JP7498138B2 - イリジウムの回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イリジウムの回収方法に係る。
銅乾式製錬では銅精鉱を熔解し、転炉、精製炉で99%以上の粗銅とした後に電解精製工程において例えば純度99.99%以上の電気銅を生産する。近年では転炉においてリサイクル原料として電子部品由来の貴金属を含む金属屑が投入されており、銅以外の有価物は電解精製時にスライムとして沈殿する。
このスライムには貴金族類、希少金属、銅精鉱に含まれているセレンやテルルも同時に濃縮される。銅製錬副産物としてこれらの元素は個別に分離・回収される。
このスライムの処理には湿式製錬法が適用される場合が多い。例えば特許文献1においてはスライムを塩酸-過酸化水素により銀を回収し、溶解した金は溶媒抽出により回収した後に、その他の有価物を二酸化硫黄で順次還元回収する方法が開示されている。特許文献2には同様の方法で金銀を回収した後、二酸化硫黄で有価物を還元して沈殿せしめ、セレンのみを蒸留して除去して貴金属類を濃縮する方法が開示されている。
貴金属を回収した後の溶液には希少金属イオン、テルル、セレンが含まれておりさらにこれら有価物を回収することが必要である。回収方法としては還元剤により生じた沈殿を回収する方法、溶液ごと銅精鉱に混合しドライヤーで乾燥させて製錬炉に繰り返す方法が知られている。
とりわけ特許文献1に示されている、二酸化硫黄により生じた沈殿を回収する方法は、コストや製造規模の面で利点が多い。加えて各元素が順次沈殿することから分離精製にも効果がある。
二酸化硫黄を用いて有価物を回収する方法では、溶解後に順次有価物を還元して回収することができる。初めに白金、パラジウムが沈殿する。次にセレンが還元を受ける。イリジウム、ルテニウム、ロジウムは酸化還元電位が比較的低いため還元を受け難く、最後まで溶液に残留する。なかでもイリジウムについては、特許文献3に記載されているように、溶媒抽出により分離、濃縮後に焼成して回収する方法が広く知られる。もしくは特許文献4に記載されているように不純物をセメンテーションで除いた後に晶析する方法も公知である。また、特許文献5には、イリジウムを含む有機溶媒にマグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、錫及び鉛から選ばれた卑金属及び鉱酸を添加し貴金属を還元させて沈殿させる方法が開示されている。
特開2001-316735号公報 特開2016-160479号公報 特開2004-332041号公報 特開2004-190058号公報 特開2002-115015号公報
銅電解澱物溶解液中のイリジウム濃度は1~70mg/L程度である。イリジウムは高価な金属であるがこの程度の低濃度では溶媒抽出による製錬はコストに見合わない。他の金属との分離効率やストリップの効率も高くない。
イリジウムはその水酸化物がアルカリ領域で沈殿することが知られている。しかしながら、イリジウム含有液が強酸性である場合、強酸を中和するためにアルカリ試薬の添加量が増大し、コストが大きくなる。また、ナトリウムイオンやアルカリ土類金属イオンは酸性条件下でも水に難溶性の硫酸塩を沈殿するが、過量のアルカリで中和した時にはこの難溶性硫酸塩が製造設備の配管内に沈着して閉塞を起こすことが予想される。
特許文献4に示される方法では、金属ビスマスで不純物をセメンテーションした後に晶析されるが、晶析にはある程度のイリジウム濃度が必要であり低濃度液に適用しても効果は低く、溶解したビスマスの混入も危惧される。
また、従来、安価に効率よく低濃度のイリジウムを沈殿回収する方法は知られていない。特に他元素が共存する条件では選択性も要求されるが、イリジウムを選択的に分離、濃縮する方法は知られていない。
本発明はこのような従来の事情を鑑み、イリジウムを含む塩酸酸性液からイリジウムを効率的に沈殿回収する方法を提供する。特に銅製錬における電解精製工程で発生する電解澱物を酸化溶解して得られた塩酸酸性液は、本発明のイリジウムを含む塩酸酸性液として好対象である。
上記課題は以下に特定される発明によって解決することができる。
(1)イリジウムを100mg/L未満含む塩酸酸性液を60℃以上に加熱して、前記塩酸酸性液におけるイリジウムに対し、50質量倍以上の鉄を添加することで、イリジウムを沈殿させる、イリジウムの回収方法。
(2)前記イリジウムを含む塩酸酸性液に、前記鉄として鉄粉を1.5g/L以上になるよう添加する、(1)に記載のイリジウムの回収方法。
(3)前記イリジウムを含む塩酸酸性液に添加する鉄は、表面に銅を析出させており、前記銅の含有量が10~65質量%である、(1)または(2)に記載のイリジウムの回収方法。
(4)前記イリジウムを含む塩酸酸性液を60℃以上に加熱する前に、予め還元剤を添加して銀/塩化銀を参照電極とした酸化還元電位(ORP)を200mV以下に調整しておく、(1)~(3)のいずれか一項に記載のイリジウムの回収方法。
(5)前記イリジウムを含む塩酸酸性液がヒ素を含んでおり、前記塩酸酸性液を60~70℃に加熱して、前記塩酸酸性液におけるイリジウムに対し、50質量倍以上の鉄を添加することで、イリジウムを選択的に沈殿させる、(1)~(4)のいずれかに記載のイリジウムの回収方法。
(6)前記イリジウムを含む塩酸酸性液がヒ素を含んでおり、前記イリジウムを含む塩酸酸性液に、前記鉄として鉄粉を1.5~3.0g/Lになるよう添加することで、イリジウムを選択的に沈殿させる、(1)~(4)のいずれかに記載のイリジウムの回収方法。
本発明の実施形態によれば、イリジウムを含む塩酸酸性液からイリジウムを効率的に沈殿回収する方法を提供することができる。
実験例4に係るイリジウム濃度の経時変化を示すグラフである。 実験例4に係るORPとイリジウム濃度との関係を示すグラフである。
以下、本発明のイリジウムの回収方法の実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
<イリジウムの回収方法>
本発明の実施形態に係るイリジウムの回収方法は、イリジウムを100mg/L未満含む塩酸酸性液を60℃以上に加熱して、塩酸酸性液におけるイリジウムに対し、50質量倍以上の鉄を添加することで、イリジウムを沈殿させる。
本発明の実施形態に係るイリジウムの回収方法において、処理対象となるイリジウムを含む塩酸酸性液は、どのような処理を経て得られたものであってもよいが、特に、銅製錬における電解精製工程で発生する電解澱物を酸化溶解して得られた塩酸酸性液は、本発明のイリジウムを含む塩酸酸性液として好対象である。また、非鉄金属製錬、とりわけ銅製錬の電解精製工程で生じる電解澱物は白金族元素がその他希少元素と共に濃縮される。希少元素は単独で製錬されることはなく、他金属の副産物として回収されるか廃触媒等のリサイクル原料から分離される。したがって、本発明の実施形態に係るイリジウムの回収方法は、廃棄物からのリサイクルにも適用することができる。すなわち、当該廃棄物の処理工程で生じた、イリジウムを含む塩酸酸性液を対象とすることができる。
本発明の実施形態に係るイリジウムの回収方法において、処理対象となるイリジウムを含む塩酸酸性液は、所定の工程を経て得られた塩酸酸性液である場合、イリジウム(Ir)以外に種々の金属元素を含んでいる。
イリジウムを含む塩酸酸性液は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を含んでもよい。これらは、金属鉄による還元を受けないことから、特段の処理が不要である。
セレン(Se)、テルル(Te)、銅(Cu)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等は、イリジウムを含む塩酸酸性液に含まれていてもよいが、金属鉄で還元されるため、詳しくは後述するが、事前にこれら金属の濃度を下げておく必要がある。
一例として、銅製錬の銅電解精製工程由来の電解澱物からの、イリジウムを含む塩酸酸性液の作製方法を示す。まず、銅製錬の銅電解精製工程由来の電解澱物から硫酸により銅を溶解して除く。次に、濃塩酸と過酸化水素水を添加して溶解し、固液分離してPLS(浸出貴液)を得る。塩化物浴である浸出貴液(PLS)には白金族元素、希少金属元素、カルコゲン元素、ヒ素、アンチモン等が分配する。
浸出貴液(PLS)を一度冷却し、鉛やアンチモンといった卑金属類の塩化物を沈殿分離する。その後に溶媒抽出により金を有機相に分離する。金の抽出剤はジブチルカルビトール(DBC)が広く使用されている。抽出液には、二酸化硫黄を吹き込むことで、貴金属とセレン、テルルを還元除去し、続いて固液分離することで、イリジウムを含む塩酸酸性液を作製することができる。
本発明の実施形態に係るイリジウムの回収方法ではイリジウムを微量含む塩酸酸性液、具体的には、イリジウムを100mg/L未満含む塩酸酸性液を処理対象とする。銅電解精製工程由来の電解澱物を処理する工程では、イリジウムは、塩酸酸性液から有価金属を分離した後の液中に、塩化物錯イオンとして残留する。この液からイリジウムを効率的に沈殿させるために、塩酸酸性液を60℃以上に加熱して、50質量倍以上の鉄を添加することで、イリジウムを沈殿させる。
塩酸酸性液の加熱温度の上限は特に限定されないが、水素が激しく発生して吹きこぼれる問題を生じるとの観点から、85℃以下であることが好ましい。また、塩酸酸性液の加熱温度は、70~80℃であるのがより好ましい。
添加する鉄の上限は特に限定されないが、試薬の節約の観点から、塩酸酸性液におけるイリジウムに対し、400質量倍以下であることが好ましい。また、添加する鉄は、塩酸酸性液におけるイリジウムに対し、100~200質量倍であるのがより好ましい。
添加する鉄としては、鉄粉が、反応性が良く好適である。また、見かけ直径が数cmに及ぶ鉄粒でも代用され得る。鉄の形状は特に制限されず、粉状、粒状、礫状、塊状、板状、線状等いずれの形でもよく、鉄の品位は特に制限はない。
もしくは鉄板、鉄塊を設置した反応器に塩酸酸性液を通液してもよい。この時、反応器はバッチ式でなく、鉄を投入した容器に連続通液するタイプの反応器が好ましい。しかしながら、操作性と反応性との両面から鉄粉が好適である。本発明において、「鉄粉」とは、粒径としてP80<0.2mmの鉄の粒子を指す。
鉄は塩酸酸性溶液に接触すると水素が発生する。水素は鉄の消費ならびに鉄と原料液との接触阻害を引き起こすので鉄濃度は1.5g/L以上とする。また水素は爆発性があるという問題がある。さらに鉄として鉄粉を使用するならば、表面積が大きいため短時間に大量に水素が発生して溶液が吹きこぼれる問題もある。そのため、特に鉄粉を使用する時、その投入量は1.5g/L以上とするが鉄粉の投入量は1.5~10g/Lとすることが好ましい。一度に投入せずに複数回に分けて投入してもよい。
水素発生による吹きこぼれや爆発の危険を避ける方法として、鉄表面を銅で一部被覆した金属を使用することも可能である。銅品位が高すぎるとイリジウムとの反応が悪くなるおそれがあるため、表面を銅で被覆した鉄の銅の含有量は、好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。また、表面を銅で被覆した鉄の銅の含有量は、10~65質量%であるのがより好ましい。銅で被覆した鉄を使用する場合は、鉄含有量が低くなるため、鉄含有量として1.5~10g/Lとなるよう塩酸酸性液に添加することが好ましい。
鉄の添加量が過多になった場合でも、溶液は塩酸酸性であるので余剰分は溶解する。したがって、余剰分の鉄は沈殿物を回収後のイリジウム精製工程に持ち込まれても問題にはならない。
銅電解殿物由来の処理対象液は多くの場合、テルル、セレン、各種金属イオンを含む。これらの元素は鉄によりセメンテーションされて表面に析出し、反応速度を低下させる恐れがある。そのため、イリジウムを含む塩酸酸性液を60℃以上に加熱する前に、予め還元剤を添加して溶液の塩酸酸性液の酸化還元電位(参照電極は銀/塩化銀)を200mV以下に調整し、沈殿させて除くことが好ましい。当該酸化還元電位は、銅の酸化還元電位である120mV以下に調整しておくことがより好ましい。還元剤としては、二酸化硫黄、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、硫化水素等が好適である。鉄粉を分割投入して酸化還元電位を調節することも可能である。
イリジウムを含む塩酸酸性液が亜ヒ酸イオンを含む場合は、鉄が亜ヒ酸イオンをヒ素まで還元する。ヒ素の沈殿を防止するには、塩酸酸性液の銅濃度を0.1~0.7g/Lに調整しておく。ヒ素より先に銅がセメンテーションを受けて鉄表面を被覆し、ヒ素の混入を抑制できる。上記のように銅被覆鉄粉を使用してもヒ素の混入は抑えることができる。
イリジウムを含む塩酸酸性液がヒ素を含んでいる場合、塩酸酸性液を60~70℃に加熱して、塩酸酸性液におけるイリジウムに対し、50質量倍以上の鉄を添加することで、イリジウムを選択的に沈殿させることができる。塩酸酸性液を60~70℃に加熱することで、ヒ素が沈殿して混入することを抑制することができる。
また、イリジウムを含む塩酸酸性液がヒ素を含んでいる場合、イリジウムを含む塩酸酸性液に、鉄として鉄粉を1.5~3.0g/Lになるよう添加することで、イリジウムを選択的に沈殿させることができる。鉄粉を1.5~3.0g/Lになるよう添加することで、ヒ素が沈殿して混入することを抑制することができる。
沈殿したイリジウム含有物は、固液分離後に適切な方法で未反応の鉄とイリジウムを分離する。例えば、鉱酸で鉄のみを溶解分離してイリジウムを残渣に濃縮する方法があげられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実験例1)
銅製錬の銅電解精製工程由来の電解澱物から硫酸により銅を溶解して除いた。濃塩酸と60%過酸化水素水を添加して溶解し、固液分離してPLS(浸出貴液)を得た。PLSを6℃まで冷却して卑金属分を沈殿除去した。酸濃度を2N以上に調整しDBC(ジブチルカルビトール)とPLSを混合して金を抽出した。金抽出後のPLSを70℃に加温し、二酸化硫黄を吹き込んで貴金属とセレン、テルルを還元除去した。これを固液分離し、イリジウムを含む塩酸酸性液を得た。
イリジウムを含む塩酸酸性液のイリジウム濃度は26mg/Lであった。イリジウム含有液はその他の元素としてヒ素を1.5g/L、銅を0.55g/L、セレンを6mg/L、テルルを13mg/L含有していた。当該イリジウムを含む塩酸酸性液を200mL分取し、75~80℃もしくは60~65℃に加熱して、表1に示す量(g)のP80=0.2mmの鉄粉を添加して攪拌した。撹拌しつつ、10分後に5mL程度サンプルを分取し、ろ過して溶液中の各元素濃度を定量した(実施例1~4)。また、比較例1として、同じイリジウムを含む塩酸酸性液に対し、80~85℃の加熱を行い、二酸化硫黄と空気の混合気を吹き込んで還元を行った。さらに、比較例2として、実施例1~4に対して、鉄粉ではなく銅粉を添加した以外は同様の手順で実験を行った。
全ての溶液中の元素濃度の定量は溶液2mLを分取して50mLに規正後、ICP-OES(セイコー社製SPS3100)により濃度を定量した。評価結果を表1に示す。
表1の結果から、鉄粉添加量が増えるほどイリジウムの濃度が低下し、セメンテーションを受けたことが分かる。実施例1~3を見ると、鉄の添加量とイリジウムの濃度減少幅は比例関係にあるように思われ、鉄0.5g添加、すなわち2.5g/Lの添加に対してイリジウム濃度の減少幅はおよそ9mg/Lで、鉄の反応比率はイリジウムに対しておよそ250質量倍であった。このイリジウムの現象幅から計算すると、50質量倍の鉄添加でも5%程度の回収率の改善が見込まれる。一般的手法である、比較例1のイリジウム回収率は1%以下であった。また、比較例2の銅粉添加の場合は、イリジウムの還元効果が鉄粉を用いた場合に比べて低かった。
しかしながら、実施例4に見るように加熱温度が60℃であると、鉄粉1g添加、すなわち鉄粉を5g/Lとなるよう添加した場合では、セメンテーション効果が見られるものの大きくないことも分かる。この時のセメンテーションの効果は、実施例1の鉄粉添加量0.3gの時と変わらない。このため、塩酸酸性液の加熱温度(液温)は60℃以上とすべきであり、さらに好ましくは75℃以上であることが分かる。
(実験例2)
実験例1と同じイリジウムを含む塩酸酸性液を200mL分取した。これを75~80℃に加熱した。次に、予め硫酸銅溶液に浸して表面に銅を析出させた銅被覆鉄粉を1g添加した。銅被覆鉄粉は銅の含有量が33質量%(実施例5)と64質量%(実施例6)の2種類を調製し、それぞれ別にセメンテーション試験を行った。0.5h経過、1h時間経過後のサンプルを採取した。分析方法は実験例1に準じる。評価結果を表2に示す。
表2の結果から、銅を表面に析出させた鉄粉でもイリジウムセメンテーション効果は高く、また、銅品位は低い方がイリジウムのセメンテーション効果が高いことが分かる。ヒ素との選択性についても、イリジウムの残濃度に対してヒ素の残濃度は銅品位が低いほど高いことが分かる。銅粉を添加するのではなく、鉄粉の表面に銅を一部析出した状態で添加すると、水素発生を避けつつ、イリジウム還元効果が得られることが分かる。
しかしながら、加熱温度が75℃以上では、ヒ素が銅と反応してヒ化銅を生じることが知られている。ヒ素との選択性に関しては反応温度を下げると金属銅とヒ素の反応が低下すると予想される。70℃以下では銅品位は高い方がヒ素の還元反応が抑制される。したがって、銅被覆鉄粉の銅品位は、反応温度が70℃以下で実施例6のように70質量%以下が好適である。より好ましくは実施例5に見られるようにあらゆる温度で効果が高い銅含有量40質量%以下である。
(実験例3)
実験例1で使用したイリジウム含有液を200mL分取し、75~80℃に加熱した。最初に鉄粉0.3g添加した時を0hとし鉄粉を30分ごとに0.3gずつ添加した。30分ごとに分析用のサンプルを採取した。サンプル採取は鉄粉添加前に行った。分析方法は実験例1に準じる。評価結果を表3に示す。
表3の結果から、鉄の添加に従って定量的にイリジウム濃度が低下していることが分かる。鉄粉は1.5g/L(0.5h時)でも機能し、以後は0.3g添加する(鉄濃度は1.5g/Lずつ増える)毎に6mg/Lのイリジウムが低下した。同時にヒ素濃度も大きく低下した。
(実験例4)
実験例1と同じ方法で調整したイリジウム含有液を300mL分取し、80℃に加熱した。イリジウム濃度は25mg/L、ヒ素濃度は1.51g/L、酸化還元電位は455mVであった。最初に鉄粉0.1g添加した時を0hとし、鉄粉を15分ごとに0.1gずつ添加した。鉄粉を添加する直前に酸化還元電位を測定し、成分分析用のサンプルを2mL採取した。分析方法は実験例1に準じる。イリジウム濃度の経時変化を図1に示す。ORPとイリジウム濃度との関係を図2に示す。
図1の結果から鉄粉を添加していくとヒ素とイリジウム濃度が低下していくことが分かる。図2からは溶液のORPが200mVを下回るとイリジウムの濃度低下が明瞭になったことが分かる。
ヒ素は135分経過後から大きく濃度が低下しており、鉄粉が0.9g添加された時である。ヒ素との分離は鉄粉添加量を3g/L以下にすることが好ましい。

Claims (6)

  1. イリジウムを100mg/L未満含む塩酸酸性液を60℃以上に加熱して、前記塩酸酸性液におけるイリジウムに対し、50質量倍以上の鉄を添加することで、イリジウムを沈殿させる、イリジウムの回収方法。
  2. 前記イリジウムを含む塩酸酸性液に、前記鉄として鉄粉を1.5g/L以上になるよう添加する、請求項1に記載のイリジウムの回収方法。
  3. 前記イリジウムを含む塩酸酸性液に添加する鉄は、表面に銅を析出させており、前記銅の含有量が10~65質量%である、請求項1または2に記載のイリジウムの回収方法。
  4. 前記イリジウムを含む塩酸酸性液を60℃以上に加熱する前に、予め還元剤を添加して銀/塩化銀を参照電極とした酸化還元電位(ORP)を200mV以下に調整しておく、請求項1~3のいずれか一項に記載のイリジウムの回収方法。
  5. 前記イリジウムを含む塩酸酸性液がヒ素を含んでおり、前記塩酸酸性液を60~70℃に加熱して、前記塩酸酸性液におけるイリジウムに対し、50質量倍以上の鉄を添加することで、イリジウムを選択的に沈殿させる、請求項1~4のいずれかに記載のイリジウムの回収方法。
  6. 前記イリジウムを含む塩酸酸性液がヒ素を含んでおり、前記イリジウムを含む塩酸酸性液に、前記鉄として鉄粉を1.5~3.0g/Lになるよう添加することで、イリジウムを選択的に沈殿させる、請求項1~4のいずれかに記載のイリジウムの回収方法。
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