以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る電子制御装置の適用例である電動パワーステアリングを示す。電動パワーステアリング1は、車両100の運転者がステアリング操作を行う手動運転における機能を有する。
電動パワーステアリング1は、手動運転における機能として、ステアリングホイール2による操舵トルクで一対の操向輪3を転舵させる際に、その操舵トルクをアシストする。
ステアリングホイール2の操作によって発生する操舵トルクは、ステアリングシャフト4等を介して、ピニオンシャフト5に接続されたピニオンギア6に伝達される。伝達された操舵トルクによるピニオンギア6の回転運動は、ピニオンギア6と噛合するラックギア7によって車幅方向の直線運動に変換される。この直線運動によってラックギア7に接続された一対のタイロッド8が作動し、一対のタイロッド8にそれぞれ接続された操向輪3が転舵する。電動パワーステアリング1は、ステアリングホイール2からタイロッド8への操舵トルクの伝達経路に対して、操舵トルクをアシストするアシストトルクを加えるように構成される。
図示の例では、電動パワーステアリング1は、アシストトルクを発生するモータ10と、モータ10の駆動を制御する電子制御装置であるECU20と、を備える。また、電動パワーステアリング1は、モータ10の出力を減速してラックギア7に伝達する減速機30を備える。さらに、電動パワーステアリング1は、操舵トルクを計測するためのトルクセンサ40、モータ10の回転角度を計測するための回転角センサ50及び車速を計測するための車速センサ60を備える。トルクセンサ40としては、例えば、磁歪式、ひずみゲージ式、圧電式等、種々の検出方式を採用し得る。また、回転角センサ50としては、例えば、ホール素子、レゾルバ、ロータリーエンコーダ等、種々の検出方式を採用し得る。
ECU20は、車載バッテリ70から電源が供給され、トルクセンサ40の出力信号であるトルク信号STと、回転角センサ50の出力信号である回転角信号Sθと、車速センサ60の出力信号である車速信号SVと、を入力する。ECU20は、入力した各種信号から操舵トルク及び車速を計測し、これらの物理量に基づいて操舵トルクの目標値(目標トルク)を算出する。そして、ECU20は、回転角センサ50の出力信号である回転角信号Sθからモータ10の回転角度を計測し、計測した回転角度に応じて、トルク信号STから計測した実際の操舵トルクが目標トルクに近づくようにモータ駆動制御を行う。モータ10が発生するトルクは減速機30を介してラックギア7へ伝達され、これにより、車両100の運転状態に応じて操舵トルクがアシストされる。
図2は、モータ10及びECU20における要部の一例を示す。電動パワーステアリング1では、車載バッテリ70からECU20を介してモータ10へ通電する通電系統が、第1通電系統及び第2通電系統の電気的に独立した2つの通電系統で冗長構成され、各通電系統により独立してモータ駆動制御が行われる。そして、電動パワーステアリング1は、一方の通電系統の異常時に当該系統における通電量を減少させるとともに、他方の正常な通電系統における通電量を増大させて操舵トルクのアシストが正常に継続されるように構成される。本明細書では、第1通電系統に含まれる構成にはその符号中に大文字の「A」を付し、第2通電系統に含まれる構成にはその符号中に大文字の「B」を付す。なお、車載バッテリ70は、第1通電系統と第2通電系統とで別個のものを使用してもよい。
モータ10は、3相ブラシレスモータであり、第1通電系統から通電される第1巻線組11A及び第2通電系統から通電される第2巻線組11Bの互いに電気的に独立した2組の巻線組をステータコイルとして有する。第1巻線組11Aは、U相コイルUA、V相コイルVA及びW相コイルWAが中性点NAで一括接続(Y結線)された3相巻線である。また、第2巻線組11Bは、U相コイルUB、V相コイルVB及びW相コイルWBが中性点NBで一括接続(Y結線)された3相巻線である。第1巻線組11A及び第2巻線組11Bはそれぞれ絶縁された状態でステータ(図示省略)に巻き回され、磁気回路を共有する。また、モータ10は、略円筒状のステータ(図示省略)の中央部に軸線周りで回転可能に備えられた永久磁石回転子としてのロータ12を有する。
ECU20は、第1通電系統として、駆動回路21Aと、制御器22Aと、電源回路23Aと、を有し、第2通電系統として、駆動回路21Bと、制御器22Bと、電源回路23Bと、を有する。
トルクセンサ40には、第1通電系統によるモータ駆動制御で用いられる第1トルクセンサ40Aと、第2通電系統によるモータ駆動制御で用いられる第2トルクセンサ40Bと、が含まれる。第1トルクセンサ40Aからは第1トルク信号STaが出力され、第2トルクセンサ40Bからは第2トルク信号STbが出力される。
回転角センサ50には、第1通電系統によるモータ駆動制御で用いられる第1回転角センサ50Aと、第2通電系統によるモータ駆動制御で用いられる第2回転角センサ50Bと、が含まれる。第1回転角センサ50Aからは第1回転角信号Sθaが出力され、第2回転角センサ50Bからは第2回転角信号Sθbが出力される。
第1通電系統及び第2通電系統はそれぞれ共通のグランドに接続されている。具体的には、駆動回路21A、制御器22A、電源回路23A、第1トルクセンサ40A及び第1回転角センサ50Aはグランド電位GND(A)のグランドに共通接続されている。また、駆動回路21B、制御器22B、電源回路23A、第2トルクセンサ40B及び第2回転角センサ50Bはグランド電位GND(B)のグランドに共通接続されている。
ECU20についてさらに詳しく説明する。駆動回路21Aは、車載バッテリ70と第1巻線組11Aとの間に設けられ、制御器22Aから出力された制御信号に基づいて第1巻線組11Aへの通電量を調整する。同様に、駆動回路21Bは、車載バッテリ70と第2巻線組11Bとの間に設けられ、制御器22Bから出力された制御信号に基づいて第2巻線組11Bへの通電量を調整する。駆動回路21A,21Bとしては例えばインバータやプリドライバ等が含まれ、制御器22A,22Bとしては例えばCPU(Central Processing Unit)ないしマイクロコンピュータ等が含まれる。
制御器22Aは、第1トルク信号STaや第1回転角信号Sθa等に基づいて駆動回路21Aに対する上記の制御信号を生成する。また、制御器22Bは、第2トルク信号STbや第2回転角信号Sθb等に基づいて駆動回路21Bに対する上記の制御信号を生成する。
制御器22A,22Bはそれぞれ、対応する通電系統における異常を診断するように構成されるとともに、対応する通電系統における異常情報を他方の通電系統の制御器へ伝達可能に構成されている。
制御器22Aは、第1トルクセンサ40Aが故障した場合には第2トルクセンサ40Bの第2トルク信号STbを用いて、あるいは、第1回転角センサ50Aが故障した場合には第2回転角センサ50Bの第2回転角信号Sθbを用いて、駆動回路21Aに対する制御信号を生成する。また、制御器22Aは、第1通電系統によるモータ駆動制御が不可能あるいは不完全となる異常が発生したと診断した場合には、制御器22Bへ異常情報を伝達するとともに、駆動回路21Aに対する通電量を遮断あるいは減少させる。異常情報を受けた制御器22Bは最大通電量を増大させる。
制御器22Bは、第2トルクセンサ40Bが故障した場合には第1トルクセンサ40Aの第1トルク信号STaを用いて、あるいは、第2回転角センサ50Bが故障した場合には第1回転角センサ50Aの第1回転角信号Sθaを用いて、駆動回路21Bに対する制御信号を生成する。また、制御器22Bは、第2通電系統によるモータ駆動制御が不可能あるいは不完全となる異常が発生したと診断した場合には、制御器22Aへ異常情報を伝達するとともに、駆動回路21Bに対する通電量を遮断あるいは減少させる。異常情報を受けた制御器22Aは最大通電量を増大させる。
電源回路23Aは、車載バッテリ70の出力電圧を調整して、ECU20の第1通電系統に含まれる構成に電源電圧Vcc(A)を供給している。制御器22Aには、電源回路23Aから電源電圧Vcc(A)が供給される。電源回路23Bは、車載バッテリ70の出力電圧を調整して、ECU20の第2通電系統に含まれる構成に電源電圧Vcc(B)を供給している。制御器22Bには、電源回路23Bから電源電圧Vcc(B)が供給される。
また、電源回路23Aは、第1トルクセンサ40A及び第1回転角センサ50Aに電源電圧Vcc(A)を供給し、電源回路23Bは、第2トルクセンサ40B及び第2回転角センサ50Bに電源電圧Vcc(B)を供給する。なお、電源電圧Vcc(A)は基準電位(グランド電位GND(A))に対する相対的な電圧値であり、電源電圧Vcc(B)は基準電位(グランド電位GND(B))に対する相対的な電圧値である。以下において特に言及しない限り、電源電圧Vcc(A)と電源電圧Vcc(B)とは同じ電圧値であるものとする。
第1トルク信号STa及び第1回転角信号Sθaは、グランド電位GND(A)のLレベルとこれに電源電圧Vcc(A)を加えた電位(GND(A)+Vcc(A))のHレベルとからなる2つの電位のいずれかの状態で第1トルクセンサ40Aから出力される。第2トルク信号STb及び第2回転角信号Sθbは、グランド電位GND(B)のLレベルとこれに電源電圧Vcc(B)を加えた電位(GND(B)+Vcc(B))のHレベルとからなる2つの電位のいずれかの状態で第2トルクセンサ40Bから出力される。
制御器22A,22Bはそれぞれ、第1トルク信号STa、第2トルク信号STb、第1回転角信号Sθa、第2回転角信号Sθb等を入力信号として入力する入力ポートを有する。制御器22Aの入力ポートは、同一の通電系統のセンサ40A,50Aから出力された第1トルク信号STa及び第1回転角信号Sθaの電圧範囲に合わせて、グランド電位GND(A)からこれに電源電圧Vcc(A)を加えた電位(GND(A)+Vcc(A))までを入力信号電圧範囲としている。制御器22Bの入力ポートは、同一の通電系統のセンサ40B,50Bから出力された第2トルク信号STb及び第2回転角信号Sθbの電圧範囲に合わせて、グランド電位GND(B)から電源電圧Vcc(B)を加えた電位(GND(B)+Vcc(B))までを入力信号電圧範囲としている。
制御器22A,22Bの入力ポートに入力された入力信号は、その電位変化に基づいて、制御器22A,22B内において操舵トルク及びモータ10の回転角度の検出に用いられる2値(矩形波状)の入力応答信号に変換される。かかる入力応答信号への変換にはシュミットトリガ入力が用いられ、入力応答信号の立ち上がり及び立ち下がりのトリガとなる閾値電圧にヒステリシスが設定されている。このため、入力応答信号の立ち上がりトリガとなる閾値電圧よりも入力応答信号の立ち下がりトリガとなる閾値電圧の方が小さくなっている。なお、入力応答信号の立ち上がりトリガとなる閾値電圧(上側閾値THH)及び入力応答信号の立ち下がりトリガとなる閾値電圧(下側閾値THL)のいずれも、対応する通電系統の基準電位(グランド電位GND(A),GND(B))に対する相対的な電圧値である。
ところで、第1通電系統のグランド電位GND(A)と第2通電系統のグランド電位GND(B)との間には、何らかの理由によって差圧が発生する場合が想定される。この場合には、一方の通電系統の制御器が他方の通電系統のトルクセンサや回転角センサから入力信号を入力すると、この入力信号を誤って検出する可能性が高くなる。ここで、図10及び図11を参照して、通電系統間のグランド電位差による制御器での誤検出について説明する。
図10は、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低い場合において、制御器22A,22Bがそれぞれ入力信号として直接入力した第1トルク信号STaと、これを変換して得られた入力応答信号と、を示す。第1トルク信号STaは時刻t1においてHレベルからLレベルへ変化している。
図10(a)に示されるように、制御器22Aは、第1トルク信号STaを、グランド電位GND(A)からこれに電源電圧Vcc(A)を加えた電位(GND(A)+Vcc(A))までの入力信号電圧範囲で入力する。制御器22Aにおいて、第1トルク信号STaがHレベルからLレベルへ変化したときに第1トルク信号STaの電位が下側閾値THLに相当する電位(GND(A)+THL)を超えて低下する。このとき入力応答信号は、例えばグランド電位GND(A)に電源電圧Vcc(A)を加えた電位のHレベルから例えばグランド電位GND(A)のLレベルへ変化する。
図10(b)に示されるように、制御器22Bに入力される第1トルク信号STaは、グランド電位GND(B)からこれに電源電圧Vcc(B)を加えた電位(GND(B)+Vcc(B))までの入力信号電圧範囲に対して低下方向へオフセットした電圧範囲を有する。すなわち、制御器22Bにおいて、第1トルク信号STaのLレベルがグランド電位GND(B)よりも低くなって、入力信号電圧範囲を逸脱する。一方、制御器22Bにおいて、第1トルク信号STaがHレベルからLレベルへ変化したときに第1トルク信号STaの電位が下側閾値THLに相当する電位(GND(B)+THL)を超えて低下する。このため、制御器22Bの入力応答信号は、例えばグランド電位GND(B)に電源電圧Vcc(B)を加えた電位のHレベルから例えばグランド電位GND(B)のLレベルへ変化する。
ところで、図10(a)及び図10(b)に示されるように、第1トルク信号STaには、種々のノイズが重畳し得る。このようなノイズは、例えば駆動回路21A,21Bに流れる電流の変動によって、第1通電系統のグランド電位GND(A)あるいは第1通電系統と第2通電系統とのグランド電位差が変動することで生じる。一方、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)よりも低くなることで、制御器22Bの入力ポートの下側閾値THLに相当する電位(GND(B)+THL)は、制御器22Aの入力ポートの下側閾値THLに相当する電位(GND(A)+THL)よりも高くなる。したがって、仮に制御器22Bに入力された第1トルク信号STaにHレベルから急激に低下するノイズが重畳した場合には、以下のようになる。すなわち、制御器22Aの入力ポートの下側閾値THLに相当する電位(GND(A)+THL)を超えて低下する可能性よりも、制御器22Bの入力ポートの下側閾値THLに相当する電位(GND(B)+THL)を超えて低下する可能性の方が高くなる。これにより、第1トルク信号STaの本来の電位がHレベルであるにもかかわらず、制御器22Bでは、第1トルク信号STaに重畳したノイズの影響によって入力応答信号がHレベルからLレベルへ変化して、第1トルク信号STaを誤って検出する可能性が高くなる。これは、制御器22Bにおける操舵トルクの計測精度が低下することを意味する。
図11は、図10と同様に、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低い場合において、制御器22A,22Bがそれぞれ入力信号として直接入力した第2トルク信号STbと、これを変換して得られた入力応答信号と、を示す。第2トルク信号STbは時刻t1においてHレベルからLレベルへ変化している。
図11(a)に示されるように、制御器22Bは、第2トルク信号STbを、グランド電位GND(B)からこれに電源電圧Vcc(B)を加えた電位(GND(B)+Vcc(B))までの入力信号電圧範囲で入力する。制御器22Bにおいて、第2トルク信号STbがHレベルからLレベルへ変化したときに第2トルク信号STbの電位が下側閾値THLに相当する電位(GND(B)+THL)を超えて低下する。このとき入力応答信号は、例えばグランド電位GND(B)に電源電圧Vcc(B)を加えた電位のHレベルから例えばグランド電位GND(B)のLレベルへ変化している。
図11(b)に示されるように、制御器22Aに入力される第2トルク信号STbは、グランド電位GND(A)からこれに電源電圧Vcc(A)を加えた電位(GND(A)+Vcc(A))までの入力信号電圧範囲に対して上昇方向へオフセットした電圧範囲を有する。すなわち、制御器22Aにおいて、第2トルク信号STbのHレベルが電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))よりも高くなって、入力信号電圧範囲を逸脱する。一方、制御器22Aにおいて、第2トルク信号STbがHレベルからLレベルへ変化したときに第2トルク信号STbの電位が下側閾値THLに相当する電位(GND(A)+THL)を超えて低下する。このため、制御器22Aの入力応答信号は、例えばグランド電位GND(A)に電源電圧Vcc(A)を加えた電位のHレベルから例えばグランド電位GND(B)のLレベルへ変化する。
ところで、図11(a)及び図11(b)に示されるように、第2トルク信号STbには、第1トルク信号STaと同様に、種々の大きさのノイズが重畳し得る。一方、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)よりも低くなることで、制御器22Aの入力ポートの上側閾値THHに相当する電位(GND(A)+THH)は、制御器22Bの入力ポートの上側閾値THHに相当する電位(GND(B)+THH)よりも低くなる。したがって、仮に制御器22Aに入力された第2トルク信号STbにLレベルから急激に上昇するノイズが重畳した場合には、以下のようになる。すなわち、制御器22Bの入力ポートの上側閾値THHに相当する電位(GND(B)+THH)を超えて上昇する可能性よりも、制御器22Aの入力ポートの上側閾値THHに相当する電位(GND(A)+THH)を超えて上昇する可能性の方が高くなる。これにより、第2トルク信号STbの本来の電位がLレベルであるにもかかわらず、制御器22Aでは、第2トルク信号STbに重畳したノイズの影響によって入力応答信号がLレベルからHレベルへ変化して、第2トルク信号STbを誤って検出する可能性が高くなる。これは、制御器22Aにおける操舵トルクの計測精度が低下することを意味する。
なお、図10及び図11では、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低い場合について説明したが、グランド電位GND(B)がグランド電位GND(A)より低い場合についても同様に、制御器22A,22Bにおける入力信号の誤検出が発生し得る。また、制御器22A,22Bがトルク信号STa,STbを入力信号として入力する場合だけでなく、回転角信号Sθa,Sθbを入力信号として入力する場合についても同様に入力信号の誤検出が発生し得る。
このように通電系統間でグランド電位差が発生している場合に、一方の通電系統の制御器が他方の通電系統のトルクセンサや回転角センサから入力信号を入力すると、ノイズの影響によって入力信号を誤って検出する可能性が高くなる。そこでECU20では、通電系統間でグランド電位差が発生している場合でも、一方の通電系統の制御器が他方の通電系統のトルクセンサや回転角センサから入力した入力信号の検出精度を向上させるようにしている。
図3は、ECU20における制御器22A,22Bとトルクセンサ40A,40B及び回転角センサ50A,50Bとの接続態様に関する要部を示す。
制御器22Aが第1トルクセンサ40Aから第1トルク信号STaを第1の出力信号として入力するための信号線L1からは、制御器22Bが第1トルク信号STaを第2の出力信号として入力するための信号線L2が分岐している。また、制御器22Bが第2トルクセンサ40Bから第2トルク信号STbを第1の出力信号として入力するための信号線L3からは、制御器22Aが第2トルク信号STbを第2の出力信号として入力するための信号線L4が分岐している。
制御器22Aが第1回転角センサ50Aから第1回転角信号Sθaを第1の出力信号として入力するための信号線L5からは、制御器22Bが第1回転角信号Sθaを第2の出力信号として入力するための信号線L6が分岐している。また、制御器22Bが第2回転角センサ50Bから第2回転角信号Sθbを第1の出力信号として入力するための信号線L7からは、制御器22Aが第2回転角信号Sθbを第2の出力信号として入力するための信号線L8が分岐している。
信号線L2,L4,L6,L8には、シュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8が設けられる。シュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8は、これらに入力される入力信号をその電位変化に基づいて矩形波に整形して出力する回路であり、矩形波の立ち上がり及び立ち下がりのトリガとなる閾値電圧にヒステリシスを有するものである。信号線L2に設けられるシュミットトリガ24L2は、グランド電位GND(A)を基準電位として、第1トルク信号STaを矩形波に整形して出力する。信号線L4に設けられるシュミットトリガ24L4は、グランド電位GND(B)を基準電位として、第2トルク信号STbを矩形波に整形して出力する。また、信号線L6に設けられるシュミットトリガ24L6は、グランド電位GND(A)を基準電位として、第1回転角信号Sθaを矩形波に整形して出力する。信号線L8に設けられるシュミットトリガ24L8は、グランド電位GND(B)を基準電位として、第2回転角信号Sθbを矩形波に整形して出力する。
図4は、シュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8の回路構成の一例を示す。かかる回路構成の一例によれば、シュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8はそれぞれ、オペアンプOPと複数の抵抗R1~R4で構成されている。オペアンプOPの非反転入力端子(+)は、トルクセンサ40A,40Bまたは回転角センサ50A,50Bに接続され、対応するセンサからの出力信号STa,STb,Sθa,Sθbを入力信号Vinとして入力する。オペアンプOPの反転入力端子(-)は、抵抗R1を介して、非反転入力端子に接続されるトルクセンサまたは回転角センサと共通の電源電圧を供給する電源回路23A,23B等の定電圧電源に接続されている。また、オペアンプOPの反転入力端子(-)は、抵抗R2を介して、非反転入力端子に接続されるトルクセンサまたは回転角センサと共通のグランドに接続されている。矩形波を出力するオペアンプOPの出力端子と反転入力端子(-)との間には負帰還抵抗R3が設けられる。オペアンプOPの出力端子は、抵抗R4を介して、非反転入力端子に接続されるトルクセンサまたは回転角センサと共通の電源電圧を供給する電源回路23A,23B等の定電圧電源から電源電圧Vcc(A),Vcc(B)が供給される。なお、シュミットトリガは、これに入力される入力信号をその電位に基づいて矩形波に整形して出力し、矩形波の立ち上がり及び立ち下がりのトリガとなる閾値電圧にヒステリシスを有する回路であれば、いかなる回路構成であってもよい。
図5は、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低い場合において、第1トルク信号STaが制御器22Bで入力応答信号に変換されるまでの波形処理について示す。第1トルク信号STaは時刻t1においてHレベルからLレベルへ変化している。
図5(a)に示されるように、シュミットトリガ24L2では、電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))のHレベルからグランド電位GND(A)のLレベルへ変化する入力信号として第1トルク信号STaが入力される。これは、シュミットトリガ24L2と第1トルクセンサ40Aとではグランドが共通だからである。シュミットトリガ24L2は、第1トルク信号STaを入力すると、Hレベルから急激に低下するが下側閾値THLに相当する電位(GND(A)+THL)を超えるまでは低下しないノイズを除去することができる。また、シュミットトリガ24L2は、Lレベルから急激に上昇するが上側閾値THHの相当する電位(GND(A)+THH)を超えるまでは上昇しないノイズを除去することができる。これにより、シュミットトリガ24L2は、第1トルク信号STaを、時刻t1において電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))のHレベルからグランド電位GND(A)のLレベルへ変化する矩形波に整形して出力する。
図5(b)に示されるように、シュミットトリガ24L2から出力されて制御器22Bに入力される入力信号は以下のようになる。すなわち、入力信号は、グランド電位GND(B)からこれに電源電圧Vcc(B)を加えた電位(GND(B)+Vcc(B))までの制御器22Bの入力ポートの入力信号電圧範囲に対して低下方向へオフセットした電圧範囲を有する。これにより、制御器22Bにおいて、入力信号のLレベルがグランド電位GND(B)よりも低くなって、入力信号電圧範囲を逸脱する。一方、制御器22Bにおいて、入力信号がHレベルからLレベルへ変化したときに、入力信号の電位が下側閾値THLに相当する電位(GND(B)+THL)を超えて低下する。このため、制御器22Bの入力応答信号は、例えば電源電圧Vcc(B)に相当する電位(GND(B)+Vcc(B))のHレベルから例えばグランド電位GND(B)のLレベルへ変化する。
図6は、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低い場合において、第2トルク信号STbが制御器22Aで入力応答信号に変換されるまでの波形処理について示す。第2トルク信号STbは時刻t1においてHレベルからLレベルへ変化している。
図6(a)に示されるように、シュミットトリガ24L4では、電源電圧Vcc(B)に相当する電位(GND(B)+Vcc(B))のHレベルからグランド電位GND(B)のLレベルへ変化する入力信号として第2トルク信号STbが入力される。これは、シュミットトリガ24L4と第2トルクセンサ40Bとではグランドが共通だからである。シュミットトリガ24L4は、第2トルク信号STbを入力すると、Hレベルから急激に低下するが下側閾値THLに相当する電位(GND(B)+THL)を超えるまでは低下しないノイズを除去することができる。また、シュミットトリガ24L4は、Lレベルから急激に上昇するが上側閾値THHに相当する電位(GND(B)+THH)を超えるまでは上昇しないノイズを除去することができる。これにより、シュミットトリガ24L4は、第2トルク信号STbを、時刻t1において電源電圧Vcc(B)に相当する電位(GND(B)+Vcc(B))のHレベルからグランド電位GND(B)のLレベルへ変化する矩形波に整形して出力する。
図6(b)に示されるように、シュミットトリガ24L4から出力されて制御器22Aに入力される入力信号は以下のようになる。すなわち、入力信号は、制御器22Aの入力ポートのグランド電位GND(A)からこれに電源電圧Vcc(A)を加えた電位(GND(A)+Vcc(A))までの入力信号電圧範囲に対して上昇方向へオフセットした電圧範囲を有する。これにより、制御器22Aにおいて、入力信号のHレベルが電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))よりも高くなって、入力信号電圧範囲を逸脱する。一方、制御器22Aにおいて、入力信号がHレベルからLレベルへ変化したときに、入力信号の電位が下側閾値THLに相当する電位(GND(A)+THL)を超えて低下する。このため、制御器22Aの入力応答信号は、例えば電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))のHレベルから例えばグランド電位GND(A)のLレベルへ変化する。
なお、図5及び図6では、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低い場合について説明したが、グランド電位GND(B)がグランド電位GND(A)より低い場合についても、制御器22A,22Bにおいて同様の波形処理がなされる。また、制御器22A,22Bがトルク信号STa,STbを入力する場合だけでなく、回転角信号Sθa,Sθbを入力する場合についても、制御器22A,22Bにおいて同様の波形処理がなされる。
このようなECU20によれば、一方の通電系統の制御器が他方の通電系統のトルクセンサや回転角センサの出力信号を入力するときに、入力信号に重畳しているノイズが比較的小さいものであればシュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8によって除去される。したがって、通電系統間でグランド電位差が発生している場合でも、入力信号に重畳したノイズの影響による入力応答信号の変化が発生し難くなり、入力信号の誤検出を抑制することができる。これは、制御器22A,22Bにおける操舵トルクやモータ10の回転角度の計測精度を向上させるうえで有意義である。
〔第2実施形態〕
次に、図7及び図8を参照して、第2実施形態に係る電子制御装置について説明する。本実施形態に係る電子制御装置であるECU20iは、ECU20と同様に、モータ10の駆動を制御するものである。
なお、本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明し、その他の部分については矛盾が生じない限りにおいて第1実施形態に関する説明が適用される。したがって、第1実施形態と類似の構成には同一の符号を付して、その説明を省略ないし簡潔にする。
ECU20では、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低い場合、上記のように、シュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8の出力信号が、これを入力する制御器の入力信号電圧範囲を逸脱してしまう。例えば、図5(b)のハッチング領域で示すように、シュミットトリガ24L2の出力信号を制御器22Bが入力したときの入力信号のLレベルはグランド電位GND(B)よりも低い電位となってしまう。また、図6(b)のハッチング領域で示すように、シュミットトリガ24L4の出力信号を制御器22Aが入力したときの入力信号のHレベルは電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))よりも高い電位となってしまう。逆に、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)よりも高い場合でも同様に、シュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8の出力信号が、これを入力する制御器の入力信号電圧範囲を逸脱してしまう。このように、シュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8の出力信号が、これを入力する制御器22A,22Bの入力ポートにおける入力信号電圧範囲を逸脱すると、制御器22A,22Bに過電流及び過電圧が発生して故障を招くおそれがある。そこで、ECU20iでは、制御器22A,22Bがシュミットトリガの出力信号を入力したときに、その入力信号によって制御器22A,22Bに発生し得る過電流及び過電圧を抑制するように構成されている。
図7は、ECU20iにおける制御器22A,22Bとトルクセンサ40A,40B及び回転角センサ50A,50Bとの接続態様に関する要部を示す。
信号線L2,L4,L6,L8には、電流制限抵抗25L2,25L4,25L6,25L8がさらに設けられる。信号線L2に設けられる電流制限抵抗25L2、及び、信号線L6に設けられる電流制限抵抗25L6は、制御器22Bに対する過電流を制限する。また、信号線L4に設けられる電流制限抵抗25L4、及び、信号線L8に設けられる電流制限抵抗25L8は、制御器22Aに対する過電流を制限する。
電源電圧Vcc(B)の電源回路23Bとグランド電位GND(B)のグランドとを信号線L2を介して接続する信号線L9には、電源回路23Bと信号線L2との間にダイオードD1が設けられるとともに、信号線L2とグランドとの間にダイオードD2が設けられる。ダイオードD1,D2は信号線L9においてグランドから電源回路23Bへ向かう方向を順方向とする。このように電源回路23Bとグランドとを信号線L2を介して接続する信号線L9にダイオードD1,D2を設けることで、シュミットトリガ24L2の出力信号をクランプするためのクランプ回路26L2を形成している。
また、電源電圧Vcc(A)の電源回路23Aとグランド電位GND(A)のグランドとを信号線L4を介して接続する信号線L10には、電源回路23Aと信号線L4との間にダイオードD3が設けられるとともに、信号線L4とグランドとの間にダイオードD4が設けられる。ダイオードD3,D4は信号線L10においてグランドから電源回路23Aへ向かう方向を順方向とする。このように電源回路23Aとグランドとを信号線L4を介して接続する信号線L10にダイオードD3,D4を設けることで、シュミットトリガ24L4の出力信号をクランプするためのクランプ回路26L4を形成している。
シュミットトリガ24L2,24L4の出力信号をクランプするためのクランプ回路26L2,26L4と同様に、以下のようにして、シュミットトリガ24L6,24L8の出力信号をクランプするためのクランプ回路26L6,26L8を形成している。すなわち、電源回路23Bとグランド電位GND(B)のグランドとを信号線L6を介して接続する信号線L11にダイオードD5,D6を設けることで、シュミットトリガ24L6の出力信号をクランプするためのクランプ回路26L6を形成している。また、電源回路23Aとグランド電位GND(A)のグランドとを信号線L8を介して接続する信号線L12にダイオードD7,D8を設けることで、シュミットトリガ24L8の出力信号をクランプするためのクランプ回路26L8を形成している。
図8は、ECU20iにおいて、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低い場合にシュミットトリガ24L2,24L4の出力信号に対して行われる波形処理を示す。
図5(b)のハッチング領域及び図8(a)の破線で示されるように、シュミットトリガ24L2の出力信号を制御器22Bが直接入力したときには、制御器22Bの入力信号のLレベルは、グランド電位GND(B)よりも低い電位となってしまう。しかし、図7を参照すると、信号線L2の電位がグランド電位GND(B)より低くなってダイオードD2が導通するので、信号線L2の電位はグランド電位GND(B)に相当する電位となる。これにより、シュミットトリガ24L2の出力信号は、そのLレベルがグランド電位GND(B)へクランプされた状態で、制御器22Bへ入力信号として入力される。
図6(b)のハッチング領域及び図8(b)の破線で示されるように、シュミットトリガ24L4の出力信号を制御器22Aが直接入力したときには、制御器22Aの入力信号のHレベルは、電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))よりも高い電位となってしまう。しかし、図7を参照すると、信号線L4の電位が電源電圧Vcc(A)の電位より高くなってダイオードD4が導通するので、信号線L4の電位は電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))となる。これにより、シュミットトリガ24L4の出力信号は、そのHレベルが電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))へクランプされた状態で、制御器22Aへ入力信号として入力される。
なお、グランド電位GND(B)がグランド電位GND(A)より低い場合には以下のようになる。すなわち、シュミットトリガ24L2の出力信号は、そのHレベルが電源電圧Vcc(B)に相当する電位(GND(B)+Vcc(B))へクランプされた状態で、制御器22Bへ入力信号として入力される。また、シュミットトリガ24L4の出力信号は、そのLレベルがグランド電位GND(A)へクランプされた状態で、制御器22Aへ入力信号として入力される。
また、制御器22A,22Bがシュミットトリガ24L6,24L8の出力信号を入力する場合についても、シュミットトリガ24L2,24L4の出力信号を入力する場合と同様にクランプされる。
仮に、クランプ回路26L2,26L4,26L6,26L8によるクランプが不完全であり、これにより、制御器22A,22Bにながれる電流が増大しても、電流制限抵抗25L2,25L4,25L6,25L8によって過電流が抑制される。
このようなECU20iによれば、ECU20と同様の効果に加えて、制御器22A,22Bがシュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8の出力信号を入力したときに、その入力信号によって制御器22A,22Bに発生し得る過電流及び過電圧を抑制することができる。
〔第3実施形態〕
次に、図9を参照して、第3実施形態に係る電子制御装置について説明する。本実施形態に係る電子制御装置であるECU20iiは、ECU20と同様に、モータ10の駆動を制御するものである。
なお、本実施形態では、主に第1及び第2実施形態と異なる部分について説明し、その他の部分については矛盾が生じない限りにおいて第1及び第2実施形態に関する説明が適用される。したがって、第1及び第2実施形態と類似の構成には同一の符号を付して、その説明を省略ないし簡潔にする。
ECU20iiは、ECU20iにおいてシュミットトリガ24L2,24L4,24L6,24L8を省略した構成に相当する。したがって、ECU20iiは、電流制限抵抗25L2,25L4,25L6,25L8と、クランプ回路26L2,26L4,26L6,26L8と、を有する。クランプ回路26L2,26L4,26L6,26L8は、制御器22Aに入力される第2トルク信号STb及び第2回転角信号Sθbをクランプ可能であり、制御器22Bに入力される第1トルク信号STa及び第1回転角信号Sθbをクランプ可能である。
ECU20iiにおいて、クランプ回路26L2,26L4,26L6,26L8がない場合には、通電系統間にグランド電位差が発生すると以下のようになる。すなわち、制御器22Aに入力される第2トルク信号STbが制御器22Aの入力信号電圧範囲を逸脱し、制御器22Bに入力される第1トルク信号STaが制御器22Bの入力信号電圧範囲を逸脱する。例えば、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低いと、図10(b)のハッチング領域で示すように、制御器22Bの入力信号として入力した第1トルク信号STaのLレベルは、グランド電位GND(B)よりも低い電位となってしまう。また、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)より低いと、図11(b)のハッチング領域で示すように、制御器22Aの入力信号として入力した第2トルク信号STbのHレベルは、電源電圧Vcc(A)に相当する電位(GND(A)+Vcc(A))よりも高くなってしまう。逆に、グランド電位GND(A)がグランド電位GND(B)よりも高い場合でも同様の現象が起きる。また、以上のことは、制御器22Aが入力した第2回転角信号Sθb、及び、制御器22Bが入力した第1回転角信号Sθaについても同様に起こる。
しかし、ECU20iiでは、通電系統間にグランド電位差が発生しても、クランプ回路26L2,26L4,26L6,26L8によって、制御器22Aに入力される第2トルク信号STb及び第2回転角信号Sθbがクランプされ、制御器22Bに入力される第1トルク信号STa及び第1回転角信号Sθbがクランプされる。これにより、制御器22A,22Bへの過電圧が抑制される。
また、ECU20iiでは、電流制限抵抗25L2,25L4,25L6,25L8で信号線L2,L4,L6,L8の電流が制限されるので、通電系統間にグランド電位差が発生しても制御器22A,22Bにおける過電流の発生を抑制することができる。
したがってECU20iiによれば、ECU20iと同様に、一方の通電系統の制御器が他方の通電系統のトルクセンサや回転角センサから出力された信号を入力するときに、その入力信号によって制御器22A,22Bに発生し得る過電流及び過電圧を抑制することができる。
なお、第1~第3実施形態において、制御器22A,22Bの入力ポートはシュミットトリガ入力として説明したが、これに代えて、TTL(Transistor-Transistor Logic)入力を用いた場合でも本発明の適用が可能である。
第1~第3実施形態において、車速センサ60を冗長化して、制御器22A,22Bが各通電系統の車速センサの出力信号を入力して、制御器22A,22Bに接続されるセンサの種類を3つとしてもよい。また、制御器22A,22Bに接続されるセンサの種類を、トルクセンサ40、回転角センサ50、車速センサ60のうちいずれか1種類のセンサとしてもよい。要するに、少なくとも1種類のセンサを冗長化して、各通電系統のセンサの出力信号を他の通電系統の制御器に入力してもよい。センサの種類としては、トルクセンサ40、回転角センサ50、車速センサ60に限られず、例えば、操舵角を計測するための操舵角センサ等、あらゆるセンサを用い得る。
第1~第3実施形態において、2つの通電系統に冗長化したが、これに限らず、3つ以上の通電系統としても本発明に係る電子制御装置を適用可能である。
ECU20,20i,20iiに内部に駆動回路21A,21Bを備えることに代えて、ECU20,20i,20iiの外部に駆動回路21A,21Bを備えることもできる。
ECU20i,20iiにおいて、例えば、クランプ回路26L2,26L4,26L6,26L8によって制御器22A,22Bの入力ポートにおける入力信号のクランプが十分行われている場合には、電流制限抵抗25L2,25L4,25L6,25L8を省略してもよい。
本発明に係る電子制御装置の適用例として電動パワーステアリングを用いて説明したが、適用対象は電動パワーステアリングに限らない。電源から負荷へ通電するための通電系統を冗長化して備え、通電系統ごとに有するセンサの出力信号に基づいて各通電系統で独立して負荷の駆動を制御する電子制御装置であれば、いかなるシステムにも適用可能である。
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、上記で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合せて使用することができる。また、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば種々の変形態様を採り得ることは自明である。