JP7531740B1 - 紙製バリア材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の製造方法により得られたものと比較して、バリア性に優れた紙製バリア材料を提供すること。【解決手段】紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程、前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程、を有し、前記バリア塗工層に対して、線圧20kg/cm以上の平滑化処理を行わず、前記接着剤が、前記バリア塗工層に塗工される紙製バリア材料の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、紙製バリア材料の製造方法に関する。
紙製の材料、特に紙製の包装材料にガスバリア性(特に、酸素バリア性)を付与することは、包装される各種製品をガスによる劣化、例えば酸素による酸化などから守るために重要である。
従来から、紙製の包装材料へのガスバリア性の付与には、紙基材上にガスバリア層として、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂をコーティングしたフィルム、さらに酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等を紙基材に押し出しラミネートする、または貼合する方法が主に用いられてきた。
紙製の包装材料に耐水性(特に、水蒸気バリア性)を付与することも、包装される各種製品を水蒸気による劣化から守るために重要である。
本出願人は、ガスバリア性と水蒸気バリア性を備えた紙製の包装材料として、紙基材上に、水蒸気バリア性樹脂と顔料を含む水蒸気バリア層と、ポリビニルアルコール系樹脂と顔料を含むガスバリア層を有する紙製バリア包装材料を提案している(特許文献1)。
また、このような紙製バリア包装材料において、少なくとも一方の最外層にシーラント層を設けることにより、ヒートシール加工を可能としたものが知られている。例えば、特許文献2には、溶融押し出しラミネート法、ドライラミネート法、直接溶融コート法によりラミネート層(シーラント層に相当)を設けることが提案されている。
国際公開第2013/069788号 国際公開第2017/170462号
ドライラミネート法は、接着剤を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせる方法であり、接着力とヒートシール強度に優れた積層体を得ることができる。ドライラミネートでは、密着性を高めるために被着物の表面はより平滑なことが好ましいことが技術常識である。また、紙と熱可塑性樹脂フィルムとをドライラミネートする場合、通常、接着剤はフィルム側に塗工される。これは、紙に接着剤を塗工すると、接着剤が紙に染み込むため、接着面表面に凹凸が生じて接着不良が生じやすいためである。
しかしながら、本発明者らは、紙基材上にバリア塗工層が設けられている場合、バリア塗工層上に接着剤を塗工して熱可塑性樹脂フィルムをドライラミネートする方が、バリア性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、従来の製造方法により得られたものと比較して、バリア性に優れた紙製バリア材料を提供することを課題とする。
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程、
前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程、
を有し、
前記バリア塗工層に対して、線圧20kg/cm以上の平滑化処理を行わず、
前記接着剤が、前記バリア塗工層に塗工されることを特徴とする紙製バリア材料の製造方法。
2.前記紙基材の塗工面の算術平均高さ(Sap)が2.0μm以上30μm以下であり、
前記バリア塗工層の算術平均高さ(Sac)が3.0μm以上35μm以下、かつ、前記塗工面の算術平均高さ(Sap)より1μm以上大きいことを特徴とする1.に記載の紙製バリア材料の製造方法。
3.23℃・0%RH条件の酸素透過度が、20cc/m・day・atm以下であることを特徴とする1.または2.に記載の紙製バリア材料の製造方法。
4.前記接着剤の塗工量(固形分)が2.0g/m以上5.0g/m以下であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の紙製バリア材料の製造方法。
本発明の製造方法により、バリア原紙とバリア塗工層との間、およびバリア塗工層と熱可塑性樹脂フィルムとの間での隙間が少なく、バリア性に優れた紙製バリア材料を提供することができる。本発明の製造方法は、バリア塗工層に線圧20kg/cm以上の平滑化処理を施さないことにより、バリア塗工層の割れの発生を防止し、バリア性の低下を防ぐことができる。本発明の製造方法は、紙基材の表面が平滑でなくても、バリア性に優れた紙製バリア材料を提供することができるため、製造コストを抑えることができる。また、従来はバリア紙の基材に用いることができなかった表面の粗い紙を、紙製バリア材料の紙基材として用いることができる。
本発明の紙製バリア材料の製造方法は、
紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程、
バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程、
を有し、
前記バリア塗工層に対して、線圧20kg/cm以上の平滑化処理を行わず、
接着剤が、バリア塗工層に塗工されることを特徴とする。
・バリア原紙製造工程
バリア原紙製造工程では、紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成する。
「バリア原紙」
バリア原紙は、少なくとも一面が塗工面である紙基材と、この塗工面上に塗工されたバリア塗工層とを有する。
(紙基材)
本発明において紙基材とは、パルプ、填料、各種助剤からなるシートである。
パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを用いることができ、これらの1種、または2種以上を配合して用いることができる。これらの中でも、紙基材中への異物混入が発生し難いこと、使用後の紙容器を古紙原料に供してリサイクル使用する際に経時変色が発生し難いこと、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好となり、特に包装材料として使用した場合の使用価値が高くなることなどの理由から、木材繊維の化学パルプ、機械パルプを用いることが好ましく、化学パルプを用いることがより好ましい。
填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を必要に応じて使用することができる。
また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
本発明の紙基材は、少なくとも一面が塗工面である。本発明の紙基材において、塗工面の算術平均高さ(Sap)は、2.0μm以上30μm以下が好ましい。本発明の製造方法は、紙基材の表面が高度な平滑性を備えなくても層間密着性に優れたラミネート積層体を得ることができる。紙基材の塗工面に対して高度な平滑化処理を省略する点から、紙基材の塗工面の算術平均高さ(Sap)は、5.0μm以上がより好ましく、8.0μm以上がさらに好ましく、11μm以上がよりさらに好ましく、14μm以上がよりさらに好ましく、17μm以上がよりさらに好ましい。一方、紙基材の塗工面が平滑なほどバリア性が向上する傾向があるため、紙基材の塗工面の算術平均高さ(Sap)は、28μm以下がより好ましく、26μm以下がさらに好ましく、24μm以下がさらに好ましい。
塗工面のPPS平滑度(ハードバッキング、1Mpa)は、2.0μm以上15μm以下であることが好ましい。本発明の製造方法は、紙基材の表面が高度な平滑性を備えなくても層間密着性に優れたラミネート積層体を得ることができる。ただし、紙基材の塗工面のPPS平滑度(ハードバッキング、1Mpa)が15μmを超える場合は、バリア性が低下する恐れがある。そのため、紙基材の塗工面PPS平滑度(ハードバッキング、1Mpa)は、4.0μm以上がより好ましく、7.0μm以上がさらに好ましい。
なお、本明細書において、PPS平滑度(パーカープリントサーフ平滑度)は、JIS-P8151(2004)の付属書Aに準じて測定されるパーカープリントサーフ平滑度(μm)を意味する。本発明のPPS平滑度は、ハードタイプのバッキングを用い、クランプ圧1.0Mpaにて測定される値である。本発明の紙製バリア材料においては、PPS平滑度は測定面に表出するパルプの表面状態と密接な関係を有する。
紙基材の少なくとも一面である塗工面は、例えば、乾燥状態でオンマシンまたはオフマシンカレンダーによる平滑化処理を行うことにより、より平滑にすることができる。ただし、本発明の製造方法は、紙基材の塗工面に高度な平滑性は要求されないため、平滑化処理を行わないことが好ましい。
紙基材の坪量は、紙製バリア材料に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は20g/m以上500g/m以下程度のものが好ましい。食品などの包装材、容器、カップなど、包装用途に使用する紙製バリア材料の場合は、25g/m以上400g/m以下のものがより好ましく、特に後述する軟包装袋用途に使用する紙製バリア材料の場合は、30g/m以上110g/m以下のものがより好ましい。
紙基材の厚さは、紙製バリア材料に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、30μm以上600μm以下であることが好ましく、45μm以上125μm以下であることがより好ましい。
(バリア塗工層)
バリア塗工層は、紙基材の少なくとも一面である塗工面上に形成される。
バリア塗工層は、水蒸気バリア性、ガスバリア性のいずれかを有することが好ましく、少なくともガスバリア性を有することがより好ましく、水蒸気バリア性とガスバリア性の両方を有することがさらに好ましい。バリア塗工層が、水蒸気バリア性とガスバリア性の両方を併せ持つ場合、水蒸気バリア塗工層とガスバリア塗工層とを有することが、ガスバリア性と水蒸気バリア性とを両立した紙製バリア材料が得られるため好ましい。以下、水蒸気バリア塗工層を水蒸気バリア層、ガスバリア塗工層をガスバリア層ともいう。
水蒸気バリア層とガスバリア層の積層順については特に限定されないが、水蒸気バリア性とガスバリア性がより向上するため、紙基材、水蒸気バリア層、ガスバリア層の順に積層されていることが好ましい。紙基材、水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙製バリア材料が、より優れた水蒸気バリア性およびガスバリア性を併せ持つ理由は次のように推測される。ガスバリア層に用いられるガスバリア性を有する樹脂としては後述するように水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子が一般的に用いられる。そのため、紙基材上にガスバリア層、水蒸気バリア層をこの順に設けた場合、紙基材中の水分や紙基材を経由して浸透する空気中の水分などにより、ガスバリア層中の水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子が劣化しやすくなる。一方、水蒸気バリア層は、水蒸気を防ぐために耐水性の良好な樹脂を含有するが、紙基材上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有することにより、水蒸気バリア層が紙基材側からの水分によるガスバリア層への影響(劣化)を効果的に抑制することができる。このため、特に水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙製バリア材料は、良好な水蒸気バリア性およびガスバリア性を発揮することができる。
(水蒸気バリア塗工層)
水蒸気バリア塗工層は、少なくとも水蒸気バリア性樹脂を含有する。
水蒸気バリア性樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、パラフィン(WAX)系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、またはそれらのパラフィン(WAX)配合合成接着剤等を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、水蒸気バリア性の点からスチレン・ブタジエン系合成接着剤を使用することが好ましい。
本発明においてスチレン・ブタジエン系合成接着剤とは、スチレンとブタジエンを主構成モノマーとし、これに変性を目的とする各種のコモノマーを組み合わせ、乳化重合したものである。コモノマーの例として、メチルメタクリルレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレートや、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。また、乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ロジン酸石鹸、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が単独、またはノニオン性界面活性剤と組み合わせて用いることができる。目的によっては、両性またはカチオン性界面活性剤を用いても良い。
なお、水蒸気バリア性に問題がない程度であれば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどの水溶性高分子を、水蒸気バリア性樹脂と併用することも可能である。
水蒸気バリア層は、顔料を含むことができる。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、水蒸気バリア性の向上と、ガスバリア層を形成するための塗料の浸透抑制の両方の観点から、形状が扁平なカオリン、マイカ、タルクなどの無機顔料が好ましく、カオリンがより好ましい。また、体積50%平均粒子径(D50)(以下、「平均粒子径」ともいう。)が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。使用する無機顔料の平均粒子径またはアスペクト比が上記範囲より小さいと、水蒸気バリア層中を水蒸気分子が迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、結果として水蒸気バリア性の改善効果が小さくなる場合がある。
本発明において、水蒸気バリア性の向上とガスバリア層との密着性の点から、水蒸気バリア層は、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料に加え、平均粒子径が5μm以下の顔料を含有することが好ましい。平均粒子径が5μm以下の顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの顔料の中では、重質炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
平均粒子径が5μm以下の顔料を含有することにより、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料により形成された水蒸気バリア層中の空隙をより埋めることができるため、さらに優れた水蒸気バリア性が発現する。つまり、水蒸気バリア層に平均粒子径の異なる顔料を含有させた場合、水蒸気バリア層中で大きな平均粒子径の無機顔料により形成される空隙に小さな平均粒子径の顔料が充填された状態となり、水蒸気はこれらの顔料を迂回して通過するために移動する距離が長くなり、平均粒子径が異なる顔料を含有していない水蒸気バリア層と比較して、高い水蒸気バリア性を発揮するものと推測される。
平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料を併用する場合、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料の配合比率は、乾燥重量で、50/50~99/1であることが好ましい。平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料の配合比率が上記範囲より少ないと、水蒸気が水蒸気バリア層中を迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。一方、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料の配合比率が上記範囲より多いと、水蒸気バリア層中の大きな平均粒子径の無機顔料が形成する空隙を平均粒子径が5μm以下の顔料で十分に埋めることができないため、水蒸気バリア性の向上が期待できない。
水蒸気バリア層に顔料を含有させる場合、顔料の配合量は、乾燥重量で顔料100重量部に対して、水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で5重量部以上20重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で10重量部以上150重量部以下である。なお、顔料は、水蒸気バリア層の任意成分であり、含まない(0重量部)こともできる。
また、水蒸気バリア層には、上記した水蒸気バリア性樹脂、水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
水蒸気バリア層には、多価金属塩などに代表される架橋剤を配合することができる。架橋剤は、水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子と架橋反応を起こすため、水蒸気バリア層内の結合の数(架橋点)が増加し、水蒸気バリア層がより緻密な構造となり、より良好な水蒸気バリア性を発現することができる。
架橋剤の種類は特に限定されるものではなく、水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸等の1種または2種以上を使用することができる。
水蒸気バリア性に優れた効果を発現するスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系などのスチレン系の水蒸気バリア性樹脂を用いた場合、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量は、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られない場合がある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となる場合がある。
水蒸気バリア層用の塗料に架橋剤を添加する場合、アンモニアなどの極性溶媒に架橋剤を溶解させてから塗料へ添加することが好ましい。架橋剤を極性溶媒に溶解させると、架橋剤と極性溶媒が結合を作るため、塗料へ添加しても直ちには水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こらず、塗料の増粘を抑制することができる。その場合、紙基材への塗工後に乾燥することにより極性溶媒成分が揮発し、水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こり、緻密な水蒸気バリア層が形成される。
水蒸気バリア性向上の観点から、水蒸気バリア層に撥水剤を含有させることが好ましい。撥水剤としては、アルカン化合物を主体とするパラフィン系撥水剤、カルナバやラノインなどの動植物由来の天然油脂系撥水剤、シリコーンまたはシリコーン化合物を含有するシリコーン含有系撥水剤、フッ素化合物を含有するフッ素含有系撥水剤など例示することができ、単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、水蒸気バリア性能発現の観点からパラフィン系撥水剤を使用することが好ましい。
撥水剤の配合量は特に限定されるものではないが、乾燥重量で、水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計100重量部に対して、撥水剤1重量部以上100重量部以下であることが好ましい。撥水剤の配合量が1重量部未満であると、水蒸気バリア性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、100重量部を超えた場合には、水蒸気バリア層上にガスバリア層を設ける場合にガスバリア層が均一に形成し難くなるため、ガスバリア性が低下する場合がある。
水蒸気バリア層表面の濡れ張力は、水蒸気バリア性の向上とガスバリア層との密着性から、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましい。
(ガスバリア塗工層)
ガスバリア塗工層は、少なくともガスバリア性樹脂を含有する。
ガスバリア性樹脂としては、水溶性樹脂、または、水懸濁性樹脂を用いることができ、水溶性樹脂が好ましい。ガスバリア性樹脂としては、例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系樹脂、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース誘導体が好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、重合度が400~1700であるポリビニルアルコール系樹脂がさらに好ましく、重合度が800~1400であるポリビニルアルコール系樹脂がよりさらに好ましい。
ガスバリア層は、顔料を含むことができる。顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、顔料は、平均粒子径が3μm以上且つアスペクト比が10以上の扁平顔料であることが好ましく、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が30以上の扁平顔料であることがより好ましい。
ガスバリア層に顔料、特に扁平顔料を含有させた場合、酸素などのガスは顔料を迂回して通過するために移動する距離が長くなる。このため、顔料を含有するガスバリア層は、顔料を含有しないガスバリア層と比較して、ガスバリア性に優れ、特に高湿度雰囲気下で優れたガスバリア性を発揮する。
ガスバリア層における顔料の配合量は、乾燥重量で、ガスバリア性樹脂100重量部に対し、顔料90重量部以下であることが好ましい。なお、顔料は、ガスバリア層の任意成分であり、含まない(0重量部)こともできる。ガスバリア層の顔料配合量をこの範囲内とすることにより、優れた耐屈曲性を発揮することができる。また、ガスバリア層が顔料を含有することにより、ガスバリア層と接する層との密着性が向上する。顔料の配合量が少なくなると、耐屈曲性は向上するが、ガスバリア性は低下する。そのため、顔料の配合量は、紙製バリア材料に求めるガスバリア性と耐屈曲性とのバランス等に応じて調整することができ、例えば、ガスバリア性樹脂100重量部に対し、5重量部以上80重量部以下とすることができる。
ガスバリア層には、上記した水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
ガスバリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤は、ガスバリア層に含有される水溶性高分子と架橋反応を起こすため、ガスバリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、ガスバリア層が緻密な構造となり、良好なガスバリア性を発現することができる。
架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、ガスバリア層に含有される水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。なお、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量は、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られない場合がある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となる場合がある。
ガスバリア層は、界面活性剤を含有することが、ガスバリア層と水蒸気バリア層との密着性が向上し、バリア性が向上するため好ましい。界面活性剤のイオン性は制限されるものはなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でもよく、単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では塗料のレベリング性の向上効果が大きい、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、塗料のレベリング性が向上すると、ガスバリア層の均一性が向上するため、ガスバリア性が向上する。
水蒸気バリア層の上にガスバリア層を設ける場合、水蒸気バリア層との密着性の観点から、ガスバリア層用塗料の表面張力を、10mN/m以上60mN/m以下に調整することが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下に調整することが好ましい。また、水蒸気バリア層表面の濡れ張力に対して、ガスバリア層用塗料の表面張力を±20mN/mとすることが、水蒸気バリア層とガスバリア層との密着性の観点から好ましい。
ここで、バリア塗工層の算術平均高さ(Sac)が小さいほど、すなわち、バリア塗工層が平滑なほど、ドライラミネートされる熱可塑性樹脂フィルムとの密着度合いは向上するが、バリア塗工層を平滑とするには、カレンダー処理等の平滑化処理を施す必要がある。そして、バリア塗工層にカレンダー処理のような高圧の平滑化処理を施す場合、その高圧によりバリア塗工層にクラックが生じ、紙製バリア材料の側端部から気体が抜けやすくなり、バリア性が低下する場合がある。特に、バリア塗工層が顔料を含む場合はクラックが生じやすい。そのため、本発明の製造方法において、塗工層は、線厚20kg/cm以上の平滑化処理が行われない。塗工層は、線厚15kg/cm以上の圧力が加えられないことが好ましく、線厚10kg/cm以上の圧力が加えられないことがより好ましい。
バリア塗工層の算術平均高さ(Sac)は、3.0μm以上35μm以下、かつ、前記塗工面の算術平均高さ(Sap)より1μm以上大きいことが好ましい。この条件を満たすバリア塗工層は、例えば、塗工面の算術平均高さ(Sap)が2.0μm以上30μm以下である紙基材にバリア塗工層を形成し、このバリア塗工層に線厚20kg/cm以上の平滑化処理を施さないことにより製造することできる。
本発明の製造方法は、バリア塗工層が高度な平滑性を備えなくても層間密着性に優れたラミネート積層体を得ることができる。バリア塗工層の算術平均高さ(Sac)は、6.0μm以上がより好ましく、9.0μm以上がさらに好ましく、12μm以上がよりさらに好ましく、15μm以上がよりさらに好ましく、18μm以上がよりさらに好ましい。一方、バリア塗工層が平滑なほどバリア性が向上する傾向があるため、バリア塗工層の算術平均高さ(Sac)は、32μm以下がより好ましく、29μm以下がさらに好ましく、26μm以下がさらに好ましい。
また、バリア塗工層のPPS平滑度(ハードバッキング、1Mpa)は、1.0μm以上14μm以下であることが好ましい。本発明の製造方法は、バリア塗工層が高度な平滑性を備えなくても層間密着性に優れたラミネート積層体を得ることができる。ただし、バリア塗工層のPPS平滑度(ハードバッキング、1Mpa)が14μmを超える場合は、バリア性が低下する恐れがある。そのため、紙基材のPPS平滑度(ハードバッキング、1Mpa)は、3.0μm以上がより好ましく、5.0μm以上がさらに好ましい。
なお、塗工面に平滑化処理を施さない場合、算術平均高さはバリア塗工層の値が紙基材の塗工面の値より大きくなり、PPS平滑度はバリア塗工層の値が紙基材の塗工面の値より小さくなる。算術平均高さは、表面形状をレーザー光やカンチレバーにより非接触で測定する。一方、PPS平滑度は、表面に治具を圧着して空気を通すときの空気の抜け具合から算出される。平滑化処理前後での算術平均高さとPPS平滑度とで算出される数値の傾向の違いは、算術平均高さとPPS平滑度とは、その測定方法が異なることから測定値に大きな影響を及ぼす要素(表面粗さの大きさ(ナノサイズ、マイクロサイズ)や表面形状(凹凸の周期等)等)に違いがあるためであると推測される。
(バリア塗工層の形成)
バリア塗工層は、バリア塗工層形成用の塗料を各種の塗工装置で塗工し、乾燥することにより形成することができる。
水蒸気バリア層、ガスバリア層の形成用塗料の紙基材への塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられるが、水系塗工であることが好ましい。
水蒸気バリア層、ガスバリア層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
本発明において、水蒸気バリア層の塗工量は、乾燥重量で3g/m以上50g/m以下とすることが好ましく、5g/m以上40g/m以下とすることがより好ましく、7g/m以上30g/m以下とすることがさらに好ましい。水蒸気バリア層の塗工量が3g/m未満であると、紙基材を塗料が完全に被覆することが困難となり、十分な水蒸気バリア性が得られなくなることや、ガスバリア層用の塗料が紙基材まで浸透して均一なガスバリア塗工層が形成できずガスバリア性が不十分となる場合がある。一方、水蒸気バリア層の塗工量が50g/mより多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
水蒸気バリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。水蒸気バリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全ての水蒸気バリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
本発明において、ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m以上20g/m以下とすることが好ましい。ガスバリア層の塗工量が0.2/m未満であると、均一なガスバリア層を形成することが困難であるため、十分なガスバリア性が得られなくなる場合がある。一方、20g/mより多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
ガスバリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。ガスバリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全てのガスバリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。料の側端部から気体が抜けやすいためであると推測される。
・ラミネート工程
ラミネート工程は、バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設ける工程である。本発明の製造方法では、接着剤は、バリア塗工層に塗工される。なお、紙基材が一面のみにバリア塗工層を備える場合、紙基材のバリア塗工層とは反対側の面にもドライラミネートにより熱可塑性樹脂フィルムをラミネートすることができるが、この場合は、接着剤は熱可塑性樹脂フィルムに塗工する。
(ラミネート層)
ラミネート層は、熱可塑性樹脂フィルムからなる。
ラミネート層を形成する熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(LDPE、LLDPE等のポリエチレン、ポリプロピレン等)、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等の熱可塑性樹脂を特に制限することなく使用することができる。これらの中で、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂が、ヒートシール強度の点から好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂が、ゴミとして流出した場合の環境負荷軽減の点から好ましい。また、得られた紙製バリア材料を、包装体としてヒートシール加工する際の加工性の点から、融点が90℃以上180℃以下であるものが好ましい。なお、本明細書において、融点は、JIS K7121-1987における融解ピーク温度を意味する。
ラミネート層の厚さは特に制限されないが、25μm以上60μm以下であることが、ヒートシール性と成形加工性のバランスの点から好ましい。
(接着剤)
本発明において、バリア原紙と熱可塑性樹脂フィルムとはドライラミネートによりラミネートされるが、接着剤はバリア塗工層に塗工される。従来、紙とフィルムとをドライラミネートする場合、接着剤の紙への染み込みによる密着性の低下を防ぐために、接着剤はフィルム側に塗工することが技術常識であった。本発明は、バリア原紙がバリア塗工層を備え、このバリア塗工層により接着剤の染み込みを防止することができるため、バリア塗工層上に接着剤を塗工しても、密着性の低下を防止することができる。さらに、塗工直後の接着剤は流動性を有するが、この流動性によりバリア塗工層表面の凹凸が埋められるため、より層間密着性に優れ、高いバリア性を有する紙製バリア材料を得ることができる。
接着剤の塗工量(固形分)は特に制限されないが、例えば、2.0g/m以上5.0g/m以下である。接着剤の塗工量(固形分)が2.0g/m未満では、接着剤が塗工層の凹凸を埋めきれず、接着剤層とラミネート層との間に隙間が生じ、想定通りのバリア性が発揮できない場合が多くなる。一方、接着剤の塗工量(固形分)が5.0g/mを超えると、塗工速度、乾燥速度が遅くなり生産性が低下する、残留溶媒が多くなり臭気等が生じる、材料の使用量が増えるため高コストとなる等の問題が生じやすくなる。接着剤の塗工量(固形分)は、バリア性の観点からは3.0g/m以上が好ましく、4.0g/m以上がより好ましい。一方、コストの点からは、4.0g/m以下が好ましい。
接着剤としては、ドライラミネートに使用されている接着剤を特に制限することなく使用することができ、例えば、ポリウレタン系(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等)、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系等の接着剤を使用することができ、ポリウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。また、接着剤層には、接着剤のほかに、硬化剤等を配合することもできる。これらの中で、水を溶剤とするものが、大気中への揮発性有機化合物の排出削減や作業環境の衛生性の改善の点から好ましい。
本発明の製造方法において、バリア塗工層に線圧20kg/cm以上の平滑化処理を施さないことにより、バリア塗工層でのクラック発生を防ぎ、非常に高いバリア性を発揮させることができる。本発明により製造される紙製バリア材料は、23℃・0%RH条件の酸素透過度が、20cc/m・day・atm以下であることが好ましい。この酸素透過度は、10cc/m・day・atm以下が好ましく、5cc/m・day・atm以下がより好ましく、3cc/m・day・atm以下がよりさらに好ましく、1cc/m・day・atm以下がよりさらに好ましく、0.8cc/m・day・atm以下がよりさらに好ましく、0.6cc/m・day・atm以下がよりさらに好ましく、0.4cc/m・day・atm以下がよりさらに好ましい。
本発明の紙製バリア材料は、少なくとも一面に熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を有し、ヒートシール可能なため、熱融着加工して包装体として使用することができる。
本発明の紙製バリア材料は、紙製バリア材料のまま、または各種樹脂等と積層する、各種汎用フィルム、バリアフィルム、アルミ箔等と貼合するなどして、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア包装材料、または産業用資材などに用いられる積層体とすることが可能である。本発明の紙製バリア材料は、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア包装材料として好適に使用することができ、食品などの軟包装袋として特に好適に使用することができる。なお、軟包装袋とは、構成としては、柔軟性に富む材料で構成されている包装材であり、一般には紙、フィルム、アルミ箔等の薄く柔軟性のある材料を、単体あるいは貼り合せた包装材を指す。軟包装袋の形状としては、特に制限されず、縦ピロー包装袋、横ピロー包装袋、サイドシール袋、二方シール袋、三方シール袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋などが挙げられる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部及び%は、それぞれ重量部、重量%を示す。
得られた紙基材、バリア原紙、紙製バリア材料について、以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。結果を表1に示す。
〈酸素透過度(ガスバリア性)〉
紙製バリア材料について、MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃・0%RH条件にて測定した。
〈算術平均高さ(Sa)〉
ISO25178-2:2012に準拠し、3Dマイクロスコープ(KEYENCE社製、VR-3000)(ISO4287準拠)を用いて、得られた紙基材及びバリア原紙の計測表面領域(0.4cm2)における各点の基準表面からの距離の平均値として算術平均高さ(Sa)を算出した。計測表面領域の歪みのある領域は1次のガウシアン回帰フィルターによって、歪みの抑制を行った。
・3Dマイクロスコープでの計測条件
フィルター種別:ガウシアン
終端効果の補正(歪みのある領域を抑制):有効
S-フィルター(小さいスケールの粗さ成分を取り除くフィルター):なし
L-フィルター(大きいスケールのうねり成分を取り除くフィルター):なし
〈PPS平滑度〉
JIS P8151:2004(紙及び板紙-表面粗さ及び平滑度試験方法(エア・リーク法)-プリント・サーフ試験機法)に準じて得られた紙基材及びバリア原紙のPPS平滑度を測定した。
[実施例1]
(紙基材1の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて抄紙し、紙基材を得た。
(水蒸気バリア層用塗工液の調製)
大粒径エンジニアードカオリン(イメリス社製バリサーフHX 粒子径9.0μm アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対無機顔料0.2部)、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%の大粒径カオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリー中にスチレン・ブタジエン系ラテックス(日本ゼオン社製PNT7868)を対顔料100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度50%の水蒸気バリア層用塗工液を得た。
(ガスバリア層用塗工液の調製)
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、VC-10)の固形分濃度12%の水溶液を調製し、ガスバリア層用塗工液とした。
(紙製バリア包装材料の作製)
得られた紙基材に、水蒸気バリア層用塗工液を乾燥重量で塗工量12.0g/mとなるように片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液を乾燥重量で4.0g/mとなるよう片面塗工し、SCAFドライヤーで乾燥して、バリア原紙を得た。なお、乾燥時および搬送時に、塗工層には20kg/cm以上の圧力は加わっていない。
さらに得られたバリア原紙のガスバリア層上に、接着剤(2液硬化型ポリウレタン系接着剤、硬化剤:ポリイソシアネート、溶媒:酢酸エチル)を塗工量(固形分)3g/mとなるように塗工し、フィルム(フタムラ化学社製、LLDPE、厚さ30μm、融点130℃)を、圧力0.4MPa、加工速度3.8m/min、90℃でのドライラミネート法にて貼合し、紙製バリア材料を得た。
「実施例2」
湿紙をヤンキードライヤーで乾燥させて平滑化処理を行った以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
「比較例1」
ドライラミネート時に接着剤をフィルムに塗工した以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
「実施例3」
ドライラミネート条件を圧力0.2MPa、加工速度3.8m/min、125℃とした以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
「比較例2」
ドライラミネート時に接着剤をフィルムに塗工した以外は実施例3と同様にして、紙製バリア材料を得た。
「実施例4」
接着剤の塗工量(固形分)を2g/mとし、ドライラミネート条件を圧力0.4MPa、加工速度3.8m/min、125℃とした以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
「比較例3」
ドライラミネート時に接着剤をフィルムに塗工した以外は実施例4と同様にして、紙製バリア材料を得た。
「実施例5」
接着剤の塗工量(固形分)を5g/mとした以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
「比較例4」
バリア塗工層に平滑化処理(カレンダー線厚30kg/cm)を行った以外は、実施例5と同様にして紙製バリア材料を得た。
Figure 0007531740000001
実施例1-2と比較例1、実施例3と比較例2、実施例4と比較例3の結果より、接着剤を紙に塗工することにより、接着剤をフィルムに塗工した場合と比較して、バリア性に優れた紙製バリア材料が得られることが確かめられた。
実施例5と比較例4の結果より、バリア塗工層に高圧の平滑化処理を行うと、バリア塗工層は平滑となるがバリア性が低下した。このことから、バリア塗工層に高圧の平滑化処理を施すと、塗工層にクラックが生じてバリア性が低下することが確かめられた。
実施例1、3-5より、紙基材とバリア塗工層の両方に平滑化処理を施さずとも、バリア塗工層上に接着剤を塗工するという非常に簡便な方法により、高いバリア性を備える紙製バリア材料が得られることが確かめられた。

Claims (4)

  1. 紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程、
    前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程、
    を有し、
    前記バリア塗工層に対して、線圧20kg/cm以上の平滑化処理を行わず、
    前記接着剤が、前記バリア塗工層に塗工されることを特徴とする紙製バリア材料の製造方法(ただし、熱可塑性樹脂フィルムが蒸着層を有するものを除く)
  2. 前記紙基材の塗工面の算術平均高さ(Sap)が2.0μm以上30μm以下であり、
    前記バリア塗工層の算術平均高さ(Sac)が3.0μm以上35μm以下、かつ、前記塗工面の算術平均高さ(Sap)より1μm以上大きいことを特徴とする請求項1に記載の紙製バリア材料の製造方法。
  3. 23℃・0%RH条件の酸素透過度が、20cc/m・day・atm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料の製造方法。
  4. 前記接着剤の塗工量(固形分)が2.0g/m以上5.0g/m以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料の製造方法。
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