JP7489936B2 - ガスセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、ガスセンサに関する。
従来、自動車の排気ガスなどの被測定ガスにおけるNOxや酸素などの所定のガス濃度を検出するガスセンサが知られている。例えば、特許文献1には、ガス導入口から内部に流入した被測定ガスの所定のガス濃度を検出可能なセンサ素子と、センサ素子の先端を覆う外側保護カバーと、外側保護カバーとセンサ素子との間に配置された内側保護カバーと、を備えたガスセンサが記載されている。特許文献1の内側保護カバーは、外側保護カバーの外側ガス孔からセンサ素子のガス導入口に達するまでの被測定ガスの経路中に、センサ素子の後端側から先端側へ向かい且つガス導入口の配置された空間に開口したガス流路を形成している。これにより、所定のガス濃度検出の応答性とセンサ素子の保温性とを両立することができるとしている。また、例えば、特許文献2には、内部空所に導入された被測定ガスのNOx濃度を測定するNOxセンサ部に加え、センサ素子の表面に形成されたNH3検知電極を備えたNH3ガスセンサ部を有するガスセンサが記載されている。
国際公開第2014/192945号パンフレット 特開2018-40746号公報
ところで、特許文献1のガスセンサにおいて特許文献2のセンサ素子を採用した場合、言い換えると、特許文献1のガスセンサにおいて所定のガス(以下第1特定ガスとも称する)とは異なるガス(以下第2特定ガスとも称する)を検知する検知電極をセンサ素子の表面に追加した場合、第1特定ガスに対する応答性は良好なものの、以下の問題があった。すなわち、被測定ガスが検知電極に到達するのに時間がかかり、第2特定ガスに対する応答性が低いことがあった。そこで、第2特定ガスに対する応答性を高めるために、内側保護カバーに入口を追加することを検討している。しかし、検知電極が多孔質の保護層で覆われている場合に、追加する入口の位置によっては第2特定ガスに対する感度が低下してしまうことがあった。そのため、第2特定ガスに対するガスセンサの感度の低下を抑制することが望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、第2特定ガスに対するガスセンサの感度の低下を抑制することを主目的とする。
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のガスセンサは、
先端と該先端とは反対側の後端とを有し、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部が内部に設けられた素子本体を備え、前記被測定ガス流通部の入口であるガス導入口から前記被測定ガス流通部に流入した前記被測定ガス中の第1特定ガスの濃度を検出するための検出部を備えたセンサ素子と、
前記センサ素子の前記先端及び前記ガス導入口が内部に配置されるセンサ素子室を内側に有し、該センサ素子室への入口である1以上の素子室入口と該センサ素子室からの出口である1以上の素子室出口とが配設された筒状の内側保護カバーと、
前記被測定ガスの外部からの入口である1以上の外側入口と前記被測定ガスの外部への出口である1以上の外側出口とを有し、前記内側保護カバーの外側に配設された筒状の外側保護カバーと、
を備え、
前記センサ素子は、前記被測定ガス中の前記第1特定ガスとは異なる第2特定ガスの濃度に応じた起電力を生じる混成電位セルを備え、
前記混成電位セルは、前記素子本体の外部かつ前記ガス導入口よりも後方に配設された検知電極を備え、
前記検知電極は、前記センサ素子室の内部に配置され、
前記内側保護カバーは、前記センサ素子の周囲を囲む筒状の第1部材と、該第1部材の周囲を囲む筒状の第2部材とを有し、前記素子室入口として、前記第1部材に配設された1以上の第1入口と、前記第1部材及び前記第2部材の間の隙間として形成された1以上の第2入口と、を有し、
前記第2入口の前記センサ素子室側の開口は、前記検知電極及び前記第1入口よりも前方に配置され、かつ、前方に向けて開口し、
前記検知電極を覆う多孔質の保護層を備え、
前記1以上の前記第1入口のうちの少なくとも1つは、前記第1部材の軸線方向に垂直な仮想平面に前記第1部材及び前記センサ素子を垂直投影した仮想投影図において、前記センサ素子のうち前記検知電極が配設された配設面に垂直で前記配設面の中心から前記素子本体とは反対側に引いた第1直線と、前記配設面の前記中心から前記第1入口の中心に向けて引いた第2直線と、のなす角度θが73.6°以下となるように配置されている、
ものである。
このガスセンサでは、ガスセンサの周囲を流れる被測定ガスが、外側保護カバーの外側入口から外側保護カバー内に流入し、内側保護カバーの素子室入口からセンサ素子室内に流入し、ガス導入口及び検知電極に到達する。ここで、素子室入口のうち第1入口は、センサ素子を囲む筒状の第1部材に配設されている。また、素子室入口のうち第2入口は、筒状の第1部材と第1部材の周囲を囲む筒状の第2部材との間の隙間として形成されている。さらに、第2入口のセンサ素子室側の開口は、検知電極及び第1入口よりも前方に配置され、かつ、前方に向けて開口している。このように形成された素子室入口では、第2入口からセンサ素子室内に流入する被測定ガスは、センサ素子の後端側から先端側、言い換えると後方から前方へ向かう流れとして、検知電極よりも前方からセンサ素子室内に流入する。このため、第2入口からセンサ素子室内に流入する被測定ガスは、検知電極よりも前方にあるガス導入口に素早く到達する。また、第1入口からセンサ素子室内に流入する被測定ガスは、ガス導入口よりも後方に配置された検知電極に素早く到達する。ところで、このガスセンサは検知電極を覆う多孔質の保護層を備えている。保護層を備えたガスセンサでは、検出部が第1特定ガスの濃度の検出に適した所定の高温になるように素子本体が加熱されるのに伴って保護層も高温になる。このため、保護層を備えたガスセンサでは、第1入口からセンサ素子室内に流入した被測定ガスが検知電極に至るまでの間に高温の保護層と接触することによって被測定ガス中の第2特定ガスが燃焼するなどして、第2特定ガスに対する感度が低下することがある。しかし、本発明のガスセンサでは、角度θが73.6°以下の第1入口を有している。角度θが73.6°以下の第1入口では、第1入口からセンサ素子室内に流入した被測定ガスが検知電極に至るまでの間に保護層と接触する距離が比較的短い。以上により、このガスセンサでは、被測定ガス中の第2特定ガスに対する感度の低下が抑制される。なお、第2入口のセンサ素子室側の開口に関し、「前方に向けて開口している」とは、後方や真横(前方に垂直な方向)に向けて開口している場合を除く趣旨である。このため、第2入口のセンサ素子室側の開口は、例えば、前後方向と平行に開口していてもよいし、前方に向かうにつれてセンサ素子に近づくように前後方向から傾斜して開口していてもよい。
本発明のガスセンサにおいて、前記第1部材には複数の前記第1入口が配設されており、前記仮想投影図において、前記配設面の前記中心を回転中心にして前記第1直線を73.6°回転した直線を第3直線とし、前記第1直線を前記第3直線とは反対に73.6°回転した直線を第4直線とし、前記第3直線と前記第1部材の内周面との交点を第1交点とし、前記第4直線と前記第1部材の前記内周面との交点を第2交点とすると、前記第1部材の周方向において、隣合う前記第1入口の前記中心同士の間隔が、前記第1交点と前記第2交点との間隔以下となるように、全ての前記第1入口が配設されていてもよい。第1入口がこのように配設されていれば、センサ素子に対する第1部材の取り付け向きによらず、第1入口のうち少なくとも1つにおいて角度θが73.6°以下となる。このため、角度θが73.6°以下の第1入口を有するガスセンサを製造しやすい。
本発明のガスセンサにおいて、全ての前記第1入口は、前記角度θが23.5°以上となるように配置されていてもよい。角度θが23.5°未満の第1入口では、第1入口の軸線方向に平行に真っ直ぐにセンサ素子室内に流入した比較的流速の速い被測定ガスが検知電極に当たることで検知電極が劣化しやすいことがあるが、そのような第1入口がないため、検知電極の劣化が抑制される。
本発明のガスセンサにおいて、前記1以上の前記第1入口のうちの少なくとも1つは、前記角度θが39.1°以下となるように配置されていてもよい。角度θが39.1°以下の第1入口を有するガスセンサでは、被測定ガス中の第2特定ガスに対する感度の低下がより抑制される。
本発明のガスセンサにおいて、前記1以上の前記第1入口のうちの少なくとも1つは、前記第1入口から前記検知電極までの最短経路長L1が、前記第2入口から前記検知電極までの最短経路長L2よりも短い位置に配置されていてもよい。検知電極により近い位置に第1入口が配置されているため、第2特定ガスに対する応答性がより良好なものとなる。
本発明のガスセンサにおいて、前記検出部は、前記素子本体の外部に配設された外側電極を備え、前記検知電極は、前記外側電極よりも後方に配設されていてもよい。検知電極が外側電極よりも後方に配設されている場合には、第2入口から検知電極までの最短経路長L2が比較的長く、第2入口からセンサ素子室内に流入する被測定ガスが検知電極まで到達するのに時間がかかるため、第1入口を設ける意義が高い。
本発明のガスセンサにおいて、全ての前記第1入口は、前記第1入口を該第1入口の軸線方向に平行に前記素子本体の表面に向けて投影した投影領域に前記検知電極が重ならない位置に配置されていてもよい。こうすれば、第1入口の軸線方向に平行に真っ直ぐにセンサ素子室内に流入した比較的流速の速い被測定ガスが検知電極に直接当たらないため、検知電極の劣化が抑制される。
本発明のガスセンサにおいて、前記第1部材は、円筒状の側部を有し、前記第1入口は、前記第1部材の前記側部に配設された孔であってもよい。
本発明のガスセンサにおいて、前記1以上の前記第1入口のうちの少なくとも1つでは、前記第1入口から前記検知電極までの最短経路長L1は、12.0mm以下であり、全ての前記第1入口では、前記第1入口から前記検知電極までの最短経路長L1が0.2mm以上であってもよい。全ての第1入口において、最短経路長L1が0.2mm以上であれば、第1入口からセンサ素子室内に流入した被測定ガスの流速が検知電極に至るまでに適度に抑えられるため、被測定ガスが当たることによる検知電極の劣化が抑制される。また、最短経路長L1が12.0mm以下の第1入口が存在する場合には、その第1入口からセンサ素子室内に流入した被測定ガスは、比較的速い流速を保ったまま検知電極に至るため、第2特定ガスに対する応答性がより良好なものとなる。
配管10へのガスセンサ100の取り付け状態の概略説明図。 ガスセンサ100の断面模式図。 センサ素子110の断面模式図。 図2の部分拡大図。 図2のA-A断面図。 図2のB-B断面図。 図2のC視図。 最短経路長L1,L2の説明図。 ガスセンサ100の仮想投影図。 センサ素子110に対する保護カバー120の取り付け向きを変更したガスセンサの仮想投影図。 ガスセンサ100の検知電極56を右に移動させた場合の仮想投影図。 変形例のガスセンサ200の断面模式図。 変形例の第2入口327を示す模式図。
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、配管10へのガスセンサ100の取り付け状態の概略説明図である。図2は、本発明の一実施形態であるガスセンサ100の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。図3は、ガスセンサ100が備えるセンサ素子110の断面模式図である。図4は、図2の部分拡大図である。図5は、図2のA-A断面図である。図6は、図2のB-B断面図である。図7は図2のC視図である。図8は、最短経路長L1,L2の説明図であり、各最短経路を前方から見た図である。図2に示すように、センサ素子110が備える素子本体20の長手方向を前後方向、素子本体20の厚み方向を上下方向とする。また、図5に示すように、素子本体20の幅方向(長手方向と厚み方向に垂直な方向)を左右方向とする。なお、図2は、図5のD-D断面図に相当する。センサ素子110の内部構造については、図3に詳しく図示し、図2,4~6では図示を省略する。
図1に示すように、ガスセンサ100は車両のエンジンからの排気経路である配管10に取り付けられる。ガスセンサ100は、エンジンから排出された排気ガスを被測定ガスとして、被測定ガス中の第1特定ガスの濃度と、被測定ガス中の第2特定ガスの濃度とを検出するようになっている。本実施形態では、第1特定ガスがNOxであり、第2特定ガスがアンモニアである場合について説明する。
ガスセンサ100は、図2に示すように、センサ素子110と、このセンサ素子110を保護する保護カバー120とを備えている。また、ガスセンサ100は、センサ素子110を封入固定する素子封止体101と、素子封止体101に取り付けられたボルト103とを備えている。素子封止体101は、金属製で円筒状のハウジング102と、ハウジング102の内側の貫通孔内に封入されたセラミックス製のサポーター104と、ハウジング102の内側の貫通孔内に封入されたタルクなどのセラミックス粉末を成形した圧粉体105と、を備えている。センサ素子110は素子封止体101の中心軸上に位置しており、素子封止体101を前後方向に貫通している。圧粉体105はハウジング102とセンサ素子110との間で圧縮されている。これにより、圧粉体105がハウジング102内の貫通孔を封止すると共にセンサ素子110を固定している。ボルト103は、金属製で円筒状の部材であり、外周面におねじが設けられている。素子封止体101のハウジング102は配管10に溶接され内周面にめねじが設けられた固定用部材12内に挿入されており、さらにボルト103が固定用部材12に螺合されることでハウジング102が固定用部材12内に固定されている。これにより、ガスセンサ100が配管10内に固定されている。
センサ素子110は、細長な長尺の板状体形状の素子であり、先端と、先端とは反対側の後端とを有している。図3に示すように、センサ素子110は、素子本体20と、検出部23と、混成電位セル55と、を備えている。センサ素子110の先端は、センサ素子110の長手方向の両端のうち後述するセンサ素子室124内に配置される端、つまり前方の端であり、以下では前端とも称する。
図3に示すように、素子本体20は、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数枚(図3では6枚)上下方向に積層した積層体を有している。素子本体20は直方体形状であるため、図3,5に示すように、素子本体20は外表面として上面20a,下面20b,左面20c,右面20d,前端面20e,後端面20fを有している。上面20aは、素子本体20の長手方向(軸線方向)に沿った表面である。素子本体20の寸法は、例えば前後方向の長さが25mm以上100mm以下、左右方向の長さ(幅)が2mm以上10mm以下、上下方向の長さ(厚み)が0.5mm以上3mm以下としてもよい。また、素子本体20には、前端面20eに開口して被測定ガスを自身の内部に導入する被測定ガス導入口21a(本発明のガス導入口に相当)と、後端面20fに開口してNOx濃度の検出の基準となる基準ガス(ここでは大気)を自身の内部に導入する基準ガス導入口22と、が形成されている。素子本体20の内部には、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部21が設けられている。被測定ガス流通部21は、被測定ガス流通部21の入口である被測定ガス導入口21aから測定電極27に至る空間である。被測定ガス導入口21aの左右方向の長さ(幅)は例えば1mm以上9mm以下である。上面20aから被測定ガス導入口21aまでの上下方向の長さ、言い換えると前端面20eの上端から被測定ガス導入口21aまでの上下方向の長さである距離K3(図3,4参照)は、例えば0.1mm以上2.4mm以下である。
検出部23は、被測定ガス導入口21aから被測定ガス流通部21に流入した被測定ガス中のNOx濃度を検出するためのものである。検出部23は、素子本体20の前端側に配設された複数の電極を有している。本実施形態では、検出部23は、複数の電極として、外側電極24と、内側主ポンプ電極25と、内側補助ポンプ電極26と、測定電極27と、基準電極28と、を備えている。外側電極24は、素子本体20の外部、より詳しくは、素子本体20の上面20aに配設されている。内側主ポンプ電極25,内側補助ポンプ電極26,及び測定電極27は、素子本体20の内部に配設され、被測定ガス導入口21aから後方に向かってこの順に被測定ガス流通部21内に配設されている。基準電極28は、素子本体20の内部に配設されており、基準電極28には基準ガス導入口22を介して基準ガスが到達する。内側主ポンプ電極25及び内側補助ポンプ電極26は、素子本体20の内部の空間の内周面に配設されておりトンネル状の構造を有していてもよい。外側電極24は、例えば多孔質サーメット電極(例えば、Au及びPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。検出部23が有する他の電極25~28も、同様に多孔質サーメット電極として形成されていてもよい。
検出部23を用いて被測定ガス中のNOx濃度を検出する原理は周知であるため詳細な説明は省略するが、検出部23は、例えばセンサ素子110(特に検出部23、混成電位セル55)に接続された図示しないコントローラによって以下のように制御され、以下のように動作する。コントローラーは、外側電極24と基準電極28との間の電圧V0が目標値となるように、外側電極24と内側主ポンプ電極25との間に電圧Vp0を印加する。この電圧Vp0によって、検出部23は、内側主ポンプ電極25周辺の被測定ガス中の酸素を外部(図2のセンサ素子室124)へ汲み出し又は汲み入れる。このとき、外側電極24と内側主ポンプ電極25との間にはポンプ電流Ip0が流れる。このポンプ電流Ip0は、被測定ガス中の酸素濃度に応じた値(酸素濃度を導出可能な値)となる。また、コントローラーは、内側補助ポンプ電極26と基準電極28との間の電圧V1が目標値となるように、外側電極24と内側補助ポンプ電極26との間に電圧Vp1を印加する。この電圧Vp1によって、検出部23は、内側補助ポンプ電極26周辺の被測定ガス中の酸素を外部(センサ素子室124)へ汲み出し又は汲み入れる。これらにより、酸素濃度が所定値に調整された後の被測定ガスが、測定電極27周辺に到達する。測定電極27は、NOxの還元触媒として機能し、到達した被測定ガス中のNOxを還元する。そして、コントローラーは、測定電極27と基準電極28との間の電圧V2が目標値となるように、外側電極24と測定電極27との間に電圧Vp2を印加する。この電圧Vp2によって、検出部23は、測定電極27周辺の被測定ガス中の酸素を外部(センサ素子室124)に汲み出す。これにより、検出部23は、被測定ガス中のNOxが還元されることにより発生した酸素が実質的にゼロとなるように、測定電極27周辺の酸素を外部に汲み出す。このとき、外側電極24と測定電極27との間にはポンプ電流Ip2が流れる。このポンプ電流Ip2は、被測定ガス中のNOx濃度に応じた値(NOx濃度を導出可能な値)となる。
また、素子本体20には、検知電極56が配設されている。検知電極56は、被測定ガスと接触するように素子本体20の外部かつ被測定ガス導入口21aよりも後方に配設されている。より具体的には、検知電極56は、素子本体20の上面20aに配設されている。また、検知電極56は、素子本体20のうち外側電極24よりも後方に配設されている。本実施形態では、検知電極56は、上面視で測定電極27とほぼ同じ大きさ及び同じ位置に配設され、センサ素子110の幅方向の中央に配設されている。なお、上面20aのうち検知電極56が配設された部分(検知電極56の下面と接する部分)を、配設面56aと称する。この検知電極56と、検出部23と兼用の基準電極28と、両電極間の固体電解質層とによって、混成電位セル55が構成されている。混成電位セル55では、検知電極56において被測定ガス中のアンモニア濃度に応じた混成電位(起電力EMF)が生じる。そして、検知電極56と基準電極28との間の起電力EMFの値が被測定ガス中のアンモニアの濃度の検出に用いられる。検知電極56は、アンモニアの濃度に応じた混成電位を生じ、アンモニア濃度に対する検出感度を有する材料を主成分として構成されている。検知電極56は、例えば金(Au)などの貴金属を主成分としてもよいし、導電性酸化物を主成分としてもよい。貴金属を主成分とする場合、検知電極56は、Au-Pt合金を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは、含まれる成分全体のうち存在量(atm%,原子量比)が最も多い成分をいうものとする。本実施形態では、検知電極56は、Au-Pt合金とジルコニアとの多孔質サーメット電極とした。検知電極56は、例えば、前後方向の長さが0.1mm以上3.0mm以下であり、左右方向の長さ(幅)が1.0mm以上9.0mm以下であり、上下方向の長さ(厚み)が5μm以上40μm以下である。検知電極56は、例えば、素子本体20の前端面20eから検知電極56の前端までの距離K1が7.0mm以上14.0mm以下となる位置に配置されている。
センサ素子110は、ヒータ29を備えている。ヒータ29は、素子本体20内部に配設された電気抵抗体である。ヒータ29は、外部から給電されることにより発熱して素子本体20を加熱する。ヒータ29は、素子本体20が有する固体電解質層の加熱及び保温を行って、検出部23の固体電解質層が活性化する温度(例えば800℃)に調整することが可能となっている。また、これによって、混成電位セル55の検知電極56は、アンモニアの検知に適した温度(例えば800°よりも低い温度)に調整される。これらの検出部23及び検知電極56の温度は、例えば、外部からヒータ29に給電される電力を調整するとともに、ヒータ29,検出部23,及び検知電極56の位置関係を調整することによって、調整できる。
また、センサ素子110は、緩衝層84及び保護層85を備えている。緩衝層84は、多孔質体であり、素子本体20の表面に配設されて保護層85と素子本体20とを接着する役割を果たす。緩衝層84は、素子本体20の上面20aの少なくとも一部を被覆する上側緩衝層84aと、素子本体20の下面20bの少なくとも一部を被覆する下側緩衝層84bと、を備えている。上側緩衝層84aは、検知電極56及び外側電極24も被覆している。上側緩衝層84a及び下側緩衝層84bの各々は、素子本体20の前端から、検出部23及び混成電位セル55に含まれる各電極24,25,26,27,28,56よりも後方までの領域に存在している。また、上側緩衝層84a及び下側緩衝層84bの各々は、被測定ガス流通部21の後端及び保護層85の後端よりも後方まで存在している。保護層85は、多孔質体であり、素子本体20の前端部の周辺、より具体的には検出部23及び混成電位セル55が存在する領域の周囲を被覆している。保護層85は、緩衝層84が形成された素子本体20について、その前端面を全て被覆し、その上下左右の面の一部を被覆している。保護層85は、被測定ガス流通部21の後端よりも後方まで存在している。保護層85は、例えば被測定ガス中の水分等が付着して素子本体20にクラックが生じるのを抑制する役割を果たす。また、保護層85は、被測定ガスに含まれるオイル成分等が素子本体20の外部に配設された外側電極24及び検知電極56等に付着するのを抑制する役割も果たす。緩衝層84も、保護層85と同様の役割を果たす。このため、緩衝層84及び保護層85が本発明の保護層に相当する。緩衝層84及び保護層85は、例えばアルミナ、ジルコニア、スピネル、コージェライト、マグネシアなどの多孔質セラミックスからなるものである。緩衝層84と保護層85とは、主成分が同じであることが好ましい。本実施形態では、緩衝層84及び保護層85はアルミナからなる多孔質セラミックスであるものとした。保護層85は多孔質体であるため、被測定ガスは保護層85の内部を流通して被測定ガス導入口21aに到達可能である。また、保護層85及び緩衝層84は多孔質体であるため、被測定ガスは保護層85及び緩衝層84の内部を流通して外側電極24及び検知電極56に到達可能である。なお、センサ素子110は緩衝層84及び保護層85のうちの一方のみを備えていてもよい。また、緩衝層84及び保護層85は、少なくとも検知電極56を被覆していれば、その他の部分を被覆しなくてもよい。検知電極56を被覆する保護層の厚み(本実施形態では緩衝層84及び保護層85の厚みの合計)は、例えば200μm以上900μm以下である。
図2,4~7に示すように、保護カバー120は、センサ素子110の周囲を取り囲むように配置されている。この保護カバー120は、センサ素子110の先端を覆う有底筒状の内側保護カバー130と、内側保護カバー130を覆う有底筒状の外側保護カバー140とを有している。内側保護カバー130に囲まれた空間としてセンサ素子室124が形成されている。また、内側保護カバー130と外側保護カバー140とに囲まれた空間として第1ガス室122,第2ガス室126が形成されている。なお、ガスセンサ100,センサ素子110,内側保護カバー130,外側保護カバー140の中心軸は同軸になっている。保護カバー120は、金属(例えばSUS310Sなどのステンレス鋼)で形成されている。
内側保護カバー130は、第1部材131と、第2部材135と、を備えている。第1部材131は、円筒状の大径部132と、円筒状で大径部132よりも径の小さい第1円筒部134と、大径部132と第1円筒部134とを接続する段差部133と、を有している。第1部材131は、センサ素子110の周囲を囲んでいる。第2部材135は、第1円筒部134よりも径が大きい第2円筒部136と、第2円筒部136よりも前方に位置する先端部138と、先端部138の後端に接続して配設され先端部138の外周面よりも外側に突出する段差部139と、第2円筒部136の前端と段差部139とを接続する接続部137と、を有している。第2部材135は、第1部材131(特に第1円筒部134)の周囲を囲んでいる。先端部138は、側部138dと底部138eとを有している。先端部138には、センサ素子室124と第2ガス室126とに通じ、センサ素子室124からの被測定ガスの出口である1以上の素子室出口138aが形成されている。本実施形態では、素子室出口138aは、側部138dに周方向に等間隔に形成された複数(4個)の円形の孔138bを有している。素子室出口138aは、先端部138の底部138eには配設されていない。素子室出口138aは、被測定ガス導入口21aよりも前方に配置されている。第1円筒部134の外径の半径R1(図5参照)は例えば3mm以上6mm以下である。また、第2円筒部136の内径の半径R2(図5参照)は例えば3.2mm以上7mm以下である。第1円筒部134及び第2円筒部136を含む内側保護カバー130の厚みは例えば0.2mm以上0.5mm以下である。
大径部132,第1円筒部134,第2円筒部136,先端部138は中心軸が同一である。大径部132は、ハウジング102に内周面が当接しており、これにより第1部材131がハウジング102に固定されている。第2部材135は、接続部137の外周面が外側保護カバー140の内周面と当接しており溶接などにより固定されている。なお、接続部137の先端側(前端側)の外径を外側保護カバー140の先端部146の内径よりわずかに大きく形成し、接続部137の先端部分を先端部146内に圧入することで、第2部材135を固定してもよい。
第2円筒部136の内周面には、第1円筒部134の外周面に向けて突出してこの外周面に接している複数の突出部136aが形成されている。図5,6に示すように、突出部136aは3個設けられ、第2円筒部136の内周面の周方向に沿って均等に配置されている。突出部136aは、略半球形状に形成されている。このような突出部136aが設けられていることで、突出部136aによって第1円筒部134と第2円筒部136との位置関係が固定されやすくなっている。なお、突出部136aは、第1円筒部134の外周面を径方向内側に向けて押圧していることが好ましい。こうすれば、突出部136aによって第1円筒部134と第2円筒部136との位置関係をより確実に固定できる。なお、突出部136aは、3個に限らず2個や4個以上としてもよい。なお、第1円筒部134と第2円筒部136との固定が安定化しやすいため、突出部136aは3個以上とすることが好ましい。
内側保護カバー130は、上述したようにセンサ素子室124を内側に有している。センサ素子室124は、内側保護カバー130の内側の空間として形成されており、センサ素子室124の後端は素子封止体101で塞がれている。より具体的には、センサ素子室124は、先端部138,段差部139,接続部137,第2円筒部136,第1円筒部134,ハウジング102,サポーター104により囲まれた空間である。センサ素子室124の内部には、センサ素子110の先端及び被測定ガス導入口21aが配置される。また、センサ素子室124の内部には、検知電極56が配置される。内側保護カバー130は、センサ素子室124への入口である素子室入口123として、1以上の第1入口125と、1以上の第2入口127とを有している。
第1入口125は、第1部材131に配設されている。本実施形態では、第1入口125として、第1部材131の円筒状の側部(第1円筒部134)に周方向に等間隔に形成された複数(6個)の円形の孔125aを有している(図5参照)。図4に示すように、孔125aは、前後方向に垂直かつ第1円筒部134の中心軸に向かう方向(径方向)の流路として形成されている。また、孔125aは、第1ガス室122側からセンサ素子室124側まで孔径が一定であることにより、孔125aの内周面が孔125aの中心軸に平行に形成されている。孔125aは、センサ素子室124側の開口である素子側開口125bを有している。素子側開口125bは孔125aのうち第1円筒部134の内周面134aに開口している。第1入口125の各孔125aの直径D1(図4参照)は、例えば1.00mm以上3.53mm以下である。本実施形態では、孔125aの径はいずれも同じ値とした。第1入口125は、例えば、第1円筒部134の前端面から各孔125aの後端までの前後方向の距離K4(図4参照)が4mm以上8mm以下となる位置に配置されている。
第2入口127は、第1部材131及び第2部材135の間の隙間として形成されている。本実施形態では、第2入口127は、第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面との間の円筒状の隙間(ガス流路)として形成されている。第2入口127は、第2部材135の後端(ここでは第2円筒部136の後端)から第1部材131の前端(ここでは第1円筒部134の前端)までの空間である。第2入口127は、外側入口144aの配置された空間である第1ガス室122側の開口である後方開口128と、被測定ガス導入口21aの配置された空間であるセンサ素子室124側の開口である前方開口129と、を有している。後方開口128は、第2円筒部136の内周面の後端と第1円筒部134の外周面との間のリング状の隙間である。前方開口129は、第2円筒部136の内周面と第1円筒部134の外周面の前端との間のリング状の隙間である。後方開口128は、前方開口129よりも後方に形成されている。そのため、外側入口144aから被測定ガス導入口21aに達するまでの被測定ガスの経路中で、第2入口127はセンサ素子110の後端側から先端側、言い換えると後方から前方へ向かう流路となっている。また、第2入口127は、センサ素子110の後端-先端方向に平行な流路(前後方向に平行な流路)となっている。
前方開口129は、検知電極56及び第1入口125よりも前方に配置され、かつ、センサ素子110の後端から先端へ向かう方向(前方)に向けて開口している。また、前方開口129は、センサ素子110の後端-先端方向(前後方向)に平行に開口している。そのため、センサ素子110は、第2入口127を前方開口129から仮想的に延長した領域(前方開口129の真前の領域)以外の位置に、配置されている。前方開口129は、被測定ガス導入口21aからの距離K2(図4参照)が-5mm以上2mm以下の位置に形成されていることが好ましい。なお、距離K2は、センサ素子110の軸方向に沿った距離(前後方向の距離)であり、被測定ガス導入口21aよりも前方開口129が後方に位置する場合に距離K2が正の値となるものとする。また、距離K2は、前後方向で、被測定ガス導入口21aの開口の端部のうち最も前方開口129に近い部分と、前方開口129の端部のうち最も被測定ガス導入口21aに近い部分と、の距離とする。例えば、図4において被測定ガス導入口が素子本体20の側面(例えば上面20a)に開口する穴である場合、被測定ガス導入口の開口の後端より後方に前方開口129が位置するときには、被測定ガス導入口の開口の後端と前方開口129との距離が距離K2となり、距離K2は正の値となる。同様に、図4において被測定ガス導入口が素子本体20の側面に開口する穴である場合、被測定ガス導入口の開口の前端より前方に前方開口129が位置するときには、被測定ガス導入口の開口の前端と前方開口129との距離が距離K2となり、距離K2は負の値となる。なお、図4において被測定ガス導入口が素子本体20の側面に開口する穴である場合、被測定ガス導入口の開口の後端と前端との間に前方開口129が位置するときには、距離K2は値0となる。本実施形態では、前方開口129は、距離K2が正の値となる位置に形成されているものとした。すなわち、被測定ガス導入口21aよりも後方に前方開口129が形成されているものとした。なお、前方開口129は、距離K2が負の値となる位置に形成されていてもよい。すなわち、被測定ガス導入口21aよりも前方に前方開口129が存在していてもよい。
第1入口125(ここでは孔125a)のうちの少なくとも1つは、孔125aから検知電極56までの最短経路長L1が、第2入口127から検知電極56までの最短経路長L2よりも短い位置に配置されている。最短経路長L1,L2について、図4及び図8を用いて説明する。最短経路長L1は、各孔125aから検知電極56に至る被測定ガスの流路における最短経路の長さとする。図4に現れる孔125aの場合、素子側開口125bの後端から検知電極56上面の前端の中央に至る直線の長さ(図4及び図8において太破線L1として現れる経路の長さ)が最短経路長L1である。また、最短経路長L2は、第2入口127から検知電極56に至る被測定ガスの流路における最短経路の長さとする。本実施形態では、第2入口127の前方開口129の内周(第1部材131の前端面の外周)から第1部材131の前端面の内周に至る直線と、第1部材131の前端面の内周から検知電極56の上面の前端の右端(左端でもよい)に至る直線と、の合計の長さ(図8において太破線L2として現れる経路の長さ)が最短経路長L2である。なお、図8の太破線L2は、前方から見たときに第1円筒部134の中心軸Oと検知電極56の上面の前端の右端とを結ぶ直線の延長線上にある。また、図4の太破線(L2)は、最短経路長L2となる経路の起点や折れ点の理解を助けるために便宜的に示したものであり、最短経路長L2となる経路は図4の太破線(L2)とは上下方向の位置が厳密には一致しない。第1入口125のうち、最短経路長L1が最も短い第1入口125(孔125a)を、最近接入口とも称する。本実施形態では、図5において6個の孔125aのうちセンサ素子110の0時方向(上方向)に位置する孔125aが最近接入口である。なお、検知電極56の左右方向の長さが図8よりも長い場合などには、6個の孔125aのうちセンサ素子110の2時及び10時方向に位置する孔125aが最近接入口となる場合もある。最近接入口では、最短経路長L1は、例えば12.0mm以下である。また、全ての第1入口125において、最短経路長L1は、例えば0.2mm以上であり、最短経路長L2は、例えば1.5mm以上19.9mm以下である。
また、全ての第1入口125(ここでは孔125a)は、孔125aを孔125aの軸線方向に平行に素子本体20の表面に向けて投影した投影領域に検知電極56が重ならない位置に配置されている。投影領域について、図4を用いて説明する。投影領域は、図4に現れる孔125aの場合、孔125aと同軸かつ同径で、素子側開口125bから素子本体20の上面20aまでの円柱形状の領域であり、図4では二点鎖線で囲まれた領域PAである。本実施形態では、全ての孔125aの投影領域よりも検知電極56が後方に配置されているため、全ての孔125aにおいて投影領域に検知電極56が重ならない。なお、投影領域は、被測定ガスが通過できる領域であり、被測定ガスが通過できない物体(例えば素子本体20)で遮られる。このため、例えば検知電極56が図4の領域PAに重なるように配置されたとしても、素子本体20の裏側にある孔125a(図5の6時方向の孔125a)の投影領域には検知電極56は重ならない。
第1入口125(ここでは孔125a)のうちの少なくとも1つは、第1部材131の軸線方向に垂直な仮想平面に第1部材131及びセンサ素子110を垂直投影した仮想投影図において、センサ素子110のうち検知電極56が配設された配設面56aに垂直で配設面56aの中心から素子本体20とは反対側に引いた第1直線と、配設面56aの中心から孔125aの中心に向けて引いた第2直線と、のなす角度θが73.6°以下となるように配置されている。孔125aの中心は、素子側開口125bの中心とする。本実施形態のガスセンサ100では、図4に現れる孔125aにおいて、この角度θが0°である。角度θについて、図9を用いて説明する。図9は、ガスセンサ100の仮想投影図である。図9において、2時方向にある孔125aでは、角度θは、配設面56aに垂直で配設面56aの中心Xから素子本体20とは反対側に引いた第1直線S1と、配設面56aの中心Xから孔125aの中心X0に向けて引いた第2直線S2とのなす角度θ1である。その他の孔125aにおいても、角度θは同様に求めればよい。本実施形態では、6個の孔125aのうち、0時方向、2時方向、10時方向にある孔125aが、角度θが73.6°以下となっている。
また、第1部材131は、図9の仮想投影図において、配設面56aの中心Xを回転中心にして第1直線S1を73.6°回転した直線を第3直線S3とし、第1直線S1を第3直線S3とは反対に73.6°回転した直線を第4直線S4とし、第3直線S3と第1部材131の内周面134aとの交点を第1交点X1とし、第4直線S4と第1部材131の内周面134aとの交点を第2交点X2とすると、第1部材131の周方向において、隣合う孔125aの中心同士の間隔が、第1交点X1と第2交点X2との間隔P(図9の太破線Pの長さ)以下となるように、全ての孔125aが配設されている。言い換えると、第1部材131の内周面134aにおいて、第1交点X1と第2交点X2とを結ぶ円弧の中心角を角度φとすると、隣合う孔125aの各中心を結ぶ円弧の中心角(例えば図9の中心角α)が全て角度φ以下となるように、全ての孔125aが配設されている。全ての孔125aがこのように配設された第1部材131を用いれば、センサ素子110に対する第1部材131の取り付け向きによらず、孔125aのうちの少なくとも1つの中心は図9の太破線P上、つまりθ=73.6°以下の位置に配置されることとなる。そのため、孔125aのうちの少なくとも1つは、上述した角度θが73.6°以下となる。本実施形態のガスセンサ100では、第1部材131に6個の孔125aが周方向に等間隔に形成されているため、隣合う孔125aの各中心を結ぶ円弧の中心角は全て60°であり、角度φよりも明らかに小さい。そのため、センサ素子110に対する第1部材131の取り付け向きによらず、孔125aのうちの少なくとも1つについて、上述した角度θが73.6°以下となるように配置できる。
外側保護カバー140は、図2に示すように、円筒状の胴部143と、有底筒状で胴部143よりも内径の小さい先端部146とを有している。また、胴部143は、外側保護カバー140の中心軸方向(前後方向)に沿った側面をもつ側部143aと、胴部143の底部であり側部143aと先端部146とを接続する段差部143bと、を有している。なお、胴部143,先端部146の中心軸はいずれも内側保護カバー130の中心軸と同一である。胴部143のうち後端周辺の部分は、ハウジング102及び大径部132に内周面が当接しており、これにより外側保護カバー140がハウジング102に固定されている。胴部143は、大径部132,第1円筒部134,第2円筒部136の外周を覆うように位置している。先端部146は、先端部138を覆うように位置していると共に、内周面が接続部137の外周面と当接している。先端部146は、外側保護カバー140の中心軸方向(前後方向)に沿った側面を有し外径が側部143aの内径よりも小さい側部146aと、外側保護カバー140の底部である底部146bと、側部146aと底部146bとを接続し側部146aから底部146bに向けて縮径するテーパー部146cと、を有している。先端部146は、胴部143よりも前方に位置している。この外側保護カバー140は、胴部143に形成され被測定ガスの外部からの入口である1以上(本実施形態では複数であり、具体的には12個)の外側入口144aと、先端部146に形成され被測定ガスの外部への出口である1以上の外側出口147aとを有している。
外側入口144aは、外側保護カバー140の外側(外部)と第1ガス室122とに通じる孔である。外側入口144aは、側部143aに周方向に等間隔に形成された複数(本実施形態では6個)の孔144bと、段差部143bに周方向に等間隔に形成された複数(本実施形態では6個)の孔144cとを有している。この外側入口144a(孔144b及び孔144c)は、円形に開けられた孔である。なお、外側入口144aは、図5~7に示すように、外側保護カバー140の周方向に沿って孔144bと孔144cとが交互に等間隔に位置するように形成されている。外側入口144aは、いずれも、第2部材135の後端(ここでは第2円筒部136の後端)よりも下方に位置している。
外側出口147aは、外側保護カバー140の外側(外部)と第2ガス室126とに通じる孔である。この外側出口147aは、先端部146の底部146bの中心に形成された1以上(本実施形態では1個)の孔147cを有している(図2,図7参照)。なお、外側入口144aとは異なり、外側出口147aは、外側保護カバー140の側部(ここでは先端部146の側部146a)には配設されていない。この外側出口147a(ここでは孔147c)は、円形に開けられた孔である。
外側保護カバー140及び内側保護カバー130は、上述したように第1ガス室122及び第2ガス室126を形成している。第1ガス室122は、胴部143と内側保護カバー130との間の空間として形成されている。より具体的には、第1ガス室122は、段差部133,第1円筒部134,第2円筒部136,側部143a、段差部143bにより囲まれた空間である。第2ガス室126は、先端部146と内側保護カバー130との間の空間として形成されている。より具体的には、第2ガス室126は、先端部138と先端部146とに囲まれた空間である。なお、先端部146の内周面が接続部137の外周面と当接しているため、第1ガス室122と第2ガス室126とは直接には連通していない。
次に、ガスセンサ100がNOx濃度及びアンモニア濃度を検出する際の保護カバー120内の被測定ガスの流れについて説明する。配管10内を流れる被測定ガスは、まず、複数の外側入口144a(ここでは孔144b及び孔144c)の少なくともいずれかを通って第1ガス室122内に流入する。第1ガス室122内に流入した被測定ガスのうちの一部は、素子室入口123のうち第1入口125を通ってセンサ素子室124に流入する。第1入口125からセンサ素子室124に流入した被測定ガスは、少なくとも一部がセンサ素子110の検知電極56に到達する。被測定ガスが検知電極56に到達すると、センサ素子110の混成電位セル55では、この被測定ガス中のアンモニア濃度に応じた混成電位(起電力EMF)が生じる。コントローラーは、この起電力EMFに基づいてアンモニア濃度を検出する。また、第1ガス室122内に流入した被測定ガスのうちの残りの一部は、素子室入口123のうち第2入口127を通ってセンサ素子室124に流入する。第2入口127からセンサ素子室124内に流入した被測定ガスは、少なくとも一部がセンサ素子110の被測定ガス導入口21aに到達する。被測定ガスが被測定ガス導入口21aに到達してセンサ素子110の内部に流入すると、上述したコントローラーの制御によって、検出部23では、この被測定ガス中のNOx濃度に応じたポンプ電流Ip2が流れる。コントローラーは、このポンプ電流Ip2に基づいてNOx濃度を検出する。また、センサ素子室124内の被測定ガスは、素子室出口138a(ここでは孔138b)の少なくともいずれかを通って第2ガス室126に流入し、そこから外側出口147aを通って外部に流出する。
ここで、第2入口127は第1部材131及び第2部材135の間の隙間として形成され、前方開口129は検知電極56及び第1入口125よりも前方に配置されかつ前方に向けて開口している。このように形成された第2入口127では、第2入口127からセンサ素子室124内に流入する被測定ガスは、後方から前方へ向かう流れとして、検知電極56及び第1入口125よりも前方からセンサ素子室124内に流入する。また、シミュレーションによれば、第1部材131及び第2部材135の間の隙間として形成された入口からからセンサ素子室124内に被測定ガスが流入するときの流速は、第1入口125のような孔から流入するときよりも早い。これらにより、検知電極56よりも前方にある被測定ガス導入口21aには、第2入口127からセンサ素子室124内に流入する被測定ガスが素早く到達する。そして、被測定ガス導入口21aから被測定ガス流通部21内に流入する被測定ガスは、測定電極27周辺から外側電極24周辺への酸素の汲み出しに伴って速やかに測定電極27に到達し、NOx濃度の検出に用いられる。したがって、ガスセンサ100では、NOxに対する濃度検出の応答性が良好である。
また、第2入口127の前方開口129よりも後方かつ被測定ガス導入口21aよりも後方に配置された検知電極56には、第1入口125からセンサ素子室124内に流入した被測定ガスが素早く到達し、アンモニア濃度の検出等に用いられる。このため、ガスセンサ100では、アンモニアに対する濃度検出の応答性も良好である。
ところで、第1入口125からセンサ素子室124内に流入した被測定ガスは、検知電極56に到達するまでに保護層85及び緩衝層84を通過する。保護層85及び緩衝層84は、素子本体20の加熱に伴って高温になっているため、保護層85及び緩衝層84を被測定ガスが通過する間に被測定ガス中のアンモニアが燃焼し、アンモニアに対する感度が低下することがある。ここで、上述した角度θが小さい孔125aほど、孔125aからセンサ素子室124内に流入した被測定ガスが検知電極56に至るまでに保護層85及び緩衝層84と接触する距離が短い。このため、角度θがより小さい孔125aが存在するほど、アンモニアに対する感度は低下しにくいため好ましく、具体的には角度θが73.6°以下の孔125aが存在することが好ましい。ガスセンサ100では、上述した通り、角度θが73.6°以下の孔125aとして、角度θが0°となるように配置された孔125a(図9の0時方向の孔125a)や、図9の2時方向や10時方向の孔125aを有するため、被測定ガス中のアンモニアに対する感度が低下しにくい。
以上詳述した本実施形態のガスセンサ100は、素子室入口123として、上述のように形成された第1入口125及び第2入口127を有しているため、NOx及びアンモニアに対する濃度検出の応答性が良好なものとなる。また、このガスセンサ100では、角度θが73.6°以下の第1入口を少なくとも1つ有しているため、測定ガス中のアンモニアに対する感度の低下が抑制される。特に、第1入口125のうち最近接入口の角度θが73.6°以下である場合には、被測定ガス中のアンモニアに対する感度の低下がより抑制される。角度θが小さいほど、被測定ガス中のアンモニアに対する感度の低下が抑制されることから、第1入口125のうちの少なくとも1つは、例えば53.8°以下となるように配置されていてもよい。
また、第1部材131の周方向において、隣合う第1入口125の中心同士の間隔が、上述した第1交点X1と第2交点X2との間隔以下となるように、全ての第1入口125が配置されている。言い換えると、第1部材131では、隣合う孔125aの各中心を結ぶ円弧の中心角がすべて上述した角度φよりも小さい。このため、角度θが73.6°以下のガスセンサ100を製造しやすい。
さらに、第1入口125のうちの少なくとも1つ(例えば、0時方向の孔125a)は、角度θが39.1°以下となるように配置されているため、被測定ガス中のアンモニアに対する感度の低下がより抑制される。
さらにまた、検知電極56は外側電極24よりも後方に配設されている。より具体的には、検知電極56の前端は外側電極24の後端よりも後方に配設されている。この場合、第2入口127から検知電極56までの最短経路長L2が比較的長く、第2入口127からセンサ素子室124内に流入する被測定ガスが検知電極56まで到達するのに時間がかかるため、第1入口125を設ける意義が高い。
そして、1以上の第1入口125のうちの少なくとも1つは、第1入口125から検知電極56までの最短経路長L1が、第2入口127から検知電極56までの最短経路長L2よりも短い位置に配置されている。つまり、検知電極56により近い位置に第1入口125が配置されている。そのため、アンモニアに対する濃度検出の応答性がより良好なものとなる。
そしてまた、全ての第1入口125において、最短経路長L1が0.2mm以上である。これにより、第1入口125からセンサ素子室124内に流入した被測定ガスの流速が検知電極56に至るまでに適度に抑えられるため、被測定ガスが当たることによる検知電極56の劣化が抑制される。また、最短経路長L1が12.0mm以下の第1入口125が存在するため、その第1入口125からセンサ素子室124内に流入した被測定ガスは、比較的速い流速を保ったまま検知電極56に至る。これにより、アンモニアに対する濃度検出の応答性がより良好なものとなる。
そしてさらに、全ての第1入口125は、第1入口125を第1入口125の軸線方向に平行に素子本体20の表面に向けて投影した投影領域に検知電極56が重ならない位置に配置されている。それにより、第1入口125の軸線方向に平行に真っ直ぐにセンサ素子室124内に流入した比較的流速の速い被測定ガスが検知電極56に直接当たらないため、検知電極56の劣化が抑制される。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、角度θが0°の第1入口125が存在するものとしたが、全ての第1入口125は、角度θが23.5°以上となるように配置されていてもよい。例えば、ガスセンサ100で用いたセンサ素子110及び保護カバー120を用いる場合、図10に示す非配置領域Nに第1入口125が配置されないように、センサ素子110に対する保護カバー120(特に第1部材131)の取り付け向きを調整してもよい。図10は、センサ素子110に対する保護カバー120の取り付け向きを変更したガスセンサの仮想投影図である。非配置領域Nは、例えば以下のように設定する。図10の仮想投影図において、配設面56aの中心Xを回転中心にして第1直線S1を23.5°回転した直線を第5直線S5とし、第1直線S1を第5直線S5とは反対に23.5°回転した直線をS6とする。また、第5直線S5と第1部材131の内周面134aとの交点を第3交点X3とし、第6直線S6と第1部材131の内周面134aとの交点を第4交点X4とする。そして、第1部材131の内周面134aにおいて、第3交点X3と第4交点X4との間の円弧状の領域(図10の太破線の領域)を非配置領域Nとする。非配置領域Nに配置された第1入口125、つまり角度θが23.5°未満の第1入口125では、第1入口125の軸線方向に平行に真っ直ぐにセンサ素子室124内に流入した比較的流速の速い被測定ガスが検知電極56に当たることで検知電極56が劣化しやすいことがある。これに対して、図10のように角度θが23.5°未満の第1入口125が存在しない場合には、検知電極56の劣化が抑制される。角度θは、31.2°以上としてもよい。
上述した実施形態において、ガスセンサ100では、センサ素子110に接続された図示しないコントローラーが、混成電位セル55の起電力EMFを取得し、起電力EMFに基づいて被測定ガス中のアンモニア濃度を検出する。このとき、起電力EMFは被測定ガス中の酸素の影響も受けるため、コントローラーは、起電力EMFと、ポンプ電流Ip0に基づいて導出した被測定ガス中の酸素濃度と、を用いて被測定ガス中のアンモニア濃度を検出することが好ましい。例えば、被測定ガス中の酸素濃度(又は酸素濃度を表す値としてのポンプ電流Ip0)と起電力EMFとアンモニア濃度との対応関係を表す関係式又はマップなどを予め実験により作成してメモリに記憶しておく。そして、コントローラーは被測定ガス中の酸素濃度と起電力EMFとこの対応関係とを用いて、被測定ガス中のアンモニア濃度を検出する。これにより、ガスセンサ100では、酸素濃度による起電力EMFの誤差を補正したアンモニア濃度を導出できる。
上述した実施形態において、ガスセンサ100では、センサ素子110に接続されたコントローラーが、混成電位セル55の起電力EMFを取得し、起電力EMFに基づいて被測定ガス中のNOx濃度の誤差を補正してもよい。ポンプ電流Ip2は、被測定ガス中のアンモニアの影響も受けることがある。これは、以下の理由による。被測定ガス中にアンモニアが含まれると、アンモニアが被測定ガス流通部21内で酸素と反応してNOが生じ、そのNOに由来して測定電極27の周囲の空間に酸素が発生する。そのため、測定電極27の周囲の空間から外側電極24の周囲に汲み出す酸素には、このようなアンモニア由来の酸素が含まれてしまう。したがって、ポンプ電流Ip2の値は被測定ガス中のアンモニアの濃度によっても変化する。そのため、ガスセンサ100において、コントローラーは、ポンプ電流Ip2と、上述した起電力EMFに基づいて導出した被測定ガス中のアンモニア濃度と、を用いて被測定ガス中のNOx濃度を検出することが好ましい。例えば、ポンプ電流Ip2とアンモニア濃度とNOx濃度との対応関係を表す関係式又はマップなどを予め実験により作成してメモリに記憶しておく。そして、コントローラーはポンプ電流Ip2と被測定ガス中のアンモニア濃度とこの対応関係とを用いて、被測定ガス中のNOx濃度を導出する。これにより、ガスセンサ100では、アンモニアによるポンプ電流Ip2の誤差を補正したNOx濃度を導出できる。なお、このように起電力EMFをNOx濃度の補正に用いる場合には、アンモニア濃度を検出(導出)せず、起電力EMFをそのままNOx濃度の補正に用いてもよい。
上述した実施形態では、内側保護カバー130は、最短経路長L1が最短経路長L2よりも短い第1入口125を有していたが、第1入口125を有していればよく、最短経路長L1が最短経路長L2よりも短い第1入口125が存在しなくてもよい。また、内側保護カバー130は、最短経路長L1が12.0mm以下の第1入口125を有していたが、第1入口125を有していればよく、最短経路長L1が12.0mm以下の第1入口125を有していなくてもよい。また、全ての第1入口125において最短経路長L1が0.2mm以上としたが、最短経路長L1が0.2mm未満の第1入口125を有していてもよい。
上述した実施形態では、検知電極56の前端は外側電極24の後端よりも後方に配設されているものとしたが、外側電極24の前端よりも後方に配設されていてもよい。また、検知電極56の後端は外側電極24の前端よりも前方に配設されていてもよい。
上述した実施形態では、全ての第1入口125は、投影領域に検知電極56が重ならない位置に配置されているものとしたが、第1入口125のうちの少なくとも1つは、投影領域に検知電極56が重なる位置に配置されていてもよい。この場合、第1入口125の軸線方向に平行に真っ直ぐにセンサ素子室124内に流入した比較的流速の速い被測定ガスが検知電極56に素早く到達するため、アンモニアに対する応答性がより良好なものとなる。また、第1入口125からセンサ素子室124内に流入した被測定ガスが検知電極56に至るまでの間に緩衝層84や保護層85と接触する距離が比較的短いため、ガスセンサ100が検知電極56を覆う緩衝層84や保護層85を備える場合であっても、被測定ガス中のアンモニアに対する感度の低下が抑制される。
上述した実施形態では、第1部材131は、1以上の第1入口125として周方向に等間隔に形成された複数(6個)の孔125aを有するものとしたが、孔125aの数は特に限定されず1個でもよいし、孔125aの少なくとも一部は等間隔に形成されていなくてもよい。なお、第1入口125として等間隔に形成された4個以上の孔125aを有する第1部材131を用いると、隣合う孔125aの各中心を結ぶ円弧の中心角が全て角度φ以下となりやすい。それにより、センサ素子110に対する第1部材131の取り付け向きによらず、第1入口125のうち少なくとも1つにおいて角度θが73.6°以下となりやすく、角度θが73.6°以下のガスセンサ100を容易に製造できるため、好ましい。また、孔125aの数は6個以下としてもよい。また、孔125aの前後方向の位置は全て同じとしたが、同じでなくてもよい。また、孔125aは円形としたが、円形でなくてもよい。
上述した実施形態では、孔125aは、前後方向に垂直かつ第1円筒部134の中心軸に向かう方向の流路として形成されていたが、前後方向に垂直な方向から傾斜していてもよいし、第1円筒部134の中心軸に向かう方向から傾斜していてもよい。また、孔125aの内周面は、孔125aの軸線方向に平行であったが、素子側開口125bに近づくほど孔125aが拡径又は縮径するように孔125aの内周面が孔125aの軸線方向から傾斜していてもよい。
上述した実施形態では、第1入口125(特に素子側開口125b)の後端は、検知電極56の前端よりも前方に配置されているものとしたが、検知電極56の前端よりも後方に配置されていてもよい。また、第1入口125(特に素子側開口125b)の前端は、検知電極56の後端よりも後方に配置されていてもよい。
上述した実施形態では、検知電極56は、センサ素子110の幅方向の中央に配設されているものとしたが、センサ素子110の幅方向において中央からずれていてもよい。図10は、ガスセンサ100の検知電極56を右に移動させた場合の仮想投影図である。この場合も、仮想投影図において、角度θが73.6°以下の孔125aが1つ以上存在することが好ましい。また、隣合う孔125aの各中心を結ぶ円弧の中心角が全て角度φ以下となるように、全ての孔125aが配設されていることが好ましい。図11では、6個の孔125aのうち、0時方向及び2時方向にある孔125aにおいて、角度θが73.6°以下となっている。そして、上述した通り、ガスセンサ100では、第1部材131に6個の孔125aが周方向に等間隔に形成されているため、隣合う孔125aの各中心を結ぶ円弧の中心角は全て60°であり、角度φよりも明らかに小さい。
上述した実施形態では、素子本体20には基準電極28が1つ配設され、基準電極28が検出部23の基準電極と混成電位セル55の基準電極とを兼ねていたが、これに限られない。例えば、基準電極28は検出部23用の基準電極とし、混成電位セル55が備える基準電極を基準電極28とは別に設けてもよい。
上述した実施形態では、第2入口127は、センサ素子110の後端-先端方向に平行な流路(前後方向に平行な流路)としたが、第2入口127は、前方に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように前後方向から傾斜した流路としてもよい。図12は、この場合の変形例のガスセンサ200の縦断面図である。図12では、ガスセンサ100と同じ構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図12に示すように、ガスセンサ200の保護カバー220は、内側保護カバー130に代えて内側保護カバー230を備えている。内側保護カバー230は、第1部材231と、第2部材235と、を備えている。第1部材231は、第1部材131と比べて、第1円筒部134を備えない代わりに、円筒状の胴部234aと、前方に向かうにつれて縮径する円筒状の第1円筒部234bと、を備えている。内側保護カバー230は、センサ素子室124への入口である素子室入口223として、1以上の第1入口225と、1以上の第2入口227とを有している。第1入口225の各孔225aは、この胴部234aに配設されている。第1円筒部234bは、後端部で胴部234aと接続されている。第2部材235は、第2部材135と比べて、第2円筒部136を備えない代わりに、前方に向かうにつれて縮径する円筒状の第2円筒部236を備えている。第1円筒部234bの外周面と第2円筒部236の内周面とは接しておらず、両者により形成される隙間が第2入口227となっている。第2入口227は、後方開口228と、前方開口229と、を有している。この第2入口227は、第1円筒部234b及び第2円筒部236の形状によって、前方に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように(内側保護カバー230の中心軸に近づくように)前後方向から傾斜した流路となっている。同様に、前方開口229は、前方に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように前後方向から傾斜して開口している(図12の拡大図参照)。なお、前方開口229の向きは、前方開口229周辺の第1円筒部234bの外周面及び第2円筒部236の内周面に基づいて定まる前方開口229の軸線方向とする。また、前方開口229の開口面積bは、前方開口229の軸線方向に対して垂直な面の面積とする。図12のガスセンサ200では、第2入口227の流路幅は、前方に向かうにつれて狭くなっている。そのため、前方開口229の開口面積は後方開口228の開口面積よりも小さい。これにより、被測定ガスが第1ガス室222から第2入口227に流入するときと比べて、第2入口227からセンサ素子室124に流入するときの被測定ガスの流速が高まる。そのため、NOx濃度検出の応答性を向上させることができる。なお、図12では、第2入口227が前後方向から傾斜した流路となっており、前方開口229が前後方向から傾斜して開口し、且つ前方開口229の開口面積が後方開口228の開口面積よりも小さくなるようにしているが、これらの3つの特徴のうち1以上を省略してもよいし、ガスセンサがこれらの3つの特徴のうち1以上の特徴を有するようにしてもよい。
上述した実施形態では、第2入口127は第1部材131の第1円筒部134の外周面と第2部材135の第2円筒部136の内周面との間の筒状の隙間としたが、これに限られない。例えば、第1円筒部の外周面と第2円筒部の内周面との少なくとも一方に凹部(溝)が形成されており、第2入口は、凹部により形成された第1円筒部と第2円筒部との隙間としてもよい。図13は、この場合の変形例の第2入口327を示す模式図であり、図2のB-B断面に相当する断面図である。図13に示すように、ガスセンサ300は、内側保護カバー130に代えて内側保護カバー330を有している。内側保護カバー330は、第1部材131に代えて第1部材331を有している。第1部材331の第1円筒部334は、図2のA-A断面に相当する断面ではガスセンサ100と同じであるが、第2部材135の第2円筒部136で周囲を囲われた部分が厚肉部334aとなっている。厚肉部334aの外周面と第2円筒部136の内周面とは接しており、厚肉部334aの外周面には複数(図13では4個)の凹部334bが等間隔に形成されている。この凹部334bと第2円筒部136の内周面との間の隙間が、第2入口327となっている。なお、第1入口125は、第1円筒部334のうち厚肉部334aよりも後方の部分に配設されている。このように、内側保護カバー330は、センサ素子室への入口である素子室入口323として、1以上の第1入口125と、1以上の第2入口327とを有している。
上述した実施形態では、被測定ガス導入口21aは、センサ素子110の先端面(素子本体20の前端面20e)に開口しているものとしたが、これに限られない。例えば、検知電極56よりも前方であれば、センサ素子110の上面20a,下面20b,左面20c,右面20dのいずれかに開口していてもよい。
上述した実施形態では、素子本体20は、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数枚厚さ方向に積層した積層体を有しているものとしたが、積層体において、検出部23及び混成電位セル55を構成する固体電解質層以外の部分は固体電解質でなくてもよい。
上述した実施形態では、第1特定ガスをNOxとしたが、NOx以外の酸化物ガスとしてもよいし、酸素としてもよい。また、第2特定ガスをアンモニアとしたが、第1特定ガスとは異なるガスであればよく、炭化水素ガスなどの可燃性ガスとしてもよい。
以下には、ガスセンサを具体的に作製した例を実施例として説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(ガスセンサの作製)
上述のガスセンサ100を作製した。実施例1では、素子本体20の厚みを1.4mmとし、素子本体20の前端面20eから検知電極56の前端までの距離K1が7.5mmとなる位置に検知電極56を配設し、素子本体20の上面20aからの上下方向の長さである距離K3が0.1mmとなる位置に被測定ガス導入口21aを配設し、検知電極56よりも前方に外側電極24を配設した。また、第1円筒部134の外径の半径R1を4.7mm、第2円筒部136の内径の半径R2を5.3mmとした。第1円筒部134には、直径D1が1.0mmの孔125aを周方向に等間隔に6個(6等配)形成した。また、実施例1では、素子本体20の前端面20eから第2入口127までの前後方向の距離K2が1.7mmとなり、検知電極56が第1入口125の各孔125aの後端よりも後方に配設され、第1入口125から検知電極56までの最短経路長L1の最小値が第2入口127から検知電極56までの最短経路長L2よりも短かくなるように、センサ素子110と内側保護カバー130との配置を調整した。実施例1では、角度θが最も小さい孔125aの角度θ(角度θの最小値)が0°となるように、センサ素子110と内側保護カバー130との配置を調整した。
(出力特性の評価)
得られたガスセンサ100を用い、出力特性を確認した。具体的には、まず、ガスセンサ100を図1と同様に配管に固定し、O2濃度10%、H2O濃度5%の被測定ガス(アンモニア濃度0ppm、ベースガスは窒素ガス)を配管に流した。そして、配管内に流す被測定ガスのアンモニア濃度を0ppmから500ppmに変化させて、ガスセンサ100の出力値(起電力EMF及びポンプ電流Ip2)を測定した。アンモニア濃度を変化させる直前のガスセンサ100の出力値を0%、アンモニア濃度を500ppmにしてガスセンサ100の出力が安定したときの出力値を100%として、出力値が100%のときの出力値を感度、出力値が10%を超えたときから90%を超えるまでの経過時間を特定ガスに対する応答時間として評価した。起電力EMFが大きいほど、アンモニアに対する感度が良好であることを示し、起電力EMFの応答時間が短いほど、アンモニアに対する応答性が良好であることを示す。また、ポンプ電流Ip2の応答時間が短いほど、NOxに対する応答性が良好であることを示す。なお、NOx濃度の測定に用いられるポンプ電流Ip2は、アンモニアによっても出力がわずかに変動するため、アンモニア濃度を変化させたときのIp2の応答時間を調べることで、NOxに対する応答性を判断できる。結果を表1に示す。
[実施例2~7]
実施例2は、センサ素子110と内側保護カバー130との配置を調整して、角度θの最小値を23.5°にした以外は実施例1と同様とした。実施例3は、センサ素子110と内側保護カバー130との配置を調整して、角度θの最小値を31.2°にした以外は実施例1と同様とした。実施例4は、素子本体20の厚みを1.5mm、第1円筒部134の外径の半径R1を5.0mmに変更し、角度θの最小値が34.7°になるようにセンサ素子110と内側保護カバー130との配置を調整した以外は実施例1と同様とした。実施例5は、素子本体20の厚みを1.5mm、第1円筒部134の外径の半径R1を3.0mmに変更し、角度θの最小値が39.1°になるようにセンサ素子110と内側保護カバー130との配置を調整した以外は実施例1と同様とした。実施例6は、素子本体20の厚みを3.0mm、第1円筒部134の外径の半径R1を3.0mmに変更し、角度θの最小値が53.8°となるようにセンサ素子110と内側保護カバー130との配置を調整した以外は実施例1と同様とした。実施例7は、孔125aの個数を4個(4等配)とし、角度θの最小値が73.6°になるようにセンサ素子110と内側保護カバー130との配置を調整した以外は実施例6と同様とした。なお、実施例1~7において、内側保護カバー130の板厚(厚み)は一定とした。
[実施例1~7及び比較例の考察]
表1に、実施例1~7の各々について、アンモニアに対する感度(起電力EMFの値)、アンモニアに対する応答時間(起電力EMFの応答時間)、NOxに対する応答時間(ポンプ電流Ip2の応答時間)を示す。表1に示すように、第1円筒部134に第1入口125を設けることで、アンモニアに対する感度を高め(出力値160mV以上)、アンモニアに対する応答時間を短く(0.9s以下)できた。また、NOxに対する応答時間も比較的短く(約1.0s)保つことができた。実施例1~7では、いずれも角度θの最小値が73.6°以下であるが、これらでは、アンモニアに対する感度をより高める(出力値160mV以上)とともにアンモニアに対する応答時間をより短く(0.9s以下)できた。また、角度θの最小値が39.1°以下ではアンモニアに対する感度をさらに高める(出力値180mV以上)とともにアンモニアに対する応答時間をさらに短く(0.8s以下)でき、角度θの最小値が34.7°以下ではアンモニアに対する感度をより一層高める(出力値190mV以上)とともにアンモニアに対する応答時間をより一層短く(0.7s以下)できた。なお、実施例1~7のガスセンサで上述のような出力特性の評価を繰り返したところ、角度θの最小値が23.5°と小さい実施例2では実施例3~7よりも早く感度が低下し、角度θが0°の実施例1では実施例2よりも早く感度が低下する傾向が見られた。このことから、検知電極56の劣化を抑制する観点からは、角度θの最小値が23.5°以上であることが好ましく、31.2°以上であることがより好ましいことがわかった。
Figure 0007489936000001
10 配管、12 固定用部材、20 素子本体、20a 上面、20b 下面、20c 左面、20d 右面、20e 前端面、20f 後端面、21 被測定ガス流通部、21a 被測定ガス導入口、22 基準ガス導入口、23 検出部、24 外側電極、25 内側主ポンプ電極、26 内側補助ポンプ電極、27 測定電極、28 基準電極、29 ヒータ、55 混成電位セル、56 検知電極、56a 配設面、84 緩衝層、84a 上側緩衝層、84b 下側緩衝層、85 保護層、100,200 ガスセンサ、101 素子封止体、102 ハウジング、103 ボルト、104 サポーター、105 圧粉体、110 センサ素子、120,220 保護カバー、122,222 第1ガス室、123,223,323 素子室入口、124 センサ素子室、125,225 第1入口、125a,225a 孔、125b 素子側開口、126 第2ガス室、127,227,327 第2入口、128,228 後方開口、129,229 前方開口、130,230,330 内側保護カバー、131,231,331 第1部材、132 大径部、133 段差部、134,334 第1円筒部、134a 内周面、135,235 第2部材、136,236 第2円筒部、136a 突出部、137 接続部、138 先端部、138a 素子室出口、138b 孔、138d 側部、138e 底部、139 段差部、140 外側保護カバー、143 胴部、143a 側部、143b 段差部、144a 外側入口、144b 孔、144c 孔、146 先端部、146a 側部、146b 底部、146c テーパー部、147a 外側出口、147c 孔、234a 胴部、234b 第1円筒部、334a 厚肉部、334b 凹部。

Claims (8)

  1. 先端と該先端とは反対側の後端とを有し、被測定ガスを導入して流通させる被測定ガス流通部が内部に設けられた素子本体を備え、前記被測定ガス流通部の入口であるガス導入口から前記被測定ガス流通部に流入した前記被測定ガス中の第1特定ガスの濃度を検出するための検出部を備えたセンサ素子と、
    前記センサ素子の前記先端及び前記ガス導入口が内部に配置されるセンサ素子室を内側に有し、該センサ素子室への入口である1以上の素子室入口と該センサ素子室からの出口である1以上の素子室出口とが配設された筒状の内側保護カバーと、
    前記被測定ガスの外部からの入口である1以上の外側入口と前記被測定ガスの外部への出口である1以上の外側出口とを有し、前記内側保護カバーの外側に配設された筒状の外側保護カバーと、
    を備え、
    前記センサ素子は、前記被測定ガス中の前記第1特定ガスとは異なる第2特定ガスの濃度に応じた起電力を生じる混成電位セルを備え、
    前記混成電位セルは、前記素子本体の外部かつ前記ガス導入口よりも後方に配設された検知電極を備え、
    前記検知電極は、前記センサ素子室の内部に配置され、
    前記内側保護カバーは、前記センサ素子の周囲を囲む筒状の第1部材と、該第1部材の周囲を囲む筒状の第2部材とを有し、前記素子室入口として、前記第1部材に配設された1以上の第1入口と、前記第1部材及び前記第2部材の間の隙間として形成された1以上の第2入口と、を有し、
    前記第2入口の前記センサ素子室側の開口は、前記検知電極及び前記第1入口よりも前方に配置され、かつ、前方に向けて開口し、
    前記検知電極を覆う多孔質の保護層を備え、
    前記1以上の前記第1入口のうちの少なくとも1つは、前記第1部材の軸線方向に垂直な仮想平面に前記第1部材及び前記センサ素子を垂直投影した仮想投影図において、前記センサ素子のうち前記検知電極が配設された配設面に垂直で前記配設面の中心から前記素子本体とは反対側に引いた第1直線と、前記配設面の前記中心から前記第1入口の中心に向けて引いた第2直線と、のなす角度θが73.6°以下となるように配置されている、
    ガスセンサ。
  2. 前記第1部材には複数の前記第1入口が配設されており、前記仮想投影図において、前記配設面の前記中心を回転中心にして前記第1直線を73.6°回転した直線を第3直線とし、前記第1直線を前記第3直線とは反対に73.6°回転した直線を第4直線とし、前記第3直線と前記第1部材の内周面との交点を第1交点とし、前記第4直線と前記第1部材の前記内周面との交点を第2交点とすると、前記第1部材の周方向において、隣合う前記第1入口の前記中心同士の間隔が、前記第1交点と前記第2交点との間隔以下となるように、全ての前記第1入口が配設されている、
    請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 全ての前記第1入口は、前記角度θが23.5°以上となるように配置されている、
    請求項1又は2に記載のガスセンサ。
  4. 前記1以上の前記第1入口のうちの少なくとも1つは、前記角度θが39.1°以下となるように配置されている、
    請求項1~3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  5. 前記検出部は、前記素子本体の外部に配設された外側電極を備え、
    前記検知電極は、前記外側電極よりも後方に配設されている、
    請求項1~4のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  6. 前記1以上の前記第1入口のうちの少なくとも1つは、前記第1入口から前記検知電極までの最短経路長L1が、前記第2入口から前記検知電極までの最短経路長L2よりも短い位置に配置されている、
    請求項1~5のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  7. 全ての前記第1入口は、前記第1入口を該第1入口の軸線方向に平行に前記素子本体の表面に向けて投影した投影領域に前記検知電極が重ならない位置に配置されている、
    請求項1~6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  8. 前記第1部材は、円筒状の側部を有し、前記第1入口は、前記第1部材の前記側部に配設された孔である、
    請求項1~7のいずれか1項に記載のガスセンサ。
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