JP7474451B1 - 建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法並びに同方法に用いる建設資材 - Google Patents

建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法並びに同方法に用いる建設資材 Download PDF

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Abstract

【課題】道路舗装用アスファルトの骨材の一部にホタテ貝殻を粉砕したものを使用すること知られているが、ホタテ貝などの貝類が海洋中などの水中で吸収した二酸化炭素(CO2)を大気中や海水などの水中に放出させることなく、減少させるという所謂カーボンニュートラルの観点は一切ない。【解決手段】舗装用アスファルト等を生成したり生成したアスファルト等を運搬する過程で排出する二酸化炭素量の大部分と同等量の二酸化炭素を貝類が水中で成長する過程で吸収していることに着目し、貝類が吸収してその貝殻中に存在する二酸化炭素を貝殻内に閉じ込めた状態で、貝殻に所定の処理を施して他の骨材と混合して建設資材を生成し、この建設資材を建設工事に使用し、貝殻が吸収した二酸化炭素を固定化してカーボンニュートラルを実現する。【選択図】図1

Description

本発明は、建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法並びに同方法に用いる建設資材に関する。
一般に、道路工事を含む土木工事や建築工事に使用されるアスファルトやセメントには、骨材が混入されている。骨材としては、各種砂や石紛を混ぜたものが使用される。これらの各種材料は、複数の異なるふるい目を通して混合される。一方、ホタテ貝や牡蠣など食用の貝類の殻は、大量に発生し産業廃棄物としてその処理に苦慮しているのが実情である。そこで、アスファルトやセメントに混合される骨材、すなわち各種砂や石粉の一部の代わりにこれらの貝殻を粉砕して使用することが提案されている。下記の非特許文献1には、アスファルト舗装材の作製にあたり、アスファルト混合物の骨材の一部に粉砕したホタテ貝殻を使用する例が示されている。具体的には粉砕して0.075mm~13.2mmのふるい目を通したホタテ貝殻を15%~30%の範囲で混合した場合の密度、安定度などが示されている。
また、下記の特許文献1には、かき貝殻を利用した固化材の製造方法が開示されている。すなわち特許文献1には、かき貝殻を熱処理して生石灰を製造し、生石灰を加熱して水処理することで消石灰を製造し、こうしてできた生石灰と消石灰を粉砕、分級して石膏と反応させて固化させ、これを軟弱な地盤の改良や地下空洞充填材などの建設資材として使用することが開示されている。
特開2002-362949号公報 要約
第25回日本道路会議論文 はたて貝殻入りアスファルト舗装について 平成25年11月5日発行
上記非特許文献1には、道路舗装用アスファルトの骨材の一部にホタテ貝殻を粉砕したものを使用することが開示されているが、その背景には、処理に苦慮している産業廃棄物としてのホタテ貝殻を道路舗装用のアスファルトに混合することにより、産業廃棄物の処理の1つの方法としているものである。したがって、上記非特許文献1には、ホタテ貝などの貝類が海洋中などの水中で吸収した二酸化炭素(CO2)を大気中や海水などの水中に放出させることなく、減少させるという所謂カーボンニュートラルの観点は一切ない。したがって、骨材や建設資材を生成する段階での二酸化炭素(CO 2 )発生量がどの程度あり、ホタテ貝殻が成長中に水中で吸収した二酸化炭素(CO 2 )量がどの程度あるかを全く把握していない。
また、上記特許文献1には、かき貝殻を処理して固化材とし、建設資材として使用することが開示されているが、貝類が海洋中などの水中で吸収した二酸化炭素(CO2)を大気中や海水などの水中に放出させることなく、減少させるといる所謂カーボンニュートラルの観点は一切ない。したがって、骨材や建設資材を生成する段階での二酸化炭素(CO 2 )発生量がどの程度あり、ホタテ貝殻が成長中に水中で吸収した二酸化炭素(CO 2 )量がどの程度あるかを全く把握していない。
上記課題を解決するため、本発明では舗装用アスファルトや舗装用コンクリートを生成したりそのため及び生成したアスファルトやコンクリートを運搬する過程で排出する二酸化炭素量の大部分と略同等量の二酸化炭素を貝類が水中で成長する過程で吸収していることに着目し、貝類が吸収してその貝殻中に存在する二酸化炭素を貝殻内に閉じ込めた状態で、他の骨材と混合してアスファルトやセメントの骨材として、建設資材を生成し、これを道路その他の建設に使用するものであり、骨材や建設資材を生成する段階での二酸化炭素発生量と貝殻が成長中に水中で吸収した二酸化炭素量をそれそれ把握するようにしている。
すなわち本発明によれば、海洋中を含む水中で成長し、前記水中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムが生成されて貝殻の主成分とされる貝類の前記貝殻を焼成するステップと、前記焼成された前記貝殻を粉砕するステップと、前記粉砕された前記貝殻を粗粒合材と混合して建設資材を生成するステップと、前記建設資材を路盤の下方に位置する路床の一部である凍結防止層の材料として使用するステップと、を含む、建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法であって、
前記建設資材を生成するまでに発生する二酸化炭素発生量を計算する第1計算ステップと、
前記粗粒合材と混合される前記貝殻が成長中に前記水中で吸収した二酸化炭素量を計算する第2計算ステップと、
前記第1計算ステップと前記第2計算ステップで得られたそれぞれの二酸化炭素量から環境に排出する二酸化炭素量と、環境から吸収して前記建設資材内に封じ込められる二酸化炭素量を把握するステップとを、
有するカーボンニュートラルの実現方法が提供される。
前記第1計算ステップが、前記建設資材を生成するまでに発生する二酸化炭素発生量として、前記建設資材を生成する段階で発生する二酸化炭素量と、少なくとも前記建設資材の材料を搬送したり生成された前記建設資材を搬送する段階で発生する二酸化炭素量とを別個に計算した後に前記別個に計算された二酸化炭素量を合計して前記建設資材を生成するまでに発生する二酸化炭素発生量を計算するものであることは、本発明の好ましい態様の1つである。また、前記第1計算ステップが、前記貝殻を焼成するステップにおいて排出される二酸化炭素量と、発電時に発生する二酸化炭素量のいずれか一方あるいは双方をも加えて計算するものであることは、本発明の好ましい態様の1つである。また、前記第2計算ステップが、前記貝殻が含有する炭酸カルシウム量と、二酸化炭素の分子量と、炭酸カルシウムの分子量を用いて二酸化炭素量を計算するものであることは、本発明の好ましい態様の1つである。また、前記焼成するステップの前に、前記貝殻をエージングするステップを含むことは、本発明の好ましい態様の1つである。また、前記エージングが前記貝殻を風雨と日光を受けるよう半年以上2年未満、外部に放置するものであることは、本発明の好ましい態様の1つである。また、前記粉砕された貝殻を前記粗粒合材と混合して前記建設資材を生成するステップが、前記粉砕された貝殻を7~20重量%の範囲で前記粗粒合材と混合するものであることは、本発明の好ましい態様の1つである。また、上記カーボンニュートラルの実現方法に用いる前記建設資材は、本発明の好ましい態様の1つである。
前記エージングが前記貝殻を風雨と日光を受けるよう半年以上2年未満、外部に放置するものであることは本発明の好ましい態様の1つである。
前記粉砕された貝殻を他の骨材の成分と混合して前記合材を生成するステップが、前記粉砕された貝殻を7~20重量%の範囲で前記他の骨材の成分と混合することは本発明の好ましい態様の1つである。
さらに本発明によれば、上記建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法に用いる前記建設資材が提供される。
本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法によれば、貝が水中で成長する過程で吸収して、その貝殻に閉じ込められた二酸化炭素が骨材として使用され、道路舗装や建設に使用されるので、環境に放出される二酸化炭素を減少させることができ、骨材や建設資材を生成する段階での二酸化炭素発生量と貝殻が成長中に水中で吸収した二酸化炭素量をそれぞれ把握することができる
また、本発明の建設資材は、貝が水中で成長する過程で吸収して、その貝殻に閉じ込められた二酸化炭素がその状態のまま、最終骨材や最終製品に含有されているので、環境に放出される二酸化炭素を減少させることができ、骨材や建設資材を生成する段階での二酸化炭素発生量と貝殻が成長中に水中で吸収した二酸化炭素量をそれぞれ把握することができる。
なお、「カーボンニュートラル」という用語は、一般に環境に放出する二酸化炭素と環境から吸収して減少させる二酸化炭素が同量であり、プラスマイナスが0の場合をいう場合があるが、本明細書では、最終骨材あるいは最終製品である建設資材を製造する過程(運搬過程も含む)で排出される二酸化炭素の大部分がそれらの最終骨材あるいは最終製品に閉じ込められる場合を「カーボンニュートラル」としている。
なお、以下の実施の形態では道路舗装用の建設資材としての合材について説明しているが、本発明は、車両用道路に限定されず、歩道、橋面、駐車場、公園やグランド、建造物の敷地などあらゆるものの表面に施される舗装用の建設資材に適用可能であり、また、道路や土地表面の舗装に限定されず、トンネル、ダム、その他の建築物の主構造や表面構造に用いられるアスファルト混合物やコンクリート混合物を含む建設資材に適用可能であり、それら建築物の構成要素である、土台、柱、梁、壁部、天井部材、屋根部材、枕木他に用いられるアスファルト混合物やコンクリート混合物を含む建設資材に適用可能である。したがって、本発明において「建築資材」の用語はこれら各種の要素を含む広い概念であり、実施の形態で示される道路舗装用の建設資材のみに限定解釈されるべきではない。なお、「道路」の用語は、一般道と高速道路を含む車道、路肩、歩道、側道、橋梁上道などを含むものであり、また公道のみならず私道をも含むものである。
本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の好ましい実施の形態における貝殻の製造工程を含む建設資材の生成とその使用を示すシーケンスチャートである。 本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の前提となる、貝類の貝殻がその成長過程で二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムを生成する様子を示す模式図である。 本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の前提となる、貝類の貝殻がその成長過程で二酸化炭素を吸収して炭酸化カルシウムを生成する様子を示す模式図であり、図2に示すプロセスの後のプロセスを示すものである。 図2、図3で示した炭酸化カルシウムの生成の前提となる、海の生物の炭素等の移動を示す模式図である。 図2~図4に示した模式図の前提となる海洋中の二酸化炭素の動向を示す模式図である。 図2、図3で説明した炭酸化カルシウムの生成過程の別の面を示す模式図である。 本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法における合材の骨材の配合をホタテ貝殻を含まない従来の場合とホタテ貝殻を含む本発明の場合とを比較して示した表を含む図である。 道路舗装用アスファルトに骨材として混入される再生密粒(13F)を工場で製造して出荷する際に発生する二酸化炭素の量を示す模式図である。 貝殻を合材に混入させない従来の場合と比較して本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法でどの程度の二酸化炭素(CO2)の排出量を削減できるのかを説明するための模式図である。 本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法のさらに他の例を示す道路の部分断面斜視図である。
以下、図面を参照して本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の好ましい実施の形態における貝殻の製造工程を含む建設資材の生成とその使用を示すシーケンスチャートである。ここで処理対象としているホタテ貝などの貝殻がその成長過程において、海洋中に溶け込んだ二酸化炭素(CO2)を吸収する様子について、図2~図6を用いて説明する。なお、図2~図4、図6はWEBサイトのms-laboratory.jp中のほたてに関する部分から一部修正して転載したものである。
図2は、本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の前提となる、貝類の貝殻がその成長過程で二酸化炭素を吸収して酸化カルシウムを生成する様子を示す模式図である。本発明の対象は、貝類全般にわたるが、好ましい実施の形態ではホタテ貝を例にとって説明する。ホタテ貝は海洋中にて生息するが、ホタテ貝の貝殻の主成分である酸化カルシウム(CaO)は、海洋中の水(H2O)を吸収し、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を生成する。こうしてできた水酸化カルシウム(Ca(OH))は、海洋中に溶け込んでいる二酸化炭素(CO2)を吸着し、炭酸カルシウム(CaCO3)と水(H2O)を生成する。こうしてできた炭酸カルシウム(CaCO3)と水(H2O)のうち、水(H2O)は、海水中に排出され、炭酸カルシウム(CaCO3)のみが残る。したがって、ホタテ貝漁で得られるホタテ貝の貝殻は、炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分としている。
図2に示したプロセスは下記の式で表せる。
CaO + H2O → Ca(OH)2 (1)
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O (2)
図3は、本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の前提となる、貝類の貝殻がその成長過程で二酸化炭素を吸収して酸化カルシウムを生成する様子を示す模式図であり、図2に示すプロセスの後のプロセスを示すものであり、上記「こうしてできた炭酸カルシウム(CaCO3)と水(H2O)のうち、水(H2O)は、海水中に排出され、炭酸カルシウム(CaCO3)のみが残る。」プロセスを示している。
図4は、図2、図3で示した酸化カルシウムの生成の前提となる、海の生物の炭素等の移動を示す模式図である。図4に示すように、大気中の二酸化炭素と海洋中の二酸化炭素は、平衡状態にあり、海洋中には総量として5.6×1016t(トン)の二酸化炭素が存在している。一方、大気中には2.3×1012tの二酸化炭素が存在していることから、大気中より海洋中に存在する二酸化炭素の量が圧倒的に多いのである。
図4に示すように、海洋中の藍藻類や植物プランクトンは、太陽光を受けるとともに、海洋中の水(H20)と二酸化炭素(CO2)を吸収して光合成を行い、有機物(C,H,O)とホタテ貝などの貝類の餌となる炭素成分(C)と酸素(O2)を排出する。また、有機物は、海洋中の動物プランクトンの餌となる炭素成分(C)を排出する。また、海洋中のカルシウムイオンをホタテ貝が吸収して炭酸カルシウム(CaCO3)を生成する様子が示されている。さらに、海洋中の魚類が動物プランクトンを食べて、二酸化炭素(CO2)を排出する様子が示されている。
図5は、図2~図4に示した模式図の前提となる海洋中の二酸化炭素の動向を示す模式図である。なお、図5は気象庁HP中の各種データ・資料>海洋の健康診断表>総合診断表 第2版>[コラム] 海洋酸性化に掲載されたものを一部修正して転載したものである。図4に示すように、大気中の二酸化炭素(CO2)と海洋中の二酸化炭素(CO2)は、平衡状態にあり、大気中の二酸化炭素の多くが海洋中に溶け込んでいる。海洋中に溶け込んだ二酸化炭素(CO2)は、下記式(3)に示すように水(H2O)と反応して炭酸(H2CO3)となる。炭酸(H2CO3)は、海洋中では水素イオン(H+)が解離した炭酸水素イオン(HCO3 -)や炭酸イオン(CO3 2)との間で下記式(4)、(5)に示す反応により化学平衡の状態を保っている。
CO2 + H2O⇔ H2CO3 (3)
H2CO3 ⇔ H+ + HCO3 - (4)
HCO3 -⇔ H+ + CO3 2- (5)
図5に示すように海水中に溶け込んだ二酸化炭素(CO2)の大部分は、化学反応によって炭酸水素イオン(HCO3 -)や炭素イオン(CO3 2-)になる。これらの反応に伴って水素イオン(H+)が解離し、海水を酸性化させる。図5中の(3)~(5)は上記式(3)~(5)に対応している。
図6は、図2、図3で説明した炭酸カルシウムの生成過程の別の面を示す模式図である。一般にホタテ貝などの貝類は、海洋中で生息しているとき呼吸代謝を行っていて、二酸化炭素(CO2)を海洋中に排出する(図6中の[1]参照)。海洋中の二酸化炭素(CO2)は水中に溶けた際に電離して(図6中の[2]参照)炭酸イオン(CO3 2-)となる。こうして生成された炭酸イオン(CO3 2-)は貝に取り込まれる(吸収される)が、海洋中に存在するカルシウムイオン(Ca2+)も貝に取り込まれる(吸収される)。このように貝に取り込まれたカルシウムイオン(Ca2+)と炭酸イオン(CO3 2-)が反応して炭酸カルシウム(CaCO3)が生成される。上記炭酸カルシウム(CaCO3)の生成プロセスは図5中(6)で示される下記の式(6)で表される。
Ca2+ + CO3 2- ⇔ CaCO3 (6)
次に本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法について説明するが、その前提について説明する。図8は、道路舗装用アスファルトに骨材として混入される再生密粒(13F)を工場で製造して出荷する際に発生する二酸化炭素(CO2)の量を示す模式図である。図8は、合材1tを製造して出荷する際にどれだけの重量の二酸化炭素(CO2)が排出されるのかを各フェーズで示している。図8では、各フェーズ毎に下記のSCOPE1、SCOPE2、SCOPE3として示されている。
SCOPE1 工場での製造時に直接排出されるもの 26.60kg
SCOPE2 工場で使用される電気を発電する際に排出されるもの 2.50kg
SCOPE3 材料の搬入や合材の搬出などの運搬時に排出されるもの 14.51kg
図8に示されるようにSCOPE1、SCOPE2、SCOPE3で排出される二酸化炭素(CO2)の合計は、合材1t当たり43.61kgである。なお、図8に示される二酸化炭素(CO2)の排出量は、合材に貝殻を混入しない場合のものであり、本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法でどれだけ排出される二酸化炭素(CO2)が減少するのかを示すための前提となるものである。
図9は、貝殻を合材に混入させない従来の場合と比較して本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法でどの程度の二酸化炭素(CO2)の排出量を削減できるのかを説明するための模式図である。図9中上部には、グラフ形式で二酸化炭素(CO2)の量が示され、基準軸Xより上が二酸化炭素(CO2)の排出量を示し、下が二酸化炭素(CO2)の削減量を示している。このグラフの左部分には、図8で説明したSCOPE1、SCOPE2、 SCOPE3で排出される二酸化炭素(CO2)の合計が示されている。すなわち、合材の製造において貝殻を混入させない場合は、排出される二酸化炭素(CO2)の合計は、合材1t当たり43.61kgである。
図9の上部のグラフの右側には、合材の製造において貝殻を10%程度混入した場合の二酸化炭素(CO2)の排出と削減の量が示されている。まず、排出量であるが、図8の場合と同様に工場や搬送における排出量の合計は合材1t当たり43.61kgであり、さらに後述する貝殻の乾燥時に排出される二酸化炭素(CO2)量が1.95kgが加算される。したがって、二酸化炭素の排出量の合計は、45.56kgである。
次に二酸化炭素(CO2)の排出削減量であるが、貝殻の主成分である炭酸カルシウム(CaCO3)に含有される二酸化炭素(CO2)の量は45.1kgである。その根拠は次のようなものである。すなわち、1tの合材中に10.7重量%のホタテ貝殻が混入されている場合、ホタテ貝殻の重量は107kgとなる。このホタテ貝殻中、炭酸カルシウム(CaCO3)の量は、表1のNo. 3に示されるように95.8%である。したがって、炭酸カルシウムの量は107kg×0.958=102.5kgとなる。一方、二酸化炭素(CO2)の分子量は44であり、炭酸カルシウム(CaCO3)の分子量は100であり、ホタテ貝が海水中で成長する過程で二酸化炭素(CO2)を吸収して炭酸カルシウム(CaCO3)に化学変化するに当たり、炭素(C)自体は増減せず、一定である(1:1)であるので、炭酸カルシウム(CaCO3)に由来する二酸化炭素(CO2)の固着量はその44%(44/100)である。したがって、102.5kg×0.44=45.1kgにより、45.1kgの二酸化炭素(CO2)が固着していることとなる。
図9の下部は、合材に貝殻を混入しない場合(左の表)と合材に貝殻を混入した場合(右の表)を含んでいる。左の表は、図8と同様に合材に貝殻を混入しない場合には、43.61kgの二酸化炭素(CO2)が排出されることを示している。右の表は、合材に貝殻を混入した場合には、45.1kgの二酸化炭素(CO2)が貝殻自体に閉じ込められているので、その分削減され、貝殻の乾燥時に排出される1.95kgの二酸化炭素(CO2)の増加があっても、全体として排出量は、0.46kgとなることが示されている。
図9に示された結果には、ホタテ貝殻を合材に混入させない従来の方法で製造した再生密粒(13F)の場合、二酸化炭素(CO2)の排出量が43.61kgであるのに対し、ホタテ貝殻を合材に混入させた本発明の方法で製造した再生密粒(13F)の場合、二酸化炭素(CO2)の排出量が0.46kgであるから、これらを比較して、下記計算式によりホタテ貝殻を合材に混入させた本発明の方法では従来の方法に比較して二酸化炭素(CO2)が99%削減されることがわかる。
1-(0.46/43.61)×100 = 99%
図7は、本発明のカーボンニュートラルの実現方法における合材の骨材の配合をホタテ貝殻を含まない従来の場合とホタテ貝殻を含む本発明の場合とを比較して示した表を含む図である。すなわち、この比較は所定の施工実験の内容を示している。図7中の「アスコン」とは、硬度・密度が一般的なアスファルトより高めに作られたアスファルト混合物・アスファルト合材のことである。図7には2つの表が示され、上の表は骨材の種類別配合割合を重量%で示したものであり、「元配合」の欄はホタテ貝殻を含まない従来の方法の場合を示し、「再生密粒(13F)+ホタテ」の欄はホタテ貝殻を含む本発明の方法の場合を示している。上の表からわかるように、本発明では合材の生成において、10.7重量%のホタテ貝殻が含有される。なお、ホタテ貝殻を混入させた分だけ、元配合に対して6号砕石、7号砕石、その他の砂成分がそれぞれ減少されている。図7の下の表は、「元配合」と「再生密粒(13F)+ホタテ」のそれぞれの場合の透過したふるい目の毎の割合を示すものである。
ここで、本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法における貝殻の製造方法と、それを材料に混入した合材の製造方法について説明する。本発明では合材に混入させる要素の1つとして、所定方法で用意した貝殻の粉末を使用している。貝殻の製造方法を含む建設資材の生成とその使用について図1のシーケンスチャートに従って説明する。本発明の実施の形態では貝殻としてホタテの貝殻を使用している。ホタテ漁で水揚げされたホタテ貝の、中身が貝殻から取り外され、貝殻のみが集められ、所定箇所に搬入される(ステップS1)。次いでこの貝殻は屋外で風雨と日光の当たる適切な貝殻保管場所に運ばれ、堆積保管される(ステップS2)。貝殻保管場所の広さとしては、1000坪程度が好ましい。その後、貝殻保管場所にて堆積保管されていた貝殻は、風雨と日光に晒されるようにした状態で所定期間放置される。このプロセスはエージングと呼ばれるものであり、少なくとも半年以上、好ましくは1年以上(2年未満)放置される。
エージングが終了した貝殻は、タイヤシャベルにより工場内のホッパーに投入される(ステップS4)。1回の投入は1.5tである。ホッパーに投入された貝殻は、次いでベルトコンベヤーにて搬送されるが、この時作業員がベルトコンベヤー上の貝殻を目視で検査し、異物が混入されているときは、発見次第取り除く(ステップS5)。その後、目視検査を終了した貝殻は、ベルトコンベヤーで回転キルンに投入される(ステップS6)。回転キルン内の貝殻は700℃前後で投入から搬出まで30分程度をかけて焼成される(ステップS7)。次いで焼成された貝殻はバケットコンベヤーにて第1クラッシャーで粉砕される(ステップS8)。
粉砕された貝殻は、シフターによって3mmのふるいにかけられ、3mm以上と3mm未満に分離(分級)される(ステップS9)。分級された3mm未満の貝殻は、ベルトコンベヤーにて製品タンク内に搬送されて、保管される(ステップS10)。一方、分級後の3mm以上の貝殻は、第2クラッシャーで再粉砕される(ステップS11)。ステップS11で再粉砕された貝殻は、再度ふるいにかけられ、3mm未満のものは製品タンク内にて保管される。製品タンク内にて保管されている所定サイズに粉砕された貝殻は、所定量毎に計量されて、袋詰される(ステップS12)。
下記表1は、本願の共願者の1名が一般社団法人北海道環境科学技術センタに依頼して得られた試料ほたて貝殻粉末についての主要成分の分析結果である。


表1の分析結果から明らかなように、ホタテ貝殻の主成分は炭酸カルシウム(CaCo3)であり、上記エージングも焼成も行わない場合、90.4重量%であり(No. 1)、エージングのみ行い、焼成を行わない場合、91.9重量%であり(No. 2)、エージングと焼成を行った場合、95.8重量%である(No. 3)ことが示されている。他の成分である炭酸マグネシウム(MgCO3)は、上記No. 1 からNo. 3 に行くにしたがって含有量が減少し、さらに他の成分であるナトリウム(Na)は、上記No. 1 からNo. 3 にわたってほぼ変化していない。この分析結果から、エージングと焼成を行った場合、それらを行わなかった場合と比較して、炭酸マグネシウム(MgCO3)の量が減少し、一方炭酸カルシウム(CaCo3)は増加することがわかる。
図1に戻り、ステップS12で袋詰めされた粉砕、分級された貝殻は、ステップS13で建設資材である合材を製造する場所へ運ばれ、ステップS14で再生合材や骨材と混合される。具体的には、再生合材500kgと新規のアスファルトバインダー30kgと、骨材363kgからなる再生密粒度アスファルト混合物(13F)にホタテの貝殻107kgを混入させ、1,000kgの建設資材を製造する。なお、上記ステップS14でのプロセスの説明は、一例であり、再生密粒度アスファルトに代えて、新規のアスファルト混合物を用いることもできる。具体的な一例として、新規のバインダー60kgと骨材833kgからなる密粒度アスファルト(13)に上記ホタテの貝殻107kgを混入させ、1,000kgの建設資材を製造することができる。
なお、再生密粒度アスファルトを使用する場合も、新規の密粒度アスファルトを使用する場合であっても、合材の材料配合量には幅があり、各材料を適宜増減することができる。また、合材を製造するために使用される混合物の種類としては、密粒度に限定されるものではなく、必要に応じて適切な混合物を使用することができる。なお、上記実施の形態では、1,000kgの建設資材に107kgのホタテ貝殻を混入させたので、貝殻の含有率は10.7%であったが、この含有率は、施工現場の状況に応じて適宜変更することができる。しかし、貝殻の含有率が極端に少ないと、固定できる二酸化炭素(CO2)量も少なくなり、カーボンニュートラルの効果が減少してしまう。一方、貝殻の含有率があまり多いと合材の物性強度を確保することが困難となる。したがって、本発明では粉砕された貝殻を7~20重量%の範囲で他の骨材の成分と混合することにより、合材の物性強度を確保しつつ、カーボンニュートラルの効果も得られるようにしている。
ステップS14で生成された建設資材は、次のステップS15で道路工事、トンネル工事他の求められる工事現場に搬送され、次のステップS16でその工事現場に必要な量が使用されて工事が施工される。
本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の他の例について説明する。上記実施の形態では、粉砕された貝殻を他の骨材の成分と混合して合材を生成し、合材をアスファルト又はセメントと混合して、建設資材を生成していたが、粉砕された貝殻を粗粒合材と混合して建設資材を生成することもできる。この建設資材は、路床の一部である凍結防止層(凍上抑制層とも言われる)の材料として使用されるものである。なお、粉砕された貝殻と混合される粗粒合材としては、火山灰、砂、切込砂利を用いることができる。凍結防止層は、舗装の下部の路床の一部を構成するものであり、寒冷地における路床の凍結による不具合、すなわち、道路表面の亀裂や盛り上がり、その他の変形などと、融解期の路床の支持力低下を防止するものである。
本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法のさらに他の例について説明する。図7などを用いて説明した上記本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法では、貝殻を粉砕して建設資材となる合材に所定割合で混入させていたが、図1で説明した方法で貝殻を処理して粉砕、分級して得た粉砕された貝殻を合成樹脂と混合して既設の舗装道路上に配することができる。
図10は本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法の他の例として、粉砕された貝殻を合成樹脂と混合して既設の舗装道路上に配した状態を示す部分断面斜視図である。この例の場合、アスファルト舗装10の表面に1m2当たり所定量の建設資材12を配し、ローラーをかけて平坦化して、厚さを数cm程度としている。この建設資材12は、粉砕された貝殻と合成樹脂であるエポキシ樹脂を所定比率で混合したものである。図10に示すように、この例では、白い舗装表面が提示され、見た目が美しい景観舗装を提供することができる。この例の場合、単位面積の舗装面当たり所定量の二酸化炭素(CO2)が固定され閉じ込められる。
本発明の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法によれば、海洋中を含む水中に溶け込んだ二酸化炭素(CO2)を吸収して成長し、その貝殻が炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分としているので、かかる貝殻を原料として建設資材を生成することにより、二酸化炭素(CO2)を効率的に閉じ込めることができ、カーボンニュートラルの実現に寄与するものである。この建設資材は、道路舗装や建設工事に使用されることにより、半永久的に二酸化炭素(CO2)が固定化されるので、建設資材製造業、各種建設業におけるカーボンニュートラルの実現方法に寄与するものであり、これらの産業に有用である。
S1 貝殻搬入
S2 貝殻保管場所で堆積保管
S3 エージング
S4 貝殻をホッパーに投入
S5 異物の除去
S6 貝殻をキルンに投入
S7 貝殻焼成
S8 粉砕
S9 分級
S10 保管
S11 再粉砕
S12 計量袋詰
S13 貝殻を建設資材生成場所へ搬送
S14 貝殻を骨材等に混合して建設資材を生成
S15 建設資材を工事現場に搬送
S16 必要量の建設資材を使用して工事を施工
10 アスファルト舗装
12 粉砕された貝殻と合成樹脂であるエポキシ樹脂を所定比率で混合し、景観舗装を提供する建設資材

Claims (8)

  1. 海洋中を含む水中で成長し、前記水中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムが生成されて貝殻の主成分とされる貝類の前記貝殻を焼成するステップと、
    前記焼成された前記貝殻を粉砕するステップと、
    前記粉砕された前記貝殻を粗粒合材と混合して建設資材を生成するステップと、
    前記建設資材を路盤の下方に位置する路床の一部である凍結防止層の材料として使用するステップと、
    を含む、建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法であって、
    前記建設資材を生成するまでに発生する二酸化炭素発生量を計算する第1計算ステップと、
    前記粗粒合材と混合される前記貝殻が成長中に前記水中で吸収した二酸化炭素量を計算する第2計算ステップと、
    前記第1計算ステップと前記第2計算ステップで得られたそれぞれの二酸化炭素量から環境に排出する二酸化炭素量と、環境から吸収して前記建設資材内に封じ込められる二酸化炭素量を把握するステップとを、
    有するカーボンニュートラルの実現方法。
  2. 前記第1計算ステップが、前記建設資材を生成するまでに発生する二酸化炭素発生量として、前記建設資材を生成する段階で発生する二酸化炭素量と、少なくとも前記建設資材の材料を搬送したり生成された前記建設資材を搬送する段階で発生する二酸化炭素量とを別個に計算した後に前記別個に計算された二酸化炭素量を合計して前記建設資材を生成するまでに発生する二酸化炭素発生量を計算するものである請求項1に記載のカーボンニュートラルの実現方法。
  3. 前記第1計算ステップが、前記貝殻を焼成するステップにおいて排出される二酸化炭素量と、発電時に発生する二酸化炭素量のいずれか一方あるいは双方をも加えて計算するものである請求項1に記載のカーボンニュートラルの実現方法。
  4. 前記第2計算ステップが、前記貝殻が含有する炭酸カルシウム量と、二酸化炭素の分子量と、炭酸カルシウムの分子量を用いて二酸化炭素量を計算するものである請求項1に記載のカーボンニュートラルの実現方法。
  5. 前記焼成するステップの前に、前記貝殻をエージングするステップを含む請求項1に記載の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法。
  6. 前記エージングが前記貝殻を風雨と日光を受けるよう半年以上2年未満、外部に放置するものである請求項に記載の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法。
  7. 前記粉砕された貝殻を前記粗粒合材と混合して前記建設資材を生成するステップが、前記粉砕された貝殻を7~20重量%の範囲で前記粗粒合材と混合するものである請求項1に記載の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法。
  8. 請求項1からのいずれか1つに記載の建設資材の生成と使用におけるカーボンニュートラルの実現方法に用いる前記建設資材。
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