以下、本発明の物理量センサー、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る物理量センサーについて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。図3は、図1に示す物理量センサーが有する電極を示す平面図である。図4は、図1中のB-B線断面図である。図5は、ダンピングを説明するための模式図である。図6は、S0とダンピングとの関係を示すグラフである。図7は、S1/S0と感度比およびダンピング比との関係を示すグラフである。図8ないし図16は、構造体厚みと孔サイズとの関係を示すグラフである。図17ないし図23は、S0min、S1minとH、hとの関係を示すグラフである。図24は、受けた振動の周波数と可動体の変位量との関係を示すグラフである。図25ないし図27は、図1の物理量センサーの変形例を示す平面図である。図28は、耐振動性のランダム試験の結果を示すグラフである。図29ないし図36は、図1の物理量センサーの変形例を示す平面図である。
なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、X軸に平行な方向を第2方向としてのX軸方向、Y軸に平行な方向を第1方向としてのY軸方向、Z軸に平行な方向を第3方向としてのZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印方向先端側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向プラス側を「上」とも言い、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を、単に、「平面視」とも言う。また、図25ないし図36では、説明の便宜上、基板2および蓋体5の図示を省略している。
また、本願明細書において、「直交」とは、90°で交わっている場合の他、90°から若干傾いた角度、例えば、80°~100°程度で交わっている場合も含む。具体的には、X軸がYZ平面の法線方向に対して-10°~+10°程度傾いている場合、Y軸がXZ平面の法線方向に対して-10°~+10°程度傾いている場合、Z軸がXY平面の法線方向に対して-10°~+10°程度傾いている場合、についても「直交」に含まれるものとする。
図1ないし図4に示す物理量センサー1は、Z軸方向の加速度Azを測定することのできる加速度センサーである。このような物理量センサー1は、基板2と、基板2上に配置された素子部3と、素子部3を覆い、基板2に接合された蓋体5と、を有する。以下、これら各部について、順に詳細に説明する。
基板2は、板状をなし、上面側に開口する凹部21を有する。また、Z軸方向からの平面視で、凹部21は、素子部3を内側に内包するように、素子部3よりも大きく形成されている。凹部21は、素子部3と基板2との接触を防止する逃げ部として機能する。また、凹部21は、第1凹部211と、第1凹部211のX軸方向プラス側に位置し、第1凹部211よりも深い第2凹部212と、を有する。そのため、基板2と素子部3との間にある空隙Qは、第1凹部211と重なる第1空隙Q1と、第2凹部212と重なり、第1空隙Q1よりもZ軸方向の長さが長く、基板2と素子部3との離間距離が大きい第2空隙Q2と、を有する。
また、基板2は、第1凹部211の底面に設けられた突起状のマウント部22を有する。そして、マウント部22の上面に素子部3の固定部31が接合されている。これにより、素子部3を、凹部21の底面と離間させた状態で基板2に固定することができる。また、基板2は、凹部21の周囲に位置し、上面側に開放する溝部25、26、27を有する。
基板2としては、例えば、アルカリ金属イオン(Na+等の可動イオン)を含むガラス材料(例えば、パイレックスガラス(登録商標)、テンパックスガラス(登録商標)のような硼珪酸ガラス)で構成されたガラス基板が用いられる。ただし、基板2としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板やセラミックス基板を用いてもよい。
また、基板2は、電極8を有する。電極8は、凹部21の底面に配置されている第1固定電極81、第2固定電極82およびダミー電極83を有する。また、基板2は、溝部25、26、27に配置されている配線75、76、77を有する。配線75、76、77の一端部は、それぞれ、蓋体5の外側に露出し、外部装置との電気的な接続を行う電極パッドPとして機能する。また、配線75は、素子部3とダミー電極83とに電気的に接続され、配線76は、第1固定電極81と電気的に接続され、配線77は、第2固定電極82と電気的に接続されている。
図2に示すように、蓋体5は、板状をなし、下面側に開口する凹部51を有する。蓋体5は、凹部51内に素子部3を収納し、基板2の上面に接合されている。そして、蓋体5および基板2によって、素子部3を収納する収納空間Sが形成されている。収納空間Sは、気密空間である。また、収納空間Sには、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入され、使用温度、例えば-40℃~120℃程度においてほぼ大気圧となっている。ただし、収納空間Sの雰囲気は、特に限定されず、例えば、減圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。
蓋体5としては、例えば、シリコン基板を用いることができる。ただし、蓋体5としては、特に限定されず、例えば、ガラス基板やセラミックス基板を用いてもよい。また、基板2と蓋体5との接合方法としては、特に限定されず、基板2や蓋体5の材料によって適宜選択すればよく、例えば、陽極接合、プラズマ照射によって活性化させた接合面同士を接合させる活性化接合、ガラスフリット等の接合材による接合、基板2の上面および蓋体5の下面に成膜した金属膜同士を接合する拡散接合等を用いることができる。本実施形態では、低融点ガラスであるガラスフリット59を介して基板2と蓋体5とが接合されている。
なお、蓋体5は、グランドに接続するのが好ましい。これにより、蓋体5の電位を一定に保つことができ、例えば、蓋体5と素子部3との間の静電容量の変動を低減することができる。凹部51の底面と素子部3との離間距離としては、特に限定されないが、例えば、15μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。これにより、蓋体5と素子部3との間の静電容量を十分に小さくすることができ、より精度よく、加速度Azを検出することができる。
図1および図2に示すように、素子部3は、マウント部22の上面に接合された固定部31と、固定部31に対して変位可能な板状の可動体32と、固定部31と可動体32とを接続する支持梁33と、を有する。物理量センサー1に加速度Azが作用すると、可動体32が支持梁33を回転軸Jとして、支持梁33を捩り変形させながら回転軸Jまわりに揺動する。
このような素子部3は、例えば、リン(P)、ボロン(B)、砒素(As)等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板をドライエッチングによってパターニングすることで形成される。ただし、素子部3の形成方法としては、特に限定されない。また、素子部3は、陽極接合によって基板2の上面に接合されている。ただし、素子部3の材料や、素子部3と基板2との接合方法は、特に限定されない。
可動体32は、平面視で、X軸方向に沿った長手形状をなし、特に本実施形態では、X軸方向を長辺とする長方形状となっている。そして、可動体32は、回転軸Jに対してX軸方向のマイナス側に位置する第1質量部321と、回転軸Jに対してX軸方向のプラス側に位置する第2質量部322と、第1質量部321と第2質量部322とを連結する連結部323と、を有し、連結部323において支持梁33と接続されている。
また、第2質量部322は、第1質量部321よりもX軸方向に長く、加速度Azが加わったときの回転モーメントすなわちトルクが第1質量部321よりも大きい。この回転モーメントの差によって、加速度Azが加わった際に可動体32が回転軸Jまわりに揺動する。なお、以下では、第2質量部322の基端部であって、回転軸Jに対して第1質量部321と対称な部分を第1部分としての「基部322A」とも言い、第2質量部322の先端部であって、回転軸Jに対して第1質量部321と非対称な部分を第2部分としての「トルク発生部322B」とも言う。なお、これら基部322Aとトルク発生部322Bとの境界部分にはY軸方向に延在する開口325が形成されている。
また、可動体32は、第1質量部321と第2質量部322との間に開口324を有し、開口324内に固定部31および支持梁33が配置されている。これにより、素子部3の小型化を図ることができる。また、支持梁33は、Y軸方向に沿って延在し、回転軸Jを形成している。ただし、固定部31や支持梁33の配置としては、特に限定されず、例えば、可動体32の外側に位置していてもよい。
このような構成の可動体32のうち、第1質量部321と第2質量部322の基部322Aとは、Z軸方向からの平面視で第1凹部211と重なっており、第2質量部322のトルク発生部322Bは、Z軸方向からの平面視で第2凹部212と重なっている。
次に、電極8について説明する。前述したように、電極8は、第1固定電極81、第2固定電極82およびダミー電極83を有する。図1および図2に示すように、第1固定電極81は、第1凹部211に配置され、第1質量部321と対向している。また、第2固定電極82は、第1凹部211に配置され、第2質量部322の基部322Aと対向している。これら第1、第2固定電極81、82は、Z軸方向からの平面視で、回転軸Jに対して対称的に配置されている。
また、ダミー電極83は、第2固定電極82のX軸方向プラス側に位置し、第2凹部212に配置され、第2質量部322のトルク発生部322Bと対向している。また、ダミー電極83は、第1固定電極81のX軸方向マイナス側にも位置している。ダミー電極83を設けることにより、基板2中のアルカリ金属イオンの移動に伴う凹部21の底面の帯電を抑制することができる。そのため、凹部21の底面と可動体32との間に可動体32の誤作動、特に、検出対象である加速度Az以外の外力による変位に繋がるような意図しない静電引力が生じるのを効果的に抑制することができる。よって、加速度Azをより精度よく検出することのできる物理量センサー1となる。
物理量センサー1の駆動時には、所定の駆動電圧が素子部3に印加され、第1固定電極81および第2固定電極82は、それぞれ、図示しないQVアンプ(電荷電圧変換回路)に接続される。これにより、図2に示すように、第1固定電極81と第1質量部321との間には静電容量Caが形成され、第2固定電極82と第2質量部322の基部322Aとの間には静電容量Cbが形成される。
物理量センサー1に加速度Azが加わると、第1、第2質量部321、322の回転モーメントの異なりから、可動体32が支持梁33を捩り変形させながら回転軸Jを中心にして揺動する。このような可動体32の揺動により、第1質量部321と第1固定電極81のギャップおよび第2質量部322の基部322Aと第2固定電極82のギャップがそれぞれ逆相で変化し、これに応じて静電容量Ca、Cbが逆相で変化する。そのため、静電容量Ca、Cbの変化量、より具体的には静電容量Ca、Cbの差分に基づいて、加速度Azを検出することができる。
前述したように、凹部21は、Z軸方向からの平面視で、回転軸Jと重なる第1凹部211と、第1凹部211のX軸方向プラス側に位置し、第1凹部211よりも深い第2凹部212と、を有する。つまり、凹部21は、回転軸Jから遠ざかるほど、深さすなわち可動体32との離間距離が大きくなる。これにより、揺動時の可動体32と基板2との接触を抑制しつつ、可動体32と第1、第2固定電極81、82との離間距離を小さくすることができる。そのため、静電容量Ca、Cbを大きくすることができ、加速度Azの検出精度が向上する。
また、図1、図3および図4に示すように、物理量センサー1は、第1凹部211の底面から可動体32側に向けて突出する突起6を有する。突起6は、可動体32に過度な揺動が生じた際に可動体32と接触することにより、可動体32のそれ以上の揺動を規制するストッパーとして機能する。突起6を設けることにより、互いに電位が異なる可動体32と第1、第2固定電極81、82との過度な接近または広面積での接触を抑制することができ、可動体32と第1、第2固定電極81、82との間に生じる静電引力によって可動体32が第1固定電極81または第2固定電極82に引き付けられたまま戻らなくなる「スティッキング」の発生を効果的に抑制することができる。なお、本実施形態では、突起6は、基板2と一体形成されている、つまり、基板2の一部であるが、これに限定されず、基板2と別体で形成されていてもよい。
突起6は、Z軸方向からの平面視で、第1質量部321と重なって設けられている突起61と、第2質量部322の基部322Aと重なって設けられている突起62と、を含む。このうち、突起61が可動体32と第1固定電極81との過度な接近を抑制し、突起62が可動体32と第2固定電極82との過度な接近を抑制する。また、突起61、62は、それぞれ、Y軸方向に離間して一対設けられている。また、一対の突起61と一対の突起62とは、Z軸方向からの平面視で、回転軸Jに対して対称的に配置されている。
また、図3および図4に示すように、各突起61、62は、可動体32と同電位であるダミー電極83に覆われている。これにより、基板2中のアルカリ金属イオンの移動に伴う各突起61、62の表面の帯電を抑制することができる。そのため、突起61、62と可動体32との間に可動体32の誤作動、特に、検出対象である加速度Az以外の外力による変位に繋がるような意図しない静電引力が生じるのを効果的に抑制することができる。また、各突起61、62を覆うダミー電極83と可動体32は同電位であるため、不要な静電引力が生じるのを抑制し、ダミー電極83と可動体32のスティッキングの発生を抑えることができる。よって、加速度Azをより精度よく検出することのできる物理量センサー1となる。
なお、本実施形態では、図3に示すように、第1固定電極81に、そのX軸方向マイナス側の端から各突起61まで伸びる一対の切り欠き811を形成し、各切り欠き811内にダミー電極83を延伸させることによりダミー電極83で突起61を覆っている。同様に、第2固定電極82に、そのX軸方向プラス側の端から各突起62まで伸びる一対の切り欠き821を形成し、各切り欠き821内にダミー電極83を延伸させることによりダミー電極83で突起62を覆っている。
ただし、突起61、62をダミー電極83で覆う方法は、特に限定されない。また、突起61は、第1固定電極81に覆われていてもよいし、電極8に覆われずに剥き出しになっていてもよい。同様に、突起62は、第2固定電極82に覆われていてもよいし、電極8に覆われずに剥き出しになっていてもよい。また、突起6は、省略してもよい。
可動体32の説明に戻って、図1、図2および図4に示すように、可動体32は、可動体32をそのZ軸に沿った厚さ方向に貫通する複数の貫通孔30を備える第1領域R1と、貫通孔30を備えない第2領域R2と、を有する。可動体32が貫通孔30を備える第1領域R1を有することにより、可動体32が揺動する際の気体のダンピングを低減することができ、可動体32の振動特性が向上する。一方、可動体32が貫通孔30を備えない第2領域R2を有することにより、ダンピングを増加させ、高周波数領域において可動体32を振動し難くすることができる。また、貫通孔30を形成しないことで、低下した可動体32を補強することもできる。したがって、可動体32に高周波数領域の振動を生じ難くさせ、さらには、高周波数領域の強い振動が加わった場合でも、可動体32の破損を効果的に抑制することができる。
図1に示すように、第1領域R1に形成された複数の貫通孔30は、それぞれ、平面視での開口形状が正方形であり、X軸方向に延在する一対の辺およびY軸方向に延在する一対の辺を有する。複数の貫通孔30は、第1領域R1の全域に亘って均一に配置されている。また、複数の貫通孔30は、平面視で規則的に配置され、特に、本実施形態ではX軸方向とY軸方向とに並ぶ行列状に配置されている。また、複数の貫通孔30は、互いに同じ大きさとなっている。
なお、前記「均一」とは、X軸方向およびY軸方向に隣り合う貫通孔30同士の離間距離が、全ての貫通孔30で等しいことの他、製造上生じ得る誤差等を加味して、一部の離間距離が他の離間距離から若干、例えば、10%以内程度ずれている場合も含まれる意味である。同様に、前記「正方形」とは、実質的に正方形であることを意味し、正方形と一致する場合の他、正方形から若干くずれた形状、例えば、製造上生じ得る誤差等を加味して、四隅が角となっておらず面取りやR付けがなされていたり、少なくとも1つの角部が90°から±10°程度の範囲内でずれていたり、少なくとも1つの辺の長さが他の辺の長さと多少異なっていたり、さらに、開口のアスペクト比が1:1.1~1.1:1程度の範囲内であったりするものも含む意味である。
次に、第1領域R1における貫通孔30の設計について具体的に説明する。貫通孔30は、可動体32が回転軸Jまわりに揺動する際の気体のダンピングをコントロールするために設けられている。図5に示すように、ダンピングは、貫通孔30内を通過する気体の孔中ダンピングと、可動体32と基板2との間でのスクイズフィルムダンピングと、により構成されている。
貫通孔30を大きくするほど、貫通孔30内を気体が通り易くなるため、孔中ダンピングを低減することができる。また、貫通孔30の占有率を高くするほど、可動体32と基板2との対向する面積が減少するため、スクイズフィルムダンピングを低減することができる。しかし、同時に、可動体32と第1、第2固定電極81、82との対向面積の減少と、トルク発生部322Bの質量の低下が生じるため、加速度Azの検出感度が低下する。反対に、貫通孔30を小さくするほど、すなわち、占有率を低くするほど、可動体32と第1、第2固定電極81、82との対向面積が増加し、トルク発生部322Bの質量が増加するため、加速度Azの検出感度は向上するが、ダンピングが増大してしまう。このように、検出感度とダンピングとは、トレードオフの関係にある。
物理量センサー1では、貫通孔30の設計を工夫することにより、検出感度とダンピングとの両立を図っている。このことについて、以下、具体的に説明する。物理量センサー1の検出感度は、(A)可動体32と凹部21の底面、より厳密には電極8の表面との離間距離をhとしたときの1/h2、(B)可動体32と第1、第2固定電極81、82との対向面積、(C)支持梁33のばね剛性をkとしたときの1/k、および、(D)トルク発生部322Bの質量に比例する。なお、支持梁33のばね剛性は、可動体32の厚さが均一の場合、貫通孔30のZ軸方向の長さHに比例する。物理量センサー1では、まず、ダンピングを無視した状態で、必要な検出感度を得るために必要な、H、hおよび可動体32の第1、第2固定電極81、82との対向する面積、言い換えると第1質量部321および基部322Aにおける貫通孔30の占有率を決定する。これにより、必要な大きさの静電容量Ca、Cbが形成され、物理量センサー1は、十分な検出感度を得られる。
なお、第1領域R1における貫通孔30の占有率としては、特に限定されないが、例えば、75%以上であることが好ましく、78%以上であることがより好ましく、82%以上であることがさらに好ましい。これにより、検出感度とダンピングとの両立が図り易くなる。
このように、第1質量部321および基部322Aにおける貫通孔30の占有率を決定したら、次いで、凹部21の底面と素子部3との離間距離hが異なる部分、すなわち、第1質量部321および基部322Aと、トルク発生部322Bとで、それぞれ、独立してダンピングについての設計を行う。
感度を変えずにダンピングを最小にする新たな技術思想として、物理量センサー1では、図5に示した孔中ダンピングとスクイズフィルムダンピングとの差がなるべく小さくなるように、好ましくは、孔中ダンピングとスクイズフィルムダンピングとが等しくなるように複数の貫通孔30を設計する。このように、孔中ダンピングとスクイズフィルムダンピングとの差をなるべく小さくすることにより、ダンピングを低減することができ、特に、孔中ダンピングとスクイズフィルムダンピングとが等しい場合に、ダンピングが最小となる。そのため、物理量センサー1によれば、検出感度を十分に高く維持しつつ、ダンピングを効果的に低減することができる。
なお、第1質量部321、基部322Aおよびトルク発生部322Bにおけるダンピング設計の方法は、互いに同様であるため、以下では、第1質量部321のダンピング設計について代表して説明し、基部322Aおよびトルク発生部322Bのダンピング設計については、その説明を省略する。
図1および図2に示すように、第1質量部321の第1領域R1に配置されている貫通孔30のZ軸の長さ(可動体32の厚さ)をH〔m〕、第1質量部321のY軸方向に沿った長さの1/2の長さをa〔m〕、X軸方向に沿った長さをL〔m〕、第1固定電極81と第1質量部321との離間距離をh〔m〕、貫通孔30の正方形の一辺の長さをS0〔m〕、X軸方向またはY軸方向に隣り合う貫通孔30同士の間隔をS1〔m〕、第1空隙Q1内にある気体すなわち収納空間S内に充填されている気体の粘性抵抗(粘性係数)をμ〔kg/ms〕、第1質量部321に生じるダンピングをCとしたとき、Cは、以下の式(2)で表される。式(2)は、式(1)と同様である。
ただし、式(2)で用いているパラメーターは、下記式(3)~(9)で表される。
ここで、式(2)に含まれる孔中ダンピング成分は、下記式(10)で表され、スクイズフィルムダンピング成分は、下記式(11)で表される。
したがって、上記式(10)と上記式(11)が等しくなる、つまり下記式(12)を満たすH、h、S0、S1の寸法を用いることにより、ダンピングCが最小となる。
ここで、上記式(12)を満足する貫通孔30の一辺の長さS0をS0min、隣り合う貫通孔30同士の間隔S1をS1minとし、これらS0minおよびS1minを上記式(2)に代入したときのダンピングC、すなわち、ダンピングCの最小値をCminとする。
物理量センサー1に求められる精度にもよるが、第1質量部321および第2質量部322の基部322Aにおいては、H、hを一定としたときのS0、S1の範囲が下記式(13)を満たすことが好ましく、下記式(14)を満たすことがより好ましく、下記式(15)を満たすことがさらに好ましく、下記式(16)を満たすことが最も好ましい。これにより、可動体32のダンピングを十分に低減することができ、所望の帯域内での検出感度の維持を可能とし、ノイズを低減することができる。
図6は、貫通孔30の一辺の長さS0とダンピングとの関係を示すグラフである。なお、H、hは一定とし、感度が一定となるようにS1/S0比は1とした。これは、S0の大きさを変えても開口率は変わらないということを示す。このグラフから上記式(2)のダンピングは上記式(11)のスクイズフィルムダンピングと、上記式(10)の孔中のダンピングに分離でき、S0がS0minより小さい領域では孔中ダンピングが支配的であり、S0がS0minより大きい領域ではスクイズフィルムダンピングが支配的であることが分かる。上記式(13)を満足するS0は、S0minよりも小さい側のS0’からS0minよりも大きい側のS0”までの範囲となる。
また、第2質量部322のトルク発生部322Bは、回転軸Jから遠い箇所に設けられているため可動体32の変位が第1質量部321および基部322Aと比べて大きいため、これらと比べてダンピングが大きくならざるを得ないが、H、hを一定としたときのS0、S1の範囲が下記式(17)を満たすことが好ましく、下記式(18)を満たすことがより好ましく、下記式(19)を満たすことがさらに好ましく、下記式(20)を満たすことが最も好ましい。これにより、可動体32のダンピングを十分に低減することができる。また、トルク発生部322Bの質量を確保し易くなり、検出感度の低下を効果的に抑制することができる。
また、S0、S1の関係としては、特に限定されないが、下記式(21)を満たすことが好ましく、下記式(22)を満たすことがより好ましく、下記式(23)を満たすことがさらに好ましい。このような関係を満たすことにより、可動体32にバランスよく貫通孔30を形成することができる。
また、図7は、S1/S0と感度比および最小ダンピング比との関係を示すグラフである。なお、感度比とは、S1/S0=1のときの感度との比であり、最小ダンピング比とは、S1/S0=1のときの最小ダンピングとの比である。同図から分かるように、S1/S0>3では感度比の増加率は飽和傾向にあり、かつ、最小ダンピング比は大幅な増加傾向にあることから、下記式(21)~式(23)を満たすことにより、検出感度を十分に高くしつつ、ダンピングを十分に低減することができる。
ここで、上記式(21)ないし(23)の範囲が導出される過程での寸法比S1/S0に係るシミュレーションや実験検証について以下に詳細に説明する。図8ないし図16は、Hを5~80μm、hを1.0~3.5μm、S1/S0を0.25~3.0μmの範囲におけるS0min、S1minとなる孔サイズ、孔間距離の値をプロットしたグラフである。そして、図8ないし図16で得られたS0min、S1minに基づいて、横軸S0、縦軸S1としてグラフにまとめると図17のグラフのようになる。また、一例として、S1/S0=0.25、H=5μmとし、h=1.0~3.5μmとしたときのS0min、S1minを図18に示し、S1/S0=0.25、H=80μmとし、h=1.0~3.5μmとしたときのS0min、S1minを図19に示す。図18および図19から、Hまたはhがそれぞれ大きくなる程、S0min、S1minの寸法が大きくなる傾向にあることが分かる。
ここで、図20にHを5~80μm、hを1.0~3.5μm、S1/S0を0.25~3.0の範囲での全てのS0min、S1minの点の範囲を示す。矢印A方向はS1/S0、矢印B方向はH、hの範囲で決まる。また、一例として、S1min/S0min=0.25~3.0、H=20μm、h=1.0~3.5μmのときのS0min、S1minの条件は、図21のようになる。また、図22に、H=5~80μm、h=1.0~3.5μmとし、S1min/S0minを上記式(21)~(23)の範囲で限定した領域をそれぞれ示す。
ここまでは、S0min、S1minについて説明したが、上記式(13)~(23)の範囲となるS0、S1については、例えば、イメージとして、H=20μm、h=3.5μmの場合、S0min、S1minの周辺まで含まれるので、図23の範囲となり、全体でみると2辺のみが広がった範囲となる。
なお、貫通孔30のZ軸方向の長さH、つまり、可動体32の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、5.0μm以上、80.0μm以下であることが好ましい。これにより、機械的強度を保ちつつ、十分に薄い可動体32が得られる。そのため、物理量センサー1の小型化を図ることができる。また、空隙Qの長さhとしては、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上、3.5μm以下であることが好ましい。これにより、可動体32の可動域を十分に確保しつつ、静電容量Ca、Cbを十分に大きくすることができる。また、長さS0としては、特に限定されず、長さa、Lによっても異なるが、例えば、5μm以上、40μm以下であることが好ましく、10μm以上、30μm以下であることがより好ましい。
以上、第1領域R1における貫通孔30の設計について説明した。次に、第2領域R2について説明する。前述したように、第2領域R2には、貫通孔30が形成されていない。可動体32に、このような第2領域R2を設けることにより、可動体32の機械的強度を高めることができる。また、可動体32のスクイズフィルムダンピングを意図的に増大させることもできる。そのため、図24に示すように、物理量センサー1の周波数特性のQ値を高周波数領域において低下させることができ、その分、高周波数領域において可動体32が振動し難くなる。したがって、可動体32に高周波数領域の振動を生じ難くさせ、さらには、高周波数領域の強い振動が加わった場合でも、可動体32の破損を効果的に抑制することができる。
このような第2領域R2は、図1に示すように、第1質量部321と第2質量部322の基部322Aとに設けられている。また、第1質量部321では、Y軸方向に離間して一対の第2領域R2が設けられている。そして、Z軸方向からの平面視で、一方の第2領域R2は、一方の突起61と重なり、他方の第2領域R2は、他方の突起61と重なっている。つまり、可動体32に過度な揺動が生じた場合、第1質量部321は、第2領域R2において突起61と接触する。また、基部322Aでは、Y軸方向に離間して一対の第2領域R2が設けられている。そして、Z軸方向からの平面視で、一方の第2領域R2は、一方の突起62と重なり、他方の第2領域R2は、他方の突起62と重なっている。つまり、可動体32に過度な揺動が生じた場合、第2質量部322は、第2領域R2において突起62と接触する。第2領域R2は、貫通孔30が形成されていないため、貫通孔30が形成された第1領域R1よりも機械的強度が高い。そのため、第2領域R2と突起61、62とを接触させることにより、接触時に生じる衝撃による可動体32の破損を効果的に抑制することができる。
また、Z軸方向からの平面視で、第1質量部321に設けられた一対の第2領域R2と第2質量部322の基部322Aに設けられた一対の第2領域R2とは、回転軸Jに対して対称的に配置されている。これにより、第1質量部321と基部322Aとの回転軸Jまわりの慣性モーメントを揃えることができる。
また、4つの第2領域R2は、それぞれ、Z軸方向からの平面視で、正方形状をなしており、3×3の計9の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。各第2領域R2のX軸方向の長さである幅Wxは、3×S0+4×S1であり、Y軸方向の長さである幅Wyも、3×S0+4×S1である。つまり、各第2領域R2の面積は、(3×S0+4×S1)2=9×S02+16×S12+24×S0×S1となり、4つの第2領域R2の総面積は、4(3×S0+4×S1)2=36×S02+64×S12+96×S0×S1となる。第2領域R2の総面積を36×S02+64×S12+96×S0×S1以上とすることにより、可動体32のスクイズフィルムダンピングを十分に増大させることができ、高周波数領域における可動体32の変位量を十分に小さく抑えることができる。
なお、第2領域R2の面積(複数ある場合は総面積)は、17100μm2以下であることが好ましい。これにより、検出可能な周波数帯、言い換えると、検出可能な最低周波数を十分確保することができる。検出可能な最低周波数としては、例えば、500Hz程度であることが好ましい。これにより、十分に周波数の低い振動を検出することができ、どのような電子機器にも搭載し易い物理量センサー1となる。
以上、物理量センサー1について説明したが、物理量センサー1の構成、特に、第2領域R2の構成としては、特に限定されず、少なくとも、幅Wxおよび幅Wyの少なくとも一方がS0+2×S1以上であればよい。つまり、Wx≧S0+2×S1またはWy≧S0+2×S1を満足していれば、上述した効果を発揮することができる。このような例としては、例えば、図25に示すような構成があり、各第2領域R2は、1つの貫通孔30の形成を省略した構成となっている。つまり、Wx=S0+2×S1、Wy=S0+2×S1となっている。
また、例えば、図26に示す構成では、各第2領域R2は、突起61、62と重なる部分を中心として、5×5の計25個の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。また、例えば、図27に示す構成では、各第2領域R2は、突起61、62と重なる部分を中心として、7×7の計49個の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。このように、第2領域R2の面積を大きくするほど、高い周波数領域で可動体32が振動し難くなる。
図28は、第2領域R2を有さない構成smp1、本実施形態の構成smp2、図26の構成smp3および図27に示す構成smp4について、耐振動性のランダム試験の結果を示すグラフである。ここでは、構成smp1の耐振動性を1とした場合の構成smp2、smp3、smp4の耐振動性比を示す。第2領域R2を有する構成smp2、smp3、smp4は、いずれも、第2領域R2を有さない構成smp1よりも高い耐振動性を有することが分かる。
また、第2領域R2は、突起61、62と重ならない位置に設けてもよい。例えば、図29に示す構成では、第2領域R2は、第1質量部321および第2質量部322の基部322Aには設けられておらず、トルク発生部322Bにだけ設けられている。また、第2領域R2は、Y軸方向に離間して一対設けられており、各第2領域R2は、5×5の計25個の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。
また、例えば、図30に示す構成では、第2領域R2は、第1質量部321および第2質量部322の基部322Aにそれぞれ1つずつ設けられている。また、第1質量部321に設けられた第2領域R2は、第1質量部321の中央部に突起61と重ならないように設けられており、基部322Aに設けられた第2領域R2は、基部322Aの中央部に突起62と重ならないように設けられている。また、各第2領域R2は、5×5の計25個の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。また、例えば、図31に示す構成では、図30に示した構成に加えて、さらに、トルク発生部322Bにも第2領域R2が設けられている。トルク発生部322Bに設けられた第2領域R2は、トルク発生部322Bの中央部に設けられ、第1質量部321および基部322Aに設けられた第2領域R2と同様に、5×5の計25個の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。
また、例えば、図32に示す構成では、第2領域R2は、第1質量部321および第2質量部322の基部322Aにそれぞれ5つずつ設けられている。また、第1質量部321に設けられた5つの第2領域R2は、突起61と重ならないように、第1質量部321の中央部と四隅とに分散して設けられており、基部322Aに設けられた5つの第2領域R2も、同様に、突起62と重ならないように、基部322Aの中央部と四隅とに分散して設けられている。このように、第2領域R2を可動体32上にバランスよく分散して配置することにとり、可動体32内での貫通孔30の形成むら(粗密)が低減する。そのため、貫通孔30の加工精度を上げることができる。
また、例えば、図33に示す構成では、図32に示した構成に加えて、さらに、第2質量部322のトルク発生部322Bにも5つの第2領域R2が設けられている。また、トルク発生部322Bに設けられた5つの第2領域R2は、トルク発生部322Bの中央部と四隅とに分散して設けられている。また、例えば、図34に示す構成では、図33に示した構成と第2領域R2の配置が同じであるが、それぞれの中央部に位置する第2領域R2は、1×3の計3個の貫通孔30の形成を省略した構成となっており、四隅に位置する第2領域R2は、それぞれ、2×4の計8個の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。また、例えば、図35に示す構成では、図33に示した構成から第1質量部321に設けられた第2領域R2と、基部322Aに設けられた第2領域R2と、を省略している。
また、例えば、図36に示す構成では、トルク発生部322Bにおいても、H、hを一定としたときのS0、S1の範囲が上記式(17)を満たす。これにより、可動体32のダンピングを十分に低減することができ、所望の帯域内での検出感度の維持を可能とし、ノイズを低減することができる。なお、さらに、上記式(18)を満たすことが好ましく、上記式(19)を満たすことがより好ましく、上記式(20)を満たすことがさらに好ましい。本構成では、空隙QのZ軸方向の長さhが、第1質量部321=基部322A<トルク発生部322Bの関係となっているため、それに応じて、貫通孔30の一辺の長さS0が、第1質量部321=基部322A<トルク発生部322Bとなっており、隣り合う貫通孔30同士の間隔S1が、第1質量部321=基部322A<トルク発生部322Bとなっている。
以上、物理量センサー1について説明した。このような物理量センサー1は、前述したように、互いに直交する3つの方向を第1方向であるY軸方向、第2方向であるX軸方向および第3方向であるZ軸方向としたとき、基板2と、基板2と空隙を隔ててZ軸方向に対向し、基板2に対してZ軸方向に変位する可動体32と、を有する。また、可動体32は、Z軸方向に貫通し、Z軸方向から見たときの開口形状が正方形である複数の貫通孔30を備える第1領域R1と、貫通孔30を備えない第2領域R2と、を有する。そして、貫通孔30の一辺の長さをS0、隣り合う貫通孔30同士の間隔をS1としたとき、第2領域R2のX軸方向の長さである幅WxおよびY軸方向の長さである幅Wyの少なくとも一方は、S0+2×S1以上である。
可動体32にこのような大きさの第2領域R2を設けることにより、可動体32の機械的強度を高めることができる。また、可動体32のスクイズフィルムダンピングを意図的に増大させることもできる。そのため、物理量センサー1の周波数特性のQ値を低下させることができ、その分、高周波数領域において可動体32が振動し難くなる。したがって、可動体32に高周波数領域の振動を生じ難くさせ、さらには、高周波数領域の強い振動が加わった場合でも、可動体32の破損を効果的に抑制することができる。
また、前述したように、第2領域R2の面積は、36×S02+64×S12+96×S0×S1以上である。これにより、可動体32のスクイズフィルムダンピングを十分に増大させることができ、高周波数領域における可動体32の変位量を十分に小さく抑えることができる。
また、前述したように、第2領域R2の面積は、17100μm2以下である。これにより、検出可能な周波数帯、言い換えると、検出可能な最低周波数を十分確保することができる。
また、前述したように、第1領域R1は、上記式(13)を満たす。これにより、複数の貫通孔30の設計が適切なものとなり、優れた検出感度を有しつつ、ダンピングを十分に低減することができる。したがって、優れた検出感度を有しつつ、所望の周波数帯域を確保することのできる物理量センサー1が得られる。
また、前述したように、物理量センサー1は、基板2に固定される固定部31と、可動体32と固定部31とを接続し、Y軸方向に沿う回転軸Jを形成する支持梁33と、を有する。また、可動体32は、回転軸Jまわりに変位可能であり、Z軸方向からの平面視で、回転軸Jに対して、X軸方向の一方の側に位置している第1質量部321と、他方の側に位置し、回転軸Jまわりの回転モーメントが第1質量部321よりも大きい第2質量部322と、を有する。また、第2質量部322は、回転軸Jに対して第1質量部321と対称な第1部分である基部322Aと、基部322Aよりも回転軸Jから遠位に位置し、回転軸Jに対して第1質量部321と非対称な第2部分であるトルク発生部322Bと、を有する。そして、第1質量部321および基部322Aに位置する第1領域R1がそれぞれC≦1.5×Cminを満足する。これにより、シーソー揺動する可動体32においても、第1領域R1のダンピングを十分に低減することができる。
また、前述したように、トルク発生部322Bに位置する第1領域R1は、C≦2.5×Cminを満足する。これにより、シーソー揺動する可動体32においても、第1領域R1のダンピングを十分に低減することができる。また、トルク発生部322Bの質量を確保し易くなり、検出感度の低下を効果的に抑制することができる。
また、前述したように、物理量センサー1は、基板2から可動体32側に突出し、Z軸方向からの平面視で、第2領域R2と重なる突起6を有する。これにより、可動体32の突起6と接触する部分の機械的強度が高まり、接触による可動体32の破損を抑制することができる。また、突起6と接触することにより、可動体32の基板2への貼り付きを効果的に抑制することができる。
<第2実施形態>
図37は、本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
本実施形態は、貫通孔30の開口形状が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図37において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
図37に示すように、第1領域R1に形成された複数の貫通孔30は、それぞれ、平面視での開口形状が円形である。複数の貫通孔30は、第1領域R1の全域に亘って均一に配置されている。また、複数の貫通孔30は、平面視で規則的に配置され、特に、本実施形態ではX軸方向とY軸方向とに並ぶ行列状に配置されている。また、複数の貫通孔30は、互いに同じ大きさとなっている。
なお、「円形」とは、実質的に円形であることを意味し、円形と一致する場合の他、円形から若干くずれた形状、例えば、製造上生じ得る誤差等を加味して、真円度が0.9~1.0範囲内にあるものも含む意味である。
ここで、本実施形態では、上記式(9)のr0を貫通孔30の半径とし、上記式(8)のrcを隣り合う貫通孔30同士の中心間距離の半分とする。
このような構成の物理量センサー1においては、各第2領域R2の幅Wxおよび幅Wyの少なくとも一方は、4×rc-2×r0以上である。これにより、前述した第1実施形態と同様に、可動体32の機械的強度を高めることができる。また、可動体32のスクイズフィルムダンピングを意図的に増大させることもできる。そのため、物理量センサー1の周波数特性のQ値を低下させることができ、その分、高周波数領域において可動体32が振動し難くなる。したがって、可動体32に高周波数領域の振動を生じ難くさせ、さらには、高周波数領域の強い振動が加わった場合でも、可動体32の破損を効果的に抑制することができる。
特に、本実施形態では、幅Wxおよび幅Wyの両方が4×rc-2×r0以上である。つまり、幅Wx≧4×rc-2×r0、幅Wy≧4×rc-2×r0である。これにより、上述した効果がより顕著となる。なお、本実施形態では、各第2領域R2は、それぞれ、Z軸方向からの平面視で、正方形状をなしており、3×3の計9の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。したがって、各第2領域R2の幅Wx、幅Wyは、それぞれ、8×rc-2×r0である。したがって、下限値である4×rc-2×r0に対して十分に大きな幅Wx、Wyを有しており、上述した効果がより顕著となる。
以上のように、本実施形態の物理量センサー1は、互いに直交する3つの方向を第1方向であるY軸方向、第2方向であるX軸方向および第3方向であるZ軸方向としたとき、基板2と、基板2と空隙を隔ててZ軸方向に対向し、基板2に対してZ軸方向に変位する可動体32と、を有する。また、可動体32は、Z軸方向に貫通し、Z軸方向から見たときの開口形状が円形である複数の貫通孔30を備える第1領域R1と、貫通孔30を備えない第2領域R2と、を有する。そして、貫通孔30の半径をro、隣り合う貫通孔30同士の中心間距離の半分をrcとしたとき、第2領域R2のX軸方向の長さである幅WxおよびY軸方向の長さである幅Wyの少なくとも一方は、4×rc-2×r0以上である。
可動体32にこのような大きさの第2領域R2を設けることにより、可動体32の機械的強度を高めることができる。また、可動体32のスクイズフィルムダンピングを意図的に増大させることもできる。そのため、物理量センサー1の周波数特性のQ値を低下させることができ、その分、高周波数領域において可動体32が振動し難くなる。したがって、可動体32に高周波数領域の振動を生じ難くさせ、さらには、高周波数領域の強い振動が加わった場合でも、可動体32の破損を効果的に抑制することができる。
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
<第3実施形態>
図38は、本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
本実施形態は、貫通孔30の開口形状が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図38において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
図38に示すように、第1領域R1に形成された複数の貫通孔30は、それぞれ、平面視での開口形状が正五角形である。複数の貫通孔30は、第1領域R1の全域に亘って均一に配置されている。また、複数の貫通孔30は、平面視で規則的に配置され、特に、本実施形態ではX軸方向とY軸方向とに並ぶ行列状に配置されている。また、複数の貫通孔30は、互いに同じ大きさとなっている。
なお、前述した第1実施形態では、貫通孔30の正方形の一辺の長さをS0とし、X軸方向またはY軸方向に隣り合う貫通孔30同士の間隔をS1としていたところ、本実施形態では、貫通孔30の面積の平方根をS0とし、隣り合う貫通孔30同士のX軸方向の間隔DxとY軸方向の間隔Dyを加算して2で割った値をS1とする。
このような構成の物理量センサー1においては、各第2領域R2の幅Wxおよび幅Wyの少なくとも一方は、S0+2×S1以上である。これにより、前述した第1実施形態と同様に、可動体32の機械的強度を高めることができる。また、可動体32のスクイズフィルムダンピングを意図的に増大させることもできる。そのため、物理量センサー1の周波数特性のQ値を低下させることができ、その分、高周波数領域において可動体32が振動し難くなる。したがって、可動体32に高周波数領域の振動を生じ難くさせ、さらには、高周波数領域の強い振動が加わった場合でも、可動体32の破損を効果的に抑制することができる。
特に、本実施形態では、幅Wxおよび幅Wyの両方がS0+2×S1以上である。つまり、幅Wx≧S0+2×S1、幅Wy≧S0+2×S1である。これにより、上述した効果がより顕著となる。なお、本実施形態では、各第2領域R2は、それぞれ、Z軸方向からの平面視で、正方形状をなしており、3×3の計9の貫通孔30の形成を省略した構成となっている。したがって、各第2領域R2の幅Wx、幅Wyは、それぞれ、約3×S0+4×S1である。したがって、下限値であるS0+2×S1に対して十分に大きな幅Wx、Wyを有しており、上述した効果がより顕著となる。
以上のように、本実施形態の物理量センサー1は、互いに直交する3つの方向を第1方向であるY軸方向、第2方向であるX軸方向および第3方向であるZ軸方向としたとき、基板2と、基板2と空隙を隔ててZ軸方向に対向し、基板2に対してZ軸方向に変位する可動体32と、を有する。また、可動体32は、Z軸方向に貫通し、Z軸方向から見たときの開口形状が多角形である複数の貫通孔30を備える第1領域R1と、貫通孔30を備えない第2領域R2と、を有する。そして、貫通孔30の面積の平方根をS0、隣り合う貫通孔30同士のX軸方向の間隔DxとY軸方向の間隔Dyを加算して2で割った値をS1としたとき、第2領域R2のX軸方向の長さである幅WxおよびY軸方向の長さである幅Wyの少なくとも一方は、S0+2×S1以上である。
可動体32にこのような大きさの第2領域R2を設けることにより、可動体32の機械的強度を高めることができる。また、可動体32のスクイズフィルムダンピングを意図的に増大させることもできる。そのため、物理量センサー1の周波数特性のQ値を低下させることができ、その分、高周波数領域において可動体32が振動し難くなる。したがって、可動体32に高周波数領域の振動を生じ難くさせ、さらには、高周波数領域の強い振動が加わった場合でも、可動体32の破損を効果的に抑制することができる。
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
ここで、本実施形態では、平面視での貫通孔30の開口形状が正五角形であるが、これに限定されず、例えば、三角形、四角形、正五角形以外の五角形、六角形、六角形以上の多角形であってもよい。貫通孔30の開口形状が正五角形以外の多角形であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
<第4実施形態>
図39は、第4実施形態に係る電子機器としてのスマートフォンを示す平面図である。
図39に示すスマートフォン1200は、本発明の電子機器を適用したものである。スマートフォン1200には、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210と、が内蔵されている。物理量センサー1によって検出された検出データは、制御回路1210に送信され、制御回路1210は、受信した検出データからスマートフォン1200の姿勢や挙動を認識して、表示部1208に表示されている画像を変化させたり、警告音や効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させることができる。
このような電子機器としてのスマートフォン1200は、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210と、を含む。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
なお、本発明の電子機器は、前述したスマートフォン1200の他にも、例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチールカメラ、タブレット端末、時計、スマートウォッチ、インクジェットプリンター、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、スマートグラス、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ドライブレコーダー、ページャー、電子手帳、電子辞書、電子翻訳機、電卓、電子ゲーム機器、玩具、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、車両、鉄道車輌、航空機、ヘリコプター、船舶等の各種計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
<第5実施形態>
図40は、第5実施形態に係る電子機器としての慣性計測装置を示す分解斜視図である。図41は、図40に示す慣性計測装置が有する基板の斜視図である。
図40に示す電子機器としての慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車や、ロボットなどの被装着装置の姿勢や、挙動を検出する慣性計測装置である。慣性計測装置2000は、3軸加速度センサーおよび3軸角速度センサーを備えた6軸モーションセンサーとして機能する。
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に固定部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンや、デジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。アウターケース2100の外形は、前述した慣性計測装置2000の全体形状と同様に、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2110が形成されている。また、アウターケース2100は、箱状であり、その内部にセンサーモジュール2300が収納されている。
センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を有する。インナーケース2310は、基板2320を支持する部材であり、アウターケース2100の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース2310には、基板2320との接触を防止するための凹部2311や後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。このようなインナーケース2310は、接合部材2200によってアウターケース2100に接合されている。また、インナーケース2310の下面は接着剤によって基板2320が接合されている。
図41に示すように、基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサー2350などが実装されている。また、基板2320の側面には、X軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340xおよびY軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。そして、例えば、加速度センサー2350として、本発明の物理量センサーを用いることができる。
また、基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、慣性計測装置2000の各部を制御する。記憶部には、加速度および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、基板2320にはその他にも複数の電子部品が実装されている。
<第6実施形態>
図42は、第6実施形態に係る電子機器としての移動体測位装置の全体システムを示すブロック図である。図43は、図42に示す移動体測位装置の作用を示す図である。
図42に示す移動体測位装置3000は、移動体に装着して用い、当該移動体の測位を行うための装置である。なお、移動体としては、特に限定されず、自転車、自動車、自動二輪車、電車、飛行機、船等のいずれでもよいが、本実施形態では移動体として四輪自動車、特に農業用トラクターを用いた場合について説明する。
移動体測位装置3000は、慣性計測装置3100(IMU)と、演算処理部3200と、GPS受信部3300と、受信アンテナ3400と、位置情報取得部3500と、位置合成部3600と、処理部3700と、通信部3800と、表示部3900と、を有する。なお、慣性計測装置3100としては、例えば、前述した慣性計測装置2000を用いることができる。
慣性計測装置3100は、3軸の加速度センサー3110と、3軸の角速度センサー3120と、を有する。演算処理部3200は、加速度センサー3110からの加速度データおよび角速度センサー3120からの角速度データを受け、これらデータに対して慣性航法演算処理を行い、移動体の加速度および姿勢を含む慣性航法測位データを出力する。
また、GPS受信部3300は、受信アンテナ3400でGPS衛星からの信号を受信する。また、位置情報取得部3500は、GPS受信部3300が受信した信号に基づいて、移動体測位装置3000の位置(緯度、経度、高度)、速度、方位を表すGPS測位データを出力する。このGPS測位データには、受信状態や受信時刻等を示すステータスデータも含まれている。
位置合成部3600は、演算処理部3200から出力された慣性航法測位データおよび位置情報取得部3500から出力されたGPS測位データに基づいて、移動体の位置、具体的には移動体が地面のどの位置を走行しているかを算出する。例えば、GPS測位データに含まれている移動体の位置が同じであっても、図43に示すように、地面の傾斜θ等の影響によって移動体の姿勢が異なっていれば、地面の異なる位置を移動体が走行していることになる。そのため、GPS測位データだけでは移動体の正確な位置を算出することができない。そこで、位置合成部3600は、慣性航法測位データを用いて、移動体が地面のどの位置を走行しているのかを算出する。
位置合成部3600から出力された位置データは、処理部3700によって所定の処理が行われ、測位結果として表示部3900に表示される。また、位置データは、通信部3800によって外部装置に送信されるようになっていてもよい。
<第7実施形態>
図44は、第7実施形態に係る移動体を示す斜視図である。
図44に示す自動車1500は、本発明の移動体を適用した自動車である。この図において、自動車1500は、エンジンシステム、ブレーキシステムおよびキーレスエントリーシステムの少なくとも何れかのシステム1510を含んでいる。また、自動車1500には、物理量センサー1が内蔵されており、物理量センサー1によって車体の姿勢を検出することができる。物理量センサー1の検出信号は、制御回路1502に供給され、制御回路1502は、その信号に基づいてシステム1510を制御することができる。
このように、移動体としての自動車1500は、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1502と、を含む。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
なお、物理量センサー1は、他にも、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。また、移動体としては、自動車1500に限定されず、例えば、鉄道車輌、飛行機、ヘリコプター、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)、エレベーター、エスカレーター、二足歩行ロボット、ドローン等の無人飛行機、ラジコン模型、鉄道模型、その他玩具等にも適用することができる。
以上、本発明の物理量センサー、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、前述した実施形態では、物理量センサーが加速度を検出する構成について説明したが、物理量センサーが検出する物理量としては、特に限定されず、例えば、角速度、圧力等であってもよい。