この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
図1は、この発明の実施の形態における走行体を用いた移動装置を示す斜視図である。図1を参照して、移動装置100は、コンピュータ制御により自律的に走行可能な装置である。移動装置100は、AMR(Autonomous Mobile Robot)であり、ワークまたは工具などの搬送対象物を任意の場所に搬送する。
図1および後出の図面には、前方、後方、右方、左方、上方および下方の6方向が適宜示されている。前方および後方は、移動装置100(走行体12)が直進走行する場合の進行方向であり、互いに反対方向である。右方は、移動装置100(走行体12)から前方を見た場合の右手方向である。左方は、移動装置100(走行体12)から前方を見た場合の左手方向であり、右方の反対方向である。上方は、移動装置100(走行体12)から見て空側であり、下方は、移動装置100(走行体12)が走行する下面(路面)側である。
なお、本実施の形態では、後出のトレイ18に対してロボット16が位置する方向を前方といい、その反対方向を後方というが、いずれの方向を前方といい、いずれの方向を後方というかは、任意である。
また、以下の説明においては、左右一対に設けられた構成のうちの右側の構成を指す参照番号に「R」を付し、左側の構成を指す参照番号に「L」を付している。参照番号に「R」および「L」のいずれも付していない場合、右側の構成および左側の構成に共通する説明である。
[移動装置100の構造]
まず、移動装置100の構造について説明する。図1を参照して、移動装置100は、走行体12と、コントローラ14と、ロボットアーム17などのロボット16とを有する。走行体12は、後出の走行用モータ57を用いた車輪駆動により走行可能に構成されている。コントローラ14およびロボット16は、走行体12に搭載されている。
コントローラ14は、走行体12の走行を制御したり、ロボット16の動作を制御したりする。コントローラ14は、カバー15を有する。カバー15は、コントローラ14の外観をなすカバー体であり、走行体12上に内部空間を形成している。カバー15の内部には、走行体12を走行させたり、ロボット16を動作させりするための各種の電子機器82(図6を参照)、および、ロボット16の駆動用モータ等が収容されている。
カバー15の頂面15aには、搬送対象物を載置するためのトレイ18が設けられている。ロボット16は、搬送対象物を把持可能に構成されている。ロボット16は、カバー15の頂面15aに設けられ、カバー15の頂面15aから上方に向けて延出している。ロボット16およびトレイ18は、前後方向に並んでいる。
ロボット16は、基台部26と、第1可動部21と、第2可動部22と、第3可動部24とを有する。基台部26は、カバー15の頂面15aから突出している。基台部26は、回転中心軸111を中心に回転可能である。回転中心軸111は、上下方向(鉛直方向)に延びている。基台部26は、回転中心軸111の軸上で延びている。基台部26は、回転中心軸111を中心にして回転運動する。
第1可動部21は、基台部26に対して、回転中心軸112を中心に回転可能に接続されている。回転中心軸112は、回転中心軸111と直交する方向に延びている。回転中心軸112は、水平方向に延びている。第1可動部21は、基台部26から回転中心軸112の半径方向に延びている。第1可動部21は、回転中心軸112を中心にして揺動運動する。
第2可動部22は、第1可動部21に対して、回転中心軸113を中心に回転可能に接続されている。回転中心軸113は、回転中心軸112と平行に延びている。回転中心軸113は、水平方向に延びている。第2可動部22は、第1可動部21から回転中心軸113の半径方向に延びている。
第2可動部22は、回転部23を有する。回転部23は、回転中心軸114を中心に回転可能である。回転中心軸114は、回転中心軸113の半径方向に延びている。回転部23は、回転中心軸114の軸上で延びている。第2可動部22(回転部23)は、回転中心軸113を中心に揺動運動するとともに、回転中心軸114を中心に回転運動する。
第3可動部24は、第2可動部22(回転部23)に対して、回転中心軸115を中心に回転可能に接続されている。回転中心軸115は、回転中心軸112および回転中心軸113と平行に延びている。回転中心軸115は、水平方向に延びている。第3可動部24は、第2可動部22(回転部23)から回転中心軸115の半径方向に延びている。
第3可動部24は、回転部25を有する。回転部25は、回転中心軸116を中心に回転可能である。回転中心軸116は、回転中心軸115の半径方向に延びている。回転部25は、回転中心軸116の軸上で延びている。第3可動部24(回転部25)は、回転中心軸115を中心に揺動運動するとともに、回転中心軸116を中心に回転運動する。
第3可動部24(回転部25)の先端には、搬送対象物を把持するためのエンドエフェクタ(不図示)が取り付けられる。
なお、本実施の形態では、ロボット16に関して、6軸(回転中心軸111~116)が制御可能なロボットアーム17を説明したが、走行体12には、6軸以外の多軸制御可能なロボットアームが搭載されてもよい。また、ロボット16は、たとえば、フォークリフト型のロボットであってもよい。この場合に、ロボット16は、フォークでトレイを持ち上げ、持ち上げたトレイを所定の場所に置き、新たなトレイをフォークで持ち上げ、カバー15の頂面15aに置くことが可能なロボットであってもよい。
[走行体の構造]
続いて、走行体12の構造について説明する。図2は、図1中の走行体を示す斜視図である。図3は、図1中の走行体を示す上面図である。走行体12は、前後方向に延びる走行体12の中心線110(図3を参照)を想定した場合に、中心線110を挟んで左右対称の構造を有する。
図1から図3を参照して、走行体12は、第1車輪31(31R,31L)と、走行用モータ57(57R,57L)と、減速機56(56R,57L)とを有する。
第1車輪31は、駆動輪である。第1車輪31は、第2軸122を中心に回転可能である。第2軸122は、第1車輪31の回転中心に対応する仮想上の直線であり、左右方向に延びている。走行用モータ57は、回転数(回転速度)および回転方向を制御可能なサーボモータまたはステッピングモータからなる。第1車輪31は、走行用モータ57からの回転が入力されることによって回転する。減速機56は、走行用モータ57からの回転を減速して第1車輪31に伝達する。
第1車輪31Rおよび第1車輪31Lは、左右方向において、互いに間隔を開けて設けられている。第1車輪31Rは、減速機56Rを介して、走行用モータ57Rに接続されている。第1車輪31Lは、減速機56Lを介して、走行用モータ57Lに接続されている。第1車輪31Rおよび第1車輪31Lは、互いに独立して回転駆動される。第1車輪31は、正転および反転が可能である。第1車輪31は、任意の回転数(回転速度)で回転可能である。
走行用モータ57は、第2軸122を中心とする回転を出力する。走行用モータ57、減速機56および第1車輪31は、左右方向に直列に並んで設けられている。走行用モータ57は、左右方向において、第1車輪31Rおよび第1車輪31Lの間に配置されている。走行用モータ57Rは、左右方向において、第1車輪31Rおよび走行用モータ57Lの間に配置されている。走行用モータ57Lは、左右方向において、第1車輪31Lおよび走行用モータ57Rの間に配置されている。
走行体12は、第2車輪32(32R,32L)と、第3車輪33(33R,33L)とをさらに有する。
第2車輪32は、第1軸121を中心に回転可能である。第1軸121は、第2車輪32の回転中心に対応する仮想上の直線であり、左右方向に延びている。第2車輪32は、第1軸121を中心に回転可能に支持されるホイールと、ホイールの外周上に設けられ、第1軸121と直交する方向に延びる回転中心軸を中心に回転可能な複数のローラとが組み合わされたオムニホイールからなる。
第2車輪32Rおよび第2車輪32Lは、左右方向において、互いに間隔を開けて設けられている。第1車輪31および第2車輪32は、前後方向において、互いに間隔を開けて設けられている。第2車輪32は、第1車輪31の前方に設けられている。第2車輪32Rは、走行体12の右前方角部に設けられている。第2車輪32Lは、走行体12の左前方角部に設けられている。
第3車輪33は、第8軸131を中心に回転可能である。第8軸131は、仮想上の直線であり、左右方向に延びている。第3車輪33は、第8軸131を中心に回転可能なホイールと、ホイールの外周上に設けられ、第8軸131と直交する方向に延びる回転中心軸を中心に回転可能な複数のローラとが組み合わされたオムニホイールからなる。
第3車輪33Rおよび第3車輪33Lは、左右方向において、互いに間隔を開けて設けられている。第1車輪31および第3車輪33は、前後方向において、互いに間隔を開けて設けられている。第3車輪33は、第1車輪31の後方に設けられている。第3車輪33Rは、走行体12の右後方角部に設けられている。第3車輪33Lは、走行体12の左後方角部に設けられている。
第3車輪33を構成するオムニホイールと、第2車輪32を構成するオムニホイールとは、同一である。図3に示されるように、前後方向における第1車輪31および第2車輪32の間の距離Lpは、前後方向における第1車輪31および第3車輪33の間の距離Lqと等しい。左右方向における第2車輪32Rおよび第2車輪32Lの間隔と、左右方向における第3車輪33Rおよび第3車輪33Lの間隔とは、同一である。第2車輪32は、第1車輪31よりも左右方向に張り出すように設けられている。第3車輪33は、第1車輪31よりも左右方向に張り出すように設けられている。
第2車輪32および第3車輪33は、従動輪である。第2車輪32および第3車輪33は、第1車輪31の回転に伴って従動回転する。走行体12が、第1車輪31の回転により下面上を走行するとき、第2車輪32および第3車輪33と、第2車輪32および第3車輪33が接触する下面との間に相対的な移動が生じることによって、第2車輪32および第3車輪33が回転する。オムニホーイルである第2車輪32および第3車輪33は、上面視において、走行体12の四隅に設けられており、移動装置100の重量を受ける機能を有している。
走行体12は、ベース部40をさらに有する。ベース部40は、第1車輪31、走行用モータ57、減速機56、第2車輪32、第3車輪33およびバッテリ51等を支持している。
ベース部40は、フレーム部材41をさらに有する。フレーム部材41は、走行体12の骨格をなす金属製のフレーム材から構成されている。フレーム部材41は、矩形の閉断面を有するパイプ状のフレーム材から構成されている。フレーム部材41は、走行体12が走行する下面と平行に配置されている。
フレーム部材41は、第1フレーム42(42R,42L)と、第2フレーム43と、第3フレーム44と、第4フレーム45とを含む。
第1フレーム42は、前後方向に延びている。図3に示す上面視において、第1フレーム42は、前後方向が長手方向に対応し、左右方向が短手方向に対応する矩形形状をなしている。第1フレーム42の前端部は、第1軸121よりも前方に位置し、第1フレーム42の後端部は、第2軸122よりも前方に位置している。第1フレーム42Rおよび第1フレーム42Lは、左右方向において、互いに間隔を開けて設けられている。図3に示す上面視において、第1車輪31Rおよび第2車輪32Rは、第1フレーム42よりも左右方向に張り出した位置に設けられている。
第2フレーム43は、左右方向に延びている。図3に示す上面視において、第2フレーム43は、左右方向が長手方向に対応し、前後方向が短手方向に対応する矩形形状をなしている。第2フレーム43は、第1フレーム42Rおよび第1フレーム42Lの間で延びている。第2フレーム43の右端部は、第1フレーム42Rに接続され、第2フレーム43の左端部は、第1フレーム42Lに接続されている。
図3に示す上面視において、ロボット16の基台部26(回転中心軸111)は、左右方向において、第1フレーム42Rおよび第1フレーム42Lの間に位置している。基台部26の回転中心軸111は、左右方向において、第1フレーム42Rおよび第1フレーム42Lの間に位置するとともに、前後方向に延びる走行体12の中心線110上に位置している。基台部26(回転中心軸111)は、第1車輪31(第2軸122)よりも前方に位置している。基台部26(回転中心軸111)は、第2フレーム43よりも前方に位置している。回転中心軸111は、第1軸121よりも後方に位置している。前後方向における基台部26の回転中心軸111の位置と、前後方向における後出の弾性パッド61の位置とは、揃っている。
第3フレーム44は、前後方向に延びている。図3に示す上面視において、第3フレーム44は、前後方向が長手方向に対応し、左右方向が短手方向に対応する矩形形状をなしている。第3フレーム44は、前後方向に延びる走行体12の中心線110上で延びている。第3フレーム44は、第2フレーム43および第4フレーム45の間で延びている。第3フレーム44の前端部は、第2フレーム43に接続され、第3フレーム44の後端部は、第4フレーム45に接続されている。
第4フレーム45は、左右方向に延びている。図3に示す上面視において、第4フレーム45は、左右方向が長手方向に対応し、前後方向が短手方向に対応する矩形形状をなしている。図3に示す上面視において、第4フレーム45は、第8軸131上で延びている。
第1車輪31は、後出の第1ブロック46およびアーム部材211を介して、第1フレーム42により支持されている。第2車輪32は、後出の第1ブロック46を介して、第1フレーム42により支持されている。第3車輪33は、後出の支持アーム71および支持ブロック72を介して、第4フレーム45により支持されている。後出のバッテリ51は、バッテリ51を覆うバッテリケース52を介して、第3フレーム44により支持されている。
図3に示す上面視において、第1車輪31、第2車輪32および第3車輪33は、フレーム部材41(第1フレーム42,第2フレーム43,第3フレーム44,第4フレーム45)と重なり合わない位置に設けられている。
第1車輪31、第2車輪32および第3車輪33は、左右に操舵不可である。走行体12は、第1車輪31Rおよび第1車輪31Lに対して、互いに同じ回転が付与されることによって、前後方向に直進し、第1車輪31Rおよび第1車輪31Lに対して、互いに異なる回転が付与されることによって、左右方向に旋回動作する(差動2輪駆動方式)。
より具体的には、走行体12は、第1車輪31Rおよび第1車輪31Lを、互いに等しい回転数で、かつ、正転させることによって、前方に直進する(前進)。走行体12は、第1車輪31Rおよび第1車輪31Lを、互いに等しい回転数で、かつ、反転させることによって、後方に直進する(後進)。
走行体12は、第1車輪31Lを正転させ、第1車輪31Rを第1車輪31Lよりも大きい回転数で正転させることによって、左方に旋回動作する(左旋回)。走行体12は、第1車輪31Rを正転させ、第1車輪31Lを第1車輪31Rよりも大きい回転数で正転させることによって、右方に旋回動作する(右旋回)。
走行体12は、第1車輪31Rを正転させ、第1車輪31Lを第1車輪31Rと同じ回転数で反転させることによって、回転動作する(左回転)。第1車輪31Rを反転させ、第1車輪31Lを第1車輪31Rと同じ回転数で正転させた場合には、走行体12の回転動作の方向が上記の場合と逆転する(右回転)。走行体12の回転中心は、理想的には、第2軸122の軸上であって、左右方向における第1車輪31Rおよび第1車輪31Lの中心位置(第2軸122と、前後方向に延びる走行体12の中心線110との交点)に対応している。
本実施の形態では、前後方向における第1車輪31および第2車輪32の間の距離Lpは、前後方向における第1車輪31および第3車輪33の間の距離Lqと等しい。このような構成によれば、走行体12の旋回および回転動作時、下面と、第1車輪31および第3車輪33との間に生じる摩擦力が、4つの車輪の間で均等になるため、走行用モータ57の制御を容易にできる。
走行体12は、バッテリ51(51R,51L)をさらに有する。バッテリ51は、移動装置100の動力源として設けられており、走行用モータ57およびロボット16の駆動用モータ等に電力を供給する。
バッテリ51は、第1車輪31よりも後方に設けられている。バッテリ51は、前後方向において、第1車輪31および第3車輪33の間に設けられている。バッテリ51は、左右方向において第3フレーム44と隣り合った位置に設けられている。バッテリ51Rは、第1車輪31R、減速機56Rおよび走行用モータ57Rの後方に設けられている。バッテリ51Lは、第1車輪31L、減速機56Lおよび走行用モータ57Lの後方に設けられている。バッテリ51は、カバー15を取り外すことによって、左右方向に抜き出すことが可能である。
バッテリ51からコントローラ14およびロボット16に向けて延びる配線は、フレーム部材41の外部を配索されてもよいし、フレーム部材41の内部を配索されてもよい。
図3に示す上面視において、ロボット16の基台部26(回転中心軸111)は、第1車輪31よりも前方に位置している一方、バッテリ51は、第1車輪31よりも後方に設けられている。このような構成により、重量物であり、かつ、駆動に伴って高荷重が加わるロボット16と、重量物であるバッテリ51とを、ベース部40により前後にバランスよく受けることができる。これにより、移動装置100の走行を安定させることができる。
図4は、図3中の矢印IVに示される方向に見た走行体を示す後面図である。図3および図4を参照して、ベース部40は、支持アーム71と、支持ブロック72とをさらに有する。
支持アーム71は、第4フレーム45の下方に設けられている。支持アーム71は、左右方向に沿って延びている。第3車輪33は、支持アーム71により支持されている。第3車輪33Rは、支持アーム71の右端部に接続されている。第3車輪33Lは、支持アーム71の左端部に接続されている。
支持ブロック72は、第4フレーム45に接続されている。支持ブロック72は、第4フレーム45から下方に向けて突出している。支持アーム71は、支持ブロック72により、回転中心軸136を中心に回転可能に支持されている。回転中心軸136は、前後方向に延びている。図3に示す上面視において、回転中心軸136は、前後方向に延びる走行体12の中心線110と重なっている。支持ブロック72には、支持ブロック72から後方に向けて突出し、回転中心軸136の軸上で延びるシャフト73が設けられており、そのシャフト73が、軸受けを介して支持アーム71に挿通されている。
このような構成により、走行体12が走行する下面の凹凸に合わせて、支持アーム71が回転中心軸136を中心に揺動運動する。これにより、第3車輪33を下面に対してより確実に接地させ、移動装置100の走行を安定させることができる。
図5は、図3中の走行用モータの配置の変形例を示す上面図である。図5を参照して、本変形例では、走行用モータ57が、第9軸161を中心とする回転を出力する。第9軸161は、前後方向に延びている。走行用モータ57は、第1フレーム42の下方に設けられている。減速機56は、走行用モータ57からの回転を減速しつつ、第9軸161を中心とする回転を第2軸122を中心とする回転に90°変換して、第1車輪31に伝達する。
本変形例によれば、左右方向に並ぶ第1車輪31および減速機56に対して走行用モータ57が直列に並ばないため、左右方向における第1車輪31Rおよび第1車輪31Lの間の間隔を小さくすることができる。
図6は、図1中の走行体を示す側面図である。図6中には、図1中のコントローラ14の構造の一部が追加して示されている。
図1および図6を参照して、コントローラ14は、底板76と、電子機器82と、ロボット支持部81とを有する。
底板76は、コントローラ14の底部に設けられている。底板76は、上下方向が厚み方向に対応する金属製の板材からなる。底板76上には、電子機器82およびロボット支持部81が設けられている。
電子機器82は、制御装置83を含む。制御装置83は、走行体12およびロボット16を制御する。制御装置83は、走行体12の走行用モータ57を制御したり、ロボット16の駆動用モータを制御したりする。電子機器82は、走行体12の周囲のマップ情報を検出するためのレーザセンサをさらに含んでもよい。電子機器82の下方には、バッテリ51が配置されている。
ロボット支持部81は、電子機器82の前方に設けられている。ロボット支持部81は、底板76から上方に離れた位置でロボット16を支持している。ロボット支持部81には、ロボット16の基台部26が接続されている。
カバー15は、板金から構成されており、コントローラ14の外観をなしている。カバー15は、ボルト等の締結部材を用いて、底板76に取り付けられている。カバー15は、電子機器82およびロボット支持部81を覆うように設けられている。カバー15は、底板76上に、電子機器82およびロボット支持部81を収容する内部空間を形成している。
図7は、図4中の2点鎖線VIIで囲まれた範囲の走行体と、コントローラの底板とを示す断面図である。図2から図7を参照して、走行体12は、保持ユニット60を有する。保持ユニット60は、走行体12に対してコントローラ14を保持している。
保持ユニット60は、弾性パッド61を有する。弾性パッド61は、弾性部材からなる。弾性パッド61は、上下方向が厚み方向に対応するシート状のゴム部材からなる。弾性パッド61は、コントローラ14の底板76と、走行体12との間に介挿されている。弾性パッド61は、コントローラ14の底板76と、フレーム部材41との間に介挿されている。コントローラ14は、弾性パッド61を介して、走行体12に搭載されている。弾性パッド61は、コントローラ14およびロボット16の重量を受けている。
図7に示されるように、保持ユニット60は、ベースプレート66と、位置決めピン68と、嵌合部材69とをさらに有する。
ベースプレート66は、上下方向が厚み方向に対応する金属製の板材からなる。ベースプレート66は、フレーム部材41に接続されている。ベースプレート66は、フレーム部材41の頂面41aに載置されている。ベースプレート66には、弾性パッド61が固定されている。
位置決めピン68は、ベースプレート66から上方に向けて突出するピン形状をなしている。位置決めピン68およびベースプレート66は、互いに隣り合ってベースプレート66上に設けられている。位置決めピン68は、上下方向において、底板76に挿通されている。底板76には、ピン挿入孔77が設けられている。ピン挿入孔77は、上下方向において底板76を貫通している。位置決めピン68は、ピン挿入孔77に挿入されている。
嵌合部材69は、筒体からなる。嵌合部材69は、底板76から突出する位置決めピン68に嵌合されている。嵌合部材69は、ナット70を用いて、位置決めピン68に対して止め付けられている。底板76は、上下方向において、嵌合部材69および弾性パッド61の間に挟持されている。なお、位置決めピン68に対するナット70の締め付け力は、弾性パッド61に作用していなくてもよい。
図2および図3に示されるように、走行体12は、複数の保持ユニット60(60fR,60fL,60rR,60rL)を有する。複数の保持ユニット60は、前後方向および左右方向に離れて配置されている。
保持ユニット60fRおよび保持ユニット60fLは、それぞれ、第1フレーム42Rおよび第1フレーム42Lに設けられている。保持ユニット60fRは、左右方向において、第2車輪32Rと隣り合って設けられている。保持ユニット60fLは、左右方向において、第2車輪32Lと隣り合って設けられている。保持ユニット60fRおよび保持ユニット60fLの各保持ユニット60においては、弾性パッド61および位置決めピン68が、前後方向に隣り合って設けられている。
保持ユニット60rRおよび保持ユニット60rLは、第4フレーム45に設けられている。保持ユニット60rRは、左右方向において、第3車輪33Rと隣り合って設けられている。保持ユニット60rLは、左右方向において、第3車輪33Lと隣り合って設けられている。保持ユニット60rRおよび保持ユニット60rLの各保持ユニット60においては、弾性パッド61および位置決めピン68が、左右方向に隣り合って設けられている。
図6に示されるように、保持ユニット60fRおよび保持ユニット60fLは、前後方向において、ロボット支持部81と揃う位置に設けられている。保持ユニット60rRおよび保持ユニット60rLは、電子機器82と揃う位置に設けられている。
移動装置100が下面に設置されたケーブルダクト等の凸部を乗り越えて走行する場合に、過大な振動が発生する。弾性パッド61によりコントローラ14を弾性支持する構成によって、このような振動がコントローラ14に伝わることを抑制できる。これにより、コントローラ14に設置される各種の電子機器82、特に、走行体12およびロボット16を制御する制御装置83を振動から適切に保護することができる。
また、ベースプレート66により弾性パッド61および位置決めピン68が一体とされた保持ユニット60を用いることによって、コントローラ14の弾性支持と、走行体12に対するコントローラ14の位置決めとの双方を、簡易な構成で実現することができる。このような構成において、底板76は、位置決めピン68を介して走行体12に固定され、カバー15は、その底板76に取り付けられている。この場合、図6に示されるように、カバー15に対してアイボルト等の吊り具350を取り付けることによって、移動装置100を吊り上げて輸送することが可能である。
なお、コントローラ14は、移動装置100がケーブルダクト等の下面上の凸部を乗り越えるタイミングで、移動装置100の走行速度を減速させる制御を実行してもよい。この場合に、コントローラ14は、コントローラ14に予め記憶された工場等のマップ情報に基づいて、速度制御を実行するタイミングを検出してもよい。
[第1車輪の支持構造]
続いて、第1車輪31の支持構造について説明する。図8は、図2中の走行体において、第1車輪の支持構造を示す斜視図である。図9は、図8中の第1車輪の支持構造(サスペンション機構の中立状態)を示す側面図である。図10は、図8中の第1車輪の支持構造(サスペンション機構の縮み状態)を示す側面図である。図11は、図8中の第1車輪の支持構造(サスペンション機構の伸び状態)を示す側面図である。
なお、サスペンション機構220の中立状態とは、下面310と接触する第1車輪31の最底部と、下面310と接触する第2車輪32および第3車輪33の最底部とが、同じ高さになる時のサスペンション機構220の状態に対応している。サスペンション機構220の縮み状態とは、サスペンション機構220が上記中立状態から短縮動作した時のサスペンション機構220の状態に対応している。サスペンション機構220の伸び状態とは、サスペンション機構220が上記中立状態から伸張動作した時のサスペンション機構220の状態に対応している。
図2、図3および図8から図11を参照して、ベース部40は、第1ブロック46と、第2ブロック47(47S,47T)と、第3ブロック48(48S,48T)とをさらに有する。
第1ブロック46、第2ブロック47および第3ブロック48は、フレーム部材41に対して固定されており、以下に説明する第1車輪31の昇降動作およびサスペンション機構220の伸縮動作に伴って動作しない固定側の部材である。第1ブロック46、第2ブロック47および第3ブロック48は、左右方向において、後出の第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tの間に設けられている。
第1ブロック46は、第1フレーム42に接続されている。第1ブロック46は、第1フレーム42から下方に向けて突出している。第2ブロック47は、第1ブロック46に接続されている。第2ブロック47は、第1ブロック46の後面に締結されている。第2ブロック47Sおよび第2ブロック47Tは、左右方向において、互いに間隔を開けて設けられている。
第3ブロック48は、第1フレーム42に接続されている。第3ブロック48は、第1フレーム42から下方に向けて突出している。第3ブロック48は、第2ブロック47から後方に離れた位置に設けられている。第3ブロック48Sおよび第3ブロック48Tは、左右方向において、互いに間隔を開けて設けられている。
移動装置100(走行体12)は、車輪ユニット200を有する。車輪ユニット200は、第1車輪31が移動可能にベース部40に支持されている。車輪ユニット200は、第1車輪31が昇降可能なようにベース部40に支持されている。
車輪ユニット200は、第1車輪31と、アーム部材211と、連結部材212とを有する。アーム部材211は、前後方向に沿ってアーム状に延びている。アーム部材211は、左右方向が厚み方向に対応する金属製の板部材からなる。アーム部材211は、ベース部40により第1軸121を中心に回転可能なように支持されている。
アーム部材211は、図9に示すサスペンション機構220の中立状態において、前後方向に平行に延びている。
車輪ユニット200は、アーム部材211として、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tを有する。第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tは、左右方向において、互いに間隔を開けて設けられている。第1アーム部材211Sは、第2アーム部材211Tよりも、左右方向における走行体12の外側に設けられている。第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tは、連結部材212により互いに連結されている。
連結部材212は、左右方向に軸状に延びている。左右方向における連結部材212の両端部が、それぞれ、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tに接続されている。連結部材212は、第1ブロック46を挟んで第1車輪31の反対側に設けられている。第1車輪31は、第1ブロック46の前方に設けられている。第1ブロック46は、連結部材212の後方に設けられている。前後方向における第1ブロック46および連結部材212の間の距離は、前後方向における第1ブロック46および第1車輪31の間の距離よりも小さい。
車輪ユニット200は、連結部材212として、第1連結部材212Aおよび第2連結部材212Bを有する。第1連結部材212Aおよび第2連結部材212Bは、上下方向において、互いに間隔を開けて設けられている。第1連結部材212Aは、第2連結部材212Bの上方に設けられている。
アーム部材211は、第1ブロック46により第1軸121を中心に回転可能なように支持されている。第1車輪31は、左右方向において、第1アーム部材211Sを挟んで、第1ブロック46の反対側に配置されている。第1車輪31は、第1軸121からその半径方向に離れた位置で、第1アーム部材211Sにより支持されている。第1車輪31は、第1軸121から後方に離れた位置で、第1アーム部材211Sにより支持されている。
なお、第1車輪31は、第2アーム部材211Tにより支持されてもよいし、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tの双方により支持されてもよい。
図9および図10に示されるように、第1車輪31がサスペンション機構220の中立状態から上昇動作するとき、アーム部材211が第1軸121を中心に時計回り方向に揺動する。図9および図11に示されるように、第1車輪31がサスペンション機構220の中立状態から下降動作するとき、アーム部材211が第1軸121を中心に反時計回り方向に揺動する。
移動装置100(走行体12)は、サスペンション機構220をさらに有する。サスペンション機構220は、第1車輪31に対して作用させるための付勢力を発生する。
サスペンション機構220は、前後方向に沿って延びている。サスペンション機構220は、前後方向におけるサスペンション機構220の全長が、上下方向におけるサスペンション機構220の全高よりも大きくなるように、横たわった姿勢で設けられている。
サスペンション機構220は、左右方向に見て、サスペンション機構220の少なくとも一部がアーム部材211と重なり合うように配置されている。サスペンション機構220は、左右方向において、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tの間に設けられている。サスペンション機構220は、フレーム部材41(第1フレーム42)の下方に設けられている。サスペンション機構220は、第2車輪32および第3車輪33の最頂部よりも低い位置に設けられている。サスペンション機構220は、前後方向において、第1軸121および第2軸122の間に設けられている。サスペンション機構220は、減速機56の後方に配置されている。
第1軸121は、前後方向において、サスペンション機構220を挟んで第1車輪31の反対側に位置している。バッテリ51は、前後方向において、第1車輪31を挟んでアーム部材211の反対側に配置されている。
サスペンション機構220の一方端部(前端部)は、ベース部40により、第3軸123を中心に回転可能に支持されている。第3軸123は、サスペンション機構220の回転中心に対応する仮想上の直線であり、左右方向に延びている。第3軸123は、前後方向において、第1軸121および第2軸122の間に位置している。第3軸123は、第1軸121よりも上方に位置している。第2ブロック47は、第3軸123の軸上に設けられている。
サスペンション機構220は、バネ部材221と、ショックアブソーバ222とを有する。ショックアブソーバ222は、オイルまたはガス等が封入されたシリンダと、シリンダと組み合わされ、前後方向に沿って伸張動作および短縮動作が可能なロッドとから構成されている。ショックアブソーバ222のシリンダの前端部は、第2ブロック47Sおよび第2ブロック47Tの間に挿入され、第2ブロック47Sおよび第2ブロック47Tによって、第3軸123を中心に回転可能に支持されている。
バネ部材221は、コイルバネからなる。バネ部材221は、ショックアブソーバ222の外周上に組み合わされている。バネ部材221は、伸張方向のバネ力をショックアブソーバ222のロッドに作用させている。
移動装置100(走行体12)は、リンク機構230をさらに有する。リンク機構230は、サスペンション機構220および車輪ユニット200に対して接続されている。リンク機構230は、サスペンション機構220の他方端部(後端部)に接続されている。リンク機構230は、ショックアブソーバ222のロッドの後端部に接続されている。リンク機構230は、アーム部材211に接続されている。リンク機構230は、サスペンション機構220からの付勢力を受けて、第1車輪31を下面310に向けて押し付けている。
リンク機構230は、前後方向において、第1軸121および第2軸122の間に設けられている。リンク機構230は、左右方向において、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tの間に設けられている。リンク機構230は、フレーム部材41(第1フレーム42)の下方に設けられている。
リンク機構230は、第1プレート231(231S,231T)と、第2プレート241(241S,241T)とを有する。
第1プレート231は、左右方向が厚み方向に対応する板部材からなる。第1プレート231は、ベース部40により、第4軸124を中心に回転可能に支持されている。第4軸124は、ベース部40(第3ブロック48)に対する第1プレート231の回転中心に対応する仮想上の直線であり、左右方向に延びている。第4軸124は、前後方向において、第1軸121および第2軸122の間に位置している。第4軸124は、前後方向において、第3軸123および後出の第6軸126の間に位置している。
第1プレート231は、第3ブロック48により、第4軸124を中心に回転可能に支持されている。図8に示されるように、第1プレート231は、左右方向において、第3ブロック48Sおよび第3ブロック48Tの間に設けられている。第1プレート231Sは、左右方向において、第3ブロック48Sと隣り合って設けられている。第1プレート231Tは、左右方向において、第3ブロック48Tと隣り合って設けられている。第1プレート231Sおよび第1プレート231Tには、第3ブロック48Sおよび第3ブロック48Tの間において第4軸124の軸上で延びるシャフト部材(不図示)が挿通されている。そのシャフト部材と、第1プレート231Sおよび第1プレート231Tとの間には、滑り軸受け等の軸受けが介挿されている。軸受けは、第4軸124を中心とする円筒形状を有しており、シャフト部材と、第1プレート231Sおよび第1プレート231Tとの間の相対的な回転運動を可能にしている。
第1プレート231Sおよび第1プレート231Tは、左右方向において、互いに間隔を開けて設けられている。ショックアブソーバ222のロッドの後端部は、左右方向において、第1プレート231Sおよび第1プレート231Tの間に挿入されている。
第1プレート231(231S,231T)は、サスペンション機構220の他方端部(ショックアブソーバ222のロッドの後端部)に対して、第5軸125を中心に回転可能に接続されている。第5軸125は、ショックアブソーバ222のロッドの後端部に対する第1プレート231の回転中心に対応する仮想上の直線であり、左右方向に延びている。第5軸125は、第4軸124からその半径方向に離れて位置している。第5軸125は、第4軸124よりも上方に位置している。ショックアブソーバ222のロッドの後端部には、第1プレート231Sおよび第1プレート231Tの間において第5軸125の軸上で延びるシャフト部材(不図示)が挿通されている。
第2プレート241は、左右方向が厚み方向に対応する板部材からなる。第2プレート241は、左右方向において、第1プレート231と部分的に重なっている。第2プレート241は、少なくとも後出の第7軸127を含む範囲で、第1プレート231と重なっている。第2プレート241は、左右方向において、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tの間に設けられている。第2プレート241Sは、左右方向において、第1アーム部材211Sと隣り合って設けられている。第2プレート241Tは、左右方向において、第2アーム部材211Tと隣り合って設けられている。
第2プレート241は、アーム部材211に対して、第6軸126を中心に回転可能に接続されている。第6軸126は、アーム部材211に対する第2プレート241の回転中心に対応する仮想上の直線であり、左右方向に延びている。第6軸126は、前後方向において、第4軸124および第2軸122の間に位置している。第6軸126は、前後方向において、第5軸125および第2軸122の間に位置している。第2プレート241Sおよび第2プレート241Tには、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tの間において第6軸126の軸上で延びるシャフト部材(不図示)が挿通されている。
第2プレート241は、第1プレート231に対して、第7軸127を中心に回転可能に接続されている。第7軸127は、第1プレート231に対する第2プレート241の回転中心に対応する仮想上の直線であり、左右方向に延びている。第7軸127は、第6軸126からその半径方向に離れて位置している。第7軸127は、第4軸124からその半径方向に離れて位置している。第7軸127は、前後方向において、第4軸124および第2軸122の間に位置している。第7軸127は、第4軸124よりも後方に位置している。第7軸127は、第6軸126よりも下方に位置している。第1プレート231S、第2プレート241S、第1プレート231Tおよび第2プレート241Tには、第7軸127の軸上で延びるシャフト部材(不図示)が挿通されている。そのシャフト部材と、第2プレート241Sおよび第2プレート241Tとの間には、滑り軸受け等の軸受けが介挿されている。軸受けは、第7軸127を中心とする円筒形状を有しており、シャフト部材と、第2プレート241Sおよび第2プレート241Tとの間の相対的な回転運動を可能にしている。
第4軸124および第5軸125の間の距離は、第4軸124および第7軸127の間の距離よりも大きい。
バネ部材221のバネ力によるサスペンション機構220からの付勢力は、第1プレート231および第2プレート241を介して、アーム部材211に伝達される。アーム部材211は、サスペンション機構220からの付勢力を受けて、第1軸121を中心とする反時計回り方向に付勢される。これにより、アーム部材211により支持される第1車輪31は、下面310に対して押し付けられる。
図9および図10を参照して、第1車輪31が下面310の凸部を通過するときに上昇動作すると、アーム部材211は、第1軸121を中心に時計回り方向に揺動する。アーム部材211の揺動運動に伴って、第2プレート241が、第6軸126を中心に反時計回り方向に揺動し、第1プレート231が、第4軸124を中心に時計回り方向に揺動する。第1プレート231の揺動運動に伴って、第5軸125が、第3軸123に近づく方向に移動することにより、サスペンション機構220が圧縮動作する。このとき、サスペンション機構220の両端部を支持する第3軸123および第5軸125の間に相対的な位置ずれが生じるが、サスペンション機構220が第3軸123を中心に揺動することによって、この位置ずれが吸収される。
図9および図11を参照して、第1車輪31が下面310の凹部を通過するときに下降動作すると、アーム部材211は、第1軸121を中心に反時計回り方向に揺動する。アーム部材211の揺動運動に伴って、第2プレート241が、第6軸126を中心に時計回り方向に揺動し、第1プレート231が、第4軸124を中心に反時計回り方向に揺動する。第1プレート231の揺動運動に伴って、第5軸125が、第3軸123から遠ざかる方向に移動することにより、サスペンション機構220が伸張動作する。このとき、サスペンション機構220の両端部を支持する第3軸123および第5軸125の間に相対的な位置ずれが生じるが、サスペンション機構220が第3軸123を中心に揺動することによって、この位置ずれが吸収される。
図9に示されるサスペンション機構220の中立状態において、第3軸123は、第1軸121よりも、後方かつ上方の位置に配置されている。第4軸124および第5軸125は、第3軸123よりも後方であって、互いに前後方向に揃った位置に配置されている。第5軸125は、第4軸124よりも上方に配置されている。第6軸126および第7軸127は、第4軸124および第5軸125よりも後方であって、互いに前後方向において揃った位置に配置されている。第2軸122は、第6軸126および第7軸127よりも後方に配置されている。第3軸123、第5軸125および第6軸126は、上下方向に揃った位置に(同じ高さに)配置されている。第4軸124、第7軸127および第2軸122は、上下方向に揃った位置に配置されている。第1軸121は、第3軸123、第5軸125および第6軸126よりも下方であって、第4軸124、第7軸127および第2軸122よりも上方の位置に配置されている。
図10に示されるサスペンション機構220の縮み状態において、第1軸121、第3軸123、第5軸125、第4軸124、第7軸127、第6軸126および第2軸122が、挙げた順に、走行体12の前から後に並んでいる。第2軸122は、第1軸121よりも上方の位置に配置されている。第5軸125は、第4軸124よりも上方の位置に配置され、第7軸127は、第5軸125よりも上方の位置に配置され、第6軸126は、第7軸127よりも上方の位置に配置されている。第1軸121は、第4軸124よりも上方の位置であって、第5軸125よりも下方の位置に配置されている。第2軸122は、第7軸127よりも上方の位置であって、第6軸126よりも下方の位置に配置されている。
図11に示されるサスペンション機構220の伸び状態において、第1軸121、第3軸123、第4軸124、第5軸125、第7軸127、第6軸126および第2軸122が、挙げた順に、走行体12の前から後に並んでいる。第2軸122は、第1軸121よりも下方の位置に配置されている。第6軸126は、第7軸127よりも上方の位置に配置され、第4軸124は、第6軸126よりも上方の位置に配置され、第5軸125は、第4軸124よりも上方の位置に配置されている。第1軸121は、第4軸124よりも上方の位置であって、第5軸125よりも下方の位置に配置されている。第2軸122は、第7軸127よりも下方の位置に配置されている。
以上に説明したように、本実施の形態における走行体12は、ベース部40と、第1車輪31を有し、第1車輪31が移動可能にベース部40に支持される車輪ユニット200と、付勢力を発生するサスペンション機構220と、サスペンション機構220および車輪ユニット200に対して接続され、サスペンション機構220からの付勢力を受けて、第1車輪31を下面310に向けて押し付けるリンク機構230とを備える。
このように構成された走行体12によれば、サスペンション機構220からの付勢力により、第1車輪31が下面310に向けて押し付けられるため、第1車輪31の接地力を高めて、走行体12の走行性を向上させることができる。走行体12は、走行性の向上によって、ケーブルダクト等の凸部を乗り越えて走行可能となるため、移動装置100の移動性(mobile)を向上させることができる。このような構成において、リンク機構230によって、サスペンション機構220からの付勢力の方向を適切に変換して車輪ユニット200に伝達することが可能となるため、走行体12上に搭載されるサスペンション機構220の姿勢を自在に設定することができる。これにより、サスペンション機構220の搭載にあたって、走行体12の車高を低く維持することができる。
仮にサスペンション機構を上下に立設する姿勢で設置した場合、走行体の車高の制限によって、コイルバネの全長を短くする必要がある。この場合、コイルバネの全長に占める伸縮長さの割合が大きくなるため、コイルバネの耐久性を十分に確保することができない。一方、本実施の形態では、サスペンション機構220が横たわった姿勢で設置されるため、サスペンション機構220を設置するスペースを、バネ部材221の伸縮方向において大きく確保し易い。このため、バネ部材221の耐久性に対する上記懸念を解消することができる。
また、車輪ユニット200は、ベース部40により、左右方向に延びる第1軸121を中心に回転可能に支持されるアーム部材211をさらに有する。第1車輪31は、アーム部材211により、左右方向に延び、第1軸121から前後方向に離れて位置する第2軸122を中心に回転可能に支持される。
このような構成によれば、第1軸121を中心とするアーム部材211の揺動運動に伴って、第1車輪31を第1軸121の周方向に移動させることができる。これにより、第1車輪31が移動可能にベース部40に支持される車輪ユニット200を、簡易な構成により実現することができる。
また、サスペンション機構220は、左右方向に見て、サスペンション機構220の少なくとも一部がアーム部材211と重なり合うように配置される。
このような構成によれば、サスペンション機構220の搭載にあたって、走行体12の車高をより低く維持することができる。
また、サスペンション機構220は、前後方向において、第1軸121および第2軸122の間に配置される。
このような構成によれば、サスペンション機構220を、前後方向においてコンパクトに搭載することができる。
また、第1軸121は、前後方向において、サスペンション機構220を挟んで第1車輪31の反対側に位置している。走行体12は、前後方向において、第1車輪31を挟んでアーム部材211の反対側に配置されるバッテリ51をさらに備える。
このように構成された走行体12によれば、第1軸121が、前後方向において、サスペンション機構220を挟んで第1車輪31の反対側に位置する構成により、前後方向におけるアーム部材211の長さが、前後方向におけるサスペンション機構220の長さと比較して、大きく設定されている。この場合、第1軸121を中心とするアーム部材211の揺動運動に伴って、第1車輪31が第1軸121の周方向に移動した場合に、第1車輪31の軌跡の曲率が小さくなるため、第1車輪31がバッテリ51(図8中のバッテリケース52)と干渉し難くなる。これにより、バッテリ51を第1車輪31により近づけて配置することが可能となるため、走行体12をコンパクトに構成することができる。
また、走行体12は、ベース部40(第1ブロック46)により、第1軸121を中心に回転可能に支持される第2車輪32をさらに備える。
このような構成によれば、アーム部材211および第2車輪32の回転中心軸を共軸にすることにより、アーム部材211および第2車輪32の支持構造を簡易にできる。
また、サスペンション機構220の一方端部は、ベース部40により、左右方向に延び、前後方向において、第1軸121および第2軸122の間に位置する第3軸123を中心に回転可能に支持される。リンク機構230は、ベース部40により、左右方向に延び、前後方向において、第3軸123および第2軸122の間に位置する第4軸124を中心に回転可能に支持され、サスペンション機構220の他方端部に対して、左右方向に延び、第4軸124からその半径方向に離れた第5軸125を中心に回転可能に接続される第1プレート231と、アーム部材211に対して、左右方向に延び、前後方向において、第4軸124および第2軸122の間に位置する第6軸126を中心に回転可能に接続され、第1プレート231に対して、左右方向に延び、第4軸124および第6軸126の各軸からその半径方向に離れた第7軸127を中心に回転可能に接続される第2プレート241とを有する。
このような構成によれば、サスペンション機構220の伸縮動作と、第1車輪31の移動(昇降動作)とを、第3軸123を中心とするベース部40に対するサスペンション機構220の揺動運動と、第4軸124を中心とするベース部40に対する第1プレート231の揺動運動と、第6軸126を中心とするアーム部材211に対する第2プレート241の揺動運動と、第1軸121を中心とするベース部40に対するアーム部材211の揺動運動とを介して、互いに連動させることができる。
また、第4軸124および第5軸125の間の距離は、第4軸124および第7軸127の間の距離よりも大きい。
このような構成によれば、サスペンション機構220の伸縮長さを小さく抑えつつ、第1車輪31の移動長さ(昇降動作のストローク)を大きく設定することができる。
また、車輪ユニット200は、左右方向において、互いに間隔を開けて配置される一対のアーム部材211(211S,211S)を有する。サスペンション機構220は、一対のアーム部材211(211S,211S)の間に配置される。
このような構成によれば、サスペンション機構220および第1車輪31の間を接続するアーム部材211の剛性を十分に確保することができる。
また、ベース部40は、下面310に平行に配置され、前後方向に延びるフレーム部材41(第1フレーム42)を有する。サスペンション機構220は、フレーム部材41(第1フレーム42)の下方に設けられる。
このような構成によれば、サスペンション機構220の搭載にあたって、走行体12の車高をより低く維持することができる。
図12は、アーム部材の下降側揺動端を規制するための機構を模式的に示す断面図である。図13は、アーム部材の上昇側揺動端を規制するための機構を模式的に示す断面図である。
図2、図12および図13を参照して、連結部材212は、第1軸121の周方向において第1ブロック46と隙間を設けて配置されている。第1連結部材212Aは、第1軸121の周方向に沿った一方方向(図12および図13中の反時計回り方向)において、第1ブロック46と隙間を設けて配置されている。第2連結部材212Bは、第1軸121の周方向に沿った他方方向(図12および図13中の時計回り方向)において、第1ブロック46と隙間を設けて配置されている。
第1ブロック46は、前面46Cを有する。前面46Cは、前方を向き、前後方向に直交する平面である。サスペンション機構220の中立状態において、第1連結部材212Aおよび第2連結部材212Bと、前面46Cとの間には、前後方向における隙間が設けられている。
第1ブロック46には、第1雌ねじ孔252と、第2雌ねじ孔257とが設けられている。第1雌ねじ孔252および第2雌ねじ孔257は、前後方向に延び、前面46Cに開口している。第1雌ねじ孔252および第2雌ねじ孔257は、第1連結部材212Aおよび第2連結部材212Bと同じ間隔で、上下方向に並んで設けられている。
走行体12は、第1止め部材251および第2止め部材256をさらに有する。第1止め部材251および第2止め部材256は、ホロセットねじからなる。第1止め部材251および第2止め部材256は、それぞれ、第1雌ねじ孔252および第2雌ねじ孔257に螺合されている。
第1連結部材212Aは、第1軸121の周方向に沿った一方方向(図12中の反時計回り方向)において、第1止め部材251の先端部と隙間を設けて配置されている。第2連結部材212Bは、第1軸121の周方向に沿った他方方向(図13中の時計回り方向)において、第2止め部材256の先端部と隙間を設けて配置されている。
連結部材212は、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tを連結する手段としてのほかに、第1軸121を中心とするアーム部材211の揺動端を規制する手段として機能している。
図12に示されるように、第1車輪31の下降動作時、第1連結部材212Aが第1止め部材251と当接することによって、第1軸121を中心とするアーム部材211の下降側揺動端が規制されている。第1雌ねじ孔252からの第1止め部材251の突出長さを増減させることによって、アーム部材211の下降側揺動端の角度を調整することが可能である。図13に示されるように、第1車輪31の上昇動作時、第2連結部材212Bが第2止め部材256と当接することによって、第1軸121を中心とするアーム部材211の上昇側揺動端が規制されている。第2雌ねじ孔257からの第2止め部材256の突出長さを増減させることによって、アーム部材211の上昇側揺動端の角度を調整することが可能である。
本実施の形態では、車輪ユニット200が、連結部材212として、第1軸121の周方向に沿った一方方向において第1ブロック46と隙間を設けて配置される第1連結部材212Aと、第1連結部材212Aと間隔を開けて設けられ、第1軸121の周方向に沿った他方方向において第1ブロック46と隙間を設けて配置される第2連結部材212Bとを有する。このような構成により、第1連結部材212Aおよび第2連結部材212Bによって、第1アーム部材211Sおよび第2アーム部材211Tをより強固に連結するとともに、アーム部材211の下降側揺動端および上昇側揺動端をそれぞれ規制することができる。
また、連結部材212(212A,212B)は、第1ブロック46を挟んで第1車輪31の反対側(第1ブロック46の前方側)に配置される一方で、サスペンション機構220およびリンク機構230は、第1ブロック46を挟んで連結部材212の反対側(第1ブロック46の後方側)に配置されている。このような構成によれば、連結部材212(212A,212B)と、サスペンション機構220およびリンク機構230とを、互いに干渉させることなく、第1ブロック46の前後に効率的に配置することができる。
なお、アーム部材211の揺動端を規制する手段は、上記に限定されない。たとえば、第1車輪31の上昇動作時に、第1車輪31が、図2中のバッテリケース52の鍔部52jと当接する構成によって、アーム部材211の揺動端が規制されてもよい。また、サスペンション機構220におけるショックアブソーバ222のストロークエンドによって、アーム部材211の揺動端が規制されてもよい。
図14は、車輪ユニットの保持機構(ボルト挿入前)を示す斜視図である。図15は、車輪ユニットの保持機構(ボルト挿入後)を示す斜視図である。図16は、第1車輪の引き上げ時の走行体を示す側面図である。
図14から図16を参照して、走行体12は、保持機構330をさらに有する。保持機構330は、第1車輪31が下面310から離間した状態が維持されるように、車輪ユニット200を保持可能なように構成されている。保持機構330は、第1車輪31が下面310から離間した状態が維持されるように、アーム部材211(第1アーム部材211S)を第1軸121の周方向の所定角度に保持可能なように構成されている。
保持機構330は、引き上げ用ブロック321を有する。引き上げ用ブロック321は、車輪ユニット200に取り付けられている。引き上げ用ブロック321は、アーム部材211(第1アーム部材211S)に接続されている。引き上げ用ブロック321は、アーム部材211(第1アーム部材211S)から左右方向に向けて突出している。引き上げ用ブロック321には、ねじ部322が設けられている。ねじ部322は、引き上げ用ブロック321を上下方向に貫通する雌ねじ孔からなる。
保持機構330は、ブラケット341と、ボルト331とをさらに有する。ブラケット341は、ベース部40に取り付けられている。ブラケット341は、ボルトを用いて、第1フレーム42に締結されている。ブラケット341は、上下方向において、引き上げ用ブロック321と対向して設けられている。ブラケット341には、係止部342が設けられている。係止部342は、上下方向において、ブラケット341の底板343を貫通するボルト挿入孔からなる。ボルト331の軸部333は、係止部342に挿入され、ねじ部322に螺合されている。ボルト331の頭部332は、底板343における係止部342の縁部により係止されている。
移動装置100による搬送途中にバッテリ51が充電切れした場合、作業者が移動装置100を手押しにより充電場所まで移動させる必要がある。この場合に、走行用モータ57に接続された第1車輪31が下面310に接触したままであると、移動装置100の移動に要する労力が大きくなる。これに対して、ボルト331の軸部333をねじ部322に対して締め付けることによって、アーム部材211を第1軸121を中心とする時計回り方向に揺動させ、第1車輪31を下面310から離間した状態を得ることができる。これにより、従動輪である第2車輪32および第3車輪33だけを下面310に接地させて、移動装置100をより小さい労力で移動させることができる。
なお、本発明における保持機構は、車輪ユニット(アーム部材)を第1軸の周方向における所定角度に保持可能な構造であれば、特に限定されるものではない。たとえば、引き上げ用ブロック321が、ベース部40側に取り付けられ、ブラケット341が、車輪ユニット200側に取り付けられる構成であってもよい。また、本発明における保持機構は、アーム部材211の前端部に設けられるフットペダルと、フットペダルを踏むことによって上昇側に揺動したアーム部材211を係止する係止手段とから構成されてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。