背景技術及び課題についてより詳細に説明する。
従来、環境水又は排水中の固形物を含んだサンプルをろ過する方法として、採水瓶中のサンプルを吸引してガラス繊維ろ紙などでろ過する方法が知られている。このとき、現場でサンプルを採取し、持ち帰る。その後、上記ろ過方法などを用いて試料を得る。採取場所からサンプルを持ち帰るとき、溶解成分と、主に一般細菌などを含む固形物との反応が時間経過に伴って進み、採水時点の状態からサンプルの性状が変化する可能性がある。長期の連続採水では、水質分析するまでにさらに時間を要し、冷蔵保存してもサンプルの性状が変化して正確な水質を把握できないという問題があった。
例えば、水質調査に関するフィールドワークにおいては、短時間で試料水を手動により採水し、速やかに研究室へと輸送して解析などの後の処理を行うことが基本となる。一般的に、採水された試料水は、その性質及び状態の変化、又はその劣化の抑制を目的として輸送時に保冷剤及びクーラーボックスなどの簡易的なものを使用し保冷される。試料水の劣化の要因としては、例えば微生物の増殖、死滅、捕食、及び被食などが考えられる。環境調査に関する文献では、試料水を採水した後例えば4℃で暗所保管しつつ24時間以内に処理をしたと報告する事例が多い。
例えば、United States Environmental Protection Agency (2005) Method 1623: Cryptosporidium and Giardia in Water by Filtration/IMS/FA.では、サンプリング手法として1~10℃での保管が定められている。例えば、American Public Health Association (2017) Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater, 23rd Edition, Water Environment Federation, Alexandria, VA, 9060 B.では、試料水の採水後1時間以内に処理を開始することができない場合、試料水の凍結を避けて、1~10℃の冷暗所に最大で24時間まで保管することが定められている。すなわち、試料水は採水後24時間以内に処理される。
また、冷蔵庫付きモデルの採水装置も存在し、採水した試料水が備え付けの冷蔵庫で保管される。このときの冷蔵庫内の温度は、例えば-40℃~60℃の範囲で調節可能である。
以上の従来技術は採水した試料水自体の冷却に関するものである。特許文献1に記載の技術及び以上の従来技術では、フィルタに捕捉された試料水中のウイルス又は粒子に対する温度管理については考慮されていない。すなわち、フィルタにより捕捉された試料としてのウイルス又は粒子の性質変化については十分に考慮されていなかった。
例えば、陰電荷膜を含むフィルタを用いた陰電荷膜法によるウイルス濃縮技術において、ろ過膜上に目的となるウイルス又は粒子が捕捉されている。例えば少ない流量の試料水を長時間にわたりろ過するような場合であって、解析対象となる試料を陰電荷膜法に基づくフィルタで捕捉するとき、フィルタを冷却する手法が必要である。
流入水、処理プロセス水、及び処理水などに関する水処理システムの水質変動を長時間にわたりモニタリングするときに、最大24時間の連続サンプリングが終了するまでの間ウイルス又は粒子が付着したフィルタを室温で保管すると、生物群の構成が予期せぬ変化を起こす可能性がある。したがって、このようなフィルタの冷却処理方法を考慮することが重要課題となる。
水処理システムによる水質制御を把握する目的において、とりわけ低濃度な生物量及びウイルス濃度に対して大量のろ過水量を濃縮することが得策とされている。このように大容量の試料水に依存することから、捕捉後のろ過膜に着目した冷却方法が実現されにくかった。
例えば、高温熱処理炉又は真空装置を循環水冷装置で冷却する場合、冷却水のフィルタ処理が必要となる。循環水の冷却装置はフィルタ装置とは別に存在している。すなわち、このようなフィルタ装置に冷却機構は設けられていない。このとき、高流量の循環水をろ過するため、低流量の試料水を長時間にわたりろ過する目的には適合しない。
例えば、自動車の内部でエンジンオイルは約80℃~120℃の高温になる。したがって、エンジンオイルに対するフィルタ装置に冷却機構が設けられている。エンジンオイルの品質保持範囲は約120℃以下である。このような品質保持範囲が維持されるように、フィルタは、金属性のヒートシンクで覆われ空冷される。
このようなフィルタ装置に対する冷却機構では、冷却の目的及び温度範囲がウイルス又は粒子の性質の維持管理に適合しない。例えば、ウイルス又は粒子を含む生物試料の保管温度は、1~10℃の範囲が適している。
例えば、特許文献1に記載の技術のようなクロスフローろ過及び吸引方式で、日ごとに1000Lの被処理水からウイルス又は粒子をフィルタにより捕捉する場合、毎時42L程度のろ過に要する膜面積は、5m2程度以上となる。このような場合、ろ過膜が大きくなり、ろ過膜を保管する装置をコンパクトに設計することが困難となる。
以下では、これらの問題を解決可能なフィルタ装置20及び採水システム1について説明する。本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
以下で説明するフィルタ装置20及び採水システム1は、多様な分野及び用途に応用可能である。例えば、フィルタ装置20及び採水システム1は、浄水場、下水処理場、水再生施設、及び海水淡水化施設などを含む水処理インフラにおいて被処理水及び処理水中のウイルス又は粒子に関する水質管理及び処理性能を把握するために用いることができる。フィルタ装置20及び採水システム1は、例えば、河川、海洋、親水域、プール、及び水浴場などを含む水域の環境調査における動態を把握するために、ウイルス又は粒子に関する水質検査に用いることができる。
フィルタ装置20及び採水システム1は、例えば、水域及び環境インフラを網羅する都市の微生物感染リスクを把握するために、水中のウイルス又は粒子に関する水質検査に用いることができる。フィルタ装置20及び採水システム1は、飲料用又は加工食品の製造に使用される液体のウイルス又は粒子に関する質的リスク、安全把握、及び品質管理などを目的として、リスクを定量化したり、安全と判定できる閾値との比較検証を行ったりするための検査に用いることができる。
フィルタ装置20及び採水システム1は、工業用水及び灌漑・農業用水などのウイルス又は粒子に関する水質検査に用いることができる。フィルタ装置20及び採水システム1は、ミスト散布、加湿装置、及び打ち水などの、温湿度管理に用いる液体のウイルス又は粒子に関する質的リスク、安全把握、及び品質管理などを目的とした検査に用いることができる。フィルタ装置20及び採水システム1は、医薬品の製造及び人工透析療法などの品質管理検査に用いるウイルス又は粒子を捕捉したフィルタの保管に用いることができる。
本明細書において、「ウイルス」は、例えばノロウイルス、アデノウイルス、腸管系ウイルス、及びトウガラシ微斑ウイルス(Pepper Mild Mottle Virus:PMMoV)などを含む。
図1は、本開示の一実施形態に係る採水システム1の概略構成図である。図1を参照しながら、一実施形態に係る採水システム1の構成及び機能について主に説明する。図1において、構成部同士を結ぶ実線は流体の経路を示し、構成部同士を結ぶ破線は電気信号の経路を示す。
採水システム1は、例えば水処理インフラにおける処理水などを試料水として採水するために用いられるシステムである。採水システム1により試料水として採水される流体は、例えば水処理インフラの一部を構成する配管2を一方向に流れる。例えば、このような流体の水質は、時間によって変化するとする。配管2は、水処理インフラにおいて主要な流路を構成してもよいし、主要な流路から分岐したバイパス流路を構成してもよい。
採水システム1は、配管2の側面に取り付けられる着脱式のバルブ3を有する。配管2を一方向に流れる流体の一部は、配管2におけるバルブ3の設置個所を採水点として採水される。採水システム1は流路4を有する。流路4は、着脱式のバルブ3から連続して配置される送液管によって構成される。流路4を構成する送液管は保冷構造を有してもよい。流路4には、採水点から流入した試料水が流れる。試料水は、流路4を流れて目的のウイルス又は粒子を試料として捕捉する後述のフィルタ21を通過した後、排水される。
採水システム1は、採水点から流入した試料水が流れる流路4に加えて、流路4を流れる試料水の流速を制御する制御装置10と、流路4において制御装置10よりも下流側に配置されるフィルタ装置20と、を有する。
フィルタ装置20は、流路4を流れる試料水をろ過して試料水に含まれるウイルス又は粒子を捕捉するフィルタ21と、フィルタ21を冷却する冷却部22と、冷却部22を制御してフィルタ21の温度を調整する温度制御部23と、を有する。
フィルタ21は、例えば、ウイルス又は粒子を吸着させて回収することが可能な陰電荷膜を含む。採水システム1は、バルブ3から流路4に流入して制御装置10を通過してきた試料水中のウイルス又は粒子の静電的中和を図り、凝集化したウイルス又は粒子をフィルタ21に含まれる陰電荷膜で捕捉することで試料の回収を実行する。
冷却部22は、フィルタ21を覆う金属部材と、金属部材を介して熱伝導によりフィルタ21を冷却する冷却機構と、を有する。例えば、金属部材は、熱伝導性の高い金属により形成される。冷却機構は、例えば、フィルタ21を覆う金属部材の温度を直接的に制御する、チラーに接続したコイルパイプ及びペルチェ素子クーラーなどを含む。冷却部22は、温度制御部23に接続される。すなわち、冷却部22に含まれる冷却機構は、温度制御部23により制御される。
冷却部22は、例えばフィルタ21を着脱可能に構成されてもよい。すなわち、フィルタ21によるろ過が終了した後、冷却部22からフィルタ21を取り外して回収することが可能である。冷却部22は、例えばフィルタ21を遮光した状態で保持してもよい。
温度制御部23は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。温度制御部23は、フィルタ装置20を構成する各構成部、例えば冷却部22と通信可能に接続され、フィルタ装置20全体の動作を制御する。
温度制御部23は、フィルタ21の温度を第1範囲に維持する。本明細書において、「第1範囲」は、例えばフィルタ21に捕捉されたウイルス又は粒子の性質の劣化を抑制可能な温度範囲を含む。すなわち、第1範囲は、フィルタ21に捕捉されたウイルス又は粒子の活性を抑制して、捕食、被食、増殖、死滅、及び分解を抑制可能な温度範囲を含む。例えば、第1範囲は、1℃以上10℃以下の温度範囲を含む。温度制御部23は、例えば最長で24時間のサンプリング期間中、フィルタ21の温度が第1範囲に維持されるように冷却部22を制御する。
図2は、図1の制御装置10の概略構成を示す機能ブロック図である。図1及び図2を参照しながら、制御装置10の構成及び機能について主に説明する。制御装置10は、測定部11、調整部12、入力部13、出力部14、記憶部15、及び制御部16を有する。
測定部11は、流路4を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する。測定部11は、測定した情報を制御部16に送信する。本明細書において、「流量」は、例えば流路4を構成する送液管を単位時間あたりに通過する試料水の体積を意味し、L/sec又はm3/secの単位で表される。「流速」は、例えば流路4を構成する送液管の断面積で流量を除算したものを意味し、m/secの単位で表される。例えば、測定部11は、流路4において調整部12の下流側に配置され、かつ試料水の流量を測定する流量計11aを含む。これに限定されず、測定部11は、流路4上に配置され、かつ試料水の流速を測定する流速計を含んでもよい。
調整部12は、制御部16から受信した制御信号に基づいて、流路4を流れる試料水の流速を調整する。流路4を構成する送液管が同一のものであり内径が一定であれば、調整部12は、流路4を流れる試料水の流速を調整することでその流量を調整することになる。例えば、調整部12は、流路4において流量計11aの上流側に配置され、かつ試料水の流速を調整する送液ポンプ12aを含む。
送液ポンプ12aは、流路4を流れる試料水を下流側に送液する。送液ポンプ12aは、例えば、軟質チューブをローラーでしごいて送液するペリスタポンプ(登録商標)であってもよいし、所定の試料水を送液可能な他の任意のポンプであってもよい。送液ポンプ12aの形式として、加圧及び吸引のいずれか一方が試料水の性質によって選択されてもよい。調整部12は、試料水に応じて加圧及び吸引形式の送液ポンプ12aのいずれか一方に組み換え可能に構成されてもよい。例えば、図1では、送液ポンプ12aは、ウイルス又は粒子を捕捉するフィルタ21の上流側に配置され、加圧形式を有する。
入力部13は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力部13は、物理キー、静電容量キー、出力部14のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、及び音声入力を受け付けるマイクなどを含むが、これらに限定されない。
出力部14は、ユーザに対して情報を出力する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力部14は、情報を画像で出力するディスプレイ、及び情報を音声で出力するスピーカなどを含むが、これらに限定されない。
記憶部15は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部15は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部15は、制御装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部15は、システムプログラム及びアプリケーションプログラムなどを記憶する。記憶部15は、制御装置10に内蔵されるものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続される外付け型の記憶モジュールを含んでもよい。
制御部16は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部16は、制御装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、制御装置10全体の動作を制御する。
制御部16は、測定部11により測定された試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて調整部12を制御する。より具体的には、制御部16は、測定部11から送信された測定に関する情報を受信する。制御部16は、受信した測定に関する情報に基づいて調整部12に制御信号を送信する。制御部16は、流路4において試料水の流速が第2範囲に維持されるように調整部12を制御する。
より具体的には、制御部16は、流量計11aにより測定された試料水の流量に基づいて送液ポンプ12aを制御する。制御部16は、流量計11aから送信された流量の情報を受信する。制御部16は、受信した流量の情報に基づいて送液ポンプ12aに制御信号を送信する。制御部16は、流路4において試料水の流速が第2範囲に維持されるように送液ポンプ12aを制御する。すなわち、制御部16は、送液ポンプ12aと流量計11aとを互いに関連させながら、流路4を流れる試料水の採水速度及び瞬時的な採水量を調整する。
例えば、制御部16は、あらかじめ取得した配管情報及び採水情報に基づいて第2範囲を算出してもよい。本明細書において、「配管情報」は、例えば流路4を構成する送液管の内径などを含む。「採水情報」は、採水期間、採水量の目標値、及び採水量に関する目標値からの許容範囲などを含む。
本明細書において、「第2範囲」は、例えばあらかじめ設定された採水期間で設定された採水量の目標値に達するように流路4上で試料水を定常的に流すときの流速の範囲を含む。例えば、1日にわたり少量ずつ最大で1000Lの採水量を達成したいとき、1秒あたりに必要となる平均的な流量が算出可能である。加えて、流路4を構成する送液管の内径に基づいて平均的な流速が算出可能である。例えば、第2範囲は、このような平均的な流速に対して、あらかじめ設定された採水量に関する目標値からの許容範囲に基づき定められる誤差の範囲として算出されてもよい。例えば、制御部16は、試料水の流速が第2範囲に維持されながら、試料水が流路4を1日にわたり常時流れるように調整部12を制御してもよい。すなわち、制御部16は、試料水が流路4を1日にわたり常時流れるように試料水の流速を制御してもよい。
例えば、制御部16は、流路4における試料水の流速が第2範囲を下回りそうになった場合、配管2から試料水を引き込む力を強めるために、調整部12に含まれる送液ポンプ12aの動力を上げてもよい。例えば、制御部16は、流路4における試料水の流速が第2範囲を上回りそうになった場合、配管2から試料水を引き込む力を弱めるために、調整部12に含まれる送液ポンプ12aの動力を下げてもよい。
図1のように配管2から流路4を経由して試料水がフィルタ装置20に流入する場合、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などにより、流路4を構成する送液管が閉塞される可能性がある。このような送液管の閉塞を抑制するために、流路4を流れる試料水の流速が1m/sec以上となるように流路4を構成する送液管及び調整部12が設計されてもよい。例えば、流路4を構成する送液管の内径が15mmの場合、流速1m/secに対応する流量は、約170mL/sec(約10L/min)である。したがって、一実施形態では、第2範囲は、1m/sec以上の範囲に含まれてもよい。
図3は、本開示の制御装置10による制御方法を説明するためのフローチャートである。図3を参照しながら、図1の制御装置10を用いて実行される制御方法について主に説明する。
ステップS100では、制御装置10の制御部16は配管情報を取得する。例えば、このような配管情報は、ユーザにより入力部13を用いて入力され、入力部13から制御部16へと送信されてもよい。
ステップS101では、制御部16は採水情報を取得する。例えば、このような採水情報は、ユーザにより入力部13を用いて入力され、入力部13から制御部16へと送信されてもよい。
ステップS102では、制御部16は、ステップS100において取得した配管情報及びステップS101において取得した採水情報に基づいて第2範囲を算出する。
ステップS103では、制御部16は、測定部11を用いて流路4を流れる試料水の流量及び流速の少なくとも一方を測定する。
ステップS104では、制御部16は、ステップS103において測定された試料水の流量及び流速の少なくとも一方に基づいて流路4を流れる試料水の流速を制御する。制御部16は、ステップS104において、試料水の流速がステップS102において算出した第2範囲に維持されるように調整部12を制御する。
一実施形態に係る採水システム1では、デッドエンドろ過方式及び、より強いろ過駆動力を生じさせる加圧方式を導入し、例えば日ごとに1000Lの被処理水からウイルス又は粒子をフィルタ21により捕捉する。このとき、毎時42L程度以上のろ過が、膜面積5m2以下で実施される。これにより、ろ過膜としてのフィルタ21を保管するフィルタ装置20がよりコンパクトに設計可能となる。
以上のような一実施形態によれば、試料水に含まれるウイルス又は粒子を捕捉するフィルタ21上の試料の性質変化を抑制することが可能である。例えば、フィルタ装置20及び採水システム1は、フィルタ21を冷却する冷却部22と、冷却部22を制御してフィルタ21の温度を調整する温度制御部23と、を有することで、ウイルス又は粒子を捕捉したフィルタ21を適切な温度に冷却可能である。例えば、流路4を構成する送液管のような細い管路を流れる試料水は流量が小さく、試料水がフィルタ21に対して与える熱的な影響は比較的小さい。フィルタ装置20及び採水システム1は、冷却部22及び温度制御部23を用いてフィルタ21を効率良く冷却可能である。フィルタ21を適切な温度まで冷却することで、フィルタ21に捕捉されたウイルス又は粒子の活性を抑制して、捕食、被食、増殖、死滅、及び分解が抑制可能である。
例えば、フィルタ21がウイルス又は粒子を選択的に捕捉するため、フィルタ21ではなく試料水自体を冷却する場合と比較して、フィルタ21に捕捉されている試料が限定される。したがって、試料水中で多種類のウイルス又は粒子が自由に存在している場合よりも、フィルタ21上でウイルス又は粒子間の相互作用が抑制される。これにより、ウイルス又は粒子の活性が抑制される。試料を捕捉し終わってからフィルタ21を取り出すまでの間においてもウイルス又は粒子の活性が抑制される。
冷却部22は、フィルタ21を覆う金属部材と、金属部材を介して熱伝導によりフィルタ21を冷却する冷却機構と、を有することで、温度制御部23による冷却機構の制御によってフィルタ21を熱伝導により間接的に冷却することができる。温度制御部23によって冷却機構を精度良く制御することが可能であるので、フィルタ装置20及び採水システム1は、フィルタ21を精度良く冷却することができる。
温度制御部23がフィルタ21の温度を第1範囲に維持することで、フィルタ装置20及び採水システム1は、フィルタ21に捕捉されたウイルス又は粒子の劣化を最小限に抑制可能である。すなわち、フィルタ装置20及び採水システム1は、フィルタ21に捕捉されたウイルス又は粒子の活性を最小限に抑制して、捕食、被食、増殖、死滅、及び分解を最小限に抑制可能である。フィルタ装置20及び採水システム1は、冷却部22による保冷効果により適切な温度でフィルタ21を保管することが可能である。
冷却部22がフィルタ21を着脱可能に構成されることで、採水者は、一のフィルタ21においてウイルス又は粒子の捕捉が完了した時点で、当該一のフィルタ21を他のフィルタ21に容易に交換可能である。
冷却部22がフィルタ21を遮光した状態で保持することで、フィルタ装置20及び採水システム1は、ウイルス又は粒子を捕捉したフィルタ21に対する保冷効果を向上させることができる。加えて、フィルタ装置20及び採水システム1は、外部から入射する光によって生じるウイルス又は粒子の性質の劣化を抑制可能である。以上により、フィルタ装置20及び採水システム1は、温度を要因とするウイルス又は粒子の変質だけでなく光を要因とするウイルス又は粒子の変質も抑制可能である。
採水システム1は、試料水の水質変動の適切な把握に寄与することができる。例えば、採水システム1に含まれる制御装置10は、流路4を流れる試料水の流速が第2範囲に維持されるように調整部12を制御して流速を制御する。このような制御装置10による制御によって、採水システム1は、試料水の流速及び流量を定常的に維持しながら長期にわたって採水処理を実行することができる。採水システム1は、試料水を少量ずつ定常的に採水しながら長期にわたってフィルタ21に透過させることも可能となる。
したがって、採水システム1は、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む試料水に対してフィルタ21により試料を漏れなく適切に回収することができる。採水システム1による上記のような試料回収方法によって、試料水の水質に関する突発的な変動を検出したり、ワーストケースを検出したりすることも可能となる。採水時に発生した水質の最悪条件が試料に反映され、最悪の事態によってもたらされる質的リスクを逃さないことが可能となる。採水システム1は、目的とする流体全体の汚染状況を反映した、代表的サンプル及び平均的サンプルとして試料を回収することができる。結果として、試料水の水質変動及び水処理システムの制御性能を適切に把握することが容易となる。
測定部11が流量計11aを含むことで、制御装置10は、流速が第2範囲に維持されるように調整部12を制御するときに、流量計11aにより測定された流量を参照しながら制御処理を実行することができる。加えて、調整部12が試料水の流速を調整する送液ポンプ12aを含むことも可能である。採水システム1は、流路4上でより大きな流速及び流量を達成することが可能である。したがって、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などによる、流路4を構成する送液管の閉塞が抑制される。例えば、第2範囲が1m/sec以上の範囲に含まれることで、このような効果が顕著になる。採水システム1では、送液ポンプ12aを使用することにより、試料水を下流側に送るために十分な圧力を確保することも可能である。
制御装置10が、試料水が流路4を1日にわたり常時流れるように試料水の流速を制御することで、採水システム1は、バルブ3を介して得られた試料水を、例えば1日という所定期間ごとにフィルタ21に透過させることも可能となる。例えば、採水システム1は、試料水の所定期間ごとの採水を365日継続して、時間ごと、日ごと、及び月ごとなどの変動を長期的に評価するために用いることも可能である。採水システム1は、例えば24時間の長時間にわたる試料水の連続的な採水においても、冷却部22によるフィルタ21の冷却及び保冷効果によって、以後の解析が実施可能となるまで、フィルタ21に捕捉されたウイルス又は粒子の性質の劣化を抑制可能である。採水システム1は、例えば24時間の長時間にわたる試料水の連続的な採水においても、ウイルス又は粒子を捕捉したフィルタ21に対する適切な保管条件を冷却部22により維持可能である。
バルブ3は、着脱式であることで、採水システム1による採水処理が実行されていないときに取り外して洗浄可能である。
流路4を構成する送液管が保冷構造を有することで、流路4を流れる試料水の温度を維持した状態で試料水をフィルタ21に透過させることが可能となる。
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
例えば、本開示は、上述した制御装置10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
図4は、図1の採水システム1の第1変形例を示す概略構成図である。上記実施形態では、フィルタ装置20は制御装置10の下流側に配置され、送液ポンプ12aは加圧形式を有すると説明したが、これに限定されない。図4に示すとおり、フィルタ装置20は、制御装置10の上流側に配置されてもよい。このとき、送液ポンプ12aは吸引形式を有してもよい。
図5は、図1の採水システム1の第2変形例を示す概略構成図である。図5において、構成部同士を結ぶ実線は流体の経路を示し、構成部同士を結ぶ破線は電気信号の経路を示す。
第2変形例に係る採水システム1は、制御装置10の調整部12が送液ポンプ12aに代えて絞り弁12bを含む点で相違する。第2変形例に係る採水システム1では、試料水は、配管2においてバルブ3が取り付けられている採水地点での残存圧力を利用して、流路4の下流側へと送液される。このとき、採水速度が小さく、流路4に沈殿が生じる場合を想定している。より具体的には、流路4を流れる試料水の流速が1m/secよりも小さくなる場合を想定している。その他の構成、機能、及び効果などについては、図1の採水システム1と同様であり、対応する説明が第2変形例に係る制御装置10及び採水システム1においても当てはまる。以下では、図1と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。図1と異なる点について主に説明する。
第2変形例に係る制御装置10の調整部12は、送液ポンプ12aに代えて、流路4上に配置され、かつ試料水の流速を調整する絞り弁12bを含む。例えば、絞り弁12bは、流路4を流れる試料水の流量を測定する流量計11aと一体的に構成される。すなわち、測定部11と調整部12とは、一の部品として一体的に構成されてもよい。
絞り弁12bは、絞り開度を変えることによって、下流側に流れる試料水の流量及び流速を無段階に調整可能な弁である。絞り弁12bと一体化した流量計11aは、流量測定機能を有し、絞り弁12bを通過する試料水の流量を測定可能である。
制御部16は、流量計11aにより測定された試料水の流量に基づいて絞り弁12bを制御する。より具体的には、制御部16は、流量計11aから送信された流量の情報を受信する。制御部16は、受信した流量の情報に基づいて絞り弁12bに制御信号を送信する。制御部16は、流路4において試料水の流速が第2範囲に維持されるように絞り弁12bを制御する。より具体的には、制御部16は、絞り弁12bにおける絞り開度を調整することにより、試料水の下流側への流速及び流量を調整する。制御部16は、絞り弁12bと流量計11aとを互いに関連させながら、流路4を流れる試料水の採水速度及び瞬時的な採水量を調整する。
例えば、制御部16は、流路4における試料水の流速が第2範囲を下回りそうになった場合、調整部12に含まれる絞り弁12bの絞り開度を上げてもよい。例えば、制御部16は、流路4における試料水の流速が第2範囲を上回りそうになった場合、調整部12に含まれる絞り弁12bの絞り開度を下げてもよい。
調整部12は、絞り弁12bに加えて、絞り弁12bを通過しない余剰の試料水を排水する排水流路12cを含んでもよい。排水流路12cは、絞り弁12bよりも上流側において、流路4から分岐するように流路4と連通して配置される。排水流路12cは、可能な限り絞り弁12bに近い位置で、流路4から分岐するように配置されることが好ましい。排水流路12cが流路4から分岐する位置が絞り弁12bに近いほど、流路4を流れる試料水を絞り弁12bに近い位置で排水することができる。このように排水流路12cが流路4から分岐する位置と絞り弁12bとが互いに近接して試料水の流量が少なくなる配管距離が短くなることで、沈殿が生じ得る配管距離を可能な限り短くすることができる。
排水流路12cは、採水システム1による試料水の採水処理が実行されている間、絞り弁12bを通過しない余剰の試料水を排水する排水路として機能する。排水流路12cは、採水処理の後に、後述する洗浄部18から流路4に洗浄水が供給されている間、洗浄水を排水する排水路として機能する。
制御装置10は、図2に示す構成部に加えて洗浄部18を有してもよい。洗浄部18は、絞り弁12b及び排水流路12cよりも上流側の流路4を洗浄水によって洗浄する。洗浄部18は、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などによる、流路4を構成する配管の閉塞を抑制する。洗浄部18は、洗浄水の供給源18aと、当該供給源18aから延びる流路18bと、流路18b上に配置される電磁弁18cと、を含む。
流路18bは、バルブ3よりも下流側で流路4と合流して洗浄水を流入させるために供給源18aと流路4との間に配置されている。洗浄水は、採水システム1による試料水の採水処理が実行された後、流路4を洗浄するために供給される流体である。流路18bは、可能な限りバルブ3に近い位置で流路4と合流するように配置されることが好ましい。流路18bが流路4と合流する位置がバルブ3に近いほど、洗浄水を流路4のより上流側から供給し、流路4を洗浄することが可能となる。一方で、排水流路12cが、可能な限り絞り弁12bに近い位置で配置されることで、洗浄水を流路4のより下流側まで供給し、流路4を洗浄することが可能となる。
フィルタ装置20におけるフィルタ21は、絞り弁12bの下流側で、可能な限り絞り弁12bに近い位置に配置されることが好ましい。フィルタ21が絞り弁12bに近いほど、流路4を流れる試料水中のウイルス又は粒子を絞り弁12bに近い位置で捕捉可能である。このようにフィルタ21が絞り弁12bに近接して試料水の流量が少なくなる配管距離が短くなることで、沈殿が生じ得る配管距離を可能な限り短くすることができる。
図5の採水システム1では、排水経路は、絞り弁12bの上流側の排水流路12c及びフィルタ21透過後の流路の2経路として存在する。絞り弁12bの上流側における排水流路12cの排水量は、フィルタ21透過後の流路の排水量と比較して多くなる。
以上のような第2変形例によれば、図1の採水システム1と同様に試料水の水質変動の適切な把握に寄与することができる。制御装置10は、調整部12が絞り弁12bと排水流路12cとを含むことで、送液ポンプ12aなどのポンプを用いることなく、試料水の流速を第2範囲に維持することが可能である。
制御装置10は、洗浄部18を有することで、採水システム1による採水処理により試料水に含まれる濁質及び沈殿物などが流路4を構成する配管に蓄積したとしても、これらを洗い流すことができる。したがって、試料水に含まれる濁質及び沈殿物などによる、流路4を構成する配管の閉塞が抑制される。
上記実施形態では、冷却部22は、フィルタ21を覆う金属部材と、金属部材を介して熱伝導によりフィルタ21を冷却する冷却機構と、を有すると説明したが、これに限定されない。冷却部22は、金属部材を有さずに、冷却機構によってフィルタ21を直接的に冷却してもよい。
上記実施形態では、フィルタ装置20は、フィルタ21の温度を第1範囲に維持すると説明したが、これに限定されない。フィルタ21の温度は第1範囲に含まれていなくてもよい。例えば、フィルタ装置20は、フィルタ21の温度が第1範囲よりも若干高くなるようにフィルタ21を冷却してもよい。
上記実施形態では、フィルタ装置20は、フィルタ21を遮光した状態で保持すると説明したが、これに限定されない。フィルタ装置20は、ウイルス又は粒子を捕捉したフィルタ21を冷却可能な任意の態様で構成されてもよい。例えば、フィルタ装置20は、遮光機能を有していなくてもよい。
採水システム1では、水道、食品、及び飲料水などを含む上記の様々な分野への応用を可能とするために、試料水の採水期間は可変であってもよい。採水のためのバルブ3の形状は可変であってよい。
上記実施形態では、流路4を構成する送液管は保冷構造を有すると説明したが、これに限定されない。送液管は、保冷構造を有さなくてもよい。