以下では、図面を参照しながら本開示に係る揚重装置の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
図1(a)は、本実施形態に係る揚重装置に吊り上げられるトランジションピース3を備えた一例としての風力発電機1を示す側面図である。図1(b)は、トランジションピース3を示す斜視図である。風力発電機1は、例えば、海底Bに設けられており、洋上風力発電を行う。但し、風力発電機1は、海洋に限られず、例えば、湖又は河川等、海洋とは異なる水中に設けられていてもよい。
風力発電機1は、基礎2と、基礎2に設置されるトランジションピース3と、トランジションピース3に固定されるタワー4と、タワー4の上部に取り付けられたナセル5と、ナセル5に取り付けられたブレード6と、を備える。タワー4は、例えば、コンクリート製又は鋼製である。ナセル5の内部には発電機及び増速器等が収容されており、例えば、増速器からはローター軸がナセル5の外部に突出している。
ブレード6は、ナセル5のローター軸に固定されている。風力発電機1は、例えば、3枚のブレード6を備える。ブレード6が風を受けて回転すると、当該回転はナセル5の内部の増幅器によって一定の回転数に上げられる。一定の回転数に上げられた当該回転はナセル5の内部の発電機によって電力に変換される。例えば、ナセル5は、風向風速計を備えており、風速及び風向に対応してローターの向きとブレード6の角度を制御することにより、効率的な発電を行う。
風力発電機1は、例えば、モノパイルの基礎形式を備えており、モノパイルである基礎2の上方にトランジションピース3が設けられる。風力発電機1は、水中Wに打設されたモノパイルである基礎2と、基礎2から上方に延びると共にタワー4の下端に接続されたトランジションピース3とを備える。なお、基礎2は、モノパイルの基礎形式に代えて、トリパイルの洋上風力基礎、又はジャケット式の洋上風力基礎を備えていてもよく、基礎2の形式は特に限定されない。
例えば、水平面で切断したときの基礎2の断面形状は円形状とされている。一例として、基礎2は筒状を呈する。基礎2の直径は、例えば、4m以上(一例として6m)である。基礎2は、例えば、水中Wに打ち込まれる円筒状の下部2cと、下部2cの上端から上方に向かうに従って徐々に縮径する上部2dとを有する。上部2dにはトランジションピース3が設置される。
トランジションピース3は、風力発電機1の鉛直度を確保するために設けられる。トランジションピース3は、鉛直方向D1に沿って延びる筒状部分3bと、筒状部分3bの上端に位置する外部プラットフォーム10とを有する。筒状部分3bは、例えば、外部プラットフォーム10が載せられる上側部3dと、上側部3dの下端から下方に向かうに従って徐々に拡径する下側部3fとを有する。外部プラットフォーム10は、筒状部分3bの上端から水平方向に突出するように筒状部分3bに設置されている。
トランジションピース3の下側部3fは基礎2の上部2dが通される部位である。例えば、下側部3fと基礎2の上部2dの間にグラウトが充填されることによって基礎2にトランジションピース3が接合(グラウト接合)する。なお、基礎にトランジションピースを接合する手段は、上記のグラウト接合に限られない。基礎にトランジションピースを接合する手段は、例えば、ボルト接合であってもよく特に限定されない。また、基礎に予め(例えば海底Bに打ち込まれる前に)トランジションピースが接合されていてもよい。
例えば、トランジションピース3は、筒状部分3bに作業者が乗り降りするための梯子3hと、作業者が休むためのレストプラットフォーム3jとを備える。梯子3hは、例えば、筒状部分3bの下側部3fから筒状部分3bの上端まで延在している。トランジションピース3は、例えば、複数のレストプラットフォーム3jを有し、複数のレストプラットフォーム3jのそれぞれが梯子3hの複数の途中部分のそれぞれに設けられる。
トランジションピース3は、例えば、電線配管3kと、グラウト配管3mとを有する。電線配管3kは、ICCP(Impressed Current Cathodic Protection:陰極防食)用の電線を収容する。トランジションピース3は、例えば、筒状部分3bから突出するように配置された電極3rを有する。
電極3rは、水中Wに配置される陽極(ICCPシステムの外部陽極)である。電極3rに電流が流れることにより、トランジションピース3の各部の電位差によって生じる電食を抑制する。グラウト配管3mは、基礎2にトランジションピース3を固定するグラウトが通る配管である。トランジションピース3は、例えば、トランジションピース3の下端においてトランジションピース3の径方向外側に突出するフランジ部3sを有する。
トランジションピース3は筒状部分3bに着船設備3gを有する。着船設備3gには、トランジションピース3に上ってトランジションピース3で作業をする作業者が乗る船が到着する。着船設備3gは、例えば、鉛直方向D1に沿って延びる2本のポール3pと、ポール3pを筒状部分3bに接合する複数の接合部材3qとを備える。
2本のポール3pの間には、作業者を乗せた船の船首が入り込む。例えば、2本のポール3pの間隔は、当該船から作業者がアクセスできる程度の広さとされている。2本のポール3pの間には梯子3hが設けられる。よって、船から下りた作業者が梯子3hを使ってトランジションピース3の外部プラットフォーム10に上ることが可能である。
例えば、ポール3pの上方にはレストプラットフォーム3jが設けられる。例えば、着船設備3gの複数の接合部材3qは、ポール3pに沿って並ぶように配置されている。接合部材3qは、例えば、筒状部分3bから突出する柱状とされており、各ポール3pと筒状部分3bとを互いに接続する。ポール3p及び複数の接合部材3qは、例えば、一体化されている。
図2は、タワー4が構築される前における外部プラットフォーム10を示す斜視図である。図1(b)及び図2に示されるように、外部プラットフォーム10は、例えば、クレーン10bと、電源装置10cとを備える。例えば、クレーン10bはダビッドクレーンであり、電源装置10cはクレーン10bに電力を供給するクレーン電源装置である。
トランジションピース3は、外部プラットフォーム10から突出する上部3zを有する。上部3zは、外部プラットフォーム10において上方に突出する管状の突出部3xと、突出部3xの上端に形成されたフランジ部3yとを有する。トランジションピース3は、更に、トランジションピース3の上部3zを封止するカバー50を備える。
例えば、カバー50とトランジションピース3のフランジ部3yとの間にはゴム部材が介在しており、当該ゴム部材はカバー50とフランジ部3yとの間で潰された状態となっている。当該ゴム部材によってトランジションピース3の密閉性が確保されている。カバー50によりトランジションピース3の上部3zは封止されており、カバー50によって上部3zからトランジションピース3の内部への空気は遮断される。
これにより、トランジションピース3の内部への腐食因子の侵入を遮断できるので、例えば、海洋環境からトランジションピース3の内部を保護することが可能となる。カバー50は、トランジションピース3のフランジ部3yに載せられるフランジ部51と、平面視におけるフランジ部51の中央側において斜め上方に延在する複数の傾斜部52と、複数の傾斜部52の上端に位置する頂部53とを備える。
例えば、平面視においてフランジ部51は円形状を呈する。平面視におけるフランジ部51の直径は、平面視におけるフランジ部3yの直径以上である。カバー50は、フランジ部3yにフランジ部51を締結する複数のボルト54を有し、例えば、複数のボルト54はトランジションピース3の周方向D2に沿って並んでいる。周方向D2に沿って並ぶ複数のボルト54によってフランジ部51はフランジ部3yに強固に固定される。
一例として、平面視において、複数の傾斜部52は六角形状を呈し、頂部53は複数の傾斜部52の内側において六角形状を呈する。例えば、カバー50は6つの傾斜部52を有し、各傾斜部52は台形状を呈する。傾斜部52は、鉛直上方に位置する上底部52bと、鉛直下方に位置する下底部52cと、フランジ部51及び頂部53を互いに接続する一対の脚部52dとを有する。頂部53は、複数の傾斜部52の上底部52bによって画成されている。複数の傾斜部52の下底部52cはフランジ部51の上面51bの上方に位置する。例えば、頂部53は水平方向に延在している。
カバー50は、複数の扉55を備える。例えば、傾斜部52及び頂部53のそれぞれに扉55が設けられる。一例として、互いに隣接する2つの傾斜部52及び頂部53のそれぞれに扉55が設けられる。扉55は、例えば、両開きの扉であり、扉55を構成する一対の板部のそれぞれに取っ手が設けられている。この取っ手を持って当該取っ手を引くことにより、扉55を開放することが可能である。
例えば、複数の扉55は、作業者がトランジションピース3の内部に出入りするための第1扉56、トランジションピース3の内部に物(備品等)の出し入れをするための第2扉57、及びケーブルをトランジションピース3の内部に入れるための第3扉58とを含む。第3扉58は、例えば、外部プラットフォーム10に設けられるウインチによって海底Bから引き上げられたケーブルが通される。
例えば、カバー50は換気装置59を備える。一例として、換気装置59は頂部53から上方に突出する煙突キャップである。換気装置59は、トランジションピース3の内部に連通する複数の空気孔を有し、当該空気孔を介してトランジションピース3の内部の換気及び除湿が可能である。
例えば、トランジションピース3は、カバー50に取り付けられる揚重装置60を備える。図3は、カバー50及び揚重装置60を示す斜視図である。図2及び図3に示されるように、揚重装置60は、カバー50のフランジ部51に固定された一対の吊りピース61と、鉛直方向D1に移動可能とされている一対の移動機構62と、一対の移動機構62を互いに接続する接続部材63とを備える。接続部材63は、例えば、一対の移動機構62の上部同士を互いに接続する横材である。一例として、接続部材63は、棒状を呈する。
一対の吊りピース61は、鉛直方向D1に交差する交差方向D3に沿って並んでおり、平面視における一対の吊りピース61の間に傾斜部52及び頂部53が設けられる。一対の移動機構62は、一対の吊りピース61の上方において鉛直方向D1に沿って移動可能とされている。交差方向D3に沿って一対の移動機構62が並ぶように配置される。
各移動機構62の上部には、シャックル66が回動可能に固定されている。揚重装置60は、例えば、一対のシャックル66を備え、一対のシャックル66のそれぞれにはトランジションピース3を吊り上げる揚重機のフック(不図示)が引っ掛けられる。例えば、揚重機が一対のシャックル66を介して揚重装置60を引き上げることにより、トランジションピース3を吊り上げることが可能とされている。
一対のシャックル66は交差方向D3に沿って並んでいる。各シャックル66は、接続部材63の交差方向D3の両端のそれぞれにおいて軸部66bを中心として回動可能とされている。軸部66bは、鉛直方向D1及び交差方向D3の双方に交差する方向D4に沿って延在している。
揚重装置60は、例えば、一対の移動機構62のそれぞれに取り付けられたピン挿抜機構64を備える。図4は、吊りピース61、移動機構62及びピン挿抜機構64を拡大した斜視図である。図5は、吊りピース61に対する移動機構62及びピン挿抜機構64の動作を説明するための模式図である。
図3、図4及び図5に示されるように、ピン挿抜機構64は、交差方向D3に沿って吊りピース61及び移動機構62に対して挿抜可能なピン65を有し、ピン65を交差方向D3に沿って移動させる。吊りピース61はピン65が挿入される第1挿入穴61bを有し、移動機構62はピン65が挿入される第2挿入穴62bを有する。第1挿入穴61b及び第2挿入穴62bは、共に交差方向D3に沿って延びている。
移動機構62は、接続部材63及びシャックル66が固定される第1ブラケット部62cと、第1ブラケット部62cから下方に延在しており吊りピース61を挟み込む第2ブラケット部62d及び第3ブラケット部62fとを有する。なお、図5では、簡略化のためシャックル66の図示を省略している。平面視において、第3ブラケット部62fは、第2ブラケット部62dよりも揚重装置60の交差方向D3の端部側に設けられる。
第1ブラケット部62cは、例えば、方向D4に厚みを有する板状を呈する。第1ブラケット部62cの交差方向D3の一方側から接続部材63が延び出しており、第1ブラケット部62cの交差方向D3の他方側において軸部66bを介してシャックル66が支持されている。
第2ブラケット部62d及び第3ブラケット部62fは、交差方向D3に厚みを有する板状を呈する。移動機構62にはピン挿抜機構64が固定されている。ピン挿抜機構64は、例えば、第2ブラケット部62dに固定されており交差方向D3に伸縮可能とされたシリンダ64bと、シリンダ64bの伸縮に伴ってピン65を交差方向D3に沿って移動させる駆動機構64cとを備える。
シリンダ64bはピン65よりも上方に配置される。駆動機構64cは、シリンダ64bとピン65との間において第3ブラケット部62fから接続部材63とは反対側に延びる板状部材64dと、板状部材64dにおいて方向D4に延びる軸部64fと、軸部64fを中心として回動する回動部材64gとを有する。
回動部材64gは、軸部64fに対して上下方向に延在する。回動部材64gの一端はシリンダ64bのロッド64hに回動自在に支持されており、回動部材64gの他端はピン65の端部65bに回動自在に支持されている。従って、シリンダ64b(ロッド64h)が伸縮すると、軸部64fを支点として回動部材64gが回動し、回動部材64gの回動に伴ってピン65が交差方向D3に沿って移動する。
第2挿入穴62bは、例えば、第2ブラケット部62d及び第3ブラケット部62fのそれぞれに形成されている。吊りピース61の第1挿入穴61bにピン65が挿入されない状態(シリンダ64b(ロッド64h)が縮んだ状態)において、例えば、ピン65は第3ブラケット部62fの第2挿入穴62bに引っ掛かっている(移動機構62から完全には抜けない)。
これに対し、シリンダ64bが延びる(ロッド64hが突出する)と、ピン65は吊りピース61の第1挿入穴61b、及び第2ブラケット部62dの第2挿入穴62bに挿入される。この状態ではピン65が第3ブラケット部62fの第2挿入穴62b、吊りピース61の第1挿入穴61b、及び第2ブラケット部62dの第2挿入穴62bに通されているので、ピン挿抜機構64によって移動機構62及び吊りピース61を強固に保持することができる。
図6(a)は、吊りピース61の固定構造を示す斜視図である。図6(b)は、吊りピース61の第1挿入穴61bを拡大した図である。図6(a)及び図6(b)に示されるように、吊りピース61の第1挿入穴61bは、第1曲率部61b1と、第1曲率部61b1の上側に位置する第2曲率部61b2とを有する。第1曲率部61b1及び第2曲率部61b2は共に円弧状とされており、第1曲率部61b1の曲率半径は第2曲率部61b2の曲率半径よりも大きい。
第1曲率部61b1の曲率半径はピン65の半径よりも大きく、第2曲率部61b2の曲率半径はピン65の半径と同程度である。一例として、第1曲率部61b1を含む仮想円の直径は225mmであり、第2曲率部61b2を含む仮想円の直径は205mmであり、ピン65の直径は200mmである。
第1挿入穴61bがピン65の直径より大きい第1曲率部61b1を有することにより、第1挿入穴61bへのピン65の挿入を容易に行える。そして、第1挿入穴61bが第1曲率部61b1よりも小さい曲率半径の第2曲率部61b2を第1曲率部61b1の上側に有することにより、第2曲率部61b2にピン65をフィットさせることができると共に第1挿入穴61bにピン65による支圧が大きくなることを抑制できる。
図3及び図6(a)に示されるように、吊りピース61は、トランジションピース3のフランジ部3yに下方から挿通される複数のボルト67によって固定されている。複数のボルト67は、例えば、周方向D2に沿って並んでいる。一例として、8個のボルト67によってフランジ部3yにカバー50(フランジ部51)及び吊りピース61が締結されている。これにより、吊りピース61をトランジションピース3の上部3zに強固に取り付けることが可能である。
図3及び図5に示されるように、揚重装置60は、ピン挿抜機構64による第1挿入穴61b及び第2挿入穴62bに対するピン65の挿抜、並びに、移動機構62の鉛直方向D1への移動を操作する操作部68を備える。例えば、操作部68は、外部プラットフォーム10から離れた位置でピン挿抜機構64及び移動機構62を操作可能なリモコンである。
揚重装置60は、例えば、操作部68からの操作信号を受信する制御板が収容された制御ボックス69を備える。一例として、制御ボックス69は、接続部材63に取り付けられている。制御ボックス69の内部に設けられた制御板と、移動機構62及びピン挿抜機構64のそれぞれとは電気的に接続されている。
操作部68が操作されると、制御ボックス69の制御板が操作信号を受信し、当該操作信号の受信に伴って移動機構62又はピン挿抜機構64が稼動する。例えば、操作部68の操作により、ピン挿抜機構64が第1挿入穴61bにピン65を挿入していない状態で(第3ブラケット部62fの第2挿入穴62bにピン65が引っ掛かった状態で)、移動機構62、接続部材63及びピン挿抜機構64を上下移動させることが可能である。そして、操作部68の操作により、第1挿入穴61bと第2挿入穴62bが交差方向D3に並んだ状態でピン挿抜機構64を駆動させて第1挿入穴61b、及び第2ブラケット部62dの第2挿入穴62bにピン65を挿入することが可能である。
図3及び図4に示されるように、揚重装置60は、移動機構62及び接続部材63の少なくともいずれかが当接するガイド部材70と張出部材72とを備える。張出部材72は、移動機構62から平面視における一対のガイド部材70よりも交差方向D3の外側に延在する部位である。揚重装置60は交差方向D3に沿って並ぶ一対の張出部材72を有し、揚重装置60は一対の張出部材72が一対のガイド部材70にガイドされるようにトランジションピース3に下ろされる。
すなわち、一対の張出部材72のそれぞれがガイド部材70に当接することによってガイド部材70が移動機構62をガイドする。ガイド部材70は、例えば、鉛直方向D1に延びる柱状を呈するガイドポールである。揚重装置60は、交差方向D3に沿って並ぶ一対のガイド部材70を備え、各ガイド部材70は吊りピース61から上方に延在している。
一対のガイド部材70のそれぞれには一対の移動機構62のそれぞれが当接し、この状態で一対の移動機構62を下方に移動させることにより、第2ブラケット部62dと第3ブラケット部62fで吊りピース61を挟み込むことが可能である。第2ブラケット部62dと第3ブラケット部62fが吊りピース61を挟み込むことにより、第1挿入穴61bに対して第2挿入穴62bを交差方向D3に並べることが可能である。そして、この状態で第1挿入穴61b、及び第2ブラケット部62dの第2挿入穴62bへのピン65の挿入が可能となる。
以上、一対のピン65が第1挿入穴61b及び第2挿入穴62bに挿入された状態でシャックル66を介して揚重機が揚重装置60を吊り上げることにより、当該揚重機でトランジションピース3を移動させることが可能である。トランジションピース3は工場において製造され、製造されたトランジションピース3が揚重装置60の吊り上げによって移動する。
トランジションピース3が移動する場合としては、例えば、工場で製造されたトランジションピース3を船舶に載せるとき、船舶からヤードにトランジションピース3を仮置きするとき、ヤードにおいてトランジションピース3を移動させるとき、ヤードから船舶にトランジションピース3を載せるとき、又は、船舶から現場にトランジションピース3を据え付けるとき、が挙げられる。
以上のようにトランジションピース3はあらゆる場所に移動することがあるが、図7(a)及び図7(b)に示されるように、トランジションピース3はトランジションピース台80に仮置きされる。なお、図7(a)ではトランジションピース3を簡略化して示している。
トランジションピース台80は、例えば、トランジションピース3が仮置きされる仮置きヤードYに設けられる。例えば、トランジションピース3は、仮置きヤードYに数ヶ月程度の間仮置きされるが、その間、地震又は台風等からトランジションピース3を倒れないようにトランジションピース3を強固に固定する必要がある。
仮置きヤードYには、例えば、敷き鉄板と、当該敷き鉄板の上に載せられるゴム製のシート部材Zが配置されており、シート部材Zの上にトランジションピース台80が載せられている。これにより、トランジションピース台80を滑りにくくすることができる。トランジションピース台80は、例えば、平面視において放射状に延びる複数の基部81と、各基部81の上方において各基部81に沿って移動可能な複数の移動部82とを備える。平面視においてトランジションピース台80は円形状を呈する。例えば、各基部81は、トランジションピース台80の径方向D5に沿って延びる棒状を呈する。基部81及び移動部82は、例えば、鋼材によって構成されている。
各基部81の天面81bには台座81cが固定されており、台座81cの上面に沿って移動部82がトランジションピース台80の径方向D5に移動可能である。基部81の上面81fと移動部82の下面との間にはトランジションピース3のフランジ部3sを挟むことが可能となっている。従って、複数の基部81にトランジションピース3のフランジ部3sを載せて、複数の移動部82のそれぞれをフランジ部3sの上面3tに載せることにより、複数の位置でフランジ部3sを挟み込むことが可能である。
例えば、トランジションピース台80は、移動部82を基部81に固定する固定部材83を備える。固定部材83は、例えば、ボルト83bと、ナット83cと、板状部材83dとを有する。移動部82には、鉛直方向D1に貫通する貫通孔82bが形成されており、貫通孔82bにボルト83bが挿通される。
板状部材83dには板状部材83dの厚さ方向に板状部材83dを貫通する貫通孔が形成されており、板状部材83dの貫通孔と貫通孔82bとに上からボルト83bが通されている。例えば。貫通孔82bは径方向D5に沿って延びる長孔であり、板状部材83dの貫通孔は円形状であるため、移動部82に対する板状部材83dの径方向D5の位置は可変となっている。
板状部材83dの貫通孔と貫通孔82bに挿通されたボルト83bは、基部81の上面81fに当接し、この状態でナット83cに締め付けられる。このようにナット83cでボルト83bを締め付けることにより、移動部82と基部81の間でフランジ部3sを強固に固定できる。例えば、トランジションピース台80は、基部81の幅方向に沿って並ぶ複数(一例として2つ)の固定部材83を備える。従って、フランジ部3sを一層強固に固定することが可能であり、地震及び台風によってトランジションピース3が倒れる事態をより確実に防止できる。
上記では複数の基部81、及び複数の移動部82を備えるトランジションピース台80について説明した。このトランジションピース台80では、フランジ部3sが載せられる基部81に対して移動部82が径方向D5に移動してフランジ部3sが移動部82の下に挟み込まれるので、種々の径のトランジションピース3をトランジションピース台80に載せることが可能である。
従って、種々のトランジションピース3にトランジションピース台80を転用できる。また、トランジションピース台80は、鋼材のみによって構成されているため、トランジションピース3ごとに作り直す必要がなく他種のトランジションピース3に容易に転用することができる。
しかしながら、トランジションピース台の構成は、トランジションピース台80に限られない。図8(a)及び図8(b)に示されるように、変形例に係るトランジションピース台85は、平面視において環状に延びる基材86と、基材86の上面86bにおいて基材86の径方向D7に沿って延びるように固定される複数の押さえ部材87とを備える。
複数の押さえ部材87は、平面視において放射状に配置される。平面視における基材86の内側にはトランジションピース3が配置され、配置されたトランジションピース3のフランジ部3sの上面に各押さえ部材87が載せられる。押さえ部材87は、例えば、基材86の径方向D7に延びる鋼材である。
押さえ部材87は、径方向D7に沿って並ぶ複数のボルト孔87bを有する。ボルト孔87bにおいて、例えば、前述した固定部材83(図7(b)参照)によって押さえ部材87が基材86に固定される。この場合、径方向D7の位置が調整された押さえ部材87のボルト孔87bにボルト83bが通されて、ボルト83bは基材86の上面に当接し、この状態でナット83cに締め付けられる。このようにナット83cでボルト83bを締め付けることにより、押さえ部材87の下でフランジ部3sを固定できる。従って、複数の押さえ部材87の下でフランジ部3sを強固に固定できる。
以上、トランジションピース台85では、基材86の上に載せられる複数の押さえ部材87のそれぞれが径方向D7に沿って移動可能となっており、複数の押さえ部材87をフランジ部3sに載せた状態で各押さえ部材87を基材86に固定可能である。従って、種々のトランジションピース3にトランジションピース台85を転用できるので、前述したトランジションピース台80と同様の効果が得られる。
トランジションピース台85では、径方向D7に延びる押さえ部材87が径方向D7に沿って移動可能とされている。しかしながら、図9の変形例に係るトランジションピース台90のように、コマ材91を介して接続された複数の押さえユニット92が径方向D7に沿って移動可能とされていてもよい。複数の押さえユニット92は、前述した押さえ部材87と、押さえ部材87を支持すると共にトランジションピース台90の周方向D8に沿って延びる支持部材93とを備える。
トランジションピース台90からもトランジションピース台80,85と同様の効果が得られる。以上のように、トランジションピース台の構成は、適宜変更可能であり、上記の各例に限定されない。例えば、基材86を有しておらず、複数の押さえ部材87のみからなるトランジションピース台であってもよい。
ところで、図1(a)に示されるように、筒状のトランジションピース3は、柱状の基礎2の一部を包むように鉛直上方から基礎2に設置される。図10(a)に示されるように、基礎2は、水中Wに打ち込まれる前には、例えば仮置きヤードYにおいて搬送装置Xによって搬送され、その後、船舶に載せられて現場に移動した後に当該現場の水中Wに打ち込まれる。
ところで、現場の海洋には複数の風力発電機1が設置されることがあり、水中Wに複数の基礎2が打ち込まれることがある。海洋における複数の基礎2の位置は互いに異なるため、複数の基礎2の種類は互いに異なっている。従って、複数の基礎2の種類を識別できるよう、基礎2には識別番号2gが記載されている。
また、トランジションピース3に基礎2を設置するときには、基礎2の周方向D9(回転方向)の位置にトランジションピース3の周方向の位置を合わせることが重要である。従って、図10(b)及び図10(c)に示されるように、基礎2は周方向D9の位置合わせのためのマーク2hを基礎2の上端に有し、トランジションピース3は周方向D9の位置合わせのためのマーク3vをトランジションピース3の下端に有する。マーク2hの直上にマーク3vが位置するように、基礎2に対するトランジションピース3の周方向の向きを調整することにより、基礎2に対するトランジションピース3の周方向の位置を適切な位置に合わせることができる。
基礎2は水中Wを通るケーブルが通されるケーブル孔2jを有し、水中Wのケーブルがケーブル孔2jから基礎2の内部に入り込む。基礎2はケーブル孔2jの位置を強調するマーク2xを有し、トランジションピース3は周方向におけるケーブル孔2jの位置を示すマーク3w1を有する。基礎2に対するトランジションピース3の周方向の位置が合った状態でマーク3w1の鉛直下方にケーブル孔2jが位置する。トランジションピース3は、トランジションピース3の周方向の位置にタワー4の周方向の位置を合わせるためのマーキング3w2をトランジションピース3の上端に有する。更に、トランジションピース3は、基礎2に設置された状態におけるトランジションピース3の方角を示すマーキング3w3を有する。
基礎2は、基礎2の重さを示すマーキング2p、及び基礎2の重心位置を示すマーキング2qを有する。基礎2は、基礎2の長手方向A1における位置と、基礎2が設置されたときの方角とを示すマーキング2kを有する。例えば、基礎2が設置されたときにおける東西南北のそれぞれの方向にマーキング2kが長手方向A1に沿うように設けられる。この場合、東西南北で4本のマーキング2kが設けられる。
各マーキング2kは長手方向A1の基礎2の位置を示すメモリ2mを有し、例えば、メモリ2mの間隔は基礎2の長手方向A1の位置に応じて異なっている。図10(b)の例の場合、基礎2の下部2cではメモリ2mの最小の間隔が1mであり、基礎2の上部2dではメモリ2mの最小の間隔が25cmである。
一例として、基礎2は、防食塗装によってコーティングされた部分2rとコーティングされていない部分2sとを有し、部分2rの色彩が部分2sの色彩とは異なっている。これに合わせて、部分2rに設けられたメモリ2mの色彩と、部分2sに設けられたメモリ2mの色彩とは互いに異なっている。
このように、基礎2がメモリ2mを有することにより、海底Bへの基礎2の打ち込み量を容易に把握することができる。以上のように、本実施形態に係る基礎2及びトランジションピース3では、種々のマーク及びマーキングが設けられることにより、基礎2の打ち込み、及びトランジションピース3の設置の作業を効率よく行うことができる。
次に、本実施形態に係る揚重装置60から得られる作用効果について説明する。図3~図5に示されるように、揚重装置60では、一対の吊りピース61がトランジションピース3の上部3zに固定されており、各吊りピース61は鉛直方向D1に交差する交差方向D3に延在する第1挿入穴61bを有する。揚重装置60は、鉛直方向D1に移動すると共に第2挿入穴62bを有する一対の移動機構62と、第1挿入穴61b及び第2挿入穴62bにピン65を挿抜するピン挿抜機構64とを備える。一対のピン挿抜機構64のそれぞれがピン65を第1挿入穴61b及び第2挿入穴62bに挿入した状態で各移動機構62が鉛直上方に移動することにより、一対の吊りピース61を介してトランジションピース3を吊り上げることができる。
更に、揚重装置60は、ピン挿抜機構64によるピン65の挿抜、及び移動機構62による移動を操作する操作部68を備える。従って、作業者はトランジションピース3から離れた位置で操作部68を使ってピン65の挿抜、及び移動機構62の移動を操作できるので、揚重のたびに玉掛けの作業を行う必要がない。従って、揚重装置60では自動的に玉掛けがなされ、玉掛けのために作業者がトランジションピース3の上部に上る作業を不要とできるので、揚重の作業を効率よく行うことができると共に、作業の安全性を高めることができる。
本実施形態において、揚重装置60は、移動機構62及び接続部材63の少なくともいずれかが当接するガイド部材70を備える。本実施形態に係るガイド部材70に移動機構62及び接続部材63の少なくともいずれかが当接した状態で一対の移動機構62がガイド部材70に沿って移動することにより、第1挿入穴61bに第2挿入穴62bが重なる。よって、ガイド部材70に移動機構62及び接続部材63の少なくともいずれかを当接させた状態で移動機構62をガイド部材70に沿って下ろすことにより、吊りピース61の第1挿入穴61bの位置に移動機構62の第2挿入穴62bの位置を合わせることができる。従って、第1挿入穴61bに対する第2挿入穴62bの位置合わせを容易に行うことができるので、揚重の作業をより効率よく行うことができる。
本実施形態において、揚重装置60は、トランジションピース3の上部3zを封止するカバー50を備える。この場合、トランジションピース3の上部3zに設けられた鋼材等がカバー50で封止されることにより、当該鋼材等を海洋環境から保護することができる。
本実施形態では、図7(a)、図7(b)、図8及び図9に示されるように、トランジションピース3は、トランジションピース台に仮置きされ、トランジションピース台は複数の移動部82(又は押さえ部材87)を備え、複数の移動部82(又は押さえ部材87)は、平面視におけるトランジションピース台80の径方向D5,D7に移動してトランジションピース3のフランジ部3yの上方に位置する。従って、径が異なる種々のトランジションピース3にトランジションピース台を適用できるので、トランジションピース台の転用が可能となる。
以上、本開示に係る揚重装置の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る揚重装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更されたものであってもよい。すなわち、揚重装置の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。更に、トランジションピース台、基礎及びトランジションピースの各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様についても前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。
例えば、前述の実施形態では、交差方向D3に沿って並ぶ一対のガイドポールであるガイド部材70を備える揚重装置60について説明した。しかしながら、ガイド部材の形状、大きさ、数及び配置態様は、前述した実施形態に限られず適宜変更可能である。更に、ガイド部材を有しない揚重装置であってもよい。
前述の実施形態では、着船設備3g、梯子3h、電線配管3k及びグラウト配管3mを有するトランジションピース3について説明した。しかしながら、トランジションピースの構成要素については、トランジションピース3の前述した例に限られず適宜変更可能である。トランジションピース3のプラットフォームの構造についても適宜変更可能である。
前述の実施形態では、基礎2、タワー4、ナセル5及びブレード6を備える風力発電機1のトランジションピース3について説明した。しかしながら、基礎、トランジションピース、タワー、ナセル及びブレードの構成は、前述した実施形態に限られず適宜変更可能である。
前述の実施形態では、風力発電機1のトランジションピース3である例について説明した。しかしながら、本開示に係る揚重装置は、風力発電機1のトランジションピース3以外の構造物にも適用可能である。本開示に係る揚重装置は、例えば、石油プラットフォーム等の他の洋上構造物、又は洋上構造物以外のトランジションピースにも適用可能である。