JP7554164B2 - 線状体設置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、地盤内に線状体を設置する方法に関する。
トンネルや地下空洞を構築する際に、線状体を地盤内に設置し、線状体を用いて地盤の状態を検出することがある。特許文献1には、地盤の変位を測定するための線状体として光ファイバケーブルを地盤内に設置する方法が開示されている。
特許文献1に開示された方法では、地盤に形成されたボーリング孔内に挿入された光ファイバケーブルが所定の位置に位置するように、光ファイバケーブルが取り付けられたパイプの外周面に周方向及び軸方向に沿って位置決めスペーサが設けられている。
特開2002-156215号公報
特許文献1に開示された方法では、位置決めスペーサが、光ファイバケーブルが設置される範囲にわたって設けられる。このため、ボーリング孔が長いほど、多くの位置決めスペーサをパイプに取り付ける必要があり、また、光ファイバケーブルを所定の位置に位置させるためには、周方向及び軸方向において位置決めスペーサをできるだけ均等に取り付ける必要がある。このため、光ファイバケーブルをボーリング孔内に挿入する前の準備工数が増大し、結果として、施工期間が長引くおそれがある。
本発明は、地盤内に設置される線状体の位置決めを効率よく行うことを目的とする。
本発明は、地盤に形成された孔内に線状体を設置する線状体設置方法であって、先端部に前記孔の径方向外側に拡径可能な拡径体が設けられ、外周面に前記線状体が軸方向に沿って取り付けられた中空のパイプ材を前記孔内に挿入する挿入工程と、前記拡径体を径方向外側に拡径させて前記パイプ材の前記先端部を前記孔に対して固定する先端部固定工程と、前記孔の開口端において前記パイプ材の基端部を前記孔に対して固定する基端部固定工程と、充填ホースを通じて前記孔内に充填材を充填する充填工程と、を含み、前記パイプ材は、内側と外側とを連通する連通孔を有し、前記充填ホースの放出口は、前記連通孔よりも鉛直方向下方に配置され、前記充填工程では、前記パイプ材の外周面と前記孔の内壁面との間に前記充填材が前記開口端側から充填されることにより、前記連通孔を通じて前記孔内の空気が前記孔外へと排出される。
また、本発明は、地盤に形成された孔内に線状体を設置する線状体設置方法であって、先端部に前記孔の径方向外側に拡径可能な拡径体が設けられ、外周面に前記線状体が軸方向に沿って取り付けられた棒材を前記孔内に挿入する挿入工程と、前記拡径体を径方向外側に拡径させて前記棒材の前記先端部を前記孔に対して固定する先端部固定工程と、前記孔の開口端において前記棒材の基端部を前記孔に対して固定する基端部固定工程と、充填ホースを通じて前記孔内に充填材を充填する充填工程と、を含み、前記充填工程において前記孔内の空気を外部へ排出するための排気パイプが前記棒材に沿って設けられ、前記充填ホースの放出口は、前記排気パイプの開口端よりも鉛直方向下方に配置され、前記充填工程では、前記棒材の外周面と前記孔の内壁面との間に前記充填材が前記開口端側から充填されることにより、前記排気パイプを通じて前記孔内の空気が前記孔外へと排出される。
また、本発明は、地盤に形成された孔内に線状体を設置する線状体設置方法であって、先端部に前記孔の径方向外側に拡径可能な拡径体が設けられ、外周面に前記線状体が軸方向に沿って取り付けられた中空のパイプ材を前記孔内に挿入する挿入工程と、前記拡径体を径方向外側に拡径させて前記パイプ材の前記先端部を前記孔に対して固定する先端部固定工程と、前記孔の開口端において前記パイプ材の基端部を前記孔に対して固定する基端部固定工程と、充填ホースを通じて前記孔内に充填材を充填する充填工程と、を含み、前記充填工程において前記孔内の空気を外部へ排出するための排気パイプが前記パイプ材に沿って設けられ、前記充填ホースの放出口は、前記排気パイプの開口端よりも鉛直方向下方に配置され、前記充填工程では、前記パイプ材の外周面と前記孔の内壁面との間に前記充填材が前記開口端側から充填されることにより、前記排気パイプを通じて前記孔内の空気が前記孔外へと排出される。
本発明によれば、地盤内に設置される線状体の位置決めを効率よく行うことができる。
本発明の実施形態に係る線状体設置方法により孔内に設置された線状体を示す図である。 本発明の実施形態に係る線状体設置方法を時系列に沿って示す図である。 図2に続く本発明の実施形態に係る線状体設置方法を時系列に沿って示す図である。 本発明の実施形態に係る線状体設置方法の変形例を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る線状体設置方法について説明する。
まず、図1から図3を参照して、本発明の実施形態に係る線状体設置方法によって、地盤に形成された孔内に線状体を設置する工程及び構成について説明する。ここでは、線状体が光ファイバケーブルである場合について説明する。なお、線状体としては、光ファイバケーブル以外に、高精度に温度、歪等を計測可能な線状部材である電線等が挙げられる。
土木構造物の構築において、地滑り等の地盤の状態を把握することは重要であり、また、トンネル等の地下空洞の掘削に伴って地盤に生じる緩み域の進展を把握することは、安定した状態で掘削を進めるためには重要であることから、地中の歪みや緩み域を検出するために地盤に掘削されたボーリング孔内に光ファイバケーブルを設置することがある。
ボーリング孔内に埋設された光ファイバケーブルは、地中の歪みや地盤の緩みに応じて歪みを生じることから、光ファイバケーブルの歪みを計測することにより地中の歪みや地盤の緩みを計測することができる。
具体的には、光ファイバケーブルには入射されたパルス光を僅かに後方に散乱させる性質があり、この性質を利用することにより、光ファイバケーブルにおける複数位置での歪みを計測することが可能である。散乱光の周波数は光ファイバケーブルの歪みに依存するため、パルス光を光ファイバケーブルに入射し、散乱光の周波数を計測することにより光ファイバケーブルの歪みを計測することができる。また、光ファイバケーブルにパルス光を入射してから光ファイバケーブル内で発生した散乱光が入射位置に戻るまでの時間を測定することにより、散乱光が発生した位置、すなわち光ファイバケーブルに歪みが生じた位置を計測することができる。
したがって、地盤に掘削されたボーリング孔内に光ファイバケーブルを埋設し、埋設された光ファイバケーブルの歪みを計測することによって、複数位置で生じた地中の歪みや地盤の緩みを計測することが可能となり、結果として、地盤の状態を正確に把握することができる。
ここで、トンネル等の地下空洞を掘削する際には、地下空洞の上方や側方における地盤の状態を把握する必要が生じるが、この場合、光ファイバケーブルが挿入されるボーリング孔は、鉛直方向上方や水平方向よりも上方に向けて形成されることになる。つまり、光ファイバケーブルを鉛直方向上方や水平方向よりも上方に向かって挿入した上で、ボーリング孔内に埋設する必要がある。
しかしながら、光ファイバケーブルは、一般的に撓みやすく、自立しにくいことから、鉛直方向上方や水平方向よりも上方に向かって形成されたボーリング孔内に10m以上の比較的長い距離にわたって光ファイバケーブルを単体で挿入することはほぼ不可能である。
また、光ファイバケーブルを地盤と一体化させるために、光ファイバケーブルが挿入されたボーリング孔内に、セメントベントナイト等のグラウトが充填されるが、鉛直方向上方や水平方向よりも上方に向けて形成されたボーリング孔内に重力に逆らってグラウトを充填することが必要となる。
さらに、光ファイバケーブルが挿入されたボーリング孔内にグラウトを充填することができたとしても、光ファイバケーブルがボーリング孔内で曲がりくねった状態で埋設されてしまうと、ボーリング孔の内壁面と光ファイバケーブルとの間にほとんど隙間がない箇所や隙間が大きすぎる箇所が生じることとなる。このようにボーリング孔の内壁面と光ファイバケーブルとの間の間隔がばらついてしまうと、地山から光ファイバケーブルへと伝達される歪みにもばらつきが生じ、結果として、光ファイバケーブルにより地盤の状態を正確に把握することができなくなるおそれがある。
このような課題を解決するために、本実施形態に係る線状体設置方法では、図1~図3に示すように、地盤1に掘削されたボーリング孔2(孔)内に、棒材10とともに光ファイバケーブル50(線状体)を挿入した後、棒材10の先端部と基端部とをボーリング孔2に対して固定することによって、ボーリング孔2内における光ファイバケーブル50の位置決めを効率よく行い、ボーリング孔2がどのような方向に向けて掘削されている場合であっても、ボーリング孔の内壁面と光ファイバケーブルとの間の間隔が軸方向においてばらつかないようにしている。図1は、本実施形態に係る線状体設置方法によって、ボーリング孔2内に設置された光ファイバケーブル50及び光ファイバケーブル50の一部を保持する保持ユニット100の状態を模式的に示した概略図であり、図2の(A)~(C)及び図3の(A)~(C)は、本実施形態に係る線状体設置方法を時系列に沿って示した図である。
まず、図1を参照し、後に詳述する線状体設置方法によって、ボーリング孔2内に設置された光ファイバケーブル50及び光ファイバケーブル50を保持する保持ユニット100について説明する。なお、以下ではボーリング孔2が鉛直方向上方に向かって掘削されている場合について説明する。
保持ユニット100は、光ファイバケーブル50が軸方向に沿って取り付けられた棒材10(パイプ材10)と、棒材10(パイプ材10)の先端側に取り付けられ、ボーリング孔2の径方向外側に拡径可能な拡径体20と、棒材10(パイプ材10)に沿って設けられた充填ホース30と、を有する。棒材10は、ボーリング孔2の内径よりも十分に小さい外径を有する長尺部材であり、図1に示されるような中空のパイプ材10であることが好ましい。
パイプ材10は、ポリ塩化ビニル等の樹脂で形成された中空の管状部材であり、軸方向に貫通して形成された内部通路11と、内部通路11の内周面において一端が開口しパイプ材10の内側と外側とを連通する連通孔12と、を有する。連通孔12は、保持ユニット100がボーリング孔2内に挿入された状態において、パイプ材10の先端側に形成されており、後述の充填工程において、ボーリング孔2内の空気をボーリング孔2外へ排出する排出口として機能する。
拡径体20は、供給される流体の圧力に応じて径方向外側に向かって膨張する膨張部22と、膨張部22を径方向内側において支持する支持部21と、加圧された流体を供給する供給パイプ24と、を有する。図1には、膨張部22がボーリング孔2の径方向外側に向かって膨張し、ボーリング孔2の内壁面を膨張部22が押圧している状態が示されている。このように膨張部22が膨張した状態において、膨張部22の軸心と支持部21の軸心とは、ほぼ一致しており、これらは同心円状に配置される。
膨張部22は、外形が樽状または筒状に形成されたゴム製または金属製の部材であって、支持部21と膨張部22との間に形成される図示しない空間に供給される流体の圧力に応じて径方向外側へと膨張するよう支持部21により支持されている。
拡径体20に供給される流体は、例えば、加圧された水であり、膨張部22は、水圧に応じた荷重でボーリング孔2の内壁面を押圧する。なお、拡径体20に供給される流体は、水に限定されず、圧縮空気や加圧された作動油であってもよい。
支持部21は、軸方向に貫通して形成された貫通孔21aを有する筒状部材であり、軸方向一端部は、パイプ材10の先端部に図示しない結合部材を介して結合されている。支持部21がパイプ材10に結合されることで支持部21の貫通孔21aとパイプ材10の内部通路11とは連通した状態となる。
一方、支持部21の軸方向他端面21bは、図1に示されるように、保持ユニット100がボーリング孔2内に挿入される際に、ボーリング孔2の底面2aに押し当てられる。つまり、支持部21の軸方向他端面21bは、ボーリング孔2内へ挿入される保持ユニット100の長さを規制する規制面として機能する。
供給パイプ24は、パイプ材10に軸方向に沿って取り付けられており、その一端24aは、支持部21と膨張部22との間に形成される空間に開口している。供給パイプ24の他端24bは、加圧された流体が供給パイプ24を通じて膨張部22に供給される前の段階では、ボーリング孔2の外において、図示しないポンプ等の流体供給源に接続され、膨張部22への流体の供給が完了した段階では、図1に示されるように、ボーリング孔2内に収容される。なお、一旦膨張した膨張部22の膨張状態を保持するために、供給された流体の逆流を防止する逆流防止弁が供給パイプ24上に設けられてもよい。
充填ホース30は、後述の充填工程においてボーリング孔2内に充填されるグラウト40が流通するホースであり、グラウト40を放出する放出口30aが、ボーリング孔2内において開口するようにパイプ材10に沿って取り付けられている。放出口30aの位置は、図1に示すように、保持ユニット100がボーリング孔2内に挿入された状態において、パイプ材10に形成された連通孔12よりも鉛直方向下方に設定されている。なお、放出口30aは、連通孔12よりも鉛直方向下方に配置されていればよく、例えば、ボーリング孔2の開口端2b付近に配置されていてもよい。充填ホース30の他端は、ボーリング孔2の外において、図示しないグラウト送出ポンプに接続される。
保持ユニット100により保持される光ファイバケーブル50は、図示しない複数の光ファイバと鋼製線材とが樹脂材で覆われた断面形状が扁平状の線状部材であり、光ファイバケーブル50の先端部50aは、先端面において反射が生じないように油脂、シリコン等のシール材によって閉塞処理されている。断面形状が扁平状の光ファイバケーブル50を用いることにより、内部の光ファイバに捩じれが生じてしまうことを避けつつ、パイプ材10の表面に沿って光ファイバケーブル50を一直線上に這わせることができる。
光ファイバケーブル50の先端部50aは、パイプ材10に形成された連通孔12を通じてパイプ材10の内部通路11及び支持部21の貫通孔21a内に挿入され、支持部21の軸方向他端面21b近傍に接着剤、シリコン等により固定される。ボーリング孔2は予め設定された所定の深さまで掘削されており、ボーリング孔2の底面2aに当接する軸方向他端面21bは、ボーリング孔2の最深部に位置することになることから、光ファイバケーブル50の先端部50aを軸方向他端面21bの近傍に固定しておくことによって、先端部50aをボーリング孔2に沿った地盤1の歪みを計測する際の基準点とすることができる。
一方、光ファイバケーブル50の他端は、ボーリング孔2の外において、計測装置60に接続される。
なお、ボーリング孔2内に光ファイバケーブル50が挿入される際に、閉塞処理された先端部50aが傷付いたり破損してしまったりすることを防止するために、支持部21の貫通孔21aは、軸方向他端面21b側において閉塞されていてもよい。
また、支持部21内には、光ファイバケーブル50の先端部50aではなく、光ファイバケーブル50の折り返し部が固定されていてもよく、この場合、計測装置60には、光ファイバケーブル50の両端部が接続される。
パイプ材10の外周面に軸方向に沿って設けられる光ファイバケーブル50と供給パイプ24と充填ホース30との3つの部材は、固定テープ14によってパイプ材10に固定される。固定テープ14は、軸方向において所定の間隔で複数設けられる。
また、保持ユニット100は、ボーリング孔2の開口端2bにおいて、パイプ材10の基端部をボーリング孔2に対して固定するためのフランジ16をさらに有する。
フランジ16は、保持ユニット100がボーリング孔2内に挿入された状態において、ボーリング孔2の外側に突出するパイプ材10の基端部を支持するために設けられた板状部材であり、パイプ材10とパイプ材10の周りに設けられる光ファイバケーブル50及び充填ホース30とが挿通可能な挿通孔16aと、ボーリング孔2の開口部を取り囲むように地盤1に埋め込まれたアンカーボルト4が挿通する複数のボルト孔16bと、を有する。
フランジ16は、アンカーボルト4に螺合されたナット5が締め付けられることによって、ボーリング孔2に対して固定された状態となる、なお、フランジ16に形成される挿通孔16a及びボルト孔16bの位置やアンカーボルト4が埋め込まれる位置は、挿通孔16aに挿入されるパイプ材10の軸心がボーリング孔2の軸心とほぼ一致するように予め設定される。
フランジ16の挿通孔16aは、パイプ材10とパイプ材10の周りに設けられる光ファイバケーブル50及び充填ホース30とが余裕をもって挿通可能な内径を有している。このため、フランジ16の挿通孔16aの内周面と、パイプ材10の外周面や光ファイバケーブル50及び充填ホース30と、の間には隙間が生じる。この隙間は、図示しないエポキシ系接着剤や超速硬セメント等のシール剤によって封止される。
また、フランジ16には、一端がボーリング孔2内において開口する図示しない封止材注入孔が設けられる。後述の基端部固定工程において、封止材注入孔を通じてボーリング孔2内のフランジ16近傍にウレタン材等の封止材18が注入されることによって、ボーリング孔2の開口端2bが閉塞され、ボーリング孔2内の空間は外部に対して遮断された状態となる。
なお、フランジ16は、単一の板状部材である必要はなく、互いに部分的に重なり合うことにより挿通孔16aを形成する複数の部材によって構成された分割フランジであってもよい。また、封止材注入孔をフランジ16に形成することに代えて、封止材18を注入するための注入ホースを挿通孔16aに別途挿入してもよい。
封止材18が開口端2bに注入されることによって遮断されたボーリング孔2内の空間に、充填ホース30を通じてセメントベントナイト等のグラウト40(充填材)が充填されることにより、光ファイバケーブル50は、パイプ材10とともにボーリング孔2内に埋設され、地盤1とほぼ一体化された状態となる。なお、グラウト40が充填される際、ボーリング孔2内の空気は、パイプ材10の連通孔12及び内部通路11を通じてボーリング孔2の外へと排出される。
次に、図2及び図3を参照し、図1に示されるようにボーリング孔2内に光ファイバケーブル50を設置する方法について説明する。
まず、光ファイバケーブル50が取り付けられたパイプ材10を、ボーリング孔2内に挿入する挿入工程が行われる。
この工程では、図2(A)に示すように、上記構成の保持ユニット100が鉛直方向上方に向かってボーリング孔2内へと徐々に挿入される。なお、この時点では、拡径体20の膨張部22は、膨張しておらず、拡径体20の外径はボーリング孔2の内径よりも小さい状態となっている。挿入工程は、拡径体20の支持部21の軸方向他端面21bがボーリング孔2の底面2aに当接した時点で完了する。
挿入工程が完了すると、続いて、ボーリング孔2内に挿入されたパイプ材10の先端部をボーリング孔2に対して固定する先端部固定工程が行われる。
この工程では、図2(B)に示すように、拡径体20を径方向外側に拡径させることによって、拡径体20が設けられたパイプ材10の先端側の部分がボーリング孔2に対して固定される。
具体的には、供給パイプ24を通じて膨張部22に加圧水を供給し、膨張部22を径方向外側に向かって膨張させる。膨張部22がボーリング孔2の内壁面を押圧する荷重を生じることによって、拡径体20を介してパイプ材10の先端部は、ボーリング孔2の略中央に固定された状態となる。換言すれば、保持ユニット100のうち、拡径体20が設けられた部分は、径方向へ移動することができない状態となっている一方、保持ユニット100のうち、ボーリング孔2の開口端2b付近に位置する部分は、まだ径方向への移動が可能な状態となっている。
このように先端部固定工程が完了すると、続いて、ボーリング孔2の開口端2bにおいてパイプ材10の基端部をボーリング孔2に対して固定する基端部固定工程が行われる。
この工程では、図2(C)に示すように、ボーリング孔2の外側に突出するパイプ材10の基端側の部分が、フランジ16を介して、ボーリング孔2に対して固定される。
具体的には、まず、フランジ16の挿通孔16aにパイプ材10とパイプ材10の周りに設けられる光ファイバケーブル50及び充填ホース30とが挿入されるとともに、フランジ16のボルト孔16bに地盤1に埋め込まれたアンカーボルト4が挿入される。なお、光ファイバケーブル50と共にパイプ材10に沿って取り付けられた供給パイプ24は、先端部固定工程において膨張部22への加圧水の供給が完了すると、ボーリング孔2の開口端2b付近で切断され、切断端となる供給パイプ24の他端24bは、挿通孔16aに挿入されることなく、ボーリング孔2内に収容される。
そして、アンカーボルト4に螺合されたナット5が締め付けられることによって、フランジ16は、ボーリング孔2に対して固定される。
フランジ16がボーリング孔2に対して固定されることにより、後述の充填工程において充填材が充填されるパイプ材10の外周面とボーリング孔2の内周面との間の空間は、フランジ16によってほぼ閉塞された状態となる。つまり、フランジ16は、ボーリング孔2の内に充填される充填材が外部に漏れ出ることを防止する遮蔽部材として機能する。
また、フランジ16がボーリング孔2に対して固定されることによって、パイプ材10の基端部は、ボーリング孔2の略中央において径方向への移動が規制された状態、すなわち、ボーリング孔2に対して固定された状態となる。
このようにパイプ材10の先端部と基端部とがボーリング孔2に対して固定された時点で、パイプ材10に軸方向に沿って取り付けられた光ファイバケーブル50と、ボーリング孔2の内壁面と、の間の間隔は、軸方向においてほぼ同じ大きさとなる。つまり、パイプ材10の先端部と基端部とがボーリング孔2に対して固定されることによって、ボーリング孔2に対する光ファイバケーブル50の位置決めが完了する。
また、基端部固定工程では、ボーリング孔2内にグラウト40を充填する充填工程の準備工程として、ボーリング孔2の開口端2bに封止材18を注入する注入工程が併せて行われる。注入工程は、後述の充填工程においてボーリング孔2内に充填されるグラウト40が、ボーリング孔2の開口端2bから外部へと漏れ出てしまうことを防止するために行われる。
注入工程では、図3(A)に示すように、フランジ16に設けられた図示しない封止材注入孔を通じて、ボーリング孔2内にウレタン材等の封止材18が注入される。
具体的には、まず、封止材18がボーリング孔2の外に漏れ出ることを防止するために、フランジ16の挿通孔16aの内周面と、パイプ材10の外周面や光ファイバケーブル50及び充填ホース30と、の間の隙間に、シール剤として超速硬セメント(急結セメント)等が塗布される。なお、シール剤の塗布は、挿通孔16aにパイプ材10等が挿入される際に行われてもよいし、挿通孔16aにパイプ材10等が挿入された後に行われてもよい。また、フランジ16と地盤1との接触面にもシール剤を塗布しておいてもよい。
塗布されたシール剤が固化した時点で、フランジ16に設けられた封止材注入孔を通じて封止材18の注入が行われる。予め設定された量の封止材18の注入が完了すると、封止材注入孔は図示しないプラグ材によって封止される。
ボーリング孔2内に注入された封止材18は、ボーリング孔2の開口端2bを閉塞するようにして固化する。これによりボーリング孔2内の空間は外部に対してほぼ遮断された状態、すなわち、ボーリング孔2内にグラウト40を充填しても、ボーリング孔2の開口端2bからグラウト40が外部へと漏れ出ることを抑制可能な状態となる。
続いて、注入工程を含む基端部固定工程が完了し、注入された封止材18が固化した時点、すなわち、開口端2bに注入された封止材18が固化したことによってパイプ材10の外周面とボーリング孔2の内周面との間の空間が外部に対して遮断された状態になった時点でボーリング孔2内にグラウト40を充填する充填工程が行われる。
この工程では、図3(B)に示すように、充填ホース30を通じて、ボーリング孔2内にグラウト40が充填材として注入される。
具体的には、図示しない圧送ポンプから圧送されたグラウト40は、充填ホース30内を通り、放出口30aからボーリング孔2内へと放出される。ボーリング孔2内に放出されたグラウト40は、重力により鉛直方向下方に向かって流れ落ち、ボーリング孔2内の空間は、開口端2b側から徐々にグラウト40で満たされる。
ボーリング孔2の開口端2b側は、上述のように封止材18によって閉塞されているため、ボーリング孔2の開口端2bからグラウト40が外部へと漏れ出ることは防止される。
また、上述のように、パイプ材10には、パイプ材10の内側と外側とを連通する連通孔12が設けられていることから、ボーリング孔2内にグラウト40が充填されるのに伴って、ボーリング孔2内の空気は、連通孔12及び内部通路11を通じてボーリング孔2の外部へと排出される。
そして、ボーリング孔2内にグラウト40がさらに充填されると、やがてグラウト40の液面は、図3(C)に示すように、連通孔12に至る。
充填されたグラウト40が連通孔12に到達すると、グラウト40の一部は、連通孔12及び内部通路11を通じてボーリング孔2の外部へと漏れ出る。このようにグラウト40がパイプ材10を通じて漏れ出たことが確認された時点で、充填ホース30を通じたグラウト40の圧送が停止され、充填工程が完了する。
上述のように先端部固定工程及び基端部固定工程が完了した時点で、ボーリング孔2に対する光ファイバケーブル50の位置決めは完了しており、充填工程の間においても光ファイバケーブル50の位置は保持される。特に、パイプ材10の先端部及び基端部の何れか一方ではなく、先端部及び基端部の両方がボーリング孔2に対して固定されることで、ボーリング孔2に対する光ファイバケーブル50の位置は、グラウト40の圧送の影響を受けて変位してしまうことなく、所定の位置に確実に保持される。
このため、充填工程において充填されたグラウト40が固化すると、光ファイバケーブル50は、図1に示すように、ボーリング孔2の内壁面との間の間隔が軸方向においてばらつくことなく、ほぼ同じ大きさとなっている状態でボーリング孔2内に埋設されることとなる。
このように光ファイバケーブル50が埋設されたボーリング孔2の周囲の地中の歪みは、ボーリング孔2の内壁面から固化したグラウト40を介して光ファイバケーブル50へとばらつきを生じることなく伝達される。したがって、上述のようにボーリング孔2内に設置された光ファイバケーブル50の歪みを測定することにより、地中の歪みの位置及び大きさを精度よく計測することができる。
なお、地盤1と光ファイバケーブル50との間に介在するグラウト40の強度及び剛性は、地中の歪み等の光ファイバケーブル50への伝達性を考慮し、地盤1の強度及び剛性と同程度か、それよりも小さく調整される。
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
本実施形態に係る線状体設置方法によれば、先端部固定工程では、光ファイバケーブル50が軸方向に沿って取り付けられたパイプ材10の先端部がボーリング孔2に対して固定され、基端部固定工程では、ボーリング孔2の開口端2bにおいてパイプ材10の基端部がボーリング孔2に対して固定される。
このようにパイプ材10の先端部と基端部とがボーリング孔2に対して固定されることによって、パイプ材10に軸方向に沿って取り付けられた光ファイバケーブル50と、ボーリング孔2の内壁面と、の間の間隔は、軸方向においてほぼ同じ大きさとなる。つまり、パイプ材10の先端部と基端部とがボーリング孔2に対して固定されることによって、ボーリング孔2に対する光ファイバケーブル50の位置は所定の位置で確実に保持される。
したがって、上述の線状体設置方法によれば、ボーリング孔2内における光ファイバケーブル50の位置決めを効率よく行うことが可能である。
そして、ボーリング孔2の内壁面との間の間隔が軸方向においてほぼ同じ大きさとなった状態で光ファイバケーブル50がボーリング孔2内に埋設されることによって、ボーリング孔2の周囲の地中の歪みは、ボーリング孔2の内壁面から固化したグラウト40を介して光ファイバケーブル50へとばらつきを生じることなく伝達される。したがって、ボーリング孔2内に設置された光ファイバケーブル50の歪みを測定することにより、地中の歪みの位置及び大きさを精度よく計測することができる。
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
上記実施形態では、供給パイプ24及び充填ホース30が、光ファイバケーブル50と共にパイプ材10の外周面に軸方向に沿って設けられている。これに代えて、供給パイプ24及び充填ホース30は、図4に示す変形例のように、パイプ材10の内部通路11を通して設けられていてもよい。
具体的には、供給パイプ24は、支持部21と膨張部22との間の空間に接続される一端が、連通孔12を通じてパイプ材10の外側へと引き出され、充填ホース30は、放出口30aが連通孔12を通じてパイプ材10の外側へと引き出される。なお、放出口30aは、連通孔12よりも鉛直方向下方に位置するように固定テープ14によってパイプ材10に固定される。
この変形例では、フランジ16の挿通孔16aには、パイプ材10と光ファイバケーブル50とだけが実質的に挿入されることになるため、挿通孔16aの内周面とパイプ材10等との間の隙間をシール剤によって容易に封止することが可能となる。
また、上記実施形態では、光ファイバケーブル50が取り付けられる棒材10として中空のパイプ材10が用いられている。これに代えて、棒材10は、中実の棒状部材であってもよい。この場合、充填工程においてボーリング孔2内の空気を外部へ排出するための排気パイプが、棒材10に沿って別途設けられる。
また、上記実施形態では、拡径体20は、供給される流体の圧力に応じて径方向外側に向かって拡径する。これに代えて、拡径体20は、ボーリング孔2への挿入が完了した時点で拡径可能な構成を有していればどのような形式ものであってもよく、例えば、ボーリング孔2の底面2aに当接することで機械的に拡径するものや、底面2aへの当接またはスイッチ操作に応じて膨張部22を膨張させるガスを発生するガス発生器を備えたものであってもよい。
また、上記実施形態では、線状体が光ファイバケーブル50である場合について説明したが、ボーリング孔2内へ設置される線状体は、これに限定されず、地盤1の状態を検出可能な線状体であればどのようなものであってもよく、例えば、圧力や温度を検出可能な複数のセンサが等間隔で連結された線状体や熱電対等の金属線であってもよい。また、検出される地盤1の状態としては、地中の歪みに限定されず、地中の温度や圧力であってもよい。
また、上記実施形態では、ボーリング孔2が鉛直方向上方に向かって掘削された場合について説明したが、ボーリング孔2は、鉛直方向下方に向かって掘削されていてもよいし、水平方向または水平方向から所定の角度だけ上方または下方に向かって掘削されていてもよい。このようにボーリング孔2が掘削される場合であっても上述の方法によって、ボーリング孔2内における光ファイバケーブル50の位置決めを効率よく行うことが可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
1・・・地盤
2・・・ボーリング孔(孔)
2a・・・底面
2b・・・開口端
10・・・棒材(パイプ材)
11・・・内部通路
12・・・連通孔
16・・・フランジ
18・・・封止材
20・・・拡径体
30・・・充填ホース
40・・・グラウト(充填材)
50・・・光ファイバケーブル(線状体)
60・・・計測装置
100・・・保持ユニット

Claims (4)

  1. 地盤に形成された孔内に線状体を設置する線状体設置方法であって、
    先端部に前記孔の径方向外側に拡径可能な拡径体が設けられ、外周面に前記線状体が軸方向に沿って取り付けられた中空のパイプ材を前記孔内に挿入する挿入工程と、
    前記拡径体を径方向外側に拡径させて前記パイプ材の前記先端部を前記孔に対して固定する先端部固定工程と、
    前記孔の開口端において前記パイプ材の基端部を前記孔に対して固定する基端部固定工程と、
    充填ホースを通じて前記孔内に充填材を充填する充填工程と、を含み、
    前記パイプ材は、内側と外側とを連通する連通孔を有し、
    前記充填ホースの放出口は、前記連通孔よりも鉛直方向下方に配置され、
    前記充填工程では、前記パイプ材の外周面と前記孔の内壁面との間に前記充填材が前記開口端側から充填されることにより、前記連通孔を通じて前記孔内の空気が前記孔外へと排出される、
    線状体設置方法。
  2. 地盤に形成された孔内に線状体を設置する線状体設置方法であって、
    先端部に前記孔の径方向外側に拡径可能な拡径体が設けられ、外周面に前記線状体が軸方向に沿って取り付けられた棒材を前記孔内に挿入する挿入工程と、
    前記拡径体を径方向外側に拡径させて前記棒材の前記先端部を前記孔に対して固定する先端部固定工程と、
    前記孔の開口端において前記棒材の基端部を前記孔に対して固定する基端部固定工程と、
    充填ホースを通じて前記孔内に充填材を充填する充填工程と、を含み、
    前記充填工程において前記孔内の空気を外部へ排出するための排気パイプが前記棒材に沿って設けられ、
    前記充填ホースの放出口は、前記排気パイプの開口端よりも鉛直方向下方に配置され、
    前記充填工程では、前記棒材の外周面と前記孔の内壁面との間に前記充填材が前記開口端側から充填されることにより、前記排気パイプを通じて前記孔内の空気が前記孔外へと排出される、
    線状体設置方法。
  3. 地盤に形成された孔内に線状体を設置する線状体設置方法であって、
    先端部に前記孔の径方向外側に拡径可能な拡径体が設けられ、外周面に前記線状体が軸方向に沿って取り付けられた中空のパイプ材を前記孔内に挿入する挿入工程と、
    前記拡径体を径方向外側に拡径させて前記パイプ材の前記先端部を前記孔に対して固定する先端部固定工程と、
    前記孔の開口端において前記パイプ材の基端部を前記孔に対して固定する基端部固定工程と、
    充填ホースを通じて前記孔内に充填材を充填する充填工程と、を含み、
    前記充填工程において前記孔内の空気を外部へ排出するための排気パイプが前記パイプ材に沿って設けられ、
    前記充填ホースの放出口は、前記排気パイプの開口端よりも鉛直方向下方に配置され、
    前記充填工程では、前記パイプ材の外周面と前記孔の内壁面との間に前記充填材が前記開口端側から充填されることにより、前記排気パイプを通じて前記孔内の空気が前記孔外へと排出される、
    線状体設置方法。
  4. 前記基端部固定工程では、前記孔の開口端において、前記パイプ材または前記棒材の外周面と前記孔の内壁面との間に封止材が注入される、
    請求項1から3の何れか1つに記載の線状体設置方法。
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