JP7507446B1 - コリオリ質量流量計 - Google Patents

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Abstract

測定対象として腐食性流体を含み、金属イオンの溶出の恐れがないコリオリ質量流量計を提供する。測定流体が流れる直管型の配管(1)と、配管(1)を加振する加振器(2)と、配管(1)の振動状態を検出する第1振動検出器(3)および第2振動検出器(4)と、配管(1)の両方の端部を振動に対する固定端となるように支持する支持体(8a)と(8b)とを有し、加振器(2)、第1振動検出器(3)および第2振動検出器(4)は支持体(8a)と(8b)に連結されたフレーム(9a)、(9b)によって支持され、第1振動検出器(3)および第2振動検出器(4)により検出される振動波形の位相のずれに基づいて配管を流れる流体の質量流量を求める。配管(1)、支持体(8a)、(8b)およびフレーム(9a)、(9b)は高弾性プラスチック材料で形成されている。

Description

本発明は、振動する流路中の流体により発生するコリオリ力の作用により捩り振動を検出することによって流体の質量流量を測定するコリオリ質量流量計に関するものである。
従来、質量流量の直接測定手段としてコリオリ質量流量計が用いられている。これは、配管内を流れる流体が回転運動をした場合に、流れのベクトルと回転の角速度ベクトルのベクトル積に比例するコリオリ力を受けるが、このコリオリ力が質量流量に比例することを利用した流量計である。通常は配管を振動し、内部流体のコリオリ力の作用によって生じる配管の弾性変形を検出する方法が採用されている。
コリオリ質量流量計は計測対象の流体を通過させる配管を加振器で強制的に加振し、流体の質量流量に応じて流路の上流側と下流側で発生する振動の位相差を検出し、上記位相差から質量流量が求められている。コリオリ質量流量計は効率よく振動を発生させるために、流体を通過させる配管の固有振動数で加振するのが一般的である。この配管の固有振動数を決定する主な要素は、配管材料の弾性率(縦弾性係数)と配管の形状であり、金属製の配管は、この弾性率が温度変化に対して比較的安定しており、形状が経年変化しにくいので、コリオリ質量流量計の配管として多用されている。
この種の先行技術として、金属を腐食するような流体を測定対象とする場合に、腐食性流体の測定に強いコリオリ質量流量計として、図2(a)に示すように、固有振動数で加振されるU字形複合湾曲導管21を固着部22によって支持部材23に固着し、図2(b)に示すように、2重構造のU字形複合湾曲導管21の外側をエリンバー合金24とし、内側25にフッ素樹脂コーティングを施したものが知られている(特許文献1)。ところが、このコリオリ質量流量計はU字形導管からなるため、曲管部へのフッ素樹脂コーティングが困難である。
また、フッ素樹脂コーティングは厚膜化が困難であることと、確実にコーティングが施されていない場合には流体内への金属イオンの溶出が懸念されることから、配管材料として金属を使用して欲しくないという要請がある。そこで、図3に示すように、配管をパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)で形成したコリオリ質量流量計が提案されている(特許文献2)。図3において、供給管31から処理材料の流体を受け取り、処理接続部32を経て配管33に流体を供給し、配管33は励振器34により、その流体の流れと共鳴する周波数で加振され、流体は配管33から、処理接続部35、流体の流れの向きを直す管36、処理接続部37、戻り配管38、処理接続部39を経て出口配管40に至る。ここで、配管33および戻り配管38はPFA製である。しかし、フッ素系樹脂のみで配管を構成した場合には、温度による弾性率の変化や経年のクリープ現象の恐れがある。コリオリ質量流量計は、その原理上、配管を振動させて測定を行うが、弾性率の変化は、その振動に影響を与えるため、質量流量の正確な測定が困難である。
また、図4に示すように、各々が1つ以上の直線状の部分を有し、基部に一体に接続された2つの流量検知用部材を有する、コリオリ質量流量計のサブアセンブリ構造を弾性高分子材料から形成したコリオリ質量流量計が提案されている(特許文献3)。図4において、弾性高分子材料のブロック1個からCNC加工された高分子材料でできた中実サブアセンブリ51には、Uの中心線に沿って横方向に、完全に端から端までにわたる流路52と53が形成されるとともに、流路54、55、56、57が、Uの中心線に沿って支持部58を完全に貫通するように形成されている。さらに、図5、図6に示すように、本体61、本体61に一体化され、それぞれが溶接面を含む少なくとも4つの管状ポート延在部62A、62B、62C、62D、マニホールド流れ通路63A、63B、63C、63D、本体61および上記少なくとも4つの管状ポート延在部に一体化された絶縁プレート64A、64B、64C、64D、2つの開放端を含む2つの流れ感知部材65A、65Bとを同じポリマー材料から作製するコリオリ質量流量計が提案されている(特許文献4)。また、図7に示すように、流れ感知部材71A、71Bと、流れ感知部材71A、71Bを保持する動的応答性支持体72を含み、流れ感知部材はPFA、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂とし、支持体材料の熱膨張係数がフッ素系樹脂にほぼ近いか、又はそれよりも小さいコリオリ質量流量計が提案されている(特許文献5)。
しかしながら、特許文献3~5に開示されたコリオリ質量流量計では、温度による弾性率の変化には対応することができない。すなわち、配管材料のばね定数(ヤング率に比例)は温度に応じて変化し、コリオリ質量流量計の精度に直接影響する。流体及び/又は周囲の温度によって流量検知用要素の温度も変わるため、コリオリ質量流量計で流量測定の精度を維持するには、温度補償が必要である。対温度についてのヤング率のデータは、従来技術のコリオリ質量流量計の作製に用いられているほとんどすべての金属合金(ステンレス鋼またはチタンなど)についてのものが、NIST(または他の技術資料)から入手可能である。しかしながら、弾性ポリマーについては、これに匹敵するようなデータ(弾性率対温度など)は通常、入手できないか、刊行物に記載されている程度のわずかな温度しかないかのいずれかである。よって、コリオリ質量流量計の製造にプラスチックを用いることを記載している従来技術は、流量検知用要素の温度を検知するための手段についても言及しているものの、特定の弾性高分子材料に対して一定範囲の動作温度にわたって有効温度補償をいかに実現するかが記載されていない。重大なことに、このような温度補償がなければ、センサの温度が較正時の温度とは実質的に異なってしまうような用途では、流量計は使用できなくなってしまう。
さらには、微小流量の流体に適用することを目的とする場合には、感度の高いコリオリ質量流量計とするために、2つの振動検出器の間隔をできるだけ大きくすることと、配管の捩ればね定数を小さくして、捩れやすくすることが必要である。
例えば、特許文献6には、図8に示すように、流路81に接する内管82と、内管82の外周面に積層された外管83からなる、流体の流れる配管を有するコリオリ質量流量計が提案されている。ここで、内管82はフッ素系樹脂とし、外管83は未硬化のエポキシ樹脂にガラス繊維が配置されたプリプレグを内管82の外周に巻き付けて硬化させてなるもので、弾性率が内管82よりも大きく、外管83は内管82の外周面84に整列して並べられた繊維F1、F2と、該繊維F1、F2を内管82に固着あるいは押圧固定可能に形成させるための樹脂85を有する。また、特許文献7には、図9に示すように、メインフレーム91とサブフレーム92からなるフレームと、アウターケース93と、振動チューブ94とを有し、振動チューブ94の計測部分を炭素繊維で補強されたフッ素樹脂とし、流体を受け入れ且つ流体を排出する振動チューブの給排部分のうち入口部分と出口部分を繊維で補強しないフッ素樹脂とするコリオリ質量流量計が提案されている。
そもそも、微小流量の流体の質量流量を高精度でコリオリ質量流量計が計測するためには、上記のように、2つの振動検出器の間隔(d)をできるだけ大きくすることと、配管の捩ればね定数(Kθ)を小さくすることが必要である。
ところが、一般的なU字状の配管の場合、上記間隔dを大きくすることで捩り方向の慣性モーメントが大きくなり、同時に捩ればね定数Kθが大きくなってしまい、捩れの振動数(コリオリ振動数)が小さくなる。コリオリ振動数が小さくなると、外部からの振動ノイズの影響を受けやすくなってしまう。さらに、上記間隔dを大きくすると、流体の圧力損失が大きくなってしまい、最大流量の制限を受けてしまうだけでなく、配管内部の流体が完全に排出されずに残って付着するため、半導体製造プロセス、薬剤製造プロセスなどの製造設備に極めて高い清浄度が要求される製造プロセスにおいては、定置洗浄や定置殺菌を実施しても、配管内部を完全に清浄にすることは困難である。
配管の捩ればね定数Kθをできるだけ小さくするためには、曲げ剛性EI(E:弾性率、I:断面二次モーメント)をできるだけ小さくすることが求められる。これは、配管を可能な限り細く、肉厚を薄くすることを意味する。このようにすれば、微小流量の流体を計測するという目的には合致するが、配管を細くすれば、圧力損失が大きくなる。
結局、内管の外周面を包む外管を弾性率の大きい繊維強化樹脂とする、2重構造(特許文献6)では、配管の内径を小さくしても肉厚が厚くなってしまうため、捩れのばね定数Kθを小さくすることには制約があり、微小流量の流体を高精度で計測するための感度の向上には限界がある。
特許文献2や5のコリオリ質量流量計は、配管をフッ素樹脂で形成しているが、その密度は金属に比べて小さいので、同じ大きさであれば、配管部の質量は金属製に比べて小さくなる。配管に負荷される加振器と2つの振動検出器には一対のコイルと磁石が採用されることが多いので、フッ素樹脂などの弾性ポリマーに対して比較的重い質量が集中するようになる。このように、配管に集中質量が付加されると、流体の密度計測に影響し、感度を落とし精度を低下させてしまう。特許文献5の段落0029には、「光学センサなどの他のタイプの運動センサも使用することができる。」と記載されているが、運動センサの他の形態を述べているに過ぎず、配管に付加される集中質量が流体の密度計測に与える影響に言及している訳ではない。
また、特許文献8は、外乱振動、設置条件、配管ストレス及び熱影響の少ない並列2本の弓形管式のコリオリ質量流量計を提供することを目的とし、図10に示すように、弓形に湾曲した2本のフローチューブ101、102と、フローチューブの各々の両端部が溶接により結合された入口側マニフォールド及び出口側マニフォールド103と、一方のフローチューブを他方のフローチューブに対して互いに反対位相で共振駆動させる駆動装置104と、該駆動装置104の取付位置に対して左右両側の対称位置に設置されてコリオリの力に比例した位相差を検出する一対の振動検出センサ105、106とを備えているコリオリ質量流量計が提案されている。
しかし、この特許文献8を含めて、特許文献1-7のいずれも流体密度の計測に関しては、なんら言及されていない。
さらに、特許文献9には、二重直管式コリオリ流量計が開示されている。この二重直管式コリオリ流量計は、図11に示すように、両端に接続フランジ111を有する中空円筒状の外筐112を有し、外筐112内には、該外筐112と同軸に、被測定流体が流れる直管状のフローチューブ113が配設され、このフローチューブ113の外側には、同心二重管を構成するように、結合プレート114を介して、中空筒状アウターチューブ115がその両側において同心に固定されており、アウターチューブ115の中央部にバランスウエイト116が取り付けられ、さらに駆動装置117がアウターチューブ115に取り付けられて、フローチューブ113をその固有振動の一次モードで振動させ、流体が流れたとき、振動のスピードが最大となる中央部を境に、流入側と流出側ではコリオリ力が反対方向となりフローチューブ113はうねるようにたわみ、これを二次モード成分と称するが、フローチューブ113は、駆動装置による加振に基づく一次モードの振動と、コリオリ力に基づく二次モードの振動が重畳される形で変位し、一対のセンサ118が、駆動装置117の両側で二次モード成分が最大となる位置で、アウターチューブ115に設置されて、コリオリの力によるフローチューブ113の位相差を検知し、これによって質量流量を知ることができる。
しかし、特許文献9に開示された二重直管式のコリオリ流量計は、測定流体の温度が変わり、フローチューブとアウターチューブに非常に大きな温度差ができた場合には、長手方向にストレスが発生して、熱応力の発生によるバネ定数の変化によりチューブの固有振動数が変化する。これによって、エネルギーバランスが崩れ、共振駆動することが困難であるという欠点がある。
実開昭64-15921号公報 特表2005-510703号公報 特許第5602884号明細書 特許第6257772号明細書 特許第6581309号明細書 特許第5086814号明細書 特許第5582737号明細書 特許第3656947号明細書 米国特許第6336369号明細書
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、測定対象として腐食性流体を含み、金属イオンの溶出の恐れがないコリオリ質量流量計を提供することにある。また、本発明の目的は、配管の細径化が可能で、温度変化に対して安定した測定が可能なコリオリ質量流量計を提供することにある。本発明のさらなる目的は、外部振動による影響が少なく、低密度の流体を高感度で測定できるコリオリ質量流量計を提供することにある。本発明のさらなる目的は、小型化しても、微小流量の流体の質量流量と密度を高感度で測定できるコリオリ質量流量計を提供することにある。本発明のさらなる目的は、振動ノイズや粘度の影響が少ないコリオリ質量流量計を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、次のような手段を採用する。
(1)第一の発明は、測定流体が流れる直管型の配管と、該配管を加振する加振器と、上記配管の振動状態を検出する第1および第2振動検出器と、上記配管の両方の端部を振動に対する固定端となるように支持する支持体とを有し、上記加振器、第1および第2振動検出器は上記支持体に連結されたフレームによって支持され、上記第1および第2振動検出器により検出される振動波形の位相のずれに基づいて配管を流れる流体の質量流量を求めるコリオリ質量流量計において、上記配管、支持体およびフレームは高弾性プラスチック材料で形成されていることを特徴とするコリオリ質量流量計である。
(2)第二の発明は、高弾性プラスチック材料が炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)であることを特徴とする上記(1)に記載のコリオリ質量流量計である。
(3)第三の発明は、熱可塑性プラスチックがフッ素樹脂であることを特徴とする上記(2)に記載のコリオリ質量流量計である。
(4)第四の発明は、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とした場合、m3はm1とm2の合計よりも大きいことを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計である。
(5)第五の発明は、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とし、m1とm2とm3の合計をmとし、配管の質量をMtとし、配管内にある流体の質量をMfとし、M=Mt+m+Mfとした場合、m=0.4M以下であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計である。
(6)第六の発明は、第1および第2振動検出器は加振器を中心とする対称位置にある加速度センサであることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計である。
(7)第七の発明は、第1および第2振動検出器は加振器を中心とする対称位置にある音響センサであることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計である。
(8)第八の発明は、加振器は圧電素子であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計である。
(9)第九の発明は、測定流体が流れる直管型の配管と、該配管を加振する加振器と、上記配管の振動状態を検出する第1および第2振動検出器と、上記配管の両方の端部を振動に対する固定端となるように支持する左側の支持体と右側の支持体とを有し、上記加振器、第1および第2振動検出器は上記支持体に連結された第1および第2の2本のフレームの少なくともいずれかによって支持され、上記第1および第2振動検出器により検出される振動波形の位相のずれに基づいて配管を流れる流体の質量流量を求めるコリオリ質量流量計において、上記配管は1本の直管で形成され、第1フレームと第2フレームは配管の長手方向中心軸に対して対称位置にあり、上記加振器は左側の支持体および右側の支持体から等距離にある第1フレーム中央部に位置し、上記第1振動検出器と第2振動検出器は第1フレーム上において加振器を中心とする対称位置にあり、さらに、配管の長手方向中心軸を挟んで、第1フレームに支持されている第1振動検出器と第2振動検出器に対して対称位置にあるように、第2フレームにも第1振動検出器と第2振動検出器が支持されていることを特徴とする。
(10)第十の発明は、第1振動検出器の出力の差分をとる差動回路と、第2振動検出器の出力の差分をとる差動回路を備え、上記両差動回路の出力の位相差を測定することによって同相信号が除去されるようにしたことを特徴とする上記(9)に記載のコリオリ質量流量計である。
(11)第十一の発明は、第1および第2振動検出器が静電容量センサであり、配管には金属薄膜が付着されていることを特徴とする上記(10)に記載のコリオリ質量流量計である。
(12)第十二の発明は、第1および第2振動検出器が光学式変位センサであり、配管には金属薄膜が付着されていることを特徴とする上記(9)ないし(11)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計である。
(13)第十三の発明は、加振器は、永久磁石などの磁性体と当該磁性体に対応する電磁駆動用コイルとで構成され、上記磁性体は配管に支持されて配管を加振し、配管の長手方向中心軸に対して上記磁性体と対称位置にあるように磁性体と同一形状で同一質量の非磁性体が配管に支持されていることを特徴とする上記(9)ないし(11)のいずれかに記載のコリオリ質量流量計である。
(14)第十四の発明は、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とした場合、m3はm1とm2の合計よりも大きく、第1フレームに支持されている第1振動検出器の質量と第2フレームに支持されている第1振動検出器の質量がともにm1/2であり、第1フレームに支持されている第2振動検出器の質量と第2フレームに支持されている第2振動検出器の質量がともにm2/2であり、磁性体と非磁性体の質量がともにm3/2であることを特徴とする上記(13)に記載のコリオリ質量流量計である。
配管、支持体およびフレームを形成する炭素繊維強化熱可塑性プラスチックが炭素繊維強化フッ素樹脂であれば、その曲げ弾性率は約32GPaであり、ステンレス鋼(SUS304)の縦弾性率193GPaの17%程度である。また、炭素繊維強化フッ素樹脂の線膨張率(10-6/℃)はゼロ近傍の数値であり、一方、ステンレス鋼(SUS304)の線膨張率(10-6/℃)は16である。従って、炭素繊維強化フッ素樹脂で配管、支持体およびフレームを形成すれば、温度によって寸法変化しにくく、しかも耐薬品性を備えることができる。
流体密度の計測は、流体密度の変化に対応するコリオリ振動周波数の変化を測定することによって求める。コリオリ振動周波数変化の傾きは、配管の質量に比べて振動を検出する振動検出器の質量が一定程度大きいと、上記傾きが緩やかになり、流体密度の変化量に対してコリオリ振動周波数の変化量が小さくなり、検出感度を低下させてしまう。そこで、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とした場合、m3はm1とm2の合計よりも大きく、m1とm2とm3の合計をmとし、配管の質量をMtとし、配管内にある流体の質量をMfとし、M=Mt+m+Mfとした場合、m=0.4M以下であることにより、流体密度の検出感度を向上することができる。
図1は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第一実施例の概略構成図である。 図2(a)は特許文献1のコリオリ質量流量計の概略構成図、図2(b)はその固着部の拡大断面図である。 図3は特許文献2のコリオリ質量流量計の平面図である。 図4は特許文献3のコリオリ質量流量計の概略構成を示す図である。 図5は特許文献4のコリオリ質量流量計の本体、管状ポート延在部、マニホールド流れ通路および絶縁プレートの概略構成を示す図である。 図6は特許文献4のコリオリ質量流量計の流れ感知部材の概略構成を示す図である。 図7は特許文献5のコリオリ質量流量計の概略構成を示す図である。 図8は特許文献6のコリオリ質量流量計の配管の拡大断面図である。 図9は特許文献7のコリオリ質量流量計の概略構成を示す図である。 図10は特許文献8のコリオリ質量流量計の部分断面と、マニホールド部で切断した側面を示す図である。 図11は特許文献9の二重直管式コリオリ流量計を示す概略図である。 図12(a)(b)は直管型のコリオリ質量流量計の作動原理を示す図で、図12(a)は配管に流体が充填され、流速v=0の場合に配管を加振器で振動させている状態を示し、図12(b)は配管内を流体が流束v(≠0)で流れている場合に、配管に捩れ振動が生じている状態を示し、図12(c)は図12(b)の場合において、加振器に対して対称位置に配置された第1振動検出器と第2振動検出器によって検出された正弦波形を示す図である。 図13は配管の材料がCFRTP(記号「●」)、SUS316(記号「▲」またはPFA(記号「■」)である場合の配管全体の質量M(Mt+m+Mf)に対する付加質量m(m1+m2+m3)の比率を横軸とし、周波数密度余裕度(Hz/(g/cm))を縦軸とする図で、m3=m1+m2の場合を示す。 図14は配管の材料がCFRTPである場合の配管全体の質量M(Mt+m+Mf)に対する付加質量m(m1+m2+m3)の比率を横軸とし、周波数密度余裕度(Hz/(g/cm))を縦軸とする図で、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とした場合、記号「■」、「▲」、「●」は、それぞれ、m3/(m1+m2)の比率が、3/1、2/1、1/1の場合を示す。 図15は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第二実施例の概略構成図である。 図16は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第三実施例の概略構成図である。 図17は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第四実施例の概略構成図である。 図18は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第五実施例の概略構成図である。
以下に、本発明の具体的な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な変形や修正が可能である。
フッ素樹脂には様々なものがあるが、本発明で用いるフッ素樹脂としては、溶融成形が可能なものが好ましい。例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などを使用することができる。
本発明で用いる炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル繊維を原料とするPAN系、石炭タールや石油ピッチを原料とするピッチ系(内部構造により等方性、メソフェーズなどがある。)、ビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とするセルロース系、炭化水素などを原料とする気相成長系などがある。またこれらの黒鉛繊維でも良い。またこれらに、ニッケル、イッテルビウム、金、銀、銅などの金属を、メッキ法(電解、無電解)、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、蒸着法などにより少なくとも1層以上被覆してなる金属被覆炭素繊維でも良い。また、これらを2種類以上ブレンドして構成しても良い。
本発明の配管、支持体およびフレームは、炭素繊維強化フッ素樹脂から構成されるのが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲で、フッ素樹脂と炭素繊維以外の添加剤を含有してもよい。係る添加剤としては、難燃剤、導電付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
本発明の配管、支持体およびフレームは、射出成形により成形されることが好ましい。射出成形は成形サイクルあるいは複雑形状の成形ができるなどの点から、生産性が高く、低コスト化を実現することができる。
本発明の配管、支持体およびフレームを射出成形にて作製する場合には、以下のような条件で行うのが好ましい。スクリューは、通常、供給部、圧縮部、計量部よりなり、混練程度を最も軽くするフルフライト形状が好ましく、一部ニーディング部分を入れるなどして、混練のレベルを調節して使用しても構わない。できるだけニーディング部分を少なくしたスクリューを用いて成形することで繊維折損を抑えることができる。またシリンダーとスクリューのクリアランスも繊維長に大きく影響し、クリアランスを大きくすることで、混練を軽くすることができ、繊維の折損を抑えることができる。さらにノズル径の大きさも繊維長に影響しており、ノズル径が小さいと、溶融した成形材料が通過する際に高い剪断がかかり、繊維を折損してしまう。ノズル径を大きくすることでも繊維長を長くすることができる。また金型のランナーを大きくすることでも剪断を抑えることができ、繊維長を長くすることが可能となる。さらにホットランナーにすること、あるいは金型の温調を適切にすることで、流動樹脂の粘度を低くでき、繊維の折損を抑えることができる。
成形条件については、シリンダー温度をマトリックス樹脂が分解しない範囲で高温にし、スクリュー回転数を低く、計量時間を短くし、背圧を低く設定する方が好ましい。シリンダー温度を上げることで、溶融樹脂の粘度が低下し、繊維にかかる剪断力が小さくなり、折損を抑えることができる。またスクリュー回転数を低く、計量時間を短くし、背圧を低く設定すると混練および剪断を極力小さくして成形することができ、繊維長の長い成形品が得られ、異方性が低く強度の高い成形品となる。成形品の強度異方性が低くなるのは、繊維長がある程度長いと(1mm以上)、成形品内部では樹脂流れに繊維が抵抗して垂直方向に配向し、金型により瞬時に冷却されて固化する成形品表面では繊維は樹脂流れ方向に配向しており、その結果、繊維が一方向に強化された形態ではなく、各方向に強化された形態となり成形品の異方性が低くなるものと思われる。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性プラスチックにおける炭素繊維の体積含有率は、20~40%が好ましく、25~35%がより好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な変形や修正が可能である。
芝浦機械社製二軸押し出し機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度280℃、回転数150rpm)を用いて、三菱ケミカル社製の連続した炭素繊維束を6mm長にカットしたチョップド糸を水分率0.05%以下になるように十分乾燥した後、これをサイドホッパーから投入し、また熱可塑性樹脂としてダイキン工業社の完全フッ素化された高流動性フッ素樹脂「PFA AP-201SH」をメインホッパーから投入し、これらを十分混練した状態で不連続の炭素繊維を含有するガットを連続的に押し出し、これを冷却後、カッターで5mm長に切断して、炭素短繊維成形材料を得た。
上記した成形材料を80℃にて5時間以上真空中で乾燥させた後、スクリュー形状をフルフライト形状とした「油圧式横型射出成形機」を使い、図1に示すような形状の成形品を得た。
図1において、1は測定流体が10から11に向かって流れる直管型の配管で、この配管1の内部の流路に振動板(図示せず)が流れ方向に設けられ、上記振動板の流れ方向の2点は2つの支持部材(図示せず)により配管1の内壁に支持されている。上記振動板には永久磁石などの磁性体(図示せず)が固定されており、上記磁性体に対向する位置に加振機2が配置されるとともに、上記2つの支持部材の各々の位置から等しい距離に第1振動検出器3と第2振動検出器4が配置されており、第1振動検出器3と第2振動検出器4は加振機2を中心とする対称位置にある。
上記2つの支持部材の位置は、振動板を完全に自由な状態においたときの一次固有振動モードの節に相当する位置に設置する。
そして、加振器2を加振回路5により加振し、第1振動検出器3と第2振動検出器4の出力信号を位相差測定器6に入力する。上記加振回路5は、配管1内が流体で満たされた状態における振動板の一次曲げ固有振動数の周期で加振する。振動板の振動は、第1振動検出器3と第2振動検出器4により、振動変位もしくは振動波形として計測する。位相差測定器6は、第1振動検出器3と第2振動検出器4による計測信号を加振回路5にフィードバックし、第1振動検出器3と第2振動検出器4の出力信号が常に最大となるように、加振周波数を変更する。また、位相差測定器6は、第1振動検出器3と第2振動検出器4の出力信号の位相差を測定し、その測定結果を演算回路7に出力する。この演算回路7は、位相差測定器6の測定結果に基づいて測定流体の質量流量を算出することができる。
なお、配管1の両方の端部を振動に対する固定端となるように支持する左側の支持体8aと右側の支持体8bを有し、上記加振器2、第1振動検出器3および第2振動検出器4は上記支持体8aと8bに連結された第1フレーム9aによって支持されている。配管1の長手方向中心軸1aに対して第1フレーム9aと対称位置にあるように配置された第2フレーム9bも支持体8aと8bに連結されている。加振器2は左側の支持体8aおよび右側の支持体8bから等距離にある第1フレーム9aの中央部に位置し、第1振動検出器3および第2振動検出器4は第1フレーム9a上において加振器2を中心とする対称位置にある。
加振回路5は加振器2を加振し、配管1の内部の流路に設けられた振動板を振動させる。このとき振動板と共に、振動板に接する流体も付加質量として振動する。そこで、加振回路5、加振器2によって、第1振動検出器3と第2振動検出器4の出力信号が常に最大となるように、流体の付加質量分も合わせた一次曲げ固有振動数で振動板を加振する。
この結果、流体の流れが無い場合、振動板は2つの支持部材間の中央を振動モードの腹とする一次曲げ固有振動モードで振動し、第1振動検出器3と第2振動検出器4で計測する2点の振動波形は同位相、同振幅となる。
一方、流体の流れがある場合は、付加質量が移動速度を持つため、振動板にコリオリ力が作用し、振動板の中央を捩るような振動が加わり、第1振動検出器3と第2振動検出器4における振動波形に位相のずれが発生する。この位相のずれを位相差測定器6で計測し、その計測結果を演算回路7に入力することにより、演算回路7で質量流量を求めることができる。
すなわち、振動板に加わるコリオリ力Fは、付加質量mと振動の角速度ω、流体の移動速度Vによって、次式で表される。
[F]=-2m[ω]・[V]
上記付加質量mは、流体密度と振動板の平面寸法、固有振動モードの関数であり、実際の計測システムでは、密度が既知の流体に関する実験定数に基づき、密度の関数として表現することができる。また、第1振動検出器3と第2振動検出器4の出力信号を加振回路5にフィードバックし、常に振動振幅が最大となるように周波数を掃引するシステムとなっているので、一次固有振動数の絶対値の計測結果から、未知の流体の密度を求めることができる。従って、計測対象とする流体の密度と質量流量を同時に求めることができる。
上記のように配管1内の軸方向に流体からのコリオリ力を受ける専用の振動板を配置し、この振動板を自由状態での一次固有振動モードの節に相当する2点で支持して一次曲げ固有振動数で励振させると共に、2つの支持点間に配置した第1振動検出器3と第2振動検出器4により振動波形を検出し、その位相のずれに基づいて質量流量を求めるようにしたので、配管全体を振動させる必要がなく、応答性に優れた小型の質量流量計とすることができる。
また、振動板上に固定した永久磁石などの磁性体と配管1の外部に設けた加振器2とで振動板を加振し、上記振動板は、該振動板上に固定した磁性体の質量を含めて、支持点に対する一次モーメントが零となるような質量分布を持たせたので、支持点の振動によって一次固有振動が励起されることがなく、外部振動の影響を受けにくい質量流量計とすることができる。
本発明は、「第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とした場合、m3はm1とm2の合計よりも大きく、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とし、m1とm2とm3の合計をmとし、配管の質量をMtとし、配管内にある流体の質量をMfとし、M=Mt+m+Mfとした場合、m=0.4M以下であること」を重要な特徴としているので、以下、この特徴について説明する。
図12(a)(b)に示すように、コリオリ質量流量計の測定流体が流れる配管1aの中央に設置した質量がm3である加振器に対して対称位置に配置されている、質量がm1である振動検出器と質量がm2である振動検出器の2つの振動検出器から出力される2つの正弦波形の間の位相差時間Δφは、配管1a内を流速vで流れる流体の質量流量に比例する。
また、上記正弦波形のコリオリ周波数ωは、密度ρと以下の関係にある。
即ち、配管1aの長さをL、配管1aの弾性率をE、断面2次モーメントをI、断面積をAとすると、
ω∝(1/L)(EI/ρA)1/2 (1)
ここで、配管1aの外径をD、内径をDとすると、断面2次モーメントIは、
I∝D -D (2)
と表され、配管1aの寸法のみの関数である。
また、上式(1)の分母のρAは配管1aの単位長の全質量であるから、配管1aの密度をρt、配管1a内を流れる流体の密度をρfとすると、配管1aの単位長当たりの質量mtは「ρt×π×(1/4)(D -D )」となり、流体の単位長当たりの質量mfは「ρf×π×(1/4)(D )」となり、ρAは「mt+mf」に置き換えることができる。
したがって、配管1aの形状や寸法が同じで、同じ流体が流れているのであれば、コリオリ周波数ωは、配管1aの材料に依存する弾性率Eと密度ρtのみの関数となる。そこで、配管1aの形状と寸法が同じであることを前提条件にし、配管1aの質量をMt、配管1a内の流体の質量をMfとすると、mt、mfを、それぞれMt、Mfと置き換えることができる。さらに、振動検出器の質量m1、m2、加振器の質量m3のような付加質量は、配管1aの質量Mtや流体の質量Mfに依存することなく配管1aに付加されているため、配管1aの全質量Mは、M=Mt+m+Mfと表すことができる。
したがって、上式(1)は、下式(3)で表すことができる。
ω∝(EI/M)1/2 (3)
配管1aの形状、寸法および材料が同じであるとすれば、配管1aの全質量M(Mt+m+Mf)の中で、変数は流体の質量Mfであり、Mfは密度ρfの関数である。従って、上式(3)に従って、コリオリ周波数ωは、密度ρfを関数とすることが推定される。すなわち、コリオリ周波数ωの微小量△ωは、流体密度の微小量△ρfの関数であることが推定される。一般的に、コリオリ質量流量計(密度計でもある)の流体密度変化量に対する感度(周波数変化量)は周波数密度余裕度(Hz/(g/cm)と呼ばれている。流体密度の変化量(微小量△ρf)は流体密度の計測分解能と換言することができ、コリオリ周波数ωの変化量(微小量△ω)は、コリオリ周波数の計測分解能と換言することができるので、周波数密度余裕度(Hz/(g/cm))に基づいて、流体密度計測感度を推定することができると言える。
流体が気体の場合、圧縮性流体であるため、圧力と温度を固定して比較する必要がある。一般的な1気圧、0℃の場合を考えると、水素ガスの密度は、0.0898(g/L)、ヘリウムガスの密度は、0.1769(g/L)である。両者の密度差分は、0.0871(g/L)であり、この密度差分を検出できる感度が必要である。
ここで、図12(c)にみられる2つの振動検出器から出力される2つの正弦波形の位相差時間Δφとコリオリ周波数ωの検出方法の一般的な手法について述べておく。図1において、第1振動検出器3と第2振動検出器4からの出力信号は位相差測定器6に入力される。位相差測定器6は、プリアンプとアナログ-デジタル変換回路によって構成されており、位相差測定器6においてデジタル信号に変換された後、演算回路7にてソフトウェア演算され、位相差時間Δφとコリオリ周波数ωを演算によって求めることができる。したがって、一般的には、位相差時間Δφとコリオリ周波数ωの検出分解能は、位相差測定器6のアナログ-デジタル変換分解能と演算回路7の高速フーリエ変換分解能によって制約を受ける。
一般的には、測定流体が流れる配管の形状と寸法等によって支配的に決定されるコリオリ周波数ωは100Hz~1kHz程度の周波数であり、この帯域に対して、適切な価格の一般的な位相差測定器6のアナログ-デジタル変換分解能と演算回路7の高速フーリエ変換分解能帯域幅は、1mHz程度である。以上の見積から周波数分解能を1mHzとした場合、流体密度計測分解能Δρ=0.0871(g/L)=0.0871(mg/cm)とコリオリ周波数計測分解能Δω=1mHzとから、周波数密度余裕度に換算すると、Δω/Δρ=1(mHz)/0.0871(mg/cm)=11.5(Hz/(g/cm))に相当する。コリオリ周波数計測分解能の4倍から5倍程度を計測精度として余裕度を見積もれば、周波数密度余裕度は、46~58Hz/(g/cm)である。
第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とし、配管の質量をMtとし、配管内にある流体の質量をMfとした場合において、図13は、配管の材料がCFRTP(記号「●」)、SUS316(記号「▲」またはPFA(記号「■」)である場合の配管全体の質量M(Mt+m+Mf)に対する付加質量m(m1+m2+m3)の比率を横軸とし、周波数密度余裕度(Hz/(g/cm))を縦軸とする図で、m3=m1+m2の場合を示し、図14は配管の材料がCFRTPである場合の配管全体の質量M(Mt+m+Mf)に対する付加質量m(m1+m2+m3)の比率を横軸とし、周波数密度余裕度(Hz/(g/cm))を縦軸とする図で、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とした場合、記号「■」、「▲」、「●」は、それぞれ、m3/(m1+m2)の比率が、3/1、2/1、1/1の場合を示す。
図13および図14で用いたCFRTP(炭素繊維強化フッ素樹脂)と、PFAと、SUS316の密度(g/cm)と、弾性率(GPa)と、線膨張係数(10-6/℃)を以下の表1に示す。図13と図14において、配管の材料以外の配管の形状、寸法、加振器と振動検出器の設置位置はすべて同じ条件である。微小流量の計測を目的としているので、計算に用いた配管の外径と内径は、それぞれ1.057mm、0.794mmである。従って、配管の質量は小さいので、全質量Mに対する付加質量mの比率を大きくすることが設計の自由度を向上させると言える。一般的には、加振器はエネルギーを投入して配管を共振周波数で振動させる必要があり、電磁コイルなどが採用されるが、一定程度の質量とならざるを得ない。一方で、振動検出器はパッシブな振動センサを採用すれば、電磁コイル等の重量物ではなく付加質量としてはより軽量化が可能な圧電素子を用いたAEセンサや光学的な変位センサなどを検出器として採用することができる。
Figure 0007507446000001
図13によれば、配管をPFAで構成した場合、十分な周波数密度余裕度は得られない。この結果は、測定流体が流れる配管にPFAを採用している従来技術において密度計測についての言及がない理由である。また、一般的に配管材料として使用されているSUS316においては、十分な周波数密度余裕度を得るためには、m=0.2M以下に設計しなければならない。一方で、CFRTPを配管材料に採用した場合、m=0.4M以下にすれば、十分な周波数密度余裕度が得られる。
コリオリ周波数ωは、測定流体が流れる配管の形状、寸法(長さ、外径、内径)が一定であれば、(3)式は、次の(4)式のように、配管の弾性率Eと全質量M(=Mt+m+Mf)のみの関数になる。
ω∝(E/M)1/2 (4)
さらに、流体の密度が一定であれば、Mfは定数である。また、Mtは配管の密度ρtのみの関数であり、配管の材料特性が一定であれば、弾性率EとMtは定数である。したがって、分母に注目して(4)式は、
ω∝(Mt+m+Mf)-1/2 (5)
と書き換えられる。
したがって、(5)式から、ωのシフト量Δωは、m/(Mt+m+Mf)の比率に依存して変化することが想定できる。
付加質量mは、加振器の質量m3と振動検出器の質量m1とm2との合計であるが、一般的には、m1=m2で設計されるので、付加質量mは、m=m3+2×m1と表すこともできる。
加振器は配管の中央部に設置され、図12(a)のように配管を励起振動させ、流体が流れることによって、図12(b)のように、配管には加振器を回転軸中心としてコリオリ力による捩れ振動が生じる。このとき、捩れ振動の回転軸上の加振器の質量m3は捩れ振動の慣性モーメントには寄与せず、振動検出器の質量(m1+m2)のみ捩れ振動の慣性モーメントに付加される。捩れ振動に付加される慣性モーメントは捩れ振動数を変化させる。この捩れ振動数がコリオリ周波数であり、コリオリ周波数のシフト量Δωは、付加質量mに占める振動検出器の質量(m1+m2)の比に依存する。したがって、m/(Mt+m+Mf)の比率がある値のときに、m3/(m1+m2)の比を変化させることによって、図14に示すように、周波数密度余裕度は変化する。
図14によれば、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とした場合、周波数密度余裕度を46mHz/(g/cm)とするとき、全質量M(=Mt+m+Mf)に対する付加質量mの比は、m3/(m1+m2)=1では、m=0.4M以下とし、m3/(m1+m2)=2では、m=0.6M以下とし、m3/(m1+m2)=3では、m=0.8M以下とすればよいことが分かる。さらに、図14より、m3/(m1+m2)=2において、m=0.4Mでは、周波数密度余裕度は55Hz/(g/cm)となり、m3/(m1+m2)=3において、m=0.4Mでは、周波数密度余裕度は61Hz/(g/cm)となる。従って、m3/(m1+m2)の比率を1より大きくすることによって、周波数密度余裕度を改善することができる。(加振器と振動検出器の設計自由度を大きくすることができる)
図15は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第二実施例の概略構成図である。第二実施例は、第1差動回路121および第2差動回路121aを備え、第1フレーム9aに、加振器としての電磁駆動用コイル2a(後記する永久磁石などの磁性体に対応するもの)と、第1振動検出器3aおよび第2振動検出器4aとしての静電容量センサを備えている。電磁駆動用コイル2aは左側の支持体8aおよび右側の支持体8bから等距離にある第1フレーム9aの中央部に位置し、第1振動検出器3aと第2振動検出器4aは第1フレーム9a上において電磁駆動用2aを中心とする対称位置にある。また、配管1の長手方向中心軸1aを挟んで、第1フレーム9aに支持されている第1振動検出器3aおよび第2振動検出器4aに対して対称位置にあるように、第2フレーム9bにも第一振動検出器3aおよび第二振動検出器4aとしての静電容量センサが支持されている。さらに、配管1に、加振器としての永久磁石などの磁性体2bと、配管1の長手方向中心軸1aに対して磁性体2bと対称位置にあるように磁性体2bと同一形状で同一質量の非磁性体2cと、金属薄膜3b、4bを備えている。このように、配管1aの長手方向中心軸1aを挟んで対称位置にある第1振動検出器3aの出力の差分をとる第1差動回路121と、第2振動検出器4aの出力の差分をとる第2差動回路121aとを備えれば、それぞれの作動回路121と121aの出力の位相差を測定することによって外部振動などの同相信号が除去されるという効果がある。
ここで、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とした場合、m3はm1とm2の合計よりも大きく、第1フレーム9aに支持されている第1振動検出器3aの質量と第2フレーム9bに支持されている第1振動検出器3aの質量がともにm1/2であり、第1フレーム9aに支持されている第2振動検出器4aの質量と第2フレーム9bに支持されている第2振動検出器4aの質量がともにm2/2であり、磁性体2bと非磁性体2cの質量がともにm3/2であれば、配管1の長手方向中心軸1aを挟んで対称位置に同じ質量が配置されることになるので、配管1の長手方向中心軸1aに対して同じ慣性モーメントが発生する。このように、配管1の振動方向の慣性モーメントを等価にすることで、軸に対称な振動となり、差動をとることで同相振動成分を除去できるという効果がある。
図16は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第三実施例の概略構成図である。第三実施例は、第1差動回路121および第2差動回路121aを備え、第1フレーム9aに、加振器としての圧電素子2dと、第一振動検出器3cおよび第二振動検出器4cとしての音響センサを備えている。圧電素子2dは右側の支持体9aおよび左側の支持体9bから等距離にある第1フレーム9aの中央部に位置し、第1振動検出器3cと第2振動検出器4cは第1フレーム9a上において圧電素子2dを中心とする対称位置にある。また、配管1の長手方向中心軸1aを挟んで、第1フレーム9aに支持されている第1振動検出器3cおよび第2振動検出器4cに対して対称位置にあるように、第2フレーム9bにも第一振動検出器3cおよび第二振動検出器4cとしての音響センサが支持されている。また、配管1に等価質量2eを備えている。
図17は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第四実施例の概略構成図である。第四実施例は、第1差動回路121および第2差動回路121aを備え、第1フレーム9aに、加振器としての電磁駆動用コイル2aと、第一振動検出器3dおよび第二振動検出器4dとしての光学式変位センサを備えている。電磁駆動用コイル2aは右側の支持体9aおよび左側の支持体9bから等距離にある第1フレーム9aの中央部に位置し、第1振動検出器3dと第2振動検出器4dは第1フレーム9a上において電磁駆動用コイル2aを中心とする対称位置にある。また、配管1の長手方向中心軸1aを挟んで、第1フレーム9aに支持されている第1振動検出器3dおよび第2振動検出器4dに対して対称位置にあるように、第2フレーム9bにも第一振動検出器3dおよび第二振動検出器4dとしての光学式変位センサが支持されている。さらに、配管1に、加振器としての磁性体2bと、配管1の長手方向中心軸1aに対して磁性体2bと対称位置にあるように磁性体2bと同一形状で同一質量の非磁性体2cと、金属薄膜3b、4bを備えている。
図18は関連設備を含む本発明のコリオリ質量流量計の第五実施例の概略構成図である。第五実施例は、第1差動回路121および第2差動回路121aを備え、第1フレーム9aに、加振器としての電磁駆動用2aと、第一振動検出器3eおよび第二振動検出器4eとしての加速度センサを備えている。電磁駆動用コイル2aは右側の支持体9aおよび左側の支持体9bから等距離にある第1フレーム9aの中央部に位置し、第1振動検出器3eと第2振動検出器4eは第1フレーム9a上において電磁駆動用コイル2aを中心とする対称位置にある。また、配管1の長手方向中心軸1aを挟んで、第1フレーム9aに支持されている第1振動検出器3eおよび第2振動検出器4eに対して対称位置にあるように、第2フレーム9bにも第一振動検出器3eおよび第二振動検出器4eとしての加速度センサが支持されている。さらに、配管1に、加振器としての磁性体2bと、配管1の長手方向中心軸1aに対して磁性体2bと対称位置にあるように磁性体2bと同一形状で同一質量の非磁性体2cを備えている。
1 配管
2、2a、2d 加振器
2b 永久磁石などの磁性体
2c 非磁性体
2e 等価質量
3、3a、3c、3d、3e 第1振動検出器
3b 金属薄膜
4、4a、4c、4d、4e 第2振動検出器
4b 金属薄膜
5 加振回路
6 位相差測定器
7 演算回路
8a 右側の支持体
8b 左側の支持体
9a 第1フレーム
9b 第2フレーム
121 第1差動回路
121a 第2差動回路

Claims (7)

  1. 測定流体が流れる直管型の配管と、該配管を加振する加振器と、上記配管の振動状態を検出する第1および第2振動検出器と、上記配管の両方の端部を振動に対する固定端となるように支持する支持体とを有し、上記加振器、第1および第2振動検出器は上記支持体に連結されたフレームによって支持され、上記第1および第2振動検出器により検出される振動波形の位相のずれに基づいて配管を流れる流体の質量流量を求め、上記配管、支持体およびフレームは炭素繊維強化フッ素樹脂で形成されているコリオリ質量流量計において、第1振動検出器の質量をm1とし、第2振動検出器の質量をm2とし、加振器の質量をm3とし、m1とm2とm3の合計をmとし、配管の質量をMtとし、配管内にある流体の質量をMfとし、M=Mt+m+Mfとした場合、m3はm1とm2の合計以上であって、[m3/(m1+m2)]=1のとき、m=0.4M以下であって、[m3/(m1+m2)]=2のとき、m=0.6M以下であって、[m3/(m1+m2)]=3のとき、m=0.8M以下であることを特徴とするコリオリ質量流量計。
  2. 炭素繊維強化フッ素樹脂における炭素繊維の体積含有率は、20~40%であることを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
  3. 第1および第2振動検出器は加振器を中心とする対称位置にある加速度センサであることを特徴とする請求項2に記載のコリオリ質量流量計。
  4. 第1および第2振動検出器は加振器を中心とする対称位置にある音響センサであることを特徴とする請求項2に記載のコリオリ質量流量計。
  5. 第1および第2振動検出器が静電容量センサであり、配管には金属薄膜が付着されていることを特徴とする請求項2に記載のコリオリ質量流量計。
  6. 第1および第2振動検出器が光学式変位センサであり、配管には金属薄膜が付着されていることを特徴とする請求項2に記載のコリオリ質量流量計。
  7. 加振器は圧電素子であることを特徴とする請求項3または4に記載のコリオリ質量流量計。
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