以下に、本発明に係る電池反応補助材料、電池反応補助材料を含有するリチウムイオン電池用の正極または負極、その正極または負極を備えるリチウムイオン電池の一実施形態について、図面を参照して説明する。
はじめに、本実施形態に係る電池反応補助材料について説明する。
図1に、本実施形態の電池反応補助材料(以下、「補助材料」ともいう。)を含有する電極の構造の一部を拡大した模式図を示す。本実施形態の電池反応補助材料は、例えばリチウムイオン電池の負極または正極に含有される。図1は本実施形態の電池反応補助材料を正極に適用した例を示している。
図1に見られるように、本実施形態の補助材料は、一次粒子1と、一次粒子が複数固着して形成された二次粒子2とを含んでいる。一次粒子1は炭素質を含有し、その炭素質は後述する薄層グラフェン質を含む。一次粒子1は、三次元骨格を有し、内部に空間を有する中空粒子である。図1における符号3は正極材料を示している。
本実施形態の補助材料は薄層グラフェン質を含む。グラフェンは、ベンゼン環が結合した炭素六角網面が平面的に成長してシート状となった構造を有する。グラフェンが多数積層したものが黒鉛である。一方、炭素六角網面が平面的に成長しているものの積層数が少なく、そのために弾性変形性を有する構造を、本明細書では薄層グラフェン質と定義する。薄層グラフェン質は、本実施形態の補助材料の主要構造である。
本実施形態の一次粒子および二次粒子に応力を負荷した場合には、粒子において、主に薄層グラフェン質部分の三次元形状が変形圧縮される。一方、負荷した応力を除荷すると、その弾性変形性によって、ある割合で変形部分が復元する。除荷で復元しない部分は弾性が低い部分である。薄層グラフェン質からなる部分が構造的に欠陥を多く含む場合または非晶質な結合を多く含む場合には、形状が復元しない、すなわち、応力に対して塑性変形性を有する。応力に対して塑性変形性を有するこのような構造部は、応力に対して高い強度を示すか、または容易に変形し、後に復元できない性質である。
上記のように、本実施形態の補助材料において、薄層グラフェン質部分は弾性変形性を有し、薄層グラフェン質以外の部分は非晶質炭素であって塑性変形性を有する。本実施形態の補助材料の一次粒子は、応力を負荷した際に変形する。負荷された応力の大きさによっては、除荷したときに複数の一次粒子の一部は形状が復元する一方で、複数の一次粒子の別の一部は永久変形状態が維持される。この力学的特性は、炭素質の微細構造の影響により生じるものである。補助材料の弾性変形の程度、塑性変形の程度は、後述する極微小負荷除荷試験で測定することができる。
薄層グラフェン質が比較的厚い場合、薄層グラフェン質の部分はある応力範囲では弾性変形性を保つが、所定の閾値を越えると一気に塑性変形する。一般の炭素材料では、ある程度大きな応力により変形し、粒子が破壊されるケースはある。すなわち本実施形態の補助材料は、本実施形態で行われる極微小負荷除荷試験のように弱い応力ではほとんど変形せずに戻る性質、即ち弾性変形仕事量が大きい性質を有するといえる。
グラフェンは、規則性が高い六角平面構造に起因して、電子伝導率が高い炭素質であるといえる。
ここで、薄層グラフェン質の微細結晶構造中における状態は、ラマンスペクトル測定において分析することが可能である。
後述する実施例1の補助材料について測定したラマンスペクトルの例を図2に示した。このスペクトルには、グラファイトシートの骨格振動に由来するGバンド(芳香環C=C伸縮運動、1593cm-1)、エッジサイトを含む非六角形部位等の欠陥に由来するDバンド(C-H伸縮運動、1356cm-1)、および二次のフォノン散乱による2Dバンド(C-H伸縮運動、2680cm-1)が存在する。これらのことから、実施例1の補助材料はグラフェンを含む構造を有することが示唆された。Gバンドの強度(IG)と2Dバンドの強度(I2D)の比であるIG /I2D は、グラフェン層の積層状態を示す指数といわれている。(D. Graf, et al.,NANO LETTERS,7,238-242;(2007))。本実施形態では、IG /I2D で表される指数を「炭素積層指数」と呼ぶ。上記論文から、1層あたりの値は0.4とした。
IG /I2D の値が小さい、すなわち炭素積層指数が小さいほど、積層数が少なく、単層グラフェンに近くなる。すなわち、弾性変形性を発現する構造を有することが示唆される。本明細書における「薄層グラフェン質が比較的厚い場合」とは、補助材料中の粒子の炭素積層指数が6より大きい値を示す場合をいう。
本実施形態の補助材料は、グラフェンを含むため電子伝達に優れている。このため、本実施形態の補助材料は、リチウムイオン電池の電極に含有されることで、リチウムイオン電池における電池反応を補助する機能を発揮することができる。また、本実施形態の補助材料は、一次粒子および二次粒子の三次元骨格中に設けられた空間に、リチウムイオンが溶存した電解液が浸透し保持されるため、反応時のイオン供給に優れる。
したがって、本実施形態の補助材料は、リチウムイオン電池の使用条件下において、弾性変形と塑性変形をバランスよく活用することが可能である。すなわち、補助材料中の一次粒子および/または二次粒子が塑性変形した場合にも高い電子伝導性は担保され、一方で塑性変形しない場合にはイオンの貯蔵元である電解液を粒子内の空間に蓄えられる。このため、本実施形態の補助材料は電池反応を好適に補助し得る。
本実施形態の補助材料の製造方法について説明する。本実施形態の補助材料は、テンプレート化学的気相成長法:Template Chemical vapor deposition法(以降、T-CVD法)で作製することができる。これは、CVD活性を有し、不活性ガス雰囲気内で加熱されたセラミックスに対して、有機ガスを流通させ、主にガス中の有機物の炭素原子を縮合して炭素質の膜を形成させる手法である。
次に、一次粒子中に空間を設けるため、炭素質の膜で被膜されたセラミックス粒子を、セラミックスを溶解可能な試薬(例えば酸性溶液)で処理する。当該処理により、炭素質の膜で被膜されたセラミックス粒子のセラミックス部分が溶出されて取り除かれる。溶出後は、空間に残存物が無くなるよう炭素質から形成された一次粒子の内部を洗浄する。セラミックス粒子が溶解され除去されたことで、炭素質から形成された一次粒子の内部に空間が形成される。
次に、その一次粒子を3000℃以下で熱処理することで、当該粒子を構成している薄層グラフェン質部分や薄層グラフェン質部分以外の部分の構造欠陥を調整する。この構造欠陥には、テンプレートの溶出により粒子内に生じた空間と、炭素質から形成された三次元骨格に生じた侵入孔とが含まれる。熱処理温度や熱処理時間といった反応条件を調整することで、これらの構造欠陥の程度を調整することができる、すなわち、粒子の内部に存在する空間の大きさや、粒子内に電解液を侵入させるための侵入孔の大きさを調整することができる。
炭素に結合する官能基(主には含酸素官能基)や六員環を作らない炭素鎖は、約1000℃前後を越えると脱離し、未結合手が形成される。形成された未結合手が近くの別の炭素と結合すると、炭素材の表面は官能基が結合しにくい状態となる。1500℃以上、好ましくは1600℃以上で熱処理することによって、本実施形態の補助材料は電子伝導性、内部の空間維持といった好適な機能を発揮することができる。
本実施形態の補助材料は、気体吸着法、具体的には窒素吸脱着測定により測定した細孔容積が1cc/g以上4cc/g以下である。細孔容積とは、粒子の内部に存在する空間の体積である。細孔容積の値が大きいと、粒子内に保持される電解液が多くなり、反応効率が高くなる。その一方で、細孔容積の値が大きいということは空間が大きいことを意味するため、骨格強度が弱まって負荷時の圧力により粒子の形状を維持することが難しくなる。本実施形態の補助材料においては、細孔容積は、1cc/gより大きく4cc/g以下がより好ましく、1.5cc/gより大きく4cc/gより小さいとさらに好ましい。このように適度な細孔容積を有することで粒子が適度な強度を有し、粒子の形状の安定性に寄与するともに形状が維持される。これらにより、電子伝導性と細孔内に保持されるイオンの供給性とをバランスよく保つことができる。
リチウムイオン電池の正極材料は、電子伝導性の低いリチウム含有遷移金属酸化物で粒径分布を持つ粉体である。従来法では、電池反応のために電子伝導を助ける炭素材料からなる導電助剤とバインダー樹脂とを混合して集電体に加圧固定されることで、電子伝導ルートが確立される。バインダー樹脂以外の材料は粉体粒子であるため、粒子間に存在する空間に電解液は偶発的に存在するのみである。このため、正極材料近傍に積極的に電解液、言い換えればリチウムイオンを配置することは、従来技術では難しかった。
これに対し、従来用いられてきた導電助剤の代わりに、本実施形態では電池反応補助材料を用いる。本実施形態の電池反応補助材料は、主に薄層グラフェン質からなる粒子から形成され、電解液を保持可能な空間を粒子の内部に有する。補助材料は、正極電極内における正極材料などの粒子間で、加圧されれば永久変形するもののグラフェン質に由来する高い電子伝導性を発揮する一方で、変形しなければリチウムイオンを保持する空間を維持できるものである。したがって、本実施形態の電池反応補助材料は、電池反応に必要な電子とイオンの供給を同時に補助し、速やかな電池反応をより良く実現可能な材料であるといえる。
本実施形態の補助材料は、圧力により三次元骨格が変形する。柔らかなグラフェン質部分が押しつぶされた場合には、単層グラフェンが多層化された状態へと変化する。これにより、電子伝導が良好となる。
実際の電極では、例えば、集電体上に正極合剤スラリーを塗布して乾燥させた後にプレス加工を施すと、合剤層は押しつぶされる。電極が本実施形態の補助材料を含む場合には、正極材粒子の間に挟まれた粒子は、直接応力を受けて塑性変形し、電子伝導性を発揮する。それとともに、正極材の隙間に存在して応力を受けなかった粒子は、内部に空間を維持したままの粒子として存在し、電解液の保持機能を発揮する。例として、本実施形態のプレス加工前の電極表面のSEM写真を図3Aおよび図3Bに、プレス加工後の電極表面のSEM写真を図3Cおよび図3Dに、それぞれ示す。図3Aと図3Cとの比較、および図3Bと図3Dとの比較から、プレスによって一部の一次粒子および二次粒子が押しつぶされた構造が生じたことを確認できる。押しつぶされている部分は、上述した永久変形部分に相当する。
本実施形態の補助材料は、内部に空間を有する中空粒子である一次粒子を含む。その一方で、電極中の組成物等の選択や電極密度を高くせずに電極空隙率を調整する場合などに、中空粒子に対して中実粒子を混合して使用することができる。中実粒子は、上述したT-CVD法において、テンプレートを溶出させずに残したものである。
中実粒子は、電子伝導性の観点から炭素質が好ましく、カーボンブラック、アセチレンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブが好適に用いられる。
本実施形態に係る補助材料においては、中実粒子が、セラミックス粒子に炭素質を被覆したものであると好ましい。高密度電極の作製にあたっては、セラミックス粒子はカーボン系粒子よりも強度が高い。これにより、補助材料を含有する電極の構造を補強するとともに、炭素質が有する導電性が加わって電子伝導性を向上させることができる。
中実粒子にセラミックス粒子を選択する場合には、上述した試薬による溶出はせず、そのまま用いることができる。
セラミックス粒子としては、電池反応に不活性な化合物を適宜選択可能である。例示すれば、Al2O3、MgO、SiO2、ZrO2などである。他に、CVD活性を有し、T-CVD法のテンプレートとして使用できるものでもよい。
また、強度以外にもセラミックス粒子が持つ諸特性を活用することができる。特性の例としては、化学反応性、触媒特性、物理特性などが挙げられる。
中実粒子を補助材料に混合する割合は、利用目的にもよるが、10重量%以上が好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、効能を明瞭に発揮するには50重量%以上が最も好ましい。
中実粒子を補助材料に混合する場合には、電極仕様の微調整のために、カーボン系の中実粒子を適宜混合して使用することができる。カーボン系の中実粒子を添加することにより、電子伝導性を調整することができる。
場合によっては、上述した中空粒子のすべてを、セラミックス粒子に炭素質を被覆した中実粒子に置き換えた電極を備えたリチウムイオン電池とすることができる。電池反応の観点からは、セラミックス粒子に炭素質を被覆した中実粒子に置き換えた補助材料を含む電極を備えたリチウムイオン電池を用いても、中空粒子を用いた補助材料を含むリチウムイオン電池の電池反応とには大きな相違は見られない。中空粒子をセラミックス粒子に炭素質を被覆した中実粒子に置き換えることは、別の新たな機能特性を発現させるために好適である。
電極活物質材料としては、正極においてはリチウム含有酸化物やリチウム遷移金属リン酸塩など、負極において黒鉛やカーボン類、SiやSnなどを含む合金や金属間化合物を用いることができる。
本実施形態の補助材料は一次粒子または少なくとも一次粒子が複数固着した二次粒子である。電極活物質材料の種類にもよるが、一次粒子、二次粒子の長さが電極活物質の粒子径に対して2倍以下であることが好ましい。
補助材料に一次粒子と二次粒子のどちらの機能性を優位に求めるかにもよるが、二次粒子としては平均粒径0.05μm以上6μm以下の粒子が好適に使用可能である。二次粒子の平均粒径は、0.1μm以上5μm以下であるとより好ましい。
また、本実施形態の補助材料は、電池容量のもとであるリチウムイオンを外部から新たに供給することができない。このため、補助材料の電極への添加率は必要最小限に収めるべきである。良好な特性を得るためには、補助材料は、電極合剤に対して0.1wt%以上5wt%以下が好ましい。
この範囲より小さければその機能性を活かすことができず、大き過ぎると電極合剤の嵩密度が大きくなりすぎて電極強度が低下するため好ましくない。
次に、本実施形態に係る電池反応補助材料の物性を確認するための極微小負荷除荷試験の測定に関して説明する。
極微小負荷除荷試験の一例として、後述する実施例1で作製した電池反応補助材料に対して行って得られた荷重変位曲線を図4に示す。本実施形態で用いられる極微小負荷除荷試験においては、試料粒子に圧子を当てて押し込んでいくことで、試験粒子に対して負荷をかける。圧子が粒子に接触し、センサーが圧力を感知した時点から計測を開始する。そして押し込みの深さが大きくなるにつれて、粒子に対する負荷が大きくなる。本実施形態における極微小負荷除荷試験では、負荷が0.1mNに達した時点で除荷する。
仮に粒子が全く変形せずに完全に形状が復活した場合には、押し込み深さが0に戻る、すなわち図3のグラフで横軸の原点付近に戻る。逆に、負荷によって粒子が完全に変形、すなわち粒子が負荷をかけた方向に潰れてしまった場合には、押し込み深さは300nmのままとなる。これは、粒子内に存在していた空間が消滅し、骨格を形成していた層が2つ重なった状態となったことを意味する。
本実施形態の電池反応補助材料においては、除荷しても押し込み深さは0には戻らず、例えば図4においては、負荷を与えた粒子には230nm前後の押し込み深さが残っていた。これは、粒子が負荷によって一部変形した一方で、粒子内の空間が残った状態となっていることを示している。図3において、与えられた負荷に対して形状が復活した仕事量に相当する部分が弾性変形仕事量WE(図3の斜線の部分)を、与えられた負荷に対して変形した仕事量に相当する部分が塑性変形仕事量WP(図3の縦線の部分)を、それぞれ示している。
本実施形態の補助材料における炭素層積層指数は5以下であると好ましい。炭素層積層指数がこれよりも大きいと粒子の骨格はより硬くなり、これにより粒子の構造の弾性変形性が小さくなる。電極作製時の圧力によって破壊されやすくなり電解液の保持量が少なくなって特性は低下する。炭素層積層指数が小さ過ぎると、負荷されたときにつぶれやすくなる。これは粒子内の空間が小さくなったことを意味し、これにより粒子内に電解液が保持されにくくなる。
次に、本実施形態の補助材料を含有する電極を備えるリチウムイオン二次電池について説明する。
図5は本発明の一実施形態に係る、コイン型のリチウムイオン電池200の断面構造の一例を示すものである。このリチウムイオン電池200は、金属製の外装部品211内に収容された円板状の正極212と金属製の外装部品113内に収容された円板状の負極214とがセパレータ215を介して積層されたものである。なお、外装部品213と負極214の間には金属製のバネ218とスペーサ219が配置されている。外装部品211および外装部品213の内部は液状電解質により満たされており、外装部品211および外装部品213の周縁部はシールガスケット217を介してかしめられることにより密閉されている。
正極について説明する。
正極212は、一般的に、金属酸化物系材料と電子伝導性を補助する導電助剤と結着材と溶媒とを混合したスラリーを、圧延アルミ箔などの集電用金属箔体の上に塗布して塗膜を形成し、加熱乾燥して溶媒を除去した後、所定の寸法と密度に形成させて得られる。本実施形態では、アセチレンブラックのように汎用されている導電助剤を用いずに、上述した電池反応補助材料を用いる。
正極活物質に使用可能な金属化合物系材料とは、電池の外部回路へ電子を放出すると同時にLiイオンを電解質に放出することができる材料のことである。含有するLiイオンの量は、その化学組成、結晶構造などにより異なるが、多くのLiイオンを可逆的に出し入れできる材料が好ましい。
その材料としては遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。具体例としては、MnO、V2O5、V6O13、TiO2等の遷移金属酸化物、LiNiO2、LiCoO2、LiMn2O4等、TiS2、FeS、MoS2等の無機化合物が挙げられるが、これらは、その特性を向上させるため、部分的に特定元素をある元素で置換したものを用いても良い。
上記の無機化合物のほかに、有機化合物から成る正極材料もある。例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N-フルオロピリジニウム塩などが挙げられる。正極材料は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
正極材料の物性はリチウムイオン電池の利用形態などの制約条件に起因する電池設計および製造プロセスにおける要求項目から決められるものである。正極材料の製造においては、その物性を実現できるようにプロセス設計等がなされている。物性値としては、粉末粒子径および分布、比表面積、密度等が挙げられる。
一例として、粉末粒子径は、リチウムイオン電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、レ-ト特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常、平均値として1~30μmが好ましく、1~10μmがさらに好ましい。
上記の正極材料は概ね電子伝導性が低いため、正極内には電子伝導性を補助する電池反応補助材料を共存させることが好ましい。汎用される導電助剤の材質としてはカーボン系材料、金属系材料があり、その他の電子伝導性の高い材料も利用可能であり、その中でもカーボン系材料が好適である。
共存させる電池反応補助材料の量は必要最低限にとどめ、リチウムイオン電池の容量を規定する正極材料の含有率を最大限に引き上げるべきである。
従来からあるカーボン系材料としては、すす、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ランプブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、グラファイトファイバー、ナノファイバー、ナノチューブ、コークス、ハードカーボン、アモルファスカーボンなどが挙げられる。
これらに比べ、本実施形態の補助材料は、従来材料には無い大きな特徴がある。即ち、本実施形態の補助材料は、比較的大きな面積のグラフェン部分を構造に含むため、炭素-炭素結合以外の欠陥、例えば六員環炭素結合末端に含酸素官能基などが少ない。このため、電池内で晒される電気化学的酸化環境で劣化分解しにくい。
また、必要に応じて、前記従来材料と複合利用することで、更なる効能を得ることができる。例えば、薄片状のグラファイトや直線性の高いカーボンナノチューブ等は、電子伝導性は高いものの、イオンの貯蔵性は低い。このような性質に対し、本実施形態の補助材料と組み合わせることで、電子伝導性にイオン貯蔵性を付加した良好な電池反応補助システムが構築可能となる。
また、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類は、直径数十ナノメートルの構造粒子の連結によって構成される。その一方で、炭素の結晶性はそう高くなく、構造長も短く、且つ崩れやすいため長距離の電子伝達が苦手である。本実施形態の補助材料と組み合わせることで、立体構造を保持した状態や、立体構造が押しつぶされ鱗片状黒鉛のように扁平になった状態においても、電子伝導性を保持し、かつイオン供給能も併せ持つシステムを実現することができる。
本実施形態の炭素材料からなる電池反応補助材料を正極に含有させる好適な比率は、正極材料種類やバインダー種と量、電池容量設計などの違いにより変化する。本実施形態では、上述したように、電池反応補助材料の正極への添加率は電極合剤当たり0.1wt%以上5wt%以下が好ましい。このような範囲で添加することで、良好な特性を得ることができる。
上記の正極材料および電池反応補助材料は粉末状であることが多く、それら同士、およびそれらを集電用金属箔体の上に固定化するためには、少量の結着材を混合して用いるのが好適である。結着材については、化学的、電気化学的に不活性であり、多少の弾性変形性と親和性を有することが要求され、プラスチック樹脂材料が好適に用いられる。
電池反応補助材料の別の使用様態としては、粉末をある一定比率で液体溶媒に分散させた塗料の状態で用いることもできる。その場合には、溶媒はリチウムイオン電池の製造に適用可能な有機または無機化合物を用いることができる。溶媒中での粉末の分散状態を良好に保つために、有機または無機の分散剤(例として、単分子またはプラスチック樹脂材料)を好適に使用できる。
上記のプラスチック樹脂材料としては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有ポリマー、ポリアニリン等の導電性ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1,1-ジメチルエチレン等のアルカン系ポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の不飽和系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ-N-ビニルピロリドン等の環を有するポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド等のアクリル系ポリマー等が挙げられる。また、上記の樹脂材料の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などであってもよい。これらの樹脂の重量平均分子量は、通常10,000~3,000,000、好ましくは100,000~1,000,000である。分子量が小さ過ぎる場合は塗膜の強度が低下し、大き過ぎる場合は、粘度が高くなり電極の形成が困難になる。
結着材を十分均一に分布させ、またスラリーを所定の寸法に塗膜形成させるために、結着材樹脂のみを溶解し、その他の材料を溶解させない、適切なスラリー溶媒を用いることができる。例示すれば、ポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、溶媒にジメチルホルムアミドが好適に用いられる。あるいは、溶媒にN-メチルピロリドンを用いてもよく、製造プロセスの条件によって適宜選択して用いることができる。
集電用金属箔体は、安価に入手でき、かつ工業的使用に耐えうる材質が好ましく、正極の発現する電位に対して電気化学的耐性を有する材料が好適に用いられる。集電用金属箔体の例としては、アルミ箔、ニッケル箔、チタン箔、ステンレス箔が好ましく、一般に入手しやすい圧延アルミ箔がより好ましい。
集電用金属箔体へのスラリーの塗膜形成方法としては、一般に用いられる印刷技術が利用可能である。塗膜の厚さ寸法が小さい場合にはグラビア印刷などが、大きい場合にはドクターブレード印刷やダイ印刷などの印刷手法が好適に用いられる。
その後、塗膜は加熱乾燥されるが、いずれの乾燥方法も利用可能であり、所望の結着材による結着強度が実現できる方法が好適に用いられる。
そして、その後、正極の所定寸法に形成される際には、工業的に利用可能な切断刃等およびその方式が好適に用いられる。また、所定の密度を実現するために、必要に応じて工業的に利用可能な加圧装置等および方式が好適に用いられる。
次に、負極について説明する。
負極214は、例えばカーボン系材料とバインダーと溶媒とを混合したスラリーを圧延銅箔などの集電用金属箔体の上にコートし、加熱乾燥して溶媒を除去した後、所定の寸法と密度に形成させて得られる。
負極に使用可能なカーボン系材料としては、Liイオンと外部回路から流れてくる電子とを結合安定化させることができ、安定化サイトをその内部に多数持つものが好ましい。
例示するならば、有機物を起源とし、結晶性が高くても、低くても、いずれも利用可能であり、グラファイト、コークス、アモルファスカーボン、ハードカーボン、ポリマーカーボン等が好適に使用できる。この場合、原理としてはグラフェン層間などでLiイオンが挟まれた状態で電子と結合し安定化するというものである。
また、他に安定化機構として、電気化学的に金属間化合物を形成する手法も利用可能であり、ケイ素、スズ、亜鉛、ビスマス、アンチモン、カドミウム、鉛、ゲルマニュウム等が好適に使用できる。
加えて、リチウムイオン電池の負極側を司る、低い電気化学反応電位を示すその他の材料も利用可能である。好適には金属と酸素、イオウ、ハロゲン、窒素、りん等の化合物が挙げられる。
そして、リチウムイオン電池の用途によっては任意の放電プロファイルを得るために上記の負極材料を複数所定比率で混合し、使用することができる。
負極材料の物性はリチウムイオン電池の利用形態などの制約条件に起因するデバイス(例として畜電池)設計および製造プロセスにおける要求項目から決められるものである。材料の製造においてはその物性を実現できるようにプロセス設計等がなされている。物性値としては、粉末粒子径および分布、比表面積、密度等が挙げられる。
一例として、粉末粒子径は、リチウムイオン電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、レ-ト特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常、平均値として1~70μmが好ましく、3~30μmがより好ましい。
上記の負極材料は概ね電子伝導性は高いが、材料によっては平滑な表面を有し、粒子同士の接触が不十分の場合には、電子伝導性を補助する導電助剤を共存させることも好適である。材質としてはカーボン系材料、金属系材料、その他の電子伝導性の高い材料も利用可能であり、その中でもカーボン系材料が好適である。上述した本実施形態の電池反応補助材料を導電助剤として用いてもよい。
共存させる導電助剤の量は必要最低限にとどめ、リチウムイオン電池の容量を規定する負極材料の含有率を最大限に引き上げるべきである。
従来からあるカーボン系材料としては、すす、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ランプブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、グラファイトファイバー、ナノファイバー、ナノチューブ、コークス、ハードカーボン、アモルファスカーボンなどが挙げられる。
これらに比べ、本実施形態の電池反応補助材料は、従来材料には無い大きな特徴があり、さらに必要に応じて、従来材料と複合利用することで、更なる効能を得ることができる。例えば、薄片状のグラファイトや直線性の高いカーボンナノチューブ等は、電子伝導性は高いものの、イオンの貯蔵性は低い。このため、本発明の補助材料と組み合わせることで、電子伝導性にイオン貯蔵性を付加した良好な電池反応補助システムが構築可能とある。
また、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類は、直径数十ナノメートルの構造粒子の連結によって構成される。その一方で、炭素の結晶性はそう高くなく、構造長も短く、且つ崩れやすいため長距離の電子伝達が苦手である。このような性質を有しているものの、本発明の補助材料と組み合わせることで、立体構造を保持した状態や、立体構造が押しつぶされ鱗片状黒鉛のように扁平になった状態などにおいても、電子伝導性を保持し、かつイオン供給能も併せ持つシステムを実現することができる。
本実施形態の電池反応補助材料を負極に含有させる好適な比率は、正極材料の種類やバインダー種と量、電池容量設計などの違いにより変化する。本実施形態では、上述したように、電池反応補助材料の正極への添加率は電極合剤当たり0.1wt%以上5wt%以下が好ましい。このような範囲で添加することで、良好な特性を得ることができる。
集電用金属箔体は、安価に入手でき、かつ工業的使用に耐えうる材質が好ましく、負極の発現する電位に対して電気化学的反応性を有さない材料が好適に用いられる。例示すれば、集電用金属箔体としては、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、ステンレス箔が好ましく、一般に入手しやすい電解銅箔や圧延銅箔がより好ましい。
上記のスラリーの塗膜形成方法としては、一般に用いられる印刷技術が利用可能である。厚さ寸法が小さい場合にはグラビア印刷などが、大きい場合にはドクターブレード印刷やダイ印刷などの印刷手法が好適に用いられる。
その後、塗膜は加熱乾燥されるが、いずれの乾燥方法も利用可能であり、所望の結着材による結着強度が実現できる方法が好適に用いられる。
そして、その後、負極の所定寸法に形成される際には、工業的に利用可能な切断刃等およびその方式が好適に用いられる。また、所定の密度を実現するために、必要に応じて工業的に利用可能な加圧装置等および方式が好適に用いられる。
上記の負極材料および導電助剤は粉末状であることが多く、それら同士、およびそれらを集電用金属箔体の上に固定化するためには、少量の結着材を混合して用いるのが好適である。結着材については、化学的、電気化学的に不活性であり、多少の弾性変形性と親和性を有することが要求され、プラスチック樹脂材料が好適に用いられる。
電池反応補助材料の別の使用様態としては、粉末をある一定比率で液体溶媒に分散させた塗料の状態で用いることもできる。その場合には、溶媒はリチウムイオン電池の製造に適用可能な有機または無機化合物を用いることができる。溶媒中での粉末の分散状態を良好に保つために、有機または無機の分散剤(例として、単分子またはプラスチック樹脂材料)を好適に使用できる。
上記のプラスチック樹脂材料としては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有ポリマー、ポリアニリン等の導電性ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1,1-ジメチルエチレン等のアルカン系ポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の不飽和系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ-N-ビニルピロリドン等の環を有するポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド等のアクリル系ポリマー、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバー等が挙げられる。また、前記樹脂材料の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などであってもよい。これらの樹脂の重量平均分子量は、通常10,000~3,000,000、好ましくは100,000~1,000,000である。分子量が小さ過ぎる場合は塗膜の強度が低下し、大き過ぎる場合は、粘度が高くなり電極の形成が困難になる。
結着材を十分均一に分布させ、またスラリーを所定の寸法に塗膜形成させるために、結着材樹脂のみを溶解し、その他の材料を溶解させない、適切なスラリー溶媒を用いることができる。例示すれば、ポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、溶媒にジメチルホルムアミドが好適に用いられる。あるいは、溶媒にN-メチルピロリドンを用いてもよく、製造プロセスの条件によって適宜選択して用いることができる。
本実施形態のでリチウムイオン電池に適用される電池用電解質について説明する。
電解質は、溶質を有機溶媒に溶解させたものであり、通常これらが主成分である。
電解質の組成物の一つとして、まずイオンの元となる溶質、即ちLi塩がある。
溶質の種類は、特に制限されないが、このリチウムイオン電池の用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができる。具体的には以下のものが挙げられる。
溶質の例としては、LiPF6やLiBF4等の無機塩、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、Li環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、Li環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機Li塩およびLiビス(オキサレート)ボレート等が挙げられる。
これらのうち、LiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2およびLiN(C2F5SO2)2が電池性能を発揮する点で好ましく、特にLiPF6およびLiBF4が好ましい。
なお、これらのLi塩は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電解質中におけるLi塩の含有割合は、Li塩を溶解させる溶媒の種類や混合組成によってその割合は異なるが、電解質中におけるLi塩の含有割合は、7~190重量%が好ましく、10~180重量%がより好ましく、13~150重量%がさらに好ましい。
次に、電解質に用いる有機溶媒について説明する。
その種類は、特に制限されないが、従来から溶媒として公知のものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、不飽和結合をもたない環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、含燐有機溶媒等が挙げられる。
Liイオンの移動に影響を与える因子としては、粘度の他に、有機溶媒の粘度と溶媒和能がある。溶媒和能は溶解したイオンを解離させる力であり、強すぎるとイオンの移動を阻害するため最適値が存在する。
また、実用的なリチウムイオン電池は使用環境条件が幅広く、特に有機溶媒の融点や沸点などの物理特性も一定範囲内に収める必要がある。
上記の要件に対して、現実的な解決案は、複数の有機溶媒を混合して用いることである。融点の高い有機溶媒と低い有機溶媒、溶媒和能の高いものと低いもの、などといった各物性における組み合わせから、実用特性を考慮して混合組成が決定される。
本実施形態の電解質においては、ともに炭素-炭素不飽和結合を持たない環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合して使用することが好ましい。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート類が挙げられる。これらの中では、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが電池特性向上の点から好ましく、特にエチレンカーボネートが好ましい。
鎖状カーボネート類としては、ジアルキルカーボネートが好ましく、構成するアルキル基の炭素数は、それぞれ1~5が好ましく、特に好ましくは1~4である。具体的には例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート等の対称鎖状アルキルカーボネート類;エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート等の非対称鎖状アルキルカーボネート類等のジアルキルカーボネートが挙げられる。中でも、粘度の点ではジメチルカーボネートが最も低く好ましい。
しかしながら、ジメチルカーボネートは沸点がやや低いため、より高い沸点を示す鎖状カーボネート類をさらに混合して用いることで、より好適な特性が得られる。混合する鎖状カーボネートとしてはジエチルカーボネートが好適であるが、他の鎖状カーボネートでも問題無く使用できる。
混合割合は所望の実用特性によっても変わってくる。環状カーボネートに対する鎖状カーボネートの割合は、Li塩の割合も含めた形で最適な組成が存在する。
電解質中の環状カーボネートの含有割合は1~35重量%が好ましく、3~30重量%がより好ましく、4~25重量%がさらに好ましい。環状カーボネートは複数混合して用いることができる。
一方、電解質中の鎖状カーボネートの含有割合は40~70重量%が好ましく、43~68重量%がさらに好ましい。鎖状カーボネートは複数混合して用いることができる。
総合的な組成として以下の組み合わせが好適である。
エチレンカーボネートとジアルキルカーボネート類との組み合わせの中で、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートが好ましく、さらに対称鎖状ジアルキルカーボネートおよび/または非対称鎖状ジアルキルカーボネート類を含有してもよい。例えば、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったエチレンカーボネートと対称鎖状ジアルキルカーボネート類と非対称鎖状ジアルキルカーボネート類を含有するものが、サイクル特性と高出力放電特性のバランスが良いので好ましい。中でも、非対称鎖状ジアルキルカーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好ましく、また、アルキルカーボネートのアルキル基は炭素数1~2が好ましい。
さらに、イオンの解離や移動等を助ける溶媒として、環状エーテル類、鎖状エーテル類、環状カルボン酸エステル類や鎖状カルボン酸エステル類などを、上記した主要の有機溶媒に付随して追加することもできる。
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等、鎖状エーテル類としては、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
環状カルボン酸エステル類としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等、鎖状カルボン酸エステル類としては、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル等が挙げられる。
これらの中でも特に、鎖状カルボン酸エステルが好適である。
さらに、本実施形態の電解質に、2つ以上のフッ素原子を有する含フッ素環状カーボネートを含有させることも好適に行われる。
2つ以上のフッ素原子を有する含フッ素環状カーボネートのフッ素原子の数は特に制限されないが、フッ素化エチレンカーボネートの場合は、下限としては通常2つ以上であり、上限としては通常4つ以下であり、3つ以下が好ましい。
フッ素化プロピレンカーボネートの場合は、下限としては通常2つ以上であり、上限としては、通常6つ以下であり、5つ以下が好ましい。特に、環構造を形成する炭素に2つ以上のフッ素原子が結合しているものが、サイクル特性および保存特性向上の点から好ましい。
中でも2つ以上のフッ素原子を有するフッ素化エチレンカーボネートが、電池特性向上の点から好ましく、さらにその中でも、シス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、トランス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンが特に好ましい。
2つ以上のフッ素原子を有する含フッ素環状カーボネートは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。非水系電解液中の2つ以上のフッ素原子を有する含フッ素環状カーボネート化合物の割合は、本実施形態の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.2重量%以上、最も好ましくは0.25重量%以上である。これより低濃度では本実施形態の効果が発現しにくい場合がある。逆に濃度が高すぎると、高温保存時に電池内圧が増大する場合があるので、上限は、通常10重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下である。
またさらに、不飽和結合を有する環状カーボネート類や、総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物を電解質中に混合して用いても良い。
不飽和結合を有する環状カーボネート類のうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4-メチル-4-ビニルエチレンカーボネートまたは4,5-ジビニルエチレンカーボネートがサイクル特性向上の点から好ましく、なかでもビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。
このように総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物と、負極および正極との副反応を抑制することにより、高温保存後の放電特性の著しい低下を抑制すると考えられる。
電解質中における総炭素数が7以上18以下の芳香族化合物の割合は、本実施形態の効果を発現するためには、通常0.001重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、上限は、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。この下限より低濃度では過充電時の安全性を向上する効果が発現しがたい場合がある。逆に濃度が高すぎると高温保存特性などの電池の特性が低下する場合がある。
セパレータ215は、正極212と負極214とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものであり、樹脂製の多孔膜が好適に用いられる。
膜の形態としては、バルク樹脂を延伸することにより開孔させる延伸膜や、繊維状の樹脂ファイバーを多数積層させ、多孔膜のような空孔構造を作ることができる不織布などが好適に用いられる。
樹脂の材質としては、ポリオレフィン類が挙げられ、特にポリエチレンが好適である。ポリエチレンは、融解温度が比較的低く、何らかの理由(例として、短絡などの不安全な状態等)で電池の温度が上昇したときに、熱融解により膜中の孔が閉塞し、駆動用イオンの移動を阻害することで、反応停止、安全確保できる。
延伸方式で形成される多孔膜は、通常、ポリオレフィンに可塑剤などを加え、延伸されるる前後で可塑剤が除去され、可塑剤が存在した部分などが基点となり、比較的均一な微多孔構造を有する。
延伸膜の製造にあたり、延伸は、通常、長手方向、幅方向の両方向に行われる。上記の可塑剤等の除去と併せて、任意の雰囲気媒体、温度、速度、応力、プロセス繰り返し数などが適宜組み合わされることで、好適な延伸膜を得ることができる。
上記の製造工程によって、高品質の延伸膜が得られるものの、多段階の工程となる。このため、工程費など製造原価の低減が難しく、リチウムイオン電池の普及には負の要因となる場合がある。
一方で、可塑剤などを使用せず、延伸を長手方向のみに行うように工程を簡略化することで、工業レベルで製造可能であり、且つ製造原価を低減可能な多孔膜を得ることができる。この場合に適用可能な樹脂はポリオレフィンであり、ポリプロピレンが好適に用いられる。
正極と負極との間に介在するセパレータは、電気絶縁性の多孔体から形成されていればよい。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどのポリマー製の膜または繊維不織布が適用可能である。セパレータの材質は、1種を単独で用いてもよく、複数種を用いてもよい。また、セパレータは単層でもよく、多層(複合化膜)であっても良い。また、セパレータはセラミックなどの無機材料ナノ粒子を含有してもよい。また、セパレータの両面にポリフッ化ビニリデン等の高分子化合物を塗布して用いてもよい。
本実施形態に係る非水電解質電池では、有機溶媒により膨潤して非水電解質を保持する保持体となる高分子化合物を含むことによりゲル状となった電解質を用いてもよい。有機溶媒により膨潤する高分子化合物を含むことにより高いイオン伝導率を得ることができ、優れた充放電効率が得られると共に、電池の漏液を防止することができるからである。非水電解質に高分子化合物が含有されている場合、高分子化合物の含有量は、非水電解質の0.1質量%以上10質量%以下の範囲内とすることが好ましい。
また、セパレータの両面にポリフッ化ビニリデン等の高分子化合物を塗布して用いる場合は、非水電解質と高分子化合物の質量比を50:1~10:1の範囲内とすることが好ましい。この範囲内とすることにより、より高い充放電効率が得られる。
上記の高分子化合物としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリエチレンオキサイド並びにポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物、およびポリフッ化ビニリデン、並びにフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ化ビニリデンの重合体が挙げられる。高分子化合物は1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。特に、高温保存時の膨潤防止効果の観点から、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物を用いることが望ましい。
以上のような構成を有するリチウムイオン電池は次のように作用する。
リチウムイオン電池の充電を行うと、正極212に含まれるLiイオンがセパレータ215を通過して負極214に含まれるグラファイトの層状構造の層間に挿入される。その後、放電を行うと、負極214に含まれる層状構造の層間からLiイオンが脱離し、セパレータ215を通過して正極212に戻る。これら一連の作用により、電池反応が進行する。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
上記の実施形態においては、リチウムイオン電池としてコイン型のリチウムイオン電池を例に挙げて説明したが、本実施形態のリチウムイオン電池は、ボタン型、ペーパー型、角型、あるいはスパイラル構造を有する筒型などの他の形状を有するものについても同様に適用することができる。また、本実施形態のリチウムイオン電池は、薄型、大型等の種々の大きさにすることができる。
さらに、上記の説明においては、本実施形態に係るリチウムイオン電池に用いる電解質として、液状電解質を有するリチウムイオン電池の場合を想定した実施形態を描写しているが、他のあらゆる電解質を適用可能である。例示するならば、ゲル状電解質、固体状電解質も好適に使用可能である。
実験1:電池反応補助材料の基本性能の確認
<実施例1>
(電池反応補助材料の製造)
炭素質膜のテンプレートとして酸化マグネシウムナノパウダー(一次粒径0.4μm、SSA130m2/g;広州宏武材料技術有限公司製)を熱処理容器に充填し、チューブ炉に装填した。内部をArガス置換し、その後920℃まで昇温した。必要に応じ、脱水などの目的で事前の熱処理を加える。その後、ArガスとCH4ガス(濃度20vol%)の混合ガスを2.3時間流し、T-CVD法にてグラフェン構造を含む炭素質膜をテンプレート上に形成させた。冷却後取り出し、粉砕分級処理を行った。
次に、この処理物からテンプレートを塩酸により溶出させ、粒子内空間を保持しながら洗浄乾燥し、補助材料前駆体を得た。これを、不活性雰囲気中、1700℃にて熱処理することで炭素構造最適化を行い実施例1の電池反応補助材料を得た。
得られた補助材料に対して、透過電子顕微鏡(JEM-2010型、日本電子)を用いてTEMによりその形状を観察した。透過電子顕微鏡を用いた多孔質炭素材料の観察は、加速電圧200kVで行った。得られた補助材料の二次粒子の平均粒径は3.2μmであり、透過電子顕微鏡(TEM)画像(図6)から、主に層状グラフェンの骨格構造が形成されていることを確認した。
(極微小負荷除荷試験)
エタノールに分散した補助材料を試料台に少量展開し、乾燥した。その後SEM内に導入し、測定粒子を観察して、高さ1~5μm、幅1~5μmの粒子を測定対象として圧子の直下に配置した。その後、SEMに組込まれたナノインデンター:ナノフリップ(東陽テクニカ)を用いて、押込みヘッド:InForce50、圧子径:10μm、最大荷重0.1mN、最大荷重までの時間:5sec、最大荷重保持時間:5secの条件で負荷除荷試験を行った。試料形状は試料台に安定に固定されたものを選び、加圧初期に容易に体勢が変動した場合には再測定を行った。図3に示されている塑性変形仕事率は、以下の式から求めることができる。
(正極電極の作製)
平均粒径8μmの三元系正極材NCM(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)粉末96重量%、導電助剤として実施例1の電池反応補助材料を1重量%、PVdF 3重量%を、溶媒であるN-メチル-ピロリドン(NMP)に添加した。得られた混合液が均一になるように撹拌混合し、正極剤ペーストを作製した。これを厚さ15μmのAl集電体上に塗布後110℃にて乾燥し、その後φ15mmに打抜き、45kNにて加圧し正極電極とした。
(正極用試験電池の作製)
得られた正極電極を120℃真空乾燥後、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内にて、1M LiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1混合溶媒)を電解液とし、ポリプロピレンセパレーターを用い、金属Li対極の2032サイズコイン型試験電池を作製した。
(正極用評価方法)
試験電池当たり1.25mA(0.2C相当)の定電流で4.2Vまで通電し、4.2V到達後定電圧充電し、0.31mA(0.05C)になるまで継続した。その後、1.25mAの定電流で3Vまで放電した。この時の放電容量と平均電圧を求めた。次に、同じ試験電池を用いて1.25mA(0.2C相当)の定電流で4.2Vまで通電し、4.2V到達後、定電圧充電し0.31mA(0.05C)になるまで継続した。その後、高レートである12.5mA(2C相当)の定電流で3Vまで放電した。得られた試験電池の放電容量から、各試験電池の2C維持率(2C容量÷0.2C容量)を求めた。
<実施例2>
炭素質膜のテンプレートとして、酸化アルミナノパウダー(一次粒径0.015μm、SSA157m2/g;TECNAN社製)を使用し、熱処理温度を890℃、T-CVD法の時間を2.1時間、テンプレートの溶出にフッ酸を用いる以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2の電池反応補助材料を得た。
得られた実施例2の補助材料は透過電子顕微鏡(TEM)にて、主に層状グラフェンの骨格構造の形成が確認され(図7)、二次粒子平均粒径2.1μmであった。
実施例1と同様の条件下で、実施例2の試験電池を製造した。
<比較例1>
補助材料の代わりに、アセチレンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック)を用いる以外は、実施例1と同様の条件下で試験電池を製造した。
<比較例2>
補助材料の代わりに、ケッチェンブラック(ライオンスペシャリティケミカルズ製、商品名:EC300)を用いる以外は、実施例1と同様の条件下で試験電池を製造した。
<比較例3>
補助材料の代わりに、シングルウォールカーボンナノチューブ(SSA:600m2/g、外径:2nm、長さ:2~5μm;広州宏武材料技術有限公司製)を用い、電池作製における正極の添加量を97.95重量%、シングルウォールカーボンナノチューブの添加量を0.05重量%とする以外は、実施例1と同様の条件下で試験電池を製造した。
実施例1および2で製造した電池反応補助材料と、比較例1で用いたアセチレンブラック、比較例2で用いたケッチェンブラック、比較例3で用いたシングルウォールカーボンナノチューブについて、上述した極微小負荷除荷試験の他に、窒素吸脱着測定およびラマン分光測定を行い、塑性変形仕事率、細孔容積、炭素層積層指数をそれぞれ求めた。
実施例の補助材料についての窒素吸脱着による細孔容積の測定は、比表面積・細孔分布測定装置(BELSORP MAX,BEL japan製)を用いて-196℃の条件下で行った。測定前に、150℃で6時間真空乾燥する脱気処理を行った。サンプル管内の圧力を測定する際の平衡判断条件は300秒とした。
得られた窒素吸脱着等温線データをソフトウェアAutosorb 1(アントンパールジャパン社製)を用いて解析した。I型の吸着等温線の場合には、スリット型孔を仮定して密度汎関数理論(DFT法)により計算したカーネルを参照に、電解液導通孔の径の分布を解析した。また、IV型の吸着等温線を示す試料に関しては、それぞれの吸着等温線に対して、Barrett-Joyner-Halenda法(BJH法)を適用することで、細孔径分布を解析して細孔容積を求めた。実施例1の補助材料の細孔径分布曲線を図8に示した。
実施例の補助材料に対して、レーザー回折粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、MT3300EXII-SDC)を用いて、粒度分布測定を行った。具体的には、それぞれの補助材料を水に添加し、測定前にエタノールをさらに混合し、3周波超音波洗浄器(アズワン株式会社製、VS-100III)を用いて5分間超音波処理を行った上で、上記装置を用いて粒度分布測定を行った。実施例1の補助材料の粒度分布を図9に示した。
実施例の補助材料に対して、顕微ラマン分光装置(DXR3 顕微レーザーラマン|Thermo Fisher Scientific製)でラマンスペクトルを測定した。測定には、532nm(2mW)のレーザーを用い、グレーティング: 900lines/mm、分光器アパーチャ:50μmφ、露光時間: 0.500sec(2Hz)、積算回数:10 (5min)に設定して測定を行った。測定範囲は、300~3500cm-1とした。実施例1の補助材料について測定したラマンスペクトルを図2に示した。
次に、測定により得られたGバンドと2Dバンドの値から、IG /I2D で表される炭素層積層指数を求めた。
実施例1、2、比較例1から3の試験電池を、上述した正極用評価方法にて電池放電レート特性として2C維持率を求めた。これらの結果を表1に示した。また実施例1の試験電池を用いた放電時の電流違いの放電曲線を図10に示した。
<考察>
本実施例の補助材料は、比較例の導電助剤に比べ、高レート放電の維持率が高いことを確認できた。またIG /I2D で表される炭素層積層指数の値から、実施例の補助材料は、その構造の少なくとも一部にグラフェン構造を有することが示唆された。
本実施例の補助材料は、適度な機械特性、すなわちある一定以上の力では塑性変形し、ある一定以下の力では弾性変形するという塑性変形性を有している。本実施例の補助材料は、積層数の少ないグラフェン質からなる三次元骨格から形成されている。このため、電極内正極材の粒子間で、弾性により補助材料中の細孔容積を残し電解液を保持しつつ、塑性により永久変形したとしても高品質なグラフェン質が電子伝導を維持できるという性質を有する。本性質は、本実施例の補助材料の特長の一つといえる。
実験2:電池反応補助材料と既存導電助剤比較
<実施例3>
正極への実施例1の補助材料の添加量を0.5重量%、アセチレンブラック(SSA:65m2/g、電気化学工業製、商品名:デンカブラック)の添加量を0.5重量%とする以外は、実施例1と同様の条件下で試験電池を製造し、電池評価を実施した。
<実施例4>
正極への実施例1の補助材料の添加量を0.5重量%、ケッチェンブラック(SSA:800m2/g、ライオンスペシャリティケミカルズ製、商品名:EC300)の添加量を0.5重量%とする以外は、実施例1と同様の条件下で試験電池を製造し、電池評価を実施した。
<実施例5>
正極材の添加量を96.45重量%、正極への実施例1の補助材料の添加量を0.5重量%、シングルウォールカーボンナノチューブ(SSA:700m2/g、外径:2nm、長さ:2~5μm;広州宏武材料技術有限公司製)の添加量を0.05重量%とする以外は、実施例1と同様の条件下で試験電池を製造し、電池評価を実施した。
<実施例6>
テンプレートを溶出させない(=セラミック粒子が残っている)こと以外は実施例2と同様に操作して、実施例6の電池反応補助材料を得た。
得られた実施例6の補助材料は、透過電子顕微鏡(TEM)にて、主に層状のグラフェン構造がテンプレート粒子上に形成されたことと、テンプレートが内部に存在している様子が確認された(図11)。
正極への実施例1の補助材料の添加量を0.5重量%、実施例6の補助材料の添加量を0.5重量%とする以外は、実施例1と同様の条件下で試験電池を製造し、電池評価を実施した。
実施例3から6の試験電池についての電池評価の結果を表2に示した。
<考察>
本実施例の補助材料を比較例で用いた導電助剤に混合し電極に用いると、比較例の導電助剤を単独使用した場合(比較例1から3)に比べ、高レート放電の維持率が高くなった。導電助剤の種類によっては寸法や形状が異なるが、一次粒子であるナノ粒子が凝集したカーボンブラックでは、デンカブラックよりも内部に微細孔を持ち、比表面積が大きいケッチェンブラックが効果が高かった。ケッチェンブラックは酸素官能基が多く、本発明の補助材料と凝集しにくいことが理由と考えられる。
一方で、セラミックスの中実粒子を用いた実施例6では、実施例4と同程度の2C維持率が得られた。これは、電極内の比較的大きな空隙がつぶれにくく電解液が比較的多く存在したため、良好な結果が得られたと考えられる。
実験3:実施例1の電池反応補助材料の合成条件検討
本実施例の補助材料はT-CVD法にてセラミックスに炭素質膜を形成させるが、実施例1,7から10および比較例4のように混合ガス中の有機ガス濃度は一定にして、ガスの流通時間を可変することで、炭素質膜の厚みや性質が異なる補助材料を作製した。
<実施例7>
T-CVD法にて、混合ガスを0.5時間流す以外は、実施例1と同様に操作して、実施例7の電池反応補助材料を得た。
<実施例8>
T-CVD法にて、混合ガスを1.0時間流す以外は、実施例1と同様に操作して、実施例8の電池反応補助材料を得た。
<実施例9>
T-CVD法にて、混合ガスを1.6時間流す以外は、実施例1と同様に操作して、実施例9の電池反応補助材料を得た。
<実施例10>
T-CVD法にて、混合ガスを3.0時間流す以外は、実施例1と同様に操作して、実施例10の電池反応補助材料を得た。
<比較例4>
T-CVD法にて、混合ガスを5.0時間流す以外は、実施例1と同様に操作して、比較例4の電池反応補助材料を得た。
実施例1と同様に、実施例7から10および比較例4の電池反応補助材料を用いて試験電池を製造した。それらについて、各種試験および電池評価を実施し、その結果を表3および図12、図13、図14に示した。比較例1から3の評価についても表3に合わせて記載した。図12は実施例1,2,7から10に係る試験電池および比較例1から4に係る試験電池の塑性変形仕事率と2Cレート放電維持率との関係を示した図である。図12の縦軸は2Cレート放電維持率、横軸は塑性変形仕事率を示している。図13は、実施例1,2,7から10に係る試験電池および比較例1,2,4に係る試験電池の炭素積層指数と2Cレート放電維持率との関係を示した図である。図13の縦軸は2Cレート放電維持率、横軸は炭素積層指数を示している。図14は、実施例に係る試験電池および比較例に係る試験電池の細孔容積と2Cレート放電維持率との関係を示した図である。図14の縦軸は2Cレート放電維持率、横軸は細孔容積を示している。
<考察>
表3、図12から14の結果から分かる通り、実施例の評価試験の範囲では、高レート特性は良好に推移している。これは弾性変形と塑性変形のバランスが良好な範囲である、言い換えれば電子伝導性とイオン伝導性のバランスが良好であることがその理由と考えられる。
炭素積層指数と2Cレート放電維持率との関係については、実施例の試験電池における炭素積層指数は0.3から4.2の範囲であり、いずれも比較例1,2,4の試験電池と比較して高レート特性を示すものであることを確認できた。これは実施例に係る試験電池の電極はグラフェンを含むため、電子伝達に優れていることに起因していると考えられる。
また細孔容積と2Cレート放電維持率との関係については、実施例に係る試験電池はいずれも、比較例1,2,4の試験電池と比較して高レート特性を示すものであることを確認できた。これは細孔容積が大きいほどリチウムイオンが溶存した電解液が浸透し保持量が大きくなるため、電池反応時のイオン供給に優れることに起因していると考えられる。
実験4:電池反応補助材料の二次粒径検討
<実施例11>
粉砕分級処理条件を変更する以外は、実施例1と同様に操作して、実施例11の電池反応補助材料を得た。得られた補助材料の二次粒子の平均粒径は0.4μmであった。
<実施例12>
粉砕分級処理条件を変更する以外は、実施例1と同様に操作して、実施例12の電池反応補助材料を得た。得られた補助材料の二次粒子の平均粒径は1.3μmであった。
<実施例13>
粉砕分級処理条件を変更する以外は、実施例1と同様に操作して、実施例13の電池反応補助材料を得た。得られた補助材料の二次粒子の平均粒径は4.9μmであった。
<実施例14>
粉砕分級処理条件を変更する以外は、実施例1と同様に操作して、比較例5の電池反応補助材料を得た。得られた補助材料の二次粒子の平均粒径は0.1μmであった。
<比較例5>
粉砕分級処理条件を変更する以外は、実施例1と同様に操作して、比較例6の電池反応補助材料を得た。得られた補助材料の二次粒子の平均粒径は6.8μmであった。
実施例1と同様に、実施例11から14および比較例5の電池反応補助材料を用いて試験電池を製造した。それらについて各種試験および電池評価を実施し、その結果を表4、図15に示した。図15は、実施例1,11から14に係る試験電池および比較例5に係る試験電池についての、補助材料内の二次粒子径と2Cレート放電維持率との関係を示した図である。
<考察>
表4および図15の結果から、本実施例1,11から13の補助材料の粒径の範囲では高レート特性は良好に推移しているが、粒径が小さ過ぎても、大き過ぎても特性は低下することを確認できた。小さ過ぎる場合には、補助材料が粉砕により破壊され、電子伝導を担うグラフェン面が小さくなり、且つイオン保持を担う粒子内空間が小さくなるため、特性に悪影響が出る。逆に、大き過ぎる場合には、電極内での補助材料の分散が悪くなり、電子伝導経路が十分に発達せず、性能が十分発揮できない。
実験5:実施例1の電池反応補助材料の添加量検討
<実施例15>
正極材の添加量を96.9重量%、正極への実施例1の補助材料の添加量を0.1重量%とする以外は、実施例1と同様に前記試験電池を作製した。
<実施例16>
正極材の添加量を96.5重量%、正極への実施例1の補助材料の添加量を0.5重量%とする以外は、実施例1と同様に前記試験電池を作製した。
<実施例17>
前記試験電池の作製に際して、正極材の添加量を95.0重量%、正極への実施例1の補助材料の添加量を2.0重量%とする以外は、実施例1と同様に前記試験電池を作製した。
<比較例6>
前記試験電池の作製に際して、正極材の添加量を96.95重量%、正極への実施例1の補助材料の添加量を0.05重量%とする以外は、実施例1と同様に前記試験電池を作製した。
<比較例7>
前記試験電池の作製に際して、正極材の添加量を90.0重量%、正極への実施例1の補助材料の添加量を7.0重量%とする以外は、実施例1と同様に前記試験電池を作製した。
実施例15から17、比較例6および比較例7の試験電池に対し、充放電試験を行った。試験電池当たり1.25mA(0.2C相当)の定電流で4.2Vまで通電し、4.2V到達後定電圧充電し、0.31mA(0.05C)になるまで継続した。その後、1.25mAの定電流で3Vまで放電した。この時の充電容量と放電容量を求めた。その結果を表5および図16に示した。図16は、実施例に係る試験電池および比較例に係る試験電池についての、補助材料の添加量と充放電容量との関係を示した図である。
<考察>
表5および図16の結果から、実施例1,15,16、17の補助材料の添加量の範囲では、試験電池の高レート特性は良好に推移したことを確認できた。補助材料の添加量は、多過ぎると活物質材料の含有量が低下して電極の充放電容量が低下し、少な過ぎると補助材料の機能が発揮しにくくなることが示された。
実験6:実施例1の電池反応補助材料を含有する負極の検討
<実施例18>
実施例1の補助材料の負極への添加量を1.0重量%とし、負極試験電池を製造した。人造黒鉛97重量%、実施例1の補助材料1重量%、カルボキシメチルセルロース1重量%、スチレンブタジエンラバー(SBR)1重量%を、蒸留水を溶媒として均一になるように撹拌混合し、負極剤ペーストを作製した。得られたペーストを厚さ20μmの銅箔上に塗布後110℃にて乾燥し、その後φ15mmに打抜き、30kNにて加圧し負極電極とした。
得られた負極電極を、120℃真空乾燥後、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内にて、1M LiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1混合溶媒)を電解液として、ポリプロピレンセパレーターを用い、金属Li対極の2032サイズコイン型試験電池を作製した。
試験電池当たり1.23mA(0.2C相当)の定電流で0Vまで通電し、0V到達後定電圧充電し、0.31mA(0.05C)になるまで継続した。その後、1.23mAの定電流で1.5Vまで放電した。この時の放電容量を求めた。次に、同じ試験電池を用いて1.23mA(0.2C相当)の定電流で0Vまで通電し、0V到達後、定電圧充電し0.31mA(0.05C)になるまで継続した。その後、高レートである12.3mA(2C相当)の定電流で1.5Vまで放電した。上記の評価試験において求めた試験電池の放電容量から2C維持率(2C容量÷0.2C容量)を求めた。得られた負極電池の評価を実施した結果、2C放電時の維持率は0.45であった。
<比較例8>
実施例1の補助材料の代わりに、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック)を用い、この導電助剤の負極への添加量を1.0重量%とする以外は、実施例18と同様に負極試験電池を製造した。得られた負極電池の評価を実施した結果、2C放電時の維持率は0.23であった。
<考察>
上記の結果から、負極において本発明の補助材料は有効に作用することを確認できた。
上述した実施例から明らかなように、本実施形態の補助材料を用いた電池における高レート放電の維持率は、比較例の電池における維持率と比較して高い。その理由は、本実施形態の補助材料の電子伝導性が高いことに由来する。すなわち、本実施形態の補助材料は、比較例で用いた導電助剤に比べ、グラフェン質を含む高導電性炭素質を骨格とし、かつ粒子内部に電解液を保持可能な空間を有するためである。放電反応は、充電で脱離したリチウムイオンが正極材に戻る反応であり、放電が始まると外部回路から正極に電子が流れ、その電子とリチウムイオンが結合する形で正極の結晶構造サイトに戻り、充電前の結合状態を復元する。すなわちリチウムイオンと電子の結合と正極の結晶構造の相変化が同時に起こる。相変化は電圧の変化から観測できる。高レート放電の維持率の高さに関しては、この相変化の「同時」性が重要であり、本実施例の補助材料はこの「同時」性を実現可能であることを確認できた。
本発明は上述した実施形態や実施例に限定されるものではない。本発明の範囲を逸脱しない範囲内で種々設計変更した形態が本発明に含まれる。