合わせ構造体におけるの光着色現象は、透明基材の間に介在する中間膜に分散する複合タングステン酸化物微粒子(以下、単にMWO微粒子ともいう)の価数変化が一因と考えられている。具体的には、中間膜に紫外線が照射されたときに、その樹脂成分が分解し、水素ラジカルが発生することがある。この水素ラジカルがMWO微粒子にドープされて、電荷補填によりMWO微粒子の価数が変化することがある。価数変化によると、MWO微粒子の光透過率が変動し、それにともない中間膜が着色してしまうことがある。また別の要因として、中間膜が大気中に曝されたときに、例えば大気中から中間膜中に浸透した水分により、MWO微粒子の表面が分解され、その光の透過率を変動させることも考えられる。
このことから、光着色現象を抑制する観点からMWO微粒子に表面処理を施し、MWO微粒子の表面に被覆膜を形成することに着目した。この被覆膜としては、例えば金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物、もしくはこれらの加水分解生成物から形成されるものがある。この被覆膜によれば、中間膜が高温・高湿度環境下に曝されたときに、可視光透過率の変動を抑制することができる。ただし、これらの被覆膜では、紫外線照射による着色を十分に抑制できず、改善の余地がある。
この点について本発明者等がさらに検討を行い、表面処理として、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物だけでなく、さらに、シランカップリング剤などの金属カップリング剤を用いて表面処理を行うとよいことを見出した。具体的には、MWO微粒子を金属キレート化合物などの加水分解生成物で被覆した表面処理複合タングステン酸化物微粒子を、シランカップリング剤で表面処理することにより、複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子とするとよいことを見出した。これにより、金属キレート化合物などの加水分解生成物から形成される被覆膜を、さらに金属カップリング剤で被覆することができ、被覆膜を微粒子表面に均一に、かつ強固に形成することができる。このように金属カップリング剤で表面処理した被覆膜によれば、合わせ構造体における中間膜において紫外線照射による光着色現象を抑制することができる。
本発明は、上記知見に基づいて成されたものである。
なお、以下では、MWO微粒子の表面に、金属キレート化合物などを用いて表面処理することにより被覆膜を形成した表面処理複合タングステン酸化物微粒子を、単に、表面処理MWO微粒子、この表面処理MWO微粒子に、さらに金属カップリング剤を用いて表面処理した複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子を、単に、複合表面処理MWO微粒子ともいう。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態の合わせ構造体について説明する。
本実施形態の合わせ構造体は、複数の透明基材と、複数の透明基材の間に介在して設けられる少なくとも1つの中間膜とを備えて構成される。中間膜は、複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子とアイオノマー樹脂とを少なくとも含む中間膜組成物から形成される。以下では、<1>複合タングステン酸化物微粒子、<2>表面処理複合タングステン酸化物微粒子、<3>複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子、<4>複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子の製造、<5>中間膜組成物、<6>中間膜、<7>合わせ構造体、について説明する。
<1>複合タングステン酸化物微粒子
まず、表面処理を施す前の複合タングステン酸化物微粒子について説明する。
複合タングステン酸化物微粒子(MWO微粒子)は、タングステン酸化物(WO3)中に、自由電子を生成する陽性元素(以下、元素Mともいう)を添加して構成され、一般式MxWyOz(ただし、Mは陽性元素、Wはタングステン、Oは酸素)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子である。複合タングステン酸化物微粒子は、酸素量の制御と元素Mの添加により赤外線吸収特性を示し、特に1000nm付近で強い吸収特性を示す。
また、MWO微粒子において、元素Mは、自由電子を生成できるものであれば特に限定されない。MWO微粒子の結晶構造を六方晶とする観点からは、元素Mは、Cs、K、Rb、In、Tl、Ba、Li、Ca、Sr、FeおよびSnのうちから選択される1種類以上の元素であることが好ましい。
また、一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物において、元素M、タングステンおよび酸素の各組成範囲は特に限定されないが、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y<4の関係を満たすことが好ましい。
上記組成について、まず、元素Mの添加量を示すx/yの値について説明する。
x/yの値が0.001以上であれば、複合タングステン酸化物において十分な量の自由電子が生成され、目的とする赤外線吸収効果を得ることができる。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線吸収効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1以下であれば、複合タングステン酸化物微粒子中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
次に、酸素量の制御を示すz/yの値について説明する。
z/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述したWyOzで表記されるタングステン酸化物と同様の機構が働くことに加え、3.0≦z/y<4や2.0≦z/y≦2.2においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給がある。このため、2.0≦z/y<4.0が好ましく、より好ましくは2.2≦z/y≦3.5、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.5である。
また、MWO微粒子は、可視光領域での透過性と赤外線吸収特性を向上させる観点からは、六方晶の結晶構造を有することが好ましい。この点について図1を用いて説明する。図1は、六方晶を有する複合タングステン酸化物の結晶構造を示す模式図である。
図1において、符号11で示すWO6単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、この空隙中に、符号12で示す元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して、六方晶の結晶構造が構成される。可視光領域における光の透過を向上させ、赤外領域における光の吸収を向上させる効果を得るためには、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1を用いて説明した単位構造が含まれていれば良く、当該複合タングステン酸化物微粒子が結晶質であっても非晶質であっても構わない。
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、上述した元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
なお、複合タングステン酸化物の結晶構造は、六方晶に限定されず、正方晶や立方晶でもよい。結晶構造によって、赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶、正方晶、立方晶の順である。従って、より可視光領域の光を透過し、より赤外線領域の光を吸収する用途には、六方晶の複合タングステン酸化物を用いることが好ましい。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によって変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
MWO微粒子の結晶子径は、特に限定されないが、より高い赤外線吸収特性を得る観点からは、1nm以上800nm以下であることが好ましく、1nm以上200nm以下であることがより好ましく、1nm以上100nm以下であることがさらに好ましく、10nm以上70nm以下であることが最も好ましい。ここで、結晶子径は、粉末X線回折法(θ―2θ法)によるX線回折パターンの測定と、リートベルト法による解析を用いて測定されるものである。X線回折パターンの測定には、例えばスペクトリス株式会社PANalytical製の粉末X線回折装置「X’Pert-PRO/MPD」などを用いて行うことができる。
MWO微粒子を液体媒質に分散させたときの分散粒子径は、その使用目的に応じて適宜変更することができる。例えば透明性が求められる場合であれば、分散粒子径が800nm以下であることが好ましい。分散粒子径を800nm以下とすることにより、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができる。
また、特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに微粒子による散乱を考慮することが好ましい。微粒子による散乱を低減する観点からは、分散粒子径を200nm以下とすることが好ましく、100nm以下とすることがより好ましい。この理由は、粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm~780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、中間膜が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるためである。すなわち、分散粒子径が200nm以下になると、幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。
さらに分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
分散粒子径を800nm以下とすることにより、複合表面処理MWO微粒子を液体媒質中に分散させた赤外線吸収微粒子分散体のヘイズ値は、可視光透過率85%以下でヘイズ30%以下とすることができる。ヘイズが30%よりも大きい値であると、曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られない。
なお、分散粒子径は、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS-8000等を用いて測定することができる。
<2>表面処理複合タングステン酸化物微粒子
続いて、上述したMWO微粒子に、金属キレート化合物などを用いた表面処理を施した表面処理複合タングステン酸化物微粒子(表面処理MWO微粒子)について説明する。
表面処理MWO微粒子は、MWO微粒子に金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物を用いて表面処理することで得られる。この表面処理では、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物における加水分解構造を加水分解し、得られる加水分解生成物を、MWO微粒子の表面に付着させることで、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、および金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物から選択される少なくとも1種類以上を含む被覆膜を形成することができる。なお、ここで、加水分解生成物とは、金属キレート化合物などにおける加水分解構造の全部が加水分解したものだけでなく、加水分解構造の一部が加水分化した部分加水分解生成物や加水分解反応を経て自己縮合した重合物などを含む。
なお、被覆膜には、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物が未反応のまま含まれることがある。例えば、被覆膜の形成に際し、アルコール等の有機溶剤が介在するような反応系においては、一般的に化学量論組成上、必要十分な水が系内に存在していたとしても、有機溶剤の種類や濃度により、出発物質となる金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解構造(例えばアルコキシ基やエーテル結合、エステル結合など)の全てが加水分解するわけではない。そのため、後述する表面処理の条件によっては、加水分解後にもその分子内に炭素Cを取り込んだアモルファス状態になることがある。この結果、被覆膜には、金属キレート化合物などの未反応物が含まれることがあるが、微量であれば特に問題とはならない。
<2-1>金属キレート化合物
被覆膜を形成するための金属キレート化合物は、金属および加水分解構造を有しており、加水分解によりMWO微粒子の表面に付着できるような加水分解生成物を形成する。金属キレート化合物に含まれる金属としては、複合表面処理MWO微粒子の化学的安定性を向上させる観点からは、Al、Zr、Ti、SiおよびZnの少なくとも1つを含むことが好ましい。また、加水分解構造としては、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することが好ましい。具体的には、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネートおよび金属カルボキシレートのいずれかであることが好ましい。
金属キレート化合物としては、具体的には以下のものを用いることができる。
アルミニウム系のキレート化合物としては、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート、モノ-sec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムアルコレートまたはこれら重合物、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、ステアリルアセトアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等、を例示することができる。
これらの化合物は、アルミニウムアルコレートを非プロトン性溶媒や、石油系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤等に溶解し、この溶液に、β-ジケトン、β-ケトエステル、一価または多価アルコール、脂肪酸等を加えて、加熱還流し、リガンドの置換反応により得られた、アルコキシ基含有のアルミニウムキレート化合物である。
ジルコニア系のキレート化合物としては、ジルコニウムエチレート、ジルコニウムブチレートなどのジルコニウムアルコレートまたはこれら重合物、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等、を例示することができる。
チタン系のキレート化合物としては、メチルチタネート、エチルチタネート、イソプロピルチタネート、ブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネートなどのチタンアルコレートやこれら重合物、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等、を例示することができる。
シリコン系のキレート化合物としては、一般式:Si(OR)4(但し、Rは同一または異種の炭素原子数1~6の一価炭化水素基)で示される4官能性シラン化合物またはその加水分解生成物を用いることができる。4官能性シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。さらに、これらアルコキシシランモノマーのアルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解し、シラノール(Si-OH)基となったシランモノマー(あるいはオリゴマー)、および、加水分解反応を経て自己縮合した重合体の適用も可能である。
また、4官能性シラン化合物の加水分解生成物としては、アルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解して、シラノール(Si-OH)基となったシランモノマー、4~5量体のオリゴマー、および、重量平均分子量(Mw)が800~8000程度の重合体(シリコーンレジン)が挙げられる。なお、アルコキシシランモノマー中のアルコキシシリル基(Si-OR)は、加水分解反応の過程において、その全てが加水分解してシラノール(Si-OH)になるわけではない。
亜鉛系のキレート化合物としては、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛などの有機カルボン酸亜鉛塩、アセチルアセトン亜鉛キレート、ベンゾイルアセトン亜鉛キレート、ジベンゾイルメタン亜鉛キレート、アセト酢酸エチル亜鉛キレート等、を好ましく例示することができる。
上記金属キレート化合物の中でも、特にAlを含むものが好ましい。Al系の金属キレート化合物によれば、Ti系やZn系ほど加水分解反応が速すぎず、またZr系よりも加水分解反応が速いため、加水分解反応を制御しやすく、MWO微粒子の表面に被覆膜を均一に形成しやすい。その結果、被覆膜の化学的安定性をより高くすることができる。しかも、生産コストを低減でき、さらには安全性にも優れている。
<2-2>金属環状オリゴマー化合物
金属環状オリゴマー化合物は、金属および加水分解構造を有する環状オリゴマーである。複合表面処理MWO微粒子の化学的安定性を向上させる観点からは、Al、Zr、Ti、SiおよびZnのいずれかを含むことが好ましい。また、加水分解構造としては、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することが好ましい。具体的には、金属環状オリゴマー化合物は、Al系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系の環状オリゴマー化合物の少なくとも1つであることが好ましい。これらの中でも、環状アルミニウムオキサイドオクチレート等、の環状アルミニウムオリゴマー化合物が好ましい。
<2-3>被覆膜の厚さ
表面処理MWO微粒子における被覆膜の厚さは、特に限定されないが、0.5nm以上100nm以下であることが好ましい。0.5nm以上とすることにより、複合表面処理MWO微粒子の化学安定性を向上させて、耐候性を向上させることができる。一方、100nm以下とすることにより、中間膜において透明性や赤外線吸収特性などの光学的特性を高く維持することができる。耐候性および光学的特性をより高い水準で両立する観点からは、被覆膜の厚さは、0.5nm以上20nm以下であることがより好ましく、1nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。なお、被覆膜の厚さは、透過型電子顕微鏡で測定することができ、MWO微粒子の格子縞(結晶中の原子の並び)のないところが被覆膜の厚さに相当する。
なお、被覆膜を形成する金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の含有量は、上記厚さを満たせば特に限定されないが、MWO微粒子100質量部に対し35質量部以上であることが好まく、40質量部以上150質量部以下がさらに好ましい。この含有量は、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物に由来する金属元素に換算した含有量であり、後述の実施例に示すように、ICP発光分光分析に基づいて測定される。
<3>複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子
続いて、上述した表面処理MWO微粒子に、金属カップリング剤を用いた表面処理を施した複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子(複合表面処理MWO微粒子)について説明する。
複合表面処理MWO微粒子は、表面処理MWO微粒子に金属カップリング剤を用いて表面処理をさらに施すことで得られる。この表面処理では、表面処理MWO微粒子の表面に設けられる被覆膜上に金属カップリング剤を付着させ、金属カップリング剤を含む被覆膜を形成することができる。これにより、被覆膜を、その厚さを均一に、かつ、より強固に形成することができる。
<3-1>金属カップリング剤
金属カップリング剤としては、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物を用いて形成される被覆膜の表面に付着できるようなものであれば、特に限定されない。金属カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤(チタネートカップリング剤)、アルミネート系カップリング剤(アルミネートカップリング剤)等を用いることができる。なお、金属カップリング剤は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤としては特に制限するものではないが、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリイルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を好適に用いることができる。
チタネート系カップリング剤としても特に制限するものではないが、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ-2-エチルヘキソキシドチタン、テトラキス(メトキシプロポキシ)チタン、テトラフェノキシチタン、テトラベンジロキシチタン、テトラフェニルエトキシチタン、テトラフェノキシエトキシチタン、テトラナフチロキシチタン、テトラ-2-エチルヘキソキシチタン、モノエトキシトリイソプロポキシチタン、ジイソプロポキシジイソブトキシチタン、アリロキシ(ポリエチレンオキシ)トリスイソプロポキシチタン、チタニウムクロライドトリイソプロポキサイド、チタニウムジクロライドジエトキサイド、チタニウム2-エチルヘキソキサイド、チタニウムヨードトリイソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムn-ノニロキサイド、チタニウムテトラステアリルオキサイド、チタニウムトリイソステアロイルモノイソプロポキサイド等を好適に用いることができる。
アルミネート系カップリング剤としても特に制限するものではないが、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等を好適に用いることができる。
金属カップリング剤は、シランカップリング剤を含むことが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
また、中間膜において透明性をより向上させる観点からは、金属カップリング剤は官能基としてエポキシ基およびアミノ基の少なくとも1つを有することが好ましい。このような金属カップリング剤によれば、複合表面処理MWO微粒子の表面に官能基を導入し、この官能基による立体障害により、複合表面処理MWO微粒子同士の凝集を抑制することができる。つまり、中間膜において複合表面処理MWO微粒子の分散性を向上させることができる。これにより、中間膜の透明性をより向上させることができる。
エポキシ基やアミノ基をその構造中に含有するシランカップリング剤としては例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シランなどを好適に用いることができる。
<3-2>金属カップリング剤の被覆量
また、複合表面処理MWO微粒子における金属カップリング剤の含有量は、特に限定されないが、中間膜に要求される可視光透過率や複合表面処理MWO微粒子の耐候性や分散性に応じて適宜変更するとよい。金属カップリング剤の含有量としては、MWO微粒子100質量部に対し20質量部以上であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上60質量部以下がさらに好ましい。なお、この含有量は、後述の実施例に示すように、ICP発光分光分析に基づいて測定される。
<4>複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子の製造
次に、複合表面処理MWO微粒子の製造方法について説明する。複合表面処理MWO微粒子は、MWO微粒子に対して、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物を用いた表面処理を行った後、金属カップリング剤を用いた表面処理をさらに行うことにより得られる。具体的には、以下のとおりである。
<4-1>複合タングステン酸化物微粒子分散液の調製工程
まず、MWO微粒子を含む微粒子粉末を液体媒質に添加し分散させて、MWO微粒子分散液を調製する。ここでは、MWO微粒子を予め細かく粉砕したうえで、液体媒質に添加するとよい。もしくは、微粒子粉末を液体媒質に添加した後に、粉砕・分散処理を施すのが良い。これにより、MWO微粒子の凝集を抑制し、MWO微粒子を液体媒質中に単分散させることができる。MWO微粒子を単分散させることで、後述する表面処理の際、MWO微粒子のそれぞれに対して均一に表面処理を施し、被覆膜を均一な厚さに形成することが可能となる。また、MWO微粒子の凝集体により中間膜の透明性が低下することを抑制することができる。
MWO微粒子分散液を調製する際に使用する液体媒質としては、例えば水や有機溶媒を用いることができる。有機溶剤としては、例えばアルコール系、ケトン系、グリコール系等の室温で水に溶解する溶剤であれば良く、種々のものを選択することが可能である。この中でも、液体媒質としては水が好ましい。後述するように、液体媒質として水を使用することにより、被覆膜を高密度に形成することができる。
なお、MWO微粒子分散液において、MWO微粒子の添加量は特に限定されないが、MWO微粒子が液体媒質に分散する分散濃度が0.01質量%以上80質量%以下となるように調整することが好ましい。このような分散濃度とすることにより、MWO微粒子分散液のpHを8以下とすることができ、液体媒質中でMWO微粒子を静電反発により分散させた状態を保持しやすくできる。
また、MWO微粒子を含む粉末の粉砕・分散処理の具体的方法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。その中でも、ビーズ、ボール、オタワサンドといった媒体メディアを用いた、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体攪拌ミルで粉砕・分散処理を行うことは、所望の分散粒子径への到達時間が短いことから好ましい。
<4-2>被覆膜形成用分散液の調製工程
次に、MWO微粒子の表面に被覆膜を形成するために、被覆膜形成用分散液を調製する。
具体的には、まず、被覆膜を形成するための表面処理剤として、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物を準備する。これらはそのまま使用してもよいが、MWO微粒子分散液に添加する際に、時間当たりの添加量を調整するために、溶剤で希釈して使用してもよい。希釈に用いる溶剤としては、表面処理剤と反応せず、MWO微粒子分散液に含まれる液体媒質との相溶性が高いものが好ましい。具体的には、アルコール系、ケトン系、グリコール系等を好ましく使用することができる。
続いて、MWO微粒子分散液に、所定量の表面処理剤を所定時間をかけて添加する。金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物はMWO微粒子分散液に添加されて加水分解することで、加水分解生成物、もしくはその重合物になる。加水分解生成物や重合物がMWO微粒子の表面に付着することで、加水分解生成物およびその重合物の少なくとも一方を含む被覆膜が形成される。これにより、表面処理MWO微粒子を含む分散液を得る。
表面処理剤の添加は、MWO微粒子分散液を攪拌混合しながら行うとよい。攪拌混合により、MWO微粒子の凝集を抑制し、単分散の状態を維持することができる。これにより、MWO微粒子の凝集体の表面に被覆膜を形成することを抑制し、個々のMWO微粒子の表面に加水分解生成物もしくは重合物を均一かつ強固に付着させることができる。この結果、透明性を低下させる粗大粒子の形成を抑制するとともに、緻密で高密度な被覆膜を形成することができる。
金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、MWO微粒子100質量部に対して、金属元素換算で0.05質量部以上300質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。添加量を0.1質量部以上とすることにより、被覆膜によりMWO微粒子の化学的安定性を向上させることができる。一方、添加量を300質量部以下とすることにより、MWO微粒子に対して加水分解生成物やその重合物が過剰に付着することを抑制することができる。また、表面処理による耐湿熱性の向上が飽和せず、被覆効果の向上が望める。さらに、MWO微粒子に対して加水分解生成物や重合物の被覆量が過剰になることで、媒質除去時に加水分解生成物などを介してMWO微粒子同士が造粒し易くなることを回避することができる。この結果、造粒による透明性の低下を抑制し、良好な透明性を担保することができる。しかも、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の過剰による、添加量および処理時間の増加による生産コスト増加も回避できる。
なお、液体媒質として水を用いたMWO微粒子分散系において、金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物、これらの加水分解生成物や加水分解生成物の重合物は、表面処理剤の添加開始直後は金属イオンにまで分解されることもあるが、飽和水溶液となったところで、金属イオン迄の分解は終了する。
また、MWO微粒子分散液の液体媒質として水を用いる場合、有機溶媒を用いる場合と比較して、表面処理剤を添加した際に、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解を速やかに行うことができる。そのため、金属キレート化合物などの加水分解反応が完了した後に、生成した加水分解生成物の重合反応を進めることが可能となる。これにより、金属キレート化合物などが加水分解しきれずに、被覆膜に取り込まれることを抑制し、未反応の金属キレート化合物などに由来する炭素の混入量を低減することができる。炭素の混入量を低減することで、被覆膜を高密度に形成することができる。
また、被覆膜に存在する未反応の表面処理剤に由来する炭素の濃度は、特に限定されないが、被覆膜を高密度に形成する観点からは、0.2質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。
一方、MWO微粒子分散液が液体媒質として有機溶媒を含む場合は、MWO微粒子分散液を混合攪拌しながら、表面処理剤とともに純水を並行滴下するとよい。このとき、反応速度に影響する媒質温度や、表面処理剤と純水との滴下速度を適宜に制御することが好ましい。液体媒質として有機溶媒を用いることで、MWO微粒子分散液に含まれる水分量を低減することができる。
<4-3>被覆膜形成用分散液の調製後の処理工程
被覆膜形成用分散液の調製により得られた、表面処理MWO微粒子を含む分散液は、後述する金属カップリング剤による被覆工程にそのまま使用してもよく、加熱処理してもよい。
表面処理MWO微粒子は、さらに加熱処理を施して被覆膜の密度や化学的安定性を高めるといった操作が必要なく、そのまま使用してもよい。後述するケイ素化合物の添加で耐熱性を発揮できるからである。
一方、表面処理MWO微粒子を含む分散液は、分散液から表面処理MWO微粒子を得る目的、表面処理MWO微粒子の粉末を乾燥させる目的、等により、加熱処理してもよい。加熱処理する場合、加熱処理温度が、表面処理MWO微粒子が強く凝集して強凝集体を形成する温度を超えないように留意する。
これは、最終的に得られる複合表面処理MWO微粒子には、合わせ構造体の用途から、多くの場合は透明性が求められるためである。これらの凝集体が存在すると、合わせ構造体を作製したときに、曇り度(ヘイズ)の高いものが得られてしまうこととなる。もし強凝集体を形成する温度を超えて加熱処理した場合、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の透明性を確保するためには、当該強凝集体を乾式または/および湿式で解砕して再分散させることとなる。しかし、当該解砕して再分散させる際、表面処理MWO微粒子の表面にある被覆膜が傷付き、場合によっては一部の被覆膜が剥離し、当該微粒子の表面が露出することも考えられる。
以上、説明したように、表面処理MWO微粒子は、混合攪拌後の処理の後に加熱処理を必要としないので強凝集を起こさず、従って強凝集を解砕するための分散処理が不要、または短時間で済む。この結果、本実施形態の表面処理MWO微粒子における被覆膜は傷付くことなく、個々のMWO微粒子を被覆したままとなる。
<4-4>金属カップリング剤による被覆工程
次に、MWO微粒子の表面に被覆膜が形成された表面処理MWO微粒子に対して、表面処理剤として金属カップリング剤を用いて表面処理を施す。
具体的には、まず、表面に被覆膜を備える表面処理MWO微粒子と、液体媒質と、金属カップリング剤とを混合し、分散・破砕処理する。これにより、金属カップリング剤を、MWO微粒子の表面に存在する被覆膜に付着させる。これにより、金属カップリング剤が付着する被覆膜を備える複合表面処理MWO微粒子を含む分散液を得る。
得られた分散液は、そのまま使用してもよいが、必要に応じて、上述した乾燥方法により、液体媒質を揮発させて、複合表面処理MWO微粒子を含む分散粉としてもよい。
金属カップリング剤の添加量は、特に限定されない。好ましくは、複合表面処理MWO微粒子における金属カップリング剤の含有量が0.01質量%以上0.50質量%以下となるように、金属カップリング剤の添加量を適宜調整するとよい。これにより、複合表面処理MWO微粒子の化学的安定性を向上させつつ、中間膜において透明性を高く維持することができる。
金属カップリング剤による被覆工程で用いる液体媒質としては、液体媒質を乾燥させて複合表面処理MWO微粒子を得る観点から、沸点が低く、揮発させやすいものが好ましい。具体的には、沸点が120℃以下である有機溶媒が好ましい。揮発させやすい有機溶媒を用いることにより、乾燥時間を短縮して、複合表面処理MWO微粒子の生産性を向上させることができる。また、乾燥させたときに得られる分散粉において、有機溶媒の残留を抑制することができる。この結果、後述する中間膜の作製の際に、中間膜内での気泡の発生を抑制することができる。
液体媒質としては、具体的には、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、エタノール等を好適に用いることができる。
以上により、複合表面処理MWO微粒子を得ることができる。
<5>中間膜組成物
続いて、中間膜を形成するための中間膜組成物について説明する。
本実施形態の中間膜組成物は、上述した複合表面処理MWO微粒子と、アイオノマー樹脂と、を少なくとも含み、必要に応じて、その他の添加剤を含む。中間膜組成物は、複合表面処理MWO微粒子と、アイオノマー樹脂と、必要に応じて、その他の添加剤とを混合して混練することにより得られる。以下、アイオノマー樹脂およびその他の添加剤について説明する。
<5-1>アイオノマー樹脂
アイオノマー樹脂は、中間膜組成物のベースポリマとなる。アイオノマー樹脂は、透明基材に対して高い密着性を得ることができる。このため、合わせ構造体において透明基材の間に中間膜を介在させるときに、中間膜と透明基材との密着性を高めることができる。
アイオノマー樹脂としては特に限定されるものではなく、公知のさまざまなアイオノマー樹脂を用いることができ、中間膜の使用用途等に応じて任意に樹脂を選択することができる。アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレン系アイオノマーや、スチレン系アイオノマー、アイオノマーエラストマー、パーフルオロカーボンアイオノマー、ウレタンアイオノマー等が知られており、上述のように用途や要求される性能等に応じて任意のアイオノマー樹脂を選択して用いることができる。透明基材との密着性の観点からは、アイオノマー樹脂はエチレン系アイオノマーを含有することがより好ましく、アイオノマー樹脂はエチレン系アイオノマーであることがさらに好ましい。なお、中間膜組成物に用いるアイオノマー樹脂は1種類のみとすることもできるが、2種類以上のアイオノマー樹脂を組み合わせて用いることもできる。
また、アイオノマー樹脂に含まれる金属イオンについても特に限定されるものではなく、例えば、亜鉛、マグネシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムから選択される1種類以上の金属イオンを含有するアイオノマー樹脂を用いることができる。特に、亜鉛イオンを含有するアイオノマー樹脂を好ましく用いることができる。
アイオノマー樹脂としては具体的には例えば、エチレン・アクリル酸・アクリル酸エステル共重合体の金属元素アイオノマー、エチレン・アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体の金属元素アイオノマー、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体の金属元素アイオノマー、エチレン・メタクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体の金属元素アイオノマーなどが挙げられる。なお、いずれのアイオノマー樹脂においても含まれる金属イオンは特に限定されず、例えば亜鉛、マグネシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムから選択される1種類以上の金属のイオンを含有することができる。
アイオノマー樹脂としてより具体的には例えば、Dupont社のサーリン(Surlyn)(登録商標)シリーズ、三井・デュポンポリケミカル社のハイミラン(Hi-Milan)(登録商標)シリーズ、ExxonMobilChemical社のIOTEK(登録商標)シリーズ等を好ましく用いることができる。
<5-2>その他の添加剤
中間膜組成物には、上述した成分以外に、必要に応じて、その他の添加剤が含まれていてもよい。以下、その他の添加剤について説明する。
(金属カップリング剤)
中間膜組成物には、MWO微粒子の表面処理とは別に、さらに金属カップリング剤を添加して分散させてもよい。この金属カップリング剤としては、上述したものを使用することができる。また、その添加量は、中間膜の化学的安定性や光学的特性を損ねない範囲で適宜調整するとよい。
(分散剤)
中間膜において、その製造過程において複合表面処理MWO微粒子の凝集を抑制して分散性を維持するため、中間膜組成物には分散剤が含まれていてもよい。分散剤としては特に限定されず、中間膜の製造条件等に応じて任意に選択することができる。例えば、示差熱・熱重量測定装置(以下、TG-DTAともいう)を用いて測定される熱分解温度が250℃以上あって、ウレタン主鎖、アクリル主鎖、スチレン主鎖から選択されるいずれかの主鎖、あるいはウレタン、アクリル、スチレンから選択される2種類以上の単位構造が共重合した主鎖を有する分散剤であることが好ましい。ここで、熱分解温度とはTG-DTAを用いJISK7120に準拠した測定において、当該分散剤の熱分解による重量減少が始まる温度である。
分散剤の熱分解温度が250℃以上の場合、アイオノマー樹脂との混練時に分散剤が分解することを抑制でき、分散剤の分解に起因した中間膜の褐色着色、可視光透過率の低下等を抑制し、本来の光学特性が得られない事態をより確実に回避できるためである。
また、分散剤は、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基から選択される1種類以上を官能基として有することが好ましい。上述のいずれかの官能基を有する分散剤は、複合表面処理MWO微粒子の表面に吸着し、この微粒子の凝集を防ぎ、中間膜中で表面処理複合タングステン酸化物微粒子をより均一に分散させることができるため、好適に用いることができる。
上述のいずれかの官能基を有する分散剤としては具体的には例えば、カルボキシル基を官能基として有するアクリル-スチレン共重合体系分散剤、アミンを含有する基を官能基として有するアクリル系分散剤等が挙げられる。官能基にアミンを含有する基を有する分散剤は、分子量Mw2000~200000、アミン価5~100mgKOH/gのものが好ましい。また、カルボキシル基を有する分散剤では、分子量Mw2000~200000、酸価1~50mgKOH/gのものが好ましい。
分散剤の添加量は特に限定されるものではないが、例えば複合表面処理MWO微粒子100質量部に対し10質量部以上1000質量部以下となるように添加することが好ましく、30質量部以上400質量部以下となるように添加することがより好ましい。
(紫外線吸収剤)
中間膜組成物には、紫外線吸収剤を添加してもよい。中間膜は、複合表面処理MWO微粒子を含むことで、主に赤外領域の光を遮蔽することができるが、さらに紫外線吸収剤を含むことで、紫外領域の光を遮蔽することができる。これにより、中間膜を配置した内側の領域における温度上昇を抑制するとともに、紫外線による影響を低減することができる。
また、中間膜組成物に金属カップリング剤を添加する場合、金属カップリング剤による光着色現象の抑制という効果とともに、紫外線吸収剤による光着色現象の抑制という効果を相乗的に得ることができ、光着色現象をより抑制することが可能となる。
紫外線吸収剤としては特に限定されず、中間膜の可視光透過率等に与える影響や、紫外線吸収能、耐久性等に応じて任意に選択することができる。紫外線吸収剤としては例えば、ベンゾフェノン化合物、サリチル酸化合物、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾリル化合物、ベンゾイル化合物等の有機紫外線吸収剤や、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤等が挙げられる。特に紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物から選択される1種類以上を含有することが好ましい。これは、ベンゾトリアゾール化合物およびベンゾフェノン化合物は、紫外線を十分に吸収するだけの濃度を添加した場合でも中間膜の可視光透過率を高くすることができ、かつ強力な紫外線の長期暴露に対する耐久性が高いためである。
また、紫外線吸収剤は例えば以下の化学式1および/または化学式2で示される化合物を含有することがより好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は特に限定されるものではなく、合わせ構造体に要求される可視光透過率や、紫外線遮蔽能等に応じて任意に選択することができる。紫外線吸収剤の添加量は例えば、0.02質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これは紫外線吸収剤の含有量が0.02質量%以上であれば、紫外光を十分に吸収することができるためである。また含有量が5.0質量%以下であれば、中間膜中で紫外線吸収剤が析出することがなく、また膜の強度や接着力、耐貫通性に大きな影響を与えないためである。
(光安定化剤)
中間膜組成物には、上述の紫外線吸収剤とともに光安定化剤を添加してもよい。中間膜を長期間にわたって使用したときに、紫外線吸収剤が劣化し、その紫外線吸収能力が低下してしまうことがある。この点、光安定化剤をさらに添加することにより、紫外線吸収剤の劣化を抑制し、紫外線吸収剤による効果を長期間にわたって高く維持することが可能となる。このような光安定化剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤(HALS)を用いることができる。
HALSとしては特に限定されるものではなく、中間膜の可視光透過率等に与える影響や、紫外線吸収剤との相性、耐久性等に応じて任意に選択することができる。例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケード、1-[2-[3-(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]デカン-2,4-ジオン、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、Mixed{1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、Mixed{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]、ジメチルサシネートポリマ-with-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール(コハク酸ジメチルと、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物)、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等を好適に用いることができる。
HALSの添加量は特に限定されず、中間膜に要求される可視光透過率や耐候性等に応じて任意に選択することができる。HALSの添加量は例えば、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これはHALSの含有量が0.05質量%以上であれば、HALSの添加による効果を中間膜中で発揮することができるためである。また含有量が5.0質量%以下であれば、中間膜中でHALSが析出することがなく、また膜の強度や接着力、耐貫通性に影響を与えないためである。
(酸化防止剤)
中間膜組成物には、樹脂の酸化劣化を抑制し、その耐候性を向上させる観点から、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤によれば、樹脂だけでなく、中間膜に含まれる複合表面処理MWO微粒子、金属カップリング剤や紫外線吸収剤などのその他の添加剤についても酸化劣化を抑制できるので、耐候性を向上させることができる。
酸化防止剤としては特に限定されるものではなく、中間膜の可視光透過率等に与える影響や、所望する耐久性等に応じて任意に選択することができる。例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等を好適に用いることができ、さらに具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル等を好適に用いることができる。
酸化防止剤の添加量は、特に限定されず、中間膜に要求される可視光透過率や耐候性等に応じて任意に選択することができる。酸化防止剤の添加量は例えば、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これは酸化防止剤の添加量が0.05質量%以上であれば、酸化防止剤の添加による効果を中間膜中で発揮することができるためである。また添加量が5.0質量%以下であれば、中間膜中で酸化防止剤が析出することがなく、また膜の強度や接着力、耐貫通性に大きな影響を与えないためである。
(可塑剤)
中間膜の透明基材との密着性を向上させるために、中間膜組成物に可塑剤を添加してもよい。可塑剤としては、中間膜を構成するアイオノマー樹脂に対して一般的に使用されるものを用いるとよい。
(染料)
中間膜組成物には、所望により任意の色調を与えるために、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に樹脂の着色に利用されている染料化合物、顔料化合物を添加してもよい。
(赤外線吸収性物質)
中間膜組成物には、赤外線遮蔽能をさらに向上させるために、複合表面処理MWO微粒子とは別に、赤外線吸収性物質を添加してもよい。他の赤外線吸収性物質としては特に限定されないが、使用する複合表面処理MWO粒子とは異なる波長領域の光を吸収できる物質であることが好ましい。例えば、赤外線吸収性有機化合物を好適に用いることができる。赤外線吸収性有機化合物を添加することにより、さらに高い赤外線遮蔽能が得られる。
(接着力調整剤)
中間膜組成物には、中間膜と透明基材との接着力を調整するために、接着力調整剤を添加してもよい。接着力調整剤としては、特に限定されないが、例えばアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を好適に用いることができる。アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を構成する酸は、特に限定されず、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の中でも、炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩、炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩が好ましい。
炭素数2~16の有機酸のカルボン酸マグネシウム塩、カリウム塩としては、特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチルブタン酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム、2-エチルヘキサン酸カリウム等が好適に用いられる。この中でも、2-エチル酪酸マグネシウムは、接着力調整剤としての性能が高いため好ましい。なお、接着力調整剤は1種類のみを添加してもよく、2種類以上を添加してもよい。
(その他)
中間膜組成物には、上述した添加剤以外に、例えば界面活性剤や帯電防止剤などを添加してもよい。
<6>中間膜
中間膜は、上述した中間膜組成物から形成され、複合表面処理MWO微粒子と、アイオノマー樹脂と、必要に応じて、その他の添加剤を含む。
中間膜において、複合表面処理MWO微粒子の含有量は、中間膜に要求される透明性や熱線遮蔽性能に応じて適宜変更するとよい。例えば、合わせ構造体を例えば窓材等の用途に用いる場合、人間の眼に対する光の透過性を保つ観点からは可視光透過率が高いほうが好ましく、太陽光による熱の入射を低減する観点からは日射透過率と光着色が低いことが好ましい。また例えば、合わせ構造体を農業用シートとして用いる場合、植物の生育に必要な可視光の透過性を保つ観点からは可視光透過率が高い方が好ましく、太陽光による熱の入射を低減する観点からは日射透過率が低いことが好ましい。
中間膜は、上述した中間膜組成物を成形することにより製造することができる。ここでは、一例として、複合表面処理MWO微粒子を含む分散粉を作製し、この分散粉とアイオノマー樹脂とを混合して中間膜組成物を調製した後、これを成形して中間膜を作製する場合を説明する。
(分散粉の作製工程)
まず、複合表面処理MWO微粒子を含む分散粉を作製する。
具体的には、複合表面処理MWO微粒子および液体媒質を含む分散液に上述の分散剤を添加して混合する。このとき、必要に応じて、金属カップリング剤などのその他の添加剤を添加してもよい。続いて、得られた混合物に分散・粉砕処理を施し、複合表面処理MWO微粒子や分散剤を含む分散液を調製する。その後、この分散液から液体媒質を除去し、複合表面処理MWO微粒子および分散剤を含む分散粉を得る。分散粉では、分散剤の一部もしくは全部が複合表面処理MWO微粒子に接触して存在している。
なお、複合表面処理MWO微粒子を含む分散液を調製する際に使用する液体媒質としては、上述の金属カップリング剤による被覆工程で使用する有機溶媒が好ましい。また、分散・粉砕処理は上述した方法を採用するとよい。
(混錬工程)
続いて、得られた分散粉と、アイオノマー樹脂とを混合する。このとき、必要に応じて、紫外線吸収剤やHALS、酸化防止剤、赤外線吸収性物質などのその他の添加剤を添加してもよい。得られる混合物を公知の混錬方法により混錬し、複合表面処理MWO微粒子を含む中間膜組成物を得る。
なお、紫外線吸収剤などのその他の添加剤は、上述した分散液を調製する際に添加してもよく、その他の工程で添加してもよい。
(成形工程)
続いて、得られた中間膜組成物を成形し、中間膜を製造する。成形方法は、特に限定されず、中間膜の厚さなどのサイズや形状、もしくは中間膜組成物の粘度などに応じて従来公知の方法から適宜選択するとよい。例えば、押出成形法やカレンダー成形法などを採用するとよい。
中間膜の形状は特に限定されず、合わせ構造体に要求される形状に応じて適宜変更することができる。この形状としては、例えばフィルム状とすることができる。
<7>合わせ構造体
続いて、本実施形態の合わせ構造体について説明する。
本実施形態の合わせ構造体は、複数の透明基材と、複数の透明基材の間に介在して設けられる少なくとも1つの中間膜とを備えて構成される。
透明基材は、中間膜をその両面から挟持する部材であり、可視光領域において透明性を有する。透明基材としては、例えば、ガラス基材や樹脂基材などを用いることができる。合わせ構造体を構成する複数の透明基材は、すべて同じ材質の基材であってもよく、異なる材質の基材を組み合わせて、例えばガラス基材と樹脂基材とを組み合わせて用いてもよい。
樹脂基材としては、合わせ構造体の用途に合わせて適宜選択される。例えば、自動車等の輸送機器に用いる場合は、当該輸送機器の運転者や搭乗者の透視性を確保する観点から、ポリカ-ボネ-ト樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレ-ト樹脂といった透明樹脂が好ましい。
中間膜を備える合わせ構造体は、例えば以下のように作製することができる。
まず、複合表面処理MWO微粒子が可塑剤に分散された添加液を、アイオノマー樹脂に添加して中間膜組成物を調製し、この中間膜組成物をシート状に成形して中間膜を作製する。続いて、この中間膜を、板ガラスまたはプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合せることにより、合わせ構造体を作製することができる。
なお、ここでは、可塑剤中に複合表面処理MWO微粒子を分散させる例について説明したが、複合表面処理MWO微粒子を可塑剤でない適宜溶媒に分散した分散液をアイオノマー樹脂に添加し、可塑剤は別に添加して中間膜組成物を調製してもよい。
これにより高い赤外線遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい合わせ構造体を製造することができる。さらに当該方法は、合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な合わせ構造体を製造することができ
上記では、中間膜を単体で透明基材間に配置する場合について説明したが、中間膜と他の膜とから構成される多層膜を形成してから透明基材間に配置してもよい。例えば、複合表面処理MWO微粒子を含む中間膜と、これとは異なる樹脂膜とを積層し、これらを透明基材で挟み込み、合わせ構造体を作製してもよい。もしくは、中間膜を樹脂膜で挟み込み、この積層体を透明基材の間に介在するようにして、合わせ構造体を作製してもよい。この樹脂膜としては、表面処理MWO微粒子を含む赤外線吸収層などを用いることができる。
具体的には、複合表面処理MWO微粒子が可塑剤に分散された添加液をアイオノマー樹脂に添加して中間膜組成物を調製し、この中間膜組成物をシート状に成形して中間膜を作製する、この中間膜を、例えば、複合表面処理MWO微粒子を含まない他の樹脂膜と積層させ、もしくは、複合表面処理MWO微粒子を含まない2層の樹脂膜の間に介在させ、これらの積層体を2枚の透明基材の間に挟み込んで貼り合せることにより合わせ構造体を作製してもよい。
なお、複合表面処理MWO微粒子を可塑剤に分散させるのではなく、適宜溶媒に分散された分散液をアイオノマー樹脂に添加し、可塑剤を別に添加する方法で樹脂組成物を調製してもよい。
これにより高い赤外線遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい合わせ構造体を安価な生産コストで製造することができる。当該方法によれば、複合表面処理MWO微粒子を含まない樹脂膜と、透明基材との接着性を上げることができるので、合わせ構造体の強度が適度に高まり好ましい。
合わせ構造体は、複数枚の透明基材の間に上述の中間膜を挟み込んだ後、公知の方法で貼り合わせて一体化することで製造することができる。例えば、ガラス基材または樹脂基材から選択される2枚の透明基材の間に上述の中間膜を挟み込み、これらを貼り合わせるとよい。また例えば、透明基材が3以上の場合、各透明基材の間に中間膜を挟み込み、これらを貼り合わせるとよい。また例えば、透明基材が3以上の場合、透明基材の間の少なくとも1つに中間膜を挟み込み、それ以外の間に上述したその他の樹脂膜を挟み込み、これらを貼り合わせるとよい。
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)本実施形態の合わせ構造体は、複数の透明基材の間の少なくとも1つに中間膜を備えて構成される。この中間膜は、複合表面処理MWO微粒子とアイオノマー樹脂とを含む。そして、複合表面処理MWO微粒子は、MWO微粒子の表面に金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物から選択される1種類以上を含む被覆膜が設けられた表面処理MWO微粒子を、金属カップリング剤で被覆して構成されている。このように、金属キレート化合物などを用いて形成される被覆膜の表面を金属カップリング剤で被覆することにより、被覆膜を均一な厚さで、かつ強固に形成することができる。これにより、例えば中間膜に紫外線が照射されて樹脂成分が分解し、水素ラジカルが生成したときに、水素ラジカルによるMWO微粒子の価数変化を金属カップリング剤が肩代わりすることができる。また、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物により、中間膜中に浸透した水分とMWO微粒子との接触を抑制し、MWO微粒子の分解を抑制することができる。これにより、MWO微粒子の価数変動や光の透過率の変動を抑制することができる。このような複合表面処理MWO微粒子によれば、化学的安定性に優れ、長期間にわたって耐候性を高く維持できるので、中間膜の光着色現象を抑制することができる。
具体的には、中間膜は、温度60℃、相対湿度35%の環境下でメタルハライドランプを光源として強度100mW/cm2の紫外線を照射したときに、照射前後での色差ΔEを1.5以下に抑制でき、長期間の紫外線照射による光着色現象を抑制することができる。
(b)また、中間膜は、複合表面処理MWO微粒子を含むことにより、可視光透過率を高く維持しながらも、日射透過率を低くすることができる。具体的には、中間膜において、可視光透過率が85%となるように複合表面処理MWO微粒子を添加したときに、300nm以上2100nm以下の範囲の光の透過率(日射透過率)を70%以下として、高い赤外線吸収特性を実現することができる。
(c)金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物は、Al、Zr、Ti、SiおよびZnの少なくとも1つの金属元素を含むことが好ましい。このような化合物によれば、被覆膜を、これら金属元素を含む加水分解生成物やその重合物で形成することができる。これにより、複合表面処理MWO微粒子の化学的安定性をより向上させることができ、中間膜における光着色現象をより抑制することができる。
(d)被覆膜の厚さが0.5nm以上100nm以下であることが好ましい。このような厚さとすることにより、複合表面処理MWO微粒子の耐候性をより向上させることができる。
(e)金属カップリング剤がシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤によれば、被覆膜をより高密度に形成することができ、被覆膜をMWO微粒子の表面により強固に形成することができる。これにより、複合表面処理MWO微粒子の耐候性をより向上でき、中間膜における光着色現象をより抑制することができる。
(f)複合表面処理MWO微粒子における金属カップリング剤の含有量は、MWO微粒子100質量部に対して20質量部以上であることが好ましい。このような含有量とすることで、複合表面処理MWO微粒子の耐候性をより向上させることができる。
(g)MWO微粒子は、一般式MxWyOz(但し、Mは、Cs、K、Rb、In、Tl、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y<4.0)で表記される粒子であって、六方晶の結晶構造を有することが好ましい。このような組成および結晶構造を有するMWO微粒子によれば、上述した(b)の効果をより確実に得ることができる。
(h)アイオノマー樹脂がエチレン系アイオノマーであることが好ましい。エチレン系アイオノマーによれば、中間膜の透明基材との密着性を向上させることができる。
(i)中間膜は、金属カップリング剤を含むことが好ましい。複合表面処理MWO微粒子とともに金属カップリング剤を添加することにより、中間膜の耐候性をより向上させることができる。これにより、合わせ構造体を強力な紫外線の照射下に長時間暴露した場合であっても、光着色現象の発生を大幅に抑制することができる。そして、可視領域の光の高い透過率を維持することができ、中間膜の外観が損なわれたり、透明性が低下したりすることを抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
本実施例では、表面処理により、複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子を得た後、この微粒子を用いて、合わせ構造体を作製し、それを評価した。以下、具体的に説明する。
<実施例1>
(1)複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子の作製
(微粒子分散液の調製)
まず、複合タングステン酸化物微粒子として、W1モルに対して、Csが0.33モル、Oが3モルであるCs0.33WO3微粒子(住友金属鉱山株式会社製「YM-01」)を準備した。
続いて、Cs0.33WO3微粒子を28質量部と、純水を72質量部とを混合し、得られる混合液をφ0.3mmZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填して4時間粉砕・分散処理した。
なお、混合液中に分散するCs0.33WO3微粒子について、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製の「ELS-8000」)を用いて分散粒子径を測定したところ、140nmであった。このとき、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは純水を用いて測定し、溶媒屈折率は1.33とした。また、混合液の溶媒を除去したあと、Cs0.33WO3微粒子について、粉末X線回折測定装置(スペクトリス株式会社PANalytical製の「X’Pert-PRO/MPD」)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定したところ、結晶系は六方晶であり、その結晶子径は28nmであった。
続いて、混合液に純水を添加し、Cs0.33WO3微粒子の濃度が14質量%である微粒子分散液を調製した。
(被覆膜形成用分散液の調製)
Cs0.33WO3微粒子の表面処理に先立ち、被覆膜を形成するための表面処理液を調製した。下記表1に、表面処理液の調製条件をまとめる。具体的には、金属キレート化合物としてアルミニウム系のアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート29.0質量部と、イソプロピルアルコール(IPA)71.0質量部とを混合することにより、表面処理液aを調製した。
続いて、上記で調製した微粒子分散液550gをビーカーに入れ、攪拌機で攪拌しながら、ここへ表面処理液a307gを6時間かけて滴下添加し、被覆膜形成用分散液を調製した。そして、表面処理液aの滴下添加後、この被覆膜形成用分散液をさらに温度20℃で24時間の攪拌を行い、熟成液を得た。続いて、真空流動乾燥により、熟成液から液体媒質を蒸発させ、Cs0.33WO3微粒子の表面に被覆膜が形成された表面処理Cs0.33WO3微粒子を得た。
(金属カップリング剤による被覆)
続いて、表面処理Cs0.33WO3微粒子を10質量部と、分散剤を10質量部と、金属カップリング剤として、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを2.0質量部と、有機溶剤として酢酸ブチルを78.0質量部と、を混合した。得られた混合液を、φ0.3mmZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填して1時間粉砕・分散処理した。なお、分散剤としては、官能基としてアミンを含有する基とアクリル主鎖を有し、アミン価が48mgKOH/g、分解温度が250℃のものを用いた。
続いて、粉砕・分散処理した混合液を真空流動乾燥機に導入し、媒質を蒸発させることにより、表面処理Cs0.33WO3微粒子における被覆膜上に金属カップリング剤を付着させ、被覆膜を金属カップリング剤でさらに被覆した。これにより、表面処理Cs0.33WO3微粒子が金属カップリング剤で被覆された複合表面処理CWO微粒子を含む分散粉を得た。
得られた分散粉に含まれる表面処理Cs0.33WO3微粒子において、Cs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属キレート化合物の含有量は、金属元素換算で42.9質量部、金属カップリング剤の含有量は28.6質量部であった。なお、金属キレート化合物の含有量はアルミニウムのICP発光分光分析により、金属カップリング剤の含有量はケイ素のICP発光分光分析によりそれぞれ測定された値である。
なお、上記混合液に含まれる複合表面処理Cs0.33WO3微粒子について、溶媒を除去して透過型電子顕微鏡で観察し、体積平均粒子径を測定したところ、28nmであった。また、被覆膜の厚さは2nmであった。なお、複合表面処理Cs0.33WO3微粒子の体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社社製 HF-2200)の観察像から100個の微粒子の粒子径を測定し、算出した。また、被覆膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡の30万倍の観察像より複合タングステン酸化物微粒子の格子縞のないところを被覆膜として読み取った。
複合表面処理Cs0.33WO3微粒子の作製条件について、下記表2にまとめる。
(2)中間膜組成物の調製
続いて、上記分散粉を用いて、中間膜を形成するための組成物を調製した。具体的には、上記分散粉を0.8質量部と、アイオノマー樹脂を99.2質量部とを混合し、実施例1の中間膜組成物を調製した。なお、アイオノマー樹脂としては、ペレット状であって、金属イオンとして亜鉛を含有するエチレン系アイオノマー(三井・デュポンポリケミカル株式会社製「ハイミラン1706」)を用いた。
(3)中間膜および合わせ構造体の作製
続いて、実施例1の中間膜組成物を200℃に設定した二軸押出機に供給して混練を行った後、Tダイから押し出しカレンダーロール法により2.3mm厚のシート状に成形し、実施例1の中間膜を作製した。
なお、実施例1の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であり、Cs0.33WO3微粒子の含有量は、タングステンのICP発光分光分析から測定した値である。
また、実施例1の中間膜を2枚の透明フロートガラス(3mm厚)で仮挟持したのち、130℃に熱し、真空下で3分間のプレス処理を施すことで、実施例1の合わせ構造体を作製した。
(実施例2)
実施例2では、表2に示すように、実施例1の金属カップリング剤による被覆において、金属カップリング剤である3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの添加量を2.0質量部から2.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様に表面処理を行い、中間膜および合わせ構造体を作製した。
なお、実施例2の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であった。実施例2に係る分散粉においてCs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属キレート化合物の含有量は、金属元素換算で42.9質量部で、金属カップリング剤の含有量は33.3質量部であった。また、被覆膜の厚さは2nmであった。
(実施例3)
実施例3では、表2に示すように、実施例1の金属カップリング剤による被覆において、金属カップリング剤である3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの添加量を2.0質量部から3.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様に表面処理を行い、中間膜および合わせ構造体を作製した。
なお、実施例3の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であった。実施例3に係る分散粉においてCs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属キレート化合物の含有量は金属元素換算で42.9質量部で、金属カップリング剤の含有量は42.9質量部であった。また、被覆膜の厚さは2nmであった。
(実施例4)
実施例4では、表2に示すように、実施例1の被覆膜形成用分散液の調製において、表面処理液aを表1に示す表面処理液b(アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート32.8質量部と、IPA67.2質量部とを混合して調製したもの)に変更した以外は、実施例1と同様に表面処理を行い、中間膜および合わせ構造体を作製した。
なお、実施例4の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であった。実施例4に係る分散粉においてCs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属キレート化合物の含有量は金属元素換算で57.1質量部で、金属カップリング剤の含有量は28.6質量部であった。また、被覆膜の厚さは2nmであった。
(実施例5)
実施例5では、表2に示すように、実施例2の被覆膜形成用分散液の調製において、表面処理液aを表1に示す表面処理液bに変更した以外は、実施例2と同様に表面処理を行い、中間膜および合わせ構造体を作製した。
なお、実施例5の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であった。実施例6に係る分散粉においてCs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属キレート化合物の含有量は金属元素換算で57.1質量部で、金属カップリング剤の含有量は38.1質量部であった。また、被覆膜の厚さは2nmであった。
(実施例6)
実施例6では、表2に示すように、実施例3の被覆膜形成用分散液の調製において、表面処理液aを表1に示す表面処理液bに変更した以外は、実施例3と同様に表面処理を行い、中間膜および合わせ構造体を作製した。
なお、実施例6の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であった。実施例6に係る分散粉においてCs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属キレート化合物の含有量は金属元素換算で57.1質量部で、金属カップリング剤の含有量は42.9質量部であった。また、被覆膜の厚さは2nmであった。
(実施例7)
実施例7では、表2に示すように、実施例1の被覆膜形成用分散液の調製において、表面処理液aを表1に示す表面処理液c(アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート36.3質量部と、IPA63.7質量部とを混合して調製したもの)に変更した以外は、実施例1と同様に表面処理を行い、中間膜および合わせ構造体を作製した。
なお、実施例7の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であった。実施例7に係る分散粉においてCs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属キレート化合物の含有量は金属元素換算で61.9質量部で、金属カップリング剤の含有量は28.6質量部であった。また、被覆膜の厚さは2nmであった。
(比較例1)
比較例1では、複合表面処理を行わずに、複合タングステン酸化物微粒子と金属カップリング剤とを含む分散粉を作製した。具体的には、まず、実施例1で用いたCs0.33WO3微粒子および分散剤をそれぞれ10質量部と、金属カップリング剤である3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを2質量部と、酢酸ブチルを78質量部とを混合した。続いて、得られた混合液をφ0.3mmZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、1時間粉砕・分散処理し、比較例1の微粒子分散液を得た。続いて、この微粒子分散液を真空流動乾燥機に導入し、媒質を蒸発させて、Cs0.33WO3微粒子を含む分散粉を得た。続いて、この分散粉を0.7質量部と、上記アイオノマー樹脂を99.3質量部とを十分に混合して、比較例1の中間膜組成物を調製した。最後に、この中間膜組成物を用いて、実施例1と同様に中間膜および合わせ構造体を作製した。
なお、比較例1の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であった。比較例1に係る分散粉においてCs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属カップリング剤の含有量は14.3質量部であった。
(比較例2)
比較例2では、Cs0.33WO3微粒子について金属キレート化合物による表面処理のみを行い、この表面処理したCs0.33WO3微粒子を金属カップリング剤とともにアイオノマー樹脂に添加して中間膜組成物を調製した以外は、実施例1と同様に中間膜および合わせ構造体を作製した。
具体的には、まず、実施例1における被覆膜形成用分散液の調製で得られた表面処理Cs0.33WO3微粒子を10質量部と、上記分散剤を10質量部と、酢酸ブチルを80質量部と、を混合した。得られた混合液を、φ0.3mmZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填して1時間粉砕・分散処理し、混合液を得た。続いて、得られた混合液を真空流動乾燥機に導入し、媒質を蒸発させて、表面処理Cs0.33WO3微粒子を含む分散粉を得た。続いて、この分散粉を0.8質量部と、上記アイオノマー樹脂99.14質量部と、金属カップリング剤である3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを0.06質量部とを十分に混合し、比較例2の中間膜組成物を調製した。最後に、この中間膜組成物を用いて、実施例1と同様に中間膜および合わせ構造体を作製した。
なお、比較例2の中間膜において、Cs0.33WO3微粒子の含有量は0.21質量%であった。比較例2に係る分散粉においてCs0.33WO3微粒子100質量部に対し金属キレート化合物の含有量は42.9質量部であった。また、被覆膜の厚さは2nmであった。
<評価方法>
作製した実施例1~7、比較例1、2の合わせ構造体について、可視光透過率、日射透過率および耐候性を以下の方法により評価した。
(可視光透過率、日射透過率)
合わせ構造体の可視光線透過率(VLT)、および日射透過率(ST)は、ISO 9050およびJIS R 3106に準拠して測定を行った。具体的には、分光光度計(日立ハイテク株式会社製の「U-4100」)を用いて透過率を測定し、太陽光のスペクトルに応じた係数を乗じて算出した。透過率の測定に当たっては波長300nm以上2100nm以下の範囲について、5nm間隔で測定を行った。
(耐候性)
合わせ構造体の耐候性について、中間膜に紫外線を照射したときの光着色現象による紫外線照射前後での色差ΔEに基づいて評価した。ここで、色差ΔEは、L*a*b*色指数をJISZ8701に準拠して、D65標準光源、光源角度10°に対する三刺激値X、Y、Zを算出し、三刺激値からJISZ8729に準拠して求めた算出した。具体的には、温度60℃、相対湿度35%の環境下で、メタルハライドランプを光源として強度100mW/cm2の紫外線を、合わせ構造体に16時間照射する前後での色差ΔEを測定した。色差ΔEは、下記式に示すように、L*a*b*色空間で紫外線の照射前後のL*a*b*の差から求めた。
ΔE=√((L*a-L*b)2+(a*a-a*b)2+(b*a-b*b)2)
L*a:照射前のL*値
L*b:照射後のL*値
a*a:照射前のa*値
a*b:照射後のa*値
b*a:照射前のb*値
b*b:照射後のb*値
本実施例では、合わせ構造体の可視光透過率を85%に設定した際に、紫外線照射前後のΔEが1.5以下であれば、目視において着色が認識しにくく、耐候性に特に優れるものと判断した。ΔEが1.5を超えて2.3未満の場合は、着色が目視で認識されることがあるものの、ある程度の耐候性があるものと判断した。ΔEが2.3を超える場合は、多くの人の目視でも着色が容易に認識でき、耐候性が著しく劣るものと判断した。
<評価結果>
実施例および比較例についての評価結果を下記表3にまとめる。
表3に示すように、実施例および比較例の合わせ構造体は、その暴露前の可視光透過率(VLT)がいずれも85%であり、暴露前の日射透過率(ST)が65%以上であることから、良好な遮熱特性を有することが確認された。
一方、耐候性については、実施例1~7では紫外線照射前後での色差ΔEが1.5以下であって高い耐候性を実現できるのに対して、色差ΔEが比較例1では2.60、比較例2では1.71であって、耐候性に劣ることが確認された。
比較例1では、Cs0.33WO3微粒子を表面処理せず、また、中間膜中に金属カップリング剤を添加して、Cs0.33WO3微粒子の近傍に金属カップリング剤を存在させただけであるため、光着色現象を十分に抑制できなかった。
また、比較例2では、Cs0.33WO3微粒子の表面を金属キレート化合物で表面処理するとともに、膜中でCs0.33WO3微粒子の近傍に金属カップリング剤を存在させることで、比較例1よりも色差ΔEを低減し、光着色現象を抑制できたものの、不十分であった。
これに対して、実施例1~7では、Cs0.33WO3微粒子の表面に金属キレート化合物および金属カップリング剤で複合的に表面処理を行い、金属キレート化合物の加水分解生成物もしくはその重合物から形成される被覆膜を金属カップリング剤でさらに被覆することにより、被覆膜を強固に形成することができ、光着色現象をより抑制できることが確認された。
以上のように、複合タングステン酸化物微粒子に、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物を用いた表面処理と、金属カップリング剤を用いた表面処理を施すことにより、その化学的安定性を向上させて耐候性を向上でき、中間膜において紫外線照射による光着色現象を抑制することができる。
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様を付記する。
(付記1)
複数の透明基材と、
前記複数の透明基材の間に介在して設けられる少なくとも1つの中間膜と、を備え、
前記中間膜は、複合タングステン酸化物微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物から選択される1種類以上を含む被覆膜で被覆されている表面処理複合タングステン酸化物微粒子を金属カップリング剤で被覆した複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子と、アイオノマー樹脂と、を少なくとも含む中間膜組成物から形成される、
合わせ構造体。
(付記2)
付記1において、好ましくは、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含む。
(付記3)
付記1又は2において、好ましくは、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、一般式MxWyOz(但し、Mは、Cs、K、Rb、In、Tl、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y<4.0)で表記され、六方晶の結晶構造を持つ。
(付記4)
付記1~3のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記表面処理複合タングステン酸化物微粒子の結晶子径が、1nmから800nmである。
(付記5)
付記1~4のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記金属カップリング剤がシランカップリング剤である。
(付記6)
付記1~5のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記複合表面処理複合タングステン酸化物微粒子における前記金属カップリング剤の含有量は、前記複合タングステン酸化物微粒子100質量部に対して20質量部以上である。
(付記7)
付記1~6のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記アイオノマー樹脂が、エチレン系アイオノマーである。
(付記8)
付記1~7のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記透明基材が、板ガラスおよびプラスチックから選択される1種類以上である。
(付記9)
付記8において、好ましくは、
前記プラスチックが、ポリカ-ボネ-ト樹脂、アクリル樹脂およびポリエチレンテレフタレ-ト樹脂から選択される1種類以上である。
(付記10)
付記1~9のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記中間膜を1つ以上有し、
前記中間膜の少なくとも1つには、前記表面処理複合タングステン酸化物微粒子が分散されている。
(付記11)
付記1~10のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記透明基材の間に、前記中間膜とともに、前記表面処理複合タングステン酸化物微粒子を含む少なくとも1つの赤外線吸収層とが介在する。