以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<全体構成>
図1は、電力変換装置100の構成例を示す図である。図1を参照して、電力変換装置100は、交流回路2と直流回路4との間に接続されている。直流回路4は、例えば、直流送電網等を含む直流電力系統、または他の電力変換装置の直流端子である。直流回路4は、電力変換器6の直流端子に接続された蓄電装置を含む構成であってもよい。蓄電装置は、例えば、電気二重層コンデンサ、あるいはリチウムイオン電池等の蓄電池を含む。
電力変換装置100は、自励式の電力変換器6と、電力変換器6を制御するための制御装置5とを含む。典型的には、電力変換器6は、互いに直列接続された複数の変換器セル(図1中の「セル」に対応)1を含むモジュラーマルチレベル変換器によって構成される。「変換器セル」は、「サブモジュール(sub module)」あるいは「単位変換器」とも称される。
電力変換器6は、直流回路4に接続されており、直流回路4と交流回路2との間で電力変換を行なう電力変換器である。具体的には、電力変換器6は、直流回路4から出力される直流電力を交流電力に変換して、当該交流電力を変圧器3を介して交流回路2に出力する。また、電力変換器6は、交流回路2からの交流電力を直流電力に変換して、当該直流電力を直流回路4に出力する。
図1の例では、電力変換器6は、交流回路2の相ごとに複数のアームを含む。具体的には、電力変換器6は、正極直流端子(すなわち、高電位側直流端子)Npと、負極直流端子(すなわち、低電位側直流端子)Nnとの間に互いに並列に接続された複数のレグ回路8u,8v,8w(以下、総称する場合または任意のものを示す場合、「レグ回路8」と記載する)を含む。
レグ回路8は、交流を構成する複数相の各々に設けられる。レグ回路8は、交流回路2と直流回路4との間に接続され、両回路間で電力変換を行なう。図1には交流回路2が三相交流系統である場合が示されており、U相、V相、W相にそれぞれ対応して3個のレグ回路8u,8v,8wが設けられる。
レグ回路8u,8v,8wにそれぞれ設けられた交流端子Nu,Nv,Nwは、変圧器3を介して交流回路2に接続される。交流回路2は、例えば、交流電源などを含む三相交流電力系統である。図1では、図解を容易にするために、交流端子Nv,Nwと変圧器3との接続は図示していない。各レグ回路8に共通に設けられた直流端子(すなわち、正極直流端子Np,負極直流端子Nn)は、直流回路4に接続される。
図1の変圧器3を用いる代わりに、レグ回路8u,8v,8wは、連系リアクトルを介して交流回路2に接続した構成としてもよい。さらに、交流端子Nu,Nv,Nwに代えてレグ回路8u,8v,8wにそれぞれ一次巻線を設け、この一次巻線と磁気結合する二次巻線を介してレグ回路8u,8v,8wが変圧器3または連系リアクトルに交流的に接続するようにしてもよい。この場合、一次巻線を下記のリアクトル7a,7bとしてもよい。すなわち、レグ回路8は、交流端子Nu,Nv,Nwまたは上記の一次巻線など、各レグ回路8u,8v,8wに設けられた接続部を介して電気的(すなわち、直流的または交流的)に交流回路2に接続される。
レグ回路8uは、正極直流端子Npから交流端子Nuまでの正側アーム13uと、負極直流端子Nnから交流端子Nuまでの負側アーム14uとを含む。正側アーム13uと負側アーム14uとの接続点が、交流端子Nuとして変圧器3と接続される。正極直流端子Npおよび負極直流端子Nnが直流回路4に接続される。レグ回路8vは正側アーム13vと負側アーム14vとを含み、レグ回路8wは正側アーム13wと負側アーム14wとを含む。レグ回路8v,8wはレグ回路8uと同様の構成を有しているので、以下、レグ回路8uを代表として説明する。
レグ回路8uにおいて、正側アーム13uは、互いにカスケード接続された複数の変換器セル1と、リアクトル7aとを含む。複数の変換器セル1とリアクトル7aとは互いに直列接続されている。負側アーム14uは、互いにカスケード接続された複数の変換器セル1と、リアクトル7bとを含む。複数の変換器セル1とリアクトル7bとは互いに直列接続されている。
リアクトル7aが挿入される位置は、正側アーム13uのいずれの位置であってもよく、リアクトル7bが挿入される位置は、負側アーム14uのいずれの位置であってもよい。リアクトル7a,7bはそれぞれ複数個あってもよい。各リアクトルのインダクタンス値は互いに異なっていてもよい。さらに、正側アーム13uのリアクトル7aのみ、もしくは、負側アーム14uのリアクトル7bのみを設けてもよい。
電力変換装置100は、さらに、交流電圧検出器10と、交流電流検出器15と、直流電圧検出器11a,11bと、各レグ回路8に設けられたアーム電流検出器9a,9bとを含む。これらの検出器は、電力変換器6の制御に使用される電気量(すなわち、電流、電圧)を計測する。これらの検出器によって検出された信号は、制御装置5に入力される。
交流電圧検出器10は、三相の交流電圧Vsysu,Vsysv,Vsysw(以下、「交流電圧Vsys」とも総称する。)を検出する。交流電流検出器15は、交流回路2の三相の交流電流Isysu,Isysv,Isysw(以下、「交流電流Isys」とも総称する。)を検出する。直流電圧検出器11aは、直流回路4に接続された正極直流端子Npの直流電圧Vdcpを検出する。直流電圧検出器11bは、直流回路4に接続された負極直流端子Nnの直流電圧Vdcnを検出する。
u相用のレグ回路8uに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム13uに流れる正側アーム電流Iupおよび負側アーム14uに流れる負側アーム電流Iunをそれぞれ検出する。v相用のレグ回路8vに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム電流Ivpおよび負側アーム電流Ivnをそれぞれ検出する。w相用のレグ回路8wに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム電流Iwpおよび負側アーム電流Iwnをそれぞれ検出する。
<変換器セルの構成>
図2は、変換器セル1の構成例を示す図である。図2(a)に示す変換器セル1は、ハーフブリッジ構成と呼ばれる回路構成を有する。
図2(a)を参照して、変換器セル1は、スイッチング回路25と、蓄電素子としてのコンデンサ28と、電圧検出器29と、給電回路30と、制御回路40とを含む。スイッチング回路25と、コンデンサ28と、給電回路30とは並列接続される。
スイッチング回路25は、直列接続された2つのスイッチング素子22A,22Bと、ダイオード23A,23Bとを含む。ダイオード23A,23Bは、それぞれスイッチング素子22A,22Bと逆並列(すなわち、並列かつ逆バイアス方向)に接続される。コンデンサ28は、スイッチング回路25と並列に接続され、直流電圧を保持する。コンデンサ28の両端の電圧Vcは、電圧検出器29により検出される。検出された電圧Vcは、給電回路30に入力される。なお、電圧Vcは、制御回路40に入力されてもよい。制御回路40は、制御装置5に電圧Vcを送信する。
スイッチング素子22A,22Bの接続ノードは高電位側の入出力端子G1と接続される。スイッチング素子22Bとコンデンサ28との接続ノードは低電位側の入出力端子G2と接続される。
コンデンサ28は、入出力端子G1,G2を流れる電流によって充電され、電圧が増大する。コンデンサ28の電圧が増大すると、給電回路30が起動する。給電回路30は、コンデンサ28の電圧に基づいて制御電圧Vsを生成し、制御電圧Vsを制御回路40に供給(出力)する。給電回路30の具体的な構成については後述する。
制御回路40は、スイッチング回路25を制御する。制御回路40は、給電回路30からの制御電圧Vsが供給されると、各スイッチング素子22A,22Bを制御できる状態となる。典型的には、制御回路40は、変換器セル1の外部(例えば、制御装置5)からスイッチング回路25の制御開始を許可するための制御許可通知を受信すると、各スイッチング素子22A,22Bの制御を開始する。これにより、各スイッチング素子22A,22Bは、オンオフのスイッチング動作が可能となる。制御回路40は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたもの等で構成される。
制御回路40による制御によりスイッチング素子22Aがオン、かつスイッチング素子22Bがオフとなったときに、入出力端子G1,G2間にはコンデンサ28の電圧Vcが出力される。スイッチング素子22Aがオフ、かつスイッチング素子22Bがオンとなったときに、入出力端子G1,G2間には零電圧が出力される。例えば、制御回路40は、各スイッチング素子22A,22Bのオン時間およびオフ時間の長さを調整することにより、入出力端子G1,G2間の電圧およびコンデンサ28の電圧の各々を対応する目標値になるように制御する。例えば、これらの目標値は、交流回路2の交流電圧および直流回路4の直流電圧と、アームを構成する変換器セル1の数等に基づいて設定される。
図2(b)に示す変換器セル1は、フルブリッジ構成と呼ばれる回路構成を有する。図2(b)を参照して、この変換器セル1は、スイッチング回路25,26と、コンデンサ28と、電圧検出器29と、給電回路30とを含む。スイッチング回路25と、スイッチング回路26と、コンデンサ28と、給電回路30とは並列接続される。
スイッチング回路26は、直列接続された2つのスイッチング素子22C,22Dと、ダイオード23C,23Dとを含む。ダイオード23C,23Dは、それぞれスイッチング素子22C,22Dと逆並列に接続される。スイッチング素子22Aおよび22Bの接続ノードは高電位側の入出力端子G1と接続され、スイッチング素子22Cおよび22Dの接続ノードは低電位側の入出力端子G2と接続される。
スイッチング素子22Dをオンとし、スイッチング素子22Cをオフとし、スイッチング素子22A,22Bを交互にオン状態とすることによって、入出力端子G1,G2間には正電圧または零電圧が出力される。また、スイッチング素子22Dをオフとし、スイッチング素子22Cをオンとし、スイッチング素子22A,22Bを交互にオン状態にすることによって、入出力端子G1,G2間には零電圧または負電圧が出力される。
図2(a)および図2(b)における各スイッチング素子22A~22Dには、オン動作とオフ動作の両方を制御可能な自己消弧型のスイッチング素子が用いられる。スイッチング素子22A~22Dは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の自己消弧型の半導体スイッチング素子である。また、図2(a)および図2(b)において、コンデンサ28には、フィルムコンデンサ等が主に用いられる。
以下では、変換器セル1を図2(a)に示すハーフブリッジセルの構成とした場合を例に説明する。しかし、変換器セル1を図2(b)に示すフルブリッジ構成としてもよい。
<制御装置のハードウェア構成>
図3は、制御装置5のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図3の場合の制御装置5は、コンピュータに基づいて構成される。図3を参照して、制御装置5は、1つ以上の入力変換器70と、1つ以上のサンプルホールド(S/H)回路71と、マルチプレクサ(MUX:multiplexer)72と、A/D変換器73とを含む。さらに、制御装置5は、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)74と、RAM(Random Access Memory)75と、ROM(Read Only Memory)76とを含む。さらに、制御装置5は、1つ以上の入出力インターフェイス77と、補助記憶装置78と、上記の構成要素間を相互に接続するバス79とを含む。
入力変換器70は、入力チャンネルごとに補助変成器を備える。各補助変成器は、図1の各検出器による検出信号を、後続する信号処理に適した電圧レベルの信号に変換する。
サンプルホールド回路71は、入力変換器70ごとに設けられる。サンプルホールド回路71は、対応の入力変換器70から受けた電気量を表す信号を規定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。
マルチプレクサ72は、複数のサンプルホールド回路71に保持された信号を順次選択する。A/D変換器73は、マルチプレクサ72によって選択された信号をデジタル値に変換する。なお、複数のA/D変換器73を設けることによって、複数の入力チャンネルの検出信号に対して並列的にA/D変換を実行するようにしてもよい。
CPU74は、制御装置5の全体を制御し、プログラムに従って演算処理を実行する。揮発性メモリとしてのRAM75および不揮発性メモリとしてのROM76は、CPU74の主記憶として用いられる。ROM76は、プログラムおよび信号処理用の設定値などを収納する。補助記憶装置78は、ROM76に比べて大容量の不揮発性メモリであり、プログラムおよび電気量検出値のデータなどを格納する。入出力インターフェイス77は、CPU74と外部装置との間で通信する際のインターフェイス回路である。
なお、制御装置5の少なくとも一部をFPGAおよびASICなどの回路を用いて構成してもよい。もしくは、制御装置5の少なくとも一部は、アナログ回路によって構成することもできる。
<電圧アンバランスについて>
(概要)
電力変換器6が停止している場合、各変換器セル1のコンデンサ28は完全に放電された状態であり、各スイッチング素子22A,22B(以下、「スイッチング素子22」とも総称する。)はオフ状態(例えば、ゲートブロック状態)である。電力変換器6の運転を開始するためには、まず、各変換器セル1のコンデンサ28を初期充電する必要がある。例えば、初期充電時には、変圧器3の一次側(すなわち、交流回路2側)に接続された遮断器(図示しない)を投入することにより、すべてのコンデンサ28が一斉に充電される。
初期充電によりコンデンサ28の電圧が増大すると、給電回路30が起動する。その後、制御回路40は、制御装置5からの制御許可通知に従って各スイッチング素子22のオンオフ制御を開始する。給電回路30が起動した時刻から、制御回路40が各スイッチング素子22の制御を開始する時刻までの期間(以下、「待機期間」とも称する。)では、各スイッチング素子22は動作していないため、コンデンサ28の電圧は変換器セル1の入出力端子G1,G2を介して通流する初期充電電流によって充電される。
初期充電電流は、交流回路2または直流回路4(例えば、初期充電に利用される方の回路)の電圧と、各変換器セル1とリアクトル7a,7bのインピーダンスとで決定され、ある時刻において直列接続される複数の変換器セル1に同じ初期充電電流が流れる。初期充電電流によってある変換器セル1に供給される充電電力は、当該変換器セル1のコンデンサ28の電圧と初期充電電流との積になる。交流回路2または直流回路4の電圧と、複数の変換器セル1の電圧の合計値とが等しくなると、初期充電電流は流れなくなる。しかし、変換器セル1の給電回路30および制御回路40が電力を自己消費する場合には、当該電力に相当する初期充電電流が流れ続ける。
ある時刻において、交流回路2または直流回路4の電圧を直列接続される複数の変換器セル1で分圧した状態となる。理想的には複数の変換器セル1の各々の特性が完全に一致していると、各変換器セル1の分圧は等しくなる。実際には、複数の変換器セル1の各々は、部品ばらつきによって特性は完全に一致しないため、分圧は等しくならない。具体的には、ある変換器セル1で自己消費される電力(以下、「自己消費電力」とも称する。)は標準値よりも大きく、他の変換器セル1の自己消費電力は標準値よりも小さくなる。この場合、各変換器セル1の分圧は等しくならない。
また、直列接続される複数の変換器セル1のコンデンサ28の電圧の平均値(以下、「電圧平均値」とも称する。)、および、直列接続される複数の変換器セル1に供給される充電電力の平均値(以下、「電力平均値」とも称する。)を考える。ある変換器セル1のコンデンサ28の電圧が電圧平均値より大きい場合、当該変換器セル1に供給される充電電力は電力平均値よりも大きい。一方、他の変換器セル1のコンデンサ28の電圧が電圧平均値より小さい場合、他の変換器セル1に供給される充電電力は電力平均値よりも小さい。
上記のように、共通の初期充電電流によって充電される複数の変換器セル1においては、各変換器セル1の特性差によって、ある変換器セル1の充電電力と他の変換器セル1の充電電力との差分は時間とともに拡大する。結果として、ある変換器セル1のコンデンサ28の電圧と他の変換器セル1のコンデンサ28の電圧との差分は時間とともに拡大する。これを、複数の変換器セル1間の電圧アンバランスとも称する。
図4は、2つの変換器セル1における電圧アンバランスを説明するための図である。ここでは、アームを構成するk台の変換器セル1のうち、X番目の変換器セル1xとY番目の変換器セル1yの電力損失が異なるものとする。kは2以上の自然数であり、XおよびYは異なるものとする。
図4を参照して、グラフ501は、変換器セル1xのコンデンサ28(以下、便宜上「コンデンサ28x」とも称する。)の電圧Vcの時間変化を示している。グラフ502は、変換器セル1yのコンデンサ28(以下、便宜上「コンデンサ28y」とも称する。)の電圧Vcの時間変化を示している。変換器セル1xの自己消費電力は電力平均値よりも小さく、変換器セル1yの自己消費電力は電力平均値よりも大きいとする。
初期充電電流が流れ始めた直後においては、電力系統(例えば、交流回路2または直流回路4)の電圧に対して電力変換器6の電圧が小さいため、大きな初期充電電流が電力変換器6に流れる。そのため、各コンデンサ28x,28yの電圧Vcは急激に増大する。
続いて、充電が進み、電力系統の電圧と電力変換器6の電圧との差が小さくなると初期充電電流の大きさは小さくなる。この場合、変換器セル1xでは、供給される電力よりも自己消費電力が小さいためコンデンサ28xの電圧Vcは増大する。一方、変換器セル1yでは、供給される電力よりも自己消費電力が大きいためコンデンサ28xの電圧Vcは低下する。これにより、時間経過とともに電圧アンバランスは拡大する。
上記の電圧アンバランスを防ぐためには、コンデンサ28の電圧Vcが過度に増大した場合には、低下させるようにコンデンサ28に流入する電力を減らす必要がある。
(比較例に従う給電回路の構成)
ここでは、後述する本実施の形態に従う給電回路30の具体的な構成の理解を促進するため、比較例に従う給電回路の構成を説明する。
図5は、比較例に従う給電回路の構成例を示す図である。図5を参照して、給電回路50は、コンデンサ51と、ダイオード52と、スイッチング素子53と、逆並列ダイオード54と、トランス56と、自動電圧安定器(AVR:Auto Voltage Regulator)57とを含む。
コンデンサ51は、変換器セルのコンデンサ28と並列接続されており、電力の供給を受ける。そのため、コンデンサ51の電圧はコンデンサ28の電圧と同一である。トランス56は、スイッチング素子53を介してコンデンサ51と並列接続される1次巻線と、制御電圧供給用の2次巻線と、電圧検出用の3次巻線とを含む。
自動電圧安定器57は、スイッチング素子53のオンオフを制御する。スイッチング素子53のオンおよびオフを交互に繰り返すことにより、トランス56の1次巻線にコンデンサ51の電圧が断続的に印加される。
ダイオード52は、スイッチング素子53がオンからオフに変化するときに、サージ電圧が発生することを防ぐ役割を有する。2次巻線と3次巻線には、1次巻線への電圧の印加に対応して、変圧動作によって電圧が出力される。2次巻線に出力される電圧は、制御回路40が必要とする制御電圧に変換(例えば、整流ダイオードおよび平滑コンデンサにより直流電圧に変換)され、制御回路40へ供給される。このように、給電回路50は、スイッチング素子53およびトランスを用いて電圧Vcに基づく制御電圧を生成し、当該制御電圧を制御回路40に供給するように構成される。
3次巻線に出力される電圧は、スイッチング素子53のオン期間およびオフ期間を、自動電圧安定器57によって調整するための情報として用いられる。例えば、3次巻線に出力される電圧が規定電圧よりも大きくなった場合、自動電圧安定器57は、スイッチング素子53のオン期間を短くし、オフ期間を長くすることで、3次巻線の電圧を低下させる。このように3次巻線の電圧を調整することにより、2次巻線の電圧も調整される。
上記のようにスイッチング素子53のオンオフ動作とトランス56の変圧動作とによって、コンデンサ28から制御回路40への電力供給が行なわれる。この際、スイッチング素子53ではスイッチング損失および導通損失が発生し、トランス56ではコア損失および導通損失が発生する。仮に、給電回路50で発生するこのような電力損失が、コンデンサ28の電圧に比例する場合には、上述した待機期間中における電圧アンバランスを解消できる。
図5に示すようなフライバック方式の給電回路50は、スイッチング電源であり、ドロッパ電源(例えば、リニア電源、シリーズ電源とも称される。)とは異なり電力損失の発生量を抑制する。また、給電回路50は、トランス56を用いることで1次側と2次側との絶縁を確保できる点、スイッチング素子53の高周波動作によってトランス56を小型化できる点においてもドロッパ電源と比べて優位性がある。しかし、給電回路50で発生する電力損失は、コンデンサ28の電圧に比例しないため、電圧アンバランスを解消することはできない。
(各変換器セルの電圧Vcの時間変化)
ここでは、変換器セル1において比較例に従う給電回路50を用いた場合に、初期充電電流によってコンデンサ28の電圧Vcが増大し、各スイッチング素子22の制御によってコンデンサ28の電圧Vcが目標電圧に到達するまでの電圧Vcの時間変化について説明する。
図6は、変換器セル1のコンデンサ28の理想的な電圧波形を示す図である。図6に示す電圧波形601は、ある変換器セル1のコンデンサ28の電圧波形である。アームを構成する各変換器セル1の特性が一致している場合には、各変換器セル1のコンデンサ28の電圧波形となる。図6の横軸は時間、縦軸はコンデンサ28の電圧Vcである。
なお、電圧波形601では、交流回路2の周波数に対応するリップル電圧は無視されており、単位期間当たりの平均値が示されている。これは、後述する図中の電圧波形についても同様である。
図6を参照して、時刻t0において、遮断器が投入されて、コンデンサ28の初期充電が開始される。初期充電が進んで、給電回路50が起動し、時刻t1において電圧Vcは初期充電電圧V1に到達する。時刻t1において、アームを構成する各変換器セル1で交流回路2または直流回路4の電圧を分担した状態となる。時刻t0から時刻t1までの期間は、複数の変換器セル1を初期充電している初期充電期間に相当する。
その後、理想的には、初期充電電流によって変換器セル1に供給される電力と変換器セル1の自己消費電力とが釣り合う。この場合、時刻t1から時刻t2までの期間において電圧Vcは初期充電電圧V1を維持する。時刻t2において、制御装置5からの制御許可通知に従って各スイッチング素子22の制御が開始される。
時刻t2以降においては、各スイッチング素子22が駆動され、各変換器セル1のコンデンサ28の電圧Vcが目標電圧(例えば、定格電圧)V2になるように調整される。これにより、時刻t3において電圧Vcが目標電圧V2に到達する。時刻t3以降においては、電圧Vcが目標電圧V2を維持するように各スイッチング素子22が駆動される。
このように、各変換器セル1において供給電力と自己消費電力とが釣り合う場合には、各スイッチング素子22が駆動していない期間(例えば、時刻t1から時刻t2までの期間)においても電圧Vcは一定に維持されるため、電圧アンバランスは発生しない。
図7は、2つの変換器セルの各々のコンデンサ28の電圧波形の一例を示す図である。図7を参照して、電圧波形611は、X番目の変換器セル1xのコンデンサ28の電圧波形であり、電圧波形612は、Y番目の変換器セル1yのコンデンサ28の電圧波形である。各時刻t0,t1,t2,t3の定義は図6と同様である。
変換器セル1xおよび変換器セル1yの電力損失差により、時刻t1の各々の初期充電電圧V1は異なることが想定されるが、ここでは、時刻t0から時刻t1の期間は短いものとして各々の初期充電電圧V1は同一であるとする。これは、後述する以下の電圧波形についても同様である。
時刻t1において、アームを構成する各変換器セル1で交流回路2または直流回路4の電圧を分担した状態となる。時刻t1以降では、各変換器セル1x,1yの電力損失の差に応じて、各変換器セル1x,1yのコンデンサ28の電圧Vcの分担比率が変化する。具体的には、変換器セル1xの電圧Vcは増大し、変換器セル1yの電圧Vcは低下する。そして、時刻t2において、変換器セル1x,1yの各スイッチング素子22の駆動が開始されるため、時刻t3において変換器セル1x,1yの電圧Vcが目標電圧V2に調整される。
図8は、2つの変換器セル1の各々のコンデンサ28の電圧波形の他の例を示す図である。図8を参照して、電圧波形621は、X番目の変換器セル1xのコンデンサ28の電圧波形であり、電圧波形622は、Y番目の変換器セル1yのコンデンサ28の電圧波形である。各時刻t0,t1,t2の定義は図6と同様である。ここでは、電圧アンバランスにより変換器セル1yの電圧Vcが、給電回路50の最低電圧Vminに到達してしまう場合について説明する。
給電回路50を起動させるためには一定の電力が必要となる。そのため、コンデンサ28からの小さい入力電圧によって給電回路50を起動させる場合、給電回路50への入力電流を大きくする必要がある。しかしながら、給電回路50へ入力される電流を大きくできるように設計すると、給電回路50が大型化してしまう。そこで、給電回路50では、入力される電流が大きくならないように、起動可能な最低電圧Vminが設定される。ただし、最低電圧Vminは、初期充電可能な電圧(すなわち、初期充電電圧V1)よりも小さくなるように設定される。
図8を参照して、時刻taにおいて、初期充電により電圧Vcが最低電圧Vminに到達すると給電回路50が起動する。時刻t1において、電圧Vcは初期充電電圧V1に到達する。時刻t1以降において、変換器セル1xの電圧Vcは増大し、変換器セル1yの電圧Vcは低下する。そして、時刻t12において、変換器セル1yのコンデンサ28の電圧Vcが最低電圧Vminまで低下すると、変換器セル1yの給電回路50は停止した状態となる。
これにより、変換器セル1yでは、電力損失が発生しなくなるため電圧Vcの低下は停止する。一方、変換器セル1yを除く他の変換器セル1の給電回路50は動作しているため電力損失が発生している。そのため、変換器セル1yの電圧Vcが増大に転じて給電回路50が再起動するが、当該再起動により給電回路50において電力損失が発生するようになるため再び電圧Vcは低下して給電回路50が停止する。これにより、変換器セル1yの電圧Vcは、最低電圧Vminを維持する。これに伴って、変換器セル1xの電圧Vcも維持される。
したがって、時刻t12以降において、変換器セル1yの給電回路50は実質的に停止した状態となる。この状態では、給電回路50から制御回路40への電力供給はなされないため、時刻t2における制御装置5からの制御許可通知に従って、制御回路40は各スイッチング素子22の制御を開始できない。結果として、電力変換器6は送電動作を開始することができない。このことから、給電回路50が起動した時刻から、制御回路40が各スイッチング素子22の制御を開始する時刻までの待機期間(例えば、時刻taから時刻t2までの期間)において、各変換器セル1の電圧Vcが最低電圧Vminまで低下しないようにする必要がある。
<本実施の形態に従う給電回路の構成>
図9は、本実施の形態に従う給電回路の構成例を示す図である。図9(a)は、給電回路30Aの構成例を示している。図9(b)は、給電回路30Bの構成例を示している。給電回路30A,30Bは、図2に示す給電回路30に対応するが、区別のため、便宜上“A”および“B”との符号を付している。
図9(a)を参照して、給電回路30Aは、抵抗器31と、スイッチ32と、制御部35と、コンデンサ51と、ダイオード52と、スイッチング素子53と、逆並列ダイオード54と、トランス56とを含む。制御部35は、スイッチ制御部33と、AVR57とを含む。すなわち、給電回路30Aは、図5で説明した比較例に従う給電回路50に対して、抵抗器31と、スイッチ32と、スイッチ制御部33とを追加した構成を有する。給電回路50と同様の構成については詳細な説明は繰り返さない。
抵抗器31およびスイッチ32で構成される直列体は、コンデンサ28,51に並列接続される。抵抗器31は、コンデンサ28(およびコンデンサ51)のエネルギーを放電するために設けられる。抵抗器31に直列接続されるスイッチ32は、抵抗器31に流れる電流を制御するために設けられる。スイッチ32がオン状態になると抵抗器31に電流が流れ、スイッチ32がオフ状態になると抵抗器31には電流は流れない。スイッチ32は、例えば、半導体スイッチング素子により構成される。
制御部35は、給電回路30Aの動作を制御する。具体的には、制御部35に含まれるスイッチ制御部33は、電圧検出器29により検出されたコンデンサ28の電圧Vcの入力を受け付ける。コンデンサ51の電圧は、コンデンサ28の電圧Vcと同一であるため、スイッチ制御部33は、コンデンサ51の電圧の入力を受け付けてもよい。
スイッチ制御部33は、給電回路30Aの起動時点以降であって、制御回路40によりスイッチング回路25の制御が開始されていない状態において電圧Vcが閾値Vth1以上になった場合、抵抗器31に放電電流が流れるようにスイッチ32をオン状態に制御する。また、スイッチ制御部33は、電圧Vcが閾値Vth1以上となった後、電圧Vcが閾値Vth1未満となった場合、抵抗器31に電流が流れないようにスイッチ32をオフ状態に制御する。給電回路30Aの起動時点は、電圧Vcが給電回路30Aを起動するために必要な最低電圧Vmin以上になった時点である。
具体的には、スイッチ制御部33は、電圧Vcと閾値Vth1とを比較して、電圧Vcが閾値Vth1以上であると判定した場合、スイッチ32をオン状態に制御するための制御信号Sa(例えば、ハイレベルの信号)を出力する。一方、スイッチ制御部33は、電圧Vcが閾値Vth1未満であると判定した場合、スイッチ32をオフ状態に制御するための制御信号Sa(例えば、ローレベルの信号)を出力する。したがって、電圧Vcが閾値Vth1以上である場合には抵抗器31による放電が行われ、電圧Vcが閾値Vth1未満である場合には抵抗器31による放電が行われない。
図9(b)を参照して、給電回路30Bと給電回路30Aとの差異点は、抵抗器31およびスイッチ32の直列体を設ける場所である。具体的には、給電回路30Bでは、当該直列体がトランス56の2次巻線と並列に接続される。このように、トランス56の2次巻線側に当該直列体が接続されている場合でも、コンデンサ28を放電させることができる。トランス56の2次巻線に印加される電圧は、コンデンサ28の電圧と比べて低い電圧にすることができる。したがって、抵抗器31およびスイッチ32に求められる耐電圧および絶縁性能が緩和されるため、給電回路の小型化に寄与する。なお、トランス56が3次巻線を有する場合についても同様である。
図10は、本実施の形態に従うコンデンサの電圧波形を示す図である。図10を参照して、電圧波形631は、X番目の変換器セル1xのコンデンサ28の電圧波形であり、電圧波形632は、Y番目の変換器セル1yのコンデンサ28の電圧波形である。各時刻t0,ta,t1,t2の定義は図8と同様である。
また、上述したように、変換器セル1xは、自己消費電力が小さいため電圧Vcが増大する傾向にあり、変換器セル1yは、自己消費電力が大きいため電圧Vcが低下する傾向にあるものとする。また、変換器セル1xにおける制御信号Saを便宜上“制御信号Sax”と称し、変換器セル1yにおける制御信号Saを便宜上“制御信号Say”と称する。これらは、以下の説明においても同様である。
時刻taにおいて、初期充電により電圧Vcが最低電圧Vminに到達すると給電回路30が起動する。時刻t1において、電圧Vcは初期充電電圧V1に到達する。時刻t1において、アームを構成する各変換器セル1で交流回路2または直流回路4の電圧を分担した状態となる。時刻t1以降において、変換器セル1xの電圧Vcは増大し、変換器セル1yの電圧Vcは低下する。
時刻t1aにおいて、変換器セル1xのコンデンサ28の電圧Vcが閾値Vth1に到達すると、制御信号Saxが“ハイレベル”となりスイッチ32がオン状態に制御される。抵抗器31によりコンデンサ28の電荷が放電されることにより、変換器セル1xにおける電圧Vcの増大が抑制される。一方、変換器セル1xにおける電圧Vcの増大の抑制に伴って、変換器セル1yにおける電圧Vcの低下が抑制される。閾値Vth1は、初期充電電圧V1よりも大きい値に設定されている。
図10の例では、変換器セル1xの抵抗器31での消費電力と電圧Vcを増大させていた電力とが釣り合った状態を示している。これにより、時刻t1aから時刻t2までの期間において、変換器セル1x,1yの電圧Vcが維持されている。しかし、抵抗器31での消費電力を電圧Vcを変化させないように設定する必要はない。
具体的には、時刻t1以降において変換器セル1xの抵抗器31での消費電力が不足している場合、変換器セル1xにおける電圧Vcが増大し、それに伴って変換器セル1yにおける電圧Vcは低下する。しかし、時刻t2において各スイッチング素子22が動作するまでの間に、変換器セル1yにおける電圧Vcが最低電圧Vminまで低下していなければよい。
また、時刻t1以降において変換器セル1xの抵抗器31での消費電力が過剰である場合、変換器セル1xにおける電圧Vcは低下するが、電圧Vcが閾値Vth1未満となるとスイッチ32がオフ状態となるため、電圧Vcの低下が止まる。以後、再び電圧Vcが増大しても、閾値Vth1に到達した後は上述の動作を繰り返す。そのため、変換器セル1xにおける電圧Vcは閾値Vth1付近の値を維持する。以下、変換器セル1xにおける電圧Vcが閾値Vth1付近の値を維持する理由についてより詳細に説明する。
まず、変換器セル1xの自己消費電力と、閾値Vth1における抵抗器31の消費電力との合計消費電力が、変換器セル1yの自己消費電力と同じであるとする。変換器セル1xの電圧Vcが電圧Vth1に到達すると、スイッチ32がオンとなり抵抗器31により電力が消費される。この場合、変換器セル1xの合計消費電力と変換器セル1yとの自己消費電力とが均衡する。したがって、変換器セル1xの電圧Vcは閾値Vth1付近の値で維持される。
次に、変換器セル1xの合計消費電力が変換器セル1yの自己消費電力よりも大きいとする。この場合、変換器セル1xのスイッチ32がオンとなり抵抗器31により電力が消費されると、変換器セル1xの合計消費電力が変換器セル1yの自己消費電力よりも大きくなる。一方、変換器セル1xのスイッチ32がオフであり抵抗器31により電力が消費されない場合、変換器セル1xで消費される電力(すなわち、変換器セル1xの自己消費電力)は変換器セル1yの自己消費電力よりも小さい。スイッチ32は閾値Vth1を境界としてオンオフが切り替わるため、それに応じて抵抗器31による電力消費の有無も切り替わる。したがって、この場合でも、変換器セル1xの電圧Vcは閾値Vth1付近の値で維持される。
なお、スイッチ32のオンとオフを切り替える動作は、高速に繰り返す必要はない。スイッチ制御部33は、コンデンサ28の電圧Vcが最低電圧Vminまで低下しないようにスイッチ32のオン状態およびオフ状態を制御すればよい。これは、スイッチ32のオンおよびオフを不必要に高速に制御すると、スイッチ32の動作不良および寿命の短縮といった事態が発生するためである。
上記より、スイッチ制御部33は、シュミットトリガのようにヒステリシス特性を備えていてもよい。例えば、スイッチ制御部33は、電圧Vcが閾値Vth1以上であると判定した場合、スイッチ32をオン状態に制御する。一方、スイッチ制御部33は、電圧Vcが閾値Vth1以上となった後(すなわち、スイッチ32がオン状態になった後)、電圧Vcが閾値Vth1よりも小さい閾値Vth1a未満であると判定した場合、スイッチ32をオフ状態に制御する。このように、スイッチ制御部33は、スイッチ32をオフからオンに切り替える場合には電圧Vcと閾値Vth1とを比較し、スイッチ32をオンからオフに切り替える場合には電圧Vcと閾値Vth1aとを比較してもよい。
制御回路40は、給電回路30の起動時点以降の時刻t2において、制御装置5から送信される制御許可通知を受信すると、スイッチング回路25の制御(例えば、各スイッチング素子22の駆動制御)を開始する。スイッチング回路25の制御は、コンデンサ28の電圧Vcを目標電圧V2に追従させる制御を含む。これにより、変換器セル1xでは時刻t3において電圧Vcが目標電圧V2に到達する。一方、変換器セル1yでは、時刻t2aにおいて電圧Vcが閾値Vth1に到達するため、制御信号Sayが“ハイレベル”となりスイッチ32がオン状態に制御される。そして、時刻t3aにおいて電圧Vcが目標電圧V2に到達する。
このように、給電回路30A,30Bの構成によると、起動時点(すなわち、時刻ta)から時刻t2までの待機期間において、ある変換器セル1(例えば、変換器セル1x)における電圧Vcが閾値Vth1以上になるとスイッチ32がオフからオンへ制御されて、電圧Vcの増大が抑制される。それに伴い、他の変換器セル1(例えば、変換器セル1y)における電圧Vcの低下が抑制され、電圧Vcが最低電圧Vminまで低下することを防止する。そのため、電圧アンバランスを抑制するとともに、給電回路30A,30Bが停止状態になるのを防止できる。また、スイッチ32を制御する機能を有するスイッチ制御部33は、比較回路等の簡易な構成によって実現することができる。
<スイッチ制御部の変形例>
(変形例1)
図11は、本実施の形態の変形例1に従うスイッチ制御部33Aの構成例を示す図である。図11を参照して、スイッチ制御部33Aは、比較回路159と、比較回路160と、AND回路161とを含む。スイッチ制御部33Aは、図9のスイッチ制御部33に対応するが、区別のため符号“A”との符号を付している。これは、図13でも同様である。
比較回路159は、電圧Vcが閾値Vth1以上である場合、値“1”(例えば、ハイレベル)の信号S1を出力し、電圧Vcが閾値Vth1未満である場合、値“0”(例えば、ローレベル)の信号S1を出力する。比較回路160は、電圧Vcが閾値Vth2未満である場合、値“1”の信号S2を出力し、電圧Vcが閾値Vth2以上である場合、値“0”の信号S2を出力する。ただし、閾値Vth2は、閾値Vth1よりも大きく、かつ目標電圧V2よりも小さい値に設定される。
AND回路161は、信号S1の値と信号S2の値とのAND演算を行なう。具体的には、AND回路161は、信号S1の値が“1”であり(すなわち、電圧Vcが閾値Vth1以上であり)、かつ信号S2の値が“1”である(すなわち、電圧Vcが閾値Vth2未満である)場合に、値“1”の制御信号Saを出力する。これにより、スイッチ32がオン状態に制御される。AND回路161は、信号S1の値および信号S2の値の少なくとも一方が“0”である場合に、値“0”の制御信号Saを出力する。これにより、スイッチ32がオフ状態に制御される。
なお、スイッチ制御部33Aは図11の構成例に限られない。具体的には、スイッチ制御部33Aは、電圧Vcが閾値Vth1未満である場合にスイッチ32をオフ状態に制御し、電圧Vcが閾値Vth1以上かつ閾値Vth2未満である場合に、スイッチ32をオン状態に制御し、電圧Vcが閾値Vth2以上である場合に、スイッチ32をオフ状態に制御するように構成されていればよい。
図12は、本実施の形態の変形例1に従うコンデンサの電圧波形を示す図である。図12を参照して、電圧波形641は、X番目の変換器セル1xのコンデンサ28の電圧波形であり、電圧波形642は、Y番目の変換器セル1yのコンデンサ28の電圧波形である。各時刻t0,ta,t1,t1a,t2,t2a,t3,t3aの定義は図10と同様である。
時刻t2までの流れは、図10と同様であるため、その詳細な説明は行なわない。ここで、時刻t2以降においては、各スイッチング素子22が駆動される期間であるため、電圧Vcは目標電圧V2に向かって収束していく。
変換器セル1xでは、時刻t2bにおいて電圧Vcが閾値Vth2に到達すると、制御信号Saxが“ローレベル”となりスイッチ32がオフ状態に制御される。これにより、抵抗器31によりコンデンサ28の放電が停止される(すなわち、抵抗器31での電力消費が発生しない)ため、電圧Vcの上昇速度は大きくなる。その後、時刻t3において電圧Vcは目標電圧V2に到達する。
一方、変換器セル1yでは、時刻t2aにおいて電圧Vcが閾値Vth1に到達すると、制御信号Saが“ハイレベル”となりスイッチ32がオン状態に制御される。これにより、抵抗器31によりコンデンサ28の放電が開始される(すなわち、抵抗器31での電力消費が発生する)ため、電圧Vcの上昇速度は小さくなる。時刻t2cにおいて電圧Vcが閾値Vth2に到達すると、制御信号Saが“ローレベル”となりスイッチ32がオフ状態に制御される。これにより、抵抗器31によりコンデンサ28の放電が停止されるため、電圧Vcの上昇速度は大きくなる。その後、時刻t3aにおいて電圧Vcは目標電圧V2に到達する。
時刻t2以降においては、各スイッチング素子22が駆動されるため、電圧Vcを制御できるため、抵抗器31においてコンデンサ28の放電を行なう必要性がない。このことから、時刻t2以降における抵抗器31での電力消費は不必要な電力損失となる。このように、変形例1によると、時刻taから時刻t2までの待機期間においては電圧アンバランスを抑制しつつ、時刻t2以降においては不必要な電力損失の発生を抑制できる。
(変形例2)
図13は、本実施の形態の変形例2に従うスイッチ制御部33Bの構成例を示す図である。図13を参照して、スイッチ制御部33Bは、比較回路159と、NOT回路163と、AND回路165とを含む。
比較回路159は、図11と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。NOT回路163は、信号Svの論理レベルを反転した信号S3を出力する。具体的には、信号Svの値“1”は、各スイッチング素子22の制御(駆動)が許可された状態を示しており、信号Svの値“0”は、各スイッチング素子22の制御が許可されていない状態を示している。
したがって、各スイッチング素子22の制御が許可されている場合には信号S3の値は“0”となり、当該制御が許可されていない場合には信号S3の値は“1”となる。これにより、スイッチ制御部33Bは、各スイッチング素子22の制御が許可された状態であると判定する。典型的には、スイッチ制御部33Bは、制御装置5から制御許可通知を受信した場合には信号Svの値が“1”であると判定し、制御許可通知を受信していない場合には信号Svの値が“0”であると判定する。
AND回路165は、信号S1の値と信号S3の値とのAND演算を行なう。具体的には、AND回路165は、信号S1の値が“1”であり(すなわち、電圧Vcが閾値Vth1以上であり)、かつ信号S3の値が“1”である(すなわち、各スイッチング素子22の制御が許可されていない)場合に、値“1”の制御信号Saを出力する。これにより、スイッチ32がオン状態に制御される。AND回路165は、信号S1の値および信号S3の値の少なくとも一方が“0”である場合に、値“0”の制御信号Saを出力する。これにより、スイッチ32がオフ状態に制御される。
なお、スイッチ制御部33Bは図13の構成例に限られない。具体的には、スイッチ制御部33Bは、各スイッチング素子22の制御が許可されておらず、かつ電圧Vcが閾値Vth1未満である場合にはスイッチ32をオフ状態に制御し、各スイッチング素子22の制御が許可されておらず、かつ電圧Vcが閾値Vth1以上である場合にはスイッチ32をオン状態に制御する。さらに、スイッチ制御部33Bは、各スイッチング素子22の制御が許可されている場合、電圧Vcの値に関わらずスイッチ32をオフ状態に制御する。
図14は、本実施の形態の変形例2に従うコンデンサの電圧波形を示す図である。図14を参照して、電圧波形651は、X番目の変換器セル1xのコンデンサ28の電圧波形であり、電圧波形652は、Y番目の変換器セル1yのコンデンサ28の電圧波形である。各時刻t0,ta,t1,t1a,t2,t3の定義は図10と同様である。
時刻t0から時刻t2までは、各スイッチング素子22の制御が許可されていない状態である。そのため、時刻t1aにおいて、変換器セル1xのコンデンサ28の電圧Vcが閾値Vth1に到達すると、制御信号Saxが“ハイレベル”となりスイッチ32がオン状態に制御される。したがって、図10で説明したように電圧アンバランスが抑制される。すなわち、時刻t2までの変換器セル1x,1yのコンデンサ28の電圧変化は、図10と同様である。
時刻t2において、制御装置5からの制御許可通知に従って制御回路40は、各スイッチング素子22の駆動を開始する。また、給電回路30(具体的には、スイッチ制御部33B)は、制御装置5から送信される制御許可通知を受信する。これにより、スイッチ制御部33Bは、各スイッチング素子22の制御が許可された状態であると判定する。したがって、図13に示す信号Svが“ハイレベル”となる。そのため、変換器セル1xでは、制御信号Saxが“ローレベル”となりスイッチ32がオフ状態に制御される。変換器セル1yでは、スイッチ32のオフ状態が維持される。
上記より、各スイッチング素子22の制御が開始される時刻t2以降においては、各変換器セル1x,1yにおける給電回路30はスイッチ32をオフ状態に制御する。そのため、時刻t2以降における抵抗器31での不必要な電力損失の発生を抑制できる。
<変形例3>
上述した実施の形態では、閾値Th1が初期充電電圧V1よりも大きく設定されていたが当該構成に限られない。変形例3では、閾値Th1が初期充電電圧V1よりも小さく設定される構成について説明する。
図15は、本実施の形態の変形例3に従うコンデンサの電圧波形を示す図である。図15においては、給電回路30は、図11に示すスイッチ制御部33Aの機能を有するものとするが、図9に示すスイッチ制御部33または図13に示すスイッチ制御部33Bの機能を有していてもよい。また、閾値Th1は、最低電圧Vminよりも大きく、かつ初期充電電圧V1よりも小さく設定されている。
図15を参照して、電圧波形661は、X番目の変換器セル1xのコンデンサ28の電圧波形であり、電圧波形662は、Y番目の変換器セル1yのコンデンサ28の電圧波形である。各時刻t0,ta,t1,t2,t3の定義は図10と同様である。
時刻taにおいて、初期充電により電圧Vcが最低電圧Vminに到達すると給電回路30が起動する。時刻tbにおいて、変換器セル1x,1yのコンデンサ28の電圧Vcが閾値Vth1に到達する。これにより、制御信号Sax,Sayが“ハイレベル”となり変換器セル1x,1yにおけるスイッチ32がオン状態に制御される。そのため、抵抗器31によりコンデンサ28の電荷が放電され、電圧Vcの上昇速度は小さくなる。
時刻t1において、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcが初期充電電圧V1に到達する。その後、時刻t1から時刻t2までの期間において、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcは初期充電電圧V1を維持する。したがって、電圧アンバランスが抑制される。
ここで、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcが初期充電電圧V1で維持される理由について説明する。変換器セル1xの自己消費電力と変換器セル1yの自己消費電力との差分をPd、初期充電電圧V1よりもΔVだけ高い電圧を“V1+ΔV”、初期充電電圧V1よりもΔVだけ低い電圧を“V1-ΔV”、電圧(V1+ΔV)における抵抗器31の消費電力をPh、電圧(V1-ΔV)における抵抗器31の消費電力をPlとする。
差分Pdが、消費電力Phと消費電力をPlとの差分(すなわち、Ph-Pl)よりも十分小さい場合(すなわち、Pd<<(Ph-Pl))、変換器セル1xの電圧Vcと変換器セル1yの電圧Vcとの電圧差は“ΔV×2”よりも小さくなる。図15では、ΔVが十分に小さいとしているため、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcが初期充電電圧V1で維持されている。なお、ΔVが十分に小さくない場合には、変換器セル1xの電圧Vcは“V1+ΔV”で維持され、変換器セル1yの電圧Vcは“V1-ΔV”で維持される。この場合においても、電圧アンバランスは抑制される。
時刻t2において、各変換器セル1の各スイッチング素子22の駆動が開始される。時刻t2dにおいて、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcが閾値Vth2に到達すると、スイッチ32がオフ状態に制御される。その後、時刻t3において、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcは目標電圧V2に到達する。結果として、電圧波形661と電圧波形662とはほぼ同一の波形となる。
<変形例4>
図16は、本実施の形態の変形例4に従うコンデンサの電圧波形を示す図である。図16においては、給電回路30は、図9に示すスイッチ制御部33の機能を有するものとするが、図11に示すスイッチ制御部33Aまたは図13に示すスイッチ制御部33Bの機能を有していてもよい。また、閾値Th1は初期充電電圧V1と同一となるように設定されている。
初期充電電圧V1は、交流回路2または直流回路4のうち初期充電に用いる方の初期充電時における電圧と、電力変換器6のアームに含まれる複数の変換器セル1の数(例えば、k)に基づいて設定されている。
ここでは、初期充電に直流回路4の電圧を用いるものとし、初期充電時の直流回路4の直流電圧を“Vdc”とする。この場合、電力変換器6では、k個の変換器セル1で構成されるアームが2つ直列に接続されており、2つのアームが直流回路4と並列に接続される。そのため、直流電圧Vdcは、“k×2”の変換器セル1で分圧される。均等に分圧されている場合、1つの変換器セル1における電圧は“Vdc/(k×2)”となる。したがって、初期充電電圧V1は、“Vdc/(k×2)”となる。その結果、閾値Th1は、“Vdc/(k×2)”に設定される。
図16を参照して、電圧波形671は、X番目の変換器セル1xのコンデンサ28の電圧波形であり、電圧波形672は、Y番目の変換器セル1yのコンデンサ28の電圧波形である。各時刻t0,ta,t1,t2,t3の定義は図10と同様である。
時刻taにおいて、初期充電により電圧Vcが最低電圧Vminに到達すると給電回路30が起動する。時刻t1において、変換器セル1x,1yのコンデンサ28の電圧Vcが閾値Vth1(すなわち、初期充電電圧V1)に到達する。これにより、制御信号Sax,Sayが“ハイレベル”となり、変換器セル1x,1yにおけるスイッチ32がオン状態に制御される。時刻t1から時刻t2までの期間において、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcは初期充電電圧V1を維持する。したがって、電圧アンバランスが抑制される。なお、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcが初期充電電圧V1で維持される理由は、図15で説明した内容と同様である。
時刻t2において、各変換器セル1の各スイッチング素子22の駆動が開始される。時刻t3において、変換器セル1x,1yにおける電圧Vcは目標電圧V2に到達する。結果として、電圧波形671と電圧波形672とはほぼ同一の波形となる。なお、電圧波形671,672は、上述した図6で説明した理想的な電圧波形となる。
その他の実施の形態.
(1)上述した実施の形態では、抵抗器31が給電回路30の内部に設けられる構成について説明したが、当該構成に限られない。例えば、抵抗器31は、給電回路30の外部に設けられる構成であってもよい。この場合、抵抗器31の電力消費に伴う発熱を、給電回路30の外部に排熱することができるため、給電回路30の大型化、高熱伝導化を回避することができる。
(2)上述の実施の形態として例示した構成は、本開示の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、他の実施の形態で説明した処理および構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。