以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
《第1の実施形態》
図1~図3は、本発明の第1の実施形態に係るリフタ装置10を適用した自動車用のシート1を示す。各図中、矢印によりシート1を自動車に搭載した状態における各部の方向を示す。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
<リフタ装置10の概略構成について>
図1のように、シート1は、座部を成すシートクッション2の後部に背凭れを成すシートバック3が設けられ、シートバック3は、シートクッション2に対して前後方向に背凭れ角度を調節できるように連結されている。シートクッション2は、下部にリフタ装置10及びシートスライド装置8を備え、ブラケット7を介して車両のフロア4に固定されている。
図2のように、シートスライド装置8は、公知のものであり、前後方向に延びる左右一対のロアレール5に対して左右一対のアッパレール6が前後スライド自在に結合されている。左右のロアレール5は、フロア4に固定された前後一対のブラケット7にそれぞれ固定支持されている。左右のアッパレール6の上には、リフタ装置10が設けられている。
図2及び図3のように、リフタ装置10は、各アッパレール6上に固定された支持ブラケット14と、各アッパレール6の前後部に回転自在に結合された複数のリンク部材11とを備え、シートクッション2の骨格部材であるサイドフレーム13、支持ブラケット14、及び各リンク部材11により4節リンクであるリンク機構12が構成されている。複数のリンク部材11のうち、右後側の後方リンク11bは、セクタギヤ16を備えて構成されており、回転制御装置21のピニオンギヤ18により前後方向に回転されるように構成されている。右後側の後方リンク11bのサイドフレーム13に対する回転軸は、トルクロッド17により構成されており、このトルクロッド17を介して左後側の後方リンク(図示略)も後方リンク11bと同期して回転するように構成されている。
サイドフレーム13には、ピニオンギヤ18を挿入するための貫通孔13aが穿設されており、この貫通孔13aにピニオンギヤ18が挿入されるように回転制御装置21がサイドフレーム13の右側壁に固定されている。回転制御装置21は、シートクッション2の右側部に前後方向に延びて設けられた操作ハンドル20により正逆双方向に回転操作可能とされている。操作ハンドル20を中立位置から上方に回転操作すると、回転制御装置21は、後方リンク11bを支持ブラケット14から立ち上げる方向に回転する。操作ハンドル20を中立位置から下方に回転操作すると、回転制御装置21は、後方リンク11bを支持ブラケット14上で伏せる方向に回転する。上述の4節リンクの構成により、後方リンク11bの回転に応じて前方リンク11aも回転し、シートクッション2のフロア4に対する高さ位置が操作ハンドル20の操作に応じて調整される。
<回転制御装置21の構成について>
図4~図6は、回転制御装置21をシートクッション2から取り外した状態を示す。以下、回転制御装置21の構成を、図4~図15に基づいて説明する。以下に説明する回転制御装置21の各構成部材の符号については、上記図4~図15のいずれかを適宜参照するものとする。
回転制御装置21は、支持部材となるベース23の中心孔23cに出力軸22を右側から貫通させて、ベース23の左側面からピニオンギヤ18が突出するように組み付けられている。そして、ベース23は、ピニオンギヤ18がサイドフレーム13の貫通孔13aに貫通する状態でサイドフレーム13に固定される。
ベース23の右側面は、円板状の回転プレート31を収容するように、左側に打出成形されて案内凹部23bが形成され、全体として円形容器形状とされている。案内凹部23bの内周面には、後述する4つのポール32、33が噛み合う内歯34が形成されている。回転プレート31の中心にはスプライン孔31bが形成されており、出力軸22に形成されたスプライン22bと嵌合するようにされている。そのため、回転プレート31は出力軸22と一体的となって同期回転される。ここで、回転プレート31が、本発明の「回転部材」に相当する。
回転プレート31の右側面の外周部には、上下に分散して各1つの突起31dがピン状に突出形成され、前後に分散して上下一対となる計4つの突起31eがピン状に突出形成されている。各突起31eには、各ポール32、33の貫通孔32a、33aが回転可能に嵌合されて、各ポール32、33が各突起31eを中心として揺動自在とされている。また、各突起31dには、それぞれトーションスプリング35の巻回部35aが嵌合されている。トーションスプリング35の各端部35bは、各ポール32、33に係合されており、各ポール32、33を回転プレート31の外周側へ付勢している。そのため、各ポール32、33の外歯を成す係合端部32c、33cは、ベース23の内歯34に常時噛み合うようにされている。
全体として右側に膨らんだ容器状に形成されたカバー24の右側面上には、操作ハンドル20に結合されて回転操作される内外2重構造とされた入力部材Nの外側部材を成す板状のアウタレバー41が設けられている。カバー24の中心の貫通孔24eとアウタレバー41の中心孔41bには、出力軸22の右側の端部を成す丸棒状の端部22cが左側から貫通して挿入されている。上記挿入により、アウタレバー41がカバー24に対して出力軸22の端部22cを中心に回転可能なように支持されている。また、カバー24に形成された一対の円弧状を成す通し孔24aとアウタレバー41に形成された一対の丸孔状を成す貫通孔41aには、それぞれ、上記入力部材Nの内側部材を成す板状のインナレバー53から右方向(スラスト方向)に突出する一対のストッパピン53aが左側から挿入されている。
上記一対のストッパピン53aは、それぞれ、インナレバー53に右方向から差し込まれて一体的にかしめられている。上記一対のストッパピン53aは、上記カバー24の対応する各通し孔24a内に左側から通されている。そして、一対のストッパピン53aは、カバー24の右側面に重ね合わせ状にセットされるアウタレバー41の対応する各貫通孔41a内に挿入されて、アウタレバー41と一体的に結合されている。
上記結合により、インナレバー53とアウタレバー41とは、互いが一体的となってカバー24に対して出力軸22の回りに相対回転できる状態に組み付けられている。上記アウタレバー41の下部には、左側に折り曲げられて延びる係合片42が形成されている。同係合片42は、カバー24の下部から右側に切り起こされた係合片24bの外周側に並んでセットされるようになっている。
そして、上記各係合片42、24bの間には、リング状を成すトーションスプリング43の各端部43aが掛けられている。そのため、アウタレバー41が操作ハンドル20により回転操作されると、係合片42が係合片24bから回転方向に離間するように移動するが、係る回転操作が解除されると、トーションスプリング43の付勢力により、係合片42と係合片24bとが回転方向において重なる状態へと戻されて、アウタレバー41が回転操作前の中立位置へと戻されるようになっている。
また、カバー24の左側には、同カバー24の容器形状内に収容されるようにインナレバー53及び仮保持部材54が設けられている。そして、カバー24は、これらの部品を回転プレート31及び回転伝達プレート36と共に挟んでベース23に固定されている。このとき、カバー24の脚部24dをベース23の貫通孔23aにリベット(図示略)により固定している。
上記カバー24の上部には、その前後2箇所の位置に、左側に突出する乗り上げ部24cが形成されている。これら乗り上げ部24cは、カバー24の一部領域が内周側を基点に左側に切り起こされて形成されている。これら乗り上げ部24cは、各々がカバー24の中心まわりに描かれる同一円の円弧を成す形に湾曲した曲板形状に形成されている。これら乗り上げ部24cは、図18及び図24で後述するように、操作ハンドル20の操作によってインナレバー53が図示右回り(図18参照)又は図示左回り(図24参照)に回された際に、インナレバー53に取り付けられた一対の送り爪52のうちの送り機能しない片方を乗り上がらせて回転伝達プレート36の内歯51との噛合状態から外す機能をするものとなっている。
仮保持部材54は、図34~図37に示すように、後述する回転伝達プレート36の右側面上にセットされて、同回転伝達プレート36に対して一対の送り爪52とこれら送り爪52を回転伝達プレート36の内歯51に噛合させる方向へと付勢するトーションスプリング55とをそれぞれ位置決めした状態に保持する仮保持具とされる。上記回転伝達プレート36の内歯51とベース23の内歯34とは、互いに同一の歯数を持つ構成とされている。
上記仮保持部材54は、図34に示すように、その中心部に形成された円筒形状の軸支部54bが、回転伝達プレート36の中心孔36dに左側から通される出力軸22の右側の端部22cに通されて回転伝達プレート36の右側面上にセットされる。同セットにより、仮保持部材54は、回転伝達プレート36に対して出力軸22の端部22cを中心に回転可能なように支持される。
上記仮保持部材54は、更に、上記軸支部54bの回転方向の一部領域から径方向の外側に張り出す送り爪保持部54aを有する。上記仮保持部材54は、上記径方向の外側に張り出す送り爪保持部54aの回転方向の各側面上にて、一対の送り爪52をそれぞれあてがえた状態に保持する。具体的には、送り爪保持部54aは、その回転方向の各側面に凹湾曲面状に凹んだ一対の回転受面54a1を有する。
上記送り爪保持部54aは、上記凹湾曲面状に凹んだ各回転受面54a1上にそれぞれ各送り爪52のヒンジ部52b側の外周面をあてがえて、各送り爪52を各回転受面54a1の凹湾曲面に沿って径方向の内外方に摺動回転させられるようにガイドする(図35参照)。詳しくは、各送り爪52は、各回転受面54a1に対し、それらのヒンジ部52bのまわりに湾曲した円弧形状の外周面がそれぞれあてがわれた状態にセットされて、各回転受面54a1に沿ってそれら(各送り爪52)の回転中心であるヒンジ部52bの回りに径方向の内外方に摺動回転できるようガイドされる。
したがって、上記仮保持部材54の各回転受面54a1上に一対の送り爪52をそれぞれあてがう形にセットした後、一対の送り爪52を各回転受面54a1に沿って径方向の外側へと摺動回転させることにより、一対の送り爪52を、それらの外歯を成す係合端部52aを回転伝達プレート36の内歯51に噛合させた状態にセットすることができる。そして、上記セット後に、図36に示すように、上記仮保持部材54の軸支部54bが通された出力軸22の端部22cと一対の送り爪52との間にトーションスプリング55を掛け合わせることにより、同トーションスプリング55のバネ付勢力によって一対の送り爪52を回転伝達プレート36の内歯51に押し付けて噛合させた状態として保持することができる。
上記トーションスプリング55は、その中央の円形状に巻かれた巻き部55aが出力軸22の端部22cに通されて、同巻き部55aから延び出す各端部55bがそれぞれ一対の送り爪52の内周面に押し当てられるようにセットされる。それにより、トーションスプリング55は、出力軸22を支点に一対の送り爪52を回転伝達プレート36の内歯51に噛合させる付勢力を作用させる状態としてセットされるようになっている。
上記セットにより、一対の送り爪52は、図37に示すように、その右側からインナレバー53を差し込んでセットすることのできる位置に合わされた状態となる。具体的には、上記セットされた一対の送り爪52に対し、インナレバー53を回転伝達プレート36の右側からその中心孔53d内に出力軸22の端部22cを通すように組み付けることで、同インナレバー53に形成された丸孔状に貫通する2つの貫通孔53bに、各送り爪52の右側面上からピン形状に突出する各ヒンジ部52bをそれぞれ差し込んで組み付けることができる。上記一対の送り爪52は、それらの各ヒンジ部52bにインナレバー53の対応する各貫通孔53bが差し込まれることで、インナレバー53に対して各ヒンジ部52bを中心に回転することができる状態に連結される。
したがって、上記仮保持部材54を用いた一対の送り爪52及びトーションスプリング55の回転伝達プレート36へのセット(仮保持)により、トーションスプリング55による付勢の掛けられた各送り爪52を手で押さえる等の保持作業を要することなく、インナレバー53を回転伝達プレート36上に置かれた一対の送り爪52に簡便に連結することができる。上記仮保持部材54は、樹脂製であり、上記インナレバー53が一対の送り爪52と連結されることにより、一対の送り爪52を介してインナレバー53と一体的となって回転することができるように連結されるようになっている。なお、上記仮保持部材54以外の回転制御装置21の各構成部品は、全て金属製の部材から成る構成とされている。
図9に示すように、上記仮保持部材54は、更に、上記軸支部54bの送り爪保持部54aの形成領域と対向する回転方向の一部領域から径方向の外側に扇形状に張り出すスペーサ部54cを有する。同スペーサ部54cは、上記セットされた回転伝達プレート36とインナレバー53の対面部53eとの間にスラスト方向に介在して、これらの間のスラスト方向の空間を確保するものとして機能する。上記スペーサ部54cの介在により、インナレバー53を回転伝達プレート36に対して円滑に回転させることができる。
インナレバー53は、図9に示すように、そのスラスト方向に面を向ける略円板形状の対面部53e上の前後2箇所の部位に、丸ピン形状のストッパピン53aがそれぞれ結合された構成とされる。各ストッパピン53aは、それぞれ、インナレバー53の対面部53e上から右側に突出して、上記カバー24の対応する各通し孔24a内を通ってアウタレバー41の対応する各貫通孔41a内に差し込まれてアウタレバー41と一体的に結合されている。
上記カバー24の各通し孔24aは、それぞれ、回転方向に長尺状に延びる孔形状とされる。これら通し孔24aは、図29に示すように、入力部材Nたるインナレバー53が操作前の中立位置にある時には、それらの回転方向の中央位置に各ストッパピン53aを位置させる。各通し孔24aは、図30に示すように、インナレバー53が上記中立位置から押し下げられると、それらの回転方向の対応する端部面に各ストッパピン53aを当接させ、インナレバー53(入力部材N)の押し下げ方向の回転移動を係止させる。また、各通し孔24aは、図31に示すように、インナレバー53が中立位置から引き上げられた際にも、それらの回転方向の対応する端部面に各ストッパピン53aを当接させ、インナレバー53(入力部材N)の引き上げ方向の回転移動を係止させる。
上記インナレバー53の左側面上には、一対の送り爪52がそれぞれ回転可能な状態に組み付けられている。同インナレバー53の左側には、略円板形状の回転伝達プレート36が設けられている。回転伝達プレート36は、インナレバー53と回転プレート31との間に挟まれて配置される。回転伝達プレート36の左側面部には、略円板形状の制御プレート56が回転方向に一体的となる形に組み付けられている。
制御プレート56は、回転伝達プレート36の左側面部に回転方向に一体的となる形に組み付けられている。具体的には、制御プレート56は、その中心部に貫通形成されたスプライン孔56aに、回転伝達プレート36の中心部から左側に略円筒形状に突出するように半抜き加工されたスプライン嵌合部36aが嵌合されることにより、回転伝達プレート36と回転方向に一体的な状態に組み付けられている。
上記制御プレート56の外周部には、各ポール32、33から右側に突出する各ピン32b、33bをそれぞれ左側から受け入れて、各ポール32、33のロック・解除の作動制御を行う制御孔56bが回転方向の4箇所の位置に形成されている。また、上記制御プレート56の円板面部には、その回転方向の対向する2箇所の位置に、回転プレート31の対応する2箇所の位置から右側にピン形状に突出する各突起31dをそれぞれ左側から受け入れる係合長孔56cが形成されている。
これら係合長孔56cは、回転方向に延びる長孔形状とされる。各係合長孔56cは、図17に示すように、制御プレート56(回転伝達プレート36)の回転プレート31に対する回転位置が両者の間に掛着されたトーションスプリング37の付勢により中立位置に保持されている時には、それらの長孔形状の略中央位置に回転プレート31の各突起31dをそれぞれ位置させる。それにより、各係合長孔56cは、上記状態から制御プレート56(回転伝達プレート36)が回転プレート31に対して正逆それぞれの方向の回転する動きを許容する。
しかし、各係合長孔56cは、図21及び図26に示すように、操作ハンドル20の操作によって制御プレート56(回転伝達プレート36)が回転プレート31に対して図示右回り(図21参照)又は図示左回り(図26参照)に回転することにより、それらの回転方向の対応する端部面に各突起31dを当接させる。それにより、回転プレート31は、そこから先は制御プレート56(回転伝達プレート36)と一体的となってその回転方向に回されるようになる。
上記回転伝達プレート36と回転プレート31との間に掛着されるリング状のトーションスプリング37は、その両側の端部37aが左側に屈曲状に折り曲げられて回転伝達プレート36の長孔36cと回転プレート31の長孔31cとに跨って挿入されている。それにより、トーションスプリング37は、これら長孔36c,31cに跨って回転方向の双方向に付勢力を及ぼす状態とされている。上記トーションスプリング37は、その付勢力により回転プレート31に対する回転伝達プレート36の回転角度を中立位置に維持するようになっている。
ここで、図9~図10には、回転制御装置21の構成部品をバラバラに分解した状態が示されている。また、図11~図12には、回転プレート31に各ポール32、33と各トーションスプリング35とを組み付け、かつ、インナレバー53に各送り爪52とトーションスプリング55とを組み付け、更にカバー24にトーションスプリング43を組み付けた状態が示されている。また、図13~図14には、回転プレート31をベース23に組み付け、かつ、制御プレート56を回転伝達プレート36に組み付けた状態が示されている。
また、図15には、上記ベース23に組み付けられた回転プレート31(図13参照)に回転伝達プレート36を組み付け、かつ、同回転伝達プレート36に各送り爪52及びインナレバー53を組み付けた状態が示されている。上記の各図は、回転制御装置21の組み付け手順を示すものではなく、各構成部品同士の組み付け状態を示すものとなっている。上記回転制御装置21は、実際には、図9に示されている各構成部品が図示された左側から順に重力方向にセットされて組み付けられるようになっている。
ここで、図9に示すように、上述したインナレバー53(入力部材N)に連結されてその回転操作される動きを回転伝達プレート36に送り回転として伝達する一対の送り爪52、同送り爪52から回転動力の伝達を受けて回転する回転伝達プレート36、同回転伝達プレート36と一体的に連結された制御プレート56、及び制御プレート56(回転伝達プレート36)との係合により途中から一体的となって回転する回転プレート31から成る機構が、インナレバー53(入力部材N)の回転を出力軸22に送り回転として伝達する送り部Aとされる。また、上記送り部Aにより送り回転されたピニオンギヤ18の回転をベース23に対してロックする各ポール32、33の付勢によるロック構造が、ロック部Bとされる。また、ベース23と同ベース23に対して一体的に組み付けられるカバー24とから成る構成が、支持部材Sとされる。
出力軸22のピニオンギヤ18とスプライン22bとの間には、ギヤ形状のない同心円状に湾曲する外周面22aが形成されている。同外周面22a上の回転方向の一部領域には、部分的に径方向の外側に突出する回転軸側突部63が形成されている。上記回転軸側突部63は、ピニオンギヤ18がベース23の中心孔23cに右側から挿入されることで、ベース23の案内凹部23bの右側面上にセットされる。
ベース23の案内凹部23bの右側面上には、円弧状の支持部材側突部61が打出形成されている。一方、図10に示すように、回転プレート31のスプライン孔31bの周りには、回転プレート31の中央部が右側に円筒状に半抜き加工されたことに伴う円筒内周面を成す摺動面部31aが形成されている。上記摺動面部31aは、スプライン孔31bと互いに同心円を成す状態にセットされ、回転プレート31がベース23に対して回転したとき、支持部材側突部61の外周が摺動面部31aの内周上を摺動するようにされている。また、摺動面部31aの内周と出力軸22の外周面22aとの間の隙間を摺動するように係合片62が配置されている。
そのため、回転制御装置21の作動により出力軸22が下降方向に回転され、下限位置に達すると、図32のように、回転軸側突部63が係合片62を間に挟んで支持部材側突部61の端部面に当接し、出力軸22のそれ以上の回転が止められる。また、回転制御装置21の作動により出力軸22が上昇方向に回転され、図33のように、上限位置に達すると、回転軸側突部63が係合片62を間に挟んで支持部材側突部61の反対側の端部面に当接し、出力軸22のそれ以上の回転が止められる。上記回転軸側突部63が係合片62を間に挟んで支持部材側突部61と回転方向に突き当てられて出力軸22の回転を止める機構が、ストッパ60として構成されている。
図9に示すように、上記支持部材Sを成すベース23及びカバー24と回転プレート31との間には、回転プレート31の支持部材Sに対する回転移動に摺動摩擦抵抗力を付与する摩擦発生部57が設けられている。上記摩擦発生部57は、カバー24の左側面部上に設けられたリング形状のガイド部材57cと、同ガイド部材57cの回転方向の3箇所の位置にガイドされた状態として設けられた3個のクラッチ部57aと、ガイド部材57cの左側に設けられた略同一径の波形に曲げられたリング形状から成る板バネ57bと、同板バネ57bの左側に設けられた略同一径のリング形状を成す回転リング57d及び固定リング57eと、によって構成される。ここで、板バネ57bが、本発明の「弾性体」に相当する。
ガイド部材57cは、カバー24の左側面部に対して、スラスト方向にのみ摺動可能となる状態に組み付けられている。具体的には、ガイド部材57cは、その左右2箇所の右側面上から突出する丸ピン形状の係合突起57c1が、カバー24の対応する2箇所の位置に形成された丸孔形状の係合孔24f内に左側から差し込まれてセットされている。それにより、ガイド部材57cは、カバー24に対して、回転方向及び径方向には一体的とされるが、スラスト方向には摺動可能となる状態に組み付けられている。
3個のクラッチ部57aは、上記ガイド部材57cの右側面部の回転方向の3箇所の位置に形成された対応する各傾斜凹面57c2内にセットされている。同セットにより、各クラッチ部57aは、図38に示すように、ガイド部材57cの右側面部に形成された各傾斜凹面57c2とカバー24の左側面との間にスラスト方向に挟まれて配置される。それにより、各クラッチ部57aは、ガイド部材57cの各傾斜凹面57c2によって、各傾斜凹面57c2の傾斜方向に沿ったスラスト方向に斜めの径方向にのみ摺動可能となるように回転方向の両側から支持されている。各クラッチ部57aの径方向の内側には、前出の略円板形状のインナレバー53が配設される。ここで、インナレバー53が、本発明の「回転カム」に相当する。また、各傾斜凹面57c2が、それぞれ、本発明の「傾斜面」に相当する。
上記インナレバー53は、図9に示すように、その外周面上の円周方向の3箇所の位置に、部分的に径方向の内側に凹んだ逃がし面53fと、径方向の外側に膨らんだ乗り上がり面53gと、が回転方向に並んで形成された構成とされる。上記各逃がし面53f及び乗り上がり面53gは、それぞれ、インナレバー53の中心まわりに描かれる互いに同心円の円弧形状に湾曲した形状とされる。上記各逃がし面53fと各乗り上がり面53gとの間の段差面は、それぞれ、両者を直角状ではなく傾斜状に繋ぐ傾斜面53hとされる。
上記各クラッチ部57aは、図16及び図38に示すように、インナレバー53が操作前の中立位置にある時には、インナレバー53の外周面上における対応する逃がし面53f上の傾斜面53hとの境界に位置するようになっている。上記各クラッチ部57aは、図24に示すように、インナレバー53が上記中立位置から出力軸22を上昇回転させる方向に回されても、インナレバー53の対応する逃がし面53f上を摺動して、ガイド部材57cの対応する傾斜凹面57c2内における位置に変化させないようになっている(摩擦抑制状態P1:図38参照)。
しかし、各クラッチ部57aは、図18に示すように、インナレバー53が上記中立位置から出力軸22を下降回転させる方向に回されると、それと同時にインナレバー53の対応する傾斜面53h上から乗り上がり面53g上へと摺動して、ガイド部材57cの対応する傾斜凹面57c2に沿って径方向の外側へと押し出される(摩擦オン状態P2:図39参照)。
それにより、各クラッチ部57aが、カバー24の左側面に押し付けられた当接点を支点に、ガイド部材57cを左側(スラスト方向)に押し出して同ガイド部材57cを板バネ57bに押し付ける。そして、上記左側に押し込まれた板バネ57bが、同板バネ57bの左側に設けられた回転リング57dに押し付けられる。更に、上記押し付けられた回転リング57dが、その左側に設けられた固定リング57eに押し付けられる。上記回転リング57dは、回転プレート31に対して回転方向に一体的となる状態に連結され、固定リング57eは、ベース23(支持部材S)に対して回転方向に一体的となる状態に連結されている。したがって、上記各押し付けにより、回転プレート31のベース23に対する回転移動に摺動摩擦抵抗力が付与される。
上記回転リング57dは、図9に示すように、スラスト方向に3枚並んで設けられ、固定リング57eは、上記回転リング57dの間に1枚ずつ挟まれるようにスラスト方向に2枚並んで設けられている。上記回転リング57dは、それぞれ、回転プレート31の右側面部に対して、スラスト方向にのみ摺動可能となる状態に組み付けられている。具体的には、回転リング57dは、その左側2枚の上下2箇所の内周縁部から径方向の内側に張り出す各片に形成された丸孔状の各第1係合孔57d1が、回転プレート31の対応する2箇所の位置から右側に突出する丸ピン形状の各第1係合ピン31fに右側から差し込まれてセットされている。それにより、上記左側2枚の回転リング57dは、回転プレート31に対して、回転方向及び径方向には一体的とされるが、スラスト方向には摺動可能となる状態に組み付けられている。
また、残る右側1枚の回転リング57dも、その上下2箇所の内周縁部から径方向の内側に張り出す各片に形成された丸孔状の各第2係合孔57d2が、回転プレート31の対応する2箇所の位置から右側に突出する丸ピン形状の各第2係合ピン31gに右側から差し込まれてセットされている。それにより、上記右側1枚の回転リング57dも、回転プレート31に対して、回転方向及び径方向には一体的とされるが、スラスト方向には摺動可能となる状態に組み付けられている。
上記回転プレート31に形成された各第1係合ピン31fと各第2係合ピン31gとは、互いに回転方向にずれた位置に形成されている。そして、上記各第2係合ピン31gに差し込まれる右側1枚の回転リング57dに形成された各第2係合孔57d2は、同回転リング57dの内周縁部から左側に折り曲げられて径方向の内側に張り出すクランク形状の各片上に形成されている。このような構成とされていることにより、回転プレート31から右側に突出する各第1係合ピン31fと各第2係合ピン31gとの突出長さが二手に分けられて短く抑えられている。
一方、2枚の固定リング57eは、それぞれ、ベース23の外周縁部に対して、スラスト方向にのみ摺動可能となる状態に組み付けられている。具体的には、固定リング57eは、その回転方向の4箇所の外周縁部から左側に折れ曲がり状に張り出す各係合爪57e1が、ベース23の対応する4箇所の外周縁部に形成された各係合溝23dに右側から差し込まれてセットされている。それにより、固定リング57eは、ベース23に対して、回転方向及び径方向には一体的とされるが、スラスト方向には摺動可能となる状態に組み付けられている。
上記構成の回転リング57dと固定リング57eとは、板バネ57bにより右側から押圧力を受けた際、回転リング57dは回転プレート31に対して左側に摺動しながら、固定リング57eはベース23に対して左側に摺動しながら、各々が互いにスラスト方向に重ね合わされる形に押し付けられた状態となる。そして、一番左側の回転リング57dは、ベース23の内歯34の外周側の右側面上に押し付けられた状態となる。したがって、上記状態から、回転プレート31が出力軸22を下降回転させる方向に回されると、上記板バネ57bが左側の回転リング57dに押し付けられる力と、その力によって各々の回転リング57dと固定リング57eとが互いにスラスト方向に押し付けられる力と、左側の回転リング57dがベース23の右側面上に押し付けられる力と、によって、回転プレート31のベース23に対する回転移動に摺動摩擦抵抗力が付与される。
上記の摺動摩擦抵抗力は、1枚の板バネ57bにより発揮される弾発力によって、回転リング57dと固定リング57eとを複数、積層状に擦り合わせる力として得ることができる。したがって、1枚の板バネ57bの設定によって、回転リング57dの設定枚数に応じた大きな摺動摩擦抵抗力を得ることができる。図16に示すように、上記各クラッチ部57aは、インナレバー53が操作前の中立位置にある時には、インナレバー53によって径方向の外側に押し出されない摩擦抑制状態P1とされる。その状態では、図38に示すように、各クラッチ部57aをガイドするガイド部材57cは、各クラッチ部57aによってスラスト方向には押し込まれないが、各クラッチ部57aを介してカバー24の左側面との間にスラスト方向の隙間T(図7参照)を有した状態とされる。
すなわち、ガイド部材57cは、上記摩擦抑制状態P1、すなわち板バネ57bによるスラスト方向の弾発力の作用を受けない状態であっても、カバー24の左側面との間にスラスト方向の隙間Tを有する状態にセットされている。それにより、ガイド部材57cは、上記摩擦抑制状態P1において、カバー24の左側面に対して、擦れや当たりに伴う異音を発生させにくくなっている。また、上記ガイド部材57cは、図39に示すように、各クラッチ部57aが径方向の外側に押し出されて摩擦オン状態P2に切り換えられた場合にも、各クラッチ部57aがガイド部材57cとカバー24の左側面との間にスラスト方向に押し込まれるようになっていることで、カバー24の左側面との間にスラスト方向の隙間Tを有した状態とされる。それにより、ガイド部材57cは、上記摩擦オン状態P2においても、カバー24の左側面に対して擦れや当たりに伴う異音を発生させにくくなっている。
上記ガイド部材57cは、図10に示すように、そのリング形状の内周縁から左側に略円筒状に張り出すフランジ部57c3を有する。上記フランジ部57c3は、板バネ57bのリング内にセットされて、板バネ57bを内周側から支持してガイド部材57cと同心上の位置に保持する。上記板バネ57bは、ガイド部材57cに対して回転方向に一体的となる状態に連結されている。具体的には、板バネ57bの内周縁部から径方向の内側に向けて突出する係止爪57b1が、ガイド部材57cのフランジ部57c3の対応する箇所に形成された係止孔57c4内に径方向の外側から嵌め込まれることで、板バネ57bがガイド部材57cに対して回転方向に一体的となる状態に連結されている。それにより、板バネ57bが回転せず、板バネ57bにより発揮される摩擦抵抗力が変動しにくくなるため、操作ハンドル20の操作フィーリングを一定に保つことができる。
<回転制御装置21の作用(操作ハンドル20が非操作)>
以下、図16~図28に基づいて回転制御装置21によるシートクッション2の高さ調整作用について説明する。
図16及び図17は、操作ハンドル20が操作されず、入力部材Nを成すアウタレバー41及びインナレバー53が回転していない中立位置の状態を示す。このとき、図16のように、送り爪52は、トーションスプリング55の付勢によりその外歯を成す係合端部52aが回転伝達プレート36の内歯51に噛合した状態とされている。また、図17のように、各ポール32、33は、各トーションスプリング35の付勢によりそれらの外歯を成す各係合端部32c、33cがベース23の内歯34に係合した状態とされている。したがって、上記各ポール32、33の係合を介して回転プレート31の回転がロックされて、シート1の高さは上昇側にも下降側にも変更されない。また、各クラッチ部57aがインナレバー53の対応する逃がし面53f上に位置して、摩擦の発生を抑制する摩擦抑制状態P1とされる。
<回転制御装置21の作用(操作ハンドル20を押し下げ操作)>
図18~図21は、操作ハンドル20が中立位置から押し下げ操作された状態を示す。このとき、図18のように、アウタレバー41の回転によりインナレバー53が矢印方向に回転される。その結果、各送り爪52が同方向に移動される。そのため、前側の送り爪52の外歯を成す係合端部52aが回転伝達プレート36の内歯51に力を伝達して、回転伝達プレート36を矢印方向に押し回す。このとき、後側の送り爪52の外歯を成す係合端部52aは、回転伝達プレート36の内歯51とは噛み合わない状態とされる。即ち、回転伝達プレート36の回転に伴って、後側の送り爪52が同側の乗り上げ部24c上に乗り上げて、係合端部52aが内歯51との噛合から離された状態とされる。
上記のようにインナレバー53が回されると、各クラッチ部57aが、インナレバー53の対応する乗り上がり面53g上に乗り上がって摩擦オン状態P2に切り換えられる。その時、図19に示すように、各ポール32、33は未だ、ベース23の内歯34と噛合した状態に保持される。そして、上記の状態から回転伝達プレート36がインナレバー53によって更に回されると、図20のように、回転伝達プレート36と一体を成す制御プレート56の制御孔56bが、対角位置にある2つのポール33のピン33bに係合して各ポール33の係合端部33cをベース23の内歯34との噛合から外すように径方向の内側に押し回す。
詳しくは、上記制御プレート56に形成された4つの制御孔56bは、図17に示すように、回転伝達プレート36が回転プレート31に対してトーションスプリング37の付勢作用によって中立位置の状態にある時には、各ポール32、33のピン32b、33bに対して次のように位置付けられるようになっている。すなわち、対角位置にある2つのポール32のピン32bが挿入された対応する2つの制御孔56bは、各ピン32bに対してそれらの回転方向に面を向ける傾斜側面を図示反時計回り方向に近付けた、回転方向に偏った位置に位置付けられている。また、上記とは異なる他の対角位置にある2つのポール33のピン33bが挿入された対応する2つの制御孔56bは、各ピン33bに対してそれらの回転方向に面を向ける傾斜側面を図示時計回り方向に近付けた、回転方向に偏った位置に位置付けられている。
このような構成とされていることにより、回転伝達プレート36は、上述した中立位置から図20に示すように図示時計回り方向に回されることで、上記の対角位置にある2つのポール33のピン33bが挿入された2つの制御孔56bの傾斜側面を、これら2つのピン33bに当接させて、その回転の進行に伴って各ピン33bを各制御孔56bの傾斜側面に沿って径方向の内側に押し滑らせながら、他の2つのポール32の係合端部32cをベース23の内歯34に噛合させた状態に残しつつ、各ポール33の係合端部33cをベース23の内歯34との噛合から外し出すようになっている。
それにより、回転プレート31の下降回転方向のロック状態が解除される。その後、制御プレート56の各係合長孔56cの端部に回転プレート31の各突起31dが当接すると、回転伝達プレート36の回転が回転プレート31に伝達される状態となる。したがって、図21に示すように、回転プレート31をベース23に対して回転伝達プレート36の送り回転される図示時計回り方向に送り回転させて、回転プレート31と一体を成す出力軸22を同方向に一体的に送り回転させることができる。このとき、他の対角位置にある2つのポール32の係合端部32cは、ベース23の内歯34とは噛み合わないようにされている。即ち、この状態では、係合端部32cの歯が内歯34の歯の法線方向の荷重を受けて噛合解除方向に移動される。そのため、回転プレート31が回転すると、上記2つのポール32の係合端部32cは、ベース23の内歯34上を滑るように摺動されることとなる。
上記解除操作された対角位置にある2つのポール33は、回転伝達プレート36による回転プレート31の送り回転が止められて、図22に示すように操作ハンドル20が中立位置へと戻される時には、図23に示すように、制御プレート56の各制御孔56bによる各ポール33の解除保持状態が解除されて、制御プレート56(回転伝達プレート36)が回転プレート31に対してトーションスプリング37の付勢作用によって中立位置へと戻される動きと共に、それらの係合端部33cをベース23の内歯34に噛合させるようになっている。それにより、回転プレート31と一体的となって回転する出力軸22が、ベース23に対して回転止めされた状態に戻される。また、上記操作ハンドル20が中立位置へと戻されることにより、図16に示すように、各クラッチ部57aがインナレバー53の乗り上がり面53g上から逃がし面53f上へと戻されて、摩擦抑制状態P1となる。
<回転制御装置21の作用(操作ハンドル20を引き上げ操作)>
図24~図26は、操作ハンドル20が中立位置から引き上げ操作された状態を示す。このとき、図24のように、アウタレバー41の回転によりインナレバー53が矢印方向に回転される。その結果、各送り爪52が同方向に移動される。そのため、後側の送り爪52の外歯を成す係合端部52aが回転伝達プレート36の内歯51に力を伝達して、回転伝達プレート36を矢印方向に押し回す。このとき、前側の送り爪52の外歯を成す係合端部52aは、回転伝達プレート36の内歯51とは噛み合わない状態とされる。即ち、回転伝達プレート36の回転に伴って、前側の送り爪52が同側の乗り上げ部24c上に乗り上げて、係合端部52aが内歯51との噛合から離された状態とされる。
上記のようにしてインナレバー53が回される時には、各クラッチ部57aは、インナレバー53の逃がし面53f上を摺動し、摩擦抑制状態P1のまま保持される。そして、上記回転伝達プレート36の回転により、図25に示すように、回転伝達プレート36と一体を成す制御プレート56の制御孔56bが、対角位置にある2つのポール32のピン32bに係合して、他の対角位置にある2つのポール33の係合端部33cをベース23の内歯34に噛合させた状態に残しつつ、上記2つのポール32の係合端部32cをベース23の内歯34との噛合から外すように径方向の内側に押し回す。
それにより、回転プレート31の上昇回転方向のロック状態が解除される。その後、制御プレート56の各係合長孔56cの端部に回転プレート31の各突起31dが当接すると、回転伝達プレート36の回転が回転プレート31に伝達される状態となる。したがって、図26に示すように、回転プレート31をベース23に対して回転伝達プレート36の送り回転される図示反時計回り方向に送り回転させて、回転プレート31と一体を成す出力軸22を同方向に一体的に送り回転させることができる。このとき、他の対角位置にある2つのポール33の係合端部33cは、ベース23の内歯34とは噛み合わないようにされている。即ち、この状態では、係合端部33cの歯が内歯34の歯の法線方向の荷重を受けて噛合解除方向に移動される。そのため、回転プレート31が回転すると、上記2つのポール33の係合端部33cは、ベース23の内歯34上を滑るように摺動されることとなる。
上記解除操作された対角位置にある2つのポール32は、回転伝達プレート36による回転プレート31の送り回転が止められて、図27に示すように操作ハンドル20が中立位置へと戻される時には、図28に示すように、制御プレート56の各制御孔56bによる各ポール32の解除保持状態が解除されて、制御プレート56(回転伝達プレート36)が回転プレート31に対してトーションスプリング37の付勢作用によって中立位置へと戻される動きと共に、それらの係合端部32cをベース23の内歯34に噛合させるようになっている。それにより、回転プレート31と一体を成す出力軸22が、ベース23に対して回転止めされた状態に戻される。
なお、上述した各ポール32、33は、それぞれ、図17に示すように、それらの係合端部32c、33cがベース23の内歯34に噛合されている時には、それらのピン32b、33bが、各ポール32、33の回転プレート31に対する回転中心である突起31eと内歯34の歯先との間の径方向(ラジアル方向)の中間部に位置するようになっている。そのようなことから、各ポール32、33を回転伝達プレート36の回転移動量に対して効率的に径方向の内側に回転させて、ベース23の内歯34との噛合から外すことができる(図20及び図25参照)。したがって、操作ハンドル20の操作に伴う各ポール32、33のロックの解除操作に要するストロークを短くすることができる。
<回転制御装置21の作用>
以上のとおり、操作ハンドル20を押し下げ操作すると、その操作に応じた移動量だけシート1は下降される。その押し下げ操作の繰り返しによりシート1を望みの高さに調整することができる。反対に、操作ハンドル20を引き上げ操作したときも、同様に、その操作に応じた移動量だけシート1は上昇される。その引き上げ操作の繰り返しによりシート1を望みの高さに調整することができる。以上の操作によりシート1が下限位置又は上限位置に達すると、図32又は図33のように出力軸22のそれ以上の回転が止められる。
<第2の実施形態>
図40~43は、本発明の第2の実施形態を示す。第2の実施形態が第1の実施形態に対して特徴とする点は、回転制御装置21の摩擦発生部57の構成、特にクラッチ部57a(157a)の構成を変更した点である。その他の構成は両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。なお、図40では、第2の実施形態において第1の実施形態に対して変更された部品のみを示している。また、図42、44においてインナレバー153は、第2の実施形態において第1の実施形態に対して変更された外形形状のみを示し、それ以外の形状の記載を省略している。
図40~43のように、ガイド部材157cは、円形リング状であり、その右側円周面上の3か所に等間隔で係合突起157c1が形成されている。この係合突起157c1は、カバー124の貫通孔124fに嵌合してガイド部材157cをスラスト方向以外に移動しないように固定している。ガイド部材157cの左側面で係合突起157c1が形成された面とは反対側には、板バネ57bを押圧する押圧面157c2が3か所に分けて形成されている。押圧面157c2は、ガイド部材157cの一般面から左側に突出して形成されている。
ガイド部材157cの右側面上には3か所の係合突起157c1にそれぞれ隣接してクラッチ部157aが設けられている。クラッチ部157aは、図41に拡大して示すように、ガイド部材157cのリング形状に沿ってガイド部材157cの右側面上で一端を中心として回転自在に置かれた部材であり、回転中心となる一端部には突起157a1が右側に突出して形成されている。また、クラッチ部157aの他端(回転端部)には、図41の実線(クラッチ部157aをガイド部材157cから分離した状態を示す)で示すように、ガイド部材157cの右側面に向けて当接面157a3が形成されている。突起157a1は、係合突起157c1と同様、カバー124の貫通孔124fに嵌合して、クラッチ部157aが突起157a1を中心として回転自在に支持されている。ガイド部材157cの右側面上でクラッチ部157aの当接面157a3が当接する部分には、螺旋面157c3が形成されている。螺旋面157c3は、クラッチ部157aの回転軸(突起157a1)の軸心を中心とした螺旋面とされている。この螺旋面157c3は、ガイド部材157cの内周側から外周側に向けて連続して右側に膨出する形状とされている。また、クラッチ部157aの当接面157a3の内周側には、突出部157a2が形成され、突出部157a2は、クラッチ部157aがガイド部材157cのリング形状に沿って置かれたとき、ガイド部材157cのリング形状の内周側に突出するようにされている。
図42、43のように、ガイド部材157cの内周側には、インナレバー153があり、インナレバー153の外周には径方向外側に突出する、周方向に3か所の乗り上がり面153gが形成されている。インナレバー153の乗り上がり面153gは、ガイド部材157cのクラッチ部157aにガイド部材157cの周方向で隣接配置されている。そのため、図44のように、インナレバー153がシート1を下降する方向(矢印方向)に回転されたとき、乗り上がり面153gの外周面によってクラッチ部157aの突出部157a2がガイド部材157cの径方向外側に矢印のように押圧される。そのため、ガイド部材157cは、螺旋面157c3に対する当接面157a3の相対移動により出力軸22のスラスト方向に移動され、板バネ57bに押し付けられるように機能する。その結果、摩擦発生部57は、摩擦オン状態P2となる。
第2の実施形態の摩擦発生部57によれば、クラッチ部157aの移動軌跡が突起157a1の軸心を回転中心とした回転運動に決められているため、クラッチ部157aが移動中に余分な動きをすることがなく、移動時の摩擦抵抗が少なくなる。そのため、インナレバー153を回転するための操作力が軽くなる効果がある。
<まとめ>
以上をまとめると、第1の実施形態に係るリフタ装置10は、次のような構成とされている。すなわち、操作ハンドル(20)から回転動力の伝達を受けて回転しシート(1)を昇降動作させる出力軸(22)を備えたリフタ装置(10)である。このリフタ装置(10)は、出力軸(22)を回転可能に支持する支持部材(S)と、操作ハンドル(20)に結合され出力軸(22)の軸線回りに回転操作される入力部材(N)と、入力部材(N)の正逆双方向の回転を出力軸(22)に伝達する送り部(A)と、出力軸(22)の回転を支持部材(S)に対してロックするロック部(B)と、出力軸(22)の回転に摩擦力を掛ける摩擦発生部(57)と、を有する。
摩擦発生部(57)が、出力軸(22)と一体的に回転される回転部材(31)の支持部材(S)に対する相対回転に対し、摩擦力を付与する弾性体(57b)と、入力部材(N)に連結された回転カム(53)と、回転カム(53)の外周側に設けられたリング形状のガイド部材(57c)と、ガイド部材(57c)により回転カム(53)の径方向に摺動可能にガイドされた状態として設けられ、回転カム(53)の回転により回転カム(53)の径方向に押動されて、弾性体(57b)を、出力軸(22)と一体的に回転する回転部材(31)に向けて押し付けて、弾性体(57b)と回転部材(31)との間に摩擦を発生させるクラッチ部(57a)と、を有する。回転カム(53)が、操作ハンドル(20)が操作されない中立位置にある状態、及び中立位置からシート(1)を上昇させる方向に回された状態では、クラッチ部(57a)を径方向に押動せず、弾性体(57b)による摩擦の発生を抑制する摩擦抑制状態(P1)とするが、操作ハンドル(20)が中立位置からシート(1)を下降させる方向に回された状態では、クラッチ部(57a)を径方向に押動して、弾性体(57b)による摩擦を発生させる摩擦オン状態(P2)とするカム構造とされる。
上記構成によれば、操作ハンドル(20)の非操作時、及びシート(1)を上昇させる方向に操作される時には、摩擦発生部(57)は摩擦抑制状態(P1)とされる。したがって、操作ハンドル(20)によってシート(1)を上昇させる時の操作荷重が重くならない。また、操作ハンドル(20)が中立位置に戻された時に、ロック部(B)を摩擦の影響なしに円滑にロックさせることができる。一方、操作ハンドル(20)がシート(1)を下降させる方向に操作される時には、摩擦発生部(57)が摩擦オン状態(P2)とされる。したがって、出力軸(22)がシート(1)に掛かる自重作用によって滑り回転することを適切に防止できる。また、クラッチ部(57a)が弾性体(57b)を回転部材(31)との間にスラスト方向に押し付ける構成により、操作ハンドル(20)を中立位置に戻す際の回動が阻害されにくい。
また、ロック部(B)が、操作ハンドル(20)が中立位置から正逆各方向に所定量回されることで支持部材(S)とのロックから外される解除構造とされる。回転カム(53)が、操作ハンドル(20)が所定量回されるまでの回転によりクラッチ部(57a)を径方向に押動して摩擦オン状態(P2)に切り換える。上記構成によれば、操作ハンドル(20)がシート(1)を下降させる方向に操作されてロック部(B)のロックが解除される時には、必ず摩擦発生部(57)が摩擦オン状態(P2)とされる。したがって、出力軸(22)がシート(1)に掛かる自重作用によって滑り回転することをより適切に防止できる。
また、ガイド部材(57c)は、出力軸(22)の回転方向では支持部材(S)と一体的とされ、出力軸(22)の軸方向では支持部材(S)に対して摺動可能とされ、ガイド部材(57c)は、回転カム(53)によるクラッチ部(57a)の径方向への移動に伴ってクラッチ部(57a)との当接により出力軸(22)の軸方向へガイド部材(57c)自体を移動させる傾斜面(57c2)を備える。上記構成によれば、操作ハンドル(20)が正逆双方向に回されたり中立位置に戻されたりする動きに対して、クラッチ部(57a)を摩擦オン状態(P2)と摩擦抑制状態(P1)とに円滑に切り換えることができる。
また、ガイド部材(157c)は、支持部材(S)の面上に設けられ、出力軸(22)の回転方向では支持部材(S)と一体的とされ、出力軸(22)の軸方向では支持部材(S)に対して摺動可能とされ、クラッチ部(157a)は、ガイド部材のリング形状に沿った面上の予め決められた位置を回転中心としてガイド部材(157c)のリング形状に沿った面上で回転自在に支持され、クラッチ部(157a)の回転端部と回転端部に対するガイド部材(157c)上の支持面は、いずれか一方がクラッチ部(157a)の回転中心を中心とした螺旋面とされ、いずれか他方がクラッチ部(157a)の回転に伴って螺旋面に対して当接して摺動する当接面とされ、クラッチ部(157a)の回転端部が回転カムにより径方向に押動されることでクラッチ部(157a)が回転して、ガイド部材(157c)により弾性体を回転部材(31)に向けて押し付けるように構成されている。上記構成によれば、クラッチ部(157a)の移動軌跡が回転中心を決められた回転運動とされているため、クラッチ部(157a)が移動中に余分な動きをすることがなく、移動時の摩擦抵抗が少なくなる。そのため、回転カム(153)を回転するための操作力が軽くなる効果がある。
また、ガイド部材(57c)は、出力軸(22)の回転方向では支持部材(S)と一体的とされ、出力軸(22)の軸方向では支持部材(S)に対して摺動可能とされ、ガイド部材(57c)は、回転カム(53)によるクラッチ部(57a)の径方向への移動に伴ってクラッチ部(57a)との当接により出力軸(22)の軸方向へガイド部材(57c)自体を移動させる傾斜面(57c2)を備え、ガイド部材(57c)が、摩擦抑制状態(P1)においてクラッチ部(57a)を間に介して支持部材(S)との間に出力軸(22)の軸方向の隙間(T)を有する。上記構成によれば、支持部材(S)とガイド部材(57c)とが直接接触しにくい構成となるため、両者間の当たりによる異音の発生を抑制することができる。
また、弾性体(57b)が、ガイド部材(57c)に対してガイド部材(57c)の回転方向に一体的となる状態に結合される。上記構成によれば、弾性体(57b)により発揮される摩擦抵抗力が変動しにくくなるため、操作ハンドル(20)の操作フィーリングを一定に保つことができる。
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
1.本発明のリフタ装置は、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートの他、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、本発明のリフタ装置は、映画館等の施設に設置される非乗物用のシートにも広く適用することができるものである。
2.摩擦発生部を構成する弾性体は、必ずしも環状の部材から成るものでなくても良く、回転方向の1箇所又は複数箇所に分散して設けられるピース(小片)から成るものであっても良い。また、弾性体は、ゴムや樹脂等の金属以外の材料から成るものであっても良い。また、弾性体は、クラッチ部を支持するガイド部材がある場合にはガイド部材に取り付けられる構成であっても良いが、支持部材又は出力軸と一体的に回転する回転部材に取り付けられる構成であっても良い。
3.クラッチ部は、支持部材に対してスラスト方向にのみ移動可能となるように支持されたガイド部材により支持部材に対して間接的に支持されるものの他、支持部材に対して直接的に支持される構成であっても良い。上記クラッチ部は、回転方向の1箇所、2箇所又は4箇所以上に設けられる構成であっても良い。
第2の実施形態では、ガイド部材に螺旋面を設け、クラッチ部の回転端部に当接面を設けたが、反対にガイド部材に当接面を設け、クラッチ部の回転端部に螺旋面を設けても良い。この場合、クラッチ部の回転端部に螺旋面は、ガイド部材の外周側から内周側に向けて連続してガイド部材の当接面に向けて膨出する形状とされる。
4.摩擦発生部の摩擦抑制状態は、摩擦オン状態より小さな摩擦を発生させる状態の他、摩擦を発生させない状態であってもよい。