JP7486993B2 - セジメント析出量の推算方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 1.刊行物名 平成30年度 高効率な石油精製技術の基礎となる石油の構造分析・反応解析等に係る研究開発事業 事業報告書 2.発行日 平成31年3月29日 3.公開者 一般財団法人石油エネルギー技術センター 〔刊行物等〕 1.集会名 2019年度JPECフォーラム 2.開催日 令和元年5月8日 3.公開者 佐藤浩一 〔刊行物等〕 1.掲載アドレス http://www.pecj.or.jp/japanese/jpecforum/2019/jpecfourm_2019.html http://www.pecj.or.jp/japanese/jpecforum/2019/pdf/jf001.pdf 2.掲載日 令和元年4月23日 3.公開者 佐藤浩一 〔刊行物等〕 1.刊行物名 JPEC NEWS,2019年7月号,第11~20頁、一般財団法人石油エネルギー技術センター 2.発行日 令和元年7月19日 3.公開者 佐藤浩一 〔刊行物等〕 1.掲載アドレス http://www.pecj.or.jp/japanese/jpecnews/pdf/jpecnews201907.pdf 2.掲載日 令和元年8月2日 3.公開者 佐藤浩一 〔刊行物等〕 1.集会名 令和元年度第3回ペトロリオミクス技術セミナー 2.開催日 令和元年12月16日 3.公開者 佐藤浩一 〔刊行物等〕 1.集会名 The 20th International Conferenceon Petroleum Phase Behavior & Fouling(PetroPhase2019) 2.開催日 令和元年6月3日 3.公開者 佐藤浩一
本発明は、多成分混合物におけるセジメント析出量の推算方法に関し、より詳細には、コンピュータを用いて多成分混合物の固相量の推定情報と特定の補正因子情報とを組み合わせてセジメントの析出量を推算する方法、それに使用される装置、システム、コンピュータ及びそれを使用する方法、並びに装置をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びその記録媒体に関する。
石油精製に関する諸装置の運転においては、通常、比重や粘度、蒸留性状(沸点)などの全体の物理的性状に基づいて原料油を分析し、過去の類似のデータを有する油種の運転実績を参考にして運転条件を決めるという手法がとられている。
しかしながら、昨今では、輸入原油種が多様化しており、類似する過去のデータを探すことは容易ではない。さらに運転効率の向上や環境保護という面からも、単純に過去の運転実績を踏襲すればよいというものではなくなっている。
そこで、比重や粘度、蒸留性状というような石油全体を一括りにした観点で捉えるのではなく、石油を構成している炭化水素分子というレベルでその化学構造や存在割合を把握し、それにより得られた推定物性値等の知見に基づいて運転条件を設定することができれば、より客観性に基づいた効率的な運転ができると考えられてきた。そのため、石油業界においては、石油を分子レベルで把握する技術の出現が待ち望まれてきた。
ところが、石油は、膨大数の炭化水素分子からなる混合物であり、特に重質油は分子量が大きく、かつ複雑な化学構造を有する分子が極めて多種類存在するため、そのような分子の一つ一つについて、化学構造を特定し、それらの存在割合をも特定するというのは、非常に困難なことであった。
これまで、石油を分子レベルで分析し化学構造を解析するにあたっては、高分解能質量分析装置であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴方式による質量分析計を用いて高精度に分子量を計測する技術が用いられてきた。例えば、特許文献1又は特許文献2に記載された方法である。
特に、特許文献2には、石油を構成している分子をアルゴン等に衝突させることにより、分子における架橋部分を切断して構成しているコア部分に分解し、それらの化学構造を求め、そののちにそれらを組み合わせて元の分子を再構築するという分子構造の推定方法が記載されている。
また、アスファルトなどの残渣成分を多く含む重質油の処理において、残渣量を極力低減して原油の利用率を向上させることが求められている。石油精製の過程においては、重質油の分解処理をはじめとする様々な場面で、コークの前駆体であるアスファルテンの凝集を緩和、抑制することが必要である。そのため、アスファルテンの凝集を緩和、抑制する溶媒(溶剤)を原料油に予め混合しておくことが通常行われている。
しかしながら、重質油の処理量増加や分解率増加といった高度化を図ると、重質油処理装置内の機器に固形析出物が堆積し流路を閉塞させることでプロセス全体の計画外停止が発生しやすくなり、それを回避しようとすると、原油種を限定したり、重質油処理方法を抑制せざるを得ない場合がある。例えば、減圧残油水素化分解装置は、減圧残渣(VR)を水素化分解し、付加価値の高いガソリン・軽油を作る装置であるが、セジメント堆積による機器閉塞が比較的高頻度で発生し、運転上の制約要因となっている。減圧残油水素化分解装置は通常2系列で切替運転しているものの、蒸留後の熱交換器において、ファウリングが起き析出物がしばしば発生し、依然として生産性の低下を招く原因となっている。このファウリングに関し、石油会社の検討において、このファウリングの指標である熱交換器の差圧上昇速度と150℃でのセジメント試験の相関が高いということが判っている。
一方で、特許文献3では、アスファルテンと溶媒とのハンセン溶解度指数値(HSP値)の差(Δδ)と、アスファルテンの凝集度との間に一定の関係があることが本出願人により報告されている。さらに、特許文献4では、多成分凝集モデル液相全体の平均HSP値と、非液相成分における各成分のHSP値との差(Δδ)を利用して各成分の分子構造及び存在割合を特定する多成分凝集モデル(Multi-Component Aggregation Model:MCAM)に基づいて、多成分混合物中の各成分の性状を推定する方法が本出願人により報告されている。MCAMは、アスファルテン凝集に起因する石油精製分野における実運用上の諸課題解決に活用可能なツールとして確立することが期待される。
特表2014-500506号公報 特表2014-503816号公報 特開2014-218643号公報 特表2020-502495号公報
このような技術状況下、本出願人は、様々な多成分混合物についての実測値と、MCAMにより得られる推定値との整合性について検討を行った結果、多成分混合物における分子構造とその組成はMCAMの推定値と整合性を有するものの、MCAMにより得られるセジメントの析出量の推定値は、セジメントの析出量の実測値と整合しないことが判明した。そこで、本出願人は、さらに鋭意検討した結果、MCAMによる多成分混合物のセジメント析出予測モデルの構築において、析出に影響のある特定の補正因子を組み入れることにより、セジメント析出量を高精度で推算し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、多成分混合物におけるセジメントの析出量を高精度で推算す新たな手法を提供することを1つの目的とするものである。
上記の目的を達成するため、本発明者らは、以下の本発明を創出した。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
コンピュータによる、多成分混合物におけるセジメントの析出量の推算方法であって、
(1)前記多成分混合物を構成する各成分の分子構造情報に基づき、各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値を提供するステップ、
(2)前記各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値に基づき、前記多成分混合物における固相量を推定するステップ、
(3)前記多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供するステップ、及び
(4)前記固相量及び前記補正因子情報に基づき、多成分混合物におけるセジメントの析出量を整合させるステップ
を含むことを特徴とするものである。
また、本発明の別の実施態様においては、多成分混合物におけるセジメントの析出量の推算装置、システム及びそれらの運転方法や、それらを実行させるコンピュータプログラム、その記録媒体及びそれを記憶したコンピュータも提供される。
本発明によれば、コンピュータを用いて多成分凝集モデルより得られる多成分混合物の固相量の推定情報と特定の補正因子情報とを組み合わせることにより、多成分混合物におけるセジメントの析出量を高精度で推算することができる。
本発明の実施形態による方法を説明するフローチャートである。 本発明の実施形態による方法のステップ(1)を説明するフローチャートである。 本発明の実施形態による方法のステップ(2)を説明するフローチャートである。 本発明の実施形態による多成分混合物のセジメント析出量推算装置の機能ブロック図である。 試験例1における減圧残油(VR)サンプルの分離前処理方法を示すフローチャートである。 高ファウリング及び低ファウリングのセジメントについて、セジメント析出実測値とMCAMで推算した固相量との関係を示した図である。 セジメント析出実測値とアルファルテン(As)の実測値との関係を示す図である。 セジメント析出実測値とトルエン不溶分(TI)の実測値との関係を示す図である。 生成油分析(析出物を溶解させる成分分析)の結果を示す図である。芳香族分(3環以上:3A)及び極性レジン(Po)が析出物の溶解に影響していることが示されている。 セジメント析出実測値と、As/(3A+Po)の関係を示す図である。コア別のDAgg値の区分ごとのNクラス分析を行った結果を示す図である。 セジメント析出実測値と、窒素原子を2個含みかつ2環の芳香分の分率(N2クラス分率(ダブルコア))の関係を示す図である。 セジメント析出実測値と、窒素原子を2個含みかつ1環の芳香分の分率(N2クラス分率(シングルコア))の関係を示す図である。 セジメント析出実測値及び式2に示す析出予測式との関係を示す図である。
<定義>
本発明の実施形態を説明するにあたり、先ず、本明細書にて使用する用語ないし表現について説明する。
(1)「多成分混合物」
「多成分混合物」とは、二以上の成分からなるあらゆる混合物を包括する概念である。
成分の含有割合は問わない。具体的には、好ましくは、「石油」であり、さらに好ましくは、「重質油」である。より詳しくは、「多くの芳香族化合物を主たる成分とする混合物」である。
(2)「成分」
「成分」とは、「混合物をある特定の物理的又は化学的性状を基準として括った塊」、即ち、「ある特定の物理的又は化学的性状を基準として分画された分画物(フラクション)」を意味する。特定の物理的又は化学的性状を基準として括る方法としては、例えば、蒸留試験における沸点範囲を特定して、その温度範囲にあるものを一つの成分として分画する方法等が挙げられる。この場合、混合物は「分画物(フラクション)の集合体」ということになる。或いは、「成分」を、多成分混合物を構成する一つ一つの構成員であって、「同一の分子種に属すると認められる分子の集合体」と捉えてもよい。ここで、「同一の」とは、「分子構造を完璧に特定し、その上で同一である」、或いは、「分子構造上の異性体(分子式は同じであるが構造が異なるもの)同士は同一のものとする」という意味と捉えてもよく、例えば、後述する「JACDのような方式で特定された構造において同一である」という意味と捉えてもよい。さらには、広く「任意に定めた基準に基づいて一括りにした分子の集合体」という意味と捉えてもよい。
(3)「構成する」
「多成分混合物を構成する」とは、多成分混合物中に存在する100%すべての成分を想定するものでなくてもよい。本発明により特定される各成分の分子構造をどのように利用するかにより、どの程度の詳細さを以て成分としての分子種特定が必要になるかに応じて、「構成する各成分」を適宜決定すればよい。例えば、多成分混合物中において一定の存在量(存在割合)以上を持つ分子種のみを対象として、「構成する成分」と捉えてもよい。石油のような膨大な種類の分子種すべてについて分子構造を同定する必要性は必ずしも高いとは限らず、微量しか存在しない分子種等については、必要に応じて、無視してもよい。例えば、「多成分混合物」として、多環芳香族レジン分(PA)を対象とする場合、PAを構成する成分として、パラフィン系化合物及びオレフィン系化合物の存在は無視してもよい。
(4)「分率」
「分率」とは、質量分率、容量分率又はモル分率等、存在割合を示すものであれば何でもよく、いずれをも含む概念である。液相全体の平均ハンセン溶解度指数値を算出する場合は、好ましくは容量分率が用いられ、各成分の当該液相における容量分率で重み付けした加重平均値として算出される。
(5)「分子構造を特定する」、「分子」
「分子構造を特定する」とは、上記「成分」における「分子」に関し、分子が持つ構造に関する何等かの情報を特定するという行為であれば、あらゆる行為を包含するものである。目的及び必要性に応じて、その度合い、表示の方式を適宜選択すればよい。分子全体の構造を特定するという行為のみならず、分子の一部分についての構造に関する情報を組み込んでもよい。例えば、コア部分の構造のみを特定し、側鎖部分や架橋部分については構造は特定せず分子式のままにしておいてもよい。
本明細書において、好ましくは、後述する「JACD」で分子構造を特定する。「JACD」で構造が特定された分子というのは、後述するアトリビュートの結合位置の違いによる異性体をすべて含む概念である。本明細書において、「分子」は、異性体をすべて含む概念と捉えてもよい。
(6)「各成分の存在割合を特定する」
「各成分の存在割合を特定する」とは、混合物を構成する各成分について、それらが存在する比率を特定するという行為であれば、あらゆる行為を包含するものである。また、混合物を構成するすべての成分種について存在割合が特定されなければならないという意味ではなく、分析技術では検出が困難な程度の量しか存在しないような成分や特定する必要のない成分までを含めたすべての成分の存在割合を特定して初めて、「各成分の存在割合を特定した」とするものではない。かかる微量成分等については、「その他の成分」としてまとめて扱ってもよい。さらには、これらを「混合物を構成する各成分」という範囲から除外し、他の成分の存在割合を算出する上での分母に入れなくてもよい。
(7)「すべての」
本明細書において、「すべての」とは、必ずしも「100%全部の」という意味でなくてもよい。例えば、質量スペクトルについて「すべてのピーク」という言い方をしている箇所については、文字どおり、「100%全部のピーク」という意味のみならず、例えば、その場面での検討の目的上必ずしも必要でない分子に関するピークや判別しにくいようなピーク等については、適宜、除外した上で、それ以外のピークを指すという意味と捉えてもよい。
(8)「ピーク」
質量分析において得られるピークの横軸は、多成分混合物を構成する各成分の分子イオン又は擬分子イオンについてのm/zである。このm/zが示す数値は、分子イオン又は擬分子イオンの質量に相当する数値であるため、概ね、そのピークに帰属させられる分子の分子量を表している。本明細書では、この「質量分析において得られた、分子イオン又は擬分子イオンについてのm/zのピーク」を、「質量分析において得られたピーク」、又は単に「ピーク」ということがある。また、当該ピークの高さは、そのピークに帰属する分子の相対的な存在割合を示している。
(9)「分子式」
「分子式」とは、分子を構成する元素の種類と数のみを示す式のことであり、構造は特定されていないものを指している。分子を構成する元素の種類と数がわかっているため、分子量及び後述するDBE値等の情報は得ることができる。
本発明において主として用いているフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴方式による質量分析(以下、「FT-ICR-質量分析」ともいい、FT-ICR-質量分析により得られたスペクトルを「FT-ICR-質量分析スペクトル」ともいう)においては、m/zの値を小数点第4位まで決定することができる。そのため、原子の同位体の存在をも考慮した精密な質量の数合わせを行うことにより、そのピークに帰属する分子の分子式を決定することができる。分子式というのは、分子を構成する元素の種類と数のみを表すものにすぎないため、上記決定された分子式に該当する分子としては、異性体が複数存在しうる。即ち、1本のピークには、分子式が同一である複数の異性体が帰属しうる。
ただし、FT-ICR-質量分析の特性上、分子式は同一であっても、例えば、その分子イオンに水素イオンが付加している等により、元の分子イオンと質量が異なることになり、そのため別のピークとして現れることがある。よって、測定上は別ピークとして現れたものであっても、分子式を構成する元素の種類と数が同一であるものは「同一の分子式」として捉えてもよい。「その分子式に該当する分子」という文言において、「その分子式」というのは、このような「同一の分子式」という意味で捉えてもよい。また、「あるピーク」という場合、上記の意味で「同一の分子式」を表しているとされた種々のm/zのピークをすべてまとめて捉えた概念と考えてもよい。
(10)「コア」、「シングルコア」、「ダブルコア」
「コア」とは、後述の「JACD」の項で記載する「アトリビュート」の一種であって、具体的には、芳香環又はナフテン環そのもの、芳香環とナフテン環が架橋ではなく直接結合しているもの、芳香環又はナフテン環にヘテロ環が架橋ではなく直接結合しているものである。架橋又は側鎖は、コアとは別のアトリビュートであるため、「コア」とは、架橋又は側鎖を一切有しないものを意味している。
一方、「シングルコア」とは、上記コアを1個だけ有する分子を指す概念である。分子を指す概念であるため、コアに側鎖が結合しているものも包含している。上記コアの2個以上が架橋してなる分子を「マルチコア」という。「マルチコア」も分子を意味するため、コアに側鎖が結合しているものも包含している。2個のコアが架橋してなる分子を「ダブルコア」という。
例えば、以下に示すナフタレン分子は、1個の芳香環からなるものであるため「シングルコア」であり、ベンゼン環2個からなるダブルコアではない。
(11)「DBE値」
「DBE値」とは、分子式が、「C」である場合、以下の式(1)にて算出される値である。
DBE = c- h/2+n/2 + 1 ・・・(1)
(式中、cは炭素原子の数、hは水素原子の数、nは窒素原子の数、oは酸素原子の数、sは硫黄原子の数を示す。)
この値は、概ね、分子における不飽和性、とりわけ、二重結合及び環の存在の程度を示すものである。
(12)「JACD (ジャックディー)」「Juxtaposed Attributes for Chemical-structure Description)」
「JACD」とは、分子構造に関する新規な表示方式であって、分子の構造を、アトリビュートの種類及びアトリビュートの数により表示するものである。アトリビュートが他のアトリビュートのいずれの位置において結合しているかについては表示しない。
上記において、「アトリビュート」とは、分子を構成している化学構造上の部品(パーツ)を指す概念である。芳香族化合物においては、具体的には、前述の「コア」、「架橋」及び「側鎖」を指す。
この表示方式によると、石油を構成する膨大数の分子の各々に関し、それらの構造を、必要かつ十分な程度に特定することができる。
以下の化学式で表された分子を例にとって説明する。
この化合物をJACDで表すと、以下の表1のようになる。
JACDで表示され、構造が特定された分子とは、アトリビュートの結合位置の違いによる異性体をすべて含む概念である。
(13)「物性値」
「物性値」とは、物質の物理的又は化学的な性質や性状、特性を表現するものであれば、名称の如何に拘わらず、「物性値」に含まれる。本明細書において、「物性値」とは、これらに限定されるものではないが、例えば、融点、ハンセン溶解度指数値、生成ギブス自由エネルギー、イオン化ポテンシャル、分極率、誘電率、蒸気圧、液体密度、API度、気体粘度、液体粘度、表面張力、沸点、臨界温度、臨界圧力、臨界体積、生成熱、熱容量、双極子モーメント、エンタルピー、エントロピー等である。
(14)「石油」
本明細書において、「石油」とは、原油、並びに原油を蒸留して得られる諸留分及び諸留分に改質や分解等の二次装置による処理を加えて得られる留分等をも含む総称的な概念をいう。或いは、原油を蒸留して得られたある留分について、さらに飽和炭化水素や芳香族炭化水素等の成分に分画した分画物をさすこともある。
(15)「石油に関する装置」
本明細書において、「石油に関する装置」とは、蒸留装置や抽出装置をはじめ、改質装置、水素添加反応装置、脱硫装置等の化学反応を伴う装置等、石油の処理に関する装置をすべて含む。「石油に関する装置」を総じて、「石油精製装置」ともいう。
(16)「セジメント」
本明細書において、「セジメント」とは、「セジメント試験」IP-375法(ISO 10307-1、ASTM D4870)に準拠して測定した析出物であり、その質量%を「セジメント析出量」という。なお、ろ過温度は150℃とした。
<多成分混合物におけるセジメントの析出量の推算方法>
本発明の一実施形態によれば、図1に示される通り、コンピュータによる、多成分混合物におけるセジメントの析出量の推算方法であって、
(1)前記多成分混合物を構成する各成分の分子構造情報に基づき、各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値を提供するステップ、
(2)前記各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値に基づき、前記多成分混合物における固相量を推定するステップ、
(3)前記多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供するステップ、及び
(4)前記固相量及び前記補正因子情報に基づき、多成分混合物におけるセジメントの析出量を整合させるステップ
を含む方法が提供される。
ステップ(1):多成分混合物を構成する各成分の分子構造情報に基づき、各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値を提供するステップ
図2のフローチャートを参照して、本実施形態における多成分混合物の各成分の分子構造を特定するための、ステップ(1)を説明する。
ステップS1(質量分析)(図2のS1)
ステップ1は、多成分混合物に対し質量分析を行い、得られたピークの各々について、そのピークに帰属する分子の分子式を特定し、さらにその分子の存在割合を特定するステップである。即ち、多成分混合物に対し質量分析を行い、それにより得られたすべてのピークについて、各ピークに帰属する分子の分子式を特定し、さらにその分子式に該当する分子の存在割合を特定するステップである。
質量分析は、超高分解能の質量分析計を用いるのが好ましい。具体的には、FT-ICR-質量分析計を用いて、公知の方法、即ち、試料をソフトイオン化して分子イオン又は擬分子イオンを形成することにより、高精度な計測を行う。
ステップS2(衝突誘起解離)(図2のS2)
ステップS2は、多成分混合物に対し衝突誘起解離を行うステップである。「衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation、以下、「CID」ともいう。)」とは、分子をイオン化し、これをアルゴン等の不活性ガスに衝突させ、架橋及び側鎖を切断する操作をいう。通常、当該多成分混合物を構成する各成分における架橋及び側鎖が切断されるように、衝突エネルギーを与えることが好ましい。架橋及び側鎖を切断することにより、コアごとのフラグメントイオンが生成される。このコアは、衝突誘起解離では切断し得なかった炭素数0~4程度の脂肪族基を側鎖として有していることがある。
多成分混合物に対しFT-ICR-質量分析を行ったとき、得られるピークのm/zから、多成分混合物を構成する分子の分子式を決定することができるが、その分子の「コア」に関する情報は得られない。そこで、さらに、衝突誘起解離を行って、多成分混合物を構成する各分子中の架橋及び側鎖を切断すれば、多成分混合物全体の中に存在するコアの種類を知ることができる。
衝突誘起解離を行う条件としては、分子中の架橋及び側鎖を有効に切断できる衝突エネルギー、例えば、10~50kcal/モルが好ましく、20~40kcal/モルがより好ましい。なお、40kcal/モルは、分子量を700とすると32eVに相当する。
ステップS3(各コアの構造及び存在割合の特定)(図2のS3)
ステップS3は、ステップ2の衝突誘起解離により生成した各フラグメントイオンについて、質量分析、好ましくは、FT-ICR-質量分析を行い、各フラグメントイオンを構成するコアの構造及び存在割合を特定するステップである。
(ア)まず、各フラグメントイオンを構成するコアについて、その構造を特定する方法を説明する。
具体的には、前記ステップ2で得られたコアに関する情報と、予め用意しておいたコア構造リストに記載されているコアに関する情報とを照合し、各コアの構造を特定する方法である。
詳しくは、以下のとおりである。
i. 衝突誘起解離後におけるコアに関する情報の取得
衝突誘起解離後の各フラグメントイオンのFT-ICR-質量分析においては、コアの部分は同じであっても、側鎖として炭素数が0~4程度の脂肪族基を有するフラグメントイオンは、その側鎖の種類に応じて、各々質量が異なるため、別々のピークとして現れる。
そこで、コアに側鎖として炭素数が0~4の脂肪族基を持つものについて、これら各種の質量を予め算出しておき、上記現れた別々のピークを種々比較照合すれば、コアそのものの質量を割り出すことが可能となる。
この方法を用いて、ステップ2において、衝突誘起解離後に得られたピークの各々について、そのピークに帰属されるコアは、質量がいくつで、O,N又はS原子等のヘテロ原子がいくつ存在し、またDBE値から芳香環がいくつ存在しているかという情報を得ることができる。
ii. 衝突誘起解離後におけるコアの構造の特定
衝突誘起解離後におけるコアの構造を特定する方法として、予め、多成分混合物の各成分分子を構成すると想定できる各種のコアをモデルとしてリスト化した、「コア構造リスト」を作成しておき、当該リストに格納されているコアの分子量、ヘテロ原子の種類と数等の情報と上記にて得られたコアの情報を照合して、このリストの中から最も妥当と考えられるコアのモデルを選択し、そのコアを当該コアとして該当させるという方法がある。
この方法により、衝突誘起解離後のFT-ICR-質量分析にて得られたすべてのピークに対して、コアが割り付けられ、その構造を知ることが可能となる。
iii.コア構造リスト
上記コア構造リストに格納するコアの種類については、特に限定されるものではなく、いかなるものであってもよいが、格納するコアの選定の妥当性が各コアの構造特定の妥当性に直結することになる。
試料である多成分混合物そのものの内容に応じて、予め「コア構造リスト」を作成しておくのが好ましい。例えば、多成分混合物が石油の場合、これまでの石油に関する知見をもとにして、予め、「石油の分子構造特定用のコア構造リスト」を作成しておき、それを用いればよい。
リストの作成においては、基本となる芳香環における環数、芳香環に直接結合するナフテン環の種類と数(カタ型かペリ型かという違いも含む)及び直接結合の態様(即ち、基本芳香環のどの位置にどういう形でナフテン環が結合しているのかという態様)等、諸条件を勘案して、適当数のコアを格納するのがよい。
例えば、芳香環の大きさは6環までとすることや、ヘテロ原子はN、O、Sを想定し、ヘテロ環の種類としては10個程度とすること等、計算上の便宜を考慮してリストを作成すればよい。
iv.コア構造リストからの選定
コア構造リストには、「分子量、DBE値及びヘテロ原子の種類と数がすべて同じであるが、構造式が異なる」というものが複数存在している場合がある。この場合、それらの複数のうちどれを第一優先として選定するかについては、適宜、ルールを決めておけばよい。例えば、優先性として、次の1~3が挙げられる。
1.芳香環のみから成るものを優先する。
2.不飽和結合の多いものを優先する。
3.環数の少ないものを優先する。
(イ)次に、各コアの存在割合を特定する方法を説明する。
前述のとおり、ステップS2において衝突誘起解離後に得られた各々のピークの高さから、そのm/z、即ち、その質量を持つコアの存在割合を求めることができる。
本ステップ3で得られた衝突誘起解離後の各コアの構造は、後にステップ5にて用いられることになり、また、衝突誘起解離後の各コアの存在割合は、後にステップ4にて用いられることになる。
ステップS4(クラスごとのコアの存在態様及び存在割合の推定)(図2のS4)
ステップS1におけるピークの各々に帰属する分子を、「ヘテロ原子の種類と数(ゼロを含む。)及びDBE値」に基づいて「クラス」に分け、当該各々の「クラス」に属するすべての分子について、その存在態様及び存在割合を推定するステップである。
言い換えれば、ステップS1におけるすべてのピークに帰属する分子について、ステップS1にて特定された各々の分子式における「ヘテロ原子の種類と数(ゼロを含む。)及びDBE値」に基づいて「クラス」に分け、当該各々の「クラス」に属するすべての分子について、その存在態様及び存在割合を推定するステップである。
以下、ステップS4について詳説する。
(ア)ステップS1において、すべてのピークについて分子式が特定されているため、その分子式におけるヘテロ原子の種類とその数及びDBE値が判明する。したがって、本ステップでは、この「ヘテロ原子の種類とその数及びDBE値」に基づいて、すべてのピークに帰属させた分子それぞれを、「ヘテロ原子の種類とその数及びDBE値」ごとに括られたそれぞれの「クラス」の中に編入する。
「ヘテロ原子の種類と数」とは、詳しくは、「ヘテロ原子の種類ごとのそのヘテロ原子の数」である。ヘテロ原子とは、好ましくは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子であるため、「ヘテロ原子の種類と数」とは、好ましくは、「窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のそれぞれの数」ということもできる。よって、ヘテロ原子に関して言えば、「窒素原子の数、硫黄原子の数及び酸素原子の数のすべてが一致するもの」が同一の「クラス」に入ることになる。なお、本明細書では、窒素原子を2つ含む場合には「N2クラス」と称することがある。
(イ)次に、(ア)に記載した「ヘテロ原子の種類と数及びDBE値」で括られた各クラスにおいて、そのクラスに属する各分子が、どういうシングルコア又はマルチコアであるのかを推定する。また、それらのシングルコア及びマルチコアは、それぞれどういう割合で存在するのかを推定する。
これらの推定を行うにあたっては、実際の計算上の便宜から、いくつかの仮定を設けて行うのが好ましい。
ここで、「マルチコア」は、どういうコアどうしが架橋して結合しているのかにより、いろいろな組み合わせがありうる。ただし、マルチコアを形成する複数個のコアのDBE値の和及びヘテロ原子の種類に応じた数の和は、そのクラスに属しているものは、皆、同じ値である。
(ウ)上記のように、FT-ICR-質量分析にて得られたピークの各々に帰属する分子について、ヘテロ原子の種類と数及びDBE値が同じものからなるクラスごとに括り直したが、そのクラスに属する分子は、シングルコア又はマルチコアである。これらのシングルコア又はマルチコアが、どういうコアをもって構成されるのかを推定する好ましい方法について、以下、説明する。
そのクラスに属する分子が、シングルコアである場合は、そのクラスに該当するヘテロ原子の種類と数及びDBE値を持つシングルコアが該当する。そのクラスに属する分子が、マルチコアである場合は、当該マルチコアを構成している複数のコア中に存在する同じ種類のヘテロ原子ごとの数の和及びこれら複数のコアのDBE値の和が、当該クラスのヘテロ原子の種類と数及びDBE値と一致するように、コアを組み合わせたものが該当する。複数のコアのヘテロ原子の種類に応じた数の和及びDBE値の和がそのクラスのヘテロ原子の種類と数及びDBE値に該当すればよいのであるから、マルチコアを構成する複数のコアの組み合わせは、通常、1つとは限らず、数通り存在する。
(エ)次に、「そのクラスに属する各分子であるシングルコア及びマルチコアは、それぞれどういう割合で存在するのか」を推定する。
好ましくは、最初に、マルチコアの存在割合は、そのマルチコアを構成している複数のコアそれぞれの存在割合の積であると仮定し、これを推定値とする。
ステップS5(コア構造、側鎖及び架橋の決定)(図2のS5)
ステップS5は、ステップS4において存在態様が推定された各分子に対し、それらを構成するコアの構造を決定し、さらに側鎖及び架橋を決定して割り付けるステップである。
(ア)「ステップS4において存在態様が推定された各分子」に対し、「それらを形成するコアの構造を決定する」とは、以下のi~iiiの操作により行うものである。
i.ステップS4で存在態様が推定されたマルチコアの場合は、それを構成しているコアごとに分けて(解除して)とらえる。
ii.ステップS4で存在態様がシングルコアであると推定されたもの及び上記iのようにマルチコアを解除して生成したコアのすべてについて、同じ「ヘテロ原子の種類と数及びDBE値」のものごとにそれぞれの「クラス」に括り直す。因みに、ここでいう「クラス」は、もともとのシングルコア及びマルチコアを解除して得られたコアに関する概念であり、ステップS4で述べた分子に関する「クラス」とは別のものである。
iii.上記iiで括られた「ヘテロ原子の種類と数及びDBE値」のすべての「クラス」に関し、その「クラス」に存在しているコアのすべてについて、具体的な構造を割り付ける。
(イ)以下のi~iiiの操作により、さらに側鎖及び架橋を決定する。
i.上記により、シングルコア又はマルチコアのコアの部分の構造は特定することができたが、コアの部分のみの存在を想定しただけでは、対象とする試料についてFT-ICR-質量分析にて得られたピークのm/zが示す質量に合致しない。即ち、コアの部分に関与している炭素、水素及びヘテロ原子に基づく質量を合計しても、FT-ICR-質量分析にて得られたピークのm/zで示される質量と差が生じる。
そこで、その質量の差分は、コアに結合している側鎖及びコアどうしを結合させている架橋の存在に由来するものと考え、差分が解消するように炭素の数及び水素の数を割り出し、それを側鎖及び架橋としてコアに割り付ける。
例えば、あるm/z=nのピークに対して、上記の手順により、コア1とコア2が架橋してなるあるダブルコアが割り付けられたとする。このとき、
その質量の差分(d)=n-(コア1の質量+コア2の質量)
が、側鎖及び架橋の存在に由来するものとなる。
ii.上記iにおいては、側鎖及び架橋として割り付ける炭素の数及び水素の数は求められるが、まだ、どういう構造の側鎖及び架橋かは決定できていない。そこで、どういう構造の側鎖及び架橋が相当するのかを推定するにあたっては、想定される側鎖及び架橋の組合せの存在確率を考慮して、例えば、以下のようなルールを決めておき、それに従って推定すればよい。ルールとしては、側鎖や架橋を構成する炭素の数の上限や側鎖の本数等の条件を予め定めておけばよい。
iii.上記iにおいて、その質量の差分に相当する側鎖又は架橋が存在しない場合は、コア1とコア2が単に結合しているという構造を当てはめてもよい。
(ウ)上記にて決定した側鎖及び架橋を「コアに割り付ける」とは、どのコアのどの位置に側鎖や架橋が結合しているかを決定することまでを包含する意味ではない。
(エ)このようにして、ステップS5により、ステップS4において存在態様が推定された各シングルコア又はダブルコアに対し、それらを構成するコアの構造を決定し、さらに側鎖及び架橋を決定することができる。
上記のステップS1~ステップS5により、多成分混合物を構成する各成分について、その分子構造をJACDで特定し、またその存在割合を特定することができる。
本発明においては、前記多成分混合物が、ある多成分混合物を2以上の任意の部分に分画することにより得られた一つの分画物であってもよい。即ち、前記における「多成分混合物」を、大きな括りの「多成分混合物A」を分画して得られた一つの分画物Iと捉えた場合、「多成分混合物A」は、分画物I、分画物II・・など、分画の数だけの分画物の混合物と捉えることができる。分画物IIについても、分画物Iで行った方法と同様の方法により、分画物IIを構成する各成分の分子構造を特定することができる。
分画を行うにあたって、分画物の境目とする基準又は分画するための方法は特に問わない。具体的には、以下のような方法で行うのが好ましい。
多成分混合物に対し高精度なタイプ別分離前処理を施し、複数の成分に分画するという方法である。特に重質油の場合、かかる分画を行うことが好ましい。「タイプ別分離前処理」の方法としては、特に限定はされず、任意の基準に従っていくつかの成分に分離させればよいのであるが、カラムクロマト分画方法、ソックスレー抽出法や高速溶媒抽出法等の溶媒抽出法等の公知の方法を用いればよい。重質油の場合は、例えば、特開2011-133363号公報に記載の方法のように、カラムクロマト分画方法を用いるのが好ましい。いくつの成分に分画するかは、目的に応じて、適宜選択すればよい。
具体的には、次の第1~第4工程を含む方法が挙げられる。
(第1工程)
重質油をヘプタン等のn-パラフィンに可溶なマルテン分(Ma)とそれ以外の不溶分に分離する。
(第2工程)
上記(第1工程)で分離したマルテン分をカラムクロマトグラフィーを用いて飽和分(Sa)、1環芳香族分(1A)、2環芳香族分(2A)、3環以上の芳香族分(3A+)、極性レジン分(Po)及び多環芳香族レジン(PA)の各フラクションに分離する。
(第3工程)
さらに好ましくは、前記第2工程で得られた3環以上の芳香族分フラクション(3A+)を、分取液体クロマトグラフィーを用いて、さらにPeri型4環芳香族分とCata型4環芳香族分のフラクション及び場合によっては5環以上の芳香族分(5A+)に分離してもよい。
(第4工程)
また、上記(第1工程)で分離した不溶分をトルエンに可溶なトルエン可溶分(アルファルテン(As))、それ以外のトルエン不溶分(TI)に分離し、さらに、トルエン不溶分を、THFに可溶なTHF可溶分と、それ以外のTHF不溶分に分離する。
次に、コンピュータを用いて、多成分混合物の組成モデルを決定する方法を説明する。
これは、多成分混合物を2以上の任意の部分に分画するステップAと、ステップAで分画された各分画物について、前記の方法により、各分画物を構成する各成分の分子構造及び存在割合を特定するステップBと、ステップAで分画された各分画物の混合比に従って、すべての分画物について得られた全成分の分子構造及び存在割合を統合するステップCとを含むことを特徴とする方法である。
前記のとおり、「多成分混合物A」を、それを分画することにより得られた分画物I、分画物II・・など、分画の数だけの分画物の混合物と捉え、各分画物については、前記の方法にて、その分画物を構成する各成分の分子構造及びその存在割合を特定する。しかる後に、「多成分混合物A」における分画物I、分画物II・・それぞれの混合比、即ち、分画収率に従って、全分画物の全成分を統合すれば、「多成分混合物A」の組成モデル全体について、どういう成分により、どういう割合で構成されているのかを特定することができる。
次に、本実施形態における多成分混合物の融点及びハンセン溶解度指数値の取得ステップを説明する。
ステップS6(融点及びハンセン溶解度指数値の取得)(図2のS6)
ステップS1~S5により、JACDを用いて特定された多成分混合物の各成分の分子構造から、各成分の融点及びハンセン溶解度指数値(以下、「HSP値」ともいう)を取得する。
これらの物性値は、上記のようにして特定された多成分混合物の各成分の分子構造について、全石油分子データベース(Comcat)を用いて特定することが好ましい。
Comcatとは、JACDと各物性値とが紐付けられた「JACD-物性値データベース」のことである。該データベースへの登録分子数は、約2,500万件であり、石油に含まれる全成分は、すべてComcatに含まれる分子から構成されると仮定したモデル系解析において、利用可能である。
該データベースに登録されている物性値は、融点、ハンセン溶解度指数値、沸点、臨界湿度、臨界圧力、臨界体積、蒸気圧、液体密度、気体粘度、液体粘度、表面張力、双極子モーメント、分極率、イオン化ポテンシャル、生成熱、エンタルピー、エントロピー、自由エネルギー、熱容量等の約200種の物性値である。
これらの物性値は、通常、原子団寄与法や分子軌道法を用いて算出される。原子団寄与法とは、ある物質の物性値を求めるにあたり、その物質の化学構造を特定し、存在する各種の原子団、即ち、「基」が持つ固有のパラメータ値をもとに、その物質の物性値を算出するという方法である。即ち、その物質が持つ「基」が特定されることが前提となる。また、分子軌道法においても、まず、その物質が持つ「基」が特定され、それをもとに構造が特定されることが前提となる。
本発明においては、上述のように、多成分混合物を構成する各成分について、存在する各種の原子団が特定されるため、各種の原子団が持つ公知の固有のパラメータ値を用いて、その成分の物性値を算出することができる。さらに、各成分の存在割合も特定されているため、この存在割合を考慮すれば、適宜、各成分の持つ物性値から全体の多成分混合物の物性値を推算することが可能となる。
ステップ(2):各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値に基づき、多成分混合物における固相量を推定するステップ
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態における多成分混合物おける固相量を推定するための、ステップ(2)を説明する。より具体的には、本発明が立脚する多成分凝集モデル(Multi-Component Aggregation Model:MCAM)について、以下のステップS7~S16により説明する。
ステップS7(液相成分と非液相成分への分離)(図3のS7)
上記のステップS1~S6において、各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値を取得し、所望の温度Tを設定する。
多成分混合物を構成する各成分のうち、所望の温度T未満の融点を有する成分を液相成分として分類し、該所望の温度T以上の融点を有する成分を非液相成分として分類する。
ここで所望の温度Tとは、上記で定義したとおりである。
ステップS8(液相全体の平均HSP値の算出)(図3のS8)
ステップS7において液相成分として分類された各成分のHSP値について、各成分の当該液相における容積分率で重み付けした加重平均値を、液相全体の平均HSP値として算出する。各成分について、密度、分子量等の物性に関する諸情報を予め取得しておくことにより、容積分率を算出することができる。
ステップS9(液相全体と各非液相成分とのHSP値の差の算出)(図3のS9)
ステップS8において算出した液相全体の平均HSP値と、非液相成分における各成分のHSP値との差(Δδ)を算出する。
ステップS10(Δδに基づく各成分の分類の更新)(図3のS10)
非液相成分における各成分を、ステップS9において算出した差(Δδ)に基づいて、液相成分又は非液相成分として再分類し、液相成分として再分類された各成分を非液相成分から液相成分へ編入して、液相成分及び非液相成分を更新する。
この再分類における更新は、非液相成分における各成分について、一つずつ順番に行ってもよいし、複数の成分ごとに行ってもよい。
ステップS11(更新後の液相全体の平均HSP値の算出)(図3のS11)
ステップS10において更新した後の液相成分における各成分のHSP値について、各成分の当該更新後の液相における容積分率で重み付けした加重平均値を、更新後の液相全体の平均HSP値として算出する。
ステップS12(ステップS9~S11の繰り返し)(図3のS12)
ステップS9~S11を、ステップS10において液相成分として再分類される非液相成分がなくなる最終段階まで繰り返す。
ステップS13(非液相成分の凝集度の算出)(図3のS13)
所望の温度における最終段階での更新後の非液相成分の凝集度D(以下、DAgg値ともいう)を算出する。ここで、凝集度Dは、HSP値、濃度、温度により設定される数値であり、下記式1で表すことができる。凝集度Dは、固相と凝集相の閾値を意味し、本発明において固相と判定される量と、セジメント試験でのセジメント量との相関の精度を向上する観点からは、凝集度Dは1.2以上であり、好ましくは2~3である。
ステップS14(凝集度に基づく非液相成分の分類、固相量の推算)(図3のS14)
最終段階での更新後の非液相成分における各成分を、凝集度Dに基づいて、凝集相成分と固相成分とに分類し、固相量を算出する。
例えば、凝集相成分に分類された各成分の分率の合計を凝集相分率として算出し、また、固相成分に分類された各成分の分率の合計を固相分率として算出する。さらに、凝集相成分に分類された各成分の凝集度の和を当該成分の数で除した値を凝集相全体の平均凝集度として算出する。上記の方法により、このモデル重質油について、固相量を推算することができる。併せて、上記の方法により、無溶媒での液相、凝集相の量及びそれらの組成並びに凝集相における各分子の凝集度D及び凝集相の平均凝集度を算出、推定することが可能である。
なお、以上に記載のステップ(1)及びステップ(2)は、特許文献3及び特許文献4に記載の方法を参考にして実施してもよく、これら文献は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
ステップ(3):多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供するステップ
本発明の方法では、ステップS1~S14で得られた多成分混合物の固相量の推算値に加え、多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供する。上記特定の補正因子により固相量の推算値を整合させることにより、セジメント析出量を高精度に予測しうることは意外な事実である。
補正因子の提供に使用される多成分混合物における析出関連成分としては、好ましくはヘプタン不溶分であり、より好ましくはアスファルテン(As)及びトルエン不溶分(TI)である。
また、多成分混合物における析出関連成分に基づく補正因子情報は、好ましくはヘプタン不溶分の量情報であり、より好ましくはアスファルテン(As)及びトルエン不溶分(TI)の量情報である。
また、補正因子の提供に使用される多成分混合物における相溶性関連成分としては、好ましくはアスファルテン及びヘプタン可溶分であり、より好ましくはアスファルテン(As)、芳香族分(3環以上:3A)及び極性レジン(Po)である。
また、多成分混合物における相溶性関連成分に基づく補正因子情報は、好ましくはヘプタン不溶分の量情報であり、より好ましくはアスファルテン(As)と、芳香族分(3環以上:3A)及び極性レジン(Po)の和との比率情報(As/3A+Po)である。
また、補正因子の提供に使用される多成分混合物における凝集関連成分としては、好ましくは窒素原子を2個以上含む芳香族分であり、より好ましくは1環芳香族分及び2環芳香族分を含む、窒素原子を2個以上含む芳香族分である。このような芳香族分が、凝集に関連する補正因子として使用しうることは意外な事実である。
また、多成分混合物における相溶性関連成分に基づく補正因子情報は、好ましくは窒素原子を2個以上含む芳香族分の量情報を含むであり、より好ましくは1環芳香族分(シングルコア)及び2環(ダブルコア)芳香族分でありかつ窒素原子を2個含む(N2クラス)芳香族分の量情報である。
また、本発明の好ましい態様によれば、方法では、ステップS1~S14で得られた多成分混合物の固相量の推算値に加え、多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供する。多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成の3つの成分の物性値情報に基づき提供される補正因子は、セジメントの析出量推算における精度を高める上で特に有利である。
本発明のより好ましい態様によれば、セジメント析出量は、以下の式2により補正することができる。
式2中、a~f、Tは定数であり、
As量は、アスファルテン量であり、
TI量は、トルエン不溶分量であり、
As/(3A+Po)は、アスファルテン量(質量%)/(芳香族分(3環以上)量(質量%)+極性レジン量(質量%))であり、
N2クラス分率(ダブルコア)は、窒素原子を2個含む1環芳香族分の量(質量%)であり、
N2クラス分率(シングルコア)は、窒素原子を2個含む2環芳香族分の量(質量%)である。
上記式2において、a~f、Tの各定数は、Excel等の公知のソフトウェアを使用した多変量解析により設定することができる。また、As、3APo、N2クラス分率(ダブルコア)、N2クラス分率(シングルコア)の各量は、上記質量分析の実測値又はその平均値に基づき設定することができる。
ステップ(4):固相量及び補正因子情報に基づき、多成分混合物におけるセジメントの析出量を整合させるステップ
次に、本発明の方法では、MCAMによる固相推算値と、上記補整因子情報に基づき、多成分混合物におけるセジメントの析出量を整合させて、セジメント析出量を推算する。セジメントの析出量の推算は、上記ステップ(3)に記載の方法ないし式を用いて実施することができる。
本発明の好ましい態様によれば、セジメントの析出量の予測は、石油の水素化分解装置において好適に利用することができる。
なお、多成分混合物は、好ましくは石油であり、より好ましくは重質油であるが、多成分混合物である限りそれらに限定されない。
本発明のセジメントの析出量の推算方法は、ファウリングを防止する観点から、多成分混合物に関する装置の運転条件を設定する上で利用することができる。したがって、本発明の好ましい実施態様によれば、上記方法により推算されたセジメントの析出量推算値に基づいて、運転条件を設定する、多成分混合物に関する装置の運転方法が提供される。
<多成分混合物のセジメントの析出量を推算する装置及びシステム>
次に、図4を参照して、本発明の多成分混合におけるセジメントの析出量推算装置の一実施形態を説明する。図4は、実施形態の多成分混合物のるセジメントの析出量推算装置の機能ブロック図である。コンピュータに本発明のプログラムを実行させることにより、コンピュータがセジメントの析出量推算装置として機能する。
なお、図4では、情報の入力及び出力を行うインタフェースの図示を省略している。
本装置は、演算装置1と記憶部2とを備えている。演算装置1は、1つのCPUで構成してもよいし、通信回線を介して互いに接続された複数の演算装置で構成されてもよい。
また、記憶部2は、演算装置1に内蔵されていてもよいし、外部装置であってもよいし、通信回線を介して接続された記憶装置であってもよい。
本演算装置1は、成分情報提供部10と、固相量推算部20と、補正因子情報提供部30と、セジメントの析出量推算部40とを有している。
I.成分情報提供部
成分情報提供部10は、対象とする多成分混合物を構成する各成分について、その分率、融点、及びHSP値を取得する。これらの成分の情報は、多成分混合物についての情報がデータベースとして格納された記憶部2から取得するとよい。
データベースにこれらの成分の情報が格納されていない場合には、成分情報算出部11によって、各成分の必要なパラメータを推算するとよい。
多成分混合物を構成している成分の融点とHSP値を推算する方法の一例として、「分子組成(分子構造)に関する情報を基に行う方法」を挙げることができる。
(1)この方法では、先ず、試料である溶液を構成している各分子種につき、各々の分子種の分子組成(分子構造)に関する情報を得ることが必要である。ここで、溶液を構成している分子種とは、当該溶液中に存在している厳密にすべての分子種を指すというわけではなく、溶液中において一定の存在量(存在割合)以上を持つ分子種を指すと考えてもよい。当該溶液中に存在しているできる限り多くの分子種を対象とすることが望ましいが、微量しか存在していないような分子種は無視してもよい。試料とする溶液を前もって成分分析し、各分子種の存在量(存在割合)を以て、対象とする分子種の選定基準にしてもよい。
あるいはまた、前述のように、「成分」を「溶液をある特定の物理的又は化学的性状を基準として括った塊」、言い換えれば、「ある特定の物理的又は化学的性状を基準として分画された分画物(フラクション)」という意味で用いる場合には、この「分子組成(分子構造)に関する情報を基に行う方法」は、次のようにして適用することが可能である。
即ち、「ある特定の物理的又は化学的性状を基準として分画された分画物(フラクション)」の各々について、NMR、元素分析、質量スペクトル等を測定することにより、公知の方法を用いて、その分画物(フラクション)の「平均分子構造」を得ることができる。こうして得られた「平均分子構造」を用いれば、この方法を適用することができる。
(2)次に、得られた各々の分子種のJACDに基づいて、Comcatから各々の分子種の融点データを取得する。当該処理は、コンピュータにより行う。
(3)また、各々の分子種のJACDに基づいて、Comcatから各々の分子種のHSP値データを取得する。当該処理は、コンピュータにより行う。
II.固相量推算部
固相量推算部22は、初期分類部21と、液相演算部22と、非液相演算部23とを備えている。
初期分類部21は、多成分混合物を構成する各成分のうちの所望の温度未満の融点を有する成分を液相成分として分類し、所望の温度以上の融点を有する成分を非液相成分として分類する。すなわち、溶媒の融点以上のある任意の温度以上において、その温度における「液相」の量及び組成を求める。融点がその温度より低い成分は、液相に存在する成分となる。このときの「液相」の量及び成分が求まる。
液相演算部22は、液相の性状を推定するために、平均HSP算出部221と、Δδ(HSP値差)算出部222と、再分類部223と、液相成分情報算出部224とを備えている。
平均HSP算出部221は、液相全体の平均HSP値を算出する。ここで、液相全体の平均HSP値は、当該液相成分における各成分のHSP値を各成分の当該液相における分率、好ましくは容量分率で重み付けした加重平均値として算出されるものである。
HSP値差(Δδ)算出部222は、液相全体の平均HSP値と、非液相成分における各成分のHSP値との差(Δδ)を算出する。
再分類部223は、非液相成分における各成分を、差(Δδ)に基づいて、液相成分と非液相成分とに再分類し、液相成分として再分類された各成分を非液相成分から液相成分に編入して、液相成分及び非液相成分を更新する。
再分類部223は、溶解する成分があればそれを液相に加えて液相全体のHSP値を再計算する。
平均HSP算出部221は、更新後の液相全体の平均HSP値を算出する。ここで、更新後の液相全体の平均HSP値は、更新後の液相成分における各成分のHSP値を各成分の当該液相における分率、好ましくは容量分率で重み付けした加重平均値として算出されるものである。
そして、液相成分に再分類される非液相成分がなくなる最終段階まで、平均HSP値、液相成分及び非液相成分(凝集相、固相)の更新を繰り返す。
さらに、液相情報算出部224は、最終段階での更新後の液相成分の分率の合計を液相分率として算出する。
非液相演算部23は、固相量の量を推算するために、図示しないが、凝集度算出部、凝集相、固相分類部、凝集相情報算出部、及び固相情報算出部を有することが好ましい。非液相演算部は、非液相の性状として、例えば、凝集相の量、成分、凝集している成分それぞれの凝集度及び凝集相の平均凝集度並びに固相の量及び組成を決定する。
凝集度算出部は、所望の温度における最終段階での更新後の非液相成分における各成分の凝集度を、液相全体の平均HSP値と前記非液相成分における各成分のHSP値との差及び最終段階での更新後の非液相成分における各成分の濃度Cに基づいて算出する。
具体的には、以下のようにして分類する。
最終的に液相に溶解しなかった非液相成分における各成分について、そのHSP値と液相全体のHSP値に基づいてそれぞれの凝集度を決定する。凝集している成分それぞれの凝集度Dは、液相のHSP値、凝集している成分のHSP値、凝集している成分の濃度及び場の温度を変数とする関数式(A)により、算出することができる。
D(p,q)=MAS(K+Kp+Kq+K+Kpq+K+K+Kq+Kpq+K) ・・・(A)
式中、pは、
前記所望の温度Tが、T≦150℃のときに、
p=(L(T-25)+L)RED
前記所望の温度Tが、150℃<T≦200℃のときに、
p=(L(150-25)+L)RED、 前記所望の温度Tが、200℃<Tのときに、
p=(L(T-25)+L)RED
で表される。
REDは、RED≧0.3のときに、RED=RED、RED<0.3のときに、RED=0.3と表され、REDは、RED=Δδ/Rで表され、Δδは、液相全体の前記平均HSP値と前記非液相成分における各成分のHSP値との差であり、Rは、非液相成分における各成分ごとの定数である。
、L及びLは、経験的に得た係数であり、下記の定数値を有する。
=-0.0031262、
= 1.07815、
= 1.15631
qは、q=logCで表され、Cは、非液相成分における凝集している当該成分の濃度である。
ASは、成分種により定まった定数であり、例えば、多成分混合物の凝集相成分及び固相成分がアスファルテンの場合、以下のとおりである。カナダ産オイルサンド系アスファルテン(CaAs):1.319、中東産アスファルテン1 (ArAs1):1.000、中東産アスファルテン2 (ArAs2):1.136である。
~Kは、経験的に得た係数であり、以下の定数値を有する。
=-1.26929、
= 9.42231、
= 0.363439、
=-11.1925、
= 0.093622、
=-0.15436、
= 5.337433、
=-0.20868、
= 0.077223、
= 0.019492
である。
以上より、ある温度において、ある溶液中においてある成分が凝集している場合、その凝集している成分の凝集度Dの値を算出することができる。
なお、上記において数値で示したL、L1、2、AS及びK~K等の値は、対象により種々の数値を採り得るものであり、上記の数値に限定されるものではない。
凝集相、固相分類部は、最終段階での更新後の非液相成分のうち、凝集度が所定の閾値未満の成分を凝集相成分に分類し、凝集度が所定の閾値以上の成分を固相成分に分類する。すなわち、凝集度が凝集レベルにある成分を凝集相成分とし、析出レベルにある成分を固相成分とする。ここで、「凝集レベルにある」とは、概念的には、凝集粒子の大きさが数百nm以下で液中に分散していることをいい、「析出レベルにある」とは、凝集粒子の大きさがサブミクロン以上で液中に分散できず沈殿していることと考えられる。凝集度D≧5であるとき、おおむね、その成分種は析出すると判断できるが、この閾値は、成分種により変化しうるものである。
凝集相情報算出部は、凝集相成分として分類された各成分の量(溶液全体に対する分率)の合計を凝集相分率として算出する。さらに、凝集相情報算出部は、凝集相成分として分類された各成分の凝集度の和を当該成分の数で除した値を凝集相全体の平均凝集度として算出する。
固相情報算出部は、固相成分として分類された各成分の量(溶液全体に対する分率)の合計を固相分率として算出し、さらに固相分率と全体量から固相量の推算値を算出する。
III.補正因子情報提供部
補正因子情報提供部では、多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供する。
析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分の一部又は全部のいずれを使用するかは、当業者が適宜選択して設定することができる。析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分の具体的な種類及び好ましい態様は、上述の方法と同様である。
また、補正因子情報提供部では、析出関連成分、相溶性関連成分、凝集関連成分についてインプットされた実測値に基づき、補正因子情報を提供する。例えば、補正因子情報提供部では、上述の式2に記載の所定の定数、量、比率に関する少なくとも1つ又は全部の情報を実測値に基づき多変量解析により算出することができる。
IV.セジメントの析出量推算部
セジメントの析出量推算部では、固相量推算部から提供される固相量推算値と、補正因子情報提供部から提供される補正因子情報とを整合して、セジメントの析出量を推算する。セジメントの析出量は、例えば、式2に基づき、算出することができる。セジメントの析出量推算部は、補正因子情報提供部と一体的に構成されていてもよい。
また、本発明のセジメント析出量推算装置の各部は、一体的に構成していてよいが、各部を所望により別体として構成してもよい。このような独立した各部によりセジメント析出量推算を実施する場合、セジメント析出量推算装置は、セジメント析出量を推算するシステムとして提供することができる。
したがって、本発明の別の態様によれば、多成分混合物におけるセジメントの析出量の推算システムであって、
多成分混合物を構成する各成分の分子構造情報に基づき、各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値を提供する成分情報提供部、
各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値に基づき、多成分混合物における固相量を推定する固相量推定部、
多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供する補正因子情報提供部、及び
固相量及び補正因子情報に基づき、多変量解析により多成分混合物におけるセジメントの析出量を整合させるセジメントの析出量推算部
を少なくとも備えるシステムが提供される。
<多成分混合物の性状推定プログラム>
本発明において、JACDを用いた分子構造の推定、推定された分子構造情報と物性値との紐付け、及び凝集モデルを用いた多成分混合物の性状の推定の一連の処理は、ハードウェア又はソフトウェア、又はこれらを複合した構成によって実行することができる。ソフトウェアによる処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることができる。
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROMに予め記録しておくことができる。また、プログラムは、フレキシブルディスク、CD-ROM、MOディスク、DVD、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的又は永続的に格納(記録)しておくことができる。
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他に、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送したり、LAN、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送したりでき、コンピュータでは、そのようにして転送されてくるプログラムを受信し、内蔵するハードディスクなどの記録媒体にインストールすることができる。
本発明の方法は、上記コンピュータプログラムを内部記憶装置に記憶したコンピュータで好適に実施することができる。
また、本明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるだけではなく、処理を実行する装置の処理能力や必要に応じて並列的に又は個別に実行されてもよい。また、本明細書において、システムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものに限定されるものではない。
本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能である。また、上述した実施形態では、質量分析として、FT-ICR-質量分析を使用したが、これに限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
試験例1
試料として、常圧残油を減圧蒸留することにより得られた減圧残油(VR)(重質油に相当)であるサンプルNo.1~8を用いた。試料は、以下に示される手順に従い、溶媒抽出とカラムクロマトグラフィーにより分離した。図5に記載の通り、分離した分画物は、飽和分(Sa)、3種の芳香族分(1A,2A,3A+)、極性、多環レジン(Po,PA)、アスファルテン(As)、そしてトルエン不溶分(TI)におけるTHF可溶分、THF不溶分である。
減圧残油(VR)に対し、前処理方法(第1~2工程)を行うことによって得られた飽和分(Sa)、1環芳香族分(1A)、2環芳香族分(2A)、3環以上の芳香族分(3A+)、極性レジン分(Po)及び多環芳香族レジン(PA)の各フラクション、並びに、第1工程でマルテン分と分離したアスファルテン分(As)の各フラクションについて、それぞれの得率を求めた。
(第1工程:マルテン分の分離)
容量500ミリリットルの三角フラスコに試料を7gはかりとり、n-ヘプタンを220ミリリットル加え、空気冷却管をつけてn-ヘプタン不溶解分試験器で混合物を1時間還流煮沸した。
還流煮沸後、放置冷却し、ろ紙を用いてヘプタン不溶分を分離し、マルテン分を含むフラクションを得た。
(第2工程及び第3工程:マルテン分のカラムクロマトグラフィーによる分離)
第1工程で得たマルテン分を以下の条件にて、カラムクロマトグラフィーで分離した。
(1)カラムクロマトグラフィーのカラム条件
カラム:15mm×600mm(ゲル充填部分、ガラス製)
ゲル:シリカゲル40g+アルミナゲル50g(活性化後)
シリカゲル:Fuji Silysia製、Chromato Gel Grade 923AR
アルミナゲル:MP BiomebicaLs製、MP Alumina,Activated,Neutral,Super I
活性化条件:シリカゲル250℃×20h、アルミナゲル400℃×20h、0.2kg/cm(Nガス)加圧
試料量:1.5g(マルテン)
(2)分離方法
以下の溶媒を順次カラムに投入し、溶出溶液を分取した。
(i)n-ヘプタン200ミリリットルを投入し、溶出した試料溶液250ミリリットルまでを飽和分(Fr.Sa)としてカットする。
(ii)n-ヘプタン95%、トルエン5%混合溶媒250ミリリットルを投入し、溶出した試料溶液200ミリリットルまでを1環芳香族分(Fr.1A)としてカットする。
(iii)n-ヘプタン90%、トルエン10%混合溶媒250ミリリットルを投入し、 溶出した試料溶液200ミリリットルまでをカットし、2環芳香族分(Fr.2A)とする。
(iv)トルエン250ミリリットルを投入し、 溶出した試料溶液300ミリリットルをカットし、3環以上芳香族分(Fr.3A+)とする。
(v)エタノール250ミリリットルを投入し、溶出した試料溶液230ミリリットルをカットし、極性レジン(Fr.Po)とする。
(vi)クロロホルム100ミリリットルを投入する。続いて
(vii)エタノール100ミリリットルを投入し、再度(vi)、(vii)を繰り返す。
(vi)、(vii)はすべて1つのフラクションとして分取し、多環芳香族レジン(Fr.PA)とする。
てもよい。
(第4工程)
第1工程で分離したヘプタン不溶分に、トルエンを220ミリリットル加え、空気冷却管をつけて混合物を1時間還流煮沸した。還流煮沸後、放置冷却し、ろ紙を用いてトルエン不溶分を分離し、トルエン可溶分(アスファルテン:As)を得た。
さらに、トルエン不溶分(TI)に、THFを220ミリリットル加え、空気冷却管をつけて混合物を1時間還流煮沸した。還流煮沸後、放置冷却し、ろ紙を用いてTHF不溶分を分離し、THF可溶分を得た。
分画物は12テスラの超伝導マグネットを備えたFT-ICR MS(solariX 12T,ブルカーダルトニクス社製)で測定した。イオン化方法は、芳香族成分を効率的にイオン化できる大気圧光イオン化(APPI)法、及び、多環芳香族分子の感度が高く、トルエン不溶分でも測定が可能であるレーザー脱離イオン化(LDI)法を用いた。ピーク検出、内部キャリブレーション、分子式の同定はComposer(Sierra Analytics社製)を用いて行った。得られた分子式から、上述した構造解析の実施ならびに原子団寄与法による推算法からハンセン溶解度(HSP)を求め、MCAMで液相・凝集相・固相の成分を予測した。
各種生成油に関し、分画結果とMCAMによる固相を計算した結果について、セジメント試験結果と合わせて、表2に示す。
ファウリング(fouling)「高」と表示されたセルは熱交換器でのファウリングによる差圧が高い運転でのサンプルであり、セジメント試験(セジメントの実測結果)でも1質量%を超える量が検出されている。一方、ファウリング(fouling)「低」と表示された低ファウリングのサンプルではセジメント試験では0.5質量%以下の量であり、両者の差は明確である。
一方、MCAM計算を行った結果につき、固相とセジメント試験の相関を図6に散布図として示す。グラフからみられる通り、セジメント試験とMCAM固相の間の量的な相関性は低いことがうかがえた。
試験例2
試験例1の分析結果を踏まえ、以下に記載の通り、MCAM算出結果も含めた複数の因子を考慮した析出量予測式を新たに組み立てることを検討した。
セジメント量予測式で考慮した因子は、MCAM計算における固相量のほかに、下記の3つの観点からパラメータを選定した。
(A)セジメントとして析出する成分量の補正因子:分画結果のアルファルテン(As)及びトルエン不溶分(TI)量
(B)セジメントの相溶性に関する補正因子:分画結果のAsと3A+Poの比(As/(3A+Po))
(C)セジメント凝集に影響する構造因子:MCAMでの凝集相+固相におけるN2クラスのコアごとのモル分率
(A)析出関連成分の物性値情報に基づく補正因子情報:As及びTIの量情報
(A)に関しては、セジメントの構成成分と考えられる点に加え、THF不溶分などFT-ICR MSにて検出されにくい分子も含有していることから、補正因子として取り上げた。セジメント量との関係を図7及び図8に示す。As量及びTI量ともに、セジメント量との緩い相関が見られている。
(B)相溶性関連成分の物性値情報に基づく補正因子情報:アスファルテンと、芳香族分及び極性レジンの和との比率情報
(B)に関しては、図9示す通り、生成油中の炭素数40~60、不飽和度10~20の成分の量が析出物の溶解に影響していることを確認しており、その主成分は3A+Poであった。
セジメント量とAs/(3A+Po)の関係を図10に示す。セジメント試験におけるセジメント量に対し、緩やかではあるが比較的良好な相関関係がみられることが判った。
(C)凝集関連成分の物性値情報に基づく補正因子情報:窒素原子を2個以上含む芳香族分の量情報
(C)に関しては、表1において、セジメント試験でのセジメント量とMCAMでの固相量、As量、TI量いずれも相関が見受けられないサンプルNo.7、8に関し、MCAMでの凝集相+固相における、コア別のDAgg値の区分ごとのNクラス分析を行い、傾向を検討した。セジメント量の大きいサンプル7に関し、サンプル8と比較して、N2クラス存在比率が高いことが判った。
セジメント量とN2クラス分率につき、ダブルコア及びシングルコアそれぞれでの関係を図11及び図12に示す。セジメント試験におけるセジメント量に対し、緩やかではあるが比較的良好な相関関係がみられることが判った。あくまで相対比較ではあるが、ダブルコアの方がシングルコアより相関は良好であるとみうけられ、ダブルコアのほうがセジメント生成量に対する影響が大きいと考えられる。
以上の結果より、想定した因子はそれぞれセジメント量と相関が見られているが、いずれも緩い相関であることから、これらを組み合わせた多変量解析により、式2に示す析出予測式を作成することとした。
上記式2に基づき、サンプルNo.1~8のデータを用い、析出物予測の算出式作成の為の重回帰計算を実施し、定数を決定した。得られた式2によるセジメント析出予測量を、実測のセジメント量と比較すると図13の通りとなり、1:1の相関を示す線上にプロットされることより、精度が改善された予測式の作成に至った。
以上の通り、MCAM固相に加え、セジメントとして析出する成分量の補正因子として分画結果のAs及びTIを、セジメントの相溶性に関する補正因子として、分画結果のAsと3A++Poの比を、セジメント凝集に影響する構造因子として、MCAMでの凝集相+固相におけるN2クラスのコアごとのモル分率を選定した。このような析出に影響のある要素を組み入れる予測式を使用することにより、セジメント量を高精度にて予測しうることを確認した。
本発明によれば、コンピュータを用いて多成分凝集モデルより得られる多成分混合物の固相量の推定情報と特定の補正因子情報とを組み合わせることにより、多成分混合物におけるセジメントの析出量を高精度で推算することができる。さらには、多成分混合物におけるセジメントの析出量を高精度に推算することは、石油精製設備の運転の安定性及び運転効率を飛躍的に向上させることに寄与するものである。

Claims (13)

  1. コンピュータによる、多成分混合物におけるセジメントの析出量の推算方法であって、
    (1)前記多成分混合物を構成する各成分の分子構造情報に基づき、各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値を提供するステップ、
    (2)前記各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値に基づき、前記多成分混合物における固相量を多成分凝集モデル(Multi-Component Aggregation Model:MCAM)により推定するステップ、
    (3)前記多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供するステップ、及び
    (4)前記固相量及び前記補正因子情報に基づき、多成分混合物におけるセジメントの析出量を整合させるステップ
    を含み、
    前記析出関連成分が、アスファルテン及びトルエン不溶分から選択される少なくとも一つのものを含み、
    前記相溶性関連成分が、アスファルテン、3環以上の芳香族分及び極性レジンを含み、
    前記凝集関連成分が、窒素原子を2個含むシングルコア又はダブルコアの芳香族分を含む、方法。
  2. 前記析出関連成分が、アスファルテン及びトルエン不溶分を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記凝集関連成分が、窒素原子を2個含むシングルコアの芳香族分、及び窒素原子を2個含むダブルコアの芳香族分を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ステップ(3)において、前記多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記多成分混合物は石油である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記多成分混合物は重質留分である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記セジメントの析出量は、石油の水素化分解装置におけるセジメントの析出量である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によりセジメントの析出量推算値を取得するステップ、及び
    請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により推算されたセジメントの析出量推算値に基づいて、運転条件を設定するステップ
    を含む、多成分混合物に関する装置の運転方法。
  9. 多成分混合物におけるセジメントの析出量の推算装置であって、
    前記多成分混合物を構成する各成分の分子構造情報に基づき、各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値を提供する成分情報提供部、
    前記各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値に基づき、前記多成分混合物における固相量を多成分凝集モデル(Multi-Component Aggregation Model:MCAM)により推定する固相量推定部、
    前記多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供する補正因子情報提供部、及び
    前記固相量及び前記補正因子情報に基づき、多成分混合物におけるセジメントの析出量を整合させるセジメントの析出量推算部
    を少なくとも備え、
    前記析出関連成分が、アスファルテン及びトルエン不溶分から選択される少なくとも一つのものを含み、
    前記相溶性関連成分が、アスファルテン、3環以上の芳香族分及び極性レジンを含み、
    前記凝集関連成分が、窒素原子を2個含むシングルコア又はダブルコアの芳香族分を含む、装置。
  10. 多成分混合物におけるセジメントの析出量の推算システムであって、
    前記多成分混合物を構成する各成分の分子構造情報に基づき、各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値を提供する成分情報提供部、
    前記各成分の分率、融点及びハンセン溶解度指数値に基づき、前記多成分混合物における固相量を多成分凝集モデル(Multi-Component Aggregation Model:MCAM)により推定する固相量推定部、
    前記多成分混合物における析出関連成分、相溶性関連成分及び凝集関連成分から選択される少なくとも1つの成分の物性値情報に基づき、セジメントの析出量推算における補正因子情報を多変量解析により提供する補正因子情報提供部、及び
    前記固相量及び前記補正因子情報に基づき、多変量解析により多成分混合物におけるセジメントの析出量を整合させるセジメントの析出量推算部
    を少なくとも備え、
    前記析出関連成分が、アスファルテン及びトルエン不溶分から選択される少なくとも一つのものを含み、
    前記相溶性関連成分が、アスファルテン、3環以上の芳香族分及び極性レジンを含み、
    前記凝集関連成分が、窒素原子を2個含むシングルコア又はダブルコアの芳香族分を含む、システム。
  11. 請求項1~8のいずれか一項に記載の方法、請求項に記載の装置又は請求項10に記載のシステムを実行させるためのコンピュータプログラム。
  12. 請求項11に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
  13. 請求項11に記載のコンピュータプログラムを内部記憶装置に記憶したコンピュータ。
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