JP7476058B2 - 非破壊物質組成識別装置および非破壊物質組成識別方法 - Google Patents

非破壊物質組成識別装置および非破壊物質組成識別方法 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、非破壊物質組成識別装置および非破壊物質組成識別方法に関する。
構造物内部の物質の分布や内部情報を測定する技術として、さまざまな非破壊検査手法が知られている。
代表的な技術としてX線を用いたラジオグラフィによる二次元透過画像作成、あるいはコンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)による三次元画像作成による測定が挙げられる。その他に中性子線源を用いたラジオグラフィ、パルス中性子源を用いたパルス中性子イメージング、中性子散乱、回折法、宇宙線ミュオンの透過率を用いた二次元画像測定やミュオン散乱を用いたミュオントモグラフィ等の多数の手法が存在する。
これらの手法は、対象とする物質に対して特定の放射線(光子や粒子)をプローブとして入射し、その放射線が物質中でエネルギーを失うことにより減衰する現象や、物質を構成する粒子との相互作用により散乱する現象を測定することで、物質の情報を間接的に取得する手法である。
これらの手法は幅広い分野で用いられており、医療の分野ではレントゲンやCTによる診断、工業の分野では構造物の健全性の評価や材料の組成の評価等に用いられている。
非破壊検査手法の応用として、港湾における危険物や密輸品の検知が挙げられる。貨物の測定のためには、大強度X線ラジオグラフィが利用されており、コンテナをスキャンすることにより、内部の爆発物や薬物の検知を行う。
X線ラジオグラフィを用いたコンテナスキャンでは、コンテナ内の密度分布に対応する透過画像が得られ、その画像を基に検査官が密輸品などの摘発を行う。
しかしながら、X線では高密度の物質を透過できないため、検知対象を鉄や鉛等の高密度の容器で隠された場合は、対象を見つけることが困難になる。また、透過画像から対象を見つける精度は、検査官の能力や経験にも作用される。
X線を用いないコンテナの中を検査する手法として、米国ロスアラモス国立研究所によりミュオン散乱法が提案されている。ミュオン散乱法は宇宙線ミュオンが物質に入射した際に散乱されて軌跡が変化することで生じる散乱角を測定する手法である。宇宙線ミュオンはGeVオーダーの高いエネルギーを持つため、X線より高い透過力を持ち、容器中の物質の情報を得るために適している。また、ミュオン散乱角は物質ごとに異なる値を示すため、おおまかな物質を識別することが出来る特徴を持つ。
ミュオン散乱法は特に原子番号が大きい重元素の検知に対して有効であり、例えばミュオン散乱法により容器中の重元素の定量が行われている。
コンテナのスキャン技術として、上述のような技術が利用されているが、X線では物質識別機能がない。また、ミュオン散乱法では大まかな物質識別を行うことが出来るが、原子番号の似た物質の識別等は困難であった。
米国特許第07470905号明細書 特許第6640617号公報
前述のミュオン散乱法を用いた場合、物質を透過する際のミュオン散乱角θ[rad]は、次の式(1)で記述される。
θ
=(13.6/βc・p)z[√(X/X)][1+0.038ln(X/X)]
……(1)
ここで、pはミュオンの運動量[kg・m/s]、βcは速度[m/s]、zは電荷[C]、Xはミュオンが透過した対象物の距離に密度を乗じた値[g/cm]、Xは放射長に密度を乗じた値[g/cm]である。
入射方向ベクトルvvと散乱後のベクトルvvの内積と、ミュオン散乱角θとは次の式(2)で示す関係がある。
vv・vv=|vv|・|vv|・cosθ …(2)
すなわち、ベクトルvv(i,j,k)およびベクトルvv(i,j,k)の各要素をもちいれば、次の式(3)を用いてミュオン散乱角θを算出できる。
cosθ=vv・vv/(|vv|・|vv|)
=(i+j+k
/[√(i +j +k )・√(i +j +k )] …(3)
このミュオン散乱角θの値から、式(1)により対象とする物質の種類、すなわち対象物を構成する元素を識別することができる。
ミュオン散乱法による測定のためには2つのミュオン検出器が必要となり、それぞれサンプルに入射する前後のミュオン軌跡を測定し、入射前後のミュオン軌跡の角度の差分からミュオンの散乱角θを計算する。
以上が、ミュオン散乱法の原理であるが、実際の測定においては物質を識別することは容易ではない。
すなわち、物質識別が困難な要因としては以下の3点が挙げられる。
第一に、宇宙線ミュオンのエネルギーは一定の値ではなく、幅広いエネルギー範囲の分布を持っているため、入射したミュオンのエネルギー項(βc・p)の違いにより散乱角が異なる値を示す。しかしながら、現在のところ散乱法の測定に影響を与えずにミュオンのエネルギーを測定する有効な手法は確立していない。
第二に、物質形状が未知の場合、透過距離Xの値が不定となるが、これに加えて、物質が複雑な形状を持つ場合は、ミュオンの入射位置や角度により同一の物体でも異なる透過距離Xを持つことになるため、得られた測定値に基づくミュオン散乱角θは、複数の異なるXに起因するものとなる。
第三に、物質が化合物または混合物の場合、Xの値は含有する複数の元素を合成した値となるため、Xの推定値から一意に物質を決めることが困難となる。
従来の手法では測定値がミュオン散乱角θの1つであるのに対して、式(1)中にはエネルギー(βc・p)、透過距離X、放射長Xの3つの未知の値があるため、実測値から統計的な傾向は得られるものの、物質、すなわち対象物を構成する元素の種類を決定することは困難であった。
そこで、本発明の実施形態は、このような課題を解決するためのなされたものであり、対象物を非破壊で測定し、その対象物を構成する元素の種類を精度よく判別することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本実施形態に係る非破壊物質組成識別装置は、ミュオンを利用して対象物を構成する元素を判別する非破壊物質組成識別装置であって、前記対象物を挟んで互いに平行に設けられて互いに対向する対向面が平面状に広がり、それぞれがミュオンの入射位置および入射方向を第1ミュオン検出信号および第2ミュオン検出信号としてそれぞれ測定可能な第1ミュオン検出器および第2ミュオン検出器と、前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号を受けて前記対象物を構成する元素を判別する非破壊物質組成演算装置と、を備え、前記非破壊物質組成演算装置は、前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号が同一のミュオンに起因する対データであるか否かを判定しグループ化するグルーピング部と、前記グループ化の結果、それぞれ前記対データとされた前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号を収納する対データ記憶部と、前記対データ記憶部に収納された前記対データについて前記第1ミュオン検出器および前記第2ミュオン検出器のそれぞれにおける実測ミュオン軌跡関数を導出するミュオン軌跡関数導出部と、前記実測ミュオン軌跡関数に基づいて、実測ミュオン散乱関数を導出するミュオン散乱関数導出部と、前記実測ミュオン散乱関数に基づいて前記対象物を構成する元素を判別する物質判別部と、を具備し、前記対向面の広がる方向を互いに垂直なy軸方向およびz軸方向、前記y軸方向および前記z軸方向に垂直な方向をx軸方向としたときに、前記ミュオン軌跡関数導出部は、前記対向面に平行な仮想平面と、前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号のそれぞれによるミュオン軌跡データに基づき、それぞれの軌跡のxy平面およびzx平面への写像ベクトルを前記x軸方向の位置xの一次関数として導出し、前記ミュオン散乱関数導出部は、前記仮想平面と、前記第1ミュオン検出信号による前記ミュオン軌跡データに基づく軌跡との第1の交点の位置座標および前記第2ミュオン検出信号による前記ミュオン軌跡データに基づく軌跡との第2の交点の位置座標とを求め、前記第1の交点と前記第2の交点との間の距離の二乗に対応しかつ式(1)に示す前記位置xの二次関数を前記実測ミュオン散乱関数fd(x)として導き出し、前記実測ミュオン散乱関数fd(x)の各係数について、係数Aの値を散乱角、係数Bの値を散乱座標、係数Cの値を前記距離の最小値として取り扱う、ことを特徴とする。fd(x)=A(x-B) +C …(1)
第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置の構成を示すブロック図である。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置における非破壊物質組成演算装置の構成を示すブロック図である。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン軌跡関数導出部の内容を説明するための斜視図である。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部の内容を説明するための斜視図である。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による実測ミュオン散乱関数の係数Aの散乱角への依存性の例を示すグラフである。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による実測ミュオン散乱関数の係数Bの頻度分布の例を示すグラフである。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による実測ミュオン散乱関数の係数Bのピーク位置を中央値により算出した例のグラフである。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による実測ミュオン散乱関数の係数Cのサンプル厚さへの依存性の例を平均値により算出した場合のグラフである。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別方法の手順を示すフロー図である。 第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置における非破壊物質組成演算装置による三次元物質分布の可視化結果の例を示すグラフである。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置における非破壊物質組成演算装置の構成を示すブロック図である。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Aのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが平均値の場合である。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Aのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが中央値の場合である。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Aの標準偏差のサンプル厚さへの依存性を示すグラフである。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Bのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが平均値の場合である。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Bのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが中央値の場合である。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Bの標準偏差のサンプル厚さへの依存性を示すグラフである。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Cのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが平均値の場合である。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Cのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが中央値の場合である。 第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱関数導出部による係数Cの標準偏差のサンプル厚さへの依存性を示すグラフである。 第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置の構成を示すブロック図である。 第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱模擬演算部によるシミュレーション体系におけるサンプル位置への依存性評価体系の例を示す概念図である。 第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置におけるミュオン散乱模擬演算部によるシミュレーション体系におけるサンプル厚さへの依存性評価体系の例を示す概念図である。 第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別方法の手順を示すフロー図である。 第4の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置の構成を示すブロック図である。 第4の実施形態に係る非破壊物質組成識別方法の手順を示すフロー図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置および非破壊物質組成識別方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複する説明は省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200の構成を示すブロック図である。
非破壊物質組成識別装置200は、透過量の強いミュオンを利用して、図1に示すように対象物1が容器等2の内部に存在する場合、あるいは、容器等2が存在しない場合を含めて、対象物1を構成する元素を判別するものである。非破壊物質組成識別装置200は、第1ミュオン検出器11、第2ミュオン検出器12、および非破壊物質組成演算装置100を有する。
第1ミュオン検出器11および第2ミュオン検出器12は、対象物1を挟んで互いに平行に設けられている。第1ミュオン検出器11の第2ミュオン検出器12に対向する対向面11a、および第2ミュオン検出器12の第1ミュオン検出器11に対向する対向面12aは、それぞれ、第1ミュオン検出器11から第2ミュオン検出器12に向かう方向に垂直な方向に平面状に広がっている。
第1ミュオン検出器11および第2ミュオン検出器12は、それぞれにおけるミュオンの入射位置および入射方向を、第1ミュオン検出信号および第2ミュオン検出信号として測定可能である。なお、第1ミュオン検出器11および第2ミュオン検出器12は、それぞれ、たとえば、一方向に延びた複数の位置敏感型検出器が並列に配されて構成されていてもよい。
非破壊物質組成演算装置100は、第1ミュオン検出器11からの第1ミュオン検出信号および第2ミュオン検出器12からの第2ミュオン検出信号を受けて、物質の種類、すなわち、対象物を構成する元素を判別するとともに、物質の存在位置、物質におけるミュオンの軌跡のズレを推定する。
図2は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200における非破壊物質組成演算装置100の構成を示すブロック図である。非破壊物質組成演算装置100は、以下に示す構成要素の機能を有する計算機システムであってもよいし、それぞれの機能を持つ独立した機器を一部に有する場合でもよいし、あるいはすべてがそれぞれの機能を持つ独立した機器の場合であってもよい。
非破壊物質組成演算装置100は、グルーピング部110、演算部120、記憶部130、および出力部140を有する。
演算部120は、ミュオン軌跡関数導出部121、ミュオン散乱関数導出部122、係数処理部123、物質判別部124を有する。また、記憶部130は、対データ記憶部131、および係数データ記憶部132を有する。
グルーピング部110は、第1ミュオン検出器11からの第1ミュオン検出信号および第2ミュオン検出器12からの第2ミュオン検出信号を受けて、第1ミュオン検出信号と第2ミュオン検出信号とが、同一のミュオンに起因する対データであるか否かを判定する。
グルーピング部110が第1ミュオン検出信号と第2ミュオン検出信号とが同一のミュオンに起因する対データであると判定した場合は、グルーピング部110は、当該の第1ミュオン検出信号と第2ミュオン検出信号をグループ化、すなわち当該の第1ミュオン検出信号と第2ミュオン検出信号を対データとして1つのグループとする。
グルーピング部110は、たとえば、第1ミュオン検出信号と第2ミュオン検出信号の時間差を計測可能な時間波高変換器(TAC:Time-to-Amplitude Converter)と、時間波高変換器で測定されたパルス信号を受け入れて、各信号についてそれぞれ同一粒子により生じた信号であるか否かを判別し、パルス信号の波高値を時間差信号として特定し、時間差データとして収録するマルチチャンネルアナライザ(MCA:Multi Channel Analyzer)を有する構成でもよい。
グルーピング部110によりグループ化され対データとされたそれぞれのグループは、対データ記憶部131に記憶、収納される。なお、前述のマルチチャンネルアナライザが対データ記憶部131を兼ねてもよい。
ミュオン軌跡関数導出部121は、対データ記憶部131に収納されたそれぞれの対データについて第1ミュオン検出器11および第2ミュオン検出器12のそれぞれにおける実測ミュオン軌跡関数を導出する。
図3は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200におけるミュオン軌跡関数導出部121の内容を説明するための斜視図である。
いま、第1ミュオン検出器11および第2ミュオン検出器12のそれぞれの対向面11aおよび対向面12aに平行な平面が拡がる方向をy軸方向およびz軸方向、y軸方向およびz軸方向に垂直な方向をx軸方向となるように、3次元座標を設定する。
また、第1ミュオン検出器11が検出した第1ミュオン検出信号による入射位置P1および入射方向を、入射位置ベクトルpp(x,y,z)および入射方向ベクトルvv(i,j,k)で表わし、第2ミュオン検出器12が検出した第1ミュオン検出信号によるミュオンの入射位置P2および入射方向を、入射位置ベクトルpp(x,y,z)および入射方向ベクトルvv(i,j,k)で表わすものとする。
前述のように、グルーピング部110によりグループ化され対データとされた第1ミュオン検出信号および第2ミュオン検出信号は、入射位置ベクトルおよび入射方向ベクトルからなる6次元のミュオン軌跡データとして、それぞれ、第1ミュオン検出信号のミュオン軌跡データ(x,y,z,i,j,k)および第2ミュオン検出信号のミュオン軌跡データ(x,y,z,i,j,k)の形態で対データ記憶部131に記憶される。対データ記憶部131には、複数のミュオンに起因して、上述のミュオン軌跡データの対データが、複数収納される。
ミュオン軌跡関数導出部121は、対データ記憶部131に記憶、収納されている複数の対データのそれぞれについて、以下のような演算を行い、それぞれの対データについての実測ミュオン軌跡関数を導出する。
以下、第1ミュオン検出器11の場合について説明する。
いま、x軸およびy軸を含む平面に平行な平面をxy平面とする。また、z軸およびx軸を含む平面に平行な平面をzx平面とする。
対データ記憶部131に記憶、収納されている第1ミュオン検出器11についてのミュオン軌跡データ(x,y,z,i,j,k)のうち、3次元ベクトルである入射方向ベクトルvv(i,j,k)のxy平面への写像をxy写像ベクトルvvxy1、3次元ベクトルである入射方向ベクトルvv(i,j,k)のzx平面への写像をzx写像ベクトルvvzx1とする。
このとき、xy平面上においてのxy写像ベクトルvvxy1は、yの値をxの値の一次関数として、次の式(4)により得られる。
y1(x)=ay1・x+by1 ・・・(4)
ここで、ay1およびby1はそれぞれxy平面における直線の傾きおよび切片であるから、次の式(5)のとおりである。ただし、x1は、xの任意の位置に対応する値である。
y1=j/i
y1=y-ay1・x ・・・(5)
同様に、zx平面上においてのzx写像ベクトルvvzx1は、zの値をxの値の一次関数として、次の式(6)により得られる。
z1(x)=az1・x+bz1 ・・・(6)
ここで、az1およびbz1はそれぞれzx平面における直線の傾きおよび切片であるから、次の式(7)のとおりである。
z1=k/i
z1=z-az1・x ・・・(7)
なお、xy平面およびzx平面の平行移動によっては、xy写像ベクトルvvxy1およびzx写像ベクトルvvzx1の上述の式は影響を受けず不変である。
以上の結果、第1ミュオン検出器11についての入射位置ベクトルpp(x,y,z)は、yおよびzがxの関数であるから、入射位置ベクトルpp(x,fy1(x),fz1(x))のように1つの変数xに依存するベクトルで表される。
ミュオン軌跡関数導出部121による第2ミュオン検出器12の場合についての実測ミュオン軌跡関数の導出についても、同様の方法により次の式(8)のようにxy写像ベクトルvvxy2およびzx写像ベクトルvvzx2が得られる。
y2(x)=ay2・x+by2
z2(x)=az2・x+bz2 ・・・(8)
ここで、ay2およびby2はそれぞれxy平面における直線の傾きおよび切片であるから、次の式(9)のとおりである。ただし、xは、xの任意の位置に対応するxの値である。
y2=j/i
y2=y-ay2・x
z2=k/i
z2=z-az2・x ・・・(9)
以上の結果、第2ミュオン検出器12についての入射位置ベクトルpp(x,y,z)は、yおよびzがxの関数であるから、入射位置ベクトルpp(x,fy2(x),fz2(x))のように1つの変数xに依存するベクトルで表される。
ミュオン散乱関数導出部122は、ミュオン軌跡関数導出部121によって導出された第1ミュオン検出器11および第2ミュオン検出器12のそれぞれの場合の実測ミュオン軌跡関数に基づいて、実測ミュオン散乱関数を導出する。
図4は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200におけるミュオン散乱関数導出部122の内容を説明するための斜視図である。
いま、ある位置xにx軸に垂直、すなわち、第1ミュオン検出器11の対向面11aおよび第2ミュオン検出器12の対向面12aに平行な仮想平面S(x)を想定する。
第1ミュオン検出器11を通過したミュオンが通過する位置から、その軌跡の延長が仮想平面S(x)と交わる交点P1nを入射位置ベクトルpp1n(x1n,y1n,z1n)で表す。すなわち、入射位置ベクトルpp1n(x1n,y1n,z1n)は、入射位置ベクトルpp(x,y,z)を起点とする入射方向ベクトルvv(i,j,k)と仮想平面S(x)との交点のベクトルである。
ミュオン軌跡関数導出部121による実測ミュオン軌跡関数を用いると、入射位置ベクトルpp1n(x1n,y1n,z1n)は、入射位置ベクトルpp(x1n,fy1(x1n),fz1(x1n))のように表される。
同様に、第2ミュオン検出器12を通過したミュオンが通過する位置から、その軌跡を逆にたどった延長が仮想平面S(x)を交わる交点P2nを入射位置ベクトルpp2n(x2n,y2n,z2n)で表すと、これは、実測ミュオン軌跡関数を用いることにより、入射位置ベクトルpp(x2n,fy2(x2n),fz2(x2n))のように表される。
仮想平面S(x)上の入射位置ベクトルP1nで表される交点と入射位置ベクトルP2nで表される交点との距離d(x)の二乗を示す関数fd(x)は、次の式(10)で与えられる。
fd(x)
=[fy1(x)-fy2(x)]+[fz1(x)-fz2(x)]
・・・(10)
ここで、式(10)の右辺を構成するfy1(x)、fy2(x)、fz1(x)およびfz2(x)は、いずれも変数xの一次関数であるから、式(10)は、次の式(11)のように変数xの2次関数で表され、実測ミュオン散乱関数fd(x)が得られる。
fd(x)=A(x-B)+C ・・・(11)
この実測ミュオン散乱関数fd(x)に含まれる3つの係数A、B、Cは、それぞれ以下のような意味を有する。
係数Aは、2つのミュオン軌跡、すなわち入射方向ベクトルvv1と入射方向ベクトルvv2とがなす三次元的な角度の二乗の値であり、Aの平方根はミュオン散乱角θに等しい値となる。
係数Aの平方根がミュオン散乱角θに等しい値となることは、以下のように示される。
いま、xy平面において、y(x)=a・x、および、y(x)=a・x、の2つの直線を考えると、xにおけるyとyの値の差dyは、つぎのように得られる。
dy=y(x)-y(x)=(a-a)x=a・x
同様に、xz平面においてのzとzの値の差dzは、つぎのように得られる。
dz=a・x
したがって、dyとdzをベクトル的に合成した値dは、次のように得られる。
d=√(d +d )=A・x
ここで、底辺がx、高さがdの直角三角形を考えると、その角度θとの間には、次の関係が成り立つ。
tanθ=d/x
x=1、かつ、θ<<1の場合には、θはtanθとほぼ等しく、かつ、tanθ=d、となる。すなわち、次の式(12)が得られる。
角度θ=d=A・x=A ・・・(12)
次に、3次元空間における平面S上の2点P(x、y、z)、P(x、y、z)を考える。この平面における2点間の距離Lは、次の式で求められる。
=(x-x+(y-y+(z-z
ここで、平面Sがx軸に垂直であるとすれば、x=x(=x)であり、y、y、z、zはxのみの一次関数となるから、次の式(13)が得られる。
=A・x+B・x+C ・・・(13)
一方、式(x)を変形すれば、次の式(14)が得られる、
=A ・x ・・・(14)
ここで、L=dとして、式(13)および式(14)のそれぞれのxの係数を比較すれば、A=A となる。ここで、式(12)よりθ=A であるから、θ=Aという関係が得られる。したがって、係数Aの平方根はミュオン散乱角θに等しい値となる。
係数Bは2次関数において極値をとる座標xを示す値であり、ミュオン散乱においては2つの軌跡が最近接するx座標を示す値となる。2つの軌跡が最近接する座標は、ミュオンの散乱が起きた確率が最も高くなる座標を示している。したがって係数Bの値はこの関数が示す事象における散乱座標すなわち、物質すなわち対象物1の存在する座標とみなすことができる。
係数Cは2次関数における極値を示すが、ミュオン散乱においては2つの軌跡が最近接した際の距離の2乗を示し、ミュオンが散乱したことによって生じたミュオン軌跡のずれを示す。最近接距離は、物質の形状が大きくなるほど大きくなる傾向がある。したがって、係数Cは、物質すなわち対象物1の大きさに関する情報を有する。
上記を総合すると、実測ミュオン散乱関数fd(x)の各係数A、B、Cのそれぞれは、ミュオン散乱角θ、散乱位置の座標、最近接距離の3つについての情報を示すものである。ここで、一つの実測ミュオン散乱関数fd(x)についての各係数A、B、Cを係数セットと呼ぶものとする。
それぞれの実測ミュオン散乱関数fd(x)の係数セットは、係数データ記憶部132に収納、記憶される。
係数処理部123は、係数データ記憶部132に収納、記憶された複数のミュオン散乱に関するそれぞれの実測ミュオン散乱関数fd(x)の係数セットを読み出して、統計的な処理を行う。統計的な処理は、たとえば、平均値、中央値あるいは標準偏差を算出することでもよい。また、統計的な処理は、係数A、B、Cに共通の処理でなくともよく、すなわち、それぞれの係数に応じた処理でもよい。
また、係数Bについては、位置座標についての密度分布あるいはメッシュやボクセルに分割した場合にそれぞれについての頻度分布により、大きさの広がりが分かり、対象が複数の場合は、さらに係数Cの大きさも加味することにより、さらに大きさの推測の妥当性を確認することができる。
物質判別部124は、特に係数Aの統計処理により得られた値に基づいて、前述の式(1)を用いて、物質の種類、すなわち、対象物1を構成する元素を判別する。
図5は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200におけるミュオン散乱関数導出部122による実測ミュオン散乱関数の係数Aの散乱角への依存性の例を示すグラフである。図5の横軸は、種々のミュオン散乱におけるミュオン散乱角θ(rad)、縦軸は、係数Aの値である。
図5に示すように、係数Aの値は、ミュオン散乱角θ(rad)の値の二乗となっている。
図6は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200におけるミュオン散乱関数導出部122による実測ミュオン散乱関数の係数Bの頻度分布の例を示すグラフである。図6の横軸は、係数Bの値、縦軸は、頻度である。
図6は、サンプルの位置xを、マイナス20、5、および20の3か所とした場合に、各ミュオン散乱の実測ミュオン散乱関数の係数Bについて、メッシュ幅を2としたときの、各メッシュの頻度を示すものである。
図6に示されるように、頻度分布は、3か所の真のサンプルの位置xを中心に広がっており、サンプルの真の位置を推定することができる。
図7は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200におけるミュオン散乱関数導出部122による実測ミュオン散乱関数の係数Bのピーク位置を中央値により算出した例のグラフである。
この場合は、サンプルの位置xを、マイナス20、マイナス10、0、10、および20とした場合の結果を示している。図7の破線は、それぞれの中央値が真の位置の値xに一致した場合の直線を示す。図7に示すように、実測ミュオン散乱関数の係数Bの中央値を用いることにより、散布の真の位置xをほぼ推定することができる。
図8は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200におけるミュオン散乱関数導出部122による実測ミュオン散乱関数の係数Cのサンプル厚さへの依存性の例を平均値により算出した場合のグラフである。図8の横軸は、x方向のサンプルの厚み(cm)、縦軸は、係数Cの値を示す。
図8に示すように、ミュオン散乱によるズレは、サンプルの厚さが増加するにつれて増加するが、係数Cの値を用いることにより、このずれの値を推定することができる。
図9は、第1の実施形態に係る非破壊物質組成識別方法の手順を示すフロー図である。
まず、第1ミュオン検出器11による測定が行われる(ステップS11)。また、第2ミュオン検出器12による測定が行われる(ステップS12)。
非破壊物質組成演算装置100は、第1ミュオン検出器11からの第1ミュオン検出信号および第2ミュオン検出器12からの第2ミュオン検出信号を受け入れて、実測値演算を行う(ステップS20)。
詳細には、実測値演算ステップS20においては、まず、グルーピング部110がグルーピング判定を行う(ステップS21)。すなわち、グルーピング部110は、第1ミュオン検出信号と第2ミュオン検出信号とが、同一のミュオンに起因する対データであるか否かを判定する。
グルーピング部110が第1ミュオン検出信号と第2ミュオン検出信号とが同一のミュオンに起因する対データであると判定した場合は、ミュオン軌跡関数導出部121は、第1ミュオン検出器11についての実測ミュオン軌跡関数を導出する(ステップS22)とともに、第2ミュオン検出器12についての実測ミュオン軌跡関数を導出する(ステップS23)。
次に、ミュオン散乱関数導出部122は、第1ミュオン検出器11についての実測ミュオン軌跡関数および第2ミュオン検出器12についての実測ミュオン軌跡関数に基づいて、実測ミュオン散乱関数を導出する(ステップS24)。それぞれのミュオン散乱による実測ミュオン散乱関数は、その係数セットという形で、係数データ記憶部132に収納、記憶される。
次に、係数処理部123は、係数データ記憶部132に収納、記憶された複数のミュオン散乱に関するそれぞれの実測ミュオン散乱関数fd(x)の係数セットを読み出して、統計的な処理を行う。
物質判別部124は、実測値演算ステップS20で得られた統計処理された係数セットに基づいて、物質の判別を行う(ステップS30)。
図10は、第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200における非破壊物質組成演算装置100による三次元物質分布の可視化結果の例を示すグラフである。物質を構成する元素が鉄で、同一のものを位置の異なる3か所に配置した場合について、画像化した結果を示している。
図10に示すように、異なる位置に配置された場合においても、鉄であることの判別はもちろんであるが、形状、大きさについても明確に把握することができる。
以上のように、本実施形態による非破壊物質組成識別装置200によれば、対象とする物質の種類、すなわち対象物1を構成する元素の種類を精度よく判別することができ、かつ、物質すなわち対象物1の存在位置を推定することができる。
[第2の実施形態]
図11は、第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200aにおける非破壊物質組成演算装置100aの構成を示すブロック図である。
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、非破壊物質組成識別装置200aにおける非破壊物質組成演算装置100aの演算部120は、入力部150をさらに有し、また第1の実施形態における物質判別部124に代えて物質判別部124aを有する。また、記憶部130は、係数特性データ記憶部133をさらに有する。
係数のサンプルの厚みへの依存性が、主要な物質について、どのように異なるのかを事前に把握することにより、物質の識別が容易となることから、係数のサンプルの厚みへの依存性データを外部データとして、入力部150が受け入れて、係数特性データ記憶部133が収納、記憶する。
物質判別部124aは、係数処理部123により得られた係数A、BおよびCを受け入れるとともに、係数特性データ記憶部133に記憶された依存特性データを読み出し、これを判定に利用して、物質判別を行う。
以下、依存性データを収納されるそれぞれの依存特性の例を説明する。
図12は、第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200aにおけるミュオン散乱関数導出部122による係数Aのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが平均値の場合、図13は、係数Aが中央値の場合であり、図14は、係数Aの標準偏差のサンプル厚さへの依存性を示すグラフである。
図12ないし図14において、横軸はx方向のサンプル厚さt(cm)、縦軸は、それぞれ、係数Aの平均値、中央値、標準偏差である。また、実線はアルミニウムの場合、破線は鉄の場合、一点鎖線は鉛の場合を示す。
実線で示すアルミニウムの場合は、係数Aの平均値、中央値、標準偏差のいずれの場合もサンプル厚さtへの依存性が小さい、すなわち、サンプル厚さtの増加に対しても殆ど変化しない。
破線で示す鉄の場合は、係数Aの平均値、中央値、標準偏差のいずれの場合もサンプル厚さtと正の相関を示す。
一点鎖線で示す鉛の場合は、係数Aの平均値、中央値、標準偏差のいずれの場合も、サンプル厚さtへの依存性が大きく、サンプル厚さtの増加に対しての増加の程度が大きい。
以上のように、係数Aの平均値、中央値、標準偏差のいずれを用いた場合でも、アルミニウム、鉄および鉛について、明確に区別できる。
図15は、第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200aにおけるミュオン散乱関数導出部122による係数Bのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが平均値の場合、図16は、係数Aが中央値の場合であり、図17は、係数Bの標準偏差のサンプル厚さへの依存性を示すグラフである。
図15ないし図17において、横軸はx方向のサンプル厚さt(cm)、縦軸は、それぞれ、係数Bの平均値、中央値、標準偏差である。また、実線はアルミニウムの場合、破線は鉄の場合、一点鎖線は鉛の場合を示す。
図17に示すように、アルミニウムおよび鉄の場合に比べて鉛の場合は、係数Bの標準偏差が大きい。
図15および図16において、サンプル厚さtの増加に対して、散乱位置が変化するのは、散乱位置xがサンプル厚さtの中央の位置と想定しているためである。
また、図15で示す係数Bの平均値を用いた場合も、図16に示す係数Bの中央値を用いた場合も、アルミニウムと鉄については、散乱位置の推定値は互いにほぼ一致しており、鉛の場合についても、アルミニウムと鉄の場合とそれほどの差はない。
したがって、係数Bによる散乱位置の推定は、物質の種類を考慮することなく、係数Bの値のみからも判断可能ということが分かる。
図18は、第2の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200aにおけるミュオン散乱関数導出部122による係数Cのサンプル厚さへの依存性を示すグラフであり、係数Aが平均値の場合、図19は、係数Aが中央値の場合であり、図20は、係数Cの標準偏差のサンプル厚さへの依存性を示すグラフである。
図18ないし図20において、横軸はx方向のサンプル厚さt(cm)、縦軸は、それぞれ、係数Cの平均値、中央値、標準偏差である。また、実線はアルミニウムの場合、破線は鉄の場合、一点鎖線は鉛の場合を示す。
図18ないし図20に示すように、サンプル厚さtが小さい領域では、係数Cの平均値を用いた場合の方が物質による違いが顕著であり、サンプル厚さtが大きい領域では、係数Cの中央値あるいは標準偏差を用いた場合の方が物質による違いが顕著である。
このように、ミュオン散乱による軌跡のズレについては、係数Cのこのような特性を参照することが効果的である。
係数特性データ記憶部133は、係数A、係数B、および係数Cのそれぞれに関して、それぞれの統計量としての平均値、中央値、標準偏差のグラフを、物質毎にサンプル厚さtに対応するフィッティング関数として収納する。
これらのフィッティング関数を、fAmean(t)、fAmedian(t)、fAstd(t)、fBmean(t)、fBmedian(t)、fBstd(t)、fCmean(t)、fCmedian(t)、fCstd(t)とする。
一方、係数処理部123により実測値に基づき統計処理された係数A、係数B、係数Cが得られる。これらの値を、Amean、Amedian、Astd、Bmean、Bmedian、Bstd、Cmean、Cmedian、Cstd、とする。
物質判別部124aは、係数処理部123から上述の各係数の統計処理結果を受け入れるとともに、係数特性データ記憶部133から上述のフィッティング関数を読み出し、それぞれの物質について、たとえば、次の式(15)のような残差二乗和d(t)をとる。
d(t)=[fAmean(t)-Amean]+[fAmedian(t)-Amedian]+[fAstd(t)-Astd]+[fBmean(t)-Bmean]+[fBmedian(t)-Bmedian]+[fBstd(t)-Bstd]+[fCmean(t)-Cmean]+[fCmedian(t)-Cmedian]+[fCstd(t)-Cstd] ・・・(15)
物質判別部124aは、残差二乗和d(t)の値が最小となるtを決定する。それぞれの物質について算出された最小のd(t)の値を比較し、最小のd(t)の値の値が最も小さいフィッティング関数を与えた物質が、測定した物質組成であると判定する。
以上は、複数のフィッティング関数を用いた場合を示したがこれに限定されない。例えば、従来手法と同様に、Ameanのみを使用しても問題ない。特に、物質の違いによって、識別効果の高い係数および統計量が異なる可能性があるため、目的とする物質に対応して最適な係数および統計量を選択することも出来る。
また、この例では統計量として平均値、中央値、標準偏差を用いたが、これ以外の統計量として最大値、最小値、パーセンタイル等を使用することも可能である。
さらに、本実施形態では、係数特性として係数のサンプルの厚みへの依存性の場合を例にとって示したが、これに限定されない、たとえば、サンプルの位置等への依存性など、他のパラメータの場合でもよい。
このように、外部からの依存特性データを受け入れて、物質判別部124aが判別を行うことにより、さらに判別の精度を向上させることができる。
[第3の実施形態]
図21は、第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200bの構成を示すブロック図である。
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、非破壊物質組成識別装置200bにおける非破壊物質組成演算装置100bの演算部120は、ミュオン散乱模擬演算部125、参照ミュオン軌跡関数導出部126および参照ミュオン散乱関数導出部127をさらに有する。また、第1の実施形態における物質判別部124に代えて物質判別部124bを有する。また、記憶部130は、模擬演算結果記憶部134および参照係数データ記憶部135をさらに有する。
ミュオン散乱模擬演算部125は、第1ミュオン検出器11と第2ミュオン検出器12との間に配された対象物について、ミュオン散乱のシミュレーション計算を行う。シミュレーション手法としては、粒子輸送モンテカルロ計算が主に使用される。粒子輸送モンテカルロ計算のための代表的なシミュレーションコードとしては、米国ロスアラモス国立研究所が開発しているMCNP、欧州原子核研究機構のGeant4、日本原子力研究開発機構のPHITS等が挙げられる。
図22は、第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200bにおけるミュオン散乱模擬演算部125によるシミュレーション体系におけるサンプル位置への依存性評価体系の例を示す概念図である。
図22では、シミュレーション体系として、第1ミュオン検出器11と第2ミュオン検出器12に挟まれた空間におけるサンプル位置が、x軸方向にx1、x2およびx3の場合を示している。この場合における第2ミュオン検出器12に到達したミュオンの、散乱がなかった場合に対するy方向へのそれぞれのズレ量ta1、ta2およびta3を算出する。なお、この場合は、それぞれのミュオン散乱角θa1、θa2、およびθa3は、互いに同じ値である。
このシミュレーション体系および算出された結果は、模擬演算結果記憶部134に収納、記憶される。
図23は、第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200bにおけるミュオン散乱模擬演算部125によるシミュレーション体系におけるサンプル厚さへの依存性評価体系の例を示す概念図である。
図23では、シミュレーション体系として、第1ミュオン検出器11と第2ミュオン検出器12に挟まれた空間におけるサンプル位置が同じで、x軸方向のサンプルの厚みが、h1、h2およびh3の場合を示している。この場合における第2ミュオン検出器12に到達したミュオンの、ミュオン散乱角θa1、θa2、およびθa3、並びに、散乱がなかった場合に対するy方向へのそれぞれのズレ量ta1、ta2およびta3を算出する。
このシミュレーション体系およびミュオン散乱模擬演算部125によるシミュレーション演算により得られた模擬演算結果は、模擬演算結果記憶部134に収納、記憶される。
参照ミュオン軌跡関数導出部126は、模擬演算結果記憶部134に収納された模擬演算結果をシミュレーション体系とセットで読み出して、ミュオン軌跡関数導出部121と同様の処理内容により、シミュレーション体系に対応する参照ミュオン軌跡関数を導出する。
参照ミュオン散乱関数導出部127は、参照ミュオン軌跡関数導出部126により導出された参照ミュオン軌跡関数に基づいて、ミュオン散乱関数導出部122と同様の処理内容により、シミュレーション体系に対応する参照ミュオン散乱関数を導出する。この結果得られた参照ミュオン散乱関数の係数は、参照係数データ記憶部135に収納、記憶される。
物質判別部124bは、係数データ記憶部132に記憶された実測値に基づく実測ミュオン散乱関数の係数と、参照係数データ記憶部135に記憶された参照ミュオン散乱関数の係数とを比較し、物質を判別する。なお、判別における具体的な方法としては、第2の実施形態と同様に、残差二乗和をとることにより判別することができる。
なお、以上の構成では、参照ミュオン軌跡関数導出部126および参照ミュオン散乱関数導出部127が、ミュオン軌跡関数導出部121およびミュオン散乱関数導出部122とは別に設けられている場合を例にとって示したが、これに限定されない。すなわち、ミュオン軌跡関数導出部121が模擬演算結果記憶部134に収納された模擬演算結果を読み出して参照ミュオン軌跡関数を導出し、ミュオン散乱関数導出部122が参照ミュオン軌跡関数に基づいて参照ミュオン散乱関数を導出することでもよい。
図24は、第3の実施形態に係る非破壊物質組成識別方法の手順を示すフロー図である。
第1の実施形態における非破壊物質組成識別方法に比べて、参照演算ステップS40が追加されている。また、照合および物質判別ステップS30aの内容が第1の実施形態と異なる。
参照演算ステップS40は、ミュオン散乱模擬演算部125によるミュオン散乱シミュレーションステップS41および、これにより得られ模擬演算結果記憶部134に収納、記憶された模擬演算結果に基づいて参照ミュオン軌跡関数導出部126により実施される参照ミュオン散乱関数導出ステップS42を有する。
実測値演算ステップS20および参照演算ステップS40の後に、物質判別部124bが、係数データ記憶部132に記憶された実測値に基づく実測ミュオン散乱関数の係数と、参照係数データ記憶部135に記憶された参照ミュオン散乱関数の係数とを比較、照合し、物質の判別を行う(ステップS30a)。
以上のように、参照演算を行った結果を用いて、比較、照合して、物質の判別を行うことにより、判別の精度を向上させることができる。
[第4の実施形態]
図25は、第4の実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200cの構成を示すブロック図である。
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態に係る非破壊物質組成識別装置200cの非破壊物質組成演算装置100cは、入力部150をさらに有する。
また、非破壊物質組成演算装置100cの演算部120は、予測器作成部128をさらに有する。また、演算部120は、第1の実施形態の演算部120が有する物質判別部124に代えて、物質判別部124cを有する。
非破壊物質組成演算装置100cの記憶部130は、予測器136をさらに有する。
入力部150は、外部から、ミュオン散乱の測定結果を学習用データとして受け入れる。
予測器作成部128は、入力部150が受け入れた学習用データとしてのミュオン散乱の測定結果を、ミュオン軌跡関数導出部121およびミュオン散乱関数導出部122により処理させ、実測ミュオン散乱関数の係数を得る。すなわち、予測器作成部128は、ミュオン軌跡関数導出部121に学習用データであるミュオン散乱の測定結果を読み取らせてミュオン軌跡関数をミュオン散乱関数導出部122に出力させる。予測器作成部128は、ミュオン散乱関数導出部122にミュオン軌跡関数に基づいて実測ミュオン散乱関数を導出させて、その結果である実測ミュオン散乱関数の係数を得る。あるいは、係数処理部123によりさらに統計処理された結果を用いる。
予測器作成部128は、実測ミュオン散乱関数の係数を説明変数Wとし、目的とする値を目的変数Yとした関数(Y=f(W))を作成する。ここで、目的とする値は、対象物すなわちサンプルの物質組成すなわちサンプルを構成する元素の種類および割合、存在位置、ミュオンの進行方向のサンプルの厚みなどの対象に関する情報である。
予測モデルの作成手法としては、連続的な予測結果が得られる回帰分析または、離散的な結果が得られる分類の手法が挙げられる。
回帰としては、単一の係数の統計量に対する1変数の線形回帰の他に、多数の係数の統計量に対する多変量線形回帰を使用することが考えられる。
また、分類としては多数の係数の統計量に対して、決定枝分析やSVM(Support Vector Machine)を用いることができる。
予測器136は、予測器作成部128により作成され、記憶部130に収納される。
物質判別部124cは、ミュオン散乱の実測値に基づく実測ミュオン散乱関数の係数を係数処理部123から受けて、予測器136を用いて、目的変数である、対象物すなわちサンプルの物質組成、存在位置、ミュオンの進行方向のサンプルの厚みなどの対象に関する情報を得る。
図26は、第4の実施形態に係る非破壊物質組成識別方法の手順を示すフロー図である。
第1の実施形態における手順に加えて、予測器136の作成ステップ50を有する。
予測器136の作成ステップ50は、入力部150による外部からの学習用データであるミュオン散乱データを読み込む外部データ読み込みステップS51と、予測器作成部128による予測器作成ステップS52を有する。
実測値演算ステップS20および予測器の作成ステップS50の後に、物質判別部124cが、ミュオン散乱の実測値に基づく実測ミュオン散乱関数の係数を係数処理部123から受けて、予測器136を用いて、目的変数である、対象物すなわちサンプルの物質組成、存在位置、ミュオンの進行方向のサンプルの厚みなどの対象に関する情報を得る(ステップS30b)。
以上のように、機械学習に基づく予測器136を用いることにより、判別の精度を向上させることができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。たとえば、第2の実施形態の特徴である外部からの係数特性データの使用を、第3の実施形態あるいは第4の実施形態と組み合わせてもよい。
また、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…測定対象、2…容器等、11…第1ミュオン検出器、11a…対向面、12…第2ミュオン検出器、12a…対向面、100、100a、100b、100c…非破壊物質組成演算装置、110…グルーピング部、120…演算部、121…ミュオン軌跡関数導出部、122…ミュオン散乱関数導出部、123…係数処理部、124、124a、124b、124c…物質判別部、125…ミュオン散乱模擬演算部、126…参照ミュオン軌跡関数導出部、127…参照ミュオン散乱関数導出部、128…予測器作成部、130…記憶部、131…対データ記憶部、132…係数データ記憶部、133…係数特性データ記憶部、134…模擬演算結果記憶部、135…参照係数データ記憶部、136…予測器、140…出力部、150…入力部、200、200a、200b、200c…非破壊物質組成識別装置

Claims (9)

  1. ミュオンを利用して対象物を構成する元素を判別する非破壊物質組成識別装置であって、
    前記対象物を挟んで互いに平行に設けられて互いに対向する対向面が平面状に広がり、
    それぞれがミュオンの入射位置および入射方向を第1ミュオン検出信号および第2ミュオン検出信号としてそれぞれ測定可能な第1ミュオン検出器および第2ミュオン検出器と、
    前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号を受けて前記対象物を構成する元素を判別する非破壊物質組成演算装置と、
    を備え、
    前記非破壊物質組成演算装置は、
    前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号が同一のミュオンに起因する対データであるか否かを判定しグループ化するグルーピング部と、
    前記グループ化の結果、それぞれ前記対データとされた前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号を収納する対データ記憶部と、
    前記対データ記憶部に収納された前記対データについて前記第1ミュオン検出器および前記第2ミュオン検出器のそれぞれにおける実測ミュオン軌跡関数を導出するミュオン軌跡関数導出部と、
    前記実測ミュオン軌跡関数に基づいて、実測ミュオン散乱関数を導出するミュオン散乱関数導出部と、
    前記実測ミュオン散乱関数に基づいて前記対象物を構成する元素を判別する物質判別部と、
    を具備し、
    前記対向面の広がる方向を互いに垂直なy軸方向およびz軸方向、前記y軸方向および前記z軸方向に垂直な方向をx軸方向としたときに、
    前記ミュオン軌跡関数導出部は、前記対向面に平行な仮想平面と、前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号のそれぞれによるミュオン軌跡データに基づき、それぞれの軌跡のxy平面およびzx平面への写像ベクトルを前記x軸方向の位置xの一次関数として前記実測ミュオン軌跡関数を導出し、
    前記ミュオン散乱関数導出部は、前記仮想平面と、前記第1ミュオン検出信号による前記ミュオン軌跡データに基づく軌跡との第1の交点の位置座標および前記第2ミュオン検出信号による前記ミュオン軌跡データに基づく軌跡との第2の交点の位置座標とを求め、前記第1の交点と前記第2の交点との間の距離の二乗に対応しかつ式(1)に示す前記位置xの二次関数を前記実測ミュオン散乱関数fd(x)として導き出し、
    前記物質判別部は、前記実測ミュオン散乱関数fd(x)の各係数について、係数Aの値を散乱角、係数Bの値を散乱座標、係数Cの値を前記距離の最小値として取り扱う、
    ことを特徴とする非破壊物質組成識別装置。
    fd(x)=A(x-B) +C …(1)
  2. 記対データ記憶部は、前記対データのそれぞれを、三次元的な位置ベクトル(x,y,z)および方向ベクトル(i,j,k)からなる6次元の前記ミュオン軌跡データとして保存することを特徴とする請求項1に記載の非破壊物質組成識別装置。
  3. 前記非破壊物質組成演算装置は、前記係数A、前記係数Bおよび前記係数Cについて複数得られた値を統計的に処理する係数処理部をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非破壊物質組成識別装置。
  4. 前記非破壊物質組成演算装置は、
    外部から、判別する元素ごとの前記係数A、前記係数Bおよび前記係数Cの前記対象物の厚みへの依存性データである係数特性データを受け入れる入力部と、
    前記係数特性データを収納する係数特性データ収納部と、
    をさらに具備し、
    前記物質判別部は、前記実測ミュオン散乱関数と前記係数特性データに基づいて前記対象物を構成する元素を判別する、
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の非破壊物質組成識別装置
  5. 前記非破壊物質組成演算装置は、
    ミュオン散乱についてシミュレーションを行い、参照ミュオン軌跡データを得るミュオン散乱模擬演算部と、
    前記参照ミュオン軌跡データに基づいて前記ミュオン軌跡関数導出部と同様の処理内容により前記シミュレーションの体系に対応する参照ミュオン軌跡関数を導出する参照ミュオン軌跡関数導出部と、
    前記参照ミュオン軌跡関数に基づいて前記ミュオン散乱関数導出部と同様の処理内容により前記シミュレーションの前記体系に対応する参照ミュオン散乱関数を導出する参照ミュオン散乱関数導出部と、
    さらに具備し、
    前記物質判別部は、前記実測ミュオン散乱関数と前記参照ミュオン散乱関数に基づいて前記対象物を構成する元素を判別する、
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の非破壊物質組成識別装置。
  6. 前記非破壊物質組成演算装置は、
    ミュオン散乱の測定結果を学習用データとして受け入れる入力部と、
    前記測定結果に基づいて前記実測ミュオン散乱関数の前記係数A、前記係数Bおよび前記係数Cを算出し、機械学習により前記対象物を構成する元素を予測する予測器を作成する予測器作成部と、
    前記対データ記憶部および前記予測器を有する記憶部と、
    をさらに具備し、
    前記物質判別部は、前記予測器を用いて前記実測ミュオン散乱関数の前記係数A、前記係数Bおよび前記係数Cに基づいて前記対象物を構成する元素を判別する、
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の非破壊物質組成識別装置。
  7. ミュオンを利用して対象物を構成する元素を判別する非破壊物質組成識別方法であって、
    前記対象物を挟んで互いに平行に設けられて互いに対向する対向面が平面状に広がる第1ミュオン検出器および第2ミュオン検出器が、ミュオンの入射位置および入射方向を第1ミュオン検出信号および第2ミュオン検出信号としてそれぞれ測定する測定ステップと、
    グルーピング部が、前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号が同一のミュオンに起因する対データであるか否かを判定しグループ化するグルーピング判定ステップと、
    前記対向面の広がる方向を互いに垂直なy軸方向およびz軸方向、前記y軸方向および前記z軸方向に垂直な方向をx軸方向としたときに、ミュオン軌跡関数導出部が、前記対向面に平行な仮想平面と、前記対データについて前記第1ミュオン検出信号および前記第2ミュオン検出信号のそれぞれによるミュオン軌跡データに基づき、それぞれの軌跡のxy平面およびzx平面への写像ベクトルを前記x軸方向の位置xの一次関数として実測ミュオン軌跡関数を導出するミュオン軌跡関数導出ステップと、
    ミュオン散乱関数導出部が、前記仮想平面と、前記第1ミュオン検出信号による前記ミュオン軌跡データに基づく軌跡との第1の交点の位置座標および前記第2ミュオン検出信号による前記ミュオン軌跡データに基づく軌跡との第2の交点の位置座標とを求め、前記第1の交点と前記第2の交点との間の距離の二乗に対応しかつ式(2)に示す前記位置xの二次関数を実測ミュオン散乱関数fd(x)として導出するミュオン散乱関数導出ステップと、
    物質判別部が、前記実測ミュオン散乱関数fd(x)の各係数について、係数Aの値を散乱角、係数Bの値を散乱座標、係数Cの値を前記距離の最小値として取り扱い前記対象物を構成する元素を判別する物質判別ステップと、
    を有することを特徴とする非破壊物質組成識別方法
    fd(x)=A(x-B) +C …(2)
  8. ミュオン散乱模擬演算部がミュオン散乱についてのシミュレーションを実施して参照ミュオン軌跡データを得る模擬演算ステップと、
    参照ミュオン軌跡関数導出部が、前記参照ミュオン軌跡データに基づいて前記ミュオン軌跡関数導出部と同様の処理内容により前記シミュレーションの体系に対応する参照ミュオン軌跡関数を導出する参照ミュオン軌跡関数導出ステップと、
    参照ミュオン散乱関数導出部が、前記参照ミュオン軌跡関数に基づいて前記ミュオン散乱関数導出部と同様の処理内容により前記シミュレーションの前記体系に対応する参照ミュオン散乱関数を導出する参照ミュオン散乱関数導出ステップと、
    をさらに有し、
    前記物質判別ステップでは、前記物質判別部が、前記実測ミュオン散乱関数と前記参照ミュオン散乱関数に基づいて前記対象物を構成する元素を判別する、
    ことを特徴とする請求項に記載の非破壊物質組成識別方法
  9. 入力部が、学習用データとしてミュオン散乱の測定結果を読み込む外部データ読み込みステップと、
    予測器作成部が、前記測定結果に基づいて前記実測ミュオン散乱関数の前記係数A、前記係数Bおよび前記係数Cを算出し、機械学習により前記対象物を構成する元素を予測する予測器を作成し、記憶部が前記予測器を収納する予測器作成ステップと、
    をさらに有し、
    前記物質判別ステップでは、前記物質判別部が、前記予測器を用いて、前記実測ミュオン散乱関数の前記係数A、前記係数Bおよび前記係数Cに基づいて前記対象物を構成する元素を判別する、
    ことを特徴とする請求項7に記載の非破壊物質組成識別方法。
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