいて上側の主面)に接した固定電位電極24aを有するモノモルフ型構造をなしている。固定電位電極24aの上には、エポキシ樹脂等の固定電位電極保護膜23が設けられている。
振動体22a1は図18Bに例示したように全体を圧電層で構成してもよく、中央の下向き凸部(応力集中箇所)のみを圧電層で構成し、残余の部分を非圧電層としてもよい(図示省略)。即ち、電圧発生部1aは、振動体22a1の一部であって振動体22a1の応力集中箇所に、少なくとも圧電層が設けられた構造であればよい。よって、インピーダンス変換素子2bは、少なくとも下向き凸部(応力集中箇所)に設けられた圧電層の特定の局所を電位伝達ゾーンとして、この電位伝達ゾーンの電位を制御電圧として動作可能である。
応力集中箇所となる振動体22a1の中央の下向き凸部に少なくとも用いるべき材料としては、既に述べたとおり、32種類の晶族のうちの圧電性を有する20種類の結晶点群に属する材料が採用可能である。少なくとも応力集中箇所に用いればよいので、図18Bに例示したように振動体22a1の全体を、圧電性を有する材料で構成してもよいことは勿論である。このうち、焦電性を示す10種類の結晶点群に属するHfO2、AlN,PZT等の材料が好適である。モノモルフ型構造の電圧発生部1aは、振動体22a1の受信面に対向する(受信面の反対側の面となる)出力面(図18Bにおいて下側の主面)の特定の箇所に、他の箇所より高い電圧を圧電効果で発生する非一様の発生電圧の電圧分布を有する。振動体22a1の出力面の「特定の箇所」とは、例えば図17に模式的に電位伝達ゾーンのモデルを示したような中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4である。図17のモデル表現における中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4は、例えば中央ゾーンP0を中心とし、中央ゾーンP0のパターンを囲むように、第1周辺ゾーンP1, 第2周辺ゾーンP2, 第3周辺ゾーンP3, 第4周辺ゾーンP4が同心六角環状に囲んだパターンである。なお、図17の電圧発生部1aのモデル的表現において、中央から外側に向かって順に附番したP0, P1,……, P4は、単に電位伝達ゾーンの位置を表記しているに過ぎず、現実にP0, P1,……, P4の位置に電極が存在することを意味する意図ではないことに留意されたい。後述の図20,図22,図24,図25,図28D等においても同様である。
インピーダンス変換素子2bは、図17に示すように、第1主電極領域15aが第1電源(GND若しくは負電源Vss)に接続され、第2主電極領域15bが出力抵抗Rdを介して第1電源よりも高位の第2電源VDDに接続された絶縁ゲート型トランジスタ(MISトランジスタ)である能動素子Qbを、回路要素として備えている。能動素子QbとしてはMOSFET,MOSSIT,MISFET,MISSIT,HEMT等のMISトランジスタが対応する。インピーダンス変換素子2bを構成する能動素子Qbは、図18Bにおいて中央部に例示したような、振動体22a1の出力面側の凸部として位置する第1周辺ゾーンP0の電位を制御電圧として動作する。即ち、第2実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子2bは、電圧発生部1aの振動体22a1に印加される超音波Φの圧力を、第1周辺ゾーンP0の電位として入力し、インピーダンス変換した信号として出力する能動素子Qbを備える。そして、第2実施形態に係る音響素子は、能動素子Qbの出力信号を、音響素子の出力信号とする。
第2実施形態に係る音響素子の電圧発生部1aを構成する振動体22a1の出力面側の凸部は、図18Aに二点鎖線で示したような、正六角柱状の凸部である。図18Bが示すように、振動体22a1の出力面側の中央部に設けられた凸部の周りには、平行トーラス型の振動空洞21a1が、凸部を囲むように中心対称に設けられている。振動空洞21a1を構成する平行トーラスは、平面パターンが六角形となるトポロジである。図18Bの断面図の表現では、見かけ上、2つの振動空洞21a1が中央凸部の両側に位置しているが、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。
第2実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子2bを構成する能動素子Qbは、図18Bに示すように、第1導電型(p型)の半導体領域からなる基体領域14と、この基体領域14の上部に互いに離間して配置された第2導電型(n+型)の半導体領域からなる第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bを有する。更に、能動素子Qbは、図18Bに示すように、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に位置する基体領域14の上面に接し、基体領域14よりも禁制帯幅の広いゲート誘電体膜13と、ゲート誘電体膜13の上に設けられた制御電極37を備えた能動素子である。ゲート誘電体膜13を有する能動素子Qbの場合は、過剰なゲート電圧によるゲート誘電体膜13の絶縁破壊が問題となる。このため、図17に示すように、能動素子Qbの制御電極37と第2電源VDDの間には、正電圧クランプダイオードDk1が接続され、制御電極37と第1電源(GND)の間には負電圧クランプダイオードDk2が接続されている。正電圧クランプダイオードDk1と負電圧クランプダイオードDk2を制御電極37に接続することにより、ゲート誘電体膜13に過剰なゲート電圧が印加されないように構成されている。
図17には、固定電位電極24aを接地電位(GND)に接続する場合の回路接続が例示されているが、例示した回路接続に限定されるものではない。既に、図4C、4D,5C,7B,7C,8B,9B,10B等を用いて説明したとおり、固定電位電極24aを接地電位(GND)に接続した場合は、電圧発生部1aの中央電圧Vp0 ,第1周辺電圧Vp1, 第2周辺電圧Vp2 ,第3周辺電圧Vp3及び第4周辺電圧Vp4は、0Vを中心に正方向と負方向に振動する振動波形となる。図17に例示した回路接続とは異なり、固定電位電極24aをバイアス電圧Vbias>0に接続すれば、電圧発生部1aが発生する中央電圧Vp0 ,第1周辺電圧Vp1, 第2周辺電圧Vp2 ,第3周辺電圧Vp3及び第4周辺電圧Vp4は、0Vとは異なるバイアス電圧Vbiasを中心に、バイアス電圧Vbiasの上下に振動する振動波形となる。即ち、増幅率が最も高くなるインピーダンス変換素子2bのI-V特性上の動作ポイントにVbiasを選んで固定電位電極24aをVbiasに接続すれば、第2実施形態に係る音響素子の感度を高くすることができる。即ち固定電位電極24aは固定電位であれば、任意のバイアス電圧Vbiasを選択可能である。可変電圧源から、所望の任意のバイアス電圧Vbiasを調整可能なような回路構造にしてもよい。
膜形成条件にもよるが、シリコン酸化膜(SiO2膜)の禁制帯幅は、7.6~9.0eV程度、アルミナ(Al2O3膜)の禁制帯幅は8.3eV程度、シリコン窒化膜(Si3N4膜)の禁制帯幅は4.9eV程度ある。能動素子Qbは、ヘテロ接合FETと同様にヘテロ接合のゲート構造を有していると考えることができる。図17に例示したように、第2実施形態に係る音響素子では、能動素子Qbの制御電極37は、電位発生箇所P0に電気的に接続され、能動素子Qbの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に定義されるチャネルに発生する、キャリアの移動を制御する電位障壁の高さを、電位発生箇所P0の電位で制御する。第2実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子2bは、ゲート誘電体膜13と制御電極37を備えた能動素子Qbを備える構成であるので、主要な構成部分を説明する等価回路としては、第1実施形態で既に説明した図3Aに、形式上対応させることが出来る。
基体領域14の周辺には、素子分離絶縁膜16が能動素子Qbの活性領域の敷地を定義するように額縁状に設けられている。図18Bの断面の表現では素子分離絶縁膜16が活性領域の両側に位置しているが、第1実施形態に係る音響素子の構造と同様に、活性領域の両側に位置している素子分離絶縁膜16は、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域のパターンの内部には、基体領域14の上面の敷地(領域)が定義され、素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域の上面(表面)近傍の上部に、第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bが配置されている。図18Aの中央に、二点鎖線で正六角形の電位伝達ゾーンの範囲を示したが、振動体22a1の出力面側の凸部として定義される六角形の電位伝達ゾーンに対して、能動素子Qbのチャネルは、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に挟まれた矩形の領域の表面に形成される。活性領域の敷地の内部において、能動素子Qbの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間のチャネルに発生する、キャリア移動に対する電位障壁の高さが、振動体22a1の電位伝達ゾーンの電位で静電的に制御される。
第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの上には図18Bに示すように、層間絶縁膜17が設けられている。層間絶縁膜17に開孔されたコンタクトホールを介して、第1主電極領域15aには第1主電極配線25aが、第2主電極領域15bには第2主電極配線25bが接続されている。図18A及び図18Bに示すように、制御電極37の上には導電体からなる入力信号配線38が設けられ、金属学的に接合している。図18Aでは入力信号配線38は、制御電極37をp+型のアノード領域42及びn型のカソード領域43に、それぞれ接続するように、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25bの長手方向に直交する長手方向を有する配線である。図17の等価回路表現で示した正電圧クランプダイオードDk1に対応して、p+型のアノード領域42とn型のカソード領域41からなるp-n接合ダイオードが、図18Aにおいて、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25bのパターンの上方の紙面領域の位置に配置されている。p+型のアノード領域42とn型のカソード領域41からなるp-n接合ダイオードの長手方向は、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25bのパターンの長手方向と平行である。
同様に、図17の負電圧クランプダイオードDk2に対応して、図18Aの下側の紙面領域には、p+型のアノード領域44とn型のカソード領域43からなるp-n接合ダイオードが、長手方向を第1主電極配線25a及び第2主電極配線25bのパターンと平行とするように配置されている。負電圧クランプダイオードDk2を構成するアノード領域44には、第1電源側ダイオード配線36が接続され、正電圧クランプダイオードDk1を構成するカソード領域41には、第2電源側ダイオード配線35が接続されている。図18Bに示すように、振動体22a1の出力面側の中央凸部の先端側から、導電体からなる柱状(塊状)の接続プラグ29がコンタクト部(コンタクト領域)として埋め込まれて、接続プラグ29が振動体22a1とオーミック接触している。接続プラグ29の下側端部となる接続プラグ29の表面層は、接続プラグ29の上部側よりも柔らかな金属を用い、堅い金属と柔らかい金属との積層構造で接続プラグ29を構成してもよい。電圧発生部1aの電気的なコンタクト部として機能する接続プラグ29の下側端部は平坦な面となるように仕上げられ、入力信号配線38の上面との接続端面になる。そして、接続プラグ29の下面である接続端面と入力信号配線38の上面が物理的に接触することにより、電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位が、インピーダンス変換素子2bを構成する能動素子Qbの制御電圧として入力される。
振動体22a1と接続プラグ29との間のオーミック接触抵抗を低減するために、振動体22a1と接続プラグ29との間に合金層等の接触抵抗改善層が挟まれていてもよい。接続プラグ29は中央凸部の先端に埋め込まれている必要は必ずしもなく、単なる平坦な面同士の接合を、凸部の先端と構成するように板状でもよい。接続プラグ29を構成要素と考えると、電圧発生部1aは、振動体22a1、固定電位電極24a、固定電位電極保護膜23及び接続プラグ29を備えることになる。なお、接続プラグ29と入力信号配線38の間に新たなバンプ等の接続手段が更に挟まれても構わない。
即ち、接続プラグ29の電位が、入力信号配線38を介して制御電極37に入力され、制御電極37の電位がゲート誘電体膜13を介して、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間のチャネルに発生する、キャリア移動に対する電位障壁の高さを静電的に制御する。図18Bに示す構造は、上側に位置する電圧発生部側チップに設けられた接続プラグ29と、下側に位置するインピーダンス変換素子側チップの入力信号配線38が、互いに物理的に接触する構造の例示である。よって、振動空洞21a1の周辺において、電圧発生部側チップに設けられた鏡面を有する直接接合用絶縁膜31と、インピーダンス変換素子側チップに設けられた鏡面を有する空洞内壁保護膜19とが、親水接合(シラノール基間の水素結合)で直接接合した構造になっている。
非特許文献2に記載のPMUTとFETを外部配線で接続する場合の浮遊インピーダンスに比して、第2実施形態に係る音響素子では、薄い板状の入力信号配線38と制御電極37を用いて厚み方向に最短距離で直結される電気的接続経路になっているので、圧倒的に浮遊インピーダンスが削減できる。しかも、非特許文献2のPMUTに対比される電圧発生部1aが、応力強化構造となる新たな構造を採用し高感度化及び広帯域化を達成しているので、第2実施形態に係る音響素子は、高感度化及び広帯域化が可能である。特に、電圧発生部1aの内部構造をミクロに検討し、発生電圧が最も高くなる特定の箇所を電位伝達ゾーンとして選び、インピーダンス変換素子2bへの入力伝達箇所としているので、高感度化が容易である。
――第2実施形態の変形例――
図18Bでは、振動体22a1の出力面側の下向きの凸部の先端側から上方に向かって、柱状の接続プラグ29がコンタクト部として埋め込まれた構造を例示したが、図18Bに示した構造に限定されるものではない。例えば、図18Cに示すように、柱状の導電体からなる接続プラグ29pilが振動空洞21a1の中央支柱として設けられ、接続プラグ29pilの周りに平行ト-ラス型の振動空洞21a1が、中心対称に設けられてもよい。図18Bの説明で、接続プラグ29は板状でもよいと述べたが、図18Cに示す構造は、図18Bの中央凸部の厚さをゼロとして、すべてを厚い板状の接続プラグ29で構成した構造にも対応する。接続プラグ29pilは、図18Aの中央に二点鎖線で示した正六角形の電位伝達ゾーンの範囲の全体を占める正六角柱になり、振動空洞21a1を構成する平行ト-ラスは、接続プラグ29pilを囲む平面パターンが六角環となるトポロジになる。接続プラグ29pilを介して、平坦な面同士の接合が振動体22a1の出力面側の中央で実現される。この結果、接続プラグ29pilは、側壁の六面が六角環トーラスに露出したコンタクト部(コンタクト領域)に対応する。図18Cの断面図の表現では、見かけ上、2つの振動空洞21a1が中央の接続プラグ29pilの両側に位置しているが、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。
図18Cに示す能動素子は、図18Bに示した能動素子Qbと同様に、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に位置する基体領域14の上面に接し、基体領域14よりも禁制帯幅の広いゲート誘電体膜13と、ゲート誘電体膜13の上に設けられた制御電極37を備える。更に、図18Cに示すように、制御電極37の上には導電体からなる入力信号配線38が金属学的に接合されている。一方、中央支柱構造を構成する接続プラグ29pilの平坦な上部端面が、振動体22a1の出力面側の中央にオーミック接触している。図示を省略しているが、振動体22a1の出力面側の中央と、接続プラグ29pilの平坦な上部端面の間に合金層等の接触抵抗改善層が挿入されていてもよい。
そして、柔らかな金属を表面層(図18Cでは最下層)とする接続プラグ29pilの平坦な下部端面が、入力信号配線38の上面に物理的に接触している。接続プラグ29pilが、入力信号配線38に電気的に接続されることにより、図17に示した電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位が、インピーダンス変換素子2bを構成する能動素子Qbの制御電圧として入力される。なお、図18Cの表現では、断面図に現れる接続プラグ29pilの幅、入力信号配線38の幅、制御電極37の幅が同一に示されているが例示に過ぎない。接続プラグ29pilの幅と入力信号配線38の幅が異なっていてもよく、入力信号配線38の幅と制御電極37の幅が異なっていてもよい。又、接続プラグ29pilの幅と制御電極37の幅が異なっていてもよい。例えば、図18Cで表現される接続プラグ29pilの幅よりも制御電極37の幅の幅が大きい逆T字形でもよく、逆に、接続プラグ29pilの幅よりも制御電極37の幅の幅が小さいT字形でもよい。他は図18Bに示した第2実施形態に係る音響素子と同様であるので重複した説明を省略する。
非特許文献2に記載のPMUTとFETを外部配線で接続する場合の浮遊インピーダンスに比して、第2実施形態の変形例に係る音響素子では接続プラグ29pil、入力信号配線38及び制御電極37と、厚み方向に最短距離で直結される電気的接続経路になっているので、圧倒的に浮遊インピーダンスが削減できる。しかも、非特許文献2のPMUTに対比される電圧発生部1aが応力強化構造となる新たな構造を採用し高感度化及び広帯域化を達成しているので、第2実施形態の変形例に係る音響素子は、高感度化及び広帯域化が可能である。特に、発生電圧が最も高くなる振動体22a1の出力面の特定の箇所を電位伝達ゾーンとして選び、短い接続プラグ29pilを介して能動素子への入力伝達箇所としているので、高感度化が容易である。
-中央支柱の材料の硬度依存性―
振動体22a1として厚さt
22a1=2.4μmのPZTを用いた場合において、図18Cに示した中央の支柱として機能する直径2.4μmの円柱状の接続プラグ29
pilの材料の硬度を変えた場合の電圧感度や半値幅帯域を、図18Dに示す。トーラスの外周の直径d
11=60μmであり(図4Aに示したd
11の定義参照。)、振動体22a1の上に厚さt
23=6μmの軟エポキシ樹脂からなる固定電位電極保護膜23が被覆しているとしている。図18Dに示すように、受信超音波の半値幅帯域5~11MHzの範囲内において、細い実線で表現したタングステン(W)及び細い破線で表現したシリコン窒化膜(Si
3N
4膜)を材料とする中央支柱構造の最大電圧感度が5.14μV/Pa程度となっており、最も高くなっている。図18Dは、Wを示す細い実線とSi
3N
4膜を示す細い破線がほぼ重なっている。W及びSi
3N
4膜は、表3に示した材料の内、ヤング率が最も高い材料と2番目に高い材料である。
そして、W及びSi3N4膜を示す感度曲線よりも若干低周波であるが、太い実線で表現した銅(Cu)を材料とする中央支柱構造の感度曲線が、W及びSi3N4膜を示す感度曲線とほぼ同一の曲線として示され、Cuを接続プラグ29pilとする場合の最大電圧感度も5.14μV/Pa程度であることが分かる。更に、Cuを示す感度曲線よりも約0.7MHz低周波側に太い破線で表現したシリコン酸化膜(SiO2膜)を材料とする中央支柱構造の感度曲線が、W、Si3N4膜及びCuを示す感度曲線とほぼ同一の最大電圧感度及び半値幅帯域の曲線として示されている。
更に、Cuを示す感度曲線よりも約0.5MHz低周波側に一点鎖線で表現したアルミニウム(Al)を材料とする中央支柱構造の感度曲線が、W、Si3N4膜、Cu及びSiO2膜を示す感度曲線より少し低い5.0μV/Pa程度の最大電圧感度及び半値幅帯域の曲線として示されている。更に、Cuを示す感度曲線よりも約0.3MHz程度低周波側に二点鎖線で表現したシリコン(Si)を材料とする中央支柱構造の感度曲線が、Alを示す感度曲線より少し低い4.9μV/Pa程度の最大電圧感度で、W、Si3N4膜、Cu、SiO2膜及びAlを示す半値幅帯域とほぼ同程度の曲線として示されている。表3に示したW、Si3N4膜、Cu、SiO2膜、Al及びSi等の金属及び非有機系化合物の範囲内では、中央支柱構造を構成する材料の硬度に、最大電圧感度や半値幅帯域が大きく依存しないことが分かる。
これに対し、太い破線で表現したポリウレタン(PUR)及び細い実線で表現したポリエチレン(PE)を材料とする中央支柱構造の2本の感度曲線は、SiO2膜を示す感度曲線よりも約3.8MHz低周波側に位置している。PUR及びPEを材料とする中央支柱構造の感度曲線は、WやSi3N4膜等の金属及び非有機系化合物からなる中央支柱構造を示す一群の感度曲線より低い3.9μV/Pa程度の最大電圧感度で、ほぼ同一軌跡の2本の曲線として重ねて示されている。PUR及びPEを材料とする中央支柱構造の感度曲線は、金属及び非有機系化合物を示す一群の感度曲線の領域より低周波側の4.1~7.3MHzの領域での半値幅帯域の曲線として示され、半値幅帯域が狭くなっている。更に、太い実線が表現する軟エポキシ樹脂(EP樹脂)を示す感度曲線は、PUR及びPE示す感度曲線よりも低い3.5μV/Pa程度の最大電圧感度の曲線となり、4.1~8.0MHzの半値幅帯域が示されている。WやSi3N4膜等の金属及び非有機系化合物で中央支柱構造を構成した場合に対して、PUR等の高分子材料で中央支柱構造を構成した場合は、最大電圧感度が低く、半値幅帯域が低周波側にシフトし、且つ帯域幅が狭くなることが図18Dから分かる。
=第2実施形態に係る音響素子の製造方法=
図18B等に例示したような、電圧発生部側チップとインピーダンス変換素子側チップとを直接接合した第2実施形態に係る音響素子の製造方法を、図19A~図19Kを用いて説明する。なお、以下に述べる第2実施形態に係る音響素子の製造方法は、一例であり電圧発生部側チップとインピーダンス変換素子側チップとを親水化接合(フュージョンボンディング)で直接接合する場合に限定する必要はない。振動体22a1の成膜に伴う温度プロセスが問題にならなければ、上述した第1実施形態の第2変形例に係る音響素子の製造方法と同様なヘテロエピタキシャルやCVD法による方法でも構わない。又、電圧発生部側チップとインピーダンス変換素子側チップとを積層する場合であっても、通常の3次元積層チップ構造のようなバンプ接続で電気的な接続や物理的な強度を実現してもよく、以下の製造方法に限定する必要もない。バンプ接続には例示した金(Au)-Au直接接合の他、銅(Cu)―Cu直接接合や、銀(Ag)―錫(Sn)系はんだ、インジウム(In)―Snはんだ、或いはAu-Sn、Cu-Sn等の共晶組成を利用した間接接合でもよい。よって、第2実施形態に係る音響素子は、特許請求の範囲に記載した構造が実現できるのであれば、以下に例示する以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。
又、既に第1実施形態の第2変形例に係る音響素子の製造方法の説明の欄の冒頭でも述べたとおり、以下の説明での「第1フォトレジスト膜」等の序数を冠した名称は、単に他のフォトレジスト膜と峻別するための修辞学上の要請に依拠した便宜上の名称であって、実際の工程で用いられる一番目等の順序を意味するものではない。実際のところ、図19Aに示す構造以前の段階では、既にフォトレジスト膜を用いた複数の段階の処理が実施されているのが通常であり、現実の工程では「第1フォトレジスト膜」にはならない。又、順序的に図19F~図19Jに示す電圧発生部側チップの工程を、図19A~図19Eに示すインピーダンス変換素子側チップ工程の前(先)に行うことも可能であり、電圧発生部側チップの工程を先に行う場合は、以下の説明で便宜上使用している「第1フォトレジスト膜」等の序数は、変更されることは勿論である。
(a)先ず、インピーダンス変換素子側チップの基礎として、0.1~10Ωcm程度の(100)面を主表面とするp型シリコン基板からなる基体領域14を用意する。そして周知のLOCOSやSTIの手法を用い、シリコン酸化膜等の素子分離絶縁膜16を0.4~1.2μm程度の厚さに形成する。素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域の平面パターンとして露出した基体領域14の上にゲート誘電体膜13とDPOS膜を堆積し、DPOS膜をパターニングして制御電極37を形成し、イオン注入法により、制御電極37をマスクとして活性領域内に自己整合的にn+型の第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bが、互いに対向した断面構造を実現する。第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの平面パターンの例は、例えば図18Aに示したような長方形のパターンである。第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの形成と同時に、図19Aの紙面の奥には図18Aの平面図に示したカソード領域41を、紙面の手前にはカソード領域43を形成する。カソード領域41,43の形成後、イオン注入法により、図18Aに示したp+型のアノード領域42をカソード領域41のパターンの内部に、p+型のアノード領域44をカソード領域43のパターンの内部に形成する。
(b)その後、第1主電極領域15a、第2主電極領域15b、並びに第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に露出した基体領域14の上に、シリコン酸化膜等の第1絶縁膜17pを180~250nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により堆積する。基体領域14がSiの場合は熱酸化でもよい。第1絶縁膜17pをCVD法等で堆積した場合は化学的機械研磨(CMP)等の手法で、素子分離絶縁膜16の上面が露出するまで平坦化する。その後、第1絶縁膜17pの上に、第1フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第1フォトレジスト膜を露光・現像し、コンタクトホール開孔用の第1エッチングマスクを形成する。第1エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて、第1絶縁膜を選択エッチングして、第1主電極領域15a、第2主電極領域15b、制御電極37、アノード領域42,44及びカソード領域41,43の上部にコンタクトホールのパターンを、それぞれ開孔する。
(c)更に、第1絶縁膜の上にDOPOS膜や高融点金属等の導電体層からなる第1導電体膜を、80~200nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により全面に堆積する。第1導電体膜の上に、第2フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第2フォトレジスト膜を露光・現像し、第1主電極配線25a及び第2主電極配線25b、のパターニング用の第2エッチングマスクを形成する(図18A参照。)。第2エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて、図19Aに示すように第1導電体膜を選択エッチングして、第1主電極領域15aに接続された第1主電極配線25aのパターン並びに第2主電極領域15bに接続された第2主電極配線25bのパターンをそれぞれ形成する。
(d)その後、第1主電極配線25a、第2主電極配線25b及び制御電極37の上に、図19Bに示すようにシリコン酸化膜等の空洞内壁保護膜19を、180~250nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により堆積する。更に、空洞内壁保護膜19の上に、第3フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第3フォトレジスト膜を露光・現像し、制御電極37、アノード領域42,44とカソード領域41,43の上にコンタクトホール開孔用の第3エッチングマスクを形成する(図18A参照。)。第3エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて、空洞内壁保護膜19を選択エッチングして、制御電極37、アノード領域42,44及びカソード領域41,43の上にコンタクトホールを開孔する。図19Aにおいて、アノード領域42とカソード領域41の上のコンタクトホールは紙面の奥、アノード領域44とカソード領域43の上のコンタクトホールは紙面の手前に位置する(図18A参照。)。
(e)更に、第3フォトレジスト膜を除去後、空洞内壁保護膜19の上に、第4フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第4フォトレジスト膜を露光・現像し、入力信号配線38、第1電源側ダイオード配線36及び第2電源側ダイオード配線35を形成するダマシン溝をパターニングするための第4エッチングマスクを形成する(図18A参照。)。第4エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて、図19Cに示すように空洞内壁保護膜19を選択エッチングして、制御電極37をアノード領域42とカソード領域43に接続する入力信号配線38、アノード領域44に接続された第1電源側ダイオード配線36及びカソード領域41に接続された第2電源側ダイオード配線35用のダマシン溝をそれぞれ形成する。入力信号配線38のダマシン溝は制御電極37の上で、制御電極37の上のコンタクトホールと一体化する。図19Cにおいて、第1電源側ダイオード配線36のダマシン溝は紙面の奥、第2電源側ダイオード配線35のダマシン溝は紙面の手前に位置する(図18A参照。)。
(f)更に、ダマシン溝が形成された空洞内壁保護膜19の上に、図19Dに示すように、銅(Cu)膜等の導電体層からなる第2導電体膜38pを、80~200nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により全面に堆積する。そして、CMP等により平坦化して空洞内壁保護膜19の上面を露出させることにより、図19Eに示すように第2導電体膜38pを、それぞれのダマシン溝に埋め込む。第2導電体膜38pをダマシン溝に埋め込むことにより、制御電極37をアノード領域42とカソード領域43に接続する入力信号配線38、アノード領域44に接続された第1電源側ダイオード配線36及びカソード領域41に接続された第2電源側ダイオード配線35を、それぞれダマシン配線として形成する。ダマシン配線の最上層は、Au等のビッカース硬さが20Hv~30Hv程度の軟らかい金属とするのが好ましい。更に、ダマシン配線の最上層には、Auを80%以上含むAu-シリコン(Si),Au-ゲルマニウム(Ge),Au-アンチモン(Sb),Au-錫(Sn),Au-鉛(Pb),Au-亜鉛(Zn),Au-銅(Cu)等のビッカース硬さが15Hv~120Hv程度のAu合金等も使用可能である。図19Eにおいて、第1電源側ダイオード配線36は紙面の奥、第2電源側ダイオード配線35は紙面の手前に位置する(図18A参照。)。CMP等により平坦化した空洞内壁保護膜19の上面は、最終的に貼り合わせ工程に適応した鏡面に仕上げて、「インピーダンス変換素子側チップ」を完成する。
(g)一方、「電圧発生部側チップ」を準備するために、厚さ100μm程度のPZT基板を用意する。用意したPZT基板の一方の主面に、シリコン酸化膜等の第2絶縁膜31pを、180~250nm程度の厚さにCVD法等の堆積方法により堆積する。その後、PZT基板の他方の主面を振動体22a1として必要な厚みになるまで厚み調整をする。PZT基板の強度を維持するため、PZT基板の周辺部を母材の厚みに額縁状に残し,額縁の内側を凹部として、凹部の底に対応する中央部の厚みのみを振動体22a1として必要な厚みまで掘り込んだ段差構造でもよい。そして、振動体22a1としてのPZT基板の他方の主面側となる凹部の底部の上に、スパッタリング法、真空蒸着法若しくはCVD法等の堆積方法を用いて、Al若しくはAl合金等の第3導電体膜を全面に堆積する。更に、第3導電体膜の上に第5フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、固定電位電極形成用のパターンを形成する。第5フォトレジスト膜を第5エッチングマスクとして用いて、第3導電体膜を選択的にエッチングして、図19Fに示すような固定電位電極24aのパターンを凹部の底部の上に形成する。
(h)次に、固定電位電極24aのパターンを覆うように、振動体22a1の上にスピンコート等の手法を用いて、エポキシ樹脂等の固定電位電極保護膜23を図19Gに示すように堆積する。振動体22a1の強度を担保するため、固定電位電極保護膜23の厚みは最終設計値よりも厚くしてもよい。或いは、固定電位電極保護膜23の上に補強用基板(図示省略。)を接合してもよい。
(i)そして、PZT基板の一方の主面側が上面となるように、振動体22a1を裏返す。PZT基板の一方の主面に設けられた第2絶縁膜31pの上に第6フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、プラグ埋込溝用のパターンを形成する。第6フォトレジスト膜を第6エッチングマスクとして用いて、第2絶縁膜31pを貫通し振動体22a1に到達するプラグ埋込溝を図19Hのように形成する。更に、第2絶縁膜31pの上にDOPOS膜や高融点金属等の導電体層からなる第4導電体膜を、プラグ埋込溝の深さよりも厚く、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の堆積方法により全面に堆積する。CMP等の手法により平坦化すれば、図19Iに示すようにプラグ埋込溝に、接続プラグ29が埋め込まれる。接続プラグ29の少なくとも最上層は、AuやAu合金等のビッカース硬さが低い金属膜とするのが好ましい。振動体22a1と接続プラグ29との間のオーミック接触抵抗を低減するために、接続プラグ29の埋め込み後、熱処理をして、振動体22a1と接続プラグ29との間に合金層を構成してもよい。或いは、振動体22a1に接続プラグ29と埋め込む工程の前に、他の金属等からなるオーミック接触抵抗改善層を下地層として堆積した後に、接続プラグ29を埋め込み、更にその後、熱処理をしてもよい。
(j)その後、第2絶縁膜31pの上に、第7フォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用い、第7フォトレジスト膜を露光・現像し、犠牲層形成用の第7エッチングマスクを形成する。第7エッチングマスクを用い、RIE等のドライエッチング技術を用いて、図19Jに示すように第2絶縁膜31pを選択エッチングして、トーラス状の振動空洞用凹部のパターンを形成する。図19Jの断面図の表現では、2つの振動空洞用凹部のパターンが左右対称に両側に位置している。しかし、見かけ上、左右対称に図19Jの両側に位置している2つの振動空洞用凹部は、図19Jの紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続したトーラス構造をなす一体構造である。振動空洞用凹部の周辺に残存した第2絶縁膜31pは、直接接合用絶縁膜31となり、電圧発生部側チップが完成する。直接接合用絶縁膜31の表面も鏡面に仕上げる。
(k)その後、電圧発生部側チップを直接接合用絶縁膜31側が下面となるように裏返し、図19Kに示すように、インピーダンス変換素子側チップの上側に移動する。そして、電圧発生部側チップとインピーダンス変換素子側チップを、直接接合用絶縁膜31と空洞内壁保護膜19との間での「ガラスのオプティカルコンタクト」による親水化接合を生じさせることにより、直接接合する。超平滑化した直接接合用絶縁膜31を構成するシリコン酸化膜と、空洞内壁保護膜19を構成するシリコン酸化膜のガラス同士は、コンタクトするだけで密着できる。親水化接合においては、水の吸着によりガラス表面に形成されたシラノール基間の水素結合により、ガラス同士が密着する。強固な接合のためには、800℃程度のポストアニーリングを加えてもよい。ポストアニーリング際の熱膨張によって、プラグ埋込溝から顔を出した接続プラグ29が入力信号配線38に熱圧着して金属接合する。直接接合用絶縁膜31と空洞内壁保護膜19の表面のそれぞれに酸素プラズマを照射し、表面にポーラスな酸化膜を形成させるプラズマ活性化接合をすれば、吸着した過剰な水やポストアニーリングの際にシラノール基が分解して形成される水素が抜けやすくなり、親水化接合のポストアニーリングの温度は300℃程度にできる。電圧発生部側チップとインピーダンス変換素子側チップの直接接合により、空洞内壁保護膜19の上側に振動空洞用凹部が構成する空間が、図18Bに示した平行トーラス型の振動空洞21a1となり、第2実施形態に係る音響素子が完成する。
なお、上述したとおり、図19A~図19Kを用いて説明した第2実施形態に係る音響素子の製造方法は、一例に過ぎない。例えば、図19Fに示す構造は、Si基板上に熱酸化法等の手法でSiO2膜を形成するステップから開始してもよい。この場合は、Si基板上に形成したSiO2膜の上に、スパッタリング法等により第3導電体膜を全面に堆積し、フォトリソグラフィ技術を用い、第3導電体膜を選択的にエッチングして、図19Fに示すような固定電位電極24aのパターンを形成する。そして、固定電位電極24aのパターンの上に、PZT22pを高周波マグネトロンスパッタリング法、MOCVD法、溶液塗布法(ゾル・ゲル法)等で所望の厚さに堆積する。例えば、常温での高周波マグネトロンスパッタリングの後に、ハロゲンランプやエキシマレーザ等を用いた500℃以下程度の高速熱処理によってPZT22pの結晶性が改善される。
更に、PZT22pの上に、第2絶縁膜31pをCVD法等の手法で堆積すれば、図19Fに示す構造において、固定電位電極保護膜23が存在しない構造に対応する「亜構造」が、Si基板上に完成する。但し、図19F対応する亜構造だけでなく、亜構造がSiO2膜を介して、厚いSi基板上に設けられているため、薄いPZT22pの物理的強度を厚いSi基板によって強化した強化構造になっている。Si基板を付帯した強化構造は、図19Kに示す工程の段階まで維持する。即ち、電圧発生部側チップとインピーダンス変換素子側チップを直接接合した後に、Si基板と固定電位電極24aの間のSiO2膜を除去して、固定電位電極24aを露出させる。そして、露出した固定電位電極24aの上にエポキシ樹脂等の固定電位電極保護膜23を堆積する手順によっても、第2実施形態に係る音響素子が完成する。
(第3実施形態)
既に図4C及び4D等を例示して説明したように、固定電位電極24aが接地電位(GND)に接続される回路接続においては、電圧発生部1aの電位伝達ゾーンとして定義される中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4で検出される電位は、正方向と負方向に振動する過渡応答を示す。電圧発生部1aが、正方向と負方向の両方向に振動する電圧波形を発生する事情に対応するため、本発明の第3実施形態に係る音響素子は、インピーダンス変換素子2cに2種類の能動素子を備えた構造を提供する。即ち、第3実施形態に係る音響素子は、図20に示すように、圧電効果で非一様の電圧を発生する電圧発生部1aと、電圧発生部1aの特定の箇所(局所)の電位を制御電圧として動作するインピーダンス変換素子2cを備える受信素子Xi,jであるが、CMOSインバータ(Qp,Qn)をインピーダンス変換素子2cとして備えている。
図21Bの断面図から分かるように、電圧発生部1aは、第1及び第2実施形態に係る音響素子と同様な振動体22a1及びこの振動体22a1の受信面(図21Bにおいて上側の主面)に接した固定電位電極24aを有するモノモルフ型構造をなしている。振動体22a1は図21Bに例示したように全体を20種類の結晶点群に属する圧電体で構成してもよく、中央の下向き凸部(応力集中箇所)のみを20種類の圧電体で構成し、残余の部分を結晶群の他の12種類の非圧電体で構成してもよい。20種類の結晶点群のうちでも、特に焦電性を示す10種類の結晶点群に属するHfO2、AlN,PZT等の材料が、振動体22a1の中央の下向き凸部(応力集中箇所)の材料に好適である。即ち、電圧発生部1aは、振動体22a1の応力集中箇所に、少なくとも圧電層が設けられた構造であればよい。よって、インピーダンス変換素子2cは、少なくとも下向き凸部(応力集中箇所)に設けられた圧電層の特定の局所を電位伝達ゾーンとして、この電位伝達ゾーンの電位を制御電圧として動作可能である。
第3実施形態に係る音響素子のモノモルフ型構造の電圧発生部1aは、振動体22a1の受信面に対向する(受信面の反対側の面となる)出力面(図21Bにおいて下側の主面)の特定の箇所に少なくとも圧電層を配置し、他の箇所より高い電圧を圧電効果で発生する非一様の発生電圧の電圧分布を有する。振動体22a1の出力面の「特定の箇所」とは、例えば図20に模式的に電位伝達ゾーンの配置候補モデルを示したような中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4のいずれか、若しくはその内の複数個の組み合わせである。図20のモデル表現における中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4は、例えば中央ゾーンP0を中心とし、中央ゾーンP0のパターンを囲むように、第1周辺ゾーンP1, 第2周辺ゾーンP2, 第3周辺ゾーンP3, 第4周辺ゾーンP4が同心六角環状に囲んだパターンである。
第3実施形態に係る音響素子では、インピーダンス変換素子2cとして機能するCMOSインバータ(Qp,Qn)の入力電極が、電圧発生部1aの電位伝達ゾーンである中央ゾーンP0に接続される。電位伝達ゾーンとしての中央ゾーンP0に入力電極が接続されることにより、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成するp型能動素子Qpとn型能動素子Qnのそれぞれのチャネルに発生する電位障壁の高さが、電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位で制御される。p型能動素子Qpとしてはpチャネル型のMOSFET,pチャネル型のMOSSIT,pチャネル型のMISFET,pチャネル型のMISSIT,pチャネル型のHEMT等のpチャネル型のMISトランジスタ(以下において「pMISトランジスタ」という。)が対応する。同様に、n型能動素子Qnとしてはnチャネル型のMOSFET,nチャネル型のMOSSIT,nチャネル型のMISFET,nチャネル型のMISSIT,nチャネル型のHEMT等のnチャネル型のMISトランジスタ(以下において「nMISトランジスタ」という。)が対応する。
CMOSインバータ(Qp,Qn)は、第1主電極領域15aを第1電源Vss(=-VDD)に接続し、第2主電極領域15bを出力信号配線25cに接続したn型能動素子Qnを第1の能動素子として備えている。能動素子Qnのn型チャネル中の電位障壁は、能動素子Qnの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間を流れる主電流となる多数キャリア(電子)の移動の障壁となる。一方、CMOSインバータ(Qp,Qn)は、第3主電極領域15dを第1電源Vssよりも高位の第2電源VDDに接続し、第4主電極領域15cを出力信号配線25cに接続したp型能動素子Qpを第2の能動素子として備えている。能動素子Qpのp型チャネル中の電位障壁は、能動素子Qpの第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間を流れる主電流となる多数キャリア(正孔)の移動の障壁となる。インピーダンス変換素子2cとしてのCMOSインバータ(Qp,Qn)を、図20に示すように、第1電源Vss(=-VDD)と第2電源VDD の間に接続することにより、図4C等で例示したような、正方向と負方向の両方向に振動する入力電圧波形に対応することが可能になる。
CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているn型能動素子Qnの第1制御電極37nは、第1ゲート接続プラグ38nを介して第1入力信号配線39に接続されている。一方、p型能動素子Qpの第2制御電極37pは、第2ゲート接続プラグ38pを介して第1入力信号配線39に接続されている。そして、図21Bに示すように第1入力信号配線39の上に第2入力信号配線45が設けられている。
インピーダンス変換素子2cを構成するCMOSインバータ(Qp,Qn)は、図21Bにおいて中央部に例示したような、振動体22a1の出力面側の凸部として位置する中央ゾーンP0の電位を、第2入力信号配線45及び第1入力信号配線39を介して、n型能動素子Qnの第1制御電極37nと、p型能動素子Qpの第2制御電極37pに伝達する。即ち、第3実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子2cは、電圧発生部1aの振動体22a1に印加される超音波Φの圧力を、中央ゾーンP0の電位としてCMOSインバータ(Qp,Qn)の入力信号とし、インピーダンス変換した信号をCMOSインバータ(Qp,Qn)の出力信号配線25cから出力する。そして、第3実施形態に係る音響素子は、CMOSインバータ(Qp,Qn)の出力信号を、音響素子の出力信号とする。
第3実施形態に係る音響素子の電圧発生部1aを構成する振動体22a1の出力面側の凸部は、図21Aに二点鎖線で示したような、正六角柱状の凸部である。図21Bが示すように、振動体22a1の出力面側の中央部に設けられた凸部の周りには、平行トーラス型の振動空洞21a1が、凸部を囲むように中心対称に設けられている。振動空洞21a1を構成する平行トーラスは、平面パターンが六角形となるトポロジである。図21Bの断面図の表現では、見かけ上、2つの振動空洞21a1が中央凸部の両側に位置しているが、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。
CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成するn型能動素子Qnは、図21Bに示すように、第1導電型(p型)の半導体領域からなるウェル領域52と、このウェル領域52の上部に互いに離間して配置された第2導電型(n+型)の半導体領域からなる第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bを有する。ウェル領域52は、第2導電型(n型)の半導体領域からなる基体領域51の上部に局所的に設けられている。更に、n型能動素子Qnは、図21Bに示すように、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に位置するウェル領域52の上面に接し、ウェル領域52よりも禁制帯幅の広い第1ゲート誘電体膜13nと、第1ゲート誘電体膜13nの上に設けられた第1制御電極37nを備えた能動素子である。
CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成するp型能動素子Qpは、図21Bに示すように、基体領域51と、この基体領域51の上部に互いに離間して配置された第1導電型(p+型)の半導体領域からなる第3主電極領域15d及び第4主電極領域15cを有する。更に、p型能動素子Qpは、図21Bに示すように、第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間に位置する基体領域51の上面に接し、基体領域51よりも禁制帯幅の広い第2ゲート誘電体膜13pと、第2ゲート誘電体膜13pの上に設けられた第2制御電極37pを備えた能動素子である。
図20に示すように、CMOSインバータ(Qp,Qn)の入力信号端子(図21A及び21Bの第1入力信号配線39及び第2入力信号配線45に対応する。)と第2電源VDDの間には、p側クランプダイオードDkpが接続され、入力信号端子と第1電源Vss(=-VDD)の間にはn側クランプダイオードDknが接続されている。p側クランプダイオードDkpとn側クランプダイオードDknを、CMOSインバータ(Qp,Qn)の入力信号端子に接続することにより、n型能動素子Qnの第1ゲート誘電体膜13nとp型能動素子Qpの第2ゲート誘電体膜13pのそれぞれに、過剰なゲート電圧が印加されないように構成されている。
第2実施形態の説明で述べたとおり、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているn型能動素子Qn及びp型能動素子Qpは、それぞれヘテロ接合のゲート構造を有していると考えることができる。図21B等に例示したように、第3実施形態に係る音響素子では、CMOSインバータ(Qp,Qn)の第2入力信号配線45は、電位発生箇所P0に接続されるので、第2入力信号配線45に接続された第1入力信号配線39を介して、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているn型能動素子Qnの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間のn型チャネルに発生する電位障壁の高さは、電位発生箇所P0の電位で制御される。同様に、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているp型能動素子Qpの第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間のp型チャネルに発生する電位障壁の高さも、n型能動素子Qnとは相補的に、電位発生箇所P0の電位で制御される。
n型の基体領域51の上部に局所的に設けられたウェル領域52の周辺には、素子分離絶縁膜16が、CMOSインバータ(Qp,Qn)のn型能動素子Qnの活性領域の敷地を定義するように額縁状に設けられている。n型能動素子Qnの活性領域のパターンを定義する額縁状の堤防状も堤防に隣接して、p型能動素子Qpの活性領域のパターンを定義する額縁状の堤防も配置されている。即ち、n型能動素子Qnの活性領域とp型能動素子Qpの活性領域は、素子分離絶縁膜16を挟んで隣接している。素子分離絶縁膜16で囲まれたn型能動素子Qnの活性領域の敷地の内部には、ウェル領域52の上面の敷地(領域)が定義され、素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域の上面(表面)近傍の上部に、第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bが配置されている。素子分離絶縁膜16で囲まれたp型能動素子Qpの活性領域のパターンの内部には、基体領域51の上面の敷地(領域)が定義され、素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域の上面(表面)近傍の上部に、第3主電極領域15d及び第4主電極領域15cが配置されている。
図21Aの中央に、二点鎖線で正六角形の電位伝達ゾーンの範囲を示したが、振動体22a1の出力面側の凸部として定義される六角形の電位伝達ゾーンに対して、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているn型能動素子Qnのn型チャネルは、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に挟まれた矩形の領域の表面近傍に形成される。同様に、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているp型能動素子Qpのp型チャネルは、第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間に挟まれた矩形の領域の表面近傍に形成される。n型能動素子Qnの活性領域の敷地の内部において、CMOSインバータ(Qp,Qn)の第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に定義されるn型のチャネルに発生する、キャリア移動に対する電位障壁の高さが、振動体22a1の電位伝達ゾーンの電位で静電的に制御される。同様に、p型能動素子Qpの活性領域の敷地の内部において、CMOSインバータ(Qp,Qn)の第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間に定義されるp型のチャネルに発生する、キャリア移動に対する電位障壁の高さが、振動体22a1の電位伝達ゾーンの電位で、n型能動素子Qnとは相補的に制御される。
第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの上には図21Bに示すように、層間絶縁膜(第1層間絶縁膜)17が設けられている。第1層間絶縁膜17に開孔されたコンタクトホールを介して、第1主電極領域15aには第1主電極配線25aが、第2主電極領域15bには出力信号配線25cが接続されている。更に、第1層間絶縁膜17に開孔されたコンタクトホールを介して、第3主電極領域15dには第3主電極配線25dが、第4主電極領域15cには出力信号配線25cが接続されている。第1主電極配線25a、出力信号配線25c、第3主電極配線25d、更にはn型能動素子Qnの第1制御電極37n及びp型能動素子Qpの第2制御電極37pのそれぞれの上には、第2層間絶縁膜53が堆積されている。図21Bに示すように第2層間絶縁膜53及び第2層間絶縁膜53の下層の第1層間絶縁膜17を貫通して、第1制御電極37nの頂部を露出する第1ゲートコンタクトホールが、第2制御電極37pの頂部を露出する第2ゲートコンタクトホールが、それぞれ開孔されている。第1ゲートコンタクトホールには、第1ゲート接続プラグ38nが、第2ゲートコンタクトホールには、第2ゲート接続プラグ38pが、それぞれ埋め込まれてオーミック接触している。
図21Bに示すように、第1ゲート接続プラグ38nと第2ゲート接続プラグ38pとを電気的に接続するように、第2層間絶縁膜53の上に第1入力信号配線39が設けられている。図21Aの平面図に示すように、第1入力信号配線39の長手方向に直行するように、第2入力信号配線45が設けられている。図21Bの断面図から分かるように、第2入力信号配線45は第1入力信号配線39に接するように、第1入力信号配線39の上に設けられた配線である。第1入力信号配線39は、n型能動素子Qnの第1制御電極37nと、p型能動素子Qpの第2制御電極37pを互いに電気的に接続しているので、第2入力信号配線45は、図21Aに示すように、第1制御電極37n及び第2制御電極37pを共通に、p+型のアノード領域42及びn型のカソード領域43にそれぞれ接続する。
図20の等価回路表現で示したp側クランプダイオードDkpに対応して、p+型のアノード領域42とn型のカソード領域41からなるp-n接合ダイオードが、図21Aにおいて、第1主電極配線25a、第2入力信号配線45及び第3主電極配線25dのパターンの上方の紙面領域に配置されている。p+型のアノード領域42とn型のカソード領域41からなるp-n接合ダイオードの長手方向は、第1主電極配線25a及び出力信号配線25cのパターンの長手方向と平行である。
同様に、図20のn側クランプダイオードDknに対応して、図21Aの下側の紙面領域には、p+型のアノード領域44とn型のカソード領域43からなるp-n接合ダイオードが、長手方向を第1主電極配線25a、第2入力信号配線45及び第3主電極配線25dのパターンと平行とするように配置されている。n側クランプダイオードDknを構成するアノード領域44には、第1電源側ダイオード配線36が接続され、p側クランプダイオードDkpを構成するカソード領域41には、第2電源側ダイオード配線35が接続されている。図21Bに示すように、振動体22a1の出力面側の中央凸部の先端側から、表面層を柔らかな金属とした多層構造導電体の接続プラグ29が、平坦な面を接続端面とするように埋め込まれてオーミック接触している。そして、接続プラグ29の下面である接続端面と第2入力信号配線45の上面が物理的に接触することにより、電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位が、インピーダンス変換素子2cを構成するCMOSインバータ(Qp,Qn)の制御電圧として入力される。接続プラグ29を構成要素と考えると、電圧発生部1aは、振動体22a1、固定電位電極24a、固定電位電極保護膜23及び接続プラグ29を備えることになる。
即ち、接続プラグ29の電位が、第2入力信号配線45を介して第1入力信号配線39に入力され、第1入力信号配線39の電位が第1ゲート接続プラグ38n及び第2ゲート接続プラグ38pに伝達される。第1ゲート接続プラグ38nの電位は、第1制御電極37nに入力され、第1制御電極37nの電位は、第1ゲート誘電体膜13nを介して、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間の電位障壁の高さを静電的に制御する。同様に、第2ゲート接続プラグ38pの電位は、第2制御電極37pに入力され、第2制御電極37pの電位は、第2ゲート誘電体膜13pを介して、第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間の電位障壁の高さを静電的に制御する。
図21Bに示す構造は、上側に位置する電圧発生部側チップに設けられた接続プラグ29と、下側に位置するインピーダンス変換素子側チップの第2入力信号配線45が、互いに物理的に接触する構造の例示である。よって、振動空洞21a1の周辺において、電圧発生部側チップに設けられた鏡面を有する直接接合用絶縁膜31と、インピーダンス変換素子側チップに設けられた鏡面を有する空洞内壁保護膜19とが、親水接合(シラノール基間の水素結合)で直接接合した構造になっている。非特許文献2の外部配線で接続する構造に比し、第3実施形態に係る音響素子は、薄い板状の第2入力信号配線45及び第1入力信号配線39を用いて第1ゲート接続プラグ38nと第2ゲート接続プラグ38pに直結される電気的経路になっているので、浮遊インピーダンスが削減できる。しかも、電圧発生部1aが応力強化構造となる新たな構造を採用し高感度化及び広帯域化を達成しているので、第3実施形態に係る音響素子によれば、高感度化及び広帯域化が可能である。特に電圧発生部1aの内部構造をミクロに検討し、発生電圧が最も高くなる特定の箇所を電位伝達ゾーンとして選び、インピーダンス変換素子2cへの入力伝達箇所としているので、高感度化が容易である。
――第3実施形態の変形例――
便宜上、第1~第3実施形態に係る音響素子では、振動空洞21a1の中央凸部の頂部(底部)が中央ゾーンP0となる場合を例示的に説明した。しかし、電圧発生部1bの特定の箇所(局所)の電位を伝達する電位伝達ゾーンは、振動空洞21a1の中央に限定されるものではない。本発明の第3実施形態の変形例に係る音響素子は、図22に示すように、圧電効果で非一様の電圧を発生する電圧発生部1bと、電圧発生部1bの特定の箇所(局所)の電位を制御電圧として動作するインピーダンス変換素子2cを備える受信素子Xi,jである。図23の断面図から分かるように、電圧発生部1bは、モノモルフ型構造である点では第1~第3実施形態に係る音響素子の電圧発生部1aの構造と基本的には同様である。しかし、図22及び図23に示すように、振動空洞21a1の中央の中央ゾーンP0を囲む六角環状の稜部の底部に定義された第2周辺ゾーンP2の電位をインピーダンス変換素子2cに伝達している特徴が、既に説明した第1~第3実施形態に係る音響素子の構造とは異なる。
六角環状の稜部の底部の第2周辺ゾーンP2の電位が採用されたのは、インピーダンス変換素子2cに電位を伝達する振動体22e2の断面構造がW型を呈するという特徴、及びこの振動体22e2の受信面(図23において上側の主面)に接した固定電位電極24eもW型の断面構造を有するという特徴に起因している。振動体22e2には20種類の結晶点群に属する材料が採用可能である。20種類のうちでも、焦電性を示す10種類の結晶点群に属するHfO2、AlN,PZT等の材料が振動体22e2に好適である。図23に示した断面構造はW型であるが、第3実施形態の変形例に係る音響素子の平面構造は、断面図上に現れるW字を呈する2つのVの結合部となる回転軸に関して、6回の回転対称の六角環状である。
断面図上においてW型となるモノモルフ型構造の電圧発生部1bは、図10A及び図10Bを用いて説明したとおり、W字を呈する2つのVの下側頂部に位置する第2周辺ゾーンP2の電位の絶対値absVp2が、他の中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、第3周辺ゾーンP3、第4周辺ゾーンP4の電位の絶対値absVp0, absVp1, absVp3, absVp4よりも大きい。なお、図10A及び図10Bに示したシミュレーション結果を示す中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4は、同心円形のパタンーンであるが、同心六角環の形状であっても、本質的な差異はない。即ち、図23に示すように断面がW型に見える振動体22e2の場合は、中央凸部の位置にモデル的に定義される中央ゾーンP0ではなく、中央ゾーンP0を六角環状の囲む第2周辺ゾーンP2に、他の箇所である中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、第3周辺ゾーンP3、第4周辺ゾーンP4より高い電圧が発生する。このように、振動体22e2の受信面に対向する(受信面の反対側の面となる)出力面(図23において下側の主面)の特定の箇所である第2周辺ゾーンP2に、他の箇所である中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、第3周辺ゾーンP3、第4周辺ゾーンP4より高い電圧が発生するので、断面構造がW型の電圧発生部1bは、非一様の発生電圧の電圧分布を呈する。
既に図10Bに例示して説明したように、電圧発生部1bの中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4で検出される電位は、正方向と負方向に振動する過渡応答の波形を示す。正方向と負方向の両方向に振動する入力電圧波形に対応するため、第3実施形態の変形例に係る音響素子は、第3実施形態に係る音響素子と同様に、図22に示すようにCMOSインバータ(Qp,Qn)をインピーダンス変換素子2cとして備えている。CMOSインバータ(Qp,Qn)の入力電極が、電圧発生部1bの第2周辺ゾーンP2に接続することにより、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成するp型能動素子Qpとn型能動素子Qnのそれぞれのチャネルに発生する電位障壁の高さが、電圧発生部1bの第2周辺ゾーンP2の電位で制御される。
CMOSインバータ(Qp,Qn)は、第1主電極領域15aを第1電源Vss(=-VDD)に接続し、第2主電極領域15bを出力信号配線25cに接続したn型能動素子Qnを第1の能動素子として備えている。n型能動素子Qnのn型チャネル中の電位障壁は、n型能動素子Qnの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間を流れる主電流となる多数キャリア(電子)の移動の障壁となる。一方、CMOSインバータ(Qp,Qn)は、第3主電極領域15dを第1電源Vssよりも高位の第2電源VDDに接続し、第4主電極領域15cを出力信号配線25cに接続したp型能動素子Qpを第2の能動素子として備えている。p型能動素子Qpのp型チャネル中の電位障壁は、p型能動素子Qpの第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間を流れる主電流となる多数キャリア(正孔)の移動の障壁となる。インピーダンス変換素子2cとしてのCMOSインバータ(Qp,Qn)を、図22に示すように、第1電源Vss(=-VDD)と第2電源VDD の間に接続することにより、図10B等で例示したような、正方向と負方向の両方向に振動する入力電圧波形に対応することが可能になる。
CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているn型能動素子Qnの第1制御電極37nは、第1ゲート接続プラグ38nを介して第1入力信号配線46に接続されている。一方、p型能動素子Qpの第2制御電極37pは、第2ゲート接続プラグ38pを介して第1入力信号配線46に接続されている。そして、図23に示すように第1入力信号配線46の上に六角環状の第2入力信号配線47が設けられている。
インピーダンス変換素子2cを構成するCMOSインバータ(Qp,Qn)は、図23の振動空洞21eの半径方向の途中に位置する、振動体22e2の出力面側の六角環状の稜部である第2周辺ゾーンP2の電位を、六角環状の第2入力信号配線47及び第1入力信号配線46を介して、n型能動素子Qnの第1制御電極37nと、p型能動素子Qpの第2制御電極37pに伝達する。即ち、第3実施形態の変形例に係る音響素子のインピーダンス変換素子2cは、電圧発生部1bの振動体22e2に印加される超音波Φの圧力を、第2周辺ゾーンP2の電位としてCMOSインバータ(Qp,Qn)の入力信号とし、インピーダンス変換した信号をCMOSインバータ(Qp,Qn)の出力信号配線25cから出力する。そして、第3実施形態の変形例に係る音響素子は、CMOSインバータ(Qp,Qn)の出力信号を、音響素子の出力信号とする。
第3実施形態の変形例に係る音響素子においては、図23が示すように、振動体22e2の出力面側の半径方向の途中に六角環状の稜部が設けられているので、六角環状の稜部の内側の振動空洞21eの空間に加え、稜部の外側には傾斜トーラス型の振動空洞21eの空間が中心対称に設けられている。直角三角形に近い断面構形状で外側の振動空洞21eの空間を構成する傾斜トーラスは、平面パターンが六角形となるトポロジである。図23の断面図の表現では、見かけ上、2つの振動空洞21eが六角環状の稜部の両側に位置しているが、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。
CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成するn型能動素子Qnは、図23に示すように、p型の半導体領域からなるウェル領域52と、このウェル領域52の上部に互いに離間して配置されたn+型の半導体領域からなる第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bを有する。ウェル領域52は、n型の半導体領域からなる基体領域51の上部に局所的に設けられている。更に、n型能動素子Qnは、図23に示すように、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に位置するウェル領域52の上面に接し、ウェル領域52よりも禁制帯幅の広い第1ゲート誘電体膜13nと、第1ゲート誘電体膜13nの上に設けられた第1制御電極37nを備えた能動素子である。
CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成するp型能動素子Qpは、図23に示すように、基体領域51と、この基体領域51の上部に互いに離間して配置されたp+型の半導体領域からなる第3主電極領域15d及び第4主電極領域15cを有する。更に、p型能動素子Qpは、図23に示すように、第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間に位置する基体領域51の上面に接し、基体領域51よりも禁制帯幅の広い第2ゲート誘電体膜13pと、第2ゲート誘電体膜13pの上に設けられた第2制御電極37pを備えた能動素子である。
図22に示すように、CMOSインバータ(Qp,Qn)の入力信号端子(図23の第1入力信号配線46及び第2入力信号配線47に対応する。)と第2電源VDDの間には、p側クランプダイオードDkpが接続され、入力信号端子と第1電源Vss(=-VDD)の間にはn側クランプダイオードDknが接続されている。p側クランプダイオードDkpとn側クランプダイオードDknを、CMOSインバータ(Qp,Qn)の入力信号端子に接続することにより、n型能動素子Qnの第1ゲート誘電体膜13nとp型能動素子Qpの第2ゲート誘電体膜13pのそれぞれに、過剰なゲート電圧が印加されないように構成されている。
図22及び図23等に例示したように、第3実施形態の変形例に係る音響素子では、CMOSインバータ(Qp,Qn)の六角環状の第2入力信号配線47は、電位発生箇所P2に接続されるので、第2入力信号配線47に接続された第1入力信号配線46を介して、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているn型能動素子Qnの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間のn型チャネルに発生する電位障壁の高さは、電位発生箇所P2の電位で制御される。同様に、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているp型能動素子Qpの第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間のp型チャネルに発生する電位障壁の高さも、n型能動素子Qnとは相補的に、電位発生箇所P2の電位で制御される。
n型の基体領域51の上部に局所的に設けられたウェル領域52の周辺には、素子分離絶縁膜16が、n型能動素子Qnの活性領域の敷地を定義するように額縁状に設けられている。n型能動素子Qnの活性領域のパターンを定義する額縁状の堤防に隣接して、p型能動素子Qpの活性領域のパターンを定義する額縁状の堤防も配置されている。即ち、n型能動素子Qnの活性領域とp型能動素子Qpの活性領域は、素子分離絶縁膜16を挟んで隣接している。素子分離絶縁膜16で囲まれたn型能動素子Qnの活性領域の敷地の内部には、ウェル領域52の上面の敷地(領域)が定義され、素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域の上面(表面)近傍の上部に、第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bが配置されている。素子分離絶縁膜16で囲まれたp型能動素子Qpの活性領域のパターンの内部には、基体領域51の上面の敷地(領域)が定義され、素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域の上面(表面)近傍の上部に、第3主電極領域15d及び第4主電極領域15cが配置されている。
CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているn型能動素子Qnのn型チャネルは、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に挟まれた矩形の領域の表面近傍に形成される。同様に、CMOSインバータ(Qp,Qn)を構成しているp型能動素子Qpのp型チャネルは、第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間に挟まれた矩形の領域の表面近傍に形成される。n型能動素子Qnの活性領域となる半導体領域の内部において、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に定義されるn型のチャネルに発生する、キャリア移動に対する電位障壁の高さが、振動体22e2の電位伝達ゾーンの電位で静電的に制御される。同様に、p型能動素子Qpの活性領域となる半導体領域の内部において、第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間に定義されるp型のチャネルに発生する、キャリア移動に対する電位障壁の高さが、振動体22e2の電位伝達ゾーンの電位で、n型能動素子Qnとは相補的に制御される。
第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの上には図23に示すように、第1層間絶縁膜17が設けられている。第1層間絶縁膜17に開孔されたコンタクトホールを介して、第1主電極領域15aには第1主電極配線25aが、第2主電極領域15bには出力信号配線25cが接続されている。更に、第1層間絶縁膜17に開孔されたコンタクトホールを介して、第3主電極領域15dには第3主電極配線25dが、第4主電極領域15cには出力信号配線25cが接続されている。第1主電極配線25a、出力信号配線25c、第3主電極配線25d、更にはn型能動素子Qnの第1制御電極37n及びp型能動素子Qpの第2制御電極37pのそれぞれの上には、第2層間絶縁膜53が堆積されている。
図23に示すように第2層間絶縁膜53及び第2層間絶縁膜53の下層の第1層間絶縁膜17を貫通して、第1制御電極37nの頂部を露出する第1ゲートコンタクトホールが、第2制御電極37pの頂部を露出する第2ゲートコンタクトホールが、それぞれ開孔されている。第1ゲートコンタクトホールには、第1ゲート接続プラグ38nが、第2ゲートコンタクトホールには、第2ゲート接続プラグ38pが、それぞれ埋め込まれている。第1制御電極37nに第1ゲート接続プラグ38nが接続された一体構造を「第1ゲート端子(37n、38n)」と称し、第2制御電極37pに第2ゲート接続プラグ38pが接続された一体構造を「第2ゲート端子(37p、38p)」と称してもよい。
図23に示すように、第1ゲート接続プラグ38nと第2ゲート接続プラグ38pとを電気的に接続するように、第2層間絶縁膜53の上に第1入力信号配線46が設けられている。平面図の図示を省略しているが、第1入力信号配線46の長手方向と交わるように、六角環状の第2入力信号配線47が設けられている。図23の断面図から分かるように、第2入力信号配線47は2箇所で第1入力信号配線46に接するように、第1入力信号配線46の上に設けられた配線である。第1入力信号配線46は、n型能動素子Qnの第1制御電極37nと、p型能動素子Qpの第2制御電極37pを互いに電気的に接続している。よって、第2入力信号配線47は、第1制御電極37n及び第2制御電極37pを共通に、p側クランプダイオードDkpのアノード領域及びn側クランプダイオードDknのカソード領域にそれぞれ接続される。第1入力信号配線46に第2入力信号配線47が接続された一体構造を「入力信号配線(46,47)」と称することも可能である。この表現では、入力信号配線(46,47)は、第1ゲート端子(37n、38n)と第2ゲート端子(37p、38p)に接続されることになる。
n側クランプダイオードDknを構成するアノード領域には、第1電源側ダイオード配線が接続され、p側クランプダイオードDkpを構成するカソード領域には、第2電源側ダイオード配線が接続されている。図23に示すように、振動体22e2の出力面側の六角環状の稜部の底部には、導電体からなる接続ランド48がオーミック接触するように設けられている。そして、六角環板状の接続ランド48の下面である接続端面と、六角環状の第2入力信号配線47の上面が、互いに物理的に接触することにより、電圧発生部1bの第2周辺ゾーンP2の電位が、インピーダンス変換素子2cを構成するCMOSインバータ(Qp,Qn)の制御電圧として入力される。接続ランド48を構成要素と考えると、電圧発生部1bは、振動体22e2、固定電位電極24e、固定電位電極保護膜23及び接続ランド48を備えることになる。なお、接続ランド48と第2入力信号配線47の間に、バンプ等の接続手段が更に挟まれても構わない。
即ち、六角環板状の接続ランド48の電位が、六角環状の第2入力信号配線47を介して第1入力信号配線46に入力され、第1入力信号配線46の電位が第1ゲート接続プラグ38n及び第2ゲート接続プラグ38pに伝達される。第1ゲート接続プラグ38nの電位は、第1制御電極37nに入力され、第1制御電極37nの電位は、第1ゲート誘電体膜13nを介して、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間の電位障壁の高さを静電的に制御する。同様に、第2ゲート接続プラグ38pの電位は、第2制御電極37pに入力され、第2制御電極37pの電位は、第2ゲート誘電体膜13pを介して、第3主電極領域15dと第4主電極領域15cの間の電位障壁の高さを静電的に制御する。
図23に示す構造は、上側に位置する電圧発生部側チップに設けられた接続ランド48と、下側に位置するインピーダンス変換素子側チップの六角環状の第2入力信号配線47が、互いに物理的に接触する構造の例示である。よって、振動空洞21eの周辺において、電圧発生部側チップに設けられた鏡面を有する直接接合用絶縁膜31と、インピーダンス変換素子側チップに設けられた鏡面を有する空洞内壁保護膜19とが、親水接合(シラノール基間の水素結合)で直接接合した構造になっている。第3実施形態の変形例に係る音響素子は、薄い板状の接続ランド48、第2入力信号配線47及び第1入力信号配線46を用いて第1ゲート接続プラグ38nと第2ゲート接続プラグ38pに直結されるので、浮遊インピーダンスが削減できる。しかも、電圧発生部1bが応力強化構造となるW型構造を採用し高感度化及び広帯域化を達成しているので、第3実施形態の変形例に係る音響素子によれば、高感度化及び広帯域化が可能である。特に発生電圧が最も高くなる電圧発生部1bの特定の箇所を電位伝達ゾーンとして選び、インピーダンス変換素子2cへの入力伝達箇所としているので、高感度化が容易である。
(第4実施形態)
第1~第3実施形態に係る音響素子では、電圧発生部の1箇所の電位伝達ゾーンを選択し、この1箇所の電位伝達ゾーンからインピーダンス変換素子に、電圧発生部の電位を伝達する構造について説明した。しかし、電圧発生部の電位をインピーダンス変換素子に伝達する電位伝達ゾーンは、互いに電位や位相等の異なる複数箇所あっても構わない。例えば、平行トーラス構造の振動体22a1では、図4C等に示したとおり、中央ゾーンP0の中央電圧Vp0及び第4周辺ゾーンP4の第4周辺電圧Vp4が、第1周辺ゾーンP1の第1周辺電圧Vp1、第2周辺ゾーンP2の第2周辺電圧Vp2及び第3周辺ゾーンP3の第3周辺電圧Vp3とは、互いに逆位相で振動することを、既に説明した。M型を呈する振動体22dの場合も、図9Bに示したとおり、中央電圧Vp0と、第1周辺電圧Vp1,第2周辺電圧Vp2及び第3周辺電圧Vp3とは互いに逆位相で振動することを説明した。更にW型を呈する振動体22eの場合も、図10Bに示したとおり、中央電圧Vp0と、第1周辺電圧Vp1,第2周辺電圧Vp2,第3周辺電圧Vp3及び第4周辺電圧P4とは互いに逆位相で振動することを説明した。
第3実施形態に係る音響素子で説明したCMOSインバータは、能動素子を2つ備える点で半導体集積回路である。本発明の第4実施形態に係る音響素子は、図24に示すように、圧電効果で非一様の電圧を発生する電圧発生部1cと、電圧発生部1cの特定の複数の箇所(局所)の個別の電位が、インピーダンス変換素子2dとしての半導体集積回路を構成する複数の能動素子の独立した制御電圧として供給される受信素子Xi,jである。即ち、電圧発生部1cの特定の複数の電位伝達ゾーンの個別の電位が、半導体集積回路に含まれる複数の能動素子の内から選択された特定の複数の能動素子に対する独立した制御電圧として、それぞれ独立して伝達される。そして、選択された複数の能動素子が個別に制御され、この複数の能動素子がそれぞれ動作することにより、非選択の他の能動素子も動作する。図24に示す例では、電圧発生部1cにモデル的にそれぞれ定義される中央ゾーンP0と第2周辺ゾーンP2の互いに位相の異なる2箇所の電位伝達ゾーンの電位が、インピーダンス変換素子2dを構成する半導体集積回路の2箇所の入力端子に、それぞれ独立して伝達される。
第4実施形態に係る音響素子は、図24に示すように5つの能動素子Q11,Q12,Q13,Q14,Q15からなる半導体集積回路(Q11,Q12,Q13,Q14,Q15)をインピーダンス変換素子2dとして備えているが、このうち選択された2つの能動素子Q11及びQ12が、中央ゾーンP0及び第2周辺ゾーンP2の2つの電位伝達ゾーンの電位で制御される。具体的には、半導体集積回路(Q11,Q12,Q13,Q14,Q15)として、第1及び第2の入力端子の2入力差動増幅器が例示可能である。即ち、半導体集積回路(Q11,Q12,Q13,Q14,Q15)は、図24に示すように、2入力の差動対回路(Q11,Q12)と、電流ミラー対回路(Q13,Q14)と定電流源(Q15)を備えて差動増幅器を構成している。一般に差動増幅器は、更に2つの能動素子からなる出力回路を備える場合があるので、この場合は7つの能動素子を備える差動増幅器のうちの2つの能動素子が、2つの電位伝達ゾーンの電位で個別に制御されることになる。
差動対回路(Q11,Q12)は、第1主電極領域と第2主電極領域を有し、第1の入力端子の電位で第1主電極領域と第2主電極領域の間を流れる主電流を制御する第1n型能動素子Q11と、第3主電極領域と第4主電極領域を有し、第2の入力端子の電位で第3主電極領域と第4主電極領域の間を流れる主電流を制御する第2n型能動素子Q12で構成されている。第1n型能動素子Q11及び第2n型能動素子Q12としては、例えばnチャネル型のMOSFET(以下において「nMOSFET」という。)等のnMISトランジスタが対応する。第1n型能動素子Q11の第1主電極領域と第2n型能動素子Q12の第3主電極領域は、図24に示すように共通ノードに接続され、同一電位となっている。
電流ミラー対回路(Q13,Q14)は、第5主電極領域と第6主電極領域を有する第1p型能動素子Q13と第7主電極領域と第8主電極領域を有する第2p型能動素子Q14で構成されている。第1p型能動素子Q13及び第2p型能動素子Q14としては、例えばpチャネル型のMOSFET(以下において「pMOSFET」という。)等のpMISトランジスタが対応する。第1p型能動素子Q13のゲート電極と、第2p型能動素子Q14は共に第1p型能動素子Q13の第6主電極領域に接続されている。この第1p型能動素子Q13の第6主電極領域は、更に第1n型能動素子Q11の第2主電極領域に接続され、第2p型能動素子Q14の第8主電極領域は第2n型能動素子Q12の第4主電極領域に接続されている。
定電流源(Q15)は、第9主電極領域と第10主電極領域を有する第3n型能動素子Q13で構成されている。第3n型能動素子Q13としては、例えばnMOSFET等のnMISトランジスタが対応する。第3n型能動素子Q13の第10主電極領域は、第1n型能動素子Q11の第1主電極領域と第2n型能動素子Q12の第3主電極領域が互いに接続された共通ノードに接続されている。第3n型能動素子Q13の第10主電極領域は、第1電源(GND)に接続され、第1p型能動素子Q13の第5主電極領域及び第2p型能動素子Q14の第7主電極領域は、第1電源よりも高位の第2電源VDDに接続されている。
差動対回路(Q11,Q12)は、図24に示すように、中央ゾーンP0を第1の入力端子に入力し、六角環状の第2周辺ゾーンP2を第1の入力端子に入力し、2つの入力の電位差を検知する。差動対回路(Q11,Q12)で検知した電位差は、電流の差に変換される。定電流源(Q15)は、電位Vb1を第3n型能動素子Q13のゲートに外部から与えて、電位Vb1を変えることで定電流値を調整できる。定電流源(Q15)が常に定電流を流すことで、幅広い電圧範囲で波形や特性に歪みがなく出力できる。電流ミラー対回路(Q13,Q14)は、第1p型能動素子Q13と第2p型能動素子Q14がpMOSFETの場合、それぞれがpMOSFETの飽和領域で動作しさえすれば、第1p型能動素子Q13と第2p型能動素子Q14 に同じ量の電流が流れる。差動対回路(Q13,Q14)では、第1n型能動素子Q11のゲートである第1の入力端子に入力される中央ゾーンP0の電位と第2n型能動素子Q12のゲートである第2の入力端子に入力される第2周辺ゾーンP2の電位の差が電流の差に変換される。
第1n型能動素子Q11のゲートである第1の入力端子に入力される中央ゾーンP0の電位が第2n型能動素子Q12のゲートである第2の入力端子に入力される第2周辺ゾーンP2の電位より大きければ第1n型能動素子Q11の経路の電流が大きくなる。差動対回路(Q13,Q14)で出来た電流の差分をVout として出力する。図24に示すように、第1n型能動素子Q11のゲートである第1の入力端子に、中央ゾーンP0の電位を入力することにより、第1n型能動素子Q11のチャネルに発生する電位障壁の高さが、電圧発生部1cの中央ゾーンP0の電位で制御される。又、第2n型能動素子Q12のゲートである第2の入力端子に第2周辺ゾーンP2の電位を入力することにより、第2n型能動素子Q12のチャネルに発生する電位障壁の高さが、電圧発生部1cの第2周辺ゾーンP2の電位で制御される。
第1n型能動素子Q11のn型チャネル中の電位障壁は、第1n型能動素子Q11の第1主電極領域と第2主電極領域の間を流れる主電流となる多数キャリア(電子)の移動の障壁となる。一方、第2n型能動素子Q12のn型チャネル中の電位障壁は、第2n型能動素子Q12の第3主電極領域と第4主電極領域の間を流れる主電流となる多数キャリア(電子)の移動の障壁となる。具体的な集積化構造の図示を省略しているが、第3実施形態の音響素子等で例示した構造と同様に、薄い板状の接続ランド、第2入力信号配線及び第1入力信号配線等を用いて第1及び第2ゲート接続プラグに直結できるので、浮遊インピーダンスが削減できる。しかも、電圧発生部1cが応力強化構造を採用し高感度化及び広帯域化を達成しているので、第4実施形態に係る音響素子によれば、高感度化及び広帯域化が可能である。特に、電圧発生部1cの内部構造において、発生電圧が高い特定の2箇所を電位伝達ゾーンとして選び、インピーダンス変換素子2dへの入力伝達箇所としているので、高感度化が容易である。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係る音響素子は、図25に示すように、圧電効果で非一様の電圧を発生する電圧発生部1aと、電圧発生部1aの特定の箇所(局所)の電位を制御電圧として動作するインピーダンス変換素子2eを備える受信素子Xi,jである。図26の断面図から分かるように、電圧発生部1aは、第1~第4実施形態に係る音響素子と同様な振動体22a1及びこの振動体22a1の受信面(図26において上側の主面)に接した固定電位電極24aを有するモノモルフ型構造をなしている。振動体22a1は図26に例示したように全体を20種類の結晶点群に属する圧電体で構成してもよく、中央の下向き凸部(応力集中箇所)のみを選択的に20種類の圧電体で構成し、残余の部分を結晶群の他の12種類の非圧電体で構成してもよい(図示省略)。20種類の結晶点群のうちでも、特に焦電性を示す10種類の結晶点群に属するHfO2、AlN,PZT等の材料が、振動体22a1の中央の下向き凸部(応力集中箇所)の材料に好適である。
即ち、電圧発生部1aは、振動体22a1の応力集中箇所に、少なくとも圧電層が設けられた構造であればよい。よって、インピーダンス変換素子2eは、少なくとも下向き凸部(応力集中箇所)に設けられた圧電層の特定の局所を電位伝達ゾーンとして、この電位伝達ゾーンの電位を制御電圧として動作可能である。このモノモルフ型構造の電圧発生部1aは、振動体22a1の受信面に対向する(受信面の反対側の面となる)出力面(図26において下側の主面)の特定の箇所に、他の箇所より高い電圧を圧電効果で発生する非一様の発生電圧の電圧分布を有する。振動体22a1の出力面の「特定の箇所」とは、例えば図25に模式的にモデルを示したような中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4である。図25のモデル表現における中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4は、例えば中央ゾーンP0を中心とし、中央ゾーンP0のパターンを囲むように、第1周辺ゾーンP1, 第2周辺ゾーンP2, 第3周辺ゾーンP3, 第4周辺ゾーンP4が同心六角環状に囲んだパターンである。
インピーダンス変換素子2eは、図25に示すような等価回路で表現される接合型トランジスタを能動素子とする。インピーダンス変換素子2eを構成する接合型トランジスタ(以下において「接合型能動素子」という。)は、図26において中央部に例示したような、振動体22a1の出力面側の凸部として位置する中央ゾーンP0の電位を制御電圧として動作する。即ち、第5実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子2eは、電圧発生部1aの振動体22a1に印加される超音波Φの圧力を、中央ゾーンP0の電位として入力し、インピーダンス変換した信号として出力する接合型能動素子を備える。そして、第5実施形態に係る音響素子は、接合型能動素子の出力信号を、音響素子の出力信号とする。
図示を省略しているが、第5実施形態に係る音響素子の電圧発生部1aを構成する振動体22a1の出力面側の凸部は、図1Bや図18A等に二点鎖線で示したのと同様な、正六角柱状の凸部である。図26が示すように、振動体22a1の出力面側の中央部に設けられた凸部の周りには、平行トーラス型の振動空洞21a1が、凸部を囲むように中心対称に設けられている。振動空洞21a1を構成するトーラスは、平面パターンが六角形となるトポロジである。図26の断面図の表現では、見かけ上、2つの振動空洞21a1が中央凸部の両側に位置しているが、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。
第5実施形態に係る音響素子のインピーダンス変換素子2eを構成する接合型能動素子は、図26に示すように、インピーダンス変換素子2eを構成する接合型能動素子は、第1導電型(n-型)の半導体領域からなる基体領域61と、この基体領域61に互いに離間して配置され、基体領域61よりも高不純物密度の第1導電型(n+型)の半導体領域からなる第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bをそなえる。更に、インピーダンス変換素子2eを構成する接合型能動素子は、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に位置する基体領域61の上部に、基体領域61とp-n接合を形成するように設けられた第2導電型(p+型)の半導体領域からなる表面制御電極領域63と、表面制御電極領域63の下方に基体領域61を挟んで対向し、この挟まれた第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間にチャネル領域を定義するように設けられた第2導電型(p+型)の半導体領域からなる補助制御電極領域62を備える。そして、インピーダンス変換素子2eを構成する接合型能動素子は、電位発生箇所P0に接続するように、表面制御電極領域63に金属学的に接合され、チャネルに発生する、キャリアの移動を制御する電位障壁の高さを、電位発生箇所P0の電位で制御する制御電極64を備える能動素子である。
平面図の図示を省略しているが、基体領域61の周辺には、素子分離絶縁膜16が接合型能動素子の活性領域の敷地を定義するように額縁状に設けられている。図26の断面の表現では素子分離絶縁膜16が活性領域の両側に位置しているが、第1及び第2実施形態に係る音響素子の構造と同様に、活性領域の両側に位置している素子分離絶縁膜16は、紙面の手前側及び紙面の奥で互いに連続した一体構造である。素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域のパターンの内部には、基体領域61の上面の敷地(領域)が定義され、素子分離絶縁膜16で囲まれた活性領域の上部に、第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bが配置されている。
図1Bや図18Aの平面図の中央に、二点鎖線で正六角形の電位伝達ゾーンの範囲を示したのと同様に、振動体22a1の出力面側の凸部として定義される六角形の電位伝達ゾーンに対して、接合型能動素子のチャネルは、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に挟まれた矩形の領域の内部において、表面制御電極領域63と補助制御電極領域62に挟まれた領域に形成される。活性領域となる半導体領域の内部において、接合型能動素子の第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間のチャネルに発生する、キャリア移動に対する電位障壁の高さが、表面制御電極領域63と基体領域61の間のp-n接合を介して、振動体22a1の電位伝達ゾーンから制御電極64に伝達された電位で静電的に制御される。
第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bの上には図26に示すように、層間絶縁膜が設けられている。層間絶縁膜に開孔されたコンタクトホールを介して、第1主電極領域15aには第1主電極配線25aが、第2主電極領域15bには第2主電極配線25bが接続されている。図26に示すように、制御電極64の上には導電体からなる入力信号配線65が設けられている。図26に示すように、振動体22a1の出力面側の中央凸部の先端側から、表面層を柔らかな金属とした多層構造導電体の接続プラグ29が、平坦な面を接続端面とするように埋め込まれ、振動体22a1と接続プラグ29がオーミック接触している。そして、接続プラグ29の下面である接続端面と入力信号配線65の上面が物理的に接触することにより、電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位が、インピーダンス変換素子2eを構成する接合型能動素子の制御電圧として入力される。
即ち、接続プラグ29の電位が、入力信号配線65を介して制御電極64に入力され、制御電極64の電位が、表面制御電極領域63と基体領域61の間のp-n接合を介して、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間のチャネルに発生する、キャリア移動に対する電位障壁の高さを静電的に制御する。図26に示す構造は、上側に位置する電圧発生部側チップに設けられた接続プラグ29と、下側に位置するインピーダンス変換素子側チップの入力信号配線65が、互いに物理的に接触する構造の例示である。よって、振動空洞21a1の周辺において、電圧発生部側チップに設けられた鏡面を有する直接接合用絶縁膜31と、インピーダンス変換素子側チップに設けられた鏡面を有する空洞内壁保護膜19とが、親水接合(シラノール基間の水素結合)で直接接合した構造になっている。第5実施形態の音響素子では、薄い板状の入力信号配線65を用いて、接続プラグ29を制御電極64に接続できるので、浮遊インピーダンスが削減できる。しかも、電圧発生部1aが応力強化構造を採用し高感度化及び広帯域化を達成しているので、第5実施形態に係る音響素子によれば、高感度化及び広帯域化が可能である。特に、電圧発生部1aの内部構造をミクロに検討し、発生電圧が最も高くなる特定の箇所を電位伝達ゾーンとして選び、インピーダンス変換素子2eへの入力伝達箇所としているので、高感度化が容易である。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明の第1~第5実施形態により例示的に説明してきたが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、第1~第5実施形態に係る音響素子として受信素子に焦点を当てて説明してきた。しかし、本発明の技術的思想は、受信素子に限定されるものではない。第1~第5実施形態に係る音響素子として説明してきた構造に、圧電層を圧電効果で電圧駆動するのに必要な駆動用電極を追加して、送受信兼用素子としてもよい。
或いは、その他の実施形態に係る音響素子集積回路として図27に例示するように、受信専用の単位セルと、受信専用の単位セルとは独立に配置された送信専用の単位セルを混在させて二次元アレイを構成してもよい。図27においては、白抜き表示した受信用第(i-1)列目の受信用セルX(i-1),(j-1),X(i-1),j,X(i-1),(j+1),…と受信用第i列目の受信用セルXi,(j-1),Xi,j,Xi, ,(j+1),…の間に、グレイ表示した送信用第(i-1)列目の送信用セルY(i-1), (j-1),Y(i-1),j,…が配列されている。受信用セルX(i-1),(j-1),X(i-1),j,X(i-1),(j+1),…としては、第1~第5実施形態に係る音響素子のいずれかの構造が採用可能である。送信用セルY(i-1), (j-1),Y(i-1),j,…としては周知の圧電層を圧電効果で電圧駆動する駆動用電極を有する構造が採用可能である。
又、第1~第5実施形態に係る音響素子で説明したインピーダンス変換素子は例示に過ぎず、本発明の適用範囲を限定するものではない。例えば、図28Aに示すような半導体集積回路をインピーダンス変換素子2fとして備える音響素子でも構わない。即ち、その他の実施形態に係る音響素子として、図28Dに示すような、圧電効果で非一様の電圧を発生する電圧発生部1aと、電圧発生部1aの特定の箇所(局所)の正方向及び負方向に振動する電位を制御電圧として入力して動作する「直交相補素子回路」を、インピーダンス変換素子2fとして備える場合を例示することもできる。なお、図28Aに示した「直交相補素子回路」をインピーダンス変換素子2fとして備える場合の回路構成は一例に過ぎず、図28Dに例示した回路トポロジに限定されない。直交相補素子回路は主電流を規定する4つの端子を備える。この直交相補素子回路の4つの端子を接続する回路は任意であり、例えば、通常のCMOSインバータと同様な回路構成等、種々の回路構成が可能である。断面図の図示を省略しているが、図18Bに示した断面図と同様に、図28Dに示す電圧発生部1aは、第1実施形態に係る音響素子と同様な振動体22a1及び振動体22a1の受信面(図18Bに示した構造と同様に上側の主面)に接した固定電位電極24aを有するモノモルフ型構造をなしている。
図28Dに示す電圧発生部1aの固定電位電極24aの上には、第1~第5実施形態に係る音響素子の構造と同様に、エポキシ樹脂等の固定電位電極保護膜23が設けられている。モノモルフ型構造の電圧発生部1aは非一様の発生電圧の電圧分布を有するので、振動体22a1の受信面に対向する(受信面の反対側の面となる)出力面の特定の箇所に、他の箇所より高い電圧を圧電効果で発生する。図28Dのモデル表現における中央ゾーンP0、第1周辺ゾーンP1、……、第4周辺ゾーンP4は、例えば中央ゾーンP0を中心とし、中央ゾーンP0のパターンを囲むように、第1周辺ゾーンP1, 第2周辺ゾーンP2, 第3周辺ゾーンP3, 第4周辺ゾーンP4が同心六角環状に囲んだパターンである。
その他の実施形態に係るインピーダンス変換素子2fを構成する直交相補素子回路は、nチャネル絶縁ゲート型SITである能動素子Qnと、pチャネル絶縁ゲート型SITである能動素子Qpを、互いのチャネルを共通にし、且つ互いのチャネルのキャリア移動方向を直交させて、チャネル交差型の相補型MIS集積回路を構成している。nチャネル能動素子Qnの第1主電極領域15aは、図28Dに例示した回路構成では、出力抵抗Routを介して第1電源(GND)に接続され、nチャネル能動素子Qnの第2主電極領域15bは、第1電源よりも高位の第2電源VDD1に接続されている。一方、pチャネル能動素子Qpの第3主電極領域15rは、第1電源に出力抵抗Routを介して接続され、pチャネル能動素子Qpの第4主電極領域15sが第1電源よりも低位の第3電源VDD2(=-VDD1)に接続されている。直交相補素子回路を構成するnチャネル能動素子Qn及びpチャネル能動素子Qpは、図18B及び図18Cに示した断面構造と同様に、振動体22a1の出力面側の凸部として位置する第1周辺ゾーンP0の電位を共通の制御電圧として動作する。即ち、インピーダンス変換素子2fとしての直交相補素子回路は、電圧発生部1aの振動体22a1に印加される超音波Φの圧力を、第1周辺ゾーンP0の電位として共通の十字重畳チャネルに入力し、インピーダンス変換した信号として出力するnチャネル能動素子Qn及びpチャネル能動素子Qpを備える。そして、その他の実施形態に係る音響素子を構成する直交相補素子回路は、nチャネル能動素子Qn及びpチャネル能動素子Qpの出力信号を、音響素子の出力信号とする。
nチャネル能動素子Qnは、真性半導体領域(i層)若しくは真性半導体に近い高比抵抗の半導体領域(n――層、p――層)からなる基体領域14と、この基体領域14の上部に互いに離間して配置された第2導電型(n+型)の半導体領域からなる第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bを有する。同様に、pチャネル能動素子Qpは、nチャネル能動素子Qnと共通の半導体領域からなる基体領域14と、この基体領域14の上部に互いに離間して配置された第1導電型(p+型)の半導体領域からなる第3主電極領域15r及び第4主電極領域15sを有する。図28Aに示すように第1主電極領域15aから第2主電極領域15bに向かうキャリア移動方向と、第3主電極領域15rから第4主電極領域15sに向かうキャリア移動方向は、互いに直交している。例えば、基体領域14をSiとする場合、基体領域14が不純物密度2×1014cm-3程度のn―層であっても、対向する第3主電極領域15r及び第4主電極領域15sから伸びる空乏層が互いにピンチオフする直前の状態にして基体領域14をほぼ空乏化しておいてもよい。同様に、基体領域14がp―層であっても、対向する第1主電極領域15a及び第2主電極領域15bから伸びる空乏層が互いにピンチオフする直前の状態にして基体領域14をほぼ空乏化させておいてもよい。
nチャネル能動素子Qnを構成する第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に位置する基体領域14の上面と、pチャネル能動素子Qpを構成する第3主電極領域15r及び第4主電極領域15sの間に位置する基体領域14の上面は共通のMIS界面領域となっている。断面図の図示を省略しているが、nチャネル能動素子Qn及びpチャネル能動素子Qpのそれぞれは、図18B等に示した断面構造と同様に、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間且つ第3主電極領域15r及び第4主電極領域15sの間の共通のMIS界面領域に接し、基体領域14よりも禁制帯幅の広い共通のゲート誘電体膜と、共通のゲート誘電体膜の上に設けられた共通の制御電極を備えた能動素子である。共通のゲート誘電体膜を有するnチャネル能動素子Qn及びpチャネル能動素子Qpの場合は、過剰なゲート電圧による共通のゲート誘電体膜の絶縁破壊が問題となる。このため、図28Dに示すように、nチャネル能動素子Qnとpチャネル能動素子Qpの共通の制御電極と第2電源VDD1の間には、正電圧クランプダイオードDknが接続され、共通の制御電極と第3電源VDD2の間には負電圧クランプダイオードDkpが接続されている。正電圧クランプダイオードDknと負電圧クランプダイオードDkpを共通の制御電極に接続することにより、共通のゲート誘電体膜に過剰なゲート電圧が印加されないように構成されている。なお、第1実施形態に係る音響素子の構造と同様に、共通のゲート誘電体膜や共通の制御電極を用いず、振動体22a1の出力面から突出した柱状の端部に共通のMIS界面領域をヘテロ接合してもよい。
十字重畳チャネルを構成している基体領域の周辺には、素子分離絶縁膜がnチャネル能動素子Qn及びpチャネル能動素子Qpの活性領域の敷地を定義するように額縁状に設けられている。素子分離絶縁膜で囲まれた活性領域のパターンの内部には、基体領域の上面の敷地(領域)が定義され、素子分離絶縁膜で囲まれた活性領域の上面(表面)近傍の上部に、第1主電極領域15a、第2主電極領域15b、第3主電極領域15r及び第4主電極領域15sが四角形を構成するように配置されている。図28Aの中央に、二点鎖線で正六角形の電位伝達ゾーンの範囲を示したが、振動体22a1の出力面側の凸部として定義される六角形の電位伝達ゾーンに対して、nチャネル能動素子Qnのn型チャネルは、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に挟まれた矩形の領域の表面近傍に形成される。振動体22a1の出力面側の凸部は、図28Aに二点鎖線で示したような、正六角柱状の凸部である。図18B等に示した断面構造と同様に、振動体22a1の出力面側の中央部に設けられた凸部の周りには、平行トーラス型の振動空洞21a1が、凸部を囲むように中心対称に設けられている。振動空洞21a1を構成する平行トーラスは、平面パターンが六角形となるトポロジである。凸部として定義される六角形の電位伝達ゾーンに対して、pチャネル能動素子Qpのp型チャネルが、第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間に挟まれた、nチャネル能動素子Qnと共通の矩形の領域の表面近傍に形成される。
活性領域の敷地の内部において、nチャネル能動素子Qnの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間のn型チャネルに発生する、電子の移動に対する電位障壁の高さが、図28Bに示すように振動体22a1の電位伝達ゾーンの電位を用いた静電誘導効果で制御される。図28Bの破線で示した馬の鞍状の双曲放物面(2次曲面)は、電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位VG=0場合の伝導帯の端部(底)の電位分布を示す。第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間に構成されるp-i-pフック構造がなす下向凸の電位分布と、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に構成されるn-i-nフック構造がなす上向凸の電位分布が十字型に重畳されて交差曲面を構成している。図28Bに示された交差曲面がなす2次曲面の停留点である鞍部点(saddle point)が、電子に対する電位障壁の高さとして定義される。鞍部点は、nチャネル能動素子Qnのn-i-nフック構造の方向で見れば極大値だが、pチャネル能動素子Qpのp-i-pフック構造の方向で見れば極小値となる点である。図28Bの実線で示した鞍状2次曲面は、電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位VG>0側に振動する場合の伝導帯の端部(底)の電位分布を示す。電位VG>0側に振動すれば、p-i-pフック構造とn-i-nフック構造の交差曲面での鞍部点の電位が静電誘導効果で下がる。よって、図28Bに示した電位障壁を超えるエネルギを有したフェルミディラック分布で決まる電子が、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間を流れる。この結果、電位VG<0に依存して振動する電位障壁の高さによって変化する電流Inが図28Dに示した出力抵抗Rout中を流れる。
同様に、活性領域の敷地の内部において、pチャネル能動素子Qpの第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間のp型チャネルに発生する、正孔の移動に対する電位障壁の高さが、図28Cに示すように振動体22a1の電位伝達ゾーンの電位を用いた静電誘導効果で制御される。図28Cの破線で示した鞍状2次曲面は、電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位VG=0場合の価電子帯の端部(天井)の電位分布を示す。第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間に構成されるp-i-pフック構造がなす下向凸の電位分布と、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に構成されるn-i-nフック構造がなす上向凸の電位分布が十字型に重畳されて交差曲面を構成している。図28Cの交差曲面がなす2次曲面の停留点である鞍部点が、正孔に対する電位障壁の高さとして定義される。p-i-pフック構造の「谷」となるポイントが、n-i-nフック構造の稜線からみると最も標高が高い「頂」になっている。
図28Cの実線で示した鞍状2次曲面は、電圧発生部1aの中央ゾーンP0の電位VG<0側に振動する場合の価電子帯の端部の電位分布を示す。図28Bに示す電子に対する電位障壁の高さを測る方向と、図28Cに示す正孔に対する電位障壁の高さを測る方向は逆である。電位VG<0側に振動する場合は、p-i-pフック構造とn-i-nフック構造の交差曲面がなす鞍部点で定義される正孔に対する電位障壁の高さが静電誘導効果で減少する。よって、図28Cに示した電位障壁を超えるエネルギを有したフェルミディラック分布で決まる正孔が、第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間を流れる。この結果、電位VG>0に依存して振動する電位障壁の高さによって変化する電流Ipが図28Dに示した出力抵抗Rout中を流れる。
既に、図4C等を用いて説明したとおり、固定電位電極24aを接地電位(GND)に接続した場合は、電圧発生部1aの中央電圧Vp0 ,第1周辺電圧Vp1, 第2周辺電圧Vp2 ,第3周辺電圧Vp3及び第4周辺電圧Vp4は、それぞれ0Vを中心に正方向と負方向に振動する振動波形となる。図28Dに例示したように、nチャネル能動素子Qnとpチャネル能動素子Qpの共通の制御電極は電位発生箇所P0に接続されているので、nチャネル能動素子Qnの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に定義されるn型チャネルに発生する、キャリア(電子)の移動を制御する電位障壁の高さが正方向と負方向に振動する電位による静電誘導効果で制御される。又、共通の制御電極が電位発生箇所P0に接続されているので、同時にpチャネル能動素子Qpの第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間に定義される、n型チャネルとは直交する方向のp型チャネルに発生する、キャリア(正孔)の移動を制御する電位障壁の高さも、正方向と負方向に振動する電位による静電誘導効果で制御される。
図18B等に示した断面構造と同様に、第1主電極領域15a、第2主電極領域15b、第3主電極領域15r及び第4主電極領域15sの上には層間絶縁膜が設けられている。層間絶縁膜に開孔されたコンタクトホールを介して、第1主電極領域15aには第1主電極配線25aが、第2主電極領域15bには第2主電極配線25bが接続されている。層間絶縁膜に開孔されたコンタクトホールを介して、第3主電極領域15rには第3主電極配線25rが、第4主電極領域15sには第4主電極配線25sが接続されている。更に、図18B等に示した断面構造と同様に、共通の制御電極の上には導電体からなる共通の入力信号配線が設けられているが、図28Aでは図示が省略されている。図28Dの等価回路表現で示した正電圧クランプダイオードDknに対応して、p+型のアノード領域とn型のカソード領域からなるp-n接合ダイオードが配置されている。同様に、図28Dの負電圧クランプダイオードDkpに対応して、p+型のアノード領域とn型のカソード領域からなるp-n接合ダイオードが配置されている。
図29に示す直交相補素子回路のnチャネル能動素子Qn及びpチャネル能動素子Qpは、真性半導体領域(i層)若しくは真性半導体に近い高比抵抗の半導体領域(n――層、p――層)からなる共通の基体領域を用いている点では、図28Aに示した直交相補素子回路と同様である。しかし、図29に示す直交相補素子回路は、第1導電型(p型)の第1ベース領域91と、第1ベース領域91から離間して配置された第2導電型(n型)の第2ベース領域92を、それぞれ共通の基体領域の上部に埋め込んでいる。そして、図29に示す直交相補素子回路のnチャネル能動素子Qnの第2導電型(n+型)の第1主電極領域15aは、第1ベース領域91の内部の上部に埋め込まれている。同様に、図29に示す直交相補素子回路のpチャネル能動素子Qpの第1導電型(p+型)の第3主電極領域15rは、第2ベース領域92の内部の上部に埋め込まれている。そして、基体領域の上部に第1主電極領域15aから離間して第2導電型(n+型)の第2主電極領域15bを、第3主電極領域15rから離間して第1導電型(p+型)の第4主電極領域15sを配置している。図29に示す平面レイアウトでは、第1主電極領域15aから第1ベース領域91を経由して第2主電極領域15bに向かうキャリア移動方向と、第3主電極領域15rから第2ベース領域92を経由して第4主電極領域15sに向かうキャリア移動方向は、互いに直交している。
図29に示す直交相補素子回路においては、nチャネル能動素子Qnの第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間の第1主電極領域15aの直前の第1ベース領域91に電子の移動に対する電位障壁が生成される。第1ベース領域91を設けてn-p-i-nフック構造とすることにより電子の移動に対する電位障壁が図28Aに示した構造の場合より高くなり、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間を高耐圧化できる。同様に、pチャネル能動素子Qpの第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間の第3主電極領域15rの直前の第2ベース領域92には、正孔の移動に対する電位障壁が生成される。第2ベース領域92を設けてp-n-i-pフック構造とすることにより正孔の移動に対する電位障壁が図28Aに示した構造の場合より高くなり、第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間を高耐圧化できる。
nチャネル能動素子Qnを構成する第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に位置する基体領域の上面と、pチャネル能動素子Qpを構成する第3主電極領域15r及び第4主電極領域15sの間に位置する基体領域の上面は共通のMIS界面領域となっている。断面図の図示を省略しているが、nチャネル能動素子Qn及びpチャネル能動素子Qpのそれぞれは、図18B等に示した断面構造と同様に、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間且つ第3主電極領域15r及び第4主電極領域15sの間の共通のMIS界面領域に接し、基体領域よりも禁制帯幅の広い共通のゲート誘電体膜と、共通のゲート誘電体膜の上に設けられた共通の制御電極を備えた能動素子である。図29の中央に、二点鎖線で振動体の出力面側の凸部として定義される六角形の電位伝達ゾーンを示したが、共通の制御電極のパターンは二点鎖線の領域と一致していない。共通の制御電極は電位障壁が形成される第1ベース領域91及び第2ベース領域92の上方を、少なくとも覆うような平面パターンで形成される。
そして、第1主電極領域15aの直前の第1ベース領域91に生成される電子の移動に対する電位障壁の高さが電位伝達ゾーンに電気的に接続された共通の制御電極の電位による静電誘導効果で制御される。同様に、第3主電極領域15rの直前の第2ベース領域92に生成される正孔の移動に対する電位障壁の高さが、共通の制御電極の電位による静電誘導効果で制御される。図28B及び図28Cに示した2次曲面と同様に、第3主電極領域15rと第4主電極領域15sの間に構成されるp-n-i-pフック構造の下向凸の電位分布と、第1主電極領域15aと第2主電極領域15bの間に構成されるn-p-i-nフック構造の上向凸の電位分布が十字型に重畳された交差曲面が鞍の形状を構成する。
即ち、図28B及び図28Cに示した形状と類似した交差曲面がなす2次曲面の停留点である鞍部点が、図29に示した直交相補素子回路の電子及び正孔に対する電位障壁の高さとして定義される。図29に示すレイアウトの場合は、鞍部点の位置は、図28B及び図28Cに示した形状とは異なり非対称の位置になる。鞍部点は、nチャネル能動素子Qnのn-p-i-nフック構造の方向で見れば極大値となる第1ベース領域91の近傍の点となるが、pチャネル能動素子Qpのp-n-i-pフック構造の方向で見れば極小値となる第2ベース領域92の近傍の点である。電位VG>0側に振動すれば、p-n-i-pフック構造とn-p-i-nフック構造の交差曲面での鞍部点の電位が静電誘導効果で下がる。よって、電位障壁を超えるエネルギを有したフェルミディラック分布で決まる電子が、第1主電極領域15aから第1ベース領域91を経由して第2主電極領域15bの間を流れ、電位VG<0に依存して振動する電位障壁の高さによって変化する電流が流れる。
電子に対する電位障壁の高さを測る方向と、正孔に対する電位障壁の高さを測る方向は逆である。電位VG<0側に振動する場合は、p-n-i-pフック構造とn-p-i-nフック構造の交差曲面がなす鞍部点で定義される正孔に対する電位障壁の高さが静電誘導効果で減少する。よって、電位障壁を超えるエネルギを有したフェルミディラック分布で決まる正孔が、第3主電極領域15rから第2ベース領域92を経由して第4主電極領域15sの間を流れ、電位VG>0に依存して振動する電位障壁の高さによって変化する電流が流れる。
既に説明したとおり、電圧発生部は、応力集中箇所を生成可能な応力場としての連続した振動体の構造が構成され、且つ電位伝達ゾーンとして用いる振動体の応力集中箇所に、少なくとも圧電体が設けられた構造であればよい。上記の第1~第5実施形態に係る音響素子の説明では、振動体の全体を圧電体で構成する場合を例示的に説明したが、応力集中箇所となる一部である中央凸部のみを圧電体で構成し残余の平板状の部分を非圧電体で構成してもよい。或いは、応力集中箇所として機能する中央凸部のみを強誘電体で構成し残余の平板状の部分を、焦電体(極性結晶)、強誘電体又は焦電体ではない通常の圧電体又は非圧電体で構成してもよい。更に、応力集中箇所となる中央凸部のみを焦電体(極性結晶)で構成し、残余の平板状の部分を、極性の弱い圧電体又は非圧電体で構成してもよい。なお、応力集中箇所は、応力分布強化構造に依存するので、中央凸部のみが応力集中箇所ではないことに留意が必要である。又、応力集中箇所が複数箇所に存在し、複数箇所を電位伝達ゾーンとする場合は、複数の電位伝達ゾーンに対応する場所に、少なくとも圧電体を配置した構造であればよい。
図30の上段の破線は、焦電体であるAlNを振動体の全部に用いた平行トーラス型の場合の中央電圧Vp0 の感度曲線で、下段の破線は、強誘電体であるPZTを振動体の全部に用いた平行トーラス型の場合の中央電圧Vp0 の感度曲線を示す。いずれも直径Dに対する中央凸部の高さHのアスペクト比H/D=1の場合である。即ち、上段の破線は、平行トーラスの中央に位置する柱(凸部)の直径D=1.2μmとし、平板状のメンブレン部の厚さt22a1=1.2μmとした、AlN/AlN一様構造の場合の電圧感度の周波数依存性を示す。AlN/AlN一様構造の場合は、ピーク周波数7.1MHzの感度曲線となり、中央電圧Vp0 の最大電圧感度が47.54μV/Pa程度である。一方、図30の上段側に示した実線は、中央の柱(凸部)のみを直径D=1.2μmの焦電体AlNとし、平板状のメンブレン部を厚さt22a1=1.2μmのSi3N4膜としたSi3N4/AlN複合構造の場合の電圧感度の周波数依存性を示す。Si3N4/AlN複合構造もアスペクト比H/D=1としている。
Si3N4膜はα相が三方晶系でβ相が六方晶系であるので、結晶群の性質からは圧電性を有する誘電体膜とされている。しかし、Si3N4膜の圧電性は成膜方法に依存し、例えばレーザ励起CVD(LICVD)法の場合は圧電性を示すが、多くの場合、Si3N4膜の圧電性は小さい。図30に結果を示したシミュレーションではSi3N4膜の圧電性は無視している。Si3N4/AlN複合構造の場合は、ピーク周波数7.1MHzの感度曲線となる。Si3N4/AlN複合構造の場合は、中央電圧Vp0 の最大電圧感度が77.5μV/Pa程度になり、電圧感度が約1.6倍に増大することが分かる。Si3N4膜の横方向圧電効果がAlNの縦方向圧電効果に加算されていると考えられる。
図30の下段の破線は、平行トーラスの中央に位置する柱(凸部)を直径D=2.4μmとし、中央凸部以外の振動体の平板状のメンブレン部を厚さt22a1=2.4μmとした、PZT/PZT一様構造の場合の電圧感度の周波数依存性を示す。上段側に破線で示したAlN/AlN一様構造に比し、下段の破線は中央の柱(凸部)の直径Dが太いので、中央電圧Vp0 の最大電圧感度が26.6μV/Pa程度で、AlN/AlN一様構造に比し低くなっている。更に、図30では縦軸を電圧感度としているので、AlNとPZTの比誘電率の差が、最大電圧感度の減少に影響していると考えられる。PZT/PZT一様構造の場合のピーク周波数7.1MHzで、AlN/AlN一様構造のピーク周波数とほぼ同一である。一方、下段の実線は、中央の柱(凸部)のみを、直径D=1.8μmのPZTとし、平板状のメンブレン部を厚さt22a1=1.2μmのSi3N4膜としたSi3N4/PZT複合構造の場合の電圧感度の周波数依存性を示す。Si3N4/PZT複合構造もアスペクト比H/D=1としている。Si3N4/PZT複合構造の場合は、中央の柱(凸部)の直径DをPZT/PZT一様構造の場合に比し細くしても、中央電圧Vp0 の最大電圧感度が20.5μV/Pa程度であり、電圧感度が約0.77倍に減少することが分かる。Si3N4/PZT複合構造の場合は、ピーク周波数が6.8MHzと少し低周波側にシフトしている。Si3N4/PZT複合構造の場合は、Si3N4膜の横方向圧電効果がPZTの縦方向圧電効果を減らす方向に寄与していると考えられるが、平板状のSi3N4膜を用いた複合構造であっても振動体が構成できることが分かる。
振動体の全体をPZTで構成する場合でも、混晶であるPZTのジルコン酸鉛(PbZrO3)の組成を、振動体の構成位置によって変化させ、PZTの圧電定数を場所毎に分布を持たせ、応力集中箇所の圧電効果を高くして非一様な圧電効果を有する振動体を構成してもよい。或いはPZT-4,PZT-5,PZT-5A,PZT-5H,PZT-8等を場所毎に使い分け、例えば、PZT-5Hを応力集中箇所に用いるようにしてもよい。PZTのジルコン酸鉛の組成を、厚さ方向に沿って変化させるのは、CVDの途中で原料ガスの流量を変化させる等により可能である。
なお、図18Cに示すような第2実施形態の変形例に係る音響素子の構造において、中央凸部をAlNで構成する場合は、中央凸部をPZTで構成した場合に比して中央凸部側の容量が小さくなる。図3Aに示す等価回路から分かるように、MISトランジスタを駆動するゲート電圧は、中央凸部側の容量Cdと、図3Aの下段に示したMISトランジスタのゲート容量の容量比に依存する。よって、図30に示した感度曲線の効果とあいまって、第2実施形態の変形例に係る音響素子等の構造においては、中央凸部をAlNで構成する場合の方が、中央凸部をPZTで構成する場合に比して有利となる。
上記においてその一部を、その他の実施の形態として例示したとおり、本発明は、第1~第5実施形態の説明に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。