JP7513937B2 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7513937B2
JP7513937B2 JP2023502071A JP2023502071A JP7513937B2 JP 7513937 B2 JP7513937 B2 JP 7513937B2 JP 2023502071 A JP2023502071 A JP 2023502071A JP 2023502071 A JP2023502071 A JP 2023502071A JP 7513937 B2 JP7513937 B2 JP 7513937B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
content
temperature range
slab
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2023502071A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2022180956A1 (ja
Inventor
隆 安富
栄作 桜田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority claimed from PCT/JP2021/042627 external-priority patent/WO2022180956A1/ja
Publication of JPWO2022180956A1 publication Critical patent/JPWO2022180956A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7513937B2 publication Critical patent/JP7513937B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、鋼板およびその製造方法に関する。
本願は、2021年2月26日に、日本に出願された特願2021-030349号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、自動車および機械部品の軽量化が進められている。部品形状を最適な形状に設計することで剛性を確保することにより、自動車および機械部品の軽量化が可能である。さらに、プレス成形部品等のブランク成形部品では、部品材料の板厚を減少させることで軽量化が可能となる。しかしながら、板厚を減少させながら静破壊強度および降伏強度などの部品の強度特性を確保しようとした場合、高強度材料を用いることが必要となる。特に、ロアアーム、トレールリンクおよびナックルなどの自動車足回り部品では、780MPa級超の鋼板の適用が検討され始めている。これらの自動車足回り部品は、鋼板にバーリング、伸びフランジおよび曲げ成形等を施すことで製造される。そのため、これらの自動車足回り部品に適用される鋼板は成形性、特に穴広げ性に優れることが要求される。
例えば、特許文献1には、熱間圧延工程において、仕上げ圧延温度および圧下率を所定の範囲内とすることで、旧オーステナイトの結晶粒径およびアスペクト比を制御し、異方性を低減した熱延鋼板が開示されている。
特許文献2には、熱間圧延工程において、所定の仕上げ圧延温度範囲において、圧延率および平均ひずみ速度を適正範囲内とすることで、靱性を向上させた冷延鋼板が開示されている。
自動車および機械部品等の更なる軽量化のために、冷延鋼板を前提とした板厚の鋼板が自動車足回り部品に適用される見込みもある。特許文献1および特許文献2に記載の技術は高強度鋼板を適用した自動車足回り部品を製造するにあたり、有効なものである。特に、これらの技術は、複雑な形状を有する自動車の足回り部品の成形性および衝撃性に関わる効果を得るために重要な知見である。
しかし、自動車足回り部品は、常時、自重による振動、旋回、および乗り上げ等による繰返し荷重を受ける。そのため、部品としての耐久性が重要な特性である。前述のように、自動車の足回り部品は様々な成形を受ける。曲げあるいは曲げ曲げ戻し成形を受けたR部の内側近傍の平面部では、金型の接触が弱い箇所が多く存在する。このようなR部の内側近傍の平面部では、成形により表層の凹凸が発達し、且つ、弱い荷重での金型接触を受けるため、比較的鋭い凹部が周期的に形成した表面性状となる(以後、このような表面性状の変化を成形損傷と記す)。成形損傷した部分(成形損傷部)を含む部品は、応力およびひずみの集中が生じやすく、部品強度が低下する。そのため、成形されて自動車足回り部品に適用される鋼板は、成形損傷の発生を抑制できることが要求される。
日本国特許第5068688号公報 日本国特許第3858146号公報
上記実情に鑑み、本発明は、高い強度および優れた穴広げ性を有し、且つ成形損傷の発生を抑制できる鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、創意検討の結果、成形損傷の発生は、鋼板の表層の集合組織と相関があることを知見した。本発明者らは、鋼板の表層の集合組織において、極密度が高く、且つ対称性が低い場合に成形損傷が発生しやすいことを知見した。特に、析出強化を活用した1030MPa以上の引張強さを有する鋼板では、仕上げ圧延時に再結晶が生じにくいため、集合組織において極密度が高く、且つ対称性が低い。本発明者らは、鋼板の表層の集合組織において、所望の範囲における極密度の比と合計とを好ましく制御することで、成形損傷の発生を抑制できることを知見した。
また、本発明者らは、鋼板の表層の集合組織を好ましく制御するためには、仕上げ圧延前のスラブに対し、スラブの幅方向に所望のひずみを付与すること、且つ所望の条件で仕上げ圧延を行うことが効果的であることを知見した。
上記知見に基づいてなされた本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る鋼板は、化学組成が、質量%で、
C :0.030~0.180%、
Si:0.030~1.400%、
Mn:1.60~3.00%、
Al:0.010~0.700%、
P :0.0800%以下、
S :0.0100%以下、
N :0.0050%以下、
Ti:0.020~0.180%、
Nb:0.010~0.050%、
Mo:0~0.600%、
V :0~0.300%、
Ti、Nb、MoおよびVの合計:0.100~1.130%、
B :0~0.0030%、並びに
Cr:0~0.500%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
金属組織が、面積率で、
ベイナイト:80.0%以上、
フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの合計:20.0%以下、並びに、
パーライト、フェライトおよびオーステナイトの合計:20.0%以下であり、
板厚1/4位置の集合組織の結晶方位分布関数において、
φ=45°断面におけるΦ=20~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Aと、
前記φ=45°断面におけるΦ=120~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Bとの比であるA/Bが1.50以下であり、
前記最大値Aと前記最大値Bとの合計が6.00以下であり、
引張強さが1030MPa以上である。
(2)上記(1)に記載の鋼板は、前記フレッシュマルテンサイトおよび前記焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計のうち、前記焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合が80.0%以上であってもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の鋼板は、前記化学組成が、質量%で、
Mo:0.001~0.600%、
V :0.010~0.300%、
B :0.0001~0.0030%、および
Cr:0.001~0.500%
からなる群のうち1種または2種以上を含有してもよい。
(4)本発明の別の態様に係る鋼板の製造方法は、上記(1)に記載の鋼板の製造方法であって、
上記(1)に記載の化学組成を有するスラブを1200℃以上の温度域で30分以上保持する工程と、
前記保持後の前記スラブに対して、幅方向に3~15%のひずみを付与する工程と、
前記ひずみを付与した前記スラブに対し、最終圧下率が24~60%、且つ仕上げ圧延温度が960~1060℃の温度域となるように仕上げ圧延を行う工程と、
前記仕上げ圧延後の鋼板を、900~650℃の温度域の平均冷却速度が30℃/秒以上となるように冷却し、400~580℃の温度域で巻取りを行う工程と、を備える。
(5)上記(4)に記載の鋼板の製造方法は、前記巻取り後の前記鋼板を、600~750℃の温度域で60~3010秒保持する工程と、を備えてもよい。
本発明に係る上記態様によれば、高い強度および優れた穴広げ性を有し、且つ成形損傷の発生を抑制できる鋼板およびその製造方法を提供することができる。また、本発明に係る好ましい態様によれば、より優れた穴広げ性を有する鋼板およびその製造方法を提供することができる。
実施例で作成したハット部品を説明するための図である。
以下、本実施形態に係る鋼板について、詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
なお、以下に記載する「~」を挟んで記載される数値限定範囲には、下限値および上限値がその範囲に含まれる。「未満」、「超」と示す数値には、その値が数値範囲に含まれない。化学組成についての「%」は全て「質量%」のことを指す。
本実施形態に係る鋼板は、質量%で、C:0.030~0.180%、Si:0.030~1.400%、Mn:1.60~3.00%、Al:0.010~0.700%、P:0.0800%以下、S:0.0100%以下、N:0.0050%以下、Ti:0.020~0.180%、Nb:0.010~0.050%、Ti、Nb、MoおよびVの合計:0.100~1.130%、並びに、残部:Feおよび不純物含む。以下、各元素について詳細に説明する。
C:0.030~0.180%
Cは、鋼板の所望の引張強さを得るために必要な元素である。C含有量が0.030%未満であると、所望の引張強さを得ることができない。そのため、C含有量は0.030%以上とする。C含有量は、好ましくは0.060%以上であり、より好ましくは0.080%以上であり、より一層好ましくは0.085%以上、0.090%以上、0.095%以上または0.100%以上である。
一方、C含有量が0.180%超では、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計が過剰となり、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、C含有量は0.180%以下とする。C含有量は、好ましくは0.170%以下であり、より好ましくは0.150%以下である。
Si:0.030~1.400%
Siは、固溶強化によって鋼板の引張強さを向上する元素である。Si含有量が0.030%未満では、所望の引張強さを得ることができない。そのため、Si含有量は0.030%以上とする。Si含有量は、好ましくは0.040%以上であり、より好ましくは0.050%以上である。
一方、Si含有量が1.400%超であると、残留オーステナイトの面積率が多くなり、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、Si含有量は1.400%以下とする。Si含有量は、好ましくは1.100%以下であり、より好ましくは1.000%以下である。
Mn:1.60~3.00%
Mnは、鋼板の強度を向上させるために必要な元素である。Mn含有量が、1.60%未満であると、フェライトの面積率が高くなりすぎ、所望の引張強さを得ることができない。そのため、Mn含有量は1.60%以上とする。Mn含有量は、好ましくは1.80%以上であり、より好ましくは2.00%以上である。
一方、Mn含有量が3.00%超であると、鋳造スラブの靱性が劣化し、熱間圧延することができない。そのため、Mn含有量は3.00%以下とする。Mn含有量は、好ましくは2.70%以下であり、より好ましくは2.50%以下である。
Al:0.010~0.700%
Alは、脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を向上させる元素である。Al含有量が0.010%未満であると、十分な脱酸効果が得られず、鋼板中に多量の介在物(酸化物)が形成される。このような介在物は、鋼板の加工性を劣化させる。そのため、Al含有量は0.010%以上とする。Al含有量は、好ましくは0.020%以上であり、より好ましくは0.030%以上である。
一方、Al含有量が0.700%超では、鋳造が困難となる。そのため、Al含有量は、0.700%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.600%以下であり、より好ましくは0.100%以下である。
P:0.0800%以下
Pは、鋼板の板厚中央部に偏析する元素である。またPは、溶接部を脆化させる元素でもある。P含有量が0.0800%超であると、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、P含有量は0.0800%以下とする。P含有量は、好ましくは0.0200%以下であり、より好ましくは0.0100%以下である。
P含有量は低い程好ましく、0%であることが好ましいが、P含有量を過剰に低減すると脱Pコストが著しく増加する。そのため、P含有量は0.0005%以上としてもよい。
S:0.0100%以下
Sは、硫化物として存在することで、スラブを脆化させる元素である。またSは、鋼板の加工性を劣化させる元素でもある。S含有量が0.0100%超であると、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、S含有量は0.0100%以下とする。S含有量は、好ましくは0.0080%以下であり、より好ましくは0.0050%以下である。
S含有量は低い程好ましく、0%であることが好ましいが、S含有量を過剰に低減すると脱Sコストが著しく増加する。そのため、S含有量は0.0005%以上としてもよい。
N:0.0050%以下
Nは、鋼中に粗大な窒化物を形成し、鋼板の曲げ加工性および伸びを劣化させる元素である。N含有量が0.0050%超であると、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、N含有量は0.0050%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0040%以下であり、より好ましくは0.0035%以下である。
N含有量は低い程好ましく、0%であることが好ましいが、N含有量を過剰に低減すると脱Nコストが著しく増加する。そのため、N含有量は0.0005%以上としてもよい。
Ti:0.020~0.180%
Tiは、鋼中に微細な窒化物を形成することで、鋼板の強度を高める元素である。Ti含有量が0.020%未満であると、所望の引張強さを得ることができない。そのため、Ti含有量は0.020%以上とする。Ti含有量は、好ましくは0.050%以上であり、より好ましくは0.080%以上である。
一方、Ti含有量が0.180%超であると、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、Ti含有量は、0.180%以下とする。Ti含有量は、好ましくは0.160%以下であり、より好ましくは0.150%以下である。
Nb:0.010~0.050%
Nbは、熱間圧延でのオーステナイト粒の異常な粒成長を抑制する元素である。またNbは、微細な炭化物を形成することで鋼板の強度を高める元素でもある。Nb含有量が0.010%未満であると、所望の引張強さを得ることができない。そのため、Nb含有量は0.010%以上とする。Nb含有量は、好ましくは0.013%以上であり、より好ましくは0.015%以上である。
一方、Nb含有量が0.050%超であると、鋳造スラブの靱性が劣化し、熱間圧延することができない。そのため、Nb含有量は0.050%以下とする。Nb含有量は、好ましくは0.040%以下であり、より好ましくは0.035%以下である。
Ti、Nb、MoおよびVの合計:0.100~1.130%
本実施形態では、上述したTiおよびNb、並びに後述するMoおよびVの含有量の合計を制御する。これらの元素の含有量の合計が0.100%未満であると、微細な炭化物を形成して鋼板の強度を高める効果が十分に得られず、所望の引張強さを得ることができない。そのため、これらの元素の含有量の合計を0.100%以上とする。なお、Ti、Nb、MoおよびVの全てを含む必要は無く、いずれか1種でもその含有量が0.100%以上であれば上記効果を得ることができる。これらの元素の含有量の合計は、好ましくは0.150%以上であり、より好ましくは0.200%以上であり、より一層好ましくは0.230%以上である。
一方、これらの元素の含有量の合計が1.130%超であると、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、これらの元素の含有量の合計は1.130%以下とする。これらの元素の含有量の合計は、好ましくは1.000%以下であり、より好ましくは0.500%以下である。
本実施形態に係る鋼板の化学組成の残部は、Feおよび不純物であってもよい。本実施形態において、不純物とは、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境等から混入されるもの、あるいは、本実施形態に係る鋼板に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本実施形態に係る鋼板は、Feの一部に代えて、以下の任意元素を含んでもよい。任意元素を含有させない場合の含有量の下限は0%である。以下、各任意元素について説明する。
Mo:0.001~0.600%
Moは、鋼中に微細な炭化物を形成することで鋼板の強度を高める元素である。この効果を確実に得るためには、Mo含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
一方、Mo含有量が0.600%超であると、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、Mo含有量は0.600%以下とする。
V:0.010~0.300%
Vは、鋼中に微細な炭化物を形成することで鋼板の強度を高める元素である。この効果を確実に得るためには、V含有量は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、V含有量が0.300%超であると、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、V含有量は0.300%以下とする。
B:0.0001~0.0030%
Bは、冷却工程でのフェライトの生成を抑制し、鋼板の強度を高める元素である。この効果を確実に得るためには、B含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
一方、0.0030%を超えてBを含有させても上記効果は飽和する。そのため、B含有量は0.0030%以下とする。
Cr:0.001~0.500%
Crは、Mnと類似した効果を発現する元素である。Cr含有による鋼板の強度を高める効果を確実に得るためには、Cr含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
一方、0.500%を超えてCrを含有させても、上記効果は飽和する。そのため、Cr含有量は0.500%以下とする。
上述した鋼板の化学組成は、スパーク放電発光分光分析装置などを用いて、分析すればよい。なお、CおよびSはガス成分分析装置などを用いて、酸素気流中で燃焼させ、赤外線吸収法によって測定することで同定された値を採用する。また、Nは、鋼板から採取した試験片をヘリウム気流中で融解させ、熱伝導度法によって測定することで同定された値を採用する。
次に、本実施形態に係る鋼板の金属組織について説明する。
本実施形態に係る鋼板は、金属組織が、面積率で、ベイナイト:80.0%以上、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの合計:20.0%以下、並びに、パーライト、フェライトおよびオーステナイトの合計:20.0%以下であり、板厚1/4位置の集合組織の結晶方位分布関数において、φ=45°断面におけるΦ=20~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Aと、前記φ=45°断面におけるΦ=120~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Bとの比であるA/Bが1.50以下であり、前記最大値Aと前記最大値Bとの合計が6.00以下である。
以下、各規定について説明する。なお、以下に記載する金属組織についての%は全て面積%である。
ベイナイトの面積率:80.0%以上
ベイナイトは所定の強度を有しながら、延性および穴広げ性のバランスに優れた組織である。ベイナイトの面積率が80.0%未満であると、所望の引張強さおよび/または穴広げ性を得ることができない。そのため、ベイナイトの面積率は80.0%以上とする。ベイナイトの面積率は、好ましくは81.0%以上であり、より好ましくは82.0%以上であり、より一層好ましくは83.0%以上である。
ベイナイトの面積率の上限は特に限定しないが、100.0%以下、95.0%以下または90.0%以下としてもよい。
フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計:20.0%以下
フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトは鋼板の強度を高める効果があるが、局部変形能が低く、面積率が高まることで鋼板の穴広げ性が劣化する。フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計が20.0%を超えると、鋼板の穴広げ性が劣化する。そのため、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計は20.0%以下とする。フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計は、好ましくは15.0%以下であり、より好ましくは10.0%以下であり、より一層好ましくは5.0%以下である。
フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計の下限は特に限定しないが、0.0%以上、0.5%以上または1.0%以上としてもよい。
焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合:フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計のうち80.0%以上
フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計のうち、焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合を高めることで、鋼板の穴広げ性をより高めることができる。そのため、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計のうち、焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合を80.0%以上としてもよい。フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計のうち、焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合は高い程好ましく、より好ましくは90.0%以上であり、100.0%としてもよい。
なお、焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合は、{焼き戻しマルテンサイトの面積率/(フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計)}×100で求めることができる。
パーライト、フェライトおよびオーステナイトの面積率の合計:20.0%以下
フェライトおよびオーステナイトは鋼板の強度を劣化させる組織である。パーライトは鋼板の穴広げ性を劣化させる組織である。これらの組織の面積率の合計が20.0%超であると、所望の引張強さおよび/または穴広げ性を得ることができない。そのため、これらの組織の面積率の合計は20.0%以下とする。これらの組織の面積率の合計は、好ましくは17.0%以下であり、より好ましくは15.0%以下である。
パーライト、フェライトおよびオーステナイトの面積率の合計の下限は特に限定しないが、0.0%以上、5.0%以上または10.0%以上としてもよい。
以下に、各組織の面積率の測定方法を説明する。
鋼板から、圧延方向に平行な断面で、表面から板厚の1/4深さ(表面から板厚の1/8深さ~表面から板厚の3/8深さの領域)且つ板幅方向中央位置における金属組織が観察できるように試験片を採取する。
上記試験片の断面を#600から#1500の炭化珪素ペーパーを使用して研磨した後、粒度1~6μmのダイヤモンドパウダーをアルコール等の希釈液や純水に分散させた液体を使用して鏡面に仕上げる。次に、室温においてアルカリ性溶液を含まないコロイダルシリカを用いて研磨し、サンプルの表層に導入されたひずみを除去する。サンプル断面の長手方向の任意の位置において、表面から板厚の1/4深さ位置を観察できるように、長さ50μm、表面から板厚の1/8深さ~表面から板厚の3/8深さの領域を、0.1μmの測定間隔で電子後方散乱回折法により測定して結晶方位情報を得る。
測定には、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)とで構成されたEBSD装置を用いる。この際、EBSD装置内の真空度は9.6×10-5Pa以下、加速電圧は15kV、照射電流レベルは13、電子線の照射レベルは62とする。得られた結晶方位情報から、EBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM Analysis(登録商標)」に搭載された「Phase Map」機能を用いて、オーステナイトの面積率を算出する。これにより、オーステナイトの面積率を得る。なお、結晶構造がfccであるものをオーステナイトと判断する。
次に、結晶構造がbccであるものをベイナイト、フェライト、パーライト、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトと判断する。これらの領域について、EBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM Analysis(登録商標)」に搭載された「Grain Orientation Spread」機能を用いて、15°粒界を結晶粒界の定義とした条件下で、「Grain Orientation Spread」が1°以下の領域をフェライトとして抽出する。抽出したフェライトの面積率を算出することで、フェライトの面積率を得る。
続いて、残部領域(「Grain Orientation Spread」が1°超の領域)の内、5°粒界を結晶粒界の定義とした条件下で、フェライト領域の「Grain Average IQ」の最大値をIαとしたとき、Iα/2超となる領域をベイナイト、Iα/2以下となる領域を「パーライト、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイト」として抽出する。抽出したベイナイトの面積率を算出することで、ベイナイトの面積率を得る。
抽出した「パーライト、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイト」について、下記方法によってパーライト、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトを区別する。
EBSD測定領域と同領域をSEMで観察するために、観察位置近傍にビッカース圧痕を打刻する。その後、観察面の組織を残して、表層のコンタミを研磨除去し、ナイタールエッチングする。次に、EBSD観察面と同一視野をSEMにより倍率3000倍で観察する。EBSD測定において、「パーライト、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイト」と判別された領域の内、粒内に下部組織を有し、かつ、セメンタイトが複数のバリアントを持って析出している領域を焼き戻しマルテンサイトと判断する。セメンタイトがラメラ状に析出している領域をパーライトと判断する。輝度が大きく、かつ下部組織がエッチングにより現出されていない領域をフレッシュマルテンサイトと判断する。それぞれの面積率を算出することで、焼き戻しマルテンサイト、パーライト、およびフレッシュマルテンサイトの面積率を得る。
なお、観察面表層のコンタミ除去については、粒子径0.1μm以下のアルミナ粒子を用いたバフ研磨、あるいはArイオンスパッタリング等の手法を用いればよい。
板厚1/4位置の集合組織:A/Bが1.50以下、A+Bが6.00以下
板厚1/4位置の集合組織の結晶方位分布関数において、φ=45°断面におけるΦ=20~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Aと、前記φ=45°断面におけるΦ=120~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Bとの比であるA/Bが1.50超であると、あるいは前記最大値Aと前記最大値Bとの合計(A+B)が6.00超であると、所望の穴広げ性を得ることができない、および/または成形損傷の発生を抑制することができない。そのため、A/Bを1.50以下、且つA+Bを6.00以下とする。
A/Bは、好ましくは1.40以下であり、より好ましくは1.30以下であり、より一層好ましくは1.20以下である。A/Bの下限は特に限定しないが、1.00以上としてもよい。
A+Bは、好ましくは5.50以下であり、より好ましくは5.00以下であり、より一層好ましくは4.50以下である。A+Bの下限は特に限定しないが、2.00以上または3.00以上としてもよい。
上記最大値Aおよび上記最大値Bは以下の方法により測定する。
鋼板から、圧延方向に平行な断面が観察できるように試料を採取する。板面に垂直な断面を機械研磨した後、化学研磨や電解研磨により歪みを除去する。測定には、走査電子顕微鏡とEBSD解析装置とを組み合わせた装置およびTSL社製のOIM Analysis(登録商標)を用いる。上記試料についてEBSD(Electron Back Scattering Diffraction)法による解析を行う。得られた方位データから、結晶方位分布関数(ODF:Orientation Distribution Function)を算出する。なお、測定範囲は、板厚1/4位置(表面から板厚1/8深さ~表面から板厚3/8深さの領域)とする。
得られた結晶方位分布関数から、φ=45°断面におけるΦ=20~60°、φ=30~90°の極密度の最大値を求めることで、最大値Aを得る。また、φ=45°断面におけるΦ=120~60°、φ=30~90°の極密度の最大値を求めることで、最大値Bを得る。
引張強さ:1030MPa以上
本実施形態に係る鋼板は、引張強さが1030MPa以上である。引張強さが1030MPa未満であると、様々な自動車足回り部品に好適に適用することができない。引張強さは、1050MPa以上、または1150MPa以上としてもよい。
引張強さは高い程好ましいが、1450MPa以下としてもよい。
引張強さは、JIS Z 2241:2011の5号試験片を用いて、JIS Z 2241:2011に準拠して引張試験を行うことで、測定する。引張試験片の採取位置は、板幅方向中央位置とし、圧延方向に垂直な方向を長手方向とする。
穴広げ率:35%以上
本実施形態に係る鋼板は、穴広げ率を35%以上としてもよい。穴広げ率を35%以上とすることで、円筒バーリング部端部で成形破断が生じることを抑制できる。そのため、自動車足回り部品に好適に適用することができる。円筒バーリング部の成形高さをより高めるために、穴広げ率は、40%以上、45%以上または50%以上としてもよい。
穴広げ率は、JIS Z 2256:2020に準拠して穴広げ試験を行うことで、測定する。
本実施形態に係る鋼板は、表面に耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn-Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn-Al合金めっき、溶融Zn-Al-Mg合金めっき、溶融Zn-Al-Mg-Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様としてよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
次に、本実施形態に係る鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本実施形態に係る鋼板の好ましい製造方法は、
上述した化学組成を有するスラブを1200℃以上の温度域で30分以上保持する工程と、
前記保持後の前記スラブに対して、幅方向に3~15%のひずみを付与する工程と、
前記ひずみを付与した前記スラブに対し、最終圧下率が24~60%、且つ仕上げ圧延温度が960~1060℃の温度域となるように仕上げ圧延を行う工程と、
前記仕上げ圧延後の鋼板を、900~650℃の温度域の平均冷却速度が30℃/秒以上となるように冷却し、400~580℃の温度域で巻取りを行う工程と、備える。
また、上述した工程に加えて更に、
前記巻取り後の前記鋼板を600~750℃の温度域で60~3010秒保持する工程と、を備えてもよい。
以下、各工程について説明する。
スラブの加熱温度は1200℃以上とする。また、1200℃以上の温度域での保持時間は30分以上とする。スラブの加熱温度が1200℃未満であると、または1200℃以上の温度域での保持時間が30分未満であると、粗大な析出物を十分に溶解することができず、結果として所望の引張強さを有する鋼板を得ることができない。加熱温度の上限および1200℃以上の温度域での保持時間の上限は特に限定しないが、それぞれ1300℃以下、300分以下としてもよい。
なお、加熱するスラブについては、上述した化学組成を有する点以外については特に限定されない。例えば、転炉又は電気炉等を用いて上記化学組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法により製造したスラブを用いることができる。連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法等を採用してもよい。
仕上げ圧延前、スラブに対し、幅方向(圧延直交方向)に3~15%のひずみを付与する。幅方向に付与するひずみが3%未満または15%超であると、最大値Aと最大値Bとの比であるA/Bを好ましく制御することができない。その結果、所望の穴広げ性を得ることができない、および/または成形損傷の発生を抑制することができない。そのため、幅方向に付与するひずみは3~15%とする。幅方向に付与するひずみは、好ましくは5%以上であり、より好ましくは7%以上である。また、幅方向に付与するひずみは、好ましくは13%以下であり、より好ましくは11%以下である。
なお、スラブの幅方向に付与するひずみは、ひずみ付与前のスラブの幅方向長さをwとし、ひずみ付与後のスラブの幅方向長さをwとしたとき、(1-w/w)×100(%)により表すことができる。スラブの幅方向にひずみを付与する方法としては、例えば、スラブの板面に対して回転軸が垂直になるように設置されたロールを用いて、ひずみを付与する方法が挙げられる。
なお、加熱後のスラブについては通常の方法で粗圧延を行ってもよい。粗圧延を行う場合は、粗圧延前、粗圧延の途中、または粗圧延後に上述した条件で幅方向にひずみを付与すればよい。
幅方向にひずみを付与した後は、仕上げ圧延を行う。仕上げ圧延は、最終圧下率が24~60%、且つ仕上げ圧延温度が960~1060℃の温度域となるように行う。
仕上げ圧延の最終圧下率が24%未満であると、再結晶が促進されず、最大値Aと最大値Bとの合計であるA+Bを好ましく制御することができない。その結果、所望の穴広げ性を得ることができない、および/または成形損傷の発生を抑制することができない。仕上げ圧延の最終圧下率は、好ましくは30%以上である。仕上げ圧延の最終圧下率の上限は、設備負荷増大を抑制する観点から60%以下とする。
仕上げ圧延の最終圧下率は、仕上げ圧延の最終パス後の板厚をt、最終パス前の板厚をtとしたとき、(1-t/t)×100(%)で表すことができる。
仕上げ圧延温度(仕上げ圧延の最終パス出側の鋼板の表面温度)が960℃未満であると、再結晶が促進されず、最大値Aと最大値Bとの合計であるA+Bを好ましく制御することができない。その結果、所望の穴広げ性を得ることができない、および/または成形損傷の発生を抑制することができない。仕上げ圧延温度は、好ましくは980℃以上である。仕上げ圧延温度の上限は、粒径が粗大になることを抑制する観点、および鋼板の靭性劣化を抑制する観点から、1060℃以下とする。
仕上げ圧延後は、900~650℃の温度域の平均冷却速度が30℃/秒以上となるように冷却する。900~650℃の温度域の平均冷却速度が30℃/秒未満であると、フェライトおよびパーライトが多量に生成し、所望の引張強さを得ることができない。900~650℃の温度域の平均冷却速度は、好ましくは50℃/秒以上であり、より好ましくは80℃/秒以上である。
900~650℃の温度域の平均冷却速度の上限は特に限定しないが、300℃/秒以下または200℃/秒以下としてもよい。
なお、ここでいう平均冷却速度とは、設定する範囲の始点と終点との温度差を、始点から終点までの経過時間で除した値である。900~650℃の温度域を上記平均冷却速度で冷却した後、巻取りまでの冷却については特に限定されない。
上述の冷却を行った後、400~580℃の温度域で鋼板を巻取る。これにより、本実施形態に係る鋼板を得ることができる。巻取り温度が400℃未満であると、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトが過剰に生成し、鋼板の穴広げ性が劣化する。巻取り温度は、好ましくは450℃以上である。
また、巻取り温度が580℃超であると、フェライト量が増加して所望の引張強さを得ることができない。巻取り温度は、好ましくは560℃以下である。
以上の方法で製造された鋼板は、室温になるまで放冷されても、コイル状に巻取られた後に水冷されてもよい。
巻取り後の鋼板は、コイルを巻き開いて酸洗を施し、その後軽圧下を行ってもよい。なお、酸洗および軽圧下を行わずに、後述の熱処理を行ってもよい。軽圧下の累積圧下率が高すぎると、転位密度が高まり、鋼板の穴広げ性が劣化する場合がある。そのため、軽圧下を行う場合、軽圧下の累積圧下率は15%以下とすることが好ましい。
軽圧下の累積圧下率は、軽圧下後の板厚をt、軽圧下前の板厚をtとしたとき、(1-t/t)×100(%)で表すことができる。
巻取り後または軽圧下後は、熱処理を行ってもよい。熱処理を行う場合は、600~750℃の温度域で60~3010秒保持することが好ましい。熱処理時の加熱温度および保持時間を上述の範囲とすることで、微細な析出物量を増加させる効果、および転位密度を低下させる効果を十分に得ることができる。結果として、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトのうち、焼き戻しマルテンサイトの割合を高めることができ、鋼板の穴広げ性をより高めることができる。
以上説明した工程を備える製造方法によって、本実施形態に係る鋼板を製造することができる。また、上述した好ましい工程を更に備えることによって、焼き戻しマルテンサイトの割合を高めることができ、鋼板の穴広げ性をより向上することができる。
表1に示す化学組成を有するスラブを連続鋳造により製造した。得られたスラブを用いて、表2および表3に示す条件により、板厚3.0mmの鋼板を製造した。必要に応じて、表2および表3に示す条件で、軽圧下および/または熱処理を施した。なお、軽圧下を施した例については、軽圧下を施す前に酸洗を行った。
表1中の空欄は、当該元素を意図的に含有させていないことを示す。また、表3中の試験No.29は、スラブに対して、1189℃で46分間の保持を行った。また、表3中の試験No.10は、熱処理を行わなかった。
得られた鋼板について、上述の方法により各組織の面積分率、最大値Aおよび最大値B、引張強さ、並びに、穴広げ率を求めた。得られた結果を表4および表5に示す。
なお、表4および表5において、「A/B」は、板厚1/4位置の集合組織の結晶方位分布関数における、φ=45°断面におけるΦ=20~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Aと、φ=45°断面におけるΦ=120~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Bとの比を示し、「A+B」は最大値Aと最大値Bとの合計を示す。
「B」はベイナイトを示し、「α+P+γ」はフェライト、パーライトおよびオーステナイトを示し、「FM+TM」はフレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトを示す。「TMの割合」は、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計のうち、焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合を示す。
得られた鋼板から、図1に示すハット部品を製造した。
図1におけるハット部品の面Sの中央位置に、10mm/秒の荷重を付与した。最大荷重までにA、A’、BおよびB’部分の破断に起因する荷重低下が無かった場合、十分な部品強度を有し、成形損傷の発生を抑制できた鋼板であるとして合格と判定し、表中の荷重低下の欄に「OK」と記載した。一方、最大荷重までにA、A’、BおよびB’部分の破断に起因する荷重低下が発生した場合、十分な部品強度を有さず、成形損傷の発生を抑制できなかった鋼板であるとして不合格と判定し、表中の荷重低下の欄に「NG」と記載した。
引張強さが1030MPa以上であった場合、高い強度を有するとして合格と判定し、引張強さが1030MPa未満であった場合、高い強度を有さないとして不合格と判定した。
また、穴広げ率が35%以上であった場合、穴広げ性に優れるとして合格と判定し、穴広げ率が35%未満であった場合、穴広げ性に劣るとして不合格と判定した。特に、穴広げ率が45%以上であった例は、穴広げ性により優れると判断した。
Figure 0007513937000001
Figure 0007513937000002
Figure 0007513937000003
Figure 0007513937000004
Figure 0007513937000005
表4および表5を見ると、本発明例に係る鋼板は、高い強度および優れた穴広げ性を有し、且つ成形損傷の発生を抑制できたことが分かる。本発明例の中でも、フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計のうち、焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合が80.0%以上である鋼板は、穴広げ性により優れることが分かる。
一方、比較例に係る鋼板は、特性のいずれか一つ以上が劣ることが分かる。
本発明に係る上記態様によれば、高い強度および優れた穴広げ性を有し、且つ成形損傷の発生を抑制できる鋼板およびその製造方法を提供することができる。また、本発明に係る好ましい態様によれば、より優れた穴広げ性を有する鋼板およびその製造方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.030~0.180%、
    Si:0.030~1.400%、
    Mn:1.60~3.00%、
    Al:0.010~0.700%、
    P :0.0800%以下、
    S :0.0100%以下、
    N :0.0050%以下、
    Ti:0.020~0.180%、
    Nb:0.010~0.050%、
    Mo:0~0.600%、
    V :0~0.300%、
    Ti、Nb、MoおよびVの合計:0.100~1.130%、
    B :0~0.0030%、並びに
    Cr:0~0.500%
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    金属組織が、面積率で、
    ベイナイト:80.0%以上、
    フレッシュマルテンサイトおよび焼き戻しマルテンサイトの合計:20.0%以下、並びに、
    パーライト、フェライトおよびオーステナイトの合計:20.0%以下であり、
    板厚1/4位置の集合組織の結晶方位分布関数において、
    φ=45°断面におけるΦ=20~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Aと、
    前記φ=45°断面におけるΦ=120~60°、φ=30~90°の極密度の最大値Bとの比であるA/Bが1.50以下であり、
    前記最大値Aと前記最大値Bとの合計が6.00以下であり、
    引張強さが1030MPa以上である
    ことを特徴とする鋼板。
  2. 前記フレッシュマルテンサイトおよび前記焼き戻しマルテンサイトの面積率の合計のうち、前記焼き戻しマルテンサイトの面積率の割合が80.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Mo:0.001~0.600%、
    V :0.010~0.300%、
    B :0.0001~0.0030%、および
    Cr:0.001~0.500%
    からなる群のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 請求項1に記載の鋼板の製造方法であって、
    請求項1に記載の化学組成を有するスラブを1200℃以上の温度域で30分以上保持する工程と、
    前記保持後の前記スラブに対して、幅方向に3~15%のひずみを付与する工程と、
    前記ひずみを付与した前記スラブに対し、最終圧下率が24~60%、且つ仕上げ圧延温度が960~1060℃の温度域となるように仕上げ圧延を行う工程と、
    前記仕上げ圧延後の鋼板を、900~650℃の温度域の平均冷却速度が30℃/秒以上となるように冷却し、400~580℃の温度域で巻取りを行う工程と、
    を備えることを特徴とする鋼板の製造方法。
  5. 前記巻取り後の前記鋼板を600~750℃の温度域で60~3010秒保持する工程と、
    を備えることを特徴とする請求項4に記載の鋼板の製造方法。
JP2023502071A 2021-02-26 2021-11-19 鋼板およびその製造方法 Active JP7513937B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021030349 2021-02-26
JP2021030349 2021-02-26
PCT/JP2021/042627 WO2022180956A1 (ja) 2021-02-26 2021-11-19 鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2022180956A1 JPWO2022180956A1 (ja) 2022-09-01
JP7513937B2 true JP7513937B2 (ja) 2024-07-10

Family

ID=

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009019265A (ja) 2007-06-12 2009-01-29 Nippon Steel Corp 穴広げ性に優れた高ヤング率鋼板及びその製造方法
WO2012141265A1 (ja) 2011-04-13 2012-10-18 新日本製鐵株式会社 局部変形能に優れた高強度熱延鋼板とその製造方法
WO2020110843A1 (ja) 2018-11-28 2020-06-04 日本製鉄株式会社 熱延鋼板

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009019265A (ja) 2007-06-12 2009-01-29 Nippon Steel Corp 穴広げ性に優れた高ヤング率鋼板及びその製造方法
WO2012141265A1 (ja) 2011-04-13 2012-10-18 新日本製鐵株式会社 局部変形能に優れた高強度熱延鋼板とその製造方法
WO2020110843A1 (ja) 2018-11-28 2020-06-04 日本製鉄株式会社 熱延鋼板

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6264507B2 (ja) 高強度亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JP5983895B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP6409917B2 (ja) 熱延鋼板の製造方法および冷延フルハード鋼板の製造方法
WO2016171237A1 (ja) めっき鋼板
JP5971434B2 (ja) 伸びフランジ性、伸びフランジ性の面内安定性および曲げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板ならびにその製造方法
KR102643398B1 (ko) 핫 스탬프 성형체
WO2013099235A1 (ja) 高強度薄鋼板およびその製造方法
JP6791371B2 (ja) 高強度冷延鋼板及びその製造方法
JP4790639B2 (ja) 伸びフランジ成形性と衝突吸収エネルギー特性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法
JP2017048412A (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、およびそれらの製造方法
WO2013046476A1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
WO2016194272A1 (ja) 高強度冷延鋼板、高強度めっき鋼板及びこれらの製造方法
KR20140048331A (ko) 고강도 용융 아연 도금 강판 및 그 제조 방법
JP2004315900A (ja) 伸びフランジ成形性に優れた高強度鋼板およびその製造方法
JP6787535B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JPWO2020070810A1 (ja) 浸炭用鋼板、及び、浸炭用鋼板の製造方法
WO2021070925A1 (ja) 鋼板及びその製造方法
WO2020145256A1 (ja) 鋼板及びその製造方法
JP6477988B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
WO2022180954A1 (ja) 鋼板およびその製造方法
WO2017168961A1 (ja) 薄鋼板およびめっき鋼板、並びに、熱延鋼板の製造方法、冷延フルハード鋼板の製造方法、薄鋼板の製造方法およびめっき鋼板の製造方法
JP4360319B2 (ja) 高張力溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法
JP7513937B2 (ja) 鋼板およびその製造方法
WO2022180956A1 (ja) 鋼板およびその製造方法
JP7513936B2 (ja) 鋼板およびその製造方法